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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1371889 
審判番号 取消2019-300891 
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-12-05 
確定日 2021-03-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第1469798号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1469798号商標の指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1469798号商標(以下「本件商標」という。)は、「おはよう」の平仮名を横書きにしてなり、昭和53年11月20日に登録出願、第11類「民生用電気機械器具,その他本類に属する商品」を指定商品として、同56年7月31日に設定登録、その後、平成14年2月6日に指定商品を第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を含む第7類、第8類、第9類、第10類、第11類、第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品とする書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年12月18日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間を以下「本件要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書、令和2年2月14日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年3月19日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
1 請求の要旨
本件商標は、その指定商品中の「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者又は使用権者」という。)のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 弁駁書による主張の要旨
被請求人は、答弁書において、本件要証期間に日本国内において、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標を使用しており、本件の請求は成り立たない旨を主張し、乙第1号証ないし乙第4号証を提出しているが、乙号証として提出された証拠資料はいずれも、本件商標と同一の標章の使用を示すものではない。
(1)使用標章について
被請求人は、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が日本市場において販売した地上・BS・110度CSデジタルハイビジョン液晶テレビ(以下「液晶テレビ」という。)についてのニュースリリースや取扱説明ガイド等を証拠として提出している(乙1?乙3)。
しかしながら、表示された標章(以下「使用標章」という。)は、本件商標と同一ではない。本件商標は、平仮名の「おはよう」のみで構成されているところ、使用標章は、「おはよう」と片仮名の「タイマー」を結合した「おはようタイマー」である。
この点について、被請求人は、「おはようタイマー」の構成中においては「タイマー」は普通名称であり、「おはよう」が商標の要部であることは明らかであるから、上記の証拠資料における「おはようタイマー」の使用が、本件商標「おはよう」と社会通念上同一の商標の使用と認められると主張しているが、商標の要部の認定にあたっては、付加結合部分が普通名称というだけで当該部分を一律に捨象できるわけではなく、商標の構成全体における結合性の高さや、当該指定商品の分野における取引実情等も考慮したうえで、判断すべきである。
(2)商標の要部の認定について
ア 本件商標
本件商標は、平仮名文字の「おはよう」で構成されるものである。そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「オハヨウ」の称呼を生じ、「おはよう」の文字は、「起床時に、または午前中に人に会った時の挨拶」程の観念を有するものである。
イ 使用標章
使用標章は、「おはようタイマー」で表されたものである。
そうすると、使用標章は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で、まとまりよく一体に書されているばかりでなく、その構成中の文字部分に相応して生ずる「オハヨウタイマー」の称呼も、よどみなく一気一連に称呼し得るものである。
また、「おはよう」の文字は、「起床時に、または午前中に人に会った時に挨拶」を意味する一般的な言葉であり、「タイマー」は、「あらかじめ設定した時間が経過したことを知らせる装置のこと」を意味する一般的な言葉であることから、全体として「起床時を知らせる装置」程の観念を有するものである。
この点については、乙第2号証の取扱説明ガイドにおいて、「目覚ましとして使うなどタイマーで電源を入れる(おはようタイマー)」との記載、あるいは乙第3号証において、「指定した時刻にテレビがオンになる『おはようタイマー』」との記載が見られることからも、上記のような観念を有することは明白である。
ウ 取引実情について
