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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1373956 
審判番号 取消2019-300714 
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-09-24 
確定日 2021-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第2476931号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2476931号商標の指定商品中、第30類「全指定商品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2476931号商標(以下「本件商標」という。)は、「たっぷり」の平仮名を横書きしてなり、平成元年2月21日に登録出願、第31類「調味料、その他本類に属する商品」を指定商品として、同4年11月30日に設定登録され、その後、指定商品については、同16年5月19日に、第29類「食用油脂,乳製品」及び第30類「調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
そして、本件審判請求の登録は、令和元年10月7日にされたものであり、この登録前3年以内の期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、令和2年1月7日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年3月17日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、請求書により甲第1号証及び甲第2号証を、弁駁書により甲第3号証及び甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者又は使用権者」という。)のいずれもが、本件商標の指定商品中の第30類「調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について使用している事実は認められないから、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録は取り消されるべきものである。
2 弁駁書の要旨
答弁書により被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第6号証によっては、商標権者又は使用権者のいずれもが、要証期間に、本件審判請求に係る指定商品中の「調味料」について、本件商標「たっぷり」を使用しているとは認められないので、本件商標の指定商品中の本件審判請求に係る指定商品についての登録は、取消を免れない。
(1)本件商標と使用標章との社会通念上の同一性について
乙第5号証における使用例がいずれも「マカロニたっぷりグラタンセット」の態様で使用されており、ここから「マカロニタップリグラタンセット」の称呼を生じ、全体として「マカロニがたっぷり入ったグラタン(のセット商品)」程度の一連の観念を無理なく生ずることからすれば、被請求人の提示する使用例は、商品の内容等を表す語であるといえ、これに接する取引者、需要者は、当該文字列から、ことさらに「たっぷり」の部分のみを商品の目印として認識することはできない。
また、これらの使用例は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、本件商標「たっぷり」と一致するものではないため、社会通念上同一の商標の使用にも該当しない。
(2)提出された証拠中に記載された商品は「調味料」に該当する商品とは認められないことについて
乙第5号証に掲載されている商品は詳細なところは不明であるが、「マカロニやグラタン用ソース等からなり、これに食材等を一部加えることで簡便にグラタンを作り、食べることができる商品」と認められる。
このような商品の内容を踏まえ、当該商品がどのような区分の商品と判断されるべきか確認するために、特許情報プラットフォーム「商品・役務名検索」(甲3)を提出する。
この検索結果を見ると、「グラタンのもと」、「マカロニ付きグラタンのもと」等が第29類の商品とされており、これらは、いずれも簡便に調理し食することを目的とした食品であることからすれば、「マカロニやグラタン用ソース等からなるセット商品であり、簡便にグラタンを調理し、食べることができる商品」は、「グラタンのもと」に属する(類する)商品であるといえる。
