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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W10
管理番号 1367129 
審判番号 取消2018-300487 
総通号数 251 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-11-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2018-06-26 
確定日 2020-10-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5759749号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5759749号商標の指定商品中,第10類「整形外科用の機械器具,治療用マッサージ器」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5759749号商標(以下「本件商標」という。)は,「ショックウェーブ」の文字を標準文字で表してなり,平成26年12月8日に登録出願,第10類「整形外科用の機械器具,治療用マッサージ器,美容マッサージ器」を指定商品として,同27年4月24日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成30年7月9日である。
以下,本件審判の請求の登録前3年以内の期間(平成27年7月9日ないし同30年7月8日)を「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品中,第10類「整形外科用の機械器具,治療用マッサージ器」について,継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから,その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標権者と酒井医療株式会社(以下「酒井医療社」という。)との関係について
ア 基本取引契約書(乙7の2)
本件商標の出願がなされたのは,当該契約書が締結された平成22年(2010年)5月28日から4年もの月日が経過した後のことである。さらに重要なことには,当該契約書には,本件商標「ショックウェーブ」又はこれに類する商標についての記載は一切見られないことから,当該契約書をもって,本件商標に係る通常使用権の許諾があった事実を示すものではないことは明らかである。
イ 平成27年(2015年)3月30日付け酒井医療社宛ての電子メール(乙7の1)
被請求人は,平成27年(2015年)年3月30日に,酒井医療社に対し,「ショックウェーブ」を含む複数商標について登録査定が出た旨を知らせるとともに,「資料等の準備についてはお使いいただいてかまいません」旨知らせている。
これは,被請求人が「ショックウェーブ」を含む複数商標について近い将来商標権を保有することになる旨を連絡し,使用許諾の申し出をしているにすぎず,酒井医療社との間で通常使用権の許諾の事実があったとまでは認めることはできない。
ウ 「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」に関する覚書(乙7の3)
平成28年(2016年)10月31日には「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」に関する覚書(乙7の3)が作成され,被請求人から酒井医療社に対して,「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」の独占販売を認めている。
なお,覚書に記載されている「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」は,本件商標とは社会通念上同一の商標ではない。
エ 平成29年(2017年)7月18日付け酒井医療社宛ての電子メール(乙1)
商標の使用許諾は,単に商標権者からの使用許諾の申し出があっただけでは足りず,使用権者による受諾・合意があるのが通常であるところ,平成29年(2017年)7月18日のメール(乙1)は,平成27年(2015年)3月30日のメール(乙7の1)と同じような内容のものであって,このような内容のメールを繰り返し送信していたことからすれば,当該電子メール(乙1)の送信時である平成29年(2017年)7月18日時及びそれ以前の期間においては,少なくとも本件商標に係る「ショックウェーブ」に関して,被請求人から酒井医療社に対して使用許諾はなされていなかったと考えるのが自然である。
(2)医療機器の添付文書について
