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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X21
管理番号 1380082 
審判番号 取消2019-300063 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-12-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-01-24 
確定日 2021-11-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第5220362号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5220362号商標の指定商品中、第21類「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5220362号商標(以下「本件商標」という。)は、「結」の文字を標準文字で表してなり、平成20年(2008年)7月31日に登録出願、第21類「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」を含む商標登録原簿に記載の第21類に属する商品を指定商品として、同21年(2009年)4月3日に設定登録されたものである。
なお、本件審判請求の登録は、平成31年(2019年)2月5日にされたものであり、この登録前3年以内の期間(平成28年(2016年)2月5日?平成31年(2019年)2月4日)を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、平成31年(2019年)3月29日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する令和元年(2019年)5月16日付け取消審判弁駁書(以下「弁駁書」という。)を提出し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、請求書により甲第1号証ないし甲第4号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、本件商標の指定商品中の「金属製真空二重カップ,金属製真空二重容器,その他の食器類」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について使用された事実が認められないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 弁駁書の要旨
(1)チタン真空二重タンブラー(以下「タンブラー」という。)の本件商標の使用について
被請求人は、タンブラーに対する本件商標の使用に関しては、証拠として乙第4号証の添付資料A及び添付資料Bを提示し、いずれもタンブラーの底の外面側に本件商標が刻印されていると主張している。
しかしながら、タンブラーの底の外面側にチタン金属地模様に重なって刻印されている「結/Yui」の文字は明確に判読することができない。
被請求人は、この商標の使用態様を気にして、使用商標としてタンブラーの底外面に刻印された「結/Yui」の実際の使用商標を、ことさら、赤でなぞり、当該「結/Yui」の文字のみを恣意的に抜き出したものを別紙1及び別紙2として添付したものと思料する。
そもそも商標は、商品の識別標識として取引者・需要者が商品を購入するときの目印となり、まさに商品の顔として機能するものであるから、商標のかかる機能を発揮するためには、商標は商品に明確に表示されてしかるべきである。
それにもかかわらず、地模様と重なり判別できない状態で商標を刻印し、これが本件商標の使用であるとの主張は、商標の本来発揮すべきである機能をないがしろにし、ひいては商品購入の手がかりとして商標の識別表示をたよりにして商品を購入する取引者・需要者の利益を顧みない商標の使用態様といわざるを得ない。
陶磁器などの器ものについては、作者名などを器の底の下面に表示することは古来よりなされてきたことは否定しないが、工業製品として多量に製造されるタンブラーでは、需要者の利益保護の見地から商標を表示してある紙箱や木箱にタンブラーを収容して当該箱にはさらにタンブラーの説明書を添え、かつ、識別標識である商標を明確に表示するのが、むしろ自然で一般的な商取引である。
本件商標を使用している事実証明において、パンフレットやカタログ類の証拠が何ら示されていないことはもちろん、商標表示の対象でもあるタンブラーを収容するための紙箱や木箱、あるいはタンブラーの説明書なども証拠として提示されていない。
したがって、本件商標の使用態様がタンブラーの底外面側という需要者の目に付き難い箇所であり、しかもその商標表示が、不明確であることとも相まって、本件商標をタンブラーに使用しているとの被請求人の主張は、商標の機能を市場において発揮するには、不十分であるといわざるを得ず、本件商標はタンブラーに使用しているとはいえない。
(2)OEM商品について
本件商標「結」の使用について、株式会社恒成(以下「恒成社」という。)から黙示の使用許諾を得ている株式会社セブン・セブン(以下「セブン・セブン社」という。)の取締役営業本部長のS氏は乙第5号証において、「タンブラー『結』はOEM商品であるため、リーフレット類の作成はしていませんでした。なお、タンブラー『結』は上記のとおりOEM商品ですが、有限会社ケイエムアイコーポレーション様から製品仕様の変更指示は取引当初から終了まで一度もありませんでした。」と陳述している。
つまり、今回のケースは、納入先である有限会社ケイエムアイコーポレーション(委託者)(以下「ケイエムアイ社」という。)の商標名で受託者であるセブン・セブン社がタンブラーを受託製造することである。
しかしながら、OEM商品と明言しながら受託者は、当該製品であるタンブラーに委託者の商標と何のかかわりのない受託者の商標「結」を付しており、通常のOEM商品ではありえない商標の使用をしている。