すなわち、被請求人は、本件商標をその指定商品である「調味料」について使用している証拠を提出しておらず、本件商標を指定商品「調味料」に使用しているものとは認められない。
(3)「商標使用に関する覚書」について
「商標使用に関する覚書」(乙1)の内容は、あくまで「『禁止権』の不行使」となっているので、日清フーズ株式会社(以下「日清フーズ社」という。)に登録商標「たっぷり」自体を、覚書に記載された商品「パスタ類に使用するソース」に使用することを許諾するものではなく、あくまで登録商標「たっぷり」に類似する商標(社会通念上同一ではない商標)を、「パスタ類に使用するソース」に使用すること等に関する覚書になっている。
すなわち、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、そもそも日清フーズ社に対して、登録商標の専用権の範囲内での使用を認めていないため、被請求人も認めているとおり、日清フーズ社は、本件商標の明示的な通常使用権者ではないことが明らかである。
次に、被請求人は、覚書に基づく本件商標の使用を確認していることがすなわち、黙示的に通常使用権を許諾していることは明白であるとしているが、覚書は、禁止権不行使をうたっているだけであり、被請求人が確認したというパンフレット等は全く提出されていない。
(4)要証期間における使用について
被請求人は、要証期間内に商標が使用されている証拠として乙第5号証に係るリーフレットの写しを提出して、2018年秋の商品リニューアル案内に係るリーフレットで、我が国の飲食料品のリニューアル時期である「2018年秋」の日前1年以内に配布されることが通常の取引実情に照らして明らかであるから、要証期間内に頒布されたことが明白であると主張しているが、当該リーフレットが実際に顧客等に頒布されたという事実は何ら示されておらず、乙第5号証が要証期間における使用の事実とは認められないことが明らかである。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書及び令和2年7月31日付け審尋に対する同年9月10日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、答弁書において乙第1号証ないし乙第6号証を、回答書において乙第7号証ないし乙第17号証を提出した。
1 答弁書による主張の要旨
本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、その使用を正規に許諾された通常使用権者により、本件審判請求に係る指定商品中「調味料」について継続的に使用されてきた事実がある。
(1)通常使用権の存在
本件審判の被請求人である日清オイリオグループ株式会社(以下「日清オイリオグループ社」という。)の前身である日清オイリオ株式会社は、日清フーズ社との間で、登録第2476931号「たっぷり」に係る商標権について、平成16年(2004年)4月30日付け商標使用に関する覚書を締結した(乙1、乙2)。
その後も両社は前記覚書の有効期間を、通算15年にわたって延長しており、日清オイリオグループ社は、日清フーズ社の完全親会社である株式会社日清製粉グループ本社(以下「日清製粉グループ本社」という。)からの2018年4月3日付の期間延長の依頼(乙3)を受けて、2018年6月15日付で前記覚書の有効期間を2018年7月1日から2020年6月30日まで延長する旨を通知し(乙4)、日清フーズ社による本件商標の使用を承諾している。
日清オイリオグループ社は、本件商標について日清フーズ社に対して明示的に通常使用権を許諾しているわけではないが、日清オイリオグループ社は、前記覚書第4条に基づき同社から商品カタログ等の提出をもって本件商標の使用について報告を受け、同社による本件商標の使用を確認し、承認してきた。
日清オイリオグループ社が、同社による本件商標の使用を承認していることは、同社に対して本件商標にかかる商標権を行使していないことからも明らかである。
かかる状況に鑑みれば、日清オイリオグループ社が本件商標にかかる商標権について、日清フーズ社に対して黙示的に通常使用権を許諾してきたことは明白である。
(2)「調味料」についての本件商標の使用
日清フーズ社は、常温及び冷凍のパスタ、パスタソースやグラタン用ソース、プレミックス粉の製造、販売を行う日清製粉グループ本社傘下の企業(100%子会社)であり、同社の商品は日本全国の問屋及び小売店に卸売りされ、小売店等を通じて一般消費者に販売されている。
乙第5号証は、日清フーズ社が発行し、取引先等に対して頒布した2018年秋の商品リニューアル案内用リーフレットである。乙第5号証が示すとおり、日清フーズ社は、同社商品の包装に「たっぷり」の文字を付して販売し、該商品に関する広告に「たっぷり」の文字を付して取引先に頒布等してきた。
