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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
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審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1374087 
異議申立番号 異議2020-900279 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-28 
確定日 2021-05-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6280422号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6280422号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6280422号商標(以下「本件商標」という。)は、「宅二郎」の文字を標準文字で表してなり、令和2年4月14日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同年8月6日に登録査定され、同月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び引用標章
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次の(1)ないし(3)のとおりであり、現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4652738号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「ラーメン二郎」の文字をゴシック体の書体で横書きしてなる商標
登録出願日:平成14年4月30日
設定登録日:平成15年3月14日
指定役務:第43類「ラーメンを主とする飲食物の提供」
(2)登録第5520032号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲1のとおりの構成よりなる商標
登録出願日:平成24年3月28日
設定登録日:平成24年9月7日
指定役務:第43類「ラーメンを主とする飲食物の提供」
(3)登録第5520033号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおりの構成よりなる商標
登録出願日:平成24年3月28日
設定登録日:平成24年9月7日
指定役務:第43類「ラーメンを主とする飲食物の提供」
以下、引用商標1ないし引用商標3をまとめていうときは、引用商標という。
2 申立人が、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する標章は、次の(1)及び(2)のとおりであり、申立人が、「ラーメンを主とする飲食物の提供」に使用し、需要者の間に広く認識されているとするものである。
(1)標章の構成:「ラーメン二郎」の文字よりなる標章(以下「引用標章1」という。)
使用役務:ラーメンを主とする飲食物の提供
(2)標章の構成:「二郎」の文字よりなる標章(以下「引用標章2」という。)
使用役務:ラーメンを主とする飲食物の提供
以下、引用標章1及び引用標章2をまとめていうときは、引用標章という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第3条第1項柱書、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第A号証ないし甲第F号証(枝番あり。以下、甲第A号証を甲第1号証と、甲第B号証を甲第2号証と、甲第C号証を甲第3号証と、甲第D号証を甲第4号証と、甲第E号証を甲第5号証と、甲第F号証を甲第6号証とそれぞれ読み替える。)を提出した。
1 本件商標及び商標権者のビジネスについて
本件商標の審査において提出された早期審査に関する事情説明書及びウェブページによれば、商標権者「麺達人株式会社」は、2020年(令和2年)4月頃から、池袋・お茶の水駅前・阿佐ヶ谷駅前・目白駅前において、「麺屋 宅二郎」の名称で、テイクアウト・宅配専門のラーメン店の運営を開始し、そのウェブサイトでは、四角の黄色地に、赤色文字で「麺屋」、黒色文字で本件商標「宅二郎」を使用していた(甲1の3?甲1の5)。
しかしながら、商標権者が使用していた「宅二郎」、「麺屋 宅二郎」の名称は、需要者において、申立人が運営するラーメン店「ラーメン二郎」が宅配を始めたものと誤認され、混同が生じていた。そこで、申立人は、商標権者に対し、「宅二郎」、「麺屋 宅二郎」の名称の使用を止めるよう申し入れをしたところ、商標権者のラーメン店は、2020年(令和2年)8月1日に「宅二郎」から「豚ラーメン 榊」に名称を変更し、現在に至っている。商標権者の一連の対応については、商標権者のウェブページ(甲1の6、甲1の7)に掲載されている。
2 引用商標及び申立人のビジネスについて
(1)引用商標について