しかも、OEM商品であることが、本件商標を表示した商品のリーフレットを作成していない理由にもなっている。
以上の事情を勘案すれば、OEM商品であるにもかかわらず、本件商標「結」を付した商標の使用には疑義を呈さざるを得ない。
(3)まとめ
以上のとおり、タンブラーに本件商標「結」を使用しているとはいえない。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書、令和3年(2021年)5月7日付け審尋(以下「審尋」という。)に対する同年6月11日付け回答書(以下「回答書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書において、別紙1及び別紙2並びに乙第1号証ないし乙第12号証を、回答書において、乙第13号証及び乙第14号証を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
恒成社は、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について、要証期間に使用している。
(1)本件商標の権利者について
本件商標の権利者は、当初、株式会社カナエ(以下「カナエ社」という。)であったが、平成23年(2011年)6月8日に名称変更して株式会社恒成プロダクツ(以下「恒成プロダクツ社」という。)となり、その後の平成29年(2017年)10月1日に現在の商標権者である恒成社(代表取締役S氏)が吸収合併した(甲4)。
したがって、本件商標の現在の権利者は、恒成社である(甲1の1)。
(2)本件商標の使用者について
ア チタンを使用した製品の開発を目的として、平成19年(2007年)3月28日にカナエ社が設立された。このカナエ社は、恒成社が100%出資した株式会社である(乙2、乙3)。この設立の際、製品の製造は、セブン・セブン社が担当することになっていた(乙3)。
イ 恒成プロダクツ社は、平成26年(2014年)7月の時点で、セブン・セブン社の株式を66%所有していたが、同27年(2015年)8月には恒成プロダクツ社はセブン・セブン社の株式を100%取得し、その後、同29年(2017年)10月1日、恒成社は恒成プロダクツ社を吸収合併し、100%子会社とした(乙1?乙3)。
なお、平成26年(2014年)7月の時点で、恒成プロダクツ社の代表取締役社長はS氏であり、同時期にセブン・セブン社の代表取締役社長もS氏である(乙1、乙2)。
ウ 以上の事実から、恒成社(甲4の2)、恒成プロダクツ社(甲4の1)及びセブン・セブン社(乙1)は代表取締役を同じくする、いわゆるグループ会社であり、したがって、本件商標「結」の使用に関し、恒成プロダクツ社(現在恒成社)は、当時、セブン・セブン社に対し、黙示の使用許諾を与え、現在まで使用許諾は継続しているといえる。
(3)使用商標について
ア セブン・セブン社は、商標「結/Yui」(以下「使用商標」という。)をタンブラーの底に刻印した商品(以下「本件商品」という。)を現在、製造してはいないが、平成26年(2014年)7月8日から同28年(2016年)12月21日まで製造販売していた(乙4、乙5)。
イ なお、別紙1は、本件商品の底に刻印された使用商標を赤でなぞったもの(別掲1)、別紙2は、当該「結/Yui」の文字のみを抜き出したもの(別掲2)である。別紙1及び別紙2により使用商標は、漢字「結」(漢字「結」であることは議論の余地はない。)と欧文字「Yui」が表示されたものと特定される。
ウ セブン・セブン社はケイエムアイ社に納品する本件商品を、平成26年(2014年)7月8日から製造開始したが、同28年(2016年)12月21日をもって本件商品の製造販売を中止した。
エ 本件商品が平成26年(2014年)7月8日から同28年(2016年)12月21日まで製造販売されていた事実は、次の点を参酌しても疑う余地がない。
乙第6号証は、アマゾンのネット販売サイトに掲載された本件商品であり、1頁目の下側に「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/7/18」、また、3頁目のカスタマーレビューには「2016年12月6日Amazonで購入」と記載されている。
乙第7号証も乙第6号証同様、アマゾンのネット販売サイトに掲載された本件商品であり、1頁目の一番下に「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/7/18」と記載されている。
すなわち、平成26年(2014年)7月18日と記載され、3頁目のカスタマーレビューに「2015年10月24日Amazonで購入」及び「2015年10月28日」の書き込みもある。
また、乙第8号証は、個人のブログであるが、本件商品が記載されている。
したがって、乙第8号証から、本件商品の存在は疑う余地がなく、乙第6号証及び乙第7号証からセブン・セブン社から流出して本件商品が平成26年(2014年)7月18日からネット販売されていた事実は明らかである。
オ 以上、平成26年(2014年)7月8日から同28年(2016年)12月21日まで別掲1及び別掲2で特定される商標がタンブラーに使用されていたことは明らかである。
カ ちなみに、上述のとおり、被請求人である恒成社は、別掲1及び別掲2で特定される商標を本件商品に付してケイエムアイ社に販売していたが、ケイエムアイ社では本件商品は当然、「ユイ」と呼ばれ、また、ケイエムアイ社の販売先である株式会社ホームショッピングにおいても本件商品は「ユイ」と呼ばれていた(乙4)。
すなわち、本件商品は別掲1及び別掲2で特定される商標が付されているので、下流においては「ユイ」と呼ばれて取引されており、この点はネットの記事(乙6?乙8)からも明らかといえる。
(4)本件商標と使用商標との同一性
ア 商標法第50条第1項は「登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)」と規定しており、使用商標は、登録商標と社会通念上同一と認められる商標も含むとされている。