ここで、商品の包装に付された「たっぷり」の文字はロゴ化されているものの、本件商標との書体の差は微差である。
両商標はともに構成文字が同じで、書体のみに変更を加えたものの範囲を出ないものと見るのが相当であるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用である。
また、乙第5号証に掲載されている商品は「粉末状のパスタ用調味料」であり「粉末状のグラタン用ソース」でもあるところ、これらが本件審判請求に係る指定商品中の「調味料」の範ちゅうに属することは明らかである(乙6)。
前記商品の包装に「たっぷり」の文字を付する行為は商標法第2条第3項第1号に掲げる行為であり、リーフレットに該商品を掲載して頒布する行為は同項第8号に規定する行為であるから、本件審判請求に係る指定商品中「調味料」についての「登録商標」の「使用」に該当するものである。
(3)本件商標の使用時期
乙第5号証は、日清フーズ社の2018年秋の商品リニューアル案内に係るリーフレットであり、2018年に同社により発行され、同社取引先等に対して順次頒布されたものである。
当該リーフレットに発行年月日の記載はないが、我が国の飲食料品のリニューアルの頻度の高さに鑑みれば、リニューアル時期である「2018年秋」の日前1年以内に頒布されることが通常の取引実情に照らして明らかであるから、当該リーフレットが、要証期間内に頒布されたものであることは明白である。
これらの行為が、いずれも本件商標の「使用」に該当するものであるから、本件廂標が、本件審判の請求の登録前3年以内に使用されてきたことは客観的に明白である。
2 回答書による主張の要旨
(1)当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、令和2年7月31日付け審尋で、グラタンのもとは、調味料の範ちゅうの商品とは考え難いこと、リーフレット(乙5)の作成時期、作成数、頒布先、頒布時期及び頒布方法等が明らかではないこと等から、被請求人が答弁書で提出した乙第1号証ないし乙第6号証によっては、要証期間に、商標権者又は使用権者が、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していることを証明しているものとはいえない旨の合議体の暫定的見解を示し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
(2)回答書による主張の要旨
被請求人は、上記(1)の審尋に対し、回答書において、要旨以下のように述べた。
ア 乙第5号証に掲載されている商品は「マカロニ」及び「グラタン用のソースミックス」をセットにして販売する商品である(乙7)。
そして、既に弁駁書(審決注:答弁書の誤記と思われる。)で述べたとおり、「グラタン用ソース」は、「調味料」の範ちゅうに属するものである(乙6)から、審尋における「グラタンのもとは、調味料の範ちゅうの商品とは考え難い」との判断は誤りである。
イ 乙第5号証に掲載されている商品「マカロニ/たっぷり/グラタン/セット」(以下「本件商品」という。)における本件商標の使用を証明するため、乙第7号証ないし乙第17号証を提出する。
乙第7号証は、本件商品の包装や内容物を表す写真である。
ここから、本件商品は「マカロニ」及び「グラタン用のソースミックス」をセットにして販売する商品であることが立証される。
乙第8号証ないし乙第10号証は本件商品が掲載されている、日清フーズ社の商品パンフレットの抜粋である(2017年2月、2018年10月、2019年7月発行)。
これらのパンフレットは要証期間における日清フーズ社の商品パンフレットである。
ここに、本件商品が「JANコード」(バーコード部分下部の数字)とともに掲載されている。
乙第11号証は、要証期間が含まれる、平成28年(2016年)10月から令和元年(2019年)10月における、本件商品の販売実績に関する資料である。
同資料は株式会社インテージのSRI調査(全国小売店パネル調査)の結果に基づき、日清フーズ社加工食品事業部が作成したものであり、同資料中に商品名(カタカナ)、JANコード、各商品の推計販売規模(個数)などが記載されている。
同資料中の商品名、JANコードから、乙第8号証ないし乙第10号証に掲載されている本件商品の販売実績が確認できる。
ここから、本件商品は上記期間において、1800万個以上販売された事実が立証される。
乙第14号証は、インターネット上の食品に関する「ロコミ」サイト、「もぐナビ」の打ち出しである。
同サイト中に、本件商品の写真と、「2018/8/20発売」の文字、商品情報等が表示されている。
