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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1387669 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-21 |
確定日 | 2022-08-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6374059号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6374059号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第6374059号商標(以下「本件商標」という。)は、「Le mans de elegance」の文字を標準文字で表してなり、令和2年10月15日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、同3年3月5日に登録査定、同年4月7日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、「本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当する。」として引用する登録第3274988号商標(以下「引用商標1」という。)は、「LE MANS」の欧文字を横書きしてなり、「自動車競走の企画・運営又は開催」を含む第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成4年9月29日に登録出願し、同9年4月4日に設定登録されたものである。 2 申立人が、「本件商標は商標法第4条第11号に該当する。」として引用する登録商標は、以下(1)ないし(5)のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 (1)登録第2713047号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様:「LE MANS」 指定商品:第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」並びに第14類及び第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 登録出願日:昭和57年7月29日 設定登録日:平成8年3月29日 (2)登録第2377704号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様:「LE MANS」 指定商品:第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」及び第25類「履物」 登録出願日:昭和57年7月29日 設定登録日:平成4年2月28日 (3)国際登録第795119号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様:別掲1のとおり 指定商品及び指定役務:第25類「Boots, sports shoes.」並びに第9類、第16類、第18類、第28類、第34類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 国際登録出願日(事後指定);2005年2月16日 設定登録日:平成20年3月7日 (4)国際登録第1365668号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様:別掲2のとおり 指定商品及び指定役務:第25類「Belts (clothing); bedroom slippers; beach, ski or sports footwear; money belts.」並びに第12類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 国際登録出願日:2017年5月10日 優先権主張:2017年4月25日 France 設定登録日 平成30年12月14日 (5)国際登録第1454405号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の態様:別掲3のとおり 指定商品及び指定役務:第25類「Footwear; belts (clothing); bedroom slippers; footwear for sports.」並びに第9類、第28類、第38類及び第41類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 国際登録出願日:2018年12月13日 優先権主張:2018年6月28日 France 設定登録日:令和3年1月29日 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第52号証を提出した。 なお、以下、甲各号証の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように表示する。 1 商標法第4条第1項第15号について (1)引用商標1の周知著名性について 引用商標1の「LE MANS」(ル・マン)の語は、フランスのサルト県の都市の名称であるが、同時に、1923年から90年以上にわたり同地で開催される伝統的な自動車レース「ル・マン24時間自動車レース」(24 hour du mans)(甲8、甲9)の略称として知られるものであり、また申立人は同レースの主催者である(甲10)。 