申立人の一人である山田拓美氏(以下「Y氏」という。)は、「ラーメン二郎」に関し、「第43類 ラーメンを主とする飲食物の提供」を指定役務として、引用商標1ないし引用商標3を保有している(甲2の1?甲2の3)。
(2)申立人のビジネス及び「ラーメン二郎」、「二郎」の周知・著名性について
1972年(昭和47年)から今日に至るまで長年に亘って、申立人は、「ラーメン二郎」を営業表示としてラーメン店を運営・営業しており(甲2の4?甲3の13)、「ラーメン二郎」、「二郎」の名称は、申立人が運営・営業するラーメン店の営業表示として広く知られ、周知・著名となっている。「ラーメン二郎」創業時から、「ラーメン二郎」、「二郎」が周知・著名に至る歴史については、東京弁護士会発行の弁護士向けの雑誌LIBRAのY氏に対するインタビュー記事(甲3の1)、Y氏作成によるクリアファイル(甲2の6)、ウィキペディア(甲3の3)等多数の記事によって紹介されている。
(3)創業
Y氏は、1968年(昭和43年)に東急東横線都立大学駅前にてラーメン店「ラーメン次郎」を創業した。1972年(昭和47年)に、慶応義塾大学三田キャンパス東南角地に移転の際、ペンキ屋のミスにより看板に「ラーメン二郎」と書かれ、そのまま屋号とした経緯がある。1996年(平成8年)に、三田キャンパスの西南の現在地に移転し「ラーメン二郎 三田本店」と称するようになった。
そして、「ラーメン二郎」は、地元の慶応義塾大学三田キャンパスの学生から絶大な人気を博した。また、学生の要望に応える中で「ラーメン二郎」の特有の注文や食事の仕方等の独自の作法も確立され、他のラーメン店とは一線を画し、全国各地の展開へ進んでいくこととなった。
(4)加盟店による経営
Y氏の元には、「ラーメン二郎」の味を教えて欲しいと訪れる者も増え、「ラーメン二郎 三田本店」で半年から1年間の修業をし、ラーメン二郎営業審査委員会の面接・許可を得て「ラーメン二郎」を名乗る店を開店できる仕組みとした。独立を許された者は、Y氏と「ラーメン二郎チェーン加盟契約」を締結し、「ラーメン二郎」の屋号の使用が許されている。
また、「ラーメン二郎」の店主として独立(のれん分け)することが認められた者には「認定証」が発行される(甲2の12)。なお、後述する二郎インスパイア系等の店では、この「認定証」は貰えず、「ラーメン二郎」を名乗ることができない。
そして、現在では、北は北海道から西は京都まで、三田本店を除き40店舗の「ラーメン二郎」がある(甲2の7、甲3の4)。
(5)「ラーメン二郎」の使用例(店舗看板)
「ラーメン二郎」の店舗看板は、「黄色地に、赤色文字又は黒色文字で『ラーメン』、黒色文字で『二郎』」と表示しており、黄色い看板が「ラーメン二郎」の代名詞とも言われている(甲3の4)。
(6)のれん(ブランド)管理
独立(のれん分け)が許され、「ラーメン二郎」の名称の使用が許された加盟店は、申立人の一人である有限会社ラーメン二郎によって、営業内容のチェックが行われ、のれん(ブランド)の維持・管理がされている(甲2の11)。加盟店が「ラーメン二郎」を毀損するような行為をした場合には、上述の営業審査委員会も指導を受けうる。このように、ラーメン二郎の味やスタイルを守っている。
過去には、「ラーメン二郎」の名称でラーメン店を開店したが、事後に、「ラーメン二郎」の名称使用の継続が禁止され、改名することに至った店も存在する。
他方、「二郎で修行した」との虚偽の広告をしたり、店舗名称に「二郎」を含んだり、「どこから見てもラーメン二郎と間違うような店舗」には、「ラーメン二郎」と混同を生じないように、顧問弁護士が徹底した対応を取っている。
こうした加盟店ののれんの管理により、「二郎とはラーメンではなく、二郎という食べ物である」とまで言われ、ラーメン界で絶対無二の存在であると紹介される程の存在になった(甲3の5?甲3の13、甲5の1)。
(7)宣伝・広告・イベント等
Y氏は、慶応義塾大学で、トークショーを行ったり(甲2の6)、クリアファイル(甲2の6?甲2の9)やジロー紙幣(甲2の10)を作って、リピーターに配布している。
ただし、Y氏は、「ラーメン二郎」についてあえてマスコミでの積極的な宣伝・広告を行っておらず、取材等は断ることも多く、メディアへの露出は控えられている。
(8)ジロリアン
「ラーメン二郎」は、多くのラーメンファンに長年愛されるようになり、その中でも熱心なファンは「ジロリアン」と呼ばれている。「ジロリアン」は、自発的にインターネットのSNS上等で全国各地の「ラーメン二郎」の店舗の開店情報や行列情報をタイムリーに紹介している(甲4の1)。
また、初心者向けに、「ラーメン二郎」の特有のメニューや注文・食事のルール等の独特の作法を説明し(甲4の2)、質問に丁寧に答えている。このような「ジロリアン」のSNSへの書込みは、「ラーメン二郎」に対する愛情あふれる好意的な記事で満ちており、「ラーメン二郎」は、「ジロリアン」により赫赫たる名声「reputation(リピュテーション)」を獲得していると言える。
また、「ラーメン二郎」は、積極的に宣伝・広告を行っていないが、この「ジロリアン」の熱心なインターネットヘの書き込みやロコミにより、「ラーメン二郎」の十分な宣伝・広告が行われていると見ることができる。
(9)ラーメン二郎インスパイア系(甲5の1?甲5の3)
