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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W05
管理番号 1374083 
異議申立番号 異議2020-900170 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-06-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-10 
確定日 2021-04-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第6244963号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6244963号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6244963号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示したとおりの構成からなり,平成29年10月2日に登録出願,第5類「中国雲南省文山州産の三七人参を主原料とするサプリメント」を指定商品として,令和2年3月19日に登録査定され,同年4月13日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,商標法第43条の2第1号の規定により,その登録は取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 当事者について
(1)申立人
申立人は,高麗人参と同じ仲間である「三七人参」を原材料とする健康食品に「仙三七」,「金不換王」等の名称を付し,「仙三七」,「金不換王」については商標登録(甲2,甲3)を行い,「仙三七」に係る商品(以下「仙三七商品」という。)を平成11年頃から継続して本件商標の商標権者(以下「被申立人」という。)に独占的に卸売りしてきた株式会社である(甲4)。なお,「三七人参」の収穫期は年1回であるため,申立人は年単位で生産・発注を検討する必要があった。
また,牡蠣から湯煎抽出で取り出されたエキスによって作られた商品に「マナマリン」の名称を付し,商標登録を行い(甲9),「マナマリン」に係る商品(以下「マナマリン商品」という。)についても被申立人に事実上,独占的に卸売りしてきた。
(2)被申立人
被申立人は,申立人から仕入れた健康食品を薬局薬店等へ販売する株式会社である(甲10)。
2 継続的売買取引の経緯
(1)「仙三七」販売の開始
申立人の代表者と被申立人の代表者との間の商品の継続的売買は,平成11年頃に開始され,その後それぞれが法人を設立して,申立人と被申立人との取引に変更された。
取引開始当初は,現在の商標「仙三七」を付した商品に,商標「金不換」を付していたが,第三者から商標「金不換」に関する仮処分申立を受けたことを契機に,商標「金不換」を変更することを申立人と被申立人との間で合意した。申立人はいくつかの商標候補とパッケージデザインを考え出した後,最終的に商標「仙三七」(以下「申立人商標(仙三七)」という。)について,第29類「いわゆる全類指定」を指定商品として平成15年6月2日に登録出願を行い,同年9月より,申立人は被申立人に申立人商標(仙三七)を付した仙三七商品の販売を開始した。
(2)覚書の締結
平成16年1月30日に申立人商標(仙三七)の登録が完了した(甲2)ため,同年3月25日,申立人と被申立人とは,申立人商標(仙三七)について「商標使用許諾に関する覚書」(以下「本件覚書」という。)(甲11)を締結し,申立人は被申立人に対して,無償にて,申立人商標(仙三七)の使用を独占的に許諾し,仙三七商品を継続的に供給することに合意した。
なお,本件覚書では,「継続的に乙(被申立人)に供給を行ってきた」ことが確認され(第1条),第三者が本件の権利を侵害し,又は侵害していることを知った時は,互いに遅滞なく報告し合い協力することがうたわれ(第5条),契約期開は原則無期限と合意され(第6条),信義に基づいてこれを履行すること(第7条)がうたわれている。
その結果,その後の取引により,申立人の被申立人に対する売上高は,マナマリン商品等も含めると,申立人の売上高全体の90%以上を占めるに至った。本件覚書を基礎とする,被申立人に対する継続的な商標の使用許諾と卸売りをその内容とする継続的売買契約(以下「本契約」という。)は,申立人の経営維持のために極めて重要で不可欠なものであった。