同規定は、通常の取引社会においては、常に登録商標と同一のものを使用するのではなく、登録商標を付ける商品・役務の性質等に応じて、これに適宜変更を加えて使用するのが一般的であるという実務上の要請に即したものである。
イ そこで、本件商標と別掲1及び別掲2で特定される商標が社会通念上同一か否かについて以下に詳述する。
まず、別掲1及び別掲2で特定される商標をどのように認定するかが問題である。
(ア)第1の認定
別掲1及び別掲2で特定される商標の漢字部分と欧文字部分とは一体ではなく、漢字部分に単に欧文字部分が付加されているにすぎない。
つまり、別掲1及び別掲2で特定される商標は漢字の商標「結」と欧文字の商標「Yui」の二つの商標であり、この二つの商標が本件商品の底に刻印されていると認定する。
(イ)第2の見解
別掲1及び別掲2で特定される商標の漢字部分と欧文字分は一体である。
つまり、別掲1及び別掲2で特定される商標はあくまで一つの商標であり、この一つの商標が本件商品の底に刻印されていると認定する。
(ウ)第1の認定に基づく考察
漢字部分と欧文字部分は一体と見る必然性はない。両者は漢字同士、欧文字同士などではなく、よって、両者を一体とみる必然性はなく、また、両者が外観上まとまっているなど、一体とみなければならない特段の事情もない。
してみると、別掲1及び別掲2で特定される商標は、本件商標と同一性が明らかな漢字の商標「結」と、漢字の商標「結」に欧文字の商標「Yui」がもう一つ表示されていると認定できる。
したがって、別掲1及び別掲2で特定される商標は、漢字の商標「結」の部分において本件商標に対し同一性を満たすことは明らかである。
(エ)第2の見解に基づく考察
別掲1及び別掲2で特定される商標は漢字部分と欧文字部分とが一体となった一つの商標である。
ここで、登録商標と使用商標とが社会通念も同一か否かは、両者の識別力を発揮する部分が同一か否かにより判断するということは通説・判例である。
これを前提に本件商標と別掲1及び別掲2で特定される商標との同一性について考察すると、別掲1及び別掲2で特定される商標の構成部分である漢字部分は前述のとおり、明らかに「結」であり、本件商標との同一性は疑う余地はない。
もう一つの構成部分の欧文字部分「Yui」をどのように評価すべきかについては、別掲1及び別掲2で特定される商標の識別力を発揮する部分はどこかにより決まる。
そこで、別掲1及び別掲2で特定される商標を考察すると、漢字部分「結」の称呼は「ユイ」であることから、この欧文字部分「Yui」は漢字部分「結」の称呼を特定している部分といえる。
してみると、別掲1及び別掲2で特定される商標の識別力は、称呼を「ユイ」に特定した漢字部分「結」において発揮されるといわざるを得ない。
欧文字部分「Yui」は漢字部分「結」の称呼を特定しているだけであって、この「結」に「Yui」を併記しても、「Yui」がない漢字「結」のみの場合と観念を異にするものではなく、称呼が特定されただけで識別機能に変化は生じないといえる。
よって、本件商標と別掲1及び別掲2で特定される商標とは、識別力は同一といえ、両者は社会通念上同一といえる。
(オ)まとめ
以上、別掲1及び別掲2で特定される商標について第1の認定及び第2の見解、いずれに立脚しても別掲1及び別掲2で特定される商標により本件商標は「使用」されているといえる。
なお、審決例(乙9?乙12)に示すとおり、社会通念上の同一性を識別力により判断した審決は多数ある。
2 回答書による主張の要旨
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、令和3年5月7日付けで、合議体の暫定的見解を示し、被請求人が答弁書で提出した乙各号証によっては、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを証明しているものとはいえない旨の審尋を送付し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)回答書による主張の要旨
ア 審尋による「要証期間満了日(平成31年(2019年)2月5日)の1月前までの商標権者は、カナエ社であって、平成27年(2015年)10月1日以降、本件商標の商標権者が、現在の商標権者であるかのような被請求人の主張は、認めることはできない。」旨の合議体の見解について
要証期間の満了日(平成31年(2019年)2月5日)の1月前までの商標権者が「株式会社カナエ」であることは指摘のとおりであり、セブン・セブン社に使用許諾したのは、法律上は恒成社ではなく、カナエ社(名称変更後は株式会社恒成プロダクツ。以下、同様。)となる。
この点は、カナエ社は恒成社の100%出資の子会社であり、代表取締役はともにS氏で共通していることから、現実的には、恒成社の意思とカナエ社の意思は等しくなる。
さらに、平成27年(2015年)8月の時点では、セブン・セブン社もカナエ社の100%出資の子会社であり、カナエ社は開発・研究部門、セブン・セブン社を製造部門、恒成社は材料供給部門であり(乙3)、このことから、この3社の知的財産は、必要であれば相互に実施許諾若しくは使用許諾しており、当然、カナエ社は、セブン・セブン社に本件商標の使用を認めている(乙13、乙14)。
また、カナエ社、恒成社、セブン・セブン社の3社には以上の関係があるから、セブン・セブン社がケイエムアイ社に本件商品を販売することに関し、当然、カナエ社及び恒成社のコントロールが働いていることになる(乙13、乙14)。
したがって、セブン・セブン社がケイエムアイ社に本件商品を販売する取引において、カナエ社はセブン・セブン社に本件商標の使用を当然、認めていた(乙13、乙14)。
イ タンブラーの底の外面側にチタン金属地模様に重なって刻印されている「結/Yui」の文字は明確に判読することができない旨の請求人の主張について
請求人が主張するように本件商品に付された本件商標は見にくいことは認める。本件商標が見にくいため、使用商標を答弁書の別紙として提出し、審理し易いように赤でなぞったものである。
ウ 商標は商品に明確に表示されてしかるべき旨の請求人の主張について