この「ル・マン24時間自動車レース」は、F1の「モナコ・グランプリ」、米国のインディアナポリスで行われる「インディ500」と並ぶ、世界三大自動車レースの一つとされ(甲11)、世界各国の自動車メーカーやレーシングチームからのエントリーが殺到するほどである(甲9)。我が国の自動車メーカーについてみても、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業及びマツダの四社が参加しており(甲9)、特にマツダは日本勢としては最も古く、1970年から参加している(甲12)。 同レースの人気を裏付けるように、1971年には、米国映画「Le MANS(邦題:栄光のル・マン)」が制作され(甲13)、同映画のDVD(甲14)や、そのドキュメンタリーDVD(甲15)は、現在でも購入可能である。 最近では、2012年からトヨタ自動車が再挑戦することで我が国での注目が再び高まり、その後にトヨタ自動車が2018年にオールジャパンチーム(日本チーム・日本車)として総合優勝を飾った後(甲16)、現在まで4連覇を果たすことで、さらに人々の注目を集めている(甲17〜甲19)。 この「ル・マン24時間自動車レース」は、一般には「LE MANS」や「ル・マン(ルマン)」のような略称が用いられることが多く、例えば毎年のレース結果を収録したDVDのパッケージでは「ル・マン24時間レース」の文字とともに「LE MANS」や「ル・マン(ルマン)」の語が頻繁に使用されており(甲20〜甲28)、「LE MANS」を特集した書籍や雑誌(甲29〜甲35)、本件商標の登録出願日の直前(令和2年9月20日)のトヨタ自動車の3連覇を伝える新聞記事等においても同様である(甲36〜甲40)。 以上より、「LE MANS」の語からなる引用商標1は、「ル・マン24時間自動車レース」の略称として、また同レースを主催する申立人の商標として、本件商標の登録出願日及び査定時において、「ルマン」の称呼とともに需要者等に広く認識されていたことは明らかである。 なお、過去の無効審判の審決においても、「LE MANS(ル・マン)」が「ルマン24時間自動車レース」の略称として、本件商標の登録出願時において、自動車レースに係る役務の需要者の間に広く認識されたものであり、また、一般の需要者にも相当広く知られるに至っていたことが認定されている(甲41、甲42)。特に、トヨタ自動車のここ数年の連覇もあり、需要者等における「LE MANS」の認知度合いは、これらの審決当時から変わらず継続していると考えるのが自然である。 (2)本件商標と引用商標1の類否について 本件商標の構成のうちの「elegance」の語は「優雅」、「上品」を意味する平易なフランス語であって(甲43)、「上品で、華やかな商品」の誇称(品質)表示として広く使用されているものであるから、特にファッションに関する「被服」等の関係では、識別標識としての機能が極めて弱い部分として把握されると考えられ、さらに中間に位置する「de」の語は、フランス語で「〜の」等を表すときに用いられる前置詞にすぎないことから、本件商標は、語頭に位置する「Le mans」の部分が要部として抽出されると考えるのが自然である。 一方、引用商標1の「LE MANS」の語は、「ル・マン24時間自動車レース」の略称として需要者等に広く知られているところ、本件商標の要部「Le mans」は引用商標1と綴りが共通することから、これから「ルマン」の称呼が生じ、また「ル・マン24時間自動車レース」の観念が生じるというべきである。 したがって、引用商標1と本件商標は、その要部から生じる称呼及び観念が共通し、互いに類似するものである。 (3)「自動車レースの興行」と「被服」等の関連性について 「LE MANS」のような自動車レースにあっては、レース主催者や参加チームのロゴをあしらったティーシャツやジャケット、帽子等の衣料品が、公式グッズとして販売されることが一般に行われており、イベント観戦者やモータースポーツファンにとって定番の記念品・愛好品として人気を博している(甲44〜甲47)。申立人自身も、「LE MANS」に関するティーシャツやジャケット、帽子といった衣料品を、公式オンラインショップにて販売している実情があり(甲48)、また「F1レース」や「インディ500」(甲49〜甲51)も同様である。 したがって、申立人が手掛ける「自動車レースの興行」に関する役務と、本件商標に係る指定商品とは密接な関係を有するものであり、また自動車レースの観戦者・ファンは被服等の需要者でもあるから、需要者の範囲は共通する。 なお、過去の無効審判の審決においても、自動車レースに関する役務と商品「被服」等との間の関連性が認められている(甲41、甲42)。 (4)出所混同のおそれについて 「ル・マン24時間自動車レース」の略称である引用商標1「LE MANS」は、「自動車レース」と関連する役務について、我が国において周知・著名な商標となっており、また、本件商標と類似する。そして、「自動車レース」と商品「被服」等は関連性が強く需要者が共通するものであり、さらに実際に、申立人を含め自動車レースの主催者や参加チームのロゴをあしらった被服等が販売されている実情がある。したがって、本件商標がその指定商品に使用された場合は、これに接した需要者・取引者は、申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係る商品であると誤認することで、商品の出所について混同を生じるおそれが高い。