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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z30
管理番号 1382525 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2021-01-06 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4344083号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4344083号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4344083号商標(以下「本件商標」という。)は、「ゼロ米」の文字を表してなり、平成10年8月12日に登録出願、第30類「米」を指定商品として、同11年12月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和3年1月21日である。
以下、本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成30年(2018年)1月21日ないし令和3年(2021年)1月20日)を「要証期間」という。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
ア 本件商標権者と「越前村」との間の使用許諾契約について、被請求人提出の証拠(乙2)には商標登録番号の記載がなく、本件商標についての使用許諾であるとはいえず、「越前村」が本件商標の使用権者であることの立証がなされていない。
また、本件商標を付した商品販売の事実を示す証拠(乙1、乙4)についても、その真偽が疑わしいことに加え、納入実績を示す証拠(乙4)については、主観的な納入証明である上、実際に納入された商品が不明であるから、被請求人が主張する商品の納入の事実は示されておらず、これらの証拠は、本件商標を使用した証明にならない。
さらに、「かなづや株式会社」(以下「K社」という。)に関する履歴事項全部証明書(乙3)は、「越前村」と同社との関係を証明できておらず、「越前村」の注文用紙や封筒(乙5、乙6)は、本件商標との関係が全く不明であるから、これらの証拠は、本件商標を使用した証明にはならない。
イ 使用許諾の事実の立証
登録商標の使用許諾を行う場合には、少なくとも使用許諾の対象となる商標登録番号や、使用許諾の対象となる指定商品を特定した上で、ライセンス料の支払い等の諸条件を定めた契約書が締結されることが一般的であるが、乙第2号証には商標登録番号の記載がない上に、許諾対象となる指定商品の記載もなく、余りにも簡易すぎて信ぴょう性に欠ける。それに加えて、登録商標の使用許諾を与えるに当たって必要な情報の特定が行われておらず、かかる証拠をもって、本件商標権者が「越前村」に対し、本件商標の使用を許諾しているとの事実を認められない。
よって、「越前村」が本件商標の使用権者であることの立証がなされていない。
ウ 商品販売の事実の立証
(ア)被請求人提出のパンフレット(乙1)及び出荷証明書(乙4)は、本件商標の使用の事実を証明する証拠にはなり得ないものであり、かかる証拠に基づき、本件商標の使用の事実は認定できない。
(イ)パンフレット(乙1)には、「ゼロ米」及び「ZERO米」の文字の記載はあるものの、かかる証拠だけでは、実際にそこに記載されている商品が販売されていたとはいえない。
そのパンフレットには、「ゼロ米」の右横に「令和2年度産」との記載があるだけで、それが実際に作成、配布された年月日の記載がなく、かつ、要証期間に作成、配布されたことの立証もなされていない以上、実際にそれが要証期間に作成、配布されていたかどうか不明である。
(ウ)出荷証明書(乙4)は、K社の監査役であるN氏が出荷を証明しようとするものであるから、身内による立証であって主観的な証明にすぎず、客観的な証明書ではない。
また、納入先への商品の納入日(令和2年9月10日)の後に、このような出荷証明書が出荷業者から発行されるというのは、通常の商取引から考えて信ぴょう性に欠ける。通常であれば、納品書などの取引書類が存在するはずだが、出荷証明(乙4)という形で出荷の事実を主観的に証明するようなことは商取引上あり得ない。
よって、出荷証明書(乙4)は、主観的な証明であって証明力が低く、また、証拠としての信ぴょう性も低い。