「ラーメン二郎」のラーメンの「脂の多さ(濃厚さ)・麺・野菜・ブタの多さ」をまねた、または、魅了されたラーメン店は、二郎インスパイア店や二郎系ラーメンと呼ばれ1つのジャンル(文化)を形成しており、北は札幌から南は福岡まで、全国に多数存在する。これら二郎インスパイア店や二郎系ラーメンについて、Y氏は、「ラーメン二郎」のコンセプト自体を宣伝してもらっていると考えて、特には制限しようとはしていない。二郎インスパイア系の多くは、店舗名称に「二郎」の文字はなく一見して、「ラーメン二郎」とは区別できるからである。
(10)周知・著名性について
書籍「ラーメン二郎にまなぶ経営学」(甲3の9)には、2010年の発行年頃の販売数や需要者数(ジロリアン)が推定され、「ラーメン二郎」、「二郎」の周知・著名性について、分析されている。以下、その概要を説明する。
ア 「ラーメン二郎」の直営店の増加(甲3の9)
「ラーメン二郎」は、1995年の目黒店開店によってのれん分けが始まり、2001年頃から支店が増加し始め、2010年には35店舗まで増加した。「ラーメン二郎」は、この2001年頃から「ジロリアン」によるSNSを利用した情報拡散によるコミュニティーマーケティングが機能し始め、「ラーメン二郎」の認知度も飛躍的に向上し始めたと説明されている。
イ 販売数の推定(甲3の9)
「ラーメン二郎」は、どこの店も行列ができており、開店時間中は、いつも満席状態で、全席入れ替え制のロットというシステムで運営している。このことから、フェルミ推定で、1店舗当たりの販売数を計算すると、1店舗当たり、1日で360食(人)を提供していることになる。当時、「ラーメン二郎」は40店舗であるので、1日に、14400人が「ラーメン二郎」を訪問し、14400杯のラーメンが提供されていると推定される。
ウ 認知度の推定(甲3の9)
また、上記と同様にフェルミ推定で、「ラーメン二郎」に来店するコアのジロリアンが35万人、インスパイア系の店に来店する「ラーメン二郎」のコンセプトのファンと呼べる人は70万人と推定され、「ラーメン二郎」は、少なくともジロリアンを中心とした熱狂的な105万人のファン層に知られていると推定される。
すなわち、上記イでは、1日の「ラーメン二郎」の来店者数を360人としたが、大行列で諦める人を含めて訪問者を400人とすると、(コアの)ジロリアン(ラーメン二郎)は、35万人と推定される。
インスパイア系の店が70店舗とすると、インスパイア系店舗に来店するファンは、その倍の70万人と推定されるからである。
したがって、「ラーメン二郎」のファン層は、ジロリアンを中心として少なくとも105万人程度存在すると推定される。
エ 「ラーメン二郎にまなぶ経営学」による分析は以上のとおりであるが、ジロリアン、インスパイア系の105万人の多くは、そのボリュームゆえに、男性と考えられる。しかし、「ラーメン二郎」の店の前は、常に行列ができているので、近くを通る人の目を引き、注視されざるを得ず、「黄色地のラーメン二郎」の看板を目にすることになる。
したがって、ジロリアン・インスパイア系のみならず、老若男女問わず相当数の者が、「ラーメン二郎」を認知していると考えられる。
(11)インターネット上の情報数(甲3の9)
また、「ラーメン二郎にまなぶ経営学」(甲3の9)には、2010年におけるGoogle blogでの検索結果が説明されており、「ラーメン二郎」のヒット件数は23万904件であった。そして、「麺屋武蔵」は10万9338件、「東池袋 大勝軒」は2万5101件であり、「ラーメン二郎」に関するブログ数は、「麺屋武蔵」の2倍以上、「東池袋 大勝軒」の10倍近くある。したがって、インターネット上で「ラーメン二郎」、「二郎」の情報に触れる機会は、他のラーメン店と比較しても極端に多いことがわかる。
また、「ラーメン二郎情報 bot」においても、3.7万人がフォロワーとなっている(甲4の1)。
(12)ランキング
「ラーメン二郎 三田本店」は、食ベログの「百名店ラーメンTOKYO2017?2019」に選出されている(甲3の12)。
また、ラーメンのデータベースでは、「通算ランキング」、「最近評価の高いお店ランキング」、「年間ランキング」、「お店注目度ランキング」において、三田本店を含め複数の「ラーメン二郎」の支店が常に上位にランクインしている(甲3の13)。
(13)雑誌による紹介
「ラーメン二郎」の創業から今日に至るまでは、雑誌「LIBRA」のインタビュー記事に掲載されており(甲3の1)、東京弁護士会の会員約8千人(2019年1月)に配布され、また、他の会派にも配布されるので、優に約1万部程度は、配布されていると考えられる(甲3の2)。
また、「ラーメン二郎」が周知・著名であること、熱狂的な「ジロリアン」ファンに支えられ名声を得ていることは、「ラーメン二郎にまなぶ経営学」(2010年発行 甲3の9)、「人生で大切なことはラーメン二郎に学んだ」(甲3の10)、「東京ラーメン系諧学」(2019年発行 甲3の11)等の複数の書籍において紹介されている。
これらの刊行物等によれば、「ラーメン二郎」は、1)いわゆるラーメンの系譜の中で発祥したのではなく突発的に誕生し(甲3の10、甲3の11)、2)麺・具材が大盛の独創的なラーメンで、「二郎とはラーメンでなく二郎という食べ物である」と言われるまでになったこと、3)どこの支店も行列ができる程人気があり、4)ジロリアンという熱狂的なファンを作り出し、5)いわゆるブランド戦略としても稀有な成功事例として紹介されている。