本件審判の対象となっている指定商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」の分野においては、「タイマー」という言葉は、タイムスイッチ機能を表す言葉として、かなり一般的に使用されている。
その点、被請求人が普通名称であると主張しているとおり、「タイマー」という言葉単独では、自他商品識別力が無いか、もしくは極めて低いことは確かな事実である。
しかしながら、識別力が低いがそれゆえに、取引の現場では、どのような用途のタイマーなのかを補足的に説明する言葉が頻繁に使用されている。
たとえば、テレビメーカー各社においては、「目覚ましタイマー」、「お休みタイマー」(甲2)、「オンタイマー」、「スリープタイマー」(甲3)、「オンタイマー」、「オフタイマー」(甲4)、「だんだんオンタイマー」、「だんだんオフタイマー」(甲5)、「おはようタイマー」、「OFFタイマー」、「オフタイマー」(甲6)という使用例が見られる。
これらの例に見られるように、「○○タイマー」という用途の補足説明を加えた態様で一つの言葉として意味が成立している。
使用標章も、「タイマー」の部分を捨象した「おはよう」だけでは、用途が判然としないが、「おはようタイマー」という態様でとらえて初めて、「指定した時刻に電源がオンになる」タイマーの用途の意味が理解できる。
してみると、使用標章「おはようタイマー」は、外観上、称呼上、観念上一体としてとらえるべきものであるから、「タイマー」がたとえ普通名称だったとしても、「おはよう」の文字のみが独立して分離観察されるものではなく、「おはようタイマー」の文字全体をもって一つの造語を形成している商標とみるのが相当である。
工 本件商標が使用標章と社会通念上同一であるかについて
上記ア、イ及びウのとおり、本件商標と使用標章とは、それぞれの商標における要部といえる「おはよう」及び「おはようタイマー」の文字部分において、構成文字が相違し、これより生じる称呼及び観念が明らかに異なるから、全体として異なる商標であるのは明白であり、社会通念上同一のものとはいい得ないものである。
(3)その他
なお、被請求人は、乙第4号証として、本件商標の平成3年4月12日付けの商標権存続期間更新登録願時の資料を提出し、本件審判においても同様の判断がなされるべきである旨主張している。
しかしながら、添付された拒絶理由通知書及び被請求人の意見書においては、使用標章「おはようタイマー」の構成文字である「おはよう」の部分についての自他商品識別力の有無についての主張が交わされただけであり、「おはようタイマー」全体を要部としてとらえるべきという点については何らの検討及び判断もされていないものである。
(4)結語
以上の理由により、乙号証として提出された証拠資料はいずれも、本件商標と同一の標章の使用を示すものではない。よって、本件商標が本件審判の予告登録前3年以内に指定商品について使用されていたと認めることができない。

第3 被請求人の主張の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 乙第1号証は、2017年6月8日付のニュースリリースであり、同年7月1日発売の形名LC-60US45及びLCー55US45並びに7月25日発売の形名LC-50US45の液晶テレビについて紹介するものである。乙第2号証は、形名LC-60US45、LC-55US45、LC-50US45及びLC-45US45に共通する取扱説明ガイドを抜粋したものであり、当該取扱説明ガイドの2-46ないし2-52に「おはようタイマー」の記載がある。
2 乙第2号証の取扱説明ガイドが対象としている形名には、乙第1号証の二ュースリリースで紹介されている液晶テレビ3機種が含まれており、これは、2017年7月に発売された機種で「おはようタイマー」の語が使用されていることを示している。すなわち、本審判請求登録日の過去3年以内である2017年7月以降に「おはようタイマー」の語が液晶テレビに使用されていることを示すものである。乙第3号証は、2019年8月版の液晶テレビ総合カタログの写しであり、この42頁に「おはよう・おやすみタイマー」及び「おはようタイマー」の記載があり、本審判請求登録日の過去3年以内である2019年8月以降に「おはよう・おやすみタイマー」及び「おはようタイマー」の語が液晶テレビに使用されていることを示すものである。
3 登録商標の使用であるかどうかは、自他商品の識別をその本質的機能としている商標の性格上、単なる物理的同一にこだわらず、取引社会の通念に照らして判断される必要があるものと解すべきと思料する。上記の証拠資料に使用されている「おはようタイマー」と、本件商標「おはよう」とは、「タイマー」の語の有無において相違するものの、「おはよう」という語は、商品の機能を表す語ではなく、商標としての自他商品識別力を十分に有しており、「おはようタイマー」の構成中においては「タイマー」は普通名称であり、「おはよう」が商標の要部であることは明らかであるから、上記の証拠資料における「おはようタイマー」の使用が、本件商標「おはよう」と社会通念上同一の商標の使用と認められることは、明白である。
4 本件商標の平成3年4月12日付の商標権存続期間更新登録願(乙4)について、登録商標の使用説明書とともに洗濯機の商品カタログを提出しているが、このカタログで使用されている「おはようタイマー」について、一旦は、登録商標の使用とは認められない旨の拒絶理由通知を受けたものの、意見書を提出した結果、「おはようタイマー」の使用が、本件商標の使用として認められ、存続期間の更新登録を認められている。
したがって、本件で提出した証拠資料における「おはようタイマー」の使用も、審理の一貫性の観点からも同様に本件商標の使用と認められるべきである。
5 本件商標権者が、本件商標を本審判請求に係る指定商品である「電気通信機械器具」について本審判請求登録日の過去3年間に継続して使用していることは明白である。