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 2 商標法第4条第1項第11号について 引用商標2及び引用商標3の構成については、「LE MANS」の文字よりなり、また、引用商標4ないし引用商標6にあっては、いずれも「LE MANS」の文字が他の文字より大きく表示され、かつ、「LE MANS」が申立人の商標として周知・著名である事情も鑑みれば、いずれも「LE MANS」の部分が要部として認識されるものである。 そして、本件商標と引用商標2ないし引用商標6を対比すると、いずれも「ルマン」の称呼が生じるものであって、また、「ル・マン24時間自動車レース」の観念を生じさせるものであることから、互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。 さらに、本件商標の指定商品のうちの「ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」は、引用商標2ないし引用商標6に係る指定商品と同一又は類似している。 以上より、本件商標と引用商標は互いに類似する商標であり、また、本件商標の指定商品と、引用商標2ないし引用商標6の指定商品又は指定役務は、同一又は類似のものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第19号について 引用商標1が外国及び我が国の需要者・取引者の間で周知・著名な商標であること、さらに、本件商標が引用商標2ないし引用商標6と類似することは、上記1及び上記2のとおりである。 申立人とは無関係の他人である本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)が、周知・著名な商標と類似する本件商標を採択することは、自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、著名商標に化体した信用にただ乗り(フリーライド)することによって得ようとするものであり、不正の目的がある。 さらに、本件商標の使用は、引用商標に化体した出所表示機能の希釈化を招くものであり、またその名声を棄損させるものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標1の周知性について (1)申立人の主張及び提出に係る証拠によれば以下のとおりである。 ア 広辞苑の「ルマン24時間レース」の項には、「フランスの中西部ルマン市で開催される自動車耐久レース」の記載(甲8)、ウィキペディアの「ル・マン24時間レース」のページには、「フランスのル・マン近郊で行われる四輪耐久レースである。」の記載があり(甲9)、同「世界三大レース」のページには、「世界三大レースとは、モナコグランプリ、インディ500、ル・マン24時間レースという3つの自動車レースに対する伝統的な呼称である。」の記載がある(甲11)。 イ 「クリッカー11th」のウェブサイトには、「『マツダ』787Bル・マン総合優勝の快挙」(公開日2020年7月21日)の見出しの下、「次の目標はル・マン制覇/マツダのロータリーエンジン車が初めて『ル・マン24時間』に参戦したのは、1970(昭和45)年でした。・・・1984(昭和59)年のル・マンでは、参戦4台すべてが完走して上位入賞を果たし・・・」等の記載がある(甲12)。 ウ 「映画.com」やアマゾンのウェブサイトには、「栄光のル・マン」、「LE MANS 24h」及び「24h LE MANS」を題名とするDVD、「スティ−ヴ・マックィーン その男とル・マン」のBlu−rayが販売されている(甲13〜15、甲20〜27)。 エ 「東洋経済ONLINE」には、「トヨタが悲願のル・マン初優勝に至った裏側」(2018年6月18日)の見出しの下、「2018ル・マン24時間レースの決勝が日本時間の6月17日22時にゴールを迎え・・・完全勝利となった。」の記載がある(甲16)。 オ 「JIJI.COM」(2020年9月20日)、「朝日新聞」(2020年9月21日)、「読売新聞」(2020年9月21日)、「毎日新聞」(2020年9月20日)、「webCG」(2020年9月25日)の各ウェブサイト(甲36〜40)には、「トヨタがルマン3連覇」の見出しの下、「伝統の自動車耐久レース、第88回ルマン24時間は・・・」等の記載があり、また、「NEWS WEBニュース」、「JIJI.COM」及び「REUTER」のウェブサイト(甲17〜19)には、「トヨタがルマン4連覇」に関する記事が掲載されているが、2021年8月22日及び同23日のものであり、本件商標の登録査定後のものである。 カ アマゾン等のウェブサイトには、「ル・マン24時間耐久レース−栄光の時代‘70〜79大型本」(2012年7月1日)、「マツダチーム ルマン初優勝の記録−ロータリーエンジンによる戦い1979−1991単行本」(2017年9月1日)、「AUTOSPORT(オートスポーツ)特別編集 ・ル・マン24時間 2018」(Kindle版、三栄書房)、「Le Mans 24&WECTecnology」(Motor Fan illustrated Special Editionムック、三栄書房−2014年7月2日)、「ル・マン24時間 2016」(MOOK、三栄書房2016年7月13日)、「ル・マンミニカーの世界 ル・マン半世紀の出場モデル1000台の競演」(エイ出版社 2007年10月)、「ル・マン24時間 闘いの真実 ル・マンに挑んだ林教授と学生たちの11年」(三栄書房 2013年6月)等がそれぞれ販売されている(甲28〜34)。 