3 本件商標「宅二郎」と「ラーメン二郎」の出所の混同について(甲1の4?甲1の7)
上述したとおり、商標権者は、本件商標を含む「麺屋 宅二郎」の屋号にて、2020年4月頃からテイクアウト・宅配専門のラーメン店の運営を開始したが、2020年8月1日に「豚ラーメン 榊」に名称を変更している。
この「麺屋 宅二郎」の営業期間中において、「ラーメン二郎」のリピーターから、「ラーメン二郎は宅配を始めたのか?」、「宅配の宅二郎は、オヤジ(「ラーメン二郎」のファンからは、Y氏は親しみと尊敬を込めて、「オヤジ」と呼ばれている)が許しているのか?」等の問い合わせを受けた。このことは、「ラーメン二郎」の加盟店のLINEのやり取りからも明らかである(甲6の1)。
また、配達業者UberEatsのドライバーによるインターネットのSNS(Twitter)の書き込みでは、「麺屋 宅二郎」を、「ラーメン二郎」の宅配であると完全に混同していた(甲6の2)。
このような混同の状況を受け、申立人は、商標権者に、「宅二郎」の使用を止めるように申し入れ、商標権者は、これを容れて、2020年8月1日に「豚ラーメン 榊」に名称を変更している。
以上の事実によれば、本件商標は、次の理由により取り消されるべきである。
4 本件商標の指定役務中、「ラーメンを主とする飲食物の提供」について
本件商標の指定役務中、「ラーメンを主とする飲食物の提供」と引用商標の指定役務及び申立人の運営・営業に係るラーメン店の役務は、同一の役務である。
(1)商標法第3条第1項柱書について
本件商標の商標権者は、本件商標を含む「麺屋 宅二郎」の屋号で、2020年4月頃から8月までテイクアウト・宅配専門のラーメン店舗の運営を行っていた。
しかし、営業期間中に需要者において混同が生じ、申立人の使用の中止の申し入れに応じ、商標権者は、本件商標の登録査定時の2020年(令和2年)8月6日前の2020年(令和2年)8月1日に「豚ラーメン 榊」に名称を変更している。
したがって、本件商標は、「ラーメンを主とする飲食物の提供」について使用する商標ではないので、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標「宅二郎」に含まれる「宅」の文字は、「ラーメンを主とする飲食物の提供」の役務との関係では、宅配サービスの意味合いを看取し識別力が弱く、本件商標の要部は、「二郎」であると考えられる。したがって、「タクジロー」の他、「ジロー」の称呼も生じる。
他方、引用商標1「ラーメン二郎」の「ラーメン」の文字は、役務の提供に係る商品を指し、指定役務との関係において識別力が弱く、「二郎」の部分からも称呼が生じる。また、引用商標2及び引用商標3「ラーメン二郎」の図形商標からは、「ラーメン二郎」、「RA-MEN/JIRO」の構成文字、中央に大きく描かれた「二郎」の文字からも称呼が生じる。したがって、引用商標からは、「ラーメンジロー」又は「ジロー」の称呼を生じる。
したがって、本件商標と引用商標とは、「ジロー」の称呼を共通に有するものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第10号について
「ラーメン二郎」、「二郎」の名称は、申立人に係る役務を表示するものとして、周知・著名に至っているものである。
したがって、本件商標は、上記(2)と同様に、周知・著名な「ラーメン二郎」、「二郎」に類似する商標であり、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして周知・著名な商標「二郎」を含む。商標権者が「宅二郎」の名称で宅配のラーメン店を営業していた際には、現に、「ラーメン二郎」の顧客から「ラーメン二郎は宅配を始めたのか?」等の問い合わせがあり、本件商標「宅二郎」の配達業者は申立人に係る業務と混同を生じた事実が存在する。
したがって、本件商標は、周知・著名な商標「ラーメン二郎」、「二郎」と混同を生じる商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、申立人の周知・著名な商標「ラーメン二郎」、「二郎」と類似の商標である。
本件商標には、「二郎」の文字が含まれているが、例えば、出願人名称「麺達人株式会社」、その代表者の名称・氏名からも「二郎」の文字を選択する必然性は全く見当たらない(甲1の1?甲1の3)。
また、早期審査に関する事情説明書及びウェブページによれば、「宅二郎」は、黄色地としたことや、文字の配置や文字の色等が、「ラーメン二郎」の看板と酷似させていたことは明らかであり、「ラーメン二郎」ののれんにただ乗りする意図が推定され、実際に、「ラーメン二郎」との混同も生じていた(甲1の4、甲1の5、甲2の4、甲3の4)。
したがって、本件商標は、「ラーメン二郎」、「二郎」ののれんにただ乗りするおそれがあり、「ラーメン二郎」、「二郎」の希釈化を生じる可能性が高く、不正の目的をもって使用する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 本件商標の指定役務「飲食物の提供」について
