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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W30
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W30
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W30
管理番号 1370128 
審判番号 無効2018-890031 
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-02 
確定日 2020-12-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第5579047号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5579047号商標(以下「本件商標」という。)は、「南三陸キラキラ丼」の文字を標準文字で表してなり、平成24年11月29日に登録出願、第30類「南三陸産の海鮮丼,南三陸産の海産物を具材として含む丼物」を指定商品として、同25年3月22日に登録査定、同年5月2日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第40号証(枝番号を含む。枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
ア 南三陸町の町興しキャンペーン「南三陸キラキラ丼」の発案とその経緯
「南三陸キラキラ丼」は、宮城県南三陸町を訪れる人々に「南三陸産の海産物や具材を使用した海鮮丼」を飲食物として提供することで、多くの観光客やグルメ客の来訪により町興しをすることを目指して、町内の飲食店、ホテル、旅館、民宿、市場などの飲食物提供可能な町内有志により、平成21年12月1日から始まった町興しキャンペーンのことである。この南三陸町の町興しキャンペーン「南三陸キラキラ丼」は、請求人が経営しているホテル「南三陸ホテル観洋」の女将Aの発案により、平成21年9月初めに「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という特別プランが企画され、平成21年11月1日?平成22年2月28日まで宿泊客に提供しはじめた(甲2)。
平成22年9月に町興しキャンペーンのアイデアとそれを「南三陸キラキラいくら丼」の名称とすることを南三陸町飲食店組合や町産業振興課観光振興係に提案し、関係者に呼びかけて、その趣旨に賛同した有志6店舗と南三陸ホテル観洋とで、2009年12月から「南三陸キラキラ丼」の町興しキャンペーンを始めることになった(甲3?甲7)。
請求人は、当該「南三陸キラキラ丼」による町興しキャンペーンの中心的メンバーとして当該キャンペーンのメニューを季節によって「イクラ丼」、「春つげ丼」、「うに丼」、「秋旨丼」等と旬な食材に変えることや、町内の他の店にも広く参加してもらうようにすること等の企画に参加し、東北じゃらん1月号への広告や、宣伝用ポスターの作成をおこなったり(甲8)、「南三陸キラキラ春つげ丼」の試食会をホテルで行う(甲9)等して、当該キャンペーンを牽引するとともに、経営している「南三陸ホテル観洋」の情報誌(甲10、甲12、甲13)やブログで積極的に活動報告する情報等を発信して、「南三陸キラキラ丼」キャンペーン活動のPRに努めてきた。その結果、3,000食?45,000食を突破する成果を上げることができた(甲14?甲16)。
イ 東日本大震災による「南三陸キラキラ丼」キャンペーンの中止
2011年3月11日に東日本大震災が発生し、南三陸町の港や中心街のほとんどが津波で流されて壊滅状態となり、800人以上の町民が亡くなり町の人口が激減し、事業所の7割が廃業するという大きな被害を被り、震災前のキャンペーンにおける中心メンバーであった飲食店組合長も亡くなり、ライフラインが止まり、海鮮丼を提供できる飲食店のほとんどが被災して無くなってしまったことにより「南三陸キラキラ丼」キャンペーン活動は事実上できなくなって中断することになった。
ウ 「南三陸キラキラ丼」キャンペーンの復活の経緯
請求人は、震災5ヶ月後の2011年8月1日からホテル内のレストラン「シーサイド」で「南三陸キラキラ丼」の提供を復活した(甲17)。それ以来、同ホテルでは現在に至るまで従来どおりの「南三陸キラキラ丼」キャンペーン活動を盛んに継続している。
2012年2月になって、被災者の震災復興のために仮設店舗による南三陸志津川福興名店街(通称:南三陸さんさん商店街)ができる話が持ち上がると、被災した飲食店主や南三陸町観光協会が中心となって、「丼で仮設商店街を再び盛り上げたい」として震災復興商店街の目玉支援企画「南三陸キラキラ丼」キャンペーンを復活すると発表し(甲18)、2012年2月25日から南三陸志津川福興名店街のオープンと同時に、募集した「南三陸キラキラ井」の提供者9店舗で震災復興を目的とした「南三陸キラキラ丼」キャンペーンが開始された(甲19、甲20)。