(エ)出荷証明書(乙4)には、商品名として「ゼロ米用『こしひかり』」と記載があるだけで、実際に出荷された商品が不明である。また、出荷の事実を証明する証拠がそれのみであるため、本件商品が(名目的な使用ではなく)継続的に出荷されていた事実もない。
加えて、当該証明書には「令和2年10月10日」との日付の記載があるものの、当該出荷証明書が要証期間に作成されたことの客観的な証拠がない以上、実際に当該出荷証明書が要証期間に作成されていたかどうか疑わしい。
さらに、これら証拠の真偽に関わらず、「越前村」へ「ゼロ米用『こしひかり』」の納入が、「越前村」が本件商標を付した商品を需要者に対して販売したことの証拠とはなり得ない。
エ 「越前村」とK社との関係
K社に関する履歴事項全部証明書の写し(乙3)からは、K社の取締役であるT氏が「越前村」の代表者であること、同社の通信販売部門が「越前村」であることの確認ができない以上、「越前村」とK社との関係を証明するものではない。
オ 「越前村」の注文用紙及び封筒と本件商標との関係
「越前村」の注文用紙(乙5)及び「越前村」宛封筒(乙6)は、本件商標との関係が全く不明であることに加え、これらは未記入の注文用紙と封筒にすぎず、実際に本件商標を付した商品の注文があったことを示すものでもない以上、本件商標の使用の事実を証明する証拠にはなり得ず、かかる証拠に基づき、本件商標の使用の事実は認定できない。
(3)口頭審理陳述要領書(令和3年8月19日付け)
ア パンフレット(乙7)には、本件商標「ゼロ米」を使用した商品は掲載されていないため、本件商標の使用の事実を証明する証拠にはならない。
それにパンフレット(乙1)を挟み込んだ状態で、顧客に送付した事実を裏付ける客観的な証拠がない以上、実際に挟んだ状態で送付していたか疑わしい。
イ 請求明細書(乙9)には、「クロネコDM便」で送付した内容物の記載がない以上、実際にこれがパンフレット(乙1、乙7)の送付に関するものであるか不明である。仮にこれがパンフレット(乙7)の送付に関するものであったとしても、パンフレット(乙1)が挟まれた状態で送付されていた事実を裏付ける客観的な証拠がない以上、それが顧客に送付されていたと認定できない。
ウ さらに、パンフレット(乙1)に、「ゼロ米」及び「ZERO米」の記載はあるが、それだけでは実際に記載された商品が販売されていたとはいえない。当該パンフレットの中央あたりに「令和2年度産」の記載があるだけで、その作成、配布された年月日の記載がなく、かつ、作成や配布時期の立証もされていない以上、実際に要証期間に作成、頒布されていたか不明である。
エ 2017年の「越前村」のパンフレット(乙8)は、2017年のパンフレットであるから、要証期間における本件商標の使用の事実を証明する証拠ではない。
オ 請求明細書(乙9)には、送付した内容物(商品名など)の記載がない以上、実際にパンフレット記載の商品の送付に関するものであるか不明であって、本件商標の文字が記載されておらず、本件商標を付した商品を顧客に発送したことも証明できていない。
カ パンフレット(乙7、乙8)の印刷代金にかかる請求書(乙10)は、いずれのパンフレットも要証期間の本件商標の使用の事実を証明する証拠ではないから、本件商標の使用の事実を示すものではない。
キ パンフレット(乙1)の作成年月日は令和2年5月10日とされるが、これを客観的に裏付ける証拠の提出はない。
(4)上申書(令和3年10月11日付け)
ア 「越前村」とK社の関係を客観的に立証する証拠は、依然として提出されていない。
K社と「越前村」の名称が表示された広告表示板やドア等の写真(乙11)は、撮影日は不明であることに加えて、それらを実際に設置した日時も不明であるため、要証期間の証拠に該当するか疑わしい。また、撮影者のT氏はK社の代表取締役であるから、主観的な証明にすぎず、客観的な証拠ではない。
さらに、K社の履歴事項全部証明書(乙3)には、単に「通信販売」と記載されているだけで、「越前村」との名称が記載されていない以上、それだけでは「越前村」とK社との関係が客観的に証明されているとはいえない。
イ 差し替えられた請求明細書(乙9)は、送付した内容物の記載がない以上、パンフレット(乙1、乙7)や、それに掲載されている商品の送付に関するものであるか、いまだ不明である。仮にその請求書がパンフレット(乙7)の送付に関するものであったとしても、パンフレット(乙1)が実際に挟まった状態で発送されていた事実を裏付ける客観的な証拠がない以上、それが実際に顧客に送付されていたとは認定できない。
ウ 仮に要証期間に1回だけ「ゼロ米」の商品注文があったとしても、商標法第2条第1項第1号に基づく反復継続性の要件を満たしていない以上、「業として」の使用とはいえず、本件商標が商標として使用されたことにならない。