本件商標の指定役務「飲食物の提供」と引用商標の指定役務及び申立人のラーメン店の運営・営業に係る業務は、類似の役務である。
したがって、上記4と同様に、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書該当性について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日 知財高裁 平成24年(行ケ)第10019号)。
そうすると、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、同法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠によっても、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。
2 引用標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人の1人であるY氏は、1968年(昭和43年)に東京都目黒区にてラーメン店「ラーメン次郎」を創業した。1972年(昭和47年)に、当該ラーメン店を、都内にて移転した際に「ラーメン二郎」(引用標章1)と改名し、さらに、1996年(平成8年)に慶應義塾大学三田キャンパス(東京都港区)の近くに移転した際に「ラーメン二郎 三田本店」(以下「本店」という。)と称するようになり(甲2の6)、現在に至るとされる(申立人の主張)。
イ 申立人は、平成13年にラーメン二郎チェーン加盟契約に基づく加盟店の管理・指導・援助等に関し、委託契約を締結した(甲2の11)。そして、本店にて修業をした者が、「ラーメン二郎 営業審査委員会」に認定された場合に、同委員会と本店によって「認定証」(甲2の12)が発行され、認定を受けた者は、Y氏と「ラーメン二郎チェーン加盟契約」を締結し、屋号として引用標章1の使用を許可されているとされる(申立人の主張)。
ウ 引用標章1を使用したラーメン店の加盟店の店舗数は、2010年(平成22年)に34店舗であった(甲3の7)。その後、上記店舗数は、2016年(平成28年)には40店舗に増えたところ、それら加盟店は、東京都、神奈川県など首都圏を中心としており、その他北海道、宮城県、新潟県、福島県に1店舗ずつあった(甲3の4)。
エ Y氏は、引用標章1を使用したラーメン店(以下「本件ラーメン店」という。)の宣伝・広告に際し、2016年(平成28年)10月の慶応義塾大学の慶応連合三田会大会にてトークショーを行ったり(甲2の6)、引用標章1を記載し作成した「ジロー紙幣」(甲2の10)のリピーターへの配布などを行っているとされるが、あえてマスコミでの積極的な宣伝・広告を行っておらず、取材等を断ることも多く、メディアへの露出は控えられているとされる(申立人の主張)。
オ 2019年(令和元年)8月の東京弁護士会発行の弁護士向けの雑誌「LIBRA」に、ラーメン「次郎」開業時の話、顧問弁護士の活用状況等のY氏へのインタビュー記事が掲載された。同記事のY氏プロフィール欄において「全国に約40店舗ある『ラーメン二郎』グループの創業者でもあることから、『総帥』と呼ばれることも。二郎のラーメンは慶応義塾大学の学生をはじめ、多くのラーメンファンに長年愛されており、『ジロリアン』と呼ばれる熱心なファンも多い。」旨の記載がある(甲3の1)。
カ 本件ラーメン店の熱心なファンは「ジロリアン」と呼ばれ、自発的に広告・宣伝を行っているとされる(申立人の主張)。2019年(令和元年)6月には、インターネットのSNS(Twitter)にて、各店舗の臨時休業情報、待ち時間情報などを紹介している「ラーメン二郎 情報 bot」と称するアカウントがあった(甲4の1)。また、同年1月には、「ツルブログ つまらない日常から抜けだそう」と題するウェブログに、本件ラーメン店の特徴等を説明する記事が掲載された(甲4の2)。
キ 2010年(平成22年)に発行された書籍「ラーメン二郎にまなぶ経営学」において、当時の販売数や需要者数(ジロリアン)が推定されるなど、本件ラーメン店の周知・著名性について分析された(甲3の9)。そして、2013年(平成25年)に発行された書籍「人生で大切なことはラーメン二郎に学んだ」(甲3の10)や、2019年(令和元年)に発行された書籍「東京ラーメン系譜学」(甲3の11)においても、本件ラーメン店についての詳細な情報が紹介された。
ク 本店は、「食ベログ」のウェブサイトのランキングの「百名店」に東京のラーメンのジャンルで2017年から2019年まで選出された(甲3の12)。また、2020年(令和2年)7月に印刷した「ラーメンデータベース」のウェブサイトでは、「通算ランキング」、「最近評価の高いお店ランキング」、「年間ランキング」、「お店注目度ランキング」において、本店及び複数の加盟店がランクインした(甲3の13)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、申立人は、引用標章1を、「ラーメンを主とする飲食物の提供」について、我が国において昭和47年から現在まで継続して、使用していることがうかがえる。
