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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない W3043
審判 全部無効 外観類似 無効としない W3043
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W3043
管理番号 1370945 
審判番号 無効2020-890029 
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-03-18 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5750467号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5750467号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年9月9日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン,かき氷」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同27年2月5日に登録査定、同年3月20日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する登録商標は、以下のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5059390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成18年10月25日
設定登録日:平成19年6月29日
指定商品及び指定役務:第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供」のほか、第3類、第5類、第8類、第16類、第20類、第21類、第24類、第25類、第27類、第34類ないし第36類、第41類、第43類ないし第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
2 登録第5454197号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成23年3月31日
設定登録日:平成23年12月2日
指定商品:第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」のほか、第3類、第5類、第8類ないし第12類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類ないし第26類、第28類ないし第34類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」及び第43類「飲食物の提供」について、商標法第4条第1項第11号に該当し、また、全ての指定商品及び指定役務について、同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標の構成
本件商標は、別掲1のとおり、欧文字の「P」をモチーフにしたロゴマーク(以下「本件Pロゴ」という。)を語頭部に配し、その右側に「Precious」と「Mon Favori Sweets」の欧文字を2行表記した構成からなる。かかる構成は、図案化した「本件Pロゴ」の部分と、一般的な書体からなり、語意としても「大切な私のお菓子」ほどの意味合いを有するにすぎず、創作的フレーズではない「Precious/Mon Favori Sweets」の欧文字からなるといえる。
そうすると、本件商標の識別標識としての支配的要素は、視覚的により顕著な「本件Pロゴ」の部分にあるということができる。
(2)引用商標の構成
引用商標1は、別掲2のとおり、欧文字「P」をモチーフにしたロゴマーク(以下「Pロゴ」という。)からなり、また、引用商標2は、別掲3のとおり、「Pロゴ」を上部中央に配し、その下方部に欧文字「Prince Hotel」を表記した構成からなる。かかる構成は、いずれも図案化した「Pロゴ」の部分が独立した識別要素として機能するものである。
(3)本件商標と引用商標との類似性
ア 本件商標の構成は前記のとおりであり、その構成中、欧文字「P」をモチーフにした「本件Pロゴ」の部分は、識別標識として支配的な印象を与え、独立して識別標識として機能することは明らかである。
引用商標中の「Pロゴ」との差異は、「本件Pロゴ」が、やや斜体化されていて、ロゴ下方端が引用商標の「Pロゴ」より短く楕円状に湾曲していないところにある。
需要者や取引者が両商標を時と場所を異にしてそれぞれ視認した場合、この程度の差異は微細なもので、本件商標の「本件Pロゴ」は、引用商標の「Pロゴ」と同一のものと認識するか、引用商標の「Pロゴ」に酷似したロゴと認識し理解する程度のものである。
イ 引用商標の周知性
下記3(1)で述べるとおり、引用商標1及び引用商標2中の「Pロゴ」が請求人会社のコーポレートマークとして、全国的な周知著名性を獲得している。
ウ 被請求人による引用商標「Pロゴ」の使用