乙第2号証は,作成年月日が「2017年7月31日」である医療機器の添付文書と認められるところ,「ショックマスター」の表示はあるものの,本件商標の表示は一切なく,本件商標がその指定商品について使用されていたことを証するものであるとはいえない。
(3)酒井医療社の商品カタログについて
ア 本件商標の使用の事実が確認できない
乙第3号証の1ないし3に係る商品カタログの表紙には,いずれも,カタログ商品の名称(商標)である「PHYSIO/SHOCKMASTER」の文字が大きく描かれている。
次に,カタログの最初の見開きページには,「世界65カ国で認められたショックマスターが/日本初上陸。」(乙3の1),「世界65カ国で広く使用されているショックマスターが/日本初上陸。」(乙3の2・3)の文字を大書きしてなる。
そして,その下方にある,比較的小さな文字で描かれた商品の説明のための文章には「日本で認められた唯一の圧力波治療器」(乙3の1),「日本で認められた唯一の圧力波」(乙3の2),「日本で唯一の圧力波治療器」(乙3の3),「Radial shockwave therapy」(乙3の1)又は「Radial shockwave」(乙3の2・3),「世界65カ国,そしてリハビリテーション先進国の欧州にてその効果を認められた拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器がついに日本上陸。」(乙3の1),「世界65カ国,そしてリハビリテーション先進国の欧州で広く使用されている拡散型ショックウェーブ(圧力波)がついに日本上陸。」(乙3の2),「欧州をはじめとしたリハビリテーション先進国を含む世界65カ国で広く使用されている拡散型ショックウェーブ(圧力波)がついに日本上陸。」(乙3の3)と記載されている。
そして,これらカタログの上記説明文中の「ショックウェーブ」の箇所にそれぞれ水色のハイライトが付されていることからすれば,被請求人は,当該説明文の一部において「ショックウェーブ」の文字が記載されており,これが商標の使用行為に該当するといいたいようである。
しかしながら,被請求人の指摘する上記使用態様をみるに,ショックウェーブが単独で表示されているのではなく,「拡散」(又は「拡散型」)の文字と「(圧力波)治療器」又は「(圧力波)」の文字が横一連に配されているところ,これらを一連に続けて表記し,「拡散(拡散型)ショックウェーブ(圧力波)治療器」のごとき記述的な文言となっているものである。
そうすると,これら「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」又は「拡散型ショックウェーブ(圧力波)」の文字は,カタログの商品であるマッサージ器の内容が,拡散型圧力波治療器であることを説明する文章にすぎず,「拡散」の文字と「(圧力波)治療器」(又は「(圧力波)」)の文字が,本件商標の出所識別標識としての機能を打ち消しているということができる。
そうすると,「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」の文字については,単に当該商品の特徴(内容)を表示したもの,すなわち,商品の品質,効能を表示したものと認識するに止まるものというべきであるから,当該商品カタログに接する取引者,需要者をして,そこに「ショックウェーブ」なる商標が,記載されていることを認識しないことはもちろん,そこに何人かの業務にかかる標章が記載されているとさえ認識しないというべきである。
よって,被請求人が主張する本件商標の使用態様は,その他の「ショックウェーブ」の文字の使用を含めて,本件商標を使用したとは認められないものである。
また,カタログ印刷会社から酒井医療社に宛てた請求書(乙8の1)と酒井医療社社内の稟議書(乙8の2)は要証期間内に作成されたもののようであるが,商品カタログ(乙3の1?3)との関係が不明であって,本件商標「ショックウェーブ」に関する記載は何一つ認めることができない。
さらに,請求書(乙8の1)の請求項目の内容として「品名:ショックマスターカタログE版・・・」,また,社内稟議書(乙8の2)の内容として「件名:ショックマスターカタログ増刷の件」,「起案内容:ショックマスターカタログ他,販促資料の増刷を起案します。」のように記載されていることからすれば,取引先である酒井医療社においても,「ショックマスター」の文字こそが,取引対象商品の自他商品の識別標識としての機能を有する商標であり,乙3の1ないし3に記載された「拡散ショックウェーブ」の文字については,単に該商品の特徴(内容)を表示したもの,すなわち,商品の品質,効能を表示したものと認識するに止まり,これが自他商品の識別標識としての機能を有する商標であるとの認識は一切ないとみられるものである。
イ 社会通念上同一の商標ではない