商標は目立つ必要はなく、製品の形態や機能だけで十分出所表示となる場合もあり、さらに商標は目立たない方が良いという考えの商品提供者も現実には存在する。
エ 陶磁器などの器ものについては、作者名などを器の底の下面に表示することは古来よりなされてきたことは否定しないが、工業製品として多量に製造されるタンブラーでは、需要者の利益保護の見地から商標を表示してある紙箱や木箱にタンブラーを収容して当該箱にはさらにタンブラーの説明書を添え、かつ、識別標識である商標を明確に表示するのが、むしろ自然で一般的な商取引である旨の請求人の主張について
かかる主張は、請求人の主観的主張にすぎない。
オ 本件商標をタンブラーに使用しているとの被請求人の主張は、商標の機能を市場において発揮するには、不十分であるといわざるを得ず、本件商標はタンブラーに使用しているとはいえない旨の請求人の主張について
本件商品には本件商標が出所表示機能を発揮する態様で使用されていることは明らかである。
カ OEM商品と明言しながら受託者は、当該製品であるタンブラーに委託者の商標と何のかかわりのない受託者の商標「結」を付しており、通常のOEM商品ではありえない商標の使用をし、しかも、OEM商品であることが、本件商標を表示した商品のリーフレットを作成していない理由にもなっているという事情を勘案すれば、OEM商品であるにもかかわらず、本件商標「結」を付した商標の使用には疑義を呈さざるを得ない旨の請求人の主張について
OEM商品とは、一般的には、請求人が主張するように、受託者の商標を付さずに委託者に供給するものであることは、そのとおりである。
ただし、セブン・セブン社では本件商品はケイエムアイ社にしか販売していない製品である。
よって、セブン・セブン社の中では、本件商品は「OEM製品扱い」という意味合いである。
いずれにせよ、本件商品は、委託者(ケイエムアイ社)の了解の下で商標「結/Yui」が付されたものである(乙4、乙5)。
したがって、要証期間において本件商標が付された使用商品がセブン・セブン社からケイエムアイ社に販売されていた事実は各乙号証から明白である。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 要証期間に、イ 日本国内において、ウ 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、エ 本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人が提出した乙各号証によれば、以下のとおりである。
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、新潟地方法務局3条支部の登記官が、平成31年(2019年)3月1日に発行したセブン・セブン社の履歴事項全部証明書であり、本号証の1葉目の「履歴事項全部証明書」の標題の下に、「新潟県燕市花見300番地」の記載、その下に「株式会社セブン・セブン」の記載、本号証の2葉目の「役員に関する事項」の欄の最初の「代表取締役」の横に、S氏の記載、その横に「平成26年12月1日重任」及び「平成27年1月20日登記」の記載、2番目の「代表取締役」の横に、S氏の記載、その横に、「平成28年11月18日重任」及び「平成28年12月5日登記」の記載、3番目の「代表取締役」の横に、S氏の記載、その横に「平成30年11月19日重任」及び「平成30年12月20日登記」の記載、本号証の3葉目の「役員に関する事項」の欄の4番目の「代表取締役」の横に、K氏の記載、その横に「平成29年10月1日就任」及び「平成29年10月10日登記」の記載、5番目の「代表取締役」の横に、K氏の記載、その横に「平成30年11月19日重任」及び「平成30年12月20日登記」の記載がある。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、税理士法人SANOの税理士S氏が平成31年(2019年)3月31日に作成した陳述書であり、本号証により、添付資料1ないし添付資料6(数字「1」ないし「6」は丸付き数字である。以下同じ。)が提出されている。
本号証の1頁の上に「陳述書」の標題の記載、「2 株式会社セブン・セブン、株式会社恒成プロダクツ(当初は株式会社カナエ 新潟県燕市花見217番地3所在)、および恒成株式会社(新潟県燕市小池4929番地所在)、各社の株主は添付書類に記載のとおりです。」の記載、「添付資料1」の右横に「恒成株式会社は株式会社カナエ・・・の100%出資の親会社であることを示す書面」の記載、「添付資料2」の右横に「株式会社恒成プロダクツが2014年(平成26年)7月の時点で株式会社セブン・セブンの株式を66%所有していたことを示す書面」の記載、「添付資料3」の右横に「株式会社恒成プロダクツが2015年(平成27年)8月の時点で株式会社セブン・セブンの株式を100%所有していたことを示す書面」の記載、「添付資料4」の右横に「恒成株式会社が株式会社恒成プロダクツを2017年(平成29年)10月1日、吸収合併し解散したことを示す書面」の記載がある。
また、本号証の2頁の文中に「添付資料5 株式会社セブン・セブンの2012年(平成24年)11月26日の定時株主総会議事録」の記載、「添付資料6 株式会社織田島器物製作所の2001年(平成13年)8月20日の取締役会議事録」の記載がある。
(3)乙第3号証について
乙第3号証は、恒成社の代表取締役が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書であり、本号証の1頁に「私は、恒成グループの発展のため、株式会社恒成プロダクツがチタンを用いた新製品の開発・研究を行い、その開発・研究に基づいて株式会社セブン・セブンが製品の製造を行い、その製造に際して材料を恒成株式会社から仕入れるというサイクルを想定していました。2014年(平成26年)7月から2016年(平成28年)12月まで製造したチタン真空二重タンブラー『結』(底に『結/Yui』と刻印された製品)も、このサイクルにのった製品の1つであり、当然、株式会社恒成プロダクツ(当時の代表取締役社長は私)は、株式会社セブン・セブン(当時の代表取締役社長は私)に対し、本件登録商標第5220362号『結』の使用を認めていましたし、株式会社セブン・セブンも本件登録商標第5220362号『結』を株式会社恒成プロダクツから借りているという認識を有していました。」の記載がある。