以上のとおり,(a)三七人参の特徴(収穫期が年1回であり,年単位で生産・仕入等の検討が必要),(b)本件覚書の存在(特に期間無期限との合意や様々な協力義務),(c)本件覚書を基礎とする申立人と被申立人との間の本契約は,長年継続し,結果的に申立人が売上の90%を被申立人に依存していた等,過度に被申立人に依存する体制にあったことからすれば,仮に被申立人が申立人に対し,本契約を解除して申立人からの継続的売買を中止するのであれば,本契約上の義務として,被申立人には,契約を終了するには少なくとも1年前に申し入れる義務(以下「本予告義務」という。),契約期間中はこの継続的・独占的売買を明らかに損なう行為を行わない義務(以下「本協力義務」という。)があったというべきである。
3 被申立人の背信的行為
(1)被申立人による突然の取引終了通知
被申立人の代表者は,申立人に対して,平成29年8月18日付けの「申し入れ書」(甲14)を唐突に持参して,「8月末日をもって仙三七の取引を終了させて頂きます。」と宣言した。なお,当該申し入れ書の提出が突然になされた事を証するために,被申立人の代表者に対応した従業員の陳述書(甲24)を提出する。
申立人は,当初の個人商店時代の取引を勘案すれば平成11年頃から約18年間,本件覚書の締結時から考えても約13年にわたり,本契約に基づき,被申立人に対して,無償にて,申立人商標(仙三七)の使用を独占的に許諾し,仙三七商品を継続的に供給してきた。
このように過度に被申立人に依存する継続的売買契約を長年にわたり締結してきたのであり,また,主力商品である仙三七商品の原料仕入れの特殊性からすれば,少なくとも被申立人による取引終了の申し出は,終了の1年前になされるべきであった。
しかしながら,被申立人は,申立人に対して,わずか10日余りの予告期間のみで一方的に取引終了を宣言した。被申立人によるこの行為は,それ自体が申立人との間の信頼関係を破壊する債務不履行行為(本予告義務違反)である。
(2)被申立人による剽窃的な商標登録出願行為
ア 一度目の剽窃的な商標登録出願行為
申し入れ書(甲14)により,被申立人が平成28年10月14日に,申立人に何ら相談なく,無断で,商標「仙三七」(以下「被申立人商標(仙三七)」という。)を第5類「サプリメント」を指定商品として登録出願を行い,登録を受けていたことが明らかとなった(甲14,甲16(決定注:「甲15」の誤記と認める。))。
申立人が申立人商標(仙三七)を登録出願した平成15年当時,健康食品は第29類又は第30類に分類されており,第5類「サプリメント」として出願,登録することはできなかった。被申立人は,申立人が商標権を有する申立人商標(仙三七)について,申立人との継続的売買契約により,無償にて独占的に使用許諾を受けていた者であり,申立人の商標権を妨げてはならず,申立人に損害を与えてはならない信義則上の義務を負っている。被申立人による被申立人商標(仙三七)の登録出願は,平成24年における商品及び役務の区分の改正により第5類「サプリメント」を指定商品とする出願,登録が可能となったことを奇貨として,申立人に何ら相談なく,無断で秘密裏に行われたものである。
また,被申立人は,申し入れ書(甲14)において,被申立人が被申立人商標(仙三七)を第5類「サプリメント」を指定商品として商標登録できたことを理由に挙げて,「申立人との取引終了」,「9月以降の仕切り値変更」,「仙三七商品の原材料の価格折衝及び付帯条件付きの上での原材料の購入」,「商標『マナマリン』の譲渡等の申し入れ」等を通知したという経緯から考えると,被申立人が独自に被申立人商標(仙三七)を第5類「サプリメント」を指定商品として登録出願することにより,申立人との交渉を有利に進める意図があったことは明らかである。加えて,申立人に損害を与える一方で,自ら商標を利用することにより不正な利益を得ようとする目的があったことが明らかである。
イ 再度の取引終了通知
申立人は,被申立人の申し入れ書(甲14)に対して,平成29年8月26日付けの「お申し入れ書に対する回答」と題する書面(甲17)により,被申立人による被申立人商標(仙三七)を第5類「サプリメント」を指定商品として登録出願した行為は商標法第4条第1項第7号に該当し,無効とされるべきものであることを指摘し,被申立人の取引終了等の申し入れには応じられない旨を回答した。
これに対して被申立人は,平成29年8月30日付けの「申し入れの回答」と題する書面(甲18)により,「仙三七の取引は従来どおりで了承致しました。」,「マナマリンの取引は従来どおりで了承致しました。」,その他の商品についても「従来どおりで了承致しました。」と回答して,申立人との取引終了の意思表示を撤回した。