実際に使用されている標章は「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」又は「拡散型ショックウェーブ(圧力波)」であって,本件商標に係る「ショックウェーブ」とは同一ではない。
通常使用権者による使用ではない
上記(1)において述べたように,酒井医療社が,被請求人の通常使用権者であったという事実は,推認することはできない。
(4)酒井医療社の学会企業展示写真について
ア 本件商標の使用の事実が確認できない
乙第3号証の4に係る各写真にある看板には「国内初/拡散型ショックウェーブ」,「拡散型ショックウェーブ『ショックマスター』」及び「PHYSIO/SHOCKMASTER」の文字が表示されている。
しかしながら,上記(3)に述べたように,ショックウェーブが単独で表示されているのではなく,「拡散型」の文字も配されているところ,これらを一連に続けて表記し,「拡散型ショックウェーブ(圧力波)」治療器のごとき記述的な文言となっているものであり,これは,展示に係るマッサージ器の内容が,拡散型圧力波治療器であることを説明する文章にすぎず,「拡散」の文字が,本件商標の出所識別標識としての機能を打ち消しているともいい得るところである。
よって,被請求人が主張する本件商標の使用態様は,本件商標の使用とは認められず,これをもって本件商標の使用があったものとは,いい得ないものである。
イ 社会通念上同一の商標ではない
実際に使用されている標章は「拡散型ショックウェーブ」であって,本件商標に係る「ショックウェーブ」とは同一ではない。
通常使用権者による使用ではない
上記(1)において述べたように,酒井医療社が,被請求人の通常使用権者であったという事実は,推認することはできない。
エ 本件商標の使用の事実について信ぴょう性に欠ける
乙第3号証の4においては,酒井医療社の展示ブースを映したと思しき写真を添付のうえ,各医学会,学術集会が開催された期間が示されている。例えば,第28回日本臨床スポーツ医学会が開催された2017年(平成29年)11月18日及び19日である。
しかしながら,添付された写真には日付が表示されておらず,また,撮影場所が各学会の会場で撮影されたという確固たる証拠もないことから,撮影日時,撮影場所が不明な写真であるいえる。もっとも,写真の画像データを保持していれば,それをワープロソフト等に画像データを張り付けて,適当な日付を記載することも容易にできるところである。
したがって,上記証拠は,信ぴょう性に欠き,本件商標がその指定商品について使用されていたことを客観的に証するものであるとはいえない。
(5)本件商標権者と酒井医療社との取引について
ア 本件商標の使用の事実が確認できない
乙第4号証は,酒井医療社が製品「ショックマスター」を被請求人から仕入れた際の注文書,納品書,支払明細書であるが,本件商標がその指定商品に使用されていることを示す記載はおろか,本件商標そのものの記載すら見当たらない。
むしろ,同号証が示す事実は,「ショックマスター」という商標が使用されている事実にほかならない。
通常使用権者による使用ではない
上記(1)において述べたように,酒井医療社が,被請求人の通常使用権者であったという事実は,推認することはできない。
(6)酒井医療社のウェブサイトについて
酒井医療社のウェブサイトの公開記録(乙9)によれば同ウェブサイト(乙5)は要証期間内に公開されたもののようである。
ア 本件商標の使用の事実が確認できない
乙第5号証に係る酒井医療社のウェブサイトの表示画面には「SAKAImed」の文字,その下方に「ショックマスター」,「世界65カ国で認められたショックマスターが/日本初上陸。」の各文字を大書きしてなり,その右下方には太い字で「PHYSIO/SHOCKMASTER」の文字が記載されている。
そして,比較的小さな文字で描かれた,ウェブサイト中の商品の内容を説明する文章中には「日本で認められた唯一の圧力波治療器」,「Radial shockwave therapy」,「世界65カ国,そしてリハビリテーション先進国の欧州にてその効果を認められた拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器がついに日本上陸。」と記載されている。
しかしながら,上記(3)に述べたように,ショックウェーブの文字が単独で表示されているのではなく,「拡散」,「(圧力波)治療器」の文字ともに配されているところ,これらを一連に続けて表記し,「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」のごとき記述的な文言となっているものであり,これは,ウェブサイトに掲載されているマッサージ器の内容が,拡散型圧力波治療器であることを説明する文章にすぎず,「拡散」,「(圧力波)治療器」の文字が,本件商標の出所識別標識としての機能を打ち消しているともいい得るところである。