しかし、震災5ヶ月後の2011年8月1日には、中心的提供店である「南三陸ホテル観洋」で中断していた町興しを目的とした従来の「南三陸キラキラ丼」を復活しているのであるから(甲17)、上記キャンペーンは、追加的に復活されたというべきである。この追加復活された「南三陸キラキラ丼」キャンペーンについては、その広報活動と情報発信を「南三陸商工会」と「一般社団法人南三陸町観光協会」が支援する体制になった。
それ以外に請求人は「南三陸ホテル観洋」において、本来の町興しを目的とした「南三陸キラキラ丼」キャンペーン活動を震災後も復活させて積極的かつ継続的に行ってきている。そのキャンペーン活動も積極的に宣伝・広告を行い(甲23?甲29)、その宣伝広告費も、2009年?2017年の9年間で1億5千6百万円以上の費用をかけてきている(甲30)。
以上のように、震災の前後で盛んに行われてきた「南三陸キラキラ丼」キャンペーンは、その頻繁なマスコミ報道と、積極的な宣伝広告活動により、その名称である「南三陸キラキラ丼」が広く知られるようになり、未登録周知商標になっているのである。
エ 本件商標の権利取得の経緯とその権利濫用
大震災後に新たに南三陸町飲食店組合長になった被請求人は、2012年11月29日に突然、個人名義で本件商標権を取得した(甲31)。この商標登録出願に際して、上申書(甲32の2)と南三陸商工会長の「南三陸町飲食店組合『南三陸キラキラ丼』の取組みと経緯について」という説明書(甲32の3)を提出しているが、当該両書面は、被請求人名義の商標登録出願があたかも正当であるかのごとく誤認させるため、事実を偽って記載した恣意的書面である。
上申書の内容は、被請求人個人の作為的な意思表示をしたものであり、被請求人は、南三陸志津川福興名店運営組合を代表する組合長ではないうえ、当該商標登録出願前の南三陸志津川福興名店運営組合と南三陸町飲食店組合の両組合には、商標「南三陸キラキラ丼」について商標権を取得するという事業計画がない。商標「南三陸キラキラ丼」を被請求人の個人名義で商標登録出願し個人的な権利として取得しても良いとの総意による決定がされた事実も無いし、そのような両組合の事業計画も、総意による決定を示す証拠は何も添付されていない。被請求人は、大震災後に新たに南三陸町飲食店組合長になっただけで、3年も前から始まっていた町興しを目的とした「南三陸キラキラ丼」キャンペーンを被請求人が発案したり、当該キャンペーンの企画を考えてキャンペーン活動を主導してきたり、正式に当該キャンペーンの代表者と認められた事実もない。
南三陸商工会長の説明書の記載は、「南三陸キラキラ丼」キャンペーンの発案と経緯とは全く相違しており、「南三陸町飲食店組合と一般社団法人南三陸町観光協会と南三陸商工会が一体となって開発に取り組んだ事業である」との説明は、明らかに事実に反する虚偽の記載である。特に、一般社団法人南三陸町観光協会は、平成21年6月23日に法人成立されたばかりであり(甲33)、平成21年11月18日の理事会で各事業の予算執行について審議事項となっているだけで、具体的な南三陸町観光協会の事業計画(案)が作成され、定時総会で審議し承認されたのは、平成22年5月28日のことである(甲34)から、「南三陸キラキラ丼」キャンペーンが開始された平成21年12月1日には、南三陸町観光協会が設立登記されたばかりで、事業計画(案)さえ作成されていなかったのが事実である。さらに、南三陸商工会の平成22年度通常総代会議案書(甲35)には、平成21年度事業報告書が第4号議案として審議されているが、その(4)観光・サービス振興事業の中には、「南三陸キラキラ丼」キャンペーン事業が行われた事実の記載が全くない。
以上のように、上記説明書は、全く事実に反する虚偽事項を記載したものであり、このような作為的な虚偽文書を裏付けとして被請求人は個人名義で出願したことの正当性を主張する虚偽の上申書を提出して、適正な商標権付与行為を誤認させ、作為的に権利化しようとしたといわざるを得ない。
被請求人が提出した上申書には、事情を知らない南三陸商工会長に「南三陸キラキラ丼」キャンペーンの開発やその後の経緯や実態を作為的に偽った内容を記載した文書を作成させて、あたかも被請求人が個人の名義で商標登録出願する資格があるかのごとく主張しているが、これは、被請求人が、震災前に売上実績もあり、評判の良い「南三陸キラキラ丼」海鮮丼提供キャンペーンを、いわゆる横取りするため独占排他権である商標権を取得し、それを契機として当該キャンペーンの主導者となり、私的な事業の利益を追求することを意図したものといわざるを得ない。
事実、被請求人は平成25年5月2日に個人名義で登録商標「南三陸キラキラ丼」を取得した(甲31)直後の平成25年6月4日に南三陸町飲食店組合の臨時総会を開き、当該登録商標「南三陸キラキラ丼」の登録に伴い「南三陸キラキラ丼」海鮮丼提供キャンペーン参加者は、当該登録商標の使用申請をして、使用許可を受け加盟店になる必要があると虚偽の説明をして、被請求人が中心になって企画した『第1号議案 商標登録(第30類)「南三陸キラキラ丼」仕様基準承認の件』を提案し審議した(甲36)。