また、商品「ゼロ米」を販売した際のものとされる領収書(乙13)にしても、金額が「ご注文承り書」(乙12)と同じというだけで、領収書自体には本件商標「ゼロ米」の記載が全くない以上、実際にその商品の販売に関する領収書であるか疑わしい。
エ 「ゼロ米」の収容袋(乙14)は、市販されている一般的な米販売用袋にシールを貼って作っただけという余りにも簡易なものであり、証拠としての信ぴょう性に欠ける。また、このような袋が存在するとしても、実際に要証期間にこれが存在していたかどうかは不明であるから、要証期間に本件商標が使用されていたことや、商品「ゼロ米」の販売があったことの証明にはならない。
オ 封入作業及び発送準備の手順を示す写真(乙15)は、K社内部における身内による立証であって、主観的な証明にすぎず、客観的な証拠ではない。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第15号証を提出した。
(1)答弁の理由
ア 本件商標の使用
(ア)本件商標「ゼロ米」は、「ゼロ」の片仮名と「米」の商品名を一体的に組み合わせた構成であるところ、パンフレット(乙1)に示されているとおり、本件商標を使用している。また、このパンフレットには、「ZERO」の欧文字と「米」の商品名を一体的に組み合わせた商標も使われ、その下側には「ゼロ」の片仮名を並記している。
(イ)パンフレット(乙1)には、左側に丸まった稲穂を表す図形、その下側に「ZERO米」と「ゼロ」が並記したデザインとして表記されている。また、そのパンフレットの右側には米を収容して販売する袋が表示され、この袋の上部には「ZERO米」と「ゼロ」を並記している。このように、越前のコシヒカリ100%を「ゼロ米」として販売している。
ところで、このパンフレットにも表示しているように、「ゼロ米」の価格は3kgが2,900円、5kgが4,100円であり、非常に高いコシヒカリであって、スーパーマーケットなどで大量に販売されるコシヒカリではなく、例えば、極上魚沼産コシヒカリの販売価格に匹敵する。
(ウ)「登録商標権使用権利書」(乙2)は、本件商標「ゼロ米」を使用する権利を「越前村」に与える旨の書面である。
(エ)越前村の村長(代表者)はT氏であり、同氏は協同組合グループ二十一の代表者で、また、K社の代表者(乙3)でもある。K社は米の通信販売部門を有し、この通信販売部門を「越前村」としている。
(オ)「出荷証明書」(乙4)は、N氏が販売元である越前村へ「ゼロ米」(コシヒカリ)を出荷したことを示す証明書である。N氏はK社の監査役を務めていて、ゼロ米の商標を使用することが出来る高品質のコシヒカリを作って「越前村」へ納入している。そして、「越前村」は、高品質のコシヒカリを「ゼロ米」のブランドを付して販売している(乙1)。
(カ)「ゼロ米」の注文書(乙5)は、依頼主の住所及び名前の記載欄、届け先の氏名と住所の記載欄を設けている。すなわち、この注文書を受けた「越前村」は、届け先に所定数量の「ゼロ米」を届けることができる。
高品質で価格も比較的高いコシヒカリ「ゼロ米」は、この注文書にも表示しているように、「お中元」や「お歳暮」の品として送られる場合が多い。
(キ)注文書を販売元である「越前村」へ郵送する封筒(乙6)は、料金受取人払郵便で、切手を貼ることなく投函できる。この封筒の差出有効期間は2020年5月30日から2022年5月29日までで、2020年5月30日以前に郵便局に申請して作成した封筒である。
(2)口頭審理陳述要領書(令和3年7月29日付け)
ア 商標「ゼロ米」を付した米は、お中元用及びお歳暮用として位置づけている。最初はその時期に限らず常時販売する予定だったが、特別に手間をかけて作る米であるため価格が高く、一般のコシヒカリにおされて、ほとんど売れなかった。
本件商標が登録されて20年以上が経過し、その間に権利者も変わり、今では本件商標権者が商標権を所有し、その使用者は越前村の村長T氏である。T氏は、お中元及びお歳暮の時期にパンフレットを制作して顧客に配布している。
令和2年度(2020年度)の「夏の越前村だより」(乙7)は、越前村が取り扱う各種商品が掲載され、顧客に配送されている。このパンフレットには、「越前大野・越の国のコシヒカリ」が掲載されているが、商標「ゼロ米」を付した米は掲載しておらず、その代わりに、パンフレット(乙1)を挟み込んで配送している。
以前は「越前大野・越の国のコシヒカリ」とともに「ゼロ米」を掲載していた(乙8)ところ、前者は売れたが、「ゼロ米」はほとんど売れなかった。
