現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない X0103
管理番号 1376835 
審判番号 無効2020-890052 
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-06-19 
確定日 2021-07-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5387228号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5387228号商標(以下「本件商標」という。)は,「パールアパタイト」の文字を標準文字で表してなり,平成22年10月7日に登録出願,第1類「化学品」及び第3類「化粧品,せっけん類,香料類,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として,同23年1月6日に登録査定,同月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第1類「化学品」及び第3類「化粧品,せっけん類」についての登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当し,同法第46条第1項第1号により,その登録は無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)「パール」とは,一般的に真珠を意味し,「アパタイト」は,「ハイドロキシアパタイトのこと。ハイドロキシアパタイトとはリン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分のことで,エナメル質(歯の一番表面の部分)は97%,象牙質(エナメル質の下の組織)の70%がハイドロキシアパタイトでできている。」とされ,また,「燐灰石(りんかいせき)」ともされる(甲3,甲4)。そして,特許第6435061号の明細書の第2ページには,「ハイドロキシアパタイトは,弱アルカリ性のリン酸カルシウム化合物である。」の記載がある(甲5)。
(2)以上により,「パールアパタイト」の語は,「真珠に関係するリン酸カルシウム」という,一定の化学物質を想起させる。
(3)一方,本件商標の指定商品中,第1類「化学品」には,リン酸カルシウム以外の多数の化学品が含まれ,同じく第3類「化粧品,せっけん」には,「真珠に関係するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんが存在し得る。
(4)そうすると,本件商標を,本件商標の指定商品の第1類「化学品」のうち,「リン酸カルシウム」以外の「化学品」に使用する場合には,商品の品質について誤認を生じるおそれがある。
特許庁の「類似商品・役務審査基準」では,「第1類には,主として,工業用,科学用及び農業用の化学品(他の類に属する商品の製造に用いられるものを含む。)を含む。」とされており,この分野に従事する者であれば,化学品に「パールアパタイト」が使用された場合は,リン酸カルシウムを想起し,「パールアパタイト」を「リン酸カルシウム」以外の化学品に使用した場合は,極めて品質誤認が生じやすい。
また,「パールアパタイト」を,「真珠に関係するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんに使用する場合には,商品の品質について誤認を生じるおそれがある。
特に,天然の生体由来のリン酸カルシウムは,吸着性が高く,生体活性が高く,歯の再石灰化に有利であるという特徴が知られている(甲6?甲10)。
このことから,化粧品やせっけんに「パールアパタイト」が使用された場合は,需要者はそれらの効果を期待して商品を選択する可能性が高く,「パールアパタイト」を「真珠に関係するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんに使用する場合には,極めて品質誤認が生じやすい。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第16号に違反してされたものであるから,同法第46条第1項の規定により無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)概念
ア 「パール」の概念
審判請求書によると,「パール」とは一般的に真珠を意味するとあるが,「パール」は,「真珠。また,真珠色。」(乙1),「真珠。*6月の誕生石。真珠のような色のこと。」(乙2)のように一義ではなく多岐にわたる意味を持つ。
また,パールに相当する英文字「pearl」は,「名詞:1a真珠。b真珠層。c真珠色。2真珠のようなもの。3貴重なもの。」,「形容詞:真珠の。真珠色の。真珠をちりばめた。真珠状の。」及び「他動詞:1真珠で飾る。・・・に真珠色[光沢]を着ける。2真珠のようにたらす。」(乙3)の意味を持つ。
以上のとおり,「パール」には複数の意味・概念がある。
イ 「アパタイト」の概念