(4)乙第4号証について
乙第4号証は、ケイエムアイ社の代表取締役K氏が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書であり、本号証により、添付資料Aの1/2、添付資料Aの2/2、添付資料Bの1/2、添付資料Bの2/2、添付資料Cの1/3ないし添付資料Cの3/3が提出されている。
本号証の1頁に、「添付資料A、Bの写真に写っているタンブラー(以下、「本製品」といいます。)は、2014年7月8日から2016年12月21日まで当社が株式会社セブン・セブン様(新潟県燕市花見300番地所在)から仕入れて販売していた商品に間違いありません。」の記載、「当社は2001年頃より株式会社セブン・セブン様と取引が始まり、種々の製品、例えば携帯用魔法瓶(ビッグセブン広ロタイプ)やステンレス製ボウルなどを購入させていただいておりました。その購入製品の中の1つに本製品があり、2014年7月に購入を開始しました。ところが、株式会社セブン・セブン様から2017年2月に今後本製品の販売を中止する旨のお話を突然いただき、本製品はそれなりに売れていた商品であったため当社からは突然の中止は困るので中止はしないで欲しい旨を何回か株式会社セブン・セブン様・・・にお願いしたのですが、本製品の取引は継続せず、結果的に2016年12月21日の購入が本製品の最後の仕入れとなりました。実は、株式会社セブン・セブン様から、当社及び当社の販売先である株式会社ホームショッピング様(北海道札幌市東区北47条7丁目1番40号所在)へ突然の製品販売中止にともなう迷惑料(解決金)をお支払いいただきました。添付資料Cをご高覧下さい。添付資料Cは私が株式会社セブン・セブン様へ迷惑料(解決金)の件で送付したお手紙であり、当社の販売実績(添付資料Cの2/3)、株式会社ホームショッピング様の販売実績(添付資料Cの3/3)をこのお手紙とともに送付しました。なお、添付資料Cの2/3及びCの3/3の2016年の売り上げ等は、上記迷惑料(解決金)を算出する際にベースとなりました。」の記載がある。
また、添付資料Aの1/2及び添付資料Bの1/2は、木箱に入ったタンブラーの写真であり、添付資料Aの2/2及び添付資料Bの2/2は、タンブラーの底の写真であり、タンブラーの底に不鮮明ではあるものの、行書体風の「結」の漢字及び「Yui」の欧文字が刻印されていることが確認できる。
ただし、これらの写真のタンブラーは、品番の記載がない。
また、当該写真の撮影日は明らかではないため、要証期間に写真掲載の商品が存在したことは確認することができない。
添付資料Cの1/3は、ケイエムアイ社が、平成29年(2017年)1月20日に、セブン・セブン社のS氏に宛てた書類の写しと思しきものであり、本添付資料には、「チタン YUI-350 と YUI-270 の生産(販売中止)のお話があり、弊社(有)ケイエムアイコーポレーションと弊社お客様の昨年 1年分の(自 2016年1月1日から至12月31日)純利益の3年間保証の件です。」の記載があるが、本添付資料に本件商標の記載はない。
添付資料Cの2/3は、2017年1月20日に、ケイエムアイ社のK氏が作成した「2016年1月?2017年12月31日迄 YUI-350/ YUI?270 仕入れ実績」の題目の書類であり、本添付資料の記載内容を見ると、2016年1月5日から同年12月21日の間、品番「YUI-350」の商品を累計170個、2016年1月5日から同年12月2日の間、品番「YUI?270」の商品を累計187個仕入れた旨が記載されているが、添付資料A及び添付資料Bのタンブラーの写真には、品番の記載がないため、これらが、品番「YUI-350」及び品番「YUI-270」の商品と認めることはできない。
また、本添付資料には、仕入れ元の記載はなく、さらに、ケイアイエム社が仕入れ先宛てに発行したことを証明する商品受領証等の書類は提出されていないため、品番「YUI-350」と思しき商品及び品番「YUI-270」と思しき商品が実際に取引されたことは確認することができない。
添付資料Cの3/3は、表中の「商品名」の欄に「YUI-350 結 チタン真空2重タンブラー350 桐箱入」等の記載や「札幌市 株式会社 ホームショッピング」の記載はあるものの、この本添付資料の作成者や作成日の記載がないため、誰がいつ作成した資料であるかが確認することができない。
(5)乙第5号証について
乙第5号証は、セブン・セブン社の取締役営業本部長のS氏が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書であり、本号証により、添付資料1ないし添付資料8(枝番号を含む。)(数字「1」ないし「8」は、丸付き数字である。以下同じ。)が提出されている。
本号証の1頁に、「添付資料1、2は、当社製造に係る有限会社ケイエムアイコーポレーション様(新潟県燕市横田12868番地所在)へのOEM商品であった『チタン真空二重タンブラー『結』(YUI)』の包装仕様を当社関係部署に周知するために、2014年10月17日に社内で配布したものです。このタンブラー『結』は、添付資料1、2のような包装仕様で2014年7月8日から2016年12月21日まで有限会社ケイエムアイコーポレーション様へ販売されました。また、このタンブラー『結』は、サイズが2種類あり、添付資料1が容量270ml、添付資料2が容量350mlです。なお、添付資料3、4は当社に残っていた添付資料1および添付資料2のタンブラー『結』を2019年2月7日に当社の品質管理部の者が撮影した写真です。」の記載がある。
また、添付資料1及び添付資料2は、セブン・セブン社が作成したと思しき書類であり、これらの添付資料には、「2014/10/17」の記載、「包装仕様 KMI 結シリーズ」の記載があり、その下にタンブラーの写真が掲載され、これらの添付資料において、赤色の矢印を有する赤丸中に「本体刻印」、行書体風の「結」及び「YUI」の欧文字を三段に書し、矢印はタンブラーの底を示している。