乙第15号証は、個人の2018年3月21日付のブログ記事の打ち出しである。
当該記事中に、本件商品の写真と、本件商品を実際に調理し、味わった感想などが記載されている。
乙第16号証は、日清製粉グループ本社及び日清フーズ社の2018年8月3日付のニュースリリースの写しである。
当該ニュースリリース中に、本件商品の写真や、本件商品のリニューアル販売に関する情報などが記載されている。
また、乙第17号証は、日清製粉グループ本社及び日清フーズ社の2015年8月5日付のニュースリリースの写しである。
当該ニュースリリース中に、本件商品のリニューアル前の商品の写真や、ラインナップの追加、パッケージデザインの変更等に関する情報が掲載されている。
ウ 以上、乙第5号証、乙第7号証ないし乙第16号証により、本件商品は要証期間である平成28年(2016年)10月7日から令和元年(2019年)10月6日までに、実際に販売されている事実が立証されるものであり、ひいては本件商標が要証期間内に実際に使用(商標法第2条第3項第2号、同項第8号)されている事実が立証されるものである。

第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、ア 要証期間に、イ 日本国内において、ウ 商標権者又は使用権者のいずれかが、エ 本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、オ 本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人が提出した乙各号証は、以下のとおりである。
(1)乙第1号証は、本件商標権者の前身である日清オイリオ株式会社の取締役社長と日清フーズ社の取締役社長との間で締結された平成16年4月30日付商標使用に関する覚書である。
本号証の1葉目に、「日清オイリオ株式会社(以下、甲という)と日清フーズ株式会社(以下、乙という)とは、甲の所有する登録第2476931号商標『たっぷり』(以下、本商標という)に関し、次のとおり覚書を締結する。」の記載の下、第1条に「甲は、乙が販売する商品に係わる商標の使用に関し、次の範囲において本商標に基づく禁止権の行使をしないものとする。」と記載され、「(1)商品」の横に「パスタ類に使用するソース」、「(2)地域」の横に「日本全国」、「(3)期間」の横に「平成16年7月1日から2年間」と記載され、第5条に「本覚書の有効期間は、平成16年7月1日から平成18年6月30日までの2年間とする。ただし、期間の満了前3ヵ月までに甲乙いずれからも何らの申し出でがない場合は、さらに同1条件で2年間延長されるものとし、以後も同様とする。」の記載がある。
(2)乙第2号証は、本件商標権者である日清オイリオグループ社のウェブサイトにおける「会社沿革」の項目を2019年12月23日に印刷したものである。
本号証の「会社沿革」の項目の2004(平成16)年の欄に、日清オイリグルーオ株式全社、日清オイリオ株式会社、リノール油脂株式会社、ニッコー製油株式会社の4社合併により、「日清オイリオグループ」誕生の記載がある。
(3)乙第3号証は、日清製粉グループ本社の総務本部知的財産部長が、日清オイリオ株式会社の知的財産部長にあてた、「貴社商標『たっぷり』使用に関する覚書の件」のタイトルの2018年4月3日付け依頼書の写しである。
本号証に、「貴社と弊社の事業会社である日清フーズ株式会社間で締結しております平成16年4月30日付の『商標使用に関する覚書』(以下「本覚書」という。)に関しまして、日清フーズ株式会社が本覚書に定める貴社商標『たっぷり』の継続使用を希望しておりますことから、本覚書の期間延長をお願いしたく、ご連絡する次第です。つきましては、本覚書の有効期間を平成30年7月11日から平成32年6月20日までさらに延長することをお願い申し上げます。」の記載がある。
(4)乙第4号証は、日清オイリオグループ社の知的財産部長が、日清製粉グループ本社の総務本部知的財産部長にあてた、「登録商標『たっぷり』(第2476931号)使用に関する覚書の件」のタイトルの2018年6月15日付け承諾書の写しである。
本号証に、「既社の事業会社である日清フーズ株式会社様と弊社との平成16年(2004年)4月30日付の標記覚書につきまして、平成30年(2018年)4月3日付貴信による覚書の期間延長の申入れを戴きましたので、弊社は承知する旨お知らせいたします。したがいまして、本契約は平成30年(2018年)7月11日から平成32年(2020年)6月30日まで、さらに2年間有効であることをご通知申し上げます。」の記載がある。