被請求人及びその持ち株会社である「株式会社Precious Investment」(以下、あわせて「被請求人会社」という。)は、被請求人会社のホームページ及びテレビCM(テレビ宮崎)において、本件商標の「本件Pロゴ」ではなく、請求人所有の引用商標に係る「Pロゴ」と全く同一態様のロゴマークを使用する(甲22、甲23)。ホームページ上での使用については、請求人からの指摘により、今は「本件Pロゴ」に変更しているが、テレビCMについては、現在も引用商標の「Pロゴ」をそのまま使用し放映を継続している。
仮に、被請求人会社のかかる使用が、引用商標についてのフリーライドやダイリューションを目的とした意図的なものではないとするなら、正に、被請求人自身が本件商標の「本件Pロゴ」と引用商標の「Pロゴ」とを誤認混同した結果に他ならない。
(4)指定商品又は指定役務の同一
本件商標に係る指定商品又は指定役務は、第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン,かき氷」及び第43類「飲食物の提供」である。
一方、引用商標1に係る指定商品又は指定役務には、第43類「飲食物の提供」が、引用商標2に係る指定商品には、第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」が含まれている。
よって、本件商標に係る指定商品中の第30類「茶,コーヒー及びココア,菓子及びパン」は、引用商標2の指定商品と同一であり、また、本件商標の指定役務の第43類「飲食物の提供」は、引用商標1に係る指定役務と同一である。
(5)まとめ
商標の類否は、出願商標と引用商標とが同一又は類似の商品又は役務に使用された場合、商品又は役務の出所につき「混同を生ずるおそれ」があるか否かによって決せられるべきところ、類否判断の基準及び方法並びに取引の事情等を踏まえ判断すると、本件商標と引用商標は称呼及び観念上の類否を検討するまでもなく、類似することは明らかであり、その指定商品又は指定役務も抵触する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知著名性
ア 引用商標1は、請求人の英文名「Prince Hotel」の頭文字「P」を「お客様を優しく包み込む美しいリボン」をイメージしてデザインされた請求人のコーポレートマークであり、また、引用商標2は、このコーポレートマーク「Pロゴ」と請求人のハウスマーク「Prince Hotel」とを組み合わせた商標で、いずれも、請求人によるブランド戦略の中核となる商標である。
イ 引用商標は、平成18年12月13日に、請求人の新たなブランド戦略の中核となる商標として記者発表されたもので、これらの実際の使用は、平成19年4月1日より開始(甲9、甲11、甲14)され、現在に至るまで継続的に使用されている。
ウ 引用商標は、請求人が運営する北海道から九州まで全国50カ所以上の宿泊施設(甲8、甲12、甲14)、及び全国約250店の飲食店(甲8、甲13、甲24)について使用され、その業務範囲は宿泊業や飲食業のみならず広範囲にわたる。
引用商標の使用は、パンフレット(甲8)、チラシや広報誌(甲12?甲14、甲24)、新聞(甲15、甲16)等の紙媒体のほか、インターネットやテレビCM(甲17?甲19)等の画像・映像媒体によって行われている。
エ 国土交通省・観光庁の資料によると、平成22年における「日本のホテルグループの売上げランキング」では、請求人会社がトップであり(甲20)、また、就活・転職雑誌によると、平成30年3月期及び平成31年3月期における「ホテル業界売上高ランキング」でも、請求人会社がトップとなっている(甲21)。そして、請求人会社の資料によると、平成30年度の国内年間宿泊客数は、約500万人にも及んでいる(甲14)。
オ 引用商標は、本件商標の登録出願日より、およそ8年前の平成18年12月13日に報道され、平成19年4月1日より実際の使用が開始されたものである。
この間、多くの事業所において全国的に使用され、その宣伝広告もマスメディアを含めて頻繁に行われていたこと、加えて、請求人会社の事業規模等の事実に鑑みれば、引用商標は、本件商標の登録査定時においてはもちろんのこと、登録出願時においても既に極めて高い周知著名性を獲得していたことは明白である。
(2)他人の業務(広義の混同)について
本号における「他人の業務」には、請求人の業務のほか、請求人と親子関係にある会社や系列会社等、緊密な関係にあるグループ会社の業務も含まれる。請求人会社を中核企業とする「西武グループ」に属する企業は、国内外合計して78社あり、その業種は多種多様である(甲10)。
また、前記2のとおり、本件商標と引用商標は類似の商標である。
そうすると、本件商標は、引用商標の指定商品又は指定役務と類似のものはもちろん、非類似の商品(かき氷)についても、その流通経路や販売現場等の共通性からして、被請求人が本件商標をこれらの商品又は役務に使用すると、取引者や需要者は当該商品又は役務が請求人のグループ企業に係る商品又は役務であると、その出所について誤認し混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標は、全体が不可分一体に構成された結合商標である点
本件商標は、「P」を筆記体で表記したものを大きく斜字体に表示したロゴと、その右に大きく「Precious」の文字、さらにその下にこれよりもやや小さなポイントで「Mon Favori Sweets」の文字を書してなるものである。
