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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X0910
管理番号 1377869 
審判番号 取消2020-300558 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2020-08-17 
確定日 2021-07-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第1355290号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1355290号商標(以下「本件商標」という。)は、「RICKETTS」の欧文字を横書きしてなり、1975年6月6日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、昭和50年11月21日に登録出願、第10類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同53年10月31日に設定登録されたものであるが、その後、平成21年2月4日に指定商品の書換登録がなされた結果、本件商標の指定商品は、第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具」及び第10類「医療用機械器具」となったものである。
なお、平成元年7月21日、同10年6月30日、同20年6月24日及び同30年10月30日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和2年(2020年)9月3日にされている。
また、本件審判請求の登録前3年以内の期間である平成29年(2017年)9月3日から令和2年(2020年)9月2日までの期間を、以下、「要証期間」という場合がある。
第2 請求人の主張
1 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第9類「全指定商品」、第10類「全指定商品」(以下これを「本件審判の請求に係る指定商品」という。)について登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
2 請求の理由
本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、請求人は、被請求人の答弁に対し、何ら弁駁していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
1 被請求人の主張
(1)被請求人及び被請求人の日本における販売代理店について
被請求人アール エム オー インコーポレイテツド(RMO Inc.:以下「RMO社」という。)は、1933年にアメリカ合衆国コロラド州で設立された、歯科矯正器材の製造販売を行う会社である(乙1)。被請求人は、1963年より株式会社モリタ(以下「モリタ社」という。)を日本総販売代理店として自社製品の日本国内での販売を開始し、1973年には被請求人とモリタ社の合弁会社として株式会社ロッキーマウンテンモリタ(英語名称:Rocky Mountain Morita Corp.:以下「ロッキーマウンテンモリタ社」という。)を設立した(乙2)。また、被請求人は、2018年5月21日付けでロッキーマウンテンモリタ社との間で代理店契約を締結し(乙3)、以後、同社を通じて日本国内における自社製品の販売を継続して行っている。当該代理店契約に被請求人商標についての使用許諾も含まれる。なお、ロッキーマウンテンモリタ社は2018年6月1日付けで株式会社JM Ortho(英語名称:JM Ortho Corpration:以下「JM Ortho社」という場合がある。)に社名変更している(乙4)。
(2)本件商標の使用の事実
ア 被請求人の通常使用権者であるJM Ortho社は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求にかかる指定商品中、医療用機械器具の一種である「歯科矯正用ワイヤ,頭部X線規格写真トレーシング用器具」について本件商標を使用している。
イ 使用に係る商標
乙第5号証及び乙第6号証は、被請求人が日本の販売代理店であるロッキーマウンテンモリタ社/JM Ortho社に発行した請求書であり、本件商標と同一の文字構成である「RICKETTS」が表示されていることが確認でき、これは本件商標と社会通念上同一の商標であるといえる。なお、乙第5号証には本件商標「RICKETTS」に続けて「QUAD HELIX」の記載があるが、これは4つのヘリカルループからなる可撤式の舌側拡大装置を指す商品の普通名称であり(乙9)、被請求人商品の出所を表示するものではない。
乙第7号証は、被請求人がJM Ortho社に販売した商品及び商品パッケージの写真であり、商品及び商品パッケージ・ラベルにおいても「RICKETTS」の商標が使用されていることが確認できる。
また、乙第8号証は、JM Ortho社の電子総合カタログであり、同カタログ内に商標「リケッツ」が表示されている。本件商標「RICKETTS」と使用商標「リケッツ」は、文字種の違いはあるものの、両商標とも「リケッツ」の称呼が生じ、特定の観念は生じない。使用商標は、本件商標を構成する欧文字と片仮名の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼を生じ、異なる観念を生じるものでもないことから、使用商標「リケッツ」は本件商標と社会通念上同一の商標である。
(3)使用に係る商品