(5)乙第5号証は、日清フーズ社が作成した「2018秋 常温リニューアル品のご案内」をタイトルとするリーフレットの写しであり、本号証の1葉目の中央部に、3つの商品の写真が掲載され、左側の包装箱には、赤色の「マ・マー」の文字、及び、「マ・マー」の文字の下に、上から順に、「マカロニ」の文字、「たっぷり」の文字、並びに「グラタンセット」(「セット」の文字のみ縦書き。以下同じ。)の文字が3段に横書きされており、中央の包装箱には、赤色の「マ・マー」の文字、及び、「マ・マー」の文字の下に、上から順に「マカロニ」の文字、「たっぷり」の文字、並びに「グラタンセット」の文字が3段に横書きされ、右側の包装箱には、赤色の「マ・マー」の文字、及び、「マ・マー」の文字の下に、上から順に「マカロニ」の文字、「たっぷり」の文字、並びに「グラタンセット」の文字が3段に横書きされている。
(6)乙第7号証は、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 2人前」の包装箱と包装箱の内容物の写真であり、本号証の1葉目の商品の包装箱には、赤色の「マ・マー」の文字、及び、「マ・マー」の文字の下に、上から順に、「マカロニ」の文字、「たっぷり」の文字、並びに「グラタンセット」(「セット」の文字のみ縦書き。以下同じ。)の文字が3段に横書きされている。
本号証の2葉目は、左側に、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 2人前」の包装箱の裏表紙の写真、中央に、ビニール袋に封入されたマカロニの写真、右側に、日清フーズ社の記載のある白色包装袋の写真が並べられているものであり、本号証の3葉目は、赤色の長方形図形内に白抜きで「ソースミックス」と記載された白色包装袋の写真であり、本号証の4葉目は、日清フーズ社の記載のある白色包装袋の写真である。
(7)乙第8号証ないし乙第10号証は、日清フーズ社が作成した「常温家庭用商品のご案内」のタイトルの商品パンフレットであり、これらの証拠には、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 2人前」、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 4人前」、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット チーズソース用 2人前」、及び「マ・マー マカロニグラタンセット ミートソース用 2人前」の記載の下に、各商品の包装箱の写真が掲載されている。
また、乙第8号証の商品パンフレットには、「2017年12月現在」の記載、乙第9号証の商品パンフレットには、「2018年8月現在」の記載、乙第10号証にの商品パンフレットには、「2019年7月現在」の記載がある。
(8)乙第11号証は、2020年8月26日に、日清フーズ社PM総括部が作成した「マ・マー『マカロニ/たっぷり/グラタン/セット』販売実績資料」であり、本号証の販売実績資料の表によると、2016年10月1日から2019年10月31日までの「ニツシンF マ・マー マカロニグラタンホワイト86G」の販売累計数は9,950個、「ニツシンF マ・マー マカロニグラタンセットホワイト172G」の販売累計数は4,350個、「マ・マー マカロニグラタンミートソース 96G」の販売累計数は2,250個及び「マ・マー マカロニグラタンチーズソース 86G」の販売累計数は、1,663個と記載されている。
(9)乙第12号証は、株式会社週刊食品が発行した2018年(平成30年)8月20日付け食品業界専門誌「フード・ウィークリー」の17頁の抜粋記事であり、当該記事中の「秋冬新商品」のタイトルの下に、「『マ・マー マカロニグラタン』シリーズはスーパープロント製法(風ぐるま形状の溝を入れる独自技術)のマカロニを使用し、より本格的な食感でリニューアル。」の記載がある。
(10)乙第13号証は、株式会社食糧業界新聞社が発行した2018年8月21日付け専門情報紙「米麦日報」の「麦の面」の抜粋記事であり、当該記事中の「<『マ・マー マカロニグラタン』改良>のタイトルの下に、「マカロニとソースミックスがセットで、別ゆで不要、一つの鍋で作れる『マ・マーマカロニグラタン』をリニューアル。同社独自の早ゆで製法・スーバープロント製法のマカロニを使用し、より本格食感のマカロニグラタン『マ・マーマカロニたっぷりのグラタンセット』(写真下)を発売する。スーパープロント製法のマカロニは、マカロニの内側に風ぐるま形状の溝を入れることで、早ゆでながら、しっかり弾力のある本格的な食感が楽しめる。また、マカロニの長さを短くし、子どもでもより食べやすい設計に変更した。『マ・マーマカロニたっぷりグラタンセットホワイトソース用』(2人前86g147円、4人前172g210円)、『同チーズソース用』(2人前86g147円)、『同ミートソース用』(2人前96g147円)。」の記載がある。