申立人は,被申立人が突然の取引終了の意思表示を一旦撤回したとしても,再び被申立人が取引終了を突如宣言するおそれが残ると考え,平成29年9月7日付けの「ご回答を受けての今後の対応について」と題する書面(甲19の1)により,本契約に基づく継続的売買閲係を維持するにあたり被申立人との信頼関係の確立のために,被申立人が登録出願,登録した被申立人商標(仙三七)の無償譲渡(ただし,被申立人が商標登録出願に要した実費は申立人が負担する旨を提案)を求めた。
これに対して被申立人は,平成29年9月15日付けの「申し入れ書,回答」と題する書面(甲20)により,被申立人が商標登録出願,登録した被申立人商標(仙三七)の無償譲渡を拒否し,仙三七商品の売買につき同年12月末日をもって終了するとして,再び唐突な取引終了の意思表示を行った。
以上の経緯に照らせば,被申立人には,仮に契約を終了するには1年前に申し入れる義務(本予告義務),契約期間中はこの継続的・独占的売買を明らかに損なう行為を行わない義務(本協力義務)があるにもかかわらず,(a)平成28年10月14日,被申立人自ら被申立人商標(仙三七)と商標「夢三七」とを登録出願して,申立人と被申立人との間の独占的・継続的売買の終了後の独自の商品供給のための準備行為を行い,もって本協力義務に違反し,(b)平成29年8月18日に同年8月末日をもってかかる継続的売買を終了する旨を一方的に通知し,もって本予告義務に違反し,(c)一旦これを撤回するも平成29年9月15日に同年12月末をもってかかる継続的売買を終了する旨を一方的に通知することで,申立人との信頼関係を再度破壊し,もって本予告義務に違反した。
(3)被申立人との継続的供給契約の解除
ア 申立人による催告
申立人は,被申立人に対して,平成29年9月27日付けの「催告書」(甲21)により,同年10月6日までに被申立人が少なくとも1年以上の従前どおりの取引の継続の意思を明確に表明し,申立人との売買及びライセンスの継続を明らかにする場合は取引を継続するが,仮にしない場合には,やむを得ず被申立人の債務不履行(継続的供給契約の突然の停止)により被申立人と申立人との間で全ての契約を解除する旨を催告した。
イ 申立人による解除通知
前記催告書(甲21)に対して,被申立人は,平成29年10月5日付けの「催告書に対する回答」と題する書面(甲22)により,「弊社の行為は,債務不履行に該当致しない」,「弊社にて新しいブランドで生産から販売を開始する」と回答して応じなかった。
そこで,申立人は,やむを得ず平成29年10月12日付けで,被申立人との間の本契約,すなわち仙三七商品,マナマリン商品の継続的契約及び申立人商標(仙三七)のライセンス契約(本件覚書を含むが,これに限られない。)に基づく一切の売買及びライセンス契約を,被申立人の重大な債務不履行を原因として解除する旨の意思表示を記載した「解除通知書」(甲23)を送付した。
(4)二度目の剽窃的な商標登録出願行為
前記催告書(甲21)による催告後,前記「催告書に対する回答」(甲22)による回答が行われるまでの交渉過程である,平成29年10月2日,被申立人は,申立人に何ら相談なく,無断で,本件商標につき登録出願を行っていた。この事実は,申立人が,特許情報プラットフォームにて公開商標公報を独自に確認したことにより発覚したものである。
このような被申立人による本件商標の登録出願行為は,申立人が考え出した申立人商標(仙三七)を含む,申立人が考え出したパッケージデザインについて,申立人が商標登録出願を行っていないことを奇貨として,申立人に何ら相談なく,無断に行われたものであることが明らかである。また,被申立人よる本件商標の登録出願行為は,申立人と被申立人との間における交渉過程において,被申立人によって秘密裏に行われたものである。
してみれば,本件商標の出願日よりも前に,被申立人が申立人に何ら相談なく,無断で,第5類「サプリメント」を指定商品として登録出願を行い,商標権を取得した被申立人商標(仙三七)と同様に,本件商標の登録出願においても,被申立人には申立人との交渉を有利に進める意図があったことは明らかである。
4 本件商標を被申立人が登録出願したことの不当性
被申立人は,本件覚書及び信義則に基づき,申立人商標(仙三七)に係る申立人の権利を尊重し,申立人による当該権利の保有及び管理を妨げてはならない義務を負っていたにもかかわらず,被申立人は,申立人商標(仙三七)の指定商品に健康食品(サプリメント)が含まれていないことを奇貨として,申立人に秘匿したまま,本件商標の登録出願を行った。かかる行為は,「著しく社会的妥当性を欠く」のであり,まさに商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
