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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W3541
管理番号 1366276 
審判番号 無効2019-890042 
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-07-30 
確定日 2020-09-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第6014683号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6014683号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成29年6月2日に登録出願、第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同年12月25日に登録査定、同30年1月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由について引用する国際登録第933951号商標(以下「引用商標」という。)は、「THE WHITE COMPANY」の欧文字を横書きしてなり、2007年(平成19年)3月21日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、同年6月6日に国際商標登録出願、第3類、第4類、第5類、第16類、第20類、第24類、第25類、第27類及び第35類に属する国際商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成22年7月2日に日本国において設定登録されたものであり、現在、有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 具体的理由
(1)引用商標と本件商標との類似性について
引用商標は、欧文字で「THE WHITE COMPANY」を横一列に配し、その構成文字に相応して「ザホワイトカンパニー」の称呼を生ずる。
また、その構成語の持つ意味内容から、「白い企業、ホワイト企業」といった観念を生ずる。さらに、「ホワイト企業」は、「就職活動を行うに際して、入社後に福利厚生が整っていたり、離職率が低いなどから入社することが好ましいとされている企業」を観念させる。
他方、本件商標は、月桂樹をモチーフにした図形の下部に「The WHITE COMPANY Way」の文字が付された部分と、その図形部分の右側に「ホワイト企業大賞」の文字部分からなる。
本件商標の要部について検討すると、「ホワイト企業大賞」の語は、「社員の待遇や福利厚生などが充実し、働きやすさにおいて最も優れている企業を賞する」という意味合いを有しており、本件商標の指定役務との関係においては、説明的・記述的であり、識別力が高いとはいえない部分である。
さらに、大賞を表彰する際、月桂樹をモチーフとする図形が用いられることは極めて一般的であり、本件商標の図形部分においても、特段特徴のある図形であるとはいえず、当該部分についても指定役務との関係において、自他役務の識別力を有しているとはいえない。
加えて、「The WHITE COMPANY Way」のうち「Way」の部分は、「方法・手段」の意味を有する語として日本人にとって馴染みのある語にすぎないため、当該「Way」部分は、自他役務識別力を有しているとはいえない。
以上を考慮すると、本件商標の要部は「The WHITE COMPANY」の文字部分であり、構成文字に相応して「ザホワイトカンパニー」の称呼が生じる。
ここで、両者を比較すると、称呼においては、「ザホワイトカンパニー」で共通する。
また、外観においても大文字と小文字の差異はあるものの、欧文字で表した「THE WHITE COMPANY」の語はほぼ同一である。
さらに、観念においては、「THE WHITE COMPANY」の語自体は辞書等に掲載がないが、前述のとおり、「白い企業、ホワイト企業」、そしてホワイト企業の語から「就職活動を行うに際して、入社後に福利厚生が整っていたり、離職率が低いなどから入社することが好ましいとされている企業。」といった意味内容も認められる。そのため、観念においても共通する。
以上を踏まえると、引用商標と本件商標は外観、称呼及び観念において共通する類似の商標である。
(2)引用商標の独創性について
引用商標「THE WHITE COMPANY」の語は、辞書に掲載がなく、一定の独創性を有している。
(3)引用商標の周知・著名性について
ア 請求人について
請求人は、1994年にロンドンにて設立され、当初は家族経営の通販店としてスタートした。白を基調としたホームアクセサリー(リネンやタオルなど)、石けん、ろうそく、ルームフレグランス、文房具、家具類、衣類の販売と、これらの商品についての小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供(以下「小売等役務」という。)を主な事業としており、引用商標は、設立当時から、約25年間に渡り屋号変更等することなく使用された結果、引用商標は、引用商標権者の使用にかかるブランドとして、イギリス本国のみならず、日本を含む海外においても広く知られるに至っている(甲4?甲8)。
イ 引用商標の使用状況