同審判請求書によると,「アパタイト」は,「ハイドロキシアパタイ卜のこと。ハイドロキシアパタイトとはリン酸カルシウムでできた歯や骨を構成する成分のことで,エナメル質(歯の一番表面の部分)は97%,象牙質(エナメル質の下の組織)の70%がハイドロキシアパタイトでできている。」とされ,また,「燐灰石(りんかいせき)」ともされる,とあるが,甲第4号証の「ハイドロキシアパタイトのこと。(・・・以下略)」の記載上部には「歯科用語」と記載があり,これは歯科医などを対象にした記載と考えられ,一般的な需要者がその内容や概念を想起するのは難しいと考えられる。
2000年発行の和英辞典に「アパタイト」は収載されておらず,一般的な語といえない(乙4)。また,2020年のWeb版和英辞典で「アパタイト」を検索すると「apatite」と「appetite」の2つの語がヒットし(乙5),「apatite」は「燐灰石」を,「appetite」は「本能的欲望,《特に》食欲,性欲」を,それぞれ意味する(乙6,乙7)。
2017年におけるインターネット上の質問投稿サイトへの質問及び回答によれば,「英語で『アパタイト』と発音する単語はありますか?」と質問があり,「辞書には載っていませんでした」との記載がある。その質問に対する1番初めの回答は「appetiteです。食欲という意味です。」である(乙8)。
これは2017年の投稿であるが,一般に英語は過去より現代のほうが生活に密着していると考えられ,2017年にこのような質問があるならば,審査当時(査定時)においても同様若しくはそれ以下の理解だったと考えられる。
このように,インターネットを利用する一般的な需要者は「アパタイト」という音を耳にした際,現在において,まず初めに想起する概念は「食欲」であり,査定時においては,この「食欲」か,又はこれすら想起し得ないものといえる。
また,同証には「apatite 燐灰石,appetite 食欲」という回答もあり,需要者は複数の意味や概念を想起することもわかる。
以上のとおり,「アパタイト」には複数の意味・概念がある。
(2)本件商標について
本件商標は「パール」及び「アパタイト」という語による一種の造語であり,標準文字で「パールアパタイト」の片仮名を書してなる。
構成各文字は同じ大きさで,等間隔にまとまりよく一体に表してなり,しかも,全体より生ずる「パールアパタイト」の称呼も,よどみなく一連に称呼できるものである。
そして,「パール」が「真珠」「真珠色」「真珠のようなもの」「真珠光沢を着ける」等,「アパタイト」が「燐灰石」「欲望」「食欲」等,それぞれを単独でみた際には複数の意味・概念があるため,それぞれの中の一部に材質等を想起する意味が含まれる可能性は否定できないが,「パールアパタイト」という本件商標は,一連一体とされ,全体として特定の観念を生じない造語であって,特定の品質等を直接的に,かつ,具体的に表したものとはいえないものである。
よって,「パールアパタイト」という語は,「真珠に関係するリン酸カルシウム」という一定の化学物質を想起させるとはいえないし,仮に商標構成中に,商品の品質等を表す文字を有する場合であっても,全体として商品の品質等として認識できず,商品の品質を表すものではない。
(3)第1類「化学品」について
前述のとおり,「パールアパタイト」という語は,全体として特定の観念を生じない造語であるため,「パールアパタイト」を第1類「化学品」のうち,「リン酸カルシウム」以外の「化学品」に使用する場合でも品質に誤認を生じるおそれはない。
(4)第3類「化粧品,せっけん類」について
前述のとおり,「パールアパタイト」という語は,全体として特定の観念を生じない造語であるため,「パールアパタイト」を「真珠に関係するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんに使用する場合でも,品質に誤認を生じるおそれはない。
請求人は同審判請求書において,「天然の生体由来のリン酘カルシウムは,吸着性が高く,生体活性が高く,歯の再石灰化に有利」と記載しており,これの証拠として甲第6号証ないし甲第10号証を用いているが,これら証拠は,化粧品やせっけんの一般需要者が知り得るものであるか,甚だ疑問であり,一般需要者が知り得ない情報であれば,それをもとに需要者が商品を選択することは考えられず,品質に誤認を生じるおそれはない。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではなく,適法なものである。
なお,請求人は商標法第46条第1項第1号を請求の理由にしているため,査定時を判断基準にすると,甲第5号証以下(登録特許以下の証拠)は証拠として採用できない。
また,甲第6号証ないし甲第9号証に「バイオアパタイト」という記載があり,これは商標登録第6100163号と思われる。
この登録商標は「アパタイト」という語を含む一種の造語と考えられるが,指定商品を第1類「サプリメントの原材料となる化学品,化粧品の原料となる化学品,歯磨きの原料となる化学品,その他の化学品,植物成長調整斉類,肥料,高級脂肪酸,人工甘味料,工業用粉類」で登録されており,「生物由来のリン酸カルシウム」等の一定の化学物質に関する限定なく登録されている。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第16号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,前記第1のとおり,「パールアパタイト」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成各文字は,同書,同大,同間隔で外観上まとまりよく一体的に表されている。