キ 「GQ JAPAN」のウェブサイト(甲35)には、「93年もの歴史には理由がある−ル・マンのロマンとは?」(2016年10月8日)の見出しの下、「『世界一過酷な耐久レース』とも称されるル・マン24時間は、なぜロマンの宝庫なのか・・・F1との比較で解き明かしてみよう。」の記載がある。 ク 上記アないしキによれば、「ル・マン24時間レース」がフランスのルマン市で行われる世界三大レースの一つとして知られており、新聞記事の見出しにおいて、マツダやトヨタ等の自動車会社名とともに「ル・マン制覇」、「ル・マン初優勝」や「ルマン3連覇」が散見されるも、新聞記事や書籍には、「ルマン24時間レース」、「ルマン24時間」と表示され、DVD等の作品名として「LE MANS」の表示とともに「24」も表示されているものである。 そうすると、申立人の提出に係る全証拠を参照するも、申立人が主催する自動車レース「ルマン24時間レース」の略称として、「LE MANS」を広く一般に使用しているとはいい難いものであり、他に、「LE MANS」の文字が、申立人が主催する自動車レース「ルマン24時間レース」の略称として一般に知られていると判断するべき特段の事情はないものである。 したがって、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は「自動車競走の企画・運営又は開催」を含む申立人の提供する役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について ア 本件商標は、上記第1のとおり、「Le mans de elegance」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ書体で、横一列にまとまりよく一体的に表されたものである。 また、本件商標の構成文字全体から生じる「ルマンデエレガンス」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、「Le mans de elegance」の文字は、辞書等に特定の意味を有する語として載録されている等の事実は認められないため、特定の観念は生じるものではないことから、本件商標は、構成全体をもって、造語の一種を表したと認識されるというべきである。 したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「ルマンデエレガンス」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 イ 申立人は、本件商標の構成中の「elegance」の文字が「優雅、上品」等を意味する語であって、ファッションに関する商品との関係では、識別標識としての機能が弱い部分であり、また、中間に位置する「de」の語は、前置詞にすぎないことから、本件商標の要部は、「Le mans」である旨主張しているが、「elegance」及び「de」の語が申立人主張の意味を有するとしても、これらの語が本件商標の指定商品についての品質等を表し、自他商品の識別標識として機能しないと判断しなければならない特段の事情は認められず、申立人は、これらの事実を証明する証拠を提出していないものである。 また、本件商標の構成中の「Le Mans」の文字が語頭に位置しているとしても、当該文字のみが取引者及び需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえない。 加えて、本件商標の構成中の「de elegance」の文字が出所識別標識としての称呼、観念が生じないと判断するに足りる特別な事情はない。 そうすると、本件商標は、その構成中の「Le mans」の文字のみを分離抽出し他の商標と比較検討することが許されないものといわなければならない。 したがって、申立人のかかる主張は採用することができない。 (2)引用商標2ないし引用商標6について 引用商標2ないし引用商標6は、上記2のとおり、「LE MANS」又は図形と「LE MANS」の欧文字を大きく表した構成からなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して「ルマン」の称呼を生じ、当該文字は、フランスの都市名を認識させる。 (3)本件商標と引用商標2ないし引用商標6の比較 ア 外観について 本件商標と引用商標2及び引用商標3とは、「de elegance」の文字の有無に差異を有するため、構成文字全体として異なる語となるから、外観上、相紛れるおそれはない。 また、本件商標と引用商標4ないし引用商標6とは、図形の有無に差異を有するため、本件商標と引用商標4ないし引用商標6の外観は明らかに相違することから、外観上、相紛れるおそれはない。 イ 称呼について 本件商標から生じる「ルマンデエレガンス」の称呼と、引用商標2ないし引用商標6から生じる「ルマン」の称呼とは、構成音及びその音数が明らかに相違するため、それぞれを一連に称呼した場合は、語調語感が相違し、称呼上、互いに紛れるおそれはない。 ウ 観念について 本件商標は、特定の観念を想起させない一種の造語として把握されるものであり、引用商標2ないし引用商標6の構成文字「LE MANS」は、フランスの都市名を認識させるから、これらは観念において紛れるおそれはない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標2ないし引用商標6とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。 