なお、被請求人は、タンブラーの底に記された刻印は、行書体風の「結」の下に「Yui」の欧文字である旨を主張するが、本添付資料に記載されたタンブラーの刻印の記載は、「YUI」であり、相違していることが確認できる。
また、本添付資料の商品「タンブラー」は「KMI 結シリーズ」との記載はあるが、品番の記載はない。
加えて、これらの添付資料の作成日である平成26年(2014年)10月17日は、要証期間外である。
添付資料3ないし添付資料5は、乙第4号証で提出された添付資料Aないし添付資料Cと同じものであり、上記(4)で記載したとおりの疑義がある。
添付資料6は、セブン・セブン社が、ケイエムアイ社宛てに、平成26年(2014年)7月31日締切分として作成した請求書であり、本添付資料の表中「年月日」の欄の下、5行目に「14/07/08」の記載、「商品名」の欄の下、5行目に「YUI-270 木箱入」の記載、6行目に「YUI-350 木箱入」の記載があるが、平成26年(2014年)7月は、要証期間外であり、商品名「YUI-270」の商品及び商品名「YUI-350」の商品に、本件商標が使用されていたことは確認することができない。
また、ケイエムアイ社が、「YUI?270」を受領したことを証明する、ケイエムアイ社発行の商品受領書等は提出されていない。
添付資料7は、セブン・セブン社が、ケイエムアイ社宛てに、平成28年(2016年)12月29日締切分として作成した請求書であり、本添付資料の表中「年月日」の欄の下、6行目に「16/12/21」の記載、「商品名」の欄の下、6行目に「YUI-350 木箱入」の記載があり、平成28年(2016年)12月は、要証期間であるが、商品名「YUI?350」の商品に、本件商標が使用されていたことは確認することができない。
また、ケイエムアイ社が、「YUI?350」を受領したことを証明するケイエムアイ社発行の商品受領書等は提出されていない。
添付資料8は、カナエ社又はセブン・セブン社が作成したと思しきチタン真空二重タンブラーのリーフレットであるが、本添付資料の作成日は明らかではなく、また本リーフレットには、品番「YUI-250」及び品番「YUI?350」の商品は掲載されていない。
さらに、本リーフレットに掲載された商品「チタン真空二重タンブラー」に本件商標が使用されていることは確認することができない。
(6)乙第6号証について
乙第6号証は、平成31年(2019年)3月13日が印刷日であるAmazon.co.jp(以下「アマゾン」という。)のECサイトの画面の写しであり、本号証の1頁に「日本製 セブン・セブン 真空二重タンブラー 結 YUI-270 桐箱入り」の記載、「現在在庫切れです。」の記載、「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/7/18」の記載、本号証の2頁に6枚の商品の写真が掲載され、本号証の3頁に2016年12月6日 Amazonで購入」の記載がある。
なお、本号証の2頁の商品の写真を確認しても、商品又は商品の包装に本件商標は記載されていない。
また、アマゾンに「日本製 セブン・セブン 真空二重タンブラー 結 YUI-270 桐箱入り」の情報を掲載した者は特定できないため、セブン・セブン社が、品番「YUI-270」の商品の販売を目的として自ら宣伝広告を行ったことは確認するがことができない。
(7)乙第7号証について
乙第7号証は、平成31年(2019年)3月13日が印刷日であるアマゾンのECサイトの画面の写しであり、本号証の1頁に「セブン・セブン 真空二重タンブラー 結 YUI-350 桐箱入り」の記載、「現在在庫切れです。」の記載、「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日:2014/7/18」の記載、本号証の2頁に6枚の商品の写真が掲載され、本号証の3頁に2015年10月24日 Amazonで購入」の記載、「2015年10月28日 Amazonで購入」の記載がある。
なお、本号証の2頁の商品の写真を確認しても、商品又は商品の包装に本件商標は記載されていない。
また、アマゾンに「セブン・セブン 真空二重タンブラー 結 YUI-350 桐箱入り」の情報を掲載した者は特定できないため、セブン・セブン社が、品番「YUI-350」の商品の販売を目的として自ら宣伝広告を行ったことは確認するがことができない。
(8)乙第8号証について
乙第8号証は、平成31年(2019年)3月18日が印刷日であるアメーバブログにおける「ニッポンの出番【真空チタンカップ結YUI-350】」のタイトルのブログ掲載記事画面の写しであるが、この情報の掲載者が明らかではなく、かつ、当該ブログにおいて、「真空チタンカップ結YUI-350」を販売している事実も確認できない。
また、本号証において、「真空チタンカップ結YUI-350」又はその包装に本件商標は記載されていない。
(9)乙第9号証ないし乙第12号証について
乙第9号証は、取消2005-30371号の審決公報の写しであり、乙第10号証は、取消2014-300507号の審決公報の写しであり、乙第11号証は、取消2014-300379号の審決公報の写しであり、乙第12号証は、取消2014?301026号の審決公報の写しである。
(10)乙第13号証について
乙第13号証は、セブン・セブン社の代表取締役S氏と恒成プロダクツの代表取締役社長S氏が、平成26年(2014年)5月1日に作成した業務委託契約書であり、本号証の「業務委託契約書」の標題の下に「株式会社セブン・セブン(以下甲という)と株式会社恒成プロダクツ(以下乙という)は、以下の通り業務委託契約を締結する。」の記載、「第1条 甲は乙に対し、次条に定める業務を委託し乙はこれを受託した。」の記載、「第2条 本契約に基づく委託業務の範囲は次の通りとし詳細は別途協議の上行うものとする。」の記載、「1 甲の経営的な企画・開発などの支援をする」の記載、「2 販売促進活動のサポート」の記載、「第6条 契約期間は平成26年5月1日から平成27年5月31日までの1年とし、甲又は乙の申し出がないときは自動的に1年間更新され以後同様とする。」の記載、「平成26年5月1日」の記載があり、甲の氏名の横に「株式会社セブン・セブン」の記載及び「代表取締役 S」の記載、乙の氏名の横に「株式会社恒成プロダクツ」の記載及び「代表取締役社長 S」の記載がある。
