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審決分類 審判 査定不服 商品(役務)の混同 登録しない W05
審判 査定不服 標章の同一 登録しない W05
管理番号 1366263 
審判番号 不服2017-8819 
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-16 
確定日 2020-09-19 
事件の表示 商願2014-99711拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願標章
本願標章は、別掲のとおり、「Tuche」(その構成中、「e」の文字には、アクサンテギュが付されている。以下同じ。)の文字を横書きしてなり、第5類、第18類、第24類及び第35類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とし、登録第4509260号商標(以下「原登録商標」という。)の防護標章として、平成26年11月26日に登録出願されたものであり、その後、本願の指定商品及び指定役務については、原審における同27年3月24日付け手続補正書及び当審における同29年6月16日付け手続補正書により、最終的に、第5類「生理用パンティ,生理用ショーツ」と補正されたものである。

第2 原登録商標
原登録商標は、別掲の本願標章と同一の構成からなり、平成11年7月15日に登録出願、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同13年9月28日に設定登録、その後、同23年4月26日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであって、現に有効に存続しているものである。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願標章は、他人がこれを本願の指定商品及び指定役務に使用しても、商品又は役務の出所について混同を生じさせるほどに需要者の間に広く認識されているとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第4 当審においてした審尋
当審において、審判長は、請求人に対し、平成30年9月4日付け審尋において、「提出された証拠によっては、原登録商標が、その指定商品を表示するものとして、どの程度知られているかを推し量ることができないことから、原登録商標は、請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っているとは認められない。」旨の暫定的見解を示し、期間を指定して、これに対する回答を求めた。

第5 審尋に対する請求人の回答
請求人は、前記第4の審尋に対し、平成30年10月22日付け回答書及び同31年2月13日付け上申書を提出し、要旨以下のように主張するとともに、第12号証ないし第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商品カタログ(第1号証の1?第1号証の56、第1号証の58、第1号証の59)は、店舗で取り扱う商品を選択してもらうためのカタログであり、その配布先は、請求人の業務に係る商品を取り扱う量販店、百貨店、専門店や卸売業者、販売代理店等の担当者である。
なお、請求人は、2015年以降に作成した同様のカタログを提出するとともに、当該カタログの発行部数を示す(第13号証の1?第13号証の13、第14号証の別紙1)。
2 原登録商標の使用に係る商品のうち、特に売上規模が大きい商品は、ストッキング、女性用靴下(婦人ソックス、タイツ類)及び女性用下着(婦人肌着、ランジェリー)であるところ、ストッキングと女性用靴下(婦人ソックス、タイツ類)に関しては、高い市場シェアを確保できている(第14号証の別紙2及び別紙3)。
3 原登録商標の使用に係る各種商品は、量販店、百貨店、専門店等の店舗販売のほか、カタログ通販、インターネット通販を用いた販売をしているところ、ストッキング、女性用靴下、女性用下着等の婦人用衣類は、全国の大手量販店、デパートや小規模小売店舗といった店舗での販売が大部分を占めている(第14号証の別紙4)。
なお、カタログ通販に係るカタログ発行部数は、第14号証の別紙5に記載のとおりであるが、インターネット通販については、一般消費者に対して商品が直接販売されるため、具体的な流通事実を裏付ける証拠を提出することは困難である。
4 2013年以降の商品群ごとの宣伝広告費は、第14号証の別紙6に記載のとおりであり、そのうち、インナーウェア(女性用下着)に関する金額が大きくなっているのは、新商品の投入により売上げが増加傾向にあるためである。
なお、第5号証ないし第8号証に係る宣伝広告物に関しては、時期が古いこともあり、詳細の確認が困難な状況にあるが、かかる宣伝広告活動によって、一般消費者の間で、原登録商標に係るブランドの認知度が非常に高いものになったことは、第12号証のアンケート結果によって十分に立証できており、宣伝広告の内容の詳細は、原登録商標の著名性立証の必須の要素ではない。
5 請求人は、上記2における主張を裏付ける証拠として、新たに第15号証ないし第18号証を提出する。これらによれば、原登録商標に係るブランドが請求人にとっての基幹ブランドの1つであることが分かる。
また、請求人は、上記3における主張に関し、原登録商標に係るブランドの各種商品が日本全国で販売されていることを裏付ける証拠として、新たに第19号証ないし第21号証を提出する。
さらに、請求人は、上記4における主張に関し、近時の宣伝広告の内容を示す証拠として、新たに第22号証を提出する。