請求人の公式ウェブサイトでは、引用商標がトップページに大きく掲げられている(甲3)。当該ウェブサイトによると、請求人が取り扱う商品は、衣類・靴類・化粧品類・ベビー用品・寝具等広範にわたっている。
日本においても、海外有名ファッションブランドを紹介・取り扱うファッション通販サイト「BUYMA」をはじめ、さまざまなウェブサイトにおいて、請求人の商品が紹介され、あるいは取り扱われている(甲4?甲8)。
(4)本件商標の指定役務と引用商標の役務との関連の程度について
引用商標は、上述のとおり、幅広い商品及び小売等役務について使用されており、需要者の間に広く知られている。
一方、本件商標は、その指定役務に「商品の販売に関する情報の提供、インターネットその他の通信手段を利用した広告、その他の広告、電子出版物の提供」などの役務を包含するものであり、これらの役務は、引用商標の使用に係る商品・役務が電子商取引において提供されることもあること、さらには、インターネット上で広く紹介されていることにかんがみると密接に関連している。
以上より、本件商標がその指定役務に使用された場合、取引者・需要者をして請求人の周知・著名な引用商標と出所混同を生ぜしめるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)結語
以上の理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)引用商標と本件商標の類似性について
被請求人は、引用商標「THE WHITE COMPANY」 から、「従業員に対する待遇のいい企業」を意味する「ホワイト企業」の観念が生ずるというのはいささか無理のある主張であるというが、我が国において、引用商標の看者である需要者・取引者は、日本人であり、これらの者が引用商標に接した場合には、かかる観念を想起することは容易に想像ができるから、引用商標と本件商標は、上記1(1)のとおり、外観、称呼及び観念において共通する類似の商標である。
(2)引用商標の周知・著名性について
引用商標は、上記1(3)のとおり、請求人の使用にかかるブランドとして、イギリス本国のみならず、日本を含む海外においても広く知られるに至っているのであるから被請求人の反論は妥当しない。
(3)本件商標の指定役務と引用商標の役務との関連性の程度について
引用商標は、上述のとおり、幅広い商品及び小売等役務について使用されており、需要者の間に広く知られている一方、本件商標は、その指定役務に「商品の販売に関する情報の提供、インターネットその他の通信手段を利用した広告、その他の広告、電子出版物の提供」などの役務を包含するものであり、本件商標の指定役務と引用商標の役務は、上記1(4)のとおり、密接に関連している。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の独創性については争わない。
2 引用商標と本件商標の類似性について
請求人は、本件商標の要部が、本件商標中「The White Company」の部分であり、引用商標と類似すると主張するが、下記理由から、明らかに誤りである。
引用商標と本件商標を全体観察すれば、両商標が全く類似しないことは明白であるが、仮に、請求人の主張に沿って、本願商標中「The White Company Way」の部分だけに着目したとしても、引用商標「THE WHITE COMPANY」とは明らかに非類似である。
まず、本件商標中の上記部分の商標態様を確認すると、「The」はやや小さく、それ以外の「White」、「Company」、「Way」の文字が同一大、同一色、同一書体でまとまりよく表されている。
それにもかかわらず、請求人は、「The White Company Way」の文字中、「Way」の部分だけについて、「『Way』は『方法・手段』の意味を有する日本人にとってなじみのある語にすぎないから自他役務識別力を有さない」とする主張する。「Way」は「道」を意味する英語として日本人になじみのある語ではあるが、同様に、「The」も「White」も「Company」も、日本人にとって相当になじみのある語であり、「Way」だけを切り捨てる理由にはならない。
してみれば、ここから生ずる称呼は「ザホワイトカンパニーウェイ」又は「ホワイトカンパニーウェイ」であり、引用商標から生じる「ザホワイトカンパニー」とは、称呼上非類似である。
また、観念について、「The White Company Way」は、被請求人が生み出した和製英語ではあるが、中央に大きく表された「ホワイト企業大賞」の文字があるゆえに、「ホワイト企業への道」といった意味が観念される。
一方、引用商標「THE WHITE COMPANY」から生じる観念は「白い会社、白の企業」であり、本件商標とは観念上も非類似である。
請求人による、引用商標「THE WHITE COMPANY」から、「従業員に対する待遇のいい企業」を意味する「ホワイト企業」の観念が生じるというのはいささか無理のある主張である。なぜなら、「ホワイト企業」という語は、日本でのみ通じる造語「ブラック企業」の対義語として発生した語であって、これを直訳して「WHITE COMPANY」と称することはない。
まして、イギリス法人である請求人に係る商標についてはいうまでもない。
以上のとおり、請求人の主張に沿って本件商標の一部を抜き出して、引用商標と比較した場合でも非類似であることは明らかであり、本件商標は、外観・称呼・観念のいずれについても、引用商標とは非類似の商標であり、請求人との間にはいかなる広義の混同も生じない。