その際、当該登録商標は商品商標であり、飲食物の提供を実態とする「南三陸キラキラ井」海鮮丼提供には効力が及ばないので不適正であるとの反対意見と、皆の同意もなく個人名義で商標権を取得したことに対する異議がでたが、個人名義での商標権取得は事後承諾をうけていたと修正したうえ強引に臨時総会で決定してしまった。
その結果、「南三陸キラキラ丼」海鮮丼提供キャンペーンに参加する者は、被請求人が中心となって企画した「南三陸キラキラ丼」仕様基準に従うことを強要する仕組みになってしまったのである(甲36)。
被請求人は、このように自分が取得した商標権が役務には権利の効力が及ばないものであるにもかかわらず、商標「南三陸キラキラ丼」を使用したいとする参加者や支援者達に対して、あたかも海鮮丼の提供にまで当該商標権の独占権が及ぶかのような誤った説明をし、海鮮丼提供キャンペーンに参加し、その名称「南三陸キラキラ丼」を使用するためには、南三陸町飲食店組合、南三陸商工会、一般社団法人南三陸観光協会の全てに加入しなければならないという負担の重い参加資格条件(特に被災者には全ての会の会費納付など負担が重い)を定めたうえ、被請求人の所有する商品商標権の使用許可をうけて加盟店になり、毎年使用料を支払わなければ商標「南三陸キラキラ丼」の使用ができないとし、さらに、提供する海鮮丼について細かく決められた仕様基準を順守しなければ参加資格を失い、商標「南三陸キラキラ丼」を使用禁止にすると新たに決めて、参加者を新たに募集し直し、これに賛同した飲食店により新しい主体(団体)を形成し、その限られた特定グループだけが当該海鮮丼提供キャンペーンの活動ができるようにし、他者の活動を排斥するような仕組みにしたのである。
そして、被請求人は、本来発案者であり、当初から中心メンバーとして「南三陸キラキラ丼」キャンペーンに参加・協力してきた請求人でさえも本件商標の権利化後に新しく再編した「南三陸キラキラ丼」キャンペーン活動の参加者とは認めず、平成26年9月からは請求人が経営する南三陸ホテル観洋を削除して「南三陸キラキラ丼」の提供店としては認めず、南三陸町観光協会の公式ホームページ(甲37)や公式パンフレット(甲38)からも削除するとともに、組合員でありながら組合総会の案内を停止し、会費納入も拒否する等極めて恣意的な使用許可制度の運営を行っているのが事実である。
このように被請求人が虚偽の事実を主張して出願し、個人名義で取得した商品商標権をもって管理し、それまで町ぐるみで飲食物を提供して町興しをしてきた「南三陸キラキラ丼」キャンペーンへの参加資格を限定したり、商標「南三陸キラキラ丼」の使用許可を受けた者だけが参加できるとか、所定の商標仕様基準に従わない者は、当該商標の使用や参加を禁止する等の行為は、まさに不正の目的をもった商標権の権利濫用であり、不正競争行為である。
このように本件商標により「南三陸キラキラ丼」キャンペーンへの参加条件を制限するのでは、極限られた一部の飲食店しか参加できなくなり、到底町全体の町興しと活性化は実現できなくなる。
さらに、被請求人は、自ら商標仕様基準に「組合長を辞任した場合には、新たに選任された新組合長の名義に登録変更する」旨規定しながら、南三陸町飲食店組合の組合長を平成28年度で辞め、平成29年度には新たな組合長に代わったにもかかわらず、平成30年度になった現在に至るまで、商標権の名義を新しい組合長名義に移転し、名義変更をしていない。
オ 請求人による「南三陸キラキラ丼」の商標登録出願とその審査・審判の経緯
請求人は、「南三陸キラキラ丼」キャンペーン活動を発案し、中心的メンバーとして積極的に参加・推進してきた者として、被請求人が決めた企画に従わない者のパンフレットやホームページからも外す等の極めて恣意的に行うような使用許可制度を見直し、町民の誰でもが広く参加できるような町興しキャンペーンに戻すことを主張すると共に、適正な役務商標により第三者による模倣やフリーライドやダイリューションを防止するため、また、当該キャンペーンを町民全体で南三陸産の海産物や具材を使用した海鮮丼物を提供することにより町興しをするという実態に適合するように「飲食物の提供」を指定役務とした商標登録出願(商願2013-50903)をした(甲39)。
この請求人の商標登録出願は「他人の業務に係る周知商標」であると認定して商標法第4条第1項第10号に該当するとして拒絶査定され、請求人は、この拒絶査定は事実認定を誤っているとして、更に拒絶査定不服審判を請求した。当該審判においては、職権による証拠調べにより「南三陸キラキラ丼」を、ニュース性の高い「東日本大震災被災者の復興活動である」として盛んに報道された情報に基づき、「他人の業務に係る未登録周知商標である」と認定し、商標法第4条第1項第10号により「本件審判の請求は成り立たない」と審決した(甲21)。
しかし、被請求人も請求人も、共に南三陸町地域において宿泊業ないし飲食店を営む業者であり、当該キャンペーン活動をする当事者であるから、商標の登録要件とされている商標法第4条第1項第10号の「未登録周知商標」の該当性については、双方とも場面は同一である。