ここで、「本件Pロゴ」の一端が「Precious」の「P」の文字の上に傘のようにかかっており、外観上分離されることなく一体的に把握される。また、図案化した「本件Pロゴ」が「Precious」の頭文字の「P」であることは一目見て明らかであり、その両要素の関係からも分離されることなく一体的に把握される。
こうした構成からは、「Precious」の文字部分に相応して「プレシャス」の称呼が生じるほか、「Mon Favori Sweets」の文字部分に相応して「モンファボリスウィーツ」の称呼も生じ得る。
そして、観念としては、「Precious」の文字部分に応じて、「貴重な」の観念が生じる。なお、「Mon Favori Sweets」の文字部分のうち、「Mon Favori」は、「私のお気に入りの」を意味するフランス語であり、「Sweets」は、「お菓子、デザート」を意味する英語であり、異なる外国語からなる独特な表現であり、あえていえば「私のお気に入りのお菓子」との意味合いを把握することは可能だが、造語として把握される。いずれも個々に識別標識としての機能を発揮する要素であり、これらを捨象した対比はあり得ない。
請求人は、欧文字部分は一般的な書体からなり、語彙としても「大切な私のお菓子」程の意味合いを有するにすぎず、創作的フレーズではないから、本件商標の識別標識としての支配的要素は、視覚的に顕著な「本件Pロゴ」の部分にあると述べる。
しかし、請求人は、欧文字部分の文字の大きさも異なり2段に書された、言語すら入り混じった当該要素をあえて一連に把握するという誤認をしている。また、「創作的フレーズ」か否かは、識別標識としての機能発揮の要件ではないから、該主張は失当である。
(2)本件商標と引用商標とは非類似である点
本件商標の外観、及びここから生じる称呼及び観念については、上述のとおりである。
一方、引用商標1は、直立した筆記体調の欧文字「P」の縦棒から連なる下辺が、「∞」を描くごとく折り重なるように記され、図案化された「P」の文字として認識され、「P」の欧文字から「ピー」の称呼は生じるが、欧文字一文字に起因する称呼であるため、対比の対象たり得なく、欧文字がロゴ化されたものとして認識され、特段の意味、観念は生じさせない。
引用商標2は、引用商標1の図案化された文字の下部に「Prince Hotel」の文字が組み合わされてなる。下段の文字に相応して「プリンスホテル」の称呼が生じ、「王子ホテル」の観念が生じる。
そうすると、外観においては、「P」を筆記体で表記したものを大きく斜字体にして表示したロゴと、その右に大きく「Precious」の文字、さらにその下にこれよりもやや小さなポイントで「Mon Favori Sweets」の文字とが結合してなる本件商標と引用商標とは顕著に異なる。
また、称呼についても、本件商標からは「プレシャス」、「モンファボリスイーツ」の称呼が生じるのに対し、引用商標1からは対比可能な称呼は生じず、引用商標2からは「プリンスホテル」の称呼が生じるから、両者は顕著に異なる。
観念においても、本件商標、引用商標それぞれに生じる観念は、上述のとおりであり、対比の余地がないか顕著に異なる。
したがって、本件商標と引用商標は、その指定商品又は指定役務の類否に及ぶまでもなく、外観、称呼、観念のいずれにおいても相紛らわしいところはなく、類似しない。
(3)本件Pロゴ及び引用商標の「Pロゴ」とは非類似である点
請求人の主張は全て、「本件Pロゴ」が「Pロゴ」に類似するとの見解に立脚して行われているが、本件商標において、「本件Pロゴ」は、支配的要素などではないから、両ロゴの対比に及ぶこと自体が適切でないことは上述のとおりである。しかし、仮に、あえて両者を対比した場合にあっても、両者は非類似である。
本件商標の「本件Pロゴ」は、いわゆる「ハンドスクリプト」と呼ばれる一般的な書体を、斜字度合いを強めたものにすぎない。
一方で引用商標の「Pロゴ」は、請求人自らが「お客様を優しく包み込む美しいリボン」をイメージしてデザインされたと述べるように、「P」の文字の下端が、文字どおりリボンが折り重なるように交差している点に特徴があるものと認められる。なお、斜字度合いとしても、むしろ一般的な筆記体様の書体と比べても直立しており、ロゴ全体がやや縦長の長方形に収まるような形態となっている点も特徴的である。
このように、「本件Pロゴ」は、「Pロゴ」における「ブランド戦略の中核」を具現化した要素を何ら備えておらず、この点のみにおいても明白に非類似であり、出所の混同のおそれはない。まして、両者は、その斜字の度合いも著しく異なり、看者に与える印象は全く異なる。
2 被請求人が本件商標を使用しても出所の混同を生ずるおそれはない点
請求人は、使用開始時期と期間、請求人会社の事業規模、周知著名の程度について述べている。
しかし、提示されている甲第13号証(審決注:「甲第14号証」の誤記と認める。)において自ら「シンボルは、プリンスのPをデザインしたものです」と述べており、請求人ないしその関連会社が実際に使用しているロゴは「Prince」の文字が伴っていることからも明らかなように、取引者、需要者には、「Pロゴ」と「Prince」の文字とが一体のものとして初めて特定の出所のものと認識されている。
一方で本件商標においては、「本件Pロゴ」と「Precious」の文字とが少なくとも一体的に結合しており、「P」が「Precious」のPであることが即座に看得可能な態様である。