本件商標の中央に大きく表された「ホワイト企業大賞」の語は、被請求人が、独自の基準によって、いわゆる「ブラック企業」とは逆の組織の在り方を求める活動全体を表象する語として採択した商標であり、本件商標の指定役務との関係において十分に識別力を有する語である。そもそも、本件商標のように、他者を表彰する賞に係る商標については、表彰内容をある程度イメージさせる商標を選択することは一般的で、かつ、その賞と他の賞とは区別がついているという事実から、十分に自他役務識別力を発揮している。
この事実は、本件商標同様、第35類及び第41類を指定役務とする、標準文字のみからなる商標、例えば「ネット流行語大賞」、「日本ビジネスモデル大賞」等の商標が多数登録されていることからも明らかと思料する(乙1)。
左部に表される図形について、被請求人が創作した、旧約聖書のノアの箱舟に由来するオリーブの葉をくわえた鳩をデザインしたシンボルマークである(乙2)。
このシンボルマークに対し、請求人は一方的に「月桂樹をモチーフとしており、特段特徴のある図形とは言えず、自他役務の識別力を有さない」と断じているが、当該図形商標の態様が自他役務識別力を有することはいうまでもない。
以上より、本件商標の要部を「The White Company」であるとする請求人の主張には理由がなく、また、一見して明らかなように、引用商標と本件商標とは、外観・称呼・観念のすべてにおいて全く非類似の商標であり、混同が生じる余地はない。
3 引用商標の周知・著名性について
請求人は、引用商標の周知・著名性を証するために、甲第4号証ないし甲第8号証を提出しているが、これらの証拠が示すのは、請求人が引用商標を使用している事実、及び、我が国において請求人に係る商品が入手可能であるという事実にすぎず、周知・著名性の立証にはなっていない。
奇しくも請求人自身の提出による、甲第5号証3ページ目後段の記載によれば、我が国において請求人の商品を入手するには、「イギリスのサイトから直接輸入する(甲3:英文のみのサイト)」、「輸入代行業者などを利用して購入(甲4:「BUYMA」も輸入代行業者)」、「ロンドン旅行をして購入」する方法しかない。
また、楽天市場に出店するいくつかのウェブショップにおいても商品を購入することができるようだが、これらのショップも請求人に係る商品の在庫を有しているわけではなく、顧客の注文を受けて海外から取り寄せる輸入代行の形態である。
昨今の情報化社会においては、インターネットを検索すれば、世界中のブランドから好みの商品を見つけることができ、また、入手手段も多様化していることから、他人があまり知らないブランドの商品であっても入手可能であるが、甲第4号証ないし甲第8号証が示すのはそういった事実にすぎない。
すなわち、類似関係を超えて適用される商標法第4条第1項第15号の出所の混同が生じると主張するからには、相当高度な周知性、著名性の立証が請求人に課せられているが、本件証拠によっては、周知・著名性を認めることはできない。
4 本件商標の指定役務と引用商標の役務との関連の程度について
本件商標の指定役務は、第35類「経営に関する助言」等、企業の運営もしくは管理に関する援助を主とする役務と、第41類「人事管理・労務管理に関する表彰及び表彰式の企画・運営又は開催、教育訓練」を主とする役務である。
第35類においても、小売等役務は指定しておらず、将来においても、小売等役務を行う意思はない。
一方、引用商標は、衣服及びホームアクセサリーについてのファッションブランドであり、そのブランドを付した商品の小売等役務商標である。
してみれば、本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務は、その性質・用途又は目的においてきわめて関連性が乏しく、また、役務の取引者・需要者にも特段の共通性はない。
加えて、請求人が特に指摘する、本件商標に係る第35類の指定役務「商品の販売に関する情報の提供、インターネットその他の通信手段を利用した広告、その他の広告、電子出版物の提供」は、他人のために行う役務であり、請求人に係る商品がインターネット上で取引されていることと、本件指定役務とは全く関連がない。
よって、被請求人が、引用商標と全く非類似の本件商標を、引用商標に係る商品・役務と関連性の薄い本件指定役務に使用したところで、請求人との間に出所混同が生じる可能性は全くない。
5 被請求人による本件商標の使用の事実について
被請求人は、本件商標を使用して、2014年に「第1回ホワイト企業大賞」の選考・表彰活動を開始して以降、5年にわたって活動を継続し、毎年、多数の企業が表彰を受けている(乙3の1?乙3の5:第1回?第5回の受賞企業情報 乙4:第6回ホワイト企業大賞)。
被請求人は、上記表彰事業のみならず、「The White Company Way=ホワイト企業への道」として、本件商標を使用して、勉強会や講演会、公開講座、体験合宿の開催を通じて、社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にする企業を増やす活動を行っている(乙5)。
これらの継続的な活動により、「ホワイト企業大賞」が認知され始め、本大賞の受賞が就職における企業選択の目安となり、また、受賞企業にとっても広告宣伝効果が生じているので、この事実を紹介するWEBマガジンの記事等を提出する(乙6の1?乙6の6、乙7の1?乙7の5)。