そのため、最近では、従来とは異なる特別な米であることを知ってもらうために、パンフレット(乙1)を特別に作って挟み込んだ状態で顧客に配送している。
イ(ア)2020年6月30日付けのヤマト運輸株式会社の請求明細書(乙9)は、左側上段に「越前村(かなづや)」との記載がある。
この請求明細書には、「クロネコDM便」の963個、454個、545個の記載がある。これら合計便は1962通であり、「夏の越前村だより」(乙7)に「パンフレット」(乙1)、「ご注文承り書」(乙5)及び「返信用封筒」(乙6)を挟んだ状態で配送している。
(イ)株式会社ヒラノ印刷の請求書(乙10)は、「夏用パンフレット」(乙7)と「冬用パンフレット」の印刷代金である。
ウ 請求明細書(乙9)には、商品区分として「宅急便発払」が記載され、住所が表示されている。すなわち、「夏の越前村だより」(乙7)に掲載している商品が、「ご注文承り書」(乙5)に記載され、「返信用封筒」(乙6)を使って送り返されると、その注文商品を顧客に配送している。
しかし、「ゼロ米」の注文はほとんどない。主食であってほぼ毎日必要とする米は、「お中元」や「お歳暮」の品として適しておらず、「越前大野・越の国コシヒカリ」の注文は多少あるが、「ゼロ米」の注文はほとんどない。
(3)上申書(令和3年9月30日付け)
ア K社の通信販売部門の1つに越前村を有し、越前村ブランドで35年間通信販売を行っており、その取扱商品の中に特選米があり、これに商標「ゼロ米」を付して販売している。K社の通信販売は、福井県の余り知られていない特産品を紹介することが目的で、広告代などの費用は参入業者の無負担で行っている。その中で、年2回のお中元、お歳暮時期には、全国へ越前村ブランドでDMを送っており、35年が経過している。
越前村の取扱商品は蕎麦が売上げの中心であって、「ゼロ米」は商標登録をしたが、販売価格も高くてほとんど売れない。
2018年からは、客からの要望で「ゼロ米」の説明が不十分であるとの指摘もあって、独立したパンフレット(乙1)を作成した。
K社の敷地内には高い広告塔が設置されており、その広告表示板には、K社の名称と「越前村」を表示し、会社入り口のドアには「越前村」とK社の名称を表示している(乙11)。
イ K社は通信販売部門として「越前村」を設けており、「越前村ブランド」を使用して、各種商品を販売している(乙3)。これらの商品の中に米があり、「ゼロ米」の商標を付して販売している。
ウ 2020年6月30日付けのヤマト運輸株式会社の請求明細書(乙9)は、上段右側に「ヤマト運輸株式会社」、左側に「越前村(かなづや)」の記載がある。
エ 「ゼロ米」のご注文承り書(乙12)は、申込日が令和2年7月15日付けである。これは封筒(乙6)に入れて返信されてきたもので、その販売の際の領収書(乙13)もある。「ゼロ米」の代金(8,200円)を受け取り、領収書を渡している。
顧客に渡した領収書と越前村の控え(乙13)について、顧客に渡した領収書は郵送してもらった。
オ 「ゼロ米」の収容袋を写した写真(乙14)は、撮影者がT氏、撮影場所がK社、撮影日が2021年9月17日である。
この「ゼロ米」の収容袋は、パンフレット(乙1)に表示しているものである。
袋はホームセンターで販売しているものを購入し、これに「ゼロ米」専用のシールを貼り付けている。専用収納袋を制作すると、コストが非常に高くつくため、このような米袋を準備している。
カ 「ゼロ米のパンフレット」、「夏の越前村だより」、「越前村行き封筒」及び「ご注文承り書」を透明封筒に入れて発送する手順を示す(乙15)。
ヤマト運輸のラベルを用いて、これに顧客の住所及び氏名を印字し、透明封筒に貼り付けるシールを作る。透明な封筒に「ゼロ米のパンフレット」、「夏の越前村だより」、「越前村行き封筒」及び「ご注文承り書」を入れ、その封筒に顧客の住所及び氏名を印字したシールを貼り付けて完成する。

4 当審の判断
(1)不使用取消審判について
商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消しの審判が請求された場合には、同条第2項において、その審判の請求の登録前3年以内(要証期間)に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにした場合を除いて、商標権者は、その指定商品に係る商標登録の取消しを免れないとされている。
(2)被請求人提出の証拠及び主張によれば、以下のとおりである。
ア(ア)本件商標権者は、平成24年10月11日受付の特定承継による本権の移転によって、本件商標の商標権者になったもので、K社の取締役(役員)でもある(甲1、乙3)。