このように、被請求人が本件商標の指定商品又は指定役務について、本件商標を使用しても、これが「Prince」を想起させる要素は皆無であり、出所の混同を生ずるおそれはない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似であり、商標法第4条第1項第11号に該当せず、本件商標の使用をしても他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはなく、同項第15号に該当しない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、欧文字「P」をモチーフにした筆記体風のものを右側に大きく傾けた「本件Pロゴ」と、その右側に「Precious」の文字、その下にこれよりも小さく「Mon Favori Sweets」の文字をそれぞれ配してなるものである。
そして、「本件Pロゴ」は、その右側に配されている「Precious」及び「Mon Favori Sweets」の欧文字部分とは、視覚的に分離されて看取されるうえに観念的な関連性も見いだせず、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないことから、「本件Pロゴ」部分が独立して分離、抽出される場合もあるといえる。また、「本件Pロゴ」部分を、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき事情はない。
そうすると、本件商標は、その構成中、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得る「本件Pロゴ」部分をもって取引に資する場合もあると判断するのが相当である。
(2)引用商標
引用商標1は、別掲2のとおり、直立した筆記体風の欧文字「P」をモチーフにし、縦棒から連なる下辺が「∞」を描くように折り重なるように表された「Pロゴ」からなるものである。
引用商標2は、別掲3のとおり、「Pロゴ」の下部に「Prince Hotel」の欧文字が配されており、「Pロゴ」は、当該欧文字とは視覚的に分離されて看取されるうえに観念的な関連性も見いだせず、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないことから、「Pロゴ」部分が独立して分離、抽出される場合もあるといえる。また、「Pロゴ」部分を、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき事情はない。
そうすると、引用商標2は、その構成中、自他商品の識別標識としての機能を果たし得る「Pロゴ」部分をもって取引に資する場合もあると判断するのが相当である。
(3)本件商標と引用商標との類否
本件商標の構成中の要部の一である「本件Pロゴ」と、引用商標1の「Pロゴ」及び引用商標2の構成中の要部の一である「Pロゴ」(以下「ロゴ部分」という。)とを対比してみると、両者のロゴ部分は、ともに欧文字「P」をモチーフにしているものの、ロゴの傾きの程度が大きく相違している点、縦棒から連なる下辺が、「∞」のような形でリボンのような終筆であるかという点などにおいて、顕著な差異を有するものであるから、時と処を異にして離隔的に観察しても、紛れるおそれはないというべきである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、それぞれの要部である「ロゴ部分」において顕著な差異を有するものであるから、両商標の全体を比較しても判然と区別することができ、相紛れるおそれはないというべきである。
ほかに、両商標が類似するとみるべき事情は見いだせない。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標に係る指定商品及び指定役務と引用商標に係る指定商品及び指定役務との類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
ア 請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)請求人は、1956年に創立し、主にホテル(宿泊施設)やレストラン(飲食店)事業を運営する企業である(甲11)。そして、請求人は、引用商標1及び引用商標2を、全国50余りの宿泊施設及び約250店舗の飲食店において使用していると述べている。
(イ)引用商標は、平成18年12月13日に、請求人の新たなブランド戦略の中核となる商標として記者発表されて、その後実際の使用は、同19年4月頃より開始された(甲9)。
(ウ)請求人が平成23年から同30年に作成されたものと主張する、請求人運営のホテルのパンフレット(甲8)には、引用商標が表示されてはいるものの、印刷部数、頒布(使用)時期及び地域は不明である。
(エ)請求人が平成26年に作成したとする「PRINCE HOTEL GUIDE」(甲12)には、引用商標1が欧文字と共に、また引用商標2が請求人の3ブランドの一つとして紹介されているものの、当該ホテルガイドの印刷部数、頒布(使用)時期及び地域は不明である。
(オ)請求人が作成したとする「大津プリンスホテルレストランガイド[ビュー]」や「グランドプリンスホテル京都」で頒布された広報誌やチラシ等(甲24)には、引用商標1が欧文字と共に、また引用商標2が表示されてはいるものの、これらの頒布時期は2009年から2013年にかけて各年2箇月間程でしかないうえに、印刷部数は不明であって頒布地域は明らかではない。