そして,本件商標は,「パール」の片仮名と「アパタイト」の片仮名を結合した構成からなるものと理解されるところ,「パール」の文字は,「真珠」の意味を有する語として,一般に広く親しまれているものである。
一方,「アパタイト」の文字は,weblio辞書(大辞林第三版,歯科用語(甲4))及びリーダーズ英和辞典(乙7)によれば,「apatite」又は「appetite」の2語に通じ,「燐灰石。ハイドロキシアパタイト」,又は「本能的欲望,(特に)食欲」等の意味を有するものであるが,いずれの語も広く一般に親しまれている語とは認められないものである。
また,請求人提出の「アパタイト」に関する証拠(甲5?甲10)は,いずれも商標法第4条第1項第16号該当性の判断時である本件商標の登録査定時以降に作成されたものであり,かつ,当該証拠は,発明の名称を「ハイドロキシアパタイト,化粧品及び食品,並びにその製造方法」とする特許公報(甲5)や乳菌アパタイト展着試験(甲6),バイオアパタイト色素吸着試験結果(甲7),バイオアパタイトの口内細菌吸着試験(甲8),擬似体液を用いた生体親和性評価(甲9),バイオアパタイトと一般アパタイトとの比較(甲10)といった技術文献であり,専門的な内容のものであるから,一般の需要者がこれらに接する機会は極めて限られており,それらに掲載されていることをもって,その内容が一般に知られているものということはできない。
そうすると,「アパタイト」の文字は,特定の意味合いを理解させるとはいえないものである。
以上によれば,「真珠」の意味を有する「パール」の文字と,特定の意味合いを理解させるとはいえない「アパタイト」の文字を結合させた「パールアパタイト」からなる本件商標は,構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識,把握されるものというべきであって,特定の商品又は商品の品質,用途等を具体的に表示するものとして直ちに理解されるものとはいい難く,商品の品質を認識させるものとはいえないから,これを請求に係るいずれの指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれはないというべきである。
(2)請求人の主張について
請求人は,「パールアパタイト」という語は,「真珠に関するリン酸カルシウム」という,一定の化学物質を想起させ,本件商標の指定商品中,第1類「化学品」には,リン酸カルシウム以外の多数の化学品が含まれており,また,第3類「化粧品,せっけん」には,「真珠に関係するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんが存在し得るから,本件商標を「リン酸カルシウム」以外の化学品及び「真珠に関するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんに使用する場合には,商品の品質について誤認を生ずるおそれがある旨主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,本件商標は,一体不可分の一種の造語として認識,把握されるものであり,請求人提出の証拠からは,「パールアパタイト」の語が,本件商標の指定商品中の第1類「化学品」及び第3類「化粧品,せっけん類」のいずれについて使用しても,その取引者又は需要者が,商品の品質を表示するものとして認識するといった取引の実情にあると認めるに足りる証拠は見いだせないことから,本件商標を「リン酸カルシウム」以外の化学品及び「真珠に関するリン酸カルシウム」を含まない化粧品やせっけんに使用しても,商品の品質について誤認を生ずるおそれがあると認めることはできない。
よって,請求人の主張は採用することができない。
(3)小括
以上によれば,本件商標は,これをその指定商品中の第1類「化学品」及び第3類「化粧品,せっけん類」のいずれの商品について使用しても,商品の品質について誤認を生ずるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に該当しない。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-12-01 
結審通知日 2020-12-03 
審決日 2020-12-15 
出願番号 商願2010-78389(T2010-78389) 
審決分類 T 1 12・ 272- Y (X0103)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 佐藤 松江
平澤 芳行
登録日 2011-01-28 
登録番号 商標登録第5387228号(T5387228) 
商標の称呼 パールアパタイト 
代理人 福地 武雄 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