そして、本件ラーメン店の本店にて修業後、認定を受け契約した約40の加盟店(ラーメン店)が全国に所在し、引用標章1を「ラーメンを主とする飲食物の提供」について使用していること(甲3の4)、本件ラーメン店の熱心なファンによるSNS、ウェブログでの情報発信が1回ずつあったこと(甲4の1、甲4の2)、本件ラーメン店の人気等を分析する書籍の発行等が4回あったこと(甲3の1、甲3の9?甲3の11)、近年のラーメンに関するランキングにおいて、本件ラーメン店が1回紹介され(甲3の13)、「食べログ」のウェブサイトのランキングの「百名店」に東京のラーメンのジャンルで2017年から2019年まで、本店が3年間選出されている(甲3の12)ことから、本件ラーメン店が、ラーメンに強い関心を持つ我が国の需要者の間である程度知られているといい得る。
しかしながら、ウェブサイトや書籍などを通じた本件ラーメン店に関する情報の掲載回数やランキングの選定回数は、決して多いものということはできず、それらの証拠のみをもって、引用標章1が、我が国において、本件商標の指定役務の需要者に、どの程度知られているのかを客観的に把握することができない。
また、我が国における引用標章1についての役務の提供実績(売上高、提供件数、市場占有率(シェア)など)や、同業他社の同一又は類似役務の提供実績、引用標章1に対する本件商標の指定役務の需要者の認識を客観的に示す証拠は提出されておらず、職権により調査するも、これについて明らかではないことから、引用標章1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、「二郎」(引用標章2)の文字のみが、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く知られたことを示す具体的な証拠はない。
以上のとおり、申立人が提出した全証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されている状態にあったと判断することはできない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「宅二郎」の文字を標準文字で表してなるところ、本件商標の構成文字は、同じ書体、同じ大きさで、等間隔に、空白なく、まとまりよく表されており、視覚上一体的に看取されるものであるから、本件商標は、外観上、構成文字全体が一連一体のものとして把握、認識されるとみるのが自然である。
そして、その構成文字全体から生じる「タクジロー」の称呼は、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標の語頭の「宅」の漢字は、「(他人に向かっていう)わが家。うち。自宅。」(広辞苑 第七版)の意味を有する語であるものの、申立人が主張するように、「宅」の文字が、「ラーメンを主とする飲食物の提供」の役務との関係では、宅配サービスの意味合いを看取し識別力が弱いなど、本件商標の指定役務との関係において、自他役務の識別標識としての機能を有さないものと判断しなければならない特段の事情は見いだせない。
さらに、本件商標の構成後半の「二郎」の文字が、上記2のとおり、我が国の需要者に特定の者の業務に係る役務を表示するものとして、広く知られている等の特別な事情はなく、また、当該文字が、特定の意味合いを生じるものと判断しなければならない特段の事情はない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「宅」又は「二郎」のいずれかの文字部分が本件商標の要部として認識されるものではなく、構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、「タクジロー」の称呼のみを生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、上記第2の1(1)のとおり、「ラーメン二郎」の文字をゴシック体の書体で横書きしてなり、これは片仮名の「ラーメン」と、漢字の「二郎」とを組み合わせたものと容易に理解されるものである。
引用商標1の構成中、「ラーメン」の文字は「(中国語から)中国風に仕立てた汁そば。小麦粉に鶏卵・塩・かんすい・水を入れてよく練り、そばのようにしたものを茹で、スープに入れたもの。支那そば。中華そば。」(広辞苑 第7版)の意味を有する語であり、「二郎」の文字は、人の名前や、「第2番目の男子。次男。」(前掲書)の意味を有する語であるものの、これらを結合した「ラーメン二郎」の語は、既成の語ではなく、上記2のとおり、特定の者の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているともいえないものであり、一種の造語として認識されるものであるから、特定の観念は生じないものといえる。
そして、引用商標1の構成中、「ラーメン」の文字は、その指定役務との関係においては、提供する料理の種別を表す文字として広く使用されているから、それ自体で独立した出所識別標識としての称呼及び観念を生じるものではないというのが相当である。
そうすると、引用商標1をその指定役務に使用した場合、これに接した需要者は、「二郎」の文字部分を自他役務の識別機能を果たすものとして認識するものということができる。