5 総括
以上より,被申立人による本件商標の登録出願の目的及び経緯に鑑みれば,被申立人による出願は,申立人との間の信頼関係を裏切る債務不履行行為となる(本協力義務違反)のみならず,適正な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきである。
よって,これに基づいて被申立人を権利者とする本件商標の商標登録を認めることは,公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であって,「商標を保護することにより,商標の使用する者の業務上の信用の維持を図り,もって産業の発展に寄与し,あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の法目的(商標法第1条)にも反するというべきである。
したがって,被申立人による本件商標を第5類「サプリメント」を指定商品として登録出願した行為は,公正な取引秩序を乱す剽窃的な出願行為に該当し,本件商標は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当することが明らかである。

第3 取消理由の通知
当審において,商標権者に対して,「本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。」旨の取消理由を令和2年11月30日付けで通知した。

第4 商標権者の意見
前記第3の取消理由の通知に対し,商標権者は,何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標は,商標登録を受けることができない旨規定しているところ,同規定の趣旨からすれば,(a)当該商標の構成自体が矯激,卑猥,差別的な文字,図形である場合など,その商標を使用することが社会公共の利益に反し,又は社会の一般的道徳観念に反する場合,(b)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(c)当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが,それ以外にも,(d)特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が,その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど,当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も,この規定に該当すると解するのが相当である(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第7号,平成16年12月21日判決参照)。
2 申立人の主張及び提出された証拠によれば,以下のとおりである。
(1)当事者について
ア 申立人
申立人は,高麗人参と同じ仲間である「三七人参」を原材料とする健康食品に「仙三七」,「金不換王」等の標章を付し,「仙三七」,「金不換王」については商標登録を行い(甲2,甲3),仙三七商品を平成11年頃から平成29年10月12日頃(「解除通知書」と題する書面(甲23)により,申立人が,被申立人との間の継続的供給契約及び商標ライセンス契約に基づく一切の売買及びライセンス契約を解除する旨を意思表示した日)までの間,被申立人に独占的に卸売りしてきた株式会社である(甲4)。
また,牡蠣から取り出されたエキスによって作られた商品に「マナマリン」の商標を付し,商標「マナマリン」の商標登録を行い,マナマリン商品についても,被申立人に対し卸売りしてきた(甲19,甲20)。
イ 被申立人
被申立人は,申立人から仕入れた仙三七商品やマナマリン商品などの健康食品を薬局薬店等へ販売していた株式会社である(甲10)。
ウ 以上によれば,申立人と被申立人とは,平成11年頃の取引開始から平成29年10月12日付け解除通知までの約18年間,申立人が,被申立人に対し,仙三七商品やマナマリン商品などの健康食品を卸売りし,被申立人がこれを薬局薬店等へ販売するという長期間にわたる取引関係にあったものである。
(2)継続的売買取引の経緯
ア 「仙三七」販売の開始