そうすると,ウェブサイトにおける商品の説明文の一部に記載された「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」の文字については,単に該商品の特徴(内容)を表示したもの,すなわち,商品の品質,効能を表示したものと認識するに止まるものというべきであるから,当該ウェブサイトに接する取引者,需要者をして,そこに「ショックウェーブ」なる商標が,記載されていることを認識しないことはもちろん,そこに何人かの業務にかかる標章が記載されているとさえ認識しないというべきである。
むしろ,当該ウェブサイトにおいては,大きく目立つ態様で「SAKAImed」,「ショックマスター」「PHYSIO/SHOCKMASTER」の各文字が表示されていることからすれば,本件の使用商品に接する取引者,需要者は,これら「SAKAImed」,「ショックマスター」,「PHYSIO/SHOCKMASTER」の文字こそが,自他商品の識別標識としての機能を有する商標であると理解するというべきである。
よって,被請求人が主張する本件商標の使用態様は,本件商標の使用とは認められず,これをもって本件商標の使用があったものとは,いい得ないものである。
イ 社会通念上同一の商標ではない
実際に使用されている標章は「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」であって,本件商標に係る「ショックウェーブ」とは同一ではない。
通常使用権者による使用ではない
上記(1)において述べたように,酒井医療社が,被請求人の通常使用権者であったという事実は,推認することはできない。
(7)本件商標権者のウェブサイトについて
ア 本件商標の使用の事実が確認できない
乙第6号証に係る被請求人のウェブサイトの表示画面には図案化された「index」の文字を左上方に配し,その右方に「ショックマスター」,「Shockmaster」の各文字を大書きしてなり,その下方にある比較的小さな文字で描かれた商品の説明のための文章中には「世界65カ国で認められた圧力波治療器ショックマスターが日本初上陸」,「世界65カ国,そしてリハビリテーション先進国の欧州にて,その効果を認められた拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器が,ついに日本上陸。」と記載されている。
しかしながら,上記(3)に述べたように,ショックウェーブの文字が単独で表示されているのではなく,「拡散」「(圧力波)治療器」の文字とともに配されているところ,これらを一連に続けて表記し,「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」のごとき記述的な文言となっているものであり,これは,ウェブサイトに掲載されているマッサージ器の内容が,拡散型圧力波治療器であることを説明する文章にすぎず,「拡散」「(圧力波)治療器」の文字が,本件商標の出所識別標識としての機能を打ち消しているともいい得るところである。
そうすると,ウェブサイトにおける商品の説明のための文章の一部に記載された「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」の文字については,単に該商品の特徴(内容)を表示したもの,すなわち,商品の品質,効能を表示したものと認識するに止まるものというべきであるから,当該ウェブサイトに接する取引者,需要者をして,そこに「ショックウェーブ」なる商標が,記載されていることを認識しないことはもちろん,そこに何人かの業務にかかる標章が記載されているとさえ認識しないというべきである。
むしろ,当該ウェブサイトにおいては,大きく目立つ態様で「index」,「ショックマスター」,「SHOCKMASTER」の各文字が表示されていることからすれば,本件の使用商品に接する取引者,需要者は,これら「index」,「ショックマスター」,「SHOCKMASTER」の文字こそが,自他商品の識別標識としての機能を有する商標であると理解するというべきである。
よって,被請求人が主張する本件商標の使用態様は,本件商標の使用とは認められず,これをもって本件商標の使用があったものとは,いい得ないものである。
イ 社会通念上同一の商標ではない
実際に使用されている標章は「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」であって,本件商標に係る「ショックウェーブ」とは同一ではない。
ウ 要証期間内における証拠とは認められない
乙第6号証においては,ファイルのアップロード日時としてコンピュータの画面のスクリーンショットと思しき画像が掲載されているが,その情報が何の日付を意味するのか理解できないところである。そのため,当該スクリーンショットをもって,上記ウェブサイトが要証期間内にインターネット上でアクセスが可能であった事実を証明するに足りるものではない。