第6 当審の判断
1 防護標章登録の要件(商標法第64条第1項)について
防護標章登録制度に係る商標法第64条第1項は、「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる」旨規定するところ、その規定については、「同項の規定は、原登録商標が需要者の間に広く認識されるに至った場合には、第三者によって、原登録商標が、その本来の商標権の効力(商標法第36条、同法第37条)の及ばない非類似商品又は役務に使用されたときであっても、出所の混同をきたすおそれが生じ、出所識別力や信用が害されることから、そのような広義の混同を防止するために、『需要者の間に広く認識されている』商標について、その効力を非類似の商品又は役務について拡張する趣旨で設けられた規定である。そして、防護標章登録においては、1.通常の商標登録とは異なり、商標法第3条、同法第4条等が拒絶理由とされていないこと、2.不使用を理由として取り消されることがないこと、3.その効力は、通常の商標権の効力よりも拡張されているため、第三者の商標の選択、使用を制約するおそれがあること等の諸事情を総合考慮するならば、商標法第64条第1項所定の『登録商標が・・・需要者の間に広く認識されていること』との要件は、当該登録商標が広く認識されているだけでは十分ではなく、商品や役務が類似していない場合であっても、なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること、すなわち、そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すものと解すべきである。」とされる(知財高裁平成21年(行ケ)第10189号、平成22年2月25日判決言渡)。
2 本願標章が商標法第64条第1項に規定する要件を具備するか否かについて
(1)本願標章と原登録商標との同一性及び請求人と原登録商標の商標権者との同一性について
本願標章は、前記第1及び第2のとおり、原登録商標と同一の構成態様からなるものである。
また、請求人と原登録商標の商標権者とは、本願標章に係る願書における出願人の記載及び原登録商標に係る商標登録原簿における商標権者の記載に照らせば、同一人であることが認められる。
(2)原登録商標が請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているか否かについて
請求人は、本願標章について、商標法第64条第1項に規定する要件を具備するものである旨主張し、証拠方法として、第1号証ないし第22号証(枝番号を含む。)を提出している(本審決においては、以下、当該第1号証ないし第22号証(枝番号を含む。)を、順次、甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)と読み替えるものとする。なお、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)。
そこで、請求人の主張及び同人提出に係る甲各号証について、以下検討する。
なお、請求人の提出に係る甲各号証においては、原登録商標と比較した場合に、書体が異なるものや、アクサンテギュが省略された表記となっているものなどが見受けられるが、これらのうち、その内容から原登録商標と実質的に同一と認め得るものは、以下の検討において、原登録商標として取り扱うこととする。
ア 原登録商標の使用の開始時期及びその使用に係る商品
請求人は、2000年(平成12年)に、原登録商標を自己の業務に係る商品「女性用靴下」や「タイツ」について使用を開始し、翌2001年(平成13年)には、自己の業務に係る商品「ストッキング」についても使用を開始した(甲1の1?甲1の3、甲9の1、甲9の2、甲9の7)。
その後、請求人は、原登録商標の使用に係る商品について、例えば、女性用の下着、ルームウェア、帽子、ネックウォーマー等に順次拡大し、2017年(平成29年)6月には、インナーウェア(キャミソール、タンクトップ、半袖、長袖)、ブラジャー、ショーツ、ストッキング、タイツ、レッグアイテム(レギンスパンツ、レギンス、トレンカ、ガーター、フットカバー、靴下)及びウェア(ルームウェア、アウター)となっていることがうかがえ、また、少なくとも、ストッキング及び靴下については、2017年(平成29年)の秋冬頃及び2018年(平成30年)の春夏頃にも当該標章の使用がうかがえる(甲1の4?甲1の56、甲1の58、甲1の59、甲3、甲4、甲9の4、甲9の11、甲9の12、甲11、甲13)。
イ 原登録商標の使用に係る商品の販売等の状況
(ア)店舗販売
a 甲第6号証の1ないし甲第6号証の8は、全国の百貨店、ショッピングセンター及びスーパーマーケットに設けられた特設売り場とされる写真であるところ、そのうち、甲第6号証の1ないし甲第6号証の7には、それぞれ、「平和堂 AP高槻店」、「ダイエー ショッパーズ福岡店」、「マイカル 広島サティ店」、「福田屋百貨店 宇都宮店」及び「トリンプ アモスタイル スペイン坂店」(いずれも2004年(平成16年))、「オリオン 京阪モール店」(2005年(平成17年))、「ヨシヅヤ 名西店」(2006年(平成18年))といった記載の下、原登録商標が表示された看板とともに陳列されたストッキング又はタイツの写った写真が掲載されており、また、甲第6号証の8には、「ピーコック 千里中央店」(2014年(平成26年))といった記載の下、何かしらの商品の売り場の写った写真が掲載されているものの、その全てについて、記載された時期及び店舗において売り場が設置されていたことを具体的に裏付ける証拠の提出はなく、また、甲第6号証の8については、その売り場においていかなる標章に係るどのような商品が取り扱われていたかも不明である。