(11)乙第14号証は、「もぐなび」のウェブサイトに掲載された記事の抜粋であり、本号証の1葉目の「マ・マー マ・マーマカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用」のタイトルの下に、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 2人前」及び「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 4人前」の包装箱の写真が掲載され、その写真の下に「メーカー:日清フーズ」の記載及び「ブランド:マ・マー」の記載、「商品一覧」の欄の「マ・マーマカロニたっぷりグラタンセットホワイトソース用4人前箱172g」の記載の下に「2018/8/20発売」の記載がある。
(12)乙第15号証は、「かねやんのごきげん日記」のタイトルのウェブログの2018年3月21日の記事の抜粋であり、記事中に、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット」の記載がある。
(13)乙第16号証は、日清製粉グループ本社及び日清フーズ社の2018年8月3日付けニュースリリースであり、本号証の7頁に、「ロングセラーの『マ・マーマカロニグラタン』がもっとおいしく! 当社独自技術のマカロニを使用し、より手作り感のある本格食感のおいしさを実現」の見出しの下、「マカロニとソースミックスがセットになった、別ゆで不要でひとつのお鍋で作れる『マ・マーマカロニたっぷりグラタンセット』は、当社独自技術の“スーパープロント製法”のマカロニを使用することで、より手作り感のある本格食感のマカロニグラタンが作れるよう、リニューアルします。」の記載と「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 2人前」、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用 4人前」、「マ・マー マカロニたっぷりグラタンセット チーズソース用 2人前」、及び「マ・マー マカロニグラタンセット ミートソース用 2人前」の包装箱の写真が掲載されている。
(14)乙第17号証は、日清製粉グループ本社及び日清フーズ社の2015年8月5日付けニュースリリースであり、本号証の6頁に、「マカロニグラタンシリーズに新製品『チーズソース用』投入 『北海道産かぼちゃを使ったチーズクリーム用』はハロウィン風パッケージでも発売」の見出しの下、「マ・マーマカロニたっぷりグラタンセット ホワイトソース用2人前/4人前」の記載、「・旨みをアップさせ、さらにコクのある味わいに」の記載、「マ・マーマカロニたっぶりグラタンセットチーズソース用2人前」の記載、「・チーズのコクとまろやかな昧わい」の記載、「マ・マーマカロニたっぶりグラタンセットミートソース用2人前」の記載、及び「・さらにお肉のコクのある味わいに」の記載がある。
3 被請求人の主張及び上記2の被請求人の提出した全証拠から、当審の判断は、以下のとおりである。
(1)通常使用権について
被請求人の主張及び被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第4号証によれば、本件商標の商標権者である日清オイリオグループ社は、本件商標にかかる商標権について、日清フーズ社に対して黙示的に通常使用権を許諾してきたことが推認できる。
(2)使用商品について
被請求人の主張及び被請求人の提出した乙第5号証、乙第7号証ないし乙第10号証、及び乙第12号証ないし乙第17号証によれば、被請求人が本件商標を使用したと主張する商品は、「マカロニ」と「グラタン用のソースミックス」をセットにして包装箱に封入され販売される商品(以下「使用商品」という場合がある。)であり、封入された「マカロニ」のみ、あるいは、「グラタン用のソースミックス」のみが、それぞれ、単品として販売されている事実は、被請求人の提出した全証拠からは確認することができない。
そして、使用商品は、「マカロニ」と「グラタン用のソースミックス」を一緒に調理することで、購入者が特に「ホワイトソース」等の調味料を追加する等の味付けを行うことなく、「マカロニグラタン」が出来上がる商品であることからすると、封入された「グラタン用のソースミックス」は、製造者(メーカー)が、グラタンの味を事前に調整したものであり、加工食料品に該当する商品であり、本件審判請求に係る指定商品中の「調味料」の範ちゅうの商品とはいえず、かつ、本件審判請求に係る指定商品中の「香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」の範ちゅうの商品とはいえない。