その他、本件商標と引用商標2ないし引用商標6とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。 (4)まとめ したがって、本件商標は、引用商標2ないし引用商標6と類似するものではないから、本件商標の指定商品と引用商標2ないし引用商標6の指定商品が同一又は類似するかに関わらず、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標1の周知性について 上記1のとおり、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は「自動車競走の企画・運営又は開催」を含む申立人の提供する役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。 (2)本件商標と引用商標1の類似性の程度について 本件商標は、上記第1のとおり、「Le mans de elegance」の文字を標準文字で表してなるものであり、上記2(1)のとおり、その構成文字に相応して、「ルマンデエレガンス」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「LE MANS」の欧文字を横書きしてなるところ、「LE MANS」の文字を表してなる引用商標2と同様に、上記2(2)のとおり、「ルマン」の称呼を生じ、フランスの都市名を認識させる。 本件商標と引用商標1を比較するに、構成文字において「de elegance」の文字の有無に差異を有するため、構成文字全体としては異なる語となるから、外観上、相紛れるおそれはなく、また、本件商標から生じる「ルマンデエレガンス」の称呼と、引用商標1から生じる「ルマン」の称呼とは、構成音及びその音数が明らかに相違するため、それぞれを一連に称呼した場合は、語調語感が相違し、称呼上、互いに紛れるおそれはない。 さらに、本件商標は、特定の観念を想起させない一種の造語として把握されるものであり、引用商標1は、フランスの都市名を認識させるから、これらは観念において紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきものであるから、これらの類似性の程度は低い。 (3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る役務の関連性、需要者の共通性について 本件商標の指定商品は、「被服」等のファッション関連商品であるのに対し、申立人の業務に係る役務「自動車競走の企画・運営又は開催」は、イベントの開催等に関する役務であるから、それぞれの役務や業務の内容に密接な関連性を有するものではなく、これらの需要者の共通性の程度は低い。 (4)出所の混同のおそれについて 上記のとおり、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は「自動車競走の企画・運営又は開催」を含む申立人の提供する役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものではなく、本件商標と引用商標1とは、別異の商標であって、類似性の程度は低く、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る役務は、密接な関連性はなく、需要者の共通性の程度は低い。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標1を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1のとおり、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は「自動車競走の企画・運営又は開催」を含む申立人の提供する役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものであり、上記3(2)のとおり、本件商標と引用商標1とは、非類似の商標である。 その他、商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものと認めるに足りる具体的な証拠はない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標4:色彩については原本を参照されたい。) 別掲2(引用商標5) 別掲3(引用商標6:色彩については原本を参照されたい。) (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。 |
異議決定日 | 2022-07-29 |
出願番号 | 2020127812 |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W25)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
矢澤 一幸 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 豊田 純一 |
登録日 | 2021-04-07 |
登録番号 | 6374059 |
権利者 | 有限会社アナログ |
商標の称呼 | ルマンドエレガンス、ルマンド |
代理人 | 小暮 君平 |
代理人 | 特許業務法人BORDERS IP |
代理人 | 福井 孝雄 |