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審決分類 |
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W05293031 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W05293031 |
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管理番号 | 1377967 |
審判番号 | 不服2020-17826 |
総通号数 | 262 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2021-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-25 |
確定日 | 2021-09-01 |
事件の表示 | 商願2019-100236拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「姫路モリンガ」の文字を標準文字で表してなり、第5類、第29類、第30類及び第31類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、令和元年7月23日に登録出願されたものである。 その後、原審における令和元年12月16日付けの手続補正書により、その指定商品は、第5類「兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガを主原料とする粉末状・ゼリー状の加工食品」、第29類「兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガパウダーを使用したふりかけ」、第30類「兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガ入り茶,兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガパウダー入りのソフトクリーム,兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガパウダーを加味したおかゆ,兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガ入りゼリー」及び第31類「兵庫県姫路市において生産または販売される茶の葉として用いるためのモリンガの葉,兵庫県姫路市において生産または販売されるモリンガの茶の葉」と補正された。 2 原査定の拒絶の理由(要旨) (1)商標法第3条第1項第3号 本願商標は、「姫路モリンガ」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「姫路」の文字は「兵庫県南西部の市」を、「モリンガ」の文字は「インド、パキスタン、バングラデッシュ、アフガニスタンのヒマラヤ山麓に原生する植物」を表す語であるから、全体として「兵庫県姫路市産のモリンガ」ほどの意味合いを容易に認識させる。 そして、本願の指定商品を取り扱う分野においては、モリンガを使用した商品が取り扱われている実情や、日本国内でモリンガが栽培されている実情がある。 そうすると、本願商標は、その指定商品中「兵庫県姫路市産のモリンガを使用した商品」に使用するときは、商品の品質を表示するにすぎなから、商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)商標法第3条第2項 出願人提出の証拠は、本願商標を付した商品の販売数量や市場占有率、広告宣伝の事実等を明らかにしておらず、本願商標が出願人の業務に係る商品を表すものとして広く認識されていると認めるに足りない。そのため、本願商標は、使用の結果、出願人の業務に係る商品であることを認識されるに至っている商標とはいえない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。 3 当審の判断 請求人は、証拠(請求人提出の資料第1号ないし資料第74号は、甲第1号証ないし甲第74号証と読み替える。)を提出し、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しないこと、また、予備的主張として、同条第2項の要件を具備する旨を主張するため、当審において以下のとおり判断する。 (1)商標法第3条第1項第3号について ア 本願商標は、「姫路モリンガ」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「姫路」の文字は「兵庫県南西部の市」(「広辞苑 第7版」岩波書店)を、「モリンガ」の文字は「ワサビノキ科の双子葉植物」(甲1)を指称する語である。 イ そして、「モリンガ」は、90種以上の栄養素が高数値でバランスよく含まれている食材(スーパーフード)として注目を集めており、「モリンガパウダー」(モリンガ粉末)、「モリンガティー」(モリンガ茶)、「モリンガ青汁」、「モリンガサプリ」、「モリンガ粒」、「モリンガカプセル」、「モリンガタブレット」、「モリンガ・ゼリー」など様々な加工食品の原材料として利用されている(甲10?甲59)。 ウ また、本願商標の指定商品は、上記1のとおり、兵庫県姫路市において生産又は販売されるモリンガを原材料として利用する商品であるから、「姫路」とは産地又は販売地として、「モリンガ」とは原材料として、極めて密接な関連性がある。 エ そうすると、本願商標は、その指定商品との関係においては、「兵庫県の姫路で生産又は加工したモリンガ」であることを表記してなると認識、理解させるというべきで、商品の品質(産地、販売地)又は原材料を表示するにすぎない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 (2)商標法第3条第2項について ア 請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。 (ア)請求人は、兵庫県姫路市の自社農園でモリンガを栽培、2018年末から加工工場の操業を開始し、モリンガの収穫、商品化、販売までを一貫して行っている(甲6)。 (イ)そして、請求人は、自社のウェブサイトにおいて、姫路産のモリンガを原材料とする商品「姫路モリンガピュアパウダー」(以下「請求人商品」という。)を販売しているところ、その包装には「Himeji」、「Moringa」及び「Pure Powder」の欧文字を上下三段にした表示(以下「本件使用商標」という。)のほか、赤色の円図形の枠内に「100%姫路産」の文字が白抜きで表示されている(甲61?甲63)。 (ウ)請求人商品は、2019年10月以降に、兵庫県、埼玉県をはじめ、日本国内の複数の地域における販売実績があるとされる(甲65)。 (エ)請求人商品に関する広告は、姫路市の地方情報誌(「まるはり」)や冊子(「まるはりMOOK」)において、2019年12月以降、複数回掲載されているところ、それぞれの広告には、請求人商品の商品名(姫路モリンガピュアパウダー)や商品写真などのほか、「姫路産100%のモリンガを。」、「姫路産100%」などの記載もある(甲66?甲72)。 イ 判断 (ア)以上の認定事実によれば、本件使用商標を包装に表示する請求人商品は、遅くとも2019年後半から、インターネット通信販売等を通じた販売実績があることは確認できる。 (イ)しかしながら、本件使用商標は、「Himeji」、「Moringa」及び「Pure Powder」の欧文字を近接して配置した一体的な構成よりなるもので、当該欧文字は商品名(姫路モリンガピュアパウダー)に相当することも相まって、構成文字全体(Himeji Moringa Pure Powder)をして一連一体の商標(商品名)を表してなると認識、理解される。そのため、本件使用商標は、本願商標(姫路モリンガ)とは、同一の商標ではない。 また、本件使用商標及び請求人商品の商品名には、本願商標(姫路モリンガ)に相当する文字が含まれるとしても、その包装や広告には産地を強調する記載(「100%姫路産」、「姫路産100%のモリンガを。」など)も伴うなど、当該文字部分が、原材料や産地などを示唆する構成文字と把握される可能性も高いもので、本願商標が独立した出所識別標識(又は請求人商品の略称)と認識、理解されにくいような使用態様である。 そうすると、請求人商品の使用実績(販売実績、広告実績)は、本願商標と同一の商標に係る使用実績と同一視することはできず、本願商標に係る知名度の向上に直接寄与するものとはいえない。 (ウ)なお、請求人商品の販売実績も、インターネット通信販売を通じた2年程度のものにすぎず、広告宣伝実績も、2年程度の期間における地方情報誌での複数回の広告掲載にすぎない。 また、その他に、本願商標の知名度の向上に大きく貢献するような、日本全国における大規模かつ広範囲な販売実績や広告宣伝実績を、具体的かつ客観的に示す証拠は請求人からは提出されていない。 (エ)そうすると、本願商標は、請求人商品の使用実績によって知名度が直ちに向上するものではないばかりか、その販売実績や広告宣伝実績も大規模かつ広範囲なものでもないから、我が国の需要者の間において、請求人の業務に係る商品として広く認識されるに至っているものとは認められない。 (3)請求人の主張について ア 請求人は、「姫路」が「兵庫県姫路市」を表す地名として広く知られているとしても、当該地域において植物「モリンガ」が栽培され、それを使用した商品が製造、販売されていることは一般に認知されておらず、同地域でモリンガを栽培、製造又は販売しているのは請求人のみであって、「姫路モリンガ」の語が取引上普通に使用されていないから、本願商標は、自他商品の識別標識としての機能を有し、商標法第3条第1項第3号に該当しない旨を主張する。 しかしながら、商標法第3条第1項第3号の適用においては、需要者又は取引者における一般的な認識を基準とすべきであるところ、モリンガは我が国でも様々な地域で栽培、生産されており(甲2?甲7)、本願商標の指定商品も「姫路」を産地又は販売地とすることをも踏まえると、本願商標は、それに接する一般の需要者及び取引者をして、「兵庫県の姫路で生産又は加工したモリンガ」であることを表記してなると容易に認識させるというべきである。 イ 請求人は、初めて本州でのモリンガ栽培に成功し、姫路市内でモリンガを栽培し、加工販売しているのは請求人のみであるから、請求人商品の市場占有率は100%であって、その販売実績を踏まえると、需要者が何人か(請求人)の業務に係る商品であることを認識できるに至っており、商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張する。 しかしながら、請求人主張の市場占有率は、極めて限定的な母数を前提とした数字であって、販売規模の多寡を客観的に評価するための指標とは理解し難いばかりか、上記(2)イ(イ)のとおり、請求人商品の使用実績は、本願商標と同一の商標に係る使用実績とは同一視できず、本願商標に係る知名度の向上に直接寄与するようなものではないもので、その販売実績や広告宣伝実績自体も大規模かつ広範囲のものではないから、本願商標が、我が国の需要者の間において、請求人の業務に係る商品として広く認識されるに至っているとはいえない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、請求人商品に係る販売実績及び広告宣伝実績によって、我が国の需要者の間において、請求人の業務に係る商品として広く認識されているに至っているものとはいえないから、同条第2項の要件を具備しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2021-06-22 |
結審通知日 | 2021-06-23 |
審決日 | 2021-07-13 |
出願番号 | 商願2019-100236(T2019-100236) |
審決分類 |
T
1
8・
17-
Z
(W05293031)
T 1 8・ 13- Z (W05293031) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 浦辺 淑絵 |
特許庁審判長 |
佐藤 松江 |
特許庁審判官 |
阿曾 裕樹 鈴木 雅也 |
商標の称呼 | ヒメジモリンガ |
代理人 | 清原 義博 |