してみれば、引用商標1は、その構成中、後半の「二郎」の文字部分が強く支配的な印象を与えるものとみるのが相当であるから、当該文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、引用商標1は、その構成全体より生じる「ラーメンジロー」の称呼のほか、その要部である「二郎」の文字部分に相応して「ジロー」の称呼を生じるものであり、「二郎」の文字は、人の名前や、「第2番目の男子。次男。」(前掲書)の意味を有する語として知られているから、これより「第2番目の男子。次男。」程の観念を生じるというのが相当である。
(3)引用商標2及び引用商標3について
引用商標2は、別掲1のとおり、黄色の円図形の内側に、「ラーメン」、「RA-MEN」及び「JIRO」の各文字を黒色にて、上下に小さく表し、中央に、「二」及び「郎」の各漢字を、「二」の右下と「郎」の左上を近接させて、右下がりに黒色の太字で顕著に表してなる。
また、引用商標3は、別掲2のとおり、黒色の円図形の内側に、「ラーメン」、「RA-MEN」及び「JIRO」の各文字を黄色にて、上下に小さく表し、中央に、「二」及び「郎」の各漢字を、「二」の右下と「郎」の左上を近接させて、右下がりに黄色の太字で顕著に表してなる。
そして、引用商標2及び引用商標3の構成中、左下に小さく二段に書した「RA-MEN」及び「JIRO」部分は、「ラーメン」、「二」及び「郎」の各文字の読みを、欧文字で表したものと理解させるものであって、上記構成文字全体からは、上記(2)と同様に、特定の観念は生じないものといえる。
また、構成中の「ラーメン」及びその読みを欧文字で表したものと理解させる「RA-MEN」の文字部分は、上記(2)と同様に、指定役務との関係では、提供する料理の種別を表す文字として理解されるものであるから、それ自体で独立した出所識別標識としての称呼及び観念を生じるものではないというのが相当である。
他方、構成中の「二」及び「郎」の各文字が、他の文字に比べて太く、顕著に表されていることに照らすと、当該文字部分が、引用商標2及び引用商標3に接する取引者、需要者をして、強く支配的な印象を与えるというべきであるから、当該部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものである。
したがって、引用商標2及び引用商標3は、その構成全体より生じる「ラーメンジロー」の称呼のほか、その要部である「二郎」の文字部分に相応して「ジロー」の称呼を生じるものであり、「二郎」の文字は、上記(1)と同様に人の名前や、「第2番目の男子。次男。」(前掲書)の意味を有する語として知られているから、これより「第2番目の男子。次男。」程の観念を生じるというのが相当である。
(4)本件商標と引用商標との類否について
ア(ア)本件商標と引用商標1とを比較すると、これらは、上記(1)及び(2)のとおり、それぞれ構成する文字数が3文字又は6文字と、明らかに相違することから、両者の外観は、明確に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
また、本件商標と引用商標1の要部である「二郎」とを比較すると、これらは、「二郎」の文字が共通するものの、語頭の「宅」の文字の有無に差異を有するところ、この差異は、3文字又は2文字という少ない文字数においては、別異の語であるとの印象を与えるものであるから、両者は、視覚的な印象が相違し、両者の外観は、明確に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
(イ)本件商標と引用商標2及び引用商標3とを比較すると、これらは、図形の有無及び各構成態様が明らかに相違することから、両者の外観は、明確に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
イ 称呼においては、本件商標から生じる「タクジロー」の称呼と、引用商標から生じる「ラーメンジロー」の称呼とを比較すると、両称呼は、それぞれ5音又は7音で構成されるものであって構成音数が相違し、かつ、語頭の「タク」又は「ラーメン」の音に差異を有することから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものである。
また、本件商標から生じる「タクジロー」の称呼と、引用商標から生じる「ジロー」の称呼とを比較すると、両称呼は、それぞれ5音又は3音で構成されるものであって構成音数が相違し、かつ、語頭の「タク」の音の有無に差異を有することから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり、相紛れるおそれのないものである。
ウ 観念においては、本件商標からは特定の観念を生じないものであるところ、引用商標からは構成全体として特定の観念を生じないものであって、その要部から「第2番目の男子。次男。」程の観念を生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができない又は相紛れるおそれはないものである。