乙第5号証において取引の事実が確認できる「RICKETTS」の使用に係る商品は、歯科矯正用ワイヤ(商品番号 A00510ないしA00513)であり、乙第6号証において取引の事実が確認できる「RICKETTS」の使用に係る商品は、頭部X線規格写真トレーシング用器具(商品番号 I00512及びECM0004)である。商品番号A00510ないしA00513の歯科矯正用ワイヤ及び商品番号I00512の頭部X線規格写真トレーシング用器具は、乙第8号証のカタログに掲載されている商品である。商品番号ECM0004は同カタログには掲載されていないが、商品番号I00512と同種の商品である。商標「RICKETTS」が付された被請求人の上記商品は、本件商標の指定商品中、第10類「医療用機械器具」の範ちゅうに属する商品である。
(4)使用時期
乙第5号証の請求書は、2017年11月9日から2020年8月27日の間に発行されたものであり、乙第6号証の請求書は、2018年1月11日から2020年4月23日の間に発行されたものであり、いずれも本件審判の予告登録前3年以内のものである。また、乙第8号証のカタログは2020年9月に発行されたものであり、本件審判の予告登録前からの本件商標の使用を十分推認し得る。
(5)使用行為
本件商標が表示された乙第5号証及び乙第6号証は、日本の販売代理店であるJM Ortho社が被請求人の商品を被請求人から日本国内に輸入した事実を示す請求書であり、かかる使用行為は、商標法第2条第3項第2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを輸入する行為」に該当する。
また、当該販売代理店の総合カタログ(乙8)には、被請求人商品の画像が掲載され、当該商品には本件商標が付されている(乙7)。かかる使用行為は、商標法第2条第3項第8号の「商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
(6)使用者
本件商標は、被請求人の販売代理店であるJM Ortho社(旧社名:ロッキーマウンテンモリタ社)によって使用されている。被請求人は、JM Ortho社を日本の販売代理店とし、日本国内での本件商標を付した商品「歯科矯正用ワイヤ」等を販売することを許諾していたものであるから、JM Ortho社は、本件商標に関して被請求人の通常使用権者であるといえる。
2 むすび
以上のとおり、被請求人の通常使用権者が、要証期間に、日本国内において、「医療用機械器具」について本件商標を使用したことは明らかである。
したがって、請求人の主張には理由がなく、本件審判の請求は成り立たない。
第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び提出に係る乙各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)RMO社は、1933年に米国で設立され(乙1)、1973年には、日本においてモリタ社と被請求人の合弁会社(ロッキーマウンテンモリタ社)を設立し、当該ロッキーマウンテンモリタ社は、2018年(平成30年)6月1日に社名をJM Ortho社に変更した(乙2、乙4)。
(2)乙第3号証は、本件商標権者であるRMO社(本供給者)とロッキーマウンテンモリタ社(本代理店)とが、2018年(平成30年)5月21日を発効日として締結された代理店契約書の写し(抜粋)及びその部分訳であり、両当事者それぞれのCEOとプレジデントによる署名がある。
そして、当該契約書(部分訳)には、「VI.知的財産権 6.2商品商標の使用」の項に、「本代理店(及び下請販売代理店又は本代理店の販売業者・代理店)は、以下の行為を行うことができる。」として、「6.2.1 本商品のマーケティング・流通・販売に関連して、本供給者の知的財産権を使用すること。」の記載がある。
(3)乙第6号証の1葉目は、本件商標権者がロッキーマウンテンモリタ社宛てに発行した2018年(平成30年)1月11日付けのInvoice(請求書)の写しである。
そして、当該書面には、「SOLD TO」及び「SHIP TO」の欄に、「ROCKY MOUNTAIN MORITA CORP」及び「14F OCHANOMIZU-KYOUN BLDG 2-2 KANDA,SURUGADAI CHIYODA-KU,TOKYO 101-0062 Japan」の記載、「Invoice Date」及び「Ship Date」に、「1/11/2018」の記載、「Item number」に「I00512」の記載、「Description」に「RICKETTS CEPHALOMET TEMPLATE」、「Quontity:28.00」「Batch number:WO-820369」、「Shipped Unit」に「30.00PK」の記載がある。
なお、上記「SOLD TO」及び「SHIP TO」の欄に記載された住所は、ロッキーマウンテンモリタ社から社名変更したJM Ortho社の本社の住所と一致する(乙2)。
(4)乙第7号証の4葉目は、被請求人がJM Ortho社に販売したと主張する商品の写真画像であり、「商品番号 I00512 頭部X線規格写真トレーシング用器具 商品ラベル拡大写真」と題する書面に表されたラベルを拡大した写真画像には、ラベルの右上方に「2018 01 03/MADE IN USA」、中央上方に「RMO[R] CEPHALOMETRIC TEMPLATE RICKETTS[R]」([R]は丸に「R」を表した記号のこと。以下同じ。)、左下方に「I00512」、「RKG1」及び四角囲みの「LOT」の文字に続いて「WO?820369」、右下方には「RMO、Inc.650 West Colfax Avenue Denver,Colorado 80204 USA」の文字がそれぞれ記載されている。