また、「マカロニ」も、「穀物の加工品」に該当する商品であるから、本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうの商品とはいえない。
(3)使用商標について
被請求人の提出した乙第5号証、乙第7号証ないし乙第10号証、及び乙第12号証ないし乙第17号証によると、使用商品の包装箱に使用された商標は、「マ・マー」の文字からなる商標(以下「使用商標1」という。)及び、「マ・マー」の文字、「マカロニ」の文字、「たっぷり」の文字及び「グラタンセット」を結合した「マ・マーマカロニたっぷりグラタンセット」の文字からなる商標(以下「使用商標2」という。)であると認められる。
以下、使用商標1と使用商標2をまとめていう場合は、「使用商標」(別掲)という。
(4)本願商標と使用商標との社会通念上同一性について
本件商標は、上記第1のとおり、「たっぷり」の平仮名を横書きにしてなるものであり、使用商標1は、「マ・マー」の文字からなるものであり、本件商標「たっぷり」と使用商標1「マ・マー」とは、外観・称呼及び観念が相違すること明らかである。
また、本件商標「たっぷり」と使用商標2「マ・マーマカロニたっぷりグラタンセット」とは、外観・称呼及び観念が相違すること明らかである。
したがって、本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標とは認められない。
(5)通常使用権による使用商品の販売時期について
被請求人の提出した乙第5号証、乙第7号証ないし乙第10号証ないし乙第17号証によると、日清フーズ社は、遅くとも2015年8月から2019年10月までの間、包装箱に使用商標を記載した使用商品を販売していたことが認められる。
(6)小括
以上のことから、本件商標の通常使用権者である日清フーズ社は、要証期間に、使用商標を記載した包装箱に封入した「マカロニ」及び「グラタン用のソースミックス」のセット商品を販売したことは認められる。
しかしながら、「マカロニ」及び「グラタン用のソースミックス」は、いずれも本件審判請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品ではなく、また、本件商標と使用商標は、社会通念上同一の商標とは認められない。
その他、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることを証明するための証拠を提出していない。
4 被請求人の主張
被請求人は、「グラタン用のソースミックス」は、本件審判請求に係る指定商品中の調味料に該当する商品である旨を主張する。
しかしながら、上記3(2)のとおり、「グラタン用のソースミックス」は、製造者(メーカー)が、グラタンの味を事前に調整したものであり、加工食料品に該当する商品であり、「調味料」に該当する商品とは認められないものである。
また、被請求人は、「マカロニ」と「グラタン用のソースミックス」をセットで販売する商品の包装に「たっぷり」の文字を使用し取引を行った旨を主張する。
しかしながら、日清フーズ社が販売する「マカロニ」及び「グラタン用のソースミックス」のセット商品の包装箱等に使用された商標は、「マ・マー」の文字又は「マ・マーマカロニたっぷりグラタンセット」の文字であって、「たっぷり」の文字のみを当該商品の出所識別標識として使用しているものとは認められないものである。
したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。
5 むすび
以上のとおりであるから、被請求人が提出した全証拠によっては、被請求人は、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を、要証期間に、商標法第2条第3項各号に規定する使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(使用商標)





審理終結日 2021-02-10 
結審通知日 2021-02-16 
審決日 2021-03-03 
出願番号 商願平1-19183 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 豊田 純一
小俣 克巳
登録日 1992-11-30 
登録番号 商標登録第2476931号(T2476931) 
商標の称呼 タップリ 
代理人 豊崎 玲子 

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