(8)結語
以上のとおり,被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第9号証は,それ自体,要証期間内に本件商標が日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者によってその指定商品について使用された事実を立証するものではない。
そして,被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを何ら主張立証していない。
よって,本件商標は商標法第50条第1項の規定によってその登録を取り消すべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(枝番号を含む。なお,乙第4号証の納入書類3種については,2015年(平成27年)11月4日発注日の注文書(兼納期確認書)を乙第4号証の1,2015年(平成27年)11月2日付け納品書を乙第4号証の2,2015年(平成27年)11月30日付け支払明細書を乙第4号証の3,2018年(平成30年)1月22日発注日の注文書(兼納期確認書)を乙第4号証の4,2018年(平成30年)2月6日付け納品書を乙第4号証の5,2018年(平成30年)2月28日付け支払明細書を乙第4号証の6に読み替える。)を提出した。
1 本件商標の通常使用権者である酒井医療社が,少なくとも,平成28年4月ないし同30年7月に本件商標を整形外科学分野で使用される治療用マッサージ器(「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」における一般的名称は「振動ヘッド付空気圧式マッサージ器」)について使用している。
(1)本件商標権者と酒井医療社との関係について
酒井医療社は,本件商標の通常使用権者である(乙1)。
酒井医療社と被請求人は,平成22年5月28日に取引基本契約書(乙7の2)を交わし,被請求人の輸入する複数の製品を酒井医療社が独占的に販売しており,同28年10月31日に覚書(乙7の3)を交わした,振動ヘッド付空気圧式マッサージ器「ショックマスター」もその一つである。覚書本文中には「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」と記載されており,両者ともにショックマスターが拡散型ショックウェーブであるという合意のもとに販売活動を行っている。
本件商標は,「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」の販売のために使用することを目的として登録したものであり,被請求人から使用許諾を与えられた酒井医療社が,製品販売用カタログ,展示会等におけるポスター等において本件商標を使用していることは明らかである。
(2)使用に係る商品について
本件商標を使用する製品「ショックマスター」は,整形外科学分野で使用される治療用マッサージ器の「振動ヘッド付空気圧式マッサージ器」(以下「使用商品」という。)であり,乙第2号証は,製品への添付が必須となっている医療機器添付文書である。
2 酒井医療社の商品カタログについて
平成27年6月より現在まで,酒井医療社は,本件商標を付したカタログ(乙3の1?3)を見込み顧客へ提供し,また,学会の企業展示の場などで配布している。
年月日が明記されたカタログ印刷会社からの酒井医療社宛の請求書(乙8の1)及び酒井医療社内の稟議書(乙8の2)により,当該カタログの作成時期及び要証期間内に我が国において頒布された事実を示す。
3 酒井医療社の学会企業展示写真について
乙第3号証の4は,酒井医療社が本件商標を付した展示パネルを掲示していることを示す写真であり,撮影された場所及び日時は同文書に記載のとおりである。これにより,整形外科分野で使用される機器であることも明らかである。
4 本件商標権者と酒井医療社との取引について
本件商標を使用する製品「ショックマスター」について,通常使用権者である酒井医療社が本件商標権者より仕入れた際,作成された注文書,納品書,及びその支払明細書の写し(乙4の1?6)である。
これにより,本件商標を使用した製品を販売した事実を示す。
5 酒井医療社のウェブサイトについて
乙第5号証は,インターネット上で公開されている酒井医療社の情報の写しであり,乙第9号証は,サイトの公開記録である。
これにより,要証期間内に酒井医療社が本件商標を掲示していたことを示す。
6 本件商標権者のウェブサイトについて
インターネット上で公開されている本件商標権者の情報の写し,及び,そのサーバー情報(乙6)である。
これにより,要証期間内に同ウェブサイトが公開されていたことを示す。