第4 当審における令和2年8月21日付け審尋及び被請求人の回答
1 審尋
審判長は、被請求人に対し、令和2年8月21日付けで、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解及び請求人提出の弁駁書に対する回答を求めた。
2 被請求人の回答
被請求人は、上記1の審尋に対し何らの応答もしていない。

第5 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、その請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(1)本件要証期間に、(2)日本国内において、(3)商標権者又は使用権者のいずれかが、(4)本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、(5)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、2017年(平成29年)6月8日付けの「4K液晶テレビ『AQUOS』3機種を発売」をタイトルとするニュースリリースであり、同年7月1日に「形名LC-60US45」及び「形名LC-55US45」の地上・BS・110度CSデジタルハイビジョン液晶テレビが発売されること、同月25日に「形名LC-50US45」の地上・BS・110度CSデジタルハイビジョン液晶テレビが発売されることが紹介されている。
しかしながら、本号証には、本件商標「おはよう」の文字の使用は確認することができない。
(2)乙第2号証は、「形名LC-60US45」、「形名LC-55US45」及び「形名LC-50US45」等の地上・BS・110度CSデジタルハイビジョン液晶テレビに共通する取扱説明ガイドであり、本号証の2-46頁ないし2-52頁に「おはようタイマー」の語が使用されている。
乙第3号証は、2019年(令和元年)8月版の液晶テレビ総合カタログの写しであり、本号証の42頁に「おはよう・おやすみタイマー」及び「おはようタイマー」の語が使用されている。
しかしながら、「おはようタイマー」及び「おはよう・おやすみタイマー」の語は、商品「液晶テレビ」の機能を紹介するにすぎないものであり、商品「液晶テレビ」に本件商標「おはよう」を使用した事実又は商品「液晶テレビ」の包装に本件商標「おはよう」を使用する事実を証明するものではない。
3 判断
(1)使用商標について
被請求人は、「おはようタイマー」(乙2、乙3)又は「おはよう・おやすみタイマー」(乙3)の使用が、本件商標「おはよう」と社会通念上同一の商標の使用である旨主張しているが、「おはようタイマー」の語及び「おはよう・おやすみタイマー」の語は、商品「液晶テレビ」の機能を表示するものであり、これらが、商品「液晶テレビ」の出所識別標識であるとはいえない。
その他、被請求人の提出した全証拠を参照しても、本件商標「おはよう」又は本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、商品「液晶テレビ」に使用している事実を確認することができない。
(2)カタログの頒布等について
2019年(令和元年)8月版の液晶テレビ総合カタログ(乙3)は、発行部数、頒布先、頒布の頻度等、これらを裏付ける具体的な証拠の提出はないから、当該カタログが頒布されたとは認めることができない。
(3)小括
上記のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件要証期間に、本件商標の商標権者が、本件審判請求に係る指定商品について、本件商標を使用したことを認めるに足る事実を見いだせない。
4 被請求人の主張について
被請求人は、答弁書において、「商品『液晶テレビ』に使用された『おはようタイマー』と、本件商標『おはよう』とは、『タイマー』の語の有無において相違するものの、『おはよう』という語は、商品の機能を表す語ではなく、商標としての自他商品識別力を十分に有しており、『おはようタイマー』の構成中においては『タイマー』は普通名称であり、『おはよう』が商標の要部であることは明らかであるから、『おはようタイマー』は、本件商標『おはよう』と社会通念上同一の商標の使用と認められることは、明白である。」旨を主張する。
しかしながら、商品「液晶テレビ」に使用された「おはようタイマー」の記載は、液晶テレビの機能を表示するものであり、「おはようタイマー」の記載が、当該商品の出所識別標識を表示するものとはいえない。
また、仮に、「おはようタイマー」の記載が、商品「液晶テレビ」の出所識別標識と認められたとしても、本件商標「おはよう」と「おはようタイマー」は、構成文字数の相違により、その外観及び称呼が明らかに相違することから、本件商標「おはよう」と「おはようタイマー」は、社会通念上同一の商標とは認められない。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件要証期間に日本国内において、商標権者又は使用権者が本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2020-12-25 
結審通知日 2021-01-05 
審決日 2021-01-21 
出願番号 商願昭53-85082 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小俣 克巳
豊田 純一
登録日 1981-07-31 
登録番号 商標登録第1469798号(T1469798) 
商標の称呼 オハヨウ 
代理人 堅田 裕之 

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