(イ)K社(福井県越前市北府2−19−16)は、その目的に「農作物、海産物、加工食品の通信販売」を含んでおり、その同一住所の敷地内に、通信販売事業(カタログ通販、インターネット通販を含む。)を行う「越前村」が設けられている(乙3、乙8、乙11)。
(ウ)T氏は、K社の代表取締役(役員)であって、「越前村」の村長(代表者)とされる(乙3、被請求人の主張)。
(エ)「登録商標権使用権利書」(平成25年1月10日付け)には、本件商標権者は、T氏との間で、「ゼロ米」を「越前村」に使用許諾する旨を合意(押印)したことが記載されている(乙2)。
イ(ア)「越前村」の「ゼロ米のパンフレット」(2020年5月10日、K社作成)には、「ゼロ米」の名称の「米」(以下「本件使用商品」という。)の商品紹介記事が掲載されており、「ZERO米」の文字を表示した包装袋の写真やロゴに加えて、「ゼロ米(令和2年度産)」、「新米予約受付」、「10月中旬頃お届けします」、「5kg L−5 4,100円」の記載がある(乙1)が、当該パンフレットの作成日、印刷日、印刷部数、頒布日等を裏付ける証拠の提出はない。
(イ)「越前村」の「夏の越前村だより 令和2年版」(K社作成)と称するカタログには、請求人商品の掲載はない(乙7)。
当該カタログは、株式会社ヒラノ印刷により2,000部印刷され、2020年6月11日に「越前村」に納品されている(乙10、第1回口頭審理調書)。
なお、「2017 冬の越前村だより」と称するカタログには、本件使用商品(L−5、5kgで4,500円)の掲載はあった(乙8)。
(ウ)被請求人は、「ゼロ米のパンフレット」(乙1)、「夏の越前村だより 令和2年版」(乙7)、「越前村行の封筒」(乙6)、「ご注文承り書」(乙5)を透明な袋に入れ、顧客の宛先を印字したヤマト運輸のラベルを貼り付ける作業を行った(乙15)旨を主張するが、その作業の実施や作業日時等を裏付ける証拠の提出はない。
(エ)「ヤマト運輸株式会社」の「請求明細書」には、「越前村」は、「クロネコDM便」(2020年6月13日受付)を、「963」個、「454」個、「545」個(計1,962個)発送していることが記載されている(乙9)。
ウ 被請求人は、お中元用及びお歳暮用として位置づけられる本件使用商品は販売価格が高くほとんど売れないとしながら、2020年7月17日受付の「ゼロ米の注文承り書」(ZERO米、2個、計8,200円。「新米出来しだいお送りお願い致します」。乙12)があったため、2020年11月30日付け「領収書」(8,200円)を渡している(乙13)旨を主張するが、当該注文に対する本件使用商品の発送の事実や発送日等を裏付ける証拠の提出はない。
エ 「出荷証明書」(2020年10月10日付け)には、福井県越前町所在のN氏によって、「ゼロ米用『こしひかり』」、「100kg」が出荷され、2020年9月10日に「越前村」に納入されたことを証明する旨の記載がある(乙4)。
オ 被請求人は、本件使用商品に係る「ゼロ米の収容袋」は、ホームセンターで販売しているものを購入し、「ゼロ米」専用のシールを貼付けたものである(乙1、乙14)旨を主張するが、当該袋が請求人商品の販売に際して実際に使用された事実や製造日等を示す証拠の提出はない。
(3)判断
ア 本件商標の通常使用権者について
本件商標権者とT氏は、それぞれがK社の役員(取締役、代表取締役)という業務上の関連性がある中で、同社の通信販売事業に係る「越前村」に、本件商標に相当する「ゼロ米」の使用を認める旨を合意している。
請求人は、「登録商標権使用権利書」(乙2)は、商標登録番号や指定商品の記載もなく簡素すぎて信ぴょう性に欠ける旨を主張するが、記載内容が簡素であっても、上記のような業務上の関連性のある当事者間における合意であることに鑑みると、合意内容に特段不自然なところはなく、また、当該合意の存在を否定する客観的な証拠もないから、その記載内容は全く信用できないものではない。
そうすると、T氏は本件商標の通常使用権者であると認めることができ、K社及びT氏のいずれもが経営に関与する「越前村」による本件商標についての使用行為は、本件商標の通常使用権者によるものと評価して差し支えない。
イ 「越前村」の要証期間における本件商標の使用について
(ア)「越前村」は、K社の通信販売事業(カタログ通販、インターネット通販を含む。)を行う店舗(日常的に「ヤマト運輸株式会社」のサービスを利用している。)であって、要証期間である2020年6月13日に、何らかの書類を同封した「クロネコDM便」を計1,962個発送しているところ、その2日前(6月11日)に「夏の越前村便り」(乙7)のカタログが「越前村」に2,000部納品されている状況に鑑みると、当該カタログ(本件使用商品の掲載はない。)が同封されていた可能性が高いことは伺えるが、その他に、本件商標を付した書類(広告)が同梱されていたことを客観的に証明できる証拠は提出されていない。