上記審決では、職権に基づく証拠調べを実施し、その証拠調べ通知書(甲21)により、2009年12月27日以降の新聞記事、テレビ取材、旅行雑誌、ガイドブック等を引用して商標「南三陸キラキラ丼」の周知性を認定して、商標登録出願した時において、当該商標「南三陸キラキラ丼」が周知性を獲得したことを認めている。
そうであれば、被請求人が出願した本件商標についても、商標法第4条第1項第10号の「未登録周知商標」に該当するものとして、拒絶査定すべきものであった。
カ 小括
本件商標の審査経過を調べると、未登録周知商標である「南三陸キラキラ丼」の存在や類否については審査時には言及することも検討した形跡も一切なく設定登録している(甲31)。にもかかわらず僅かその3ヶ月後に請求人が出願した商標「南三陸キラキラ丼」(商願2013-50903)については、職権による証拠調べまでして当該未登録周知商標に同一又は類似しているとして商標法第4条第1項第10号に該当するとして拒絶審決(甲21)して両者の結論を異にした判断と取扱いをしている。
本件商標は、他人の業務に係る役務や商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「南三陸キラキラ丼」と同一又は類似する商標であって、その役務や商品又はこれに類似する役務や商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、町興しキャンペーンの未登録周知商標「南三陸キラキラ丼」と同一標章である。しかし、前者の本件商標は第30類の商品商標であるのに対し、後者の未登録周知商標は第43類の役務商標であるが、権利者である被請求人は、本件商標を南三陸産の海産物や具材を使用した海鮮丼を提供する役務の商標として使用許諾している(甲36)。そのため、本件商標を町興しキャンペーンの未登録周知商標「南三陸キラキラ丼」と混同を生ずるおそれがあるので、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、第30類の商品商標であるのに、この商標を本来効力の及ばない南三陸産の海産物や具材を使用した海鮮丼を提供する町興しキャンペーンの未登録周知商標として使用許可することを強要し、その使用料を取るとともに、従わない者には当該キャンペーンへの参加を認めず、未登録周知商標として使用を禁止している(甲37、甲38)。このような本件商標の使用は、不正の目的をもって使用する権利濫用であるから商標法第4条第1項第19号に該当する。しかも、被請求人は、個人名義で商標「南三陸キラキラ丼」を第43類「南三陸産の海産物を使用した海鮮丼物の提供,南三陸産の具材を含む丼物を主とする飲食物の提供」を指定役務とする商標登録出願(商願2016-144690)をしている(甲40)。この事実と被請求人の本件商標の上記のような権利濫用行為は、故意による不正目的使用であることを示すものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標の指定商品は、第30類「南三陸産の海鮮丼,南三陸産の海産物を具材として含む丼物」であり、未登録周知商標「南三陸キラキラ丼」は、南三陸町飲食店組合(乙1)に加盟する飲食店がその店内で提供する料理メニューの名称であり、その区分は第43類の「飲食物の提供」に該当する。
本件商標と未登録周知商標「南三陸キラキラ丼」は、商標は同一であるが、指定商品・役務は非類似であり、本件商標は、未登録周知商標の商品・役務又はそれに類似する商品・役務について使用するものではないため、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
本件商標は、当該商標を使用する飲食店が加盟する南三陸町飲食店組合の名義にて取得すべきところ、南三陸町飲食店組合が法人格を有していないため、やむを得ず、当時の組合長を務めていた被請求人の名義で商標権を取得した経緯がある(乙2?乙4)。
本件商標は、実質的に南三陸町飲食店組合により使用される商標であって、また、未登録周知商標も、南三陸町飲食店組合によって使用されている商標であることから、両商標の使用者は同一である。したがって、未登録周知商標は「他人」の商標ではなく、この点でも、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
被請求人は、現在、南三陸町飲食店組合の組合長ではなく、名義を現在の組合長の名称に変更すべきであるところ、その手続きを怠っている事実は認める。
しかしながら、現在においても、被請求人が、南三陸町飲食店組合を代表して本件商標を権利維持していることに変わりはなく、私利で権利を維持していることは決してない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