7 以上により,要証期間内に日本国内において本件商標の通常使用権者が本件商標を「整形外科用の機械器具,治療用マッサージ器」について使用していることは明らかである。

第4 当審の判断
1 事実認定
証拠及び被請求人の主張によれば,以下のとおりである。
(1)本件商標権者と酒井医療社との関係について
ア 「取引基本契約書」(乙7の2,以下「本件契約書1」という。)は,酒井医療社から本件商標権者に対し発注される目的物(無体物,役割等含む。以下目的物という。)の取引に関する基本事項を定めたものであって,平成22年5月28日に締結された。
そして,本件契約書1の第1条(基本契約及び個別契約)には,「この基本契約は甲(審決注:酒井医療社)から乙(審決注:本件商標権者)に対し発注される目的物の取引に関する基本事項を定めたものであり,甲乙間で締結される個々の取引契約に適用される」との記載があり,本件契約書1の有効期限は,平成22年5月28日から同23年5月27日までとされ,期間満了の3ケ月前までに,甲乙いずれからもこの基本契約の内容の変更又は,この契約を継続しない旨の書面による申し出がないときは,この基本契約は同1条件で更に1年間継続するものとし,以後もこの例による旨の記載がある。
イ 覚書(乙7の3)(以下「本件契約書2」という。)は,本件商標権者が製造販売する「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」の日本国内において酒井医療社が独占販売権を有することを取り決めたものであって,平成28年10月31日に締結されたもので,本件契約書2の独占販売期間は,平成28年11月1日より同29年10月31日までとされ,期間満了の3ケ月前までに,甲(審決注:酒井医療社)乙(審決注:本件商標権者)いずれからも書面による異議がなされないときは,本契約は期間満了の日の翌日から,同一の条件により更に1ケ年間延長されるものとし,以後も同様とする旨の記載がある。
ウ 本件商標権者は,平成27年3月30日,酒井医療社に対し,「ショックウェーブ」を含む5件の商標について,登録査定が出たこと,登録料の納付を済ませるので,資料等の準備に使っていただいてかまわない旨連絡した(乙7の1)。
また,本件商標権者は,平成29年7月18日,酒井医療社に対し,「ショックウェーブ」を含む5件の商標について,詳細相談のうえ使っていただくことができる旨連絡した(乙1)。
(2)酒井医療社の商品カタログについて
酒井医療社が2017年(平成29年)6月に発行した商品カタログ(乙3の3)の1葉目には,「PHYSIO-Radial Shockwave-/SHOCKMASTER/拡散型ショックウェーブ(圧力波)」,2葉目の上段に「世界65カ国で広く使用されているショックマスターが日本初上陸。」,その下には,「日本で唯一の圧力波治療器」,「・・・拡散型ショックウェーブ(圧力波)(以下「使用商標1」という。)がついに日本上陸。この『ショックマスター』がこれからの日本のリハビリテーション,・・・」と記載され,6葉目及び7葉目には「3ステップの基本治療」の見出しの下,「2 ・・・圧力波と同時に振動を加えて患部周辺をほぐすダブル治療を行います」の記載,8葉目に機器の本体,専用ワゴン,付属品の画像及び価格,電圧,寸法等の記載とともに,管理医療機器(クラスII)・特定保守管理医療機器、承認番号,さらに「一般名称:振動ヘッド付空気圧式マッサージ器」と記載されている。
(3)酒井医療社の学会企業展示写真について
学会企業展示写真(乙3の4)には,酒井医療(株)及び上記カタログに掲載された「拡散型ショックウェーブ」(以下「使用商標2」という。)の文字とともに,振動ヘッド付空気圧式マッサージ器が写されている。
(4)酒井医療社及び本件商標権者のウェブサイトについて
酒井医療社及び本件商標権者のウェブサイトには,圧力波治療器「ショックマスター(Shockmaster)」が「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」(以下「使用商標3」という。)として紹介されている(乙5,乙6)。
また,酒井医療社のサイト公開記録(乙9)には,公開済み2017年(平成29年)8月24日と記載されているが,乙第5号証と乙第9号証のウェブサイトの文字部分は相違する。
2 判断
(1)商標の使用者について
上記1(1)によれば,本件商標権者が製造販売する圧力波治療器「拡散型ショックウェーブ ショックマスター」について,酒井医療社が独占販売権を有すること,本件契約書1及び本件契約書2は有効に存続していること,本件商標権者は,酒井医療社に対し,「ショックウェーブ」を含む5件の商標について,資料等の準備に使っていただいてかまわない旨連絡していることから,本件商標の使用許諾を示す契約書等の提出はないとしても,本件商標権者は,酒井医療社に対して,本件商標の使用について,黙示の許諾を与えていたものと推認できる。