そのため、被請求人提出の証拠からは、本件商標を付した広告が要証期間に頒布された事実を認めることはできない。
(イ)被請求人は、本件商標を表示した「ゼロ米のパンフレット」(乙1)を上記クロネコDM便に同梱して発送した旨を主張するが、当該パンフレットの印刷日及び印刷部数等も明らかではないばかりか、漠然とした作業手順を示す証拠はあっても、その同梱作業の実施や作業日時等を裏付ける客観的な証拠は提出していない。
(ウ)被請求人は、証拠(「ゼロ米の注文承り書」(乙12)、「領収書」(乙13)、「ゼロ米の収容袋」(乙14))を提出し、本件使用商品に係る取引(2020年7月17日注文、同年11月30日入金)があった旨を主張するが、当該取引に係る商品の在庫(当該袋に入れたもの)の存在や、発送日等の商品の発送の事実を裏付ける証拠は提出していない(被請求人は、日常的に「ヤマト運輸株式会社」のサービスを利用しながら、当該取引に関しては乙第9号証のような「請求明細書」を提出していない。)。
また、上記取引は、商品の発送日が明確ではないが、証拠(乙1、乙4)によれば、本件使用商品の原料米の納入日は2020年9月10日、配送予定が10月中旬頃とされ、上記注文書には早期発送を促す旨の記載があること、そして包装も簡易なものであることに鑑みると、原料米入荷からほどなく出荷するのが自然であるところ、その入金日(同年11月30日)は当該取引のものとしては時期が離れている印象もあるから、注文書と領収書に示された金額と日付が一致するとしても、商品発送の事実やその発送日を示す肝心の証拠が欠けていることも併せ鑑みると、上記取引とこれら証拠のつながりを直ちに認めることはできない。
さらに、被請求人の主張や証拠は、経緯を時系列順にみると、整合性を欠くような矛盾点や不自然な点もある(2017年時点でほとんど売れないことが分かっていた本件使用商品について、2020年の「夏の越前村だより」(乙7)への掲載を見送りながら、独立した「ゼロ米のパンフレット」(乙1)を作成。高値の贈答品でありながら、市販の米袋にラベルシールを貼り付けただけの簡素な「ゼロ米の収容袋」(乙14)の使用。)もので、これらの点に関する被請求人からの補足説明(商品説明が不十分であるとの顧客からの要望を受けて。専用の収納袋を制作するとコストが非常に高くつくため。)も、これら経緯から生じる疑念を払拭するに十分ではない。
ウ 以上を踏まえると、被請求人提出の証拠は、本件商標の通常使用権者であるT氏が運営する「越前村」が、本件商標を付した本件使用商品に関する広告を、要証期間に、展示又は頒布した事実を認めるに足りない。
その他、被請求人からは、本件商標の商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間に、本件商標をその指定商品について使用したことを認めるに足りる証拠の提出はない。
(4)結論
上記のとおり、被請求人は、その提出証拠によって、要証期間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その指定商品について、本件商標を使用していることを証明したということができない。
また、被請求人は、本件指定商品について、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。 (この書面において著作物の複製をしている場合のご注意) 特許庁は、著作権法第42条第2項第1号(裁判手続等における複製)の規定により著作物の複製をしています。取扱いにあたっては、著作権侵害とならないよう十分にご注意ください。
審理終結日 2021-11-09 
結審通知日 2021-11-12 
審決日 2021-11-24 
出願番号 1998069036 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z30)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 鈴木 雅也
阿曾 裕樹
登録日 1999-12-17 
登録番号 4344083 
商標の称呼 ゼロマイ、ゼロゴメ、ゼロ 
代理人 宗助 智左子 
代理人 平崎 彦治 
代理人 田中 景子 
代理人 松井 宏記 

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