未登録周知商標は、南三陸町飲食店組合の業務に係る商標であり、本件商標を使用する者と実質的に同一人により使用されるので、「他人」には該当せず、出所の混同が生じることもありえないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
未登録周知商標は、南三陸町飲食店組合の業務に係る商標であり、本件商標を使用する者と実質的に同一人により使用されるので、「他人」には該当せず、その目的は、南三陸町飲食店組合に加盟する飲食店が使用するためのものであり、実際にその目的のためにのみ使用されており、不正の目的で使用されている事実など微塵もないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
請求人は、東北学院大学のB氏のレポ一卜(甲5)を根拠に、発案の経緯を述べているが、そのレポートの内容、被請求人及びC氏(南三陸町産業振興課)らの発言とされる部分には疑念を感じる。
発案者が誰であれ、未登録周知商標が周知商標として認知されたのは、東日本大震災以降、南三陸町の復興のシンボルの一つとして、南三陸町飲食店組合、南三陸商工会、一般社団法人南三陸長観光協会が一体となり、地域ぐるみのさまざまな取り組みが積極的かつ継続的に行われた結果、現在の認知度に至ったものである。「南三陸キラキラ丼」の評判を確かなものにしたのは、これを提供する各飲食店が、「南三陸キラキラ丼」の仕様基準(乙5)を厳守し、その品質に妥協しないことが受け入れられたものと考えている。請求人は、この仕様基準を、被請求人が強要し、恣意的に運用していると批判しているが、まったく的はずれな指摘である。
仕様基準は、関係当事者の総意を汲んで協調的に決められたものであり、請求人は、南三陸町飲食店組合の当初加盟店であったが、その後組合への参加停止されたことを非難している。これは、その当時、請求人が加盟店でありながら、本件商標に対する鑑定・見解書を作成してこの「南三陸キラキラ丼」企画の中止を求めてきたり(乙6)、守るべき仕様基準の例外を認めさせようとするなど極めて非協調的であることから組織運営にも支障を来しやむを得ずのことであり、被請求人個人のもとで行われたものではあり得ない。現在も、本件商標「南三陸キラキラ丼」は、関係当事者間で適正そして良好に運用されており、被請求人個人の不正など全く入り込む余地もない。

4 当審の判断
(1)本件審判の請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないため、以下、本案に入って審理する。
(2)「南三陸キラキラ丼」の周知性について
ア 請求人と被請求人が提出した証拠及び当事者の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)請求人を含む南三陸町内のホテルや飲食店6店舗は、平成21年(2009年)12月から、宮城県南三陸町を訪れる人々に「南三陸産の海産物や具材を使用した海鮮丼」を飲食物として提供することで、多くの観光客やグルメ客の来訪により町興しをすることを目指して、「南三陸キラキラ丼」の町興しキャンペーンを始め、同月から同22年(2010年)2月にかけて、「南三陸キラキラいくら丼」の名称を使用して、イクラを中心の食材とした丼物の提供を行った(甲3、甲4)。
(イ)「南三陸キラキラ丼」シリーズとして、季節によって、「イクラ丼」「春つげ丼」「うに丼」「秋旨丼」などの丼物の提供を行っていることを考慮すれば、「南三陸キラキラ丼」が要部といえる(以下、これを「使用標章」という場合がある。)。
(ウ)上記丼物の提供店は、平成21年(2009年)12月から同22年(2010年)末までに、45,000食売り上げた(甲16)。
(エ)この間、季節ごとの丼物の提供開始や、試食会開催などについての報道がされると共に、広告宣伝活動が行われた(甲2?甲13)。
(オ)平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災(以下「震災」という。)により、南三陸町志津川地区も大きな被害を受け、「南三陸キラキラ丼」のキャンペーンが一時中断したが、同24年(2012年)2月25日の仮設店舗による南三陸志津川福興名店街(通称「南三陸さんさん商店街」)のオープンに合わせて、同仮設商店街などで営業を再開した店舗や、請求人など9店舗で、震災復興を目的として、使用標章を使用して、丼物の提供が開始された(甲18?甲20)。
イ 上記アの事実を総合的に勘案すると、使用標章は、少なくとも宮城県及びその近隣県において、本件商標の登録出願時には、南三陸町飲食店組合の組合員の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られていたといえるものであり、本件商標の登録査定時においても継続していたと認められる。
(3)被請求人と南三陸町飲食店組合との関係
被請求人が、本件商標の登録出願時及び登録査定時を含め、平成28年度まで、南三陸町飲食店組合の組合長を務めていたことは、当事者間に争いはない。