なお、本号証には、本件商標の使用に関する記載はない。
(11)乙第14号証について
乙第14号証は、恒成社の代表取締役S氏が令和3年(2021年)5月18日に作成した陳述書である。
本号証には、「株式会社カナエ(後に株式会社恒成プロダクツに名称変更)、恒成株式会社、株式会社セブン・セブンの関係ですが、恒成株式会社は、まず、チタン製品開発のため平成19年(2007年)3月、株式会社カナ工を設立しました。当然、株式会社カナエが必要とする商標(たとえば、本件登録商標の他、登録商標第5136656号、登録商標第5154452号等)は株式会社カナエ名義で取得しました。その後、平成27年(2015年)8月、株式会社恒成プロダクツは株式会社セブン・セブンの株式会社100%を取得します。それは株式会社カナ工を開発・研究部門、株式会社セブン・セブンを製造部門、恒成株式会社を材料供給部門とし、グループ全体を効率良く運営するという目的のためです。したがいまして、株式会社カナエ、恒成株式会社(多数の知的財産を有しております。)、株式会社セブン・セブン(同様に多数の知的財産を有しております。)、それぞれが有する知的財産は、契約書などは作ってはいませんが、従前から相互に利用可能にしていました。これは、株式会社カナエ、恒成株式会社、株式会社セブン・セブンのグループ全体で利益を上げるための当然の前提といえます。」の記載がある。
3 判断
(1)本件商標の権利者について
商標登録原簿の記載によると、本件商標の商標権は、平成31年(2019年)1月4日付けで本件移転登録申請書が提出されたことにより、カナエ社から恒成社に移転されている。
なお、被請求人は、カナエ社は、平成23年(2011年)6月8日に名称変更して恒成プロダクツ社となり、その後の平成29年(2017年)10月1日に恒成社に吸収合併した旨を主張するが、商標登録原簿において、被請求人が主張する事実は確認することはできない。
また、被請求人は、カナエ社の名称変更や吸収合併(消滅)の事実がありながら、平成31年(2019年)1月4日までの間、本件移転申請登録申請書を提出しておらず、これを提出できない正当な理由があったことも証明していない。
そうすると、要証期間における平成28年(2016年)2月5日ないし平成31年(2019年)1月3日までの間の商標権者はカナエ社であり、同年1月4日ないし同年2月4日の商標権者は恒成社であると判断するのが相当である。
(2)本件商標の使用者について
セブン・セブン社の取締役営業本部長が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書(乙5)によると、セブン・セブン社は、同社の取り扱いに係る商品である「チタン真空二重タンブラー」を平成26年(2014年)7月頃から製造し、同社の製造する「チタン真空二重タンブラー」の一部の商品の底に行書体風の「結」の漢字とその下に「YUI」の文字を刻印したことは推認できるため、本件商標の使用者は、セブン・セブン社と判断することができる。
そして、税理士法人SANOの税理士S氏が平成31年3月31日に作成した陳述書(乙2)により提出された添付資料3(「3」は丸付き数字)によると、セブン・セブン社は、平成26年(2014年)10月1日から同27年(2015年)9月30日の間、恒成プロダクツ社の100%子会社であったことが推測できる。
しかしながら、上記(1)のとおり、商標登録原簿において、カナエ社が恒成プロダクツ社に変更されたことは確認することはできない。
そうすると、セブン・セブン社は、カナエ社から本件商標の使用を許諾されていた者であるとは認められない。
なお、乙第5号証の添付資料8として提出されたリーフレットには、カナエ社及びセブン・セブン社の記載があり、商品「チタン真空二重タンブラー」の写真が掲載されているが、当該リーフレットには、本件商標が使用された「チタン真空二重タンブラー」の掲載はなく、また、当該リーフレットに、作成日は記載されておらず、さらに、当該リーフレットが広く頒布されたことも確認することができない。
その他、恒成社が、本件商標を商品「チタン真空二重タンブラー」に使用していたことも認められないものである。
(3)使用商品について
カナエ社又はセブン・セブン社の取り扱い係る商品「チタン真空二重タンブラー」(以下「使用商品」という。)は、食器に該当する商品であると判断できるため、使用商品は、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品と認められる。
(4)使用標章について
ケイエムアイ社の代表取締役K氏が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書(乙4)にて提出された添付資料Aの2/2及び添付資料Bの2/2のタンブラーの外側の底面の写真、セブン・セブン社の取締役営業本部長のS氏が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書(乙5)にて提出された添付資料3の2/2及び添付資料4の2/2のタンブラーの外側の底面の写真を参照すると、タンブラーの外側の底面には、行書体風の「結」の漢字とその下に「Yui」の文字(以下「使用標章」という。)が刻印されていることが確認できる。
そして、使用標章は、その構成中に「結」の文字を有し、当該「結」の文字は行書体風に書されているとしても、「結」の漢字を記載したものであることが認識できることから、「結」の文字を標準文字で表した本件商標と使用商標の構成中の行書体風の「結」とは、外観が類似し、かつ、本件商標と使用商標は、いずれも「ユイ」の称呼を共通にすることから、本件商標と引用商標は、外観及び称呼が類似する社会通念上同一の商標であると判断できる。