申立人の代表者個人と被申立人の代表者個人との間の商品の継続的売買は,平成11年頃に開始され,その後それぞれが法人を設立して,申立人と被申立人との取引に変更された。申立人は,申立人商標(仙三七)について,第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として平成15年6月2日に登録出願をし,同年9月より,申立人は被申立人に申立人商標(仙三七)を付した仙三七商品の販売を開始した(甲19,申立人の主張)。
イ 覚書の締結
平成16年1月30日に申立人商標(仙三七)の商標登録が完了したため,申立人と被申立人は,同年3月25日に申立人商標(仙三七)について本件覚書を作成し,その記載内容に合意した(甲11)。
本件覚書には,「日本薬食株式会社(以下,甲という)と株式会社ベネセーレ(以下,乙という)とは,甲の有する商標登録第4744413号『仙三七』(以下,本件という)につき,次のとおり覚書を締結したので本書二通を作成し,各自代表権のあるものの記名捺印のうえ,其々一通を保持するものとする。」との記載がある。また,本件覚書には,「第1条 甲は,健康増進食品『三七人参加工食品』を乙の依頼により商品名『仙三七』として継続的に乙に供給を行ってきている。」,「第2条 甲は,乙との『三七加工食品』の継続的取引を前提に乙が本件を永続的にかつ,独占的に無償で使用することを許諾するものとする。」,「第3条 前条における使用許諾の範囲は,乙が今後において新商品として開発を思考する,指定商品区分第29類に該当する全てを対象とするものとし,それら商品を販売するためのパンフレット等印刷物への使用も全て含まれるものとする。」,「第5条 甲及び乙は,第三者が本件の権利を侵害し,又は侵害しようとしていることを知った時は,互いに遅滞なく報告し合い協力してその排除に努めるものとする。」,「第6条 本件の許諾期間は,甲と乙間の『三七人参加工食品』の継続的取引が存続する限り無期限とし,本件の更新期限が到来したときには,甲が自己の責任と費用をもって速やかに更新手続を行うものとし,以後も同様とする。」,及び「第7条 甲及び乙は,信義に基づいて本覚書を履行するものとし,万一本覚書に関して疑義が生じた場合には,甲及び乙はお互いに誠意を持ってこれを解決するものとする。」との記載がある。
ウ 以上によれば,申立人と被申立人とは,第29類の「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物,豆,加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品とした申立人商標(仙三七)の設定登録(平成16年1月30日)が完了した直後の平成16年3月25日に本件覚書を締結しており,その記載内容に照らすと,本件覚書は,申立人商標(仙三七)を,仙三七商品に付して,販売することを前提とするものであることが明らかである。
また,本件覚書によれば,申立人が被申立人に使用許諾して申立人商標(仙三七)を仙三七商品に付して販売することとされ,第三者からの申立人商標(仙三七)に係る商標権の侵害に対する対策も合意した上で,第7条において,申立人と被申立人は「信義に基づいて本覚書を履行する」とされていたことに照らすと,本件覚書において,被申立人自身が,三七人参を原材料とした健康食品との関連で被申立人商標(仙三七)を商標登録することは全く想定されていない。
(3)被申立人による商標登録出願行為
ア 被申立人の被申立人商標(仙三七)の出願行為
被申立人は,第5類「サプリメント」を指定商品とする被申立人商標(仙三七)の登録出願を行うにあたり,申立人に対し,事前にその事実を告知しておらず,申立人と被申立人の継続的売買契約の存続に関する交渉(以下「本件交渉」という。)の中で,被申立人が申立人に送付した2017年(平成29年)8月18日付け申し入れ書において,初めて上記商標の商標権者であることを明らかにした上で,仙三七商品の生産工場を確保したことを理由に,上記申し入れから10日余りの同月末をもって,仙三七商品の取引を終了することを一方的に申し入れた。また,併せて,被申立人は,申立人に対し,「マナマリン」に関する商標権の譲渡を申し入れ,その他の商品(金不換王など)については,既存の条件で取引を継続する旨提案した(甲14)。
イ 本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,黒色の縦長長方形を背景として,中央に大きく「仙三七」の漢字を金色で縦書きし,「仙」の文字の上部には赤字で「健増医研究会推奨品」の漢字を横書きし,「仙三七」の文字の右側には「金不換」の漢字を金色で,「文山三七 十頭根」の漢字を白字で縦書きし,「仙三七」の文字の左側には「せんさんしち」の平仮名を白字で縦書きしてなる(「仙三七」の文字の右半分には,構成する三文字を貫くように白い縦線が3本表されており,一番右の線は「健増医研究会推奨品」の文字の下までのびている。)ところ,本件商標は,その構成中に「仙三七」の文字を含むことから,本件商標と申立人商標(仙三七)とは類似するものである。