(カ)「朝日新聞」(甲15)及び「The Japan Times」(甲16)の紙面において、引用商標1が他の文字と共に、請求人の広告として掲載されていることは認められるものの、それらは2014年2月及び3月の内、わずか2日間でしかない。
(キ)「日本テレビ」及び「TBSテレビ」におけるCM(甲17?甲19)の画像には、引用商標1が他の文字と共に、請求人の広告として掲載されていることが認められるものの、それらの放送は、2014年12月中の9日間でしかない。
(ク)国土交通省・観光庁の「観光産業の現状について」(甲20)によると、「日本のホテルグループの売上げランキング(2010)」では、請求人が運営するホテルがトップであることは確認できるものの、本件商標の商標登録出願の4年も前のものであり、また「ホテル業界売上高ランキング」(甲21)によると、2018年及び2019年の3月期に「西武ホールディングス」がトップであることは確認できるものの、この内請求人運営のホテルの売上がどの程度の割合を占めるのか明らかではなく、仮に、全てが請求人運営のホテルの売上であったとしても、本件商標の登録査定時よりも3、4年も後のものである。そうすると、これらのランキングは、いずれも本件商標の登録出願時及び登録査定時の3、4年前後のものであるから、これより、当該時点における請求人運営のホテル及びレストランの売上高(ランキング)を推し量ることはできない。
(ケ)請求人のウェブサイトの写し(甲13)において、自己が運営するレストラン・バーの紹介に引用商標1が欧文字と共に表示されていることを、また、請求人の広報誌「PRINCE MODE-2020-」(甲14)において、ホテル事業に引用商標が使用されていることを、それぞれ確認することはできるものの、当該サイトの写し及び広報誌は本件商標の登録査定後のものであるから、これらを周知性の判断に採用することはできない。
イ 上記アからすると、引用商標は、請求人の新たなブランドとして平成18年12月に発表され、同19年4月頃より、請求人が運営する主にホテル(宿泊施設の提供)及びレストラン(飲食物の提供)事業に使用されていることはうかがえるとしても、ホテル及びレストランを紹介するパンフレットや広告誌等は、その大半が印刷部数、頒布(使用)時期及び地域が不明であるうえに、テレビCMの放送はわずかな期間でしかなく、さらに、本件商標の登録出願時及び登録査定時における当該事業の売上高等を推し量ることもできない。
そうすると、請求人提出に係る証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時におけるホテル(宿泊施設の提供)及びレストラン(飲食物の提供)事業に関する広告の範囲及び規模等の広告実績並びに売上実績について把握、確認することができないから、それらの事業に使用されている引用商標は、請求人の業務に係る「宿泊施設の提供,飲食物の提供」(ホテル及びレストラン事業)を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られていたものと認めることはできない。
また、提出された証拠から、引用商標が、上記役務の他に、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られていたものと認めるに足る事情は見いだせない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
上記1(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、判然と区別することができ、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、別異の商標である。
(3)出所の混同のおそれについて
上記のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認められず、また、本件商標と引用商標とは、非類似であって別異の商標である。
してみれば、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が引用商標を想起、連想して、当該商品及び役務を請求人の業務に係る商品及び役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲
別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)



別掲3(引用商標2)



審理終結日 2020-11-11 
結審通知日 2020-11-16 
審決日 2020-12-02 
出願番号 商願2014-75965(T2014-75965) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W3043)
T 1 11・ 26- Y (W3043)
T 1 11・ 271- Y (W3043)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蛭川 一治 
特許庁審判長 佐藤 松江
特許庁審判官 岩崎 安子
大森 友子
登録日 2015-03-20 
登録番号 商標登録第5750467号(T5750467) 
商標の称呼 プレシャスモンファボリスイーツ、プレシャス、モンファボリスイーツ、モンファボリ、ピイ 
代理人 野原 利雄 
代理人 中山 俊彦 

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