ただし、当該写真の撮影日が明らかではないため、当該タンブラーが要証期間に存在していたことは確認することができない。
(5)使用時期について
ケイエムアイ社の代表取締役K氏が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書(乙4)にて提出された添付資料Cの2/3の2017年1月20日に、ケイエムアイ社のK氏が作成した「2016年1月?2017年12月31日迄 YUI-350/ YUI?270 仕入れ実績」の題目の書類及び、セブン・セブン社の取締役営業本部長のS氏が平成31年(2019年)3月28日に作成した陳述書(乙5)にて提出された添付資料5(「5」は丸付き数字)の2/3の2017年1月20日に、ケイエムアイ社のK氏が作成した「2016年1月?2017年12月31日迄 YUI-350/ YUI?270 仕入れ実績」の題目の書類及び添付資料7(「7」は丸付き数字)のセブン・セブン社が、ケイエムアイ社宛てに、平成28年(2016年)12月29日締切分として作成した請求書によると、要証期間(平成28年(2016年)2月5日?平成31年(2019年)2月4日)に、セブン・セブン社が品番「YUI-270」の商品及び品番「YUI-350」の商品をケイエムアイ社に納品したことは推測できる。
ただし、品番「YUI-270」の商品及び品番「YUI-350」の商品がいかなる商品であるのかが明らかではなく、また、これらの品番に該当する商品がタンブラーであるとしても、タンブラーの外側の底面に、使用標章が刻印されていることが確認できない。
(6)使用行為について
上記(1)ないし(5)からすると、カナエ社又はセブン・セブン社の取り扱いに係る使用商品は食器に該当する商品であり、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品と認められ、被請求人が、ケイエムアイ社の代表取締役K氏が作成した陳述書(乙4)にて提出された添付資料Aの2/2及び添付資料Bの2/2のタンブラーの外側の底面の写真、セブン・セブン社の取締役営業本部長のS氏が作成した陳述書(乙5)にて提出された添付資料3の2/2及び添付資料4の2/2のタンブラーの外側の底面の写真において、タンブラーの外側の底面には、本件商標と社会通念上同一の使用標章が刻印されていることは確認できる。
しかしながら、当該タンブラーの写真は、撮影日が明らかではないため、使用標章をタンブラーの外側の底面に刻印した使用商品が、要証期間に存在していたことが明らかでなく、当該タンブラーの包装(木箱)にも、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる使用標章の記載はない。
また、要証期間に、セブン・セブン社からケイエムアイ社に納品されたとする品番「YUI-270」の商品及び品番「YUI-350」の商品は、カナエ社又はセブン・セブン社が作成したタンブラーの商品を紹介するリーフレットにおいて記載がなく、その他、被請求人が提出したタンブラーの写真を参照しても、使用標章をタンブラーの外側の底面に刻印した使用商品が、品番「YUI-270」の商品及び品番「YUI-350」の商品であることが確認できない。
さらに、カナエ社又はセブン・セブン社が作成したタンブラーの商品を紹介するリーフレットにおいて、使用標章をタンブラーの外側の底面に刻印した商品は掲載されておらず、また、アマゾン等で紹介された品番「YUI-270」の商品及び品番「YUI-350」又はその包装に使用標章が付されていることは確認することができない。
したがって、被請求人は、使用商品について、商標法第2条第3項第1号、同項第2号及び同項第8号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
(7)小括
以上からすると、被請求人が提出した全証拠を総合してみても、商標権者又は商標権者から本件商標の使用を許諾された者が、要証期間に、日本国内で、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商品を使用していることを証明したとはいえない。
4 被請求人の主張について
被請求人は、通常使用権者であるセブン・セブン社は、要証期間に、本件商標を本件審判請求に係る指定商品について使用している旨を主張する。
しかしながら、上記3(7)のとおり、被請求人が提出した全証拠を総合してみても、商標権者又は商標権者から本件商標の使用を許諾された者が、要証期間に、日本国内で、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商品を使用していることを証明したとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
5 結論
以上のとおり、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、本件審判請求に係る指定役務のいずれかについて、商標法第2条第3号各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
別掲1(別紙1に記載された使用商標)


別掲2(別紙2に記載された使用商標)




審理終結日 2021-06-23 
結審通知日 2021-06-29 
審決日 2021-09-17 
出願番号 商願2008-62888(T2008-62888) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X21)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 圭輔 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 2009-04-03 
登録番号 商標登録第5220362号(T5220362) 
商標の称呼 ケツ、ユウ、ユイ 
代理人 宮田 信道 
代理人 吉井 剛 
代理人 吉井 雅栄 

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