したがって,酒井医療社は,本件商標の通常使用権者であると認めることができる。
(2)使用商品について
通常使用権者の酒井医療社が商品カタログ(乙3の3)に掲載された商品「振動ヘッド付空気圧式マッサージ器」は,上記1(2)のとおり,特定保守管理医療機器であり,承認番号も有するものであって,「圧力波と同時に振動を加えて患部周辺をほぐすダブル治療を行います」と説明されていることから,医療用機器の一種といい得るものであり,本件審判の請求に係る指定商品中の第10類「治療用マッサージ器」に含まれる商品と認められる。
(3)本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
ア 酒井医療社の商品カタログについて
商品カタログ(乙3の3)は,上記1(2)のとおり,通常使用権者が2017年(平成29年)6月に発行した商品「振動ヘッド付空気圧式マッサージ器」のカタログであって,その商品に使用商標1が使用されている。
使用商標1は,上記1(2)のとおり,「拡散型ショックウェーブ(圧力波)」であり,本件商標は,「ショックウェーブ」の文字からなるから,使用商標1とは,「ショックウェーブ」の文字は共通するとしても,「拡散型」及び「(圧力波)」の文字の有無において相違するものであって,書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということはできないから,使用商標1は,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。
イ 酒井医療社の学会企業展示写真について
酒井医療社が整形外科分野で使用される機器を展示した写真(乙3の4)には,上記カタログに掲載された「拡散型ショックウェーブ」(使用商標2)の文字とともに,振動ヘッド付空気圧式マッサージ器が写されており,「拡散型ショックウェーブ」は,上記アと同様に本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。
ウ 酒井医療社と本件商標権者のウェブサイトについて
使用商標3は,上記1(4)のとおり,「拡散ショックウェーブ(圧力波)治療器」であるところ,その構成中「治療器」の文字は,商品の品質を表示する部分として使用している(乙5,乙6)ことから,使用商標3は,「拡散ショックウェーブ(圧力波)」の文字部分を独立した要部として認識し得る。
そして,本件商標は,「ショックウェーブ」の文字からなるところ,使用商標3とは,「ショックウェーブ」の文字は共通するとしても,「拡散」及び「(圧力波)」の文字の有無において相違するものであって,書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標ということはできないから,使用商標3は,本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。
(4)小括
以上のとおり,酒井医療社は,本件商標の通常使用権者であり,また,使用商品である「振動ヘッド付空気圧式マッサージ器」は,本件審判の請求に係る指定商品中「治療用マッサージ器」に含まれる商品と認められる。
しかしながら,使用商標1ないし使用商標3は,いずれも,本件商標とは社会通念上同一の商標ということはできない。
その他,被請求人が提出した証拠によっては,要証期間内に,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標の使用があったことを認めるに足る事実を見いだせない。
3 まとめ
以上のとおりであるから,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中の「結論掲記の指定商品」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2020-08-05 
結審通知日 2020-08-11 
審決日 2020-08-26 
出願番号 商願2014-103432(T2014-103432) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W10)
最終処分 成立  
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 平澤 芳行
小松 里美
登録日 2015-04-24 
登録番号 商標登録第5759749号(T5759749) 
商標の称呼 ショックウエーブ 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石田 昌彦 
代理人 右馬埜 大地 

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