被請求人は、ホームページはもちろん、表彰状、各種パンフレット等々、被請求人が提供する多数の媒体に、本件商標中の、オリーブをくわえた鳩の図形と「THE WHITE COMPANY WAY」の文字を組み合わせたシンボルマークを盛んに使用しているが、いまだかつて一度も、請求人に係る商標、商品、役務との間で出所の混同が生じた事実もなければ、関係性についての問い合わせを受けたこともない。
6 むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば,以下のとおりである。
ア 請求人について
請求人は、1994年にロンドンにて設立され、当初は家族経営の通販店としてスタートした。白を基調としたホームアクセサリー(リネンやタオルなど)、石けん、ろうそく、ルームフレグランス、文房具、家具類、衣類の販売と、これらの商品(以下「請求人商品」という。)についての小売等役務を主な事業としている(甲4?甲8)。
イ 引用商標の使用状況
請求人の公式ウェブサイトでは、引用商標がトップページに掲げられている(甲3)。
我が国においては、海外通販のウェブサイト「BUYMA」をはじめ、「ブリティッシュスタイルで行こう」、「STYLE HAUS」、「SHOP IN UK SHIP TO JAPAN」及び「LONDON navi」のウェブサイトにおいて、「THE WHITE COMPANY」の文字とともに、請求人商品が紹介され、あるいは取り扱われている(甲4?甲8)。
しかしながら、請求人の営業の規模、引用商標が使用された請求人商品又は請求人役務の売上高、市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数等を示す客観的な証拠の提出はない。
ウ 判断
上記ア及びイに拠れば、請求人は、イギリスにおいて設立された企業であり、ウェブサイトを通じて、我が国において、衣類・靴類・化粧品類・ベビー用品・寝具等の請求人商品について小売等役務の提供(以下「請求人役務」という。)を行っていることがうかがわれるものである。
しかしながら、請求人の営業の規模、引用商標が使用された請求人商品の売上高、市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数等、その周知・著名性を量的に把握することができる証拠はなく、引用商標は、請求人商品又は請求人役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、植物の葉をかたどったとおぼしき青色及び黄緑色の図形(以下「図形部分」という。)の下に、「The White」、「Company」及び「Way」の青色の欧文字を三段に書して結合した部分(以下「欧文字部分」という。)を左側に配し、その右側に大きく横一連等間隔に表された「ホワイト企業大賞」の青色の文字を横書きした構成よりなるところ、その構成上、左側の図形及び欧文字部分と、右側の「ホワイト企業大賞」の文字は、視覚上分離して看取されるばかりでなく、両者を常に一体不可分のものとして把握しなければならない特別の事情は見いだせないものであるから、それぞれが独立して自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。
さらに、欧文字部分は、図形部分と同様の色彩で三段にまとまりよく結合されており、該図形及び欧文字部分に接する需要者が、ことさら「The White」及び「Company」の部分のみを抽出して認識するとはいい難いものである。
そうすると、欧文字部分は一体不可分のものととらえるのが自然であって、これより「ザホワイトカンパニーウェイ」の称呼が生じるとみるのが相当である。
また、「ホワイト企業大賞」の文字からは「ホワイトキギョウタイショウ」の称呼が生じるものであるから、本件商標は、その構成中の文字に相応して「ザホワイトカンパニーウェイ」及び「ホワイトキギョウタイショウ」の称呼が生じ、また、これらの文字は、いずれも我が国において具体的な意味を表す語として親しまれているものとはいえないことから特定の観念は生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、上記第2のとおり、「THE WHITE COMPANY」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字に応じて、「ザホワイトカンパニー」の称呼を生じものであり、また、当該文字は、その構成文字全体として、我が国において具体的な意味を表す語として親しまれているものとはいえないことから、特定の観念は生じないものである。
ウ 両者の類似性の程度について
本件商標は、上記アのとおり、左側の図形及び欧文字部分と右側の「ホワイト企業大賞」の文字部分よりなる商標であり、引用商標は「THE WHITE COMPANY」の欧文字からなるものであるから、外観において全く異なるものである。
さらに、本件商標の構成中、独立して識別標識としての機能を果たすといえる図形及び欧文字部分と、引用商標を比較した場合でも、称呼上、「ザホワイトカンパニーウェイ」と「ザホワイトカンパニー」とは、語尾の「ウェイ」の音の有無により明瞭に聴別でき、また外観においても、図形や色彩の有無により顕著に相違するものであって、両商標の類似性の程度が高いということはできない。