エ そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないか相紛れるおそれはないものであり、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、これらが需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両者は、非類似の商標というのが相当である。
(5)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との類否について
本件商標の指定役務と、引用商標の指定役務は同一又は類似する役務である。
(6)小括
以上によれば、本件商標の指定役務が、引用商標の指定役務と同一又は類似するとしても、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性について
上記3のとおり、引用商標1は、本件商標と類似するとはいえないものであって、引用商標1及びその要部と同一のつづりからなる引用標章も同様に、本件商標と類似するとはいえないものである。
また、上記2のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間において広く認識されていたということはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたということはできないものであり、また、上記3で認定したように構成文字全体をもって把握される本件商標は、引用標章とは非類似のもので別異のものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、これをその指定役務に使用しても、需要者において、引用標章を連想、想起するということはできず、よって、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがある商標とはいえない。
その他、本件商標が役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべき事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
なお、申立人は、本件商標権者がラーメン店「麺屋 宅二郎」を営業していた2020年(令和2年)4月頃から7月頃において、本件ラーメン店の顧客から、「ラーメン二郎」が宅配を始めたのか、これを許可したのか等の問い合わせを受けたこと(甲6の1)や、本件商標権者のラーメン店の配達業者のドライバーによるインターネットのSNS(Twitter)において「ラーメン二郎」の宅配であると混同した書き込み(甲6の2)があったことから、出所混同が生じている旨を主張している。
しかしながら、申立人が、出所混同が生じていると主張する各証拠については、顧客からの問い合わせと、SNSにおける書き込みのわずか2件のみであり、これらや、申立人の主張のみから、本件商標をその指定役務に使用する際に、その出所について混同が生ずるおそれがあるものと、客観的に判断することはできず、本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当しないとの上記判断を左右するものではない。
6 商標法第4条第1項第19号について
上記2のとおり、引用標章は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものであり、また、外国における需要者の間に広く認識されていたというべき事情も見いだせない。
さらに、上記4のとおり、本件商標は、引用標章とは非類似のものというのが相当である。
加えて、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものであることを認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものではなく、同法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するという事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。



別掲
別掲1 引用商標2(色彩は原本参照。)



別掲2 引用商標3(色彩は原本参照。)





異議決定日 2021-04-19 
出願番号 商願2020-41742(T2020-41742) 
審決分類 T 1 651・ 264- Y (W43)
T 1 651・ 18- Y (W43)
T 1 651・ 263- Y (W43)
T 1 651・ 222- Y (W43)
T 1 651・ 262- Y (W43)
T 1 651・ 25- Y (W43)
T 1 651・ 261- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太野垣 卓 
特許庁審判長 齋藤 貴博
特許庁審判官 山根 まり子
板谷 玲子
登録日 2020-08-13 
登録番号 商標登録第6280422号(T6280422) 
権利者 麺達人株式会社
商標の称呼 タクジロー 
代理人 三輪 拓也 
代理人 小松 勉 
代理人 三輪 拓也 
代理人 小松 勉 
代理人 吉水 容世 
代理人 吉水 容世 

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