ウ 本件商標の出願行為
本件商標の登録出願は,本件交渉の中で被申立人に対して送付された,継続的売買契約を含む申立人と被申立人の間の全取引を継続するための条件等を通知する平成29年9月27日付けの催告書(甲21)の回答期限である同年10月6日を待たずに,同月2日に行われたものである。そして,申立人が,本件商標の登録出願の事実を把握したのは,特許情報プラットフォームにて公開商標公報を独自に確認したことによるものである(甲21?甲24,申立人の主張)。
以上によれば,被申立人は,被申立人商標(仙三七)のみならず,本件商標の登録出願を行うことも申立人に秘匿したまま,本件商標の登録出願を行ったものである。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記2(1)及び(2)のとおり,被申立人は,申立人から本件覚書に基づいて,継続的取引を前提に無償で申立人商標(仙三七)の独占的な使用を許諾され,この許諾に基づいて,仙三七商品に被申立人商標(仙三七)を付して長年にわたり販売してきたものであって,申立人との関係において「被申立人は申立人商標(仙三七)に関し,申立人に損害を与えてはならない信義則上の義務を負っていたものであり,また,本件覚書の第7条において,万一本覚書に関して疑義が生じた場合には,甲及び乙はお互いに誠意を持ってこれを解決するもの」とするとされていたにもかかわらず,被申立人は,申立人に何らの相談をすることなく,上記催告書の回答期限内に,仙三七商品と同種の商品を指定商品として本件商標を登録出願したものである。
この被申立人による,本件商標の登録出願行為は,申立人が申立人商標(仙三七)を第5類「サプリメント」を指定商品として商標登録していないことを奇貨として,申立人に秘匿したまま行われたものであるから,申立人商標(仙三七)を剽窃し,商標登録したものといわざるを得ないものである。
また,2017年(平成29年)8月18日付けの「申し入れ書」(甲14)によれば,被申立人は,当該申し入れ書を送付する前に,申立人以外の者から,仙三七商品と同種の商品を確保する段取りを既に整えていたことが認められ,また,上記「催告書」(甲21)により,被申立人は,申立人から従前どおりの取引継続又は申立人との間の全ての契約解除の判断を迫られていたことからすると,被申立人は,本件商標の登録出願を行い,申立人が「仙三七」のブランドで健康食品を販売することを妨げて,その利益を独占する一方で,申立人との交渉を有利に進めるという不当な利益を得ることを目的としたものであるといわざるを得ない。
以上によれば,被申立人による本件商標の登録出願行為は,申立人との間の信義則上の義務違反となるのみならず,健全な商道徳に反し,著しく社会的妥当性を欠くものがあり,その商標登録を認めることは,商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
4 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定に基づき,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲
別掲 本件商標(色彩は原本参照)

異議決定日 2021-03-09 
出願番号 商願2017-130729(T2017-130729) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W05)
最終処分 取消 
前審関与審査官 旦 克昌清川 恵子 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 須田 亮一
平澤 芳行
登録日 2020-04-13 
登録番号 商標登録第6244963号(T6244963) 
権利者 株式会社ベネセーレ
商標の称呼 ケンゾーイケンキューカイスイショーヒン、ケンゾーイケンキューカイ、ケンゾーイケンキュー、キンフカンブンサンサンシチジュートーコンセンサンシチ、キンフカンブンサンサンシチジュートーコン、キンフカン、ブンサンサンシチジュートーコン、ブンサンサンシチ、ジュートーコン、センサンシチ 
代理人 是枝 洋介 
代理人 楠屋 宏行 
代理人 羽柴 拓司 
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