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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W30
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W30
管理番号 1377883 
審判番号 不服2019-9420 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-12 
確定日 2021-08-19 
事件の表示 商願2017-118060拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「Ujicha」の文字を標準文字で表してなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成29年3月7日に登録出願された商願2017-29699に係る商標法第11条第3項の規定による団体商標登録出願として、同年9月6日に登録出願されたものである。
その後、原審における平成30年6月1日付けの手続補正書により、その指定商品は第30類「京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した菓子,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したパン,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したサンドイッチ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した中華まんじゅう,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したハンバーガー,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したピザ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したホットドッグ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したミートパイ,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した調味料,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したアイスクリームのもと,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したシャーベットのもと,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した穀物の加工品,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用したチョコレートスプレッド,京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産茶を京都府内業者が京都府内において宇治地域に由来する製法により仕上加工した緑茶を使用した即席菓子のもと」と補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「Ujicha」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は「京都府宇治地方から産出する茶。室町時代から茶道で賞美。」を意味する「宇治茶」のローマ字表記として一般に使用されている。
そして、「宇治茶」の文字よりなる地域団体商標登録(登録第5050328号)があるが、「Ujicha」の欧文字は、「京都府南部の宇治産の茶。」の意味合いをもって一般に紹介されている実情がある。
そうすると、本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、ローマ字表記であるとしても、「京都府南部の宇治産の茶、京都府南部の宇治産の茶を使用してなる商品」であること、すなわち単に商品の品質、産地又は原材料を普通に用いられる方法で表示したものと認識するというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 当審による審尋(令和2年5月18日付け審尋)
(1)当審の暫定的見解(本願商標「Ujicha」は、「宇治茶」の語を英語読み風に欧文字で表記したものと容易に認識でき、構成文字全体として「(京都)宇治地方で製造又は販売した茶」程度の意味合いを認識できるから、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を表示するにすぎず、商標法第3条第1項第3号に該当する。)を請求人に通知し、意見を求めた。
(2)請求人は、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備する旨を主張するものの、その判断に必要とされる要件に基づき、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったことが具体的な証拠に基づき立証されていないため、合議体は、請求人に証拠の提出を求めた。

4 請求人による回答
(1)本願商標は、「宇治茶」の語を英語読み風に欧文字表記したものであることに異存はないが、「宇治の茶」であれば商品の産地を表示する普通名称であるとしても、「宇治茶」と一連の一つの語としたときは商品の産地や品質等を表示するものではなく、また、欧文字表記は普通に用いられる方法ではないから、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
(2)本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備することを立証するため、甲第1号証ないし甲第8号証を提出する。
なお、そもそも「宇治茶」は、商標法第7条の2第1項の規定に基づき地域団体商標として商標登録されているから、当然、その欧文字表記である本願商標も同法第3条第2項の要件を満たしているはずである。