また、本号証の5葉目の「商品番号 I00512 頭部X線規格写真トレーシング用器具 商品拡大写真」と題する書面に表された商品を拡大して撮影したものと思しき写真画像の中央部には、「RICKETTS[R]」と表示されている。
(5)乙第8号証は、JM Ortho社の電子総合カタログ(2020-2022)よりの抜粋であるところ、当該カタログには、1葉目に「2020年9月吉日」の記載、3葉目の「主な仕入れ先と製品例」として、「RMO アメリカ ブラケット、チューブ、バンド ワイヤー」の記載、及び4葉目の「ご利用に際して」の項目の中で「・・・収載商品は2020年8月21日付価格を基準に編集いたしました。」の記載がある。
そして、6葉目には、「リケッツテンプレート」として「Dr.リケッツ考案セファロトレーシングに用いるテンプレートです。」の紹介文とともに、商品の画像が表示され、その下には「商品番号 i00512」と記載されている。
(6)以上によれば、以下のとおり認められる。
ロッキーマウンテンモリタ社は、2018年(平成30年)1月11日付けで、本件商標権者(被請求人)であるRMO社から、品番(Item number)を「I00512」とする「RICKETTS CEPHALOMET TEMPLATE」を輸入し、本件商標権者はロッキーマウンテンモリタ社に対し、当該商品に係る代金を請求したことが認められる。
そして、上記「RICKETTS CEPHALOMET TEMPLATE」と乙第7号証の「頭部X線規格写真トレーシング用器具」のラベル上の表示「CEPHALOMETRIC TEMPLATE RICKETTS」とは、語順及び「CEPHALOMET」と「CEPHALOMETRIC」の単語の末尾が相違するものの、英語「cephalometory」が「頭部計測(法)」の語義を有する語(職権調査)であることを鑑みれば、ともに「RICKETTS頭部計測のテンプレート」という同趣旨の内容が認識されるとともに、両者のItem numberと商品番号が「I00512」で一致し、Batch numberとLOT番号も「WO-820369」で一致していることから、2018年(平成30年)1月11日付けのInvoice(乙6)をもって、ロッキーマウンテンモリタ社が本件商標権者から輸入した商品は、「頭部X線規格写真トレーシング用器具」(乙7)(以下「本件使用商品」という。)と同じ商品であり、当該商品及びそのラベルには、「RICKETTS」の文字(以下、これを「本件使用商標」という。)が表されていたものと推認して不自然なところはない。
なお、本件商標権者とロッキーマウンテンモリタ社は、2018年(平成30年)5月21日 を発効日として代理店契約を結び、その後、同年6月1日に、ロッキーマウンテンモリタ社は、JM Ortho社と社名変更したものであるから、JM Ortho社は、本件商標権者の販売代理店であり(乙2)、同社が2020年(令和2年)9月頃発行した電子総合カタログ(2020-2022:乙8)の内容などを併せみれば、JM Ortho社は、日本国内で本件使用商品等を流通させたことが推認される。
2 判断
上記1で認定した事実を総合すると、以下のとおり判断することができる。
(1)使用商標について
本件商標と本件使用商標とは、いずれも「RICKETTS」の文字からなる商標であり、そのつづりを同じくするから、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
(2)使用商品について
本件使用商品「頭部X線規格写真トレーシング用器具」は、本件審判の請求に係る指定商品中、第10類「医療用機械器具」の範ちゅうに含まれる商品である。
(3)使用時期、使用行為及び使用者について
ロッキーマウンテンモリタ社は、本件商標権者から、本件使用商品を、要証期間である2018年(平成30年)1月11日に輸入した。
そして、ロッキーマウンテンモリタ社は、本件商標権者の日本における合弁会社であり、両者には密接な業務上のつながりが認められるものであることに加えて、その後(平成30年5月)、それぞれの間で知的財産の使用許諾契約を交わしたことから、ロッキーマウンテンモリタ社は、本件商標の使用について、当該使用許諾契約の前から本件商標権者と黙示の許諾を得ていたものとみて差し支えなく、ロッキーマウンテンモリタ社は本件商標の通常使用権者と認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の通常使用権者であるロッキーマウンテンモリタ社は、要証期間内に、本件審判の請求に係る指定商品中、第10類「医療用機械器具」に含まれる「頭部X線規格写真トレーシング用器具」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものを我が国に輸入したというのが相当である。
これらの行為は、商標法第2条3項第2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2021-05-26 
結審通知日 2021-05-31 
審決日 2021-06-16 
出願番号 商願昭50-136481 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X0910)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小出 浩子
小松 里美
登録日 1978-10-31 
登録番号 商標登録第1355290号(T1355290) 
商標の称呼 リケッツ 
代理人 桶野 育司 
代理人 桶野 清香 

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