(3)役務の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定役務「商品の販売に関する情報の提供、インターネットその他の通信手段を利用した広告、その他の広告、電子出版物の提供」と、請求人役務「衣類・靴類・化粧品類・ベビー用品・寝具等の小売等役務の提供」とは、役務の目的、役務の提供場所、業種等において異なるものであるから、両者の関連性は認められず、両役務の取引者、需要者の範囲の共通性が高いとはいえない。
(4)引用商標の独創性について
引用商標の構成文字「THE WHITE COMPANY」は、「THE」、「WHITE」及び「COMPANY」の文字が英単語の組み合わせを理解させるものであるとしても、一体の既成語としては、英和辞書等に掲載がなく、特定の意味をもって知られているものともいえないことから、一種の造語として一定の独創性を有しているものといえる。
(5)出所混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)によれば、引用商標は、請求人商品又は請求人役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、また、両商標の類似性の程度が高いということはできない上、役務の関連性、需要者の共通性もないものである。
してみると、引用商標に一定の独創性があったとしても、本件商標に接する取引者・需要者が、引用商標を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、該役務が請求人又はこれと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることはできない。
その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(6)請求人の主張について
請求人は、本件商標について、「その構成語の持つ意味内容から、『白い企業、ホワイト企業』といった観念を生ずる。さらに、『ホワイト企業』は、『就職活動を行うに際して、入社後に福利厚生が整っていたり、離職率が低いなどから入社することが好ましいとされている企業』を観念させる。」旨主張している。
しかしながら、本件商標の構成においては、上記(2)アのとおり、欧文字部分は、その上部の植物の葉をかたどったとおぼしき図形の下に、当該図形と同様の色彩で三段にまとまりよく結合されており、該図形及び欧文字部分に接する需要者が、その構成中からことさら「The White」及び「Company」の部分のみを抽出して認識するとはいえないことから、本件商標から「白い企業、ホワイト企業」や「就職活動を行うに際して、入社後に福利厚生が整っていたり、離職率が低いなどから入社することが好ましいとされている企業」といった観念が生ずるということはできない。
また、請求人は、「『ホワイト企業大賞』の語は、『社員の待遇や福利厚生などが充実し、働きやすさにおいて最も優れている企業を賞する』という意味合いを有しており、本件商標の指定役務との関係においては、説明的・記述的であり、識別力が高いとはいえない」、「大賞を表彰する際、月桂樹をモチーフとする図形が用いられることは極めて一般的であり、本件商標の図形部分においても、特段特徴のある図形であるとはいえず、当該部分についても指定役務との関係において、自他役務の識別力を有しているとはいえない」、「『The White Company Way』のうち『Way』の部分は、『方法・手段』の意味を有する語として日本人にとって馴染みのある語にすぎないため、当該『Way』部分は、自他役務識別力を有しているとはいえない」旨主張している。
しかしながら、本件商標の「ホワイト企業大賞」の文字、図形部分及び「Way」の欧文字が、本件商標の指定役務との関係において、役務の質等を直接表示するものとして自他役務識別力を有しないとする証拠も見いだせないことから、請求人が指摘した理由によって、本件商標の要部を「The White Company」の欧文字であると認定することはできない。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
(7)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)(色彩は原本参照)



審理終結日 2020-03-06 
結審通知日 2020-03-11 
審決日 2020-04-23 
出願番号 商願2017-74251(T2017-74251) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (W3541)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 悠貴杉本 克治 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
小俣 克巳
登録日 2018-01-26 
登録番号 商標登録第6014683号(T6014683) 
商標の称呼 ザホワイトカンパニーウエー、ホワイトカンパニーウエー、カンパニーウエー、ウエー、ダブリュウエイワイ、ホワイトキギョータイショー、キギョータイショー、タイショー、ダブリュウ 
代理人 飯塚 智恵 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
代理人 森本 久実 
代理人 石田 昌彦 
代理人 中山 惇子 

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