5 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
ア 本願商標は、「Ujicha」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は「京都府南部の旧郡。」(「コンサイス日本地名辞典 第5版」三省堂)を指称する「宇治」の語と、「茶の若葉・若芽を摘み、飲料用に製したもの。葉茶。また、その飲料。」(「デジタル大辞泉」小学館)の意味を有する「茶」の語を組み合わせた「宇治茶」の語を英語読み風に欧文字で表記したものと容易に認識できるもので、構成文字全体として「(京都)宇治地方で製造又は販売した茶」程度の意味合いを認識できる。
イ さらに、本願商標の指定商品と関連する食品や飲料の取引において、「京都府宇治地方から産出する茶」(「広辞苑 第7版」岩波書店)である「宇治茶」が製造、販売され、その欧文字表記として「Ujicha」の欧文字が広く採択されている実情がある。
ウ そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標と商標法第3条第2項
ア 商標法第3条第2項は、商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条第1項第3号に該当する商標であっても、使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には、商標登録を受けることができる旨規定する。そして、同項所定の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で広く認識されているものをいうものと解される(参照:平成20年(行ケ)第10474号、平成21年9月30日知財高裁判決)。
イ 請求人は、甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、本願商標は、請求人又はその構成員により長年にわたって使用されており、請求人又はその構成員の取り扱う商品を表示する商標として需要者の間に広く認識されている旨を主張するため、本願商標の商標法第3条第2項の要件を具備するかについて以下のとおり検討する。
(ア)証拠によれば、以下の事実が認められる。
a 請求人の組合員(株式会社伊藤久右衛門、甲4)は、「UJICHA TEA BAG」の文字を包装に表示する「かぶせ茶 急須用ティーバッグ」を日本国内で販売している(甲2、甲3)。
b 請求人の組合員(株式会社矢野園、甲4)は、「UJICHA」の文字を包装に表示する「宇治 蔵出し煎茶」及び「宇治 蔵出し玉露」を日本国内で販売し、2008年及び2009年に少なくとも各年1万本の売上げが確認できる(甲5?甲7)。
(イ)以上のとおり、請求人が提出した証拠によれば、本願商標とつづりを共通にする欧文字は、遅くとも十数年前から、請求人の構成員が我が国において販売する「緑茶」(かぶせ茶、煎茶、玉露など)の包装に表示されていたことが確認できる。しかしながら、当該欧文字は他の語と結合して単独で表示されていないことも相まって、請求人固有の商標として表示しているのか単なる産地表示や品質表示として表示しているのかは、外形から必ずしも明らかではなく、請求人との特段の関連性を教示又は示唆する記述を伴うものでもないから、当該表示に接する需要者をして、本願商標について請求人(又はその構成員)固有の出所識別標識であると直ちに認識、理解されるとは評価し難い。
また、本願商標に係る商品の販売実績についても、上記組合員による散発的な販売実績を除いて、継続した販売実績(販売数量、販売額)や、それ以外の組合員(請求人には計137社の組合員がいる。甲4)全体による販売実績や広告宣伝実績も明らかではないから、我が国における周知性の範囲や程度を客観的に評価することができない。
さらに、請求人は商品「緑茶」と関連した使用実績に係る証拠は提出するが、それ以外の指定商品に係る本願商標の使用態様や、本願商標に係る商品の販売実績・広告宣伝実績を具体的に示す証拠は提出しない。
したがって、本願商標は、本件全証拠によっては、請求人又はその構成員の商品に係る固有の商標(出所識別標識)として、需要者の間において広く認識されるに至っていたものと認めるに足りない。
以上を踏まえると、本願商標は、請求人又はその構成員により使用をされた結果、需要者が何人か(請求人又はその構成員)の業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認められず、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)請求人の主張
ア 請求人は、本願商標は「宇治茶」の文字をローマ字で表したもので、当該文字は地域団体商標として商標登録(登録第5050328号商標)されており、商品の出所識別力を備える商標であるから、それをローマ字表記した本願商標が識別力を欠くとする理由がない旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、上記(1)アのとおり、「宇治」(京都の地名)と「茶」(商品の普通名称)の語を組み合わせた「宇治茶」の語を欧文字で表記したものと容易に認識できるもので、上記(1)イのとおり、「宇治茶」(京都府宇治地方から産出する茶)が製造、販売されている実情もあるから、「宇治茶」の文字が地域団体商標として登録されているとしても、本願商標は、その指定商品に係る需要者、取引者をして、一般的には、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料に係る表示という抽象的な認識がされるというのが相当である。
なお、商標法第3条は、第1項において商標登録を受けることができない商標を列挙した上で、第2項においてそのような商標であっても使用の結果自他商品の識別標識としての機能を備えるに至った場合には商標登録を受けるとしているのだから、請求人又はその構成員による継続使用によって出所識別標識としての機能を獲得したか否かは商標法第3条第2項の適用に係る要件として検討すべきである。
イ 請求人は、「宇治の茶」は商品の普通名称といわざるを得ないとしても、「宇治茶」と一連の一つの語としたときは商品の品質等を表記するものとはいえないから、その欧文字表記である本願商標も商品の品質等を普通に用いられる方法で表示するものとはいえない旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、「宇治の茶」が商品の普通名称であればなおさら、上記(1)アのとおり、構成文字全体として「(京都)宇治地方で製造又は販売した茶」程度の意味合いを認識させるというべきだから、その指定商品に係る需要者、取引者をして、単に商品の産地、販売地、品質又は原材料を表示するものと認識されるにすぎない。
ウ 請求人は、過去の地域団体商標の登録例を援用し、「宇治茶」は商標法第7条の2第1項の規定に基づき地域団体商標として登録されているから同法第3条第2項の要件も具備するはずであり、その欧文字表記である本願商標も同項の要件を具備するはずである旨を主張する。
しかしながら、商標登録出願された商標の登録適格性は、個別の商標や取引の実情を踏まえた上で判断すべきであるばかりか、請求人の援用する過去の登録例は、本願商標とは商標の種別(地域団体商標団体商標)や登録要件(商標法第7条の2第1項と同法第3条第2項)が相違するから、明らかに事案を異にするもので、本願商標に係る判断に影響しない。
なお、地域団体商標制度は、商標法第3条第2項よりも登録要件を緩和し、同項適用にあたり実務上要求される商標の認識範囲及び程度よりも範囲が狭くまた程度が低い場合であっても商標登録を受けられるようにしたもの(参照:「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第21版〕」発明推進協会)で、その登録にあたり同法第7条の2に基づき要求される周知性の程度は、同法第3条第2項に基づき登録を受ける場合に要求されるものよりも狭く、また低いもので足りる(前掲書参照)とされるから、それぞれ相互に独立した別異の要件であることは明らかである。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、請求人提出の証拠によっても同法第3条第2項の要件を具備すると認めるに足りない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲

審理終結日 2020-09-08 
結審通知日 2020-09-15 
審決日 2020-09-30 
出願番号 商願2017-118060(T2017-118060) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W30)
T 1 8・ 17- Z (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保坂 金彦柿本 涼馬駒井 芳子 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 阿曾 裕樹
大森 友子
商標の称呼 ウジチャ 
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所 

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