また、提出された「南三陸町飲食店組合 規約」(以下「規約」という。乙1)によれば、南三陸町飲食店組合は、南三陸町に存在する料理店、その他飲食業者をもって組織し、設立されたものであり(規約第2条)、同組合の事務所は、組合長宅に置かれ(規約第4条)、そして、規約において「第9条 組合長は、組合員を代表しその業務を総理する。」と定められていること、さらに、本件商標出願において添付された上申書、南三陸さんさん商店街のチラシ、南三陸町飲食店組合「南三陸キラキラ丼」の取組と経緯について(乙2、乙3)などの記載に照らし、被請求人は、いわゆる権利能力なき社団である南三陸町飲食店組合を代表して本件商標を出願し、その登録を受けたものであるということができる。
(4)商標法第4条第1項第10号該当性について
上記(2)のとおり、使用標章は、少なくとも宮城県及びその近隣県において、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、南三陸町飲食店組合の組合員の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られていたといえるものであり、また、上記(3)のとおり、被請求人は、いわゆる権利能力なき社団である南三陸町飲食店組合を代表して本件商標を出願し、その登録を受けたものである。
そうすると、被請求人と南三陸町飲食店組合とは、同一人とみなして取り扱うのが相当であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号にいう、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」ではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第15号該当性について
上記(4)と同様に、被請求人と南三陸町飲食店組合とは、同一人とみなして取り扱うのが相当であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」ではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(4)と同様に、被請求人と南三陸町飲食店組合とは、同一人とみなして取り扱うのが相当であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にいう、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用するもの」ではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(7)請求人の主張について
ア 請求人は、被請求人が本件商標の出願に際して、上申書(甲32の2)と南三陸商工会長の「南三陸町飲食店組合『南三陸キラキラ丼』の取組と経緯について」という説明書(甲32の3)を提出しているところ、両書面は、被請求人の商標登録出願があたかも正当であるかのごとく特許庁を誤認させるために、事実を偽って記載した恣意的書面である旨主張している。
しかしながら、被請求人が提出した当該上申書は、いわゆる権利能力なき社団と認められる南三陸町飲食店組合を代表して、当時組合長であった被請求人が本件商標の出願人として、商標登録出願を行うことが記載されたものであって、何ら不自然な点はない。
また、当該説明書についても、その内容は、南三陸町飲食店組合の「南三陸キラキラ丼」の取組と経緯について、南三陸商工会長が述べたものであって、捺印(職印)もあり、何ら不自然な点はない。
そうすると、これらの内容が、特許庁を誤認させることにはならないから、請求人の主張は採用することができない。
イ 請求人は、本件審判の審理終結の通知後、令和1年5月8日付け審判弁駁書を提出し、証拠方法として甲第41号証ないし甲第46号証(枝番号を含む。)を提出しているが、当該弁駁書を検討するも、当合議体は、上記のとおり判断するものである。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当するものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-04-24 
結審通知日 2019-05-07 
審決日 2019-06-05 
出願番号 商願2012-100892(T2012-100892) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (W30)
T 1 11・ 222- Y (W30)
T 1 11・ 25- Y (W30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 小松 里美
小田 昌子
登録日 2013-05-02 
登録番号 商標登録第5579047号(T5579047) 
商標の称呼 ミナミサンリクキラキラドン、ミナミサンリクキラキラドンブリ、ミナミサンリクキラキラ、キラキラドン、キラキラドンブリ、キラキラ 
代理人 大津 洋夫 
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