b 甲第14号証の別紙4は、2010年(平成22年)ないし2017年(平成29年)における「ルート別 売上実績」とされる一覧表であるところ、当該一覧表によれば、少なくとも、「インナーウェア」及び「レッグウェア」とされるそれぞれについて、上記期間に「量販店」、「百貨店」及び「専門店」において売上げがあったことはうかがえるが、それらの店舗の具体的な所在地域や店舗数等の詳細は明らかでなく、また、その売上げに係る「インナーウェア」及び「レッグウェア」について、具体的にいかなる標章に係るどのような商品であるかも明らかでない。
また、甲第15号証は、2010年(平成22年)ないし2017年(平成29年)における「業種別ルート別売上実績」とされる一覧表であるところ、当該一覧表によれば、「インナー業種」及び「レッグ業種」とされるそれぞれについて、「ルート」として、「カンパニー直販」、「コンビニエンスストア」、「ディスカウントストア・ホームセンター」、「ビッグ3(量販大手3社)」、「一般小売店」、「生協」、「専門店」、「代理店」、「百貨店」、「量販店」等の記載はあるものの、個々の数量及び金額が黒塗りされているため、それらのルートごとの具体的な売上げの数量及び金額の詳細は明らかでなく、また、それらのルートごとの具体的な販売地域や販売商品、その商品について使用された標章も明らかでない。
なお、請求人は、売上規模が最大のルートを大手量販店の店舗販売とし、日本全国に店舗網を有する大手量販店との取引の存在を裏付けるものとして甲第19号証を提出しているが、その内容によれば、当該大手量販店が運営するインターネット通信販売サイトにおいて、原登録商標の使用に係る商品「女性用ソックス」、「タイツ」、「ストッキング」等が掲載されていることはうかがえるものの、その掲載時期は不明であり、また、当該大手量販店との取引があることはうかがえるものの、その取引に基づき、店舗販売がなされているか否かは明らかでない。
c 甲第20号証は、それぞれ、「181214」の日付の記載がある「売上伝票」であって、お届先名として「サッポロシテン」の記載があるもの(甲20の1)、「181208」の納品日の記載がある「仕入伝票」であって、店名として「タカヤナギテン」の記載があるもの(甲20の2)、「181212」の納品日の記載がある「納品伝票」であって、店名として「飯田橋」の記載があるもの(甲20の3)、「2018/12/19」の納品日の記載がある「納品書」であって、店名と思しき「上野店6F」の記載があるもの(甲20の4)であるところ、そのうち、甲第20号証の4に係る「納品書」には、商品について「定番 Thuce シャイニーメッシュダイヤ」の記載が見受けられるが、原登録商標又はそれに通ずる表示のいずれの記載もない。
d 上記aないしcのほか、請求人提出の甲各号証によっては、原登録商標の使用に係る商品について、日本全国のデパート、量販店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等で販売している旨の請求人の主張を認めるに足る具体的な事実は見いだせない。
(イ)カタログ通信販売
請求人は、自己の業務に係る商品の通信販売用カタログとして、「Celestyle」と称する冊子を、少なくとも2009年(平成21年)3月から2012年(平成24年)10月までの間に年4回(春夏秋冬)発行し、その後、2013年(平成25年)10月、2014年(平成26年)の5月及び8月にも発行したことがうかがえるところ、当該カタログには、原登録商標の使用に係る商品として、主に女性用の下着及びルームウェアが掲載されている(甲4)。
上記カタログは、登録会員を大半とする消費者宛に郵送しているとされるものであり、その発行部数を示す一覧表とされるもの(甲14の別紙5)によれば、2010年(平成22年)の春から2011年(平成23年)の夏までに発行されたもの(甲4の5?甲4の10)については、50,000部ないし88,800部、2013年(平成25年)の冬並びに2014年(平成26年)の夏及び秋に発行されたもの(甲4の17?甲4の19)については、26,500部又は31,000部、それぞれ発行とされるところ、その具体的な頒布先や発行部数を客観的に裏付ける証左の提出はない。
また、2009年(平成21年)の春、夏、秋及び冬並びに2011年(平成23年)の秋から2012年(平成24年)の冬までに発行されたもの(甲4の1?甲4の4、甲4の11?甲4の16)については、いずれも発行部数が不明である上、その具体的な頒布先を客観的に裏付ける証左の提出もない。
なお、請求人は、2013年(平成25年)の春、夏及び秋、2014年(平成26年)の春及び冬並びに2015年(平成27年)の春から2018年(平成30年)の冬までの間においても、上記カタログと同様のカタログを発行したとするが、それぞれ該当するカタログの提出がないことから、当該カタログに原登録商標の使用に係るどのような商品が掲載されていたかは明らかでない。
(ウ)インターネット通信販売
請求人は、遅くとも2014年(平成26年)11月以降、自己のウェブサイトにおいて通信販売用ウェブページを設け、原登録商標の使用に係る商品(インナーウェア(キャミソール、タンクトップ、半袖、長袖)、ブラジャー、ショーツ、ストッキング、タイツ、レッグアイテム(レギンスパンツ、レギンス、トレンカ、ガーター、フットカバー、靴下)及びルームウェア等)の販売をしていることがうかがえる(甲3、甲11、甲14の別紙4)。
また、甲第21号証によれば、上記ウェブページを通じた通信販売において、「購入商品内にTucheブランドが入っている受注」は、少なくとも2018年(平成30年)の5月10日から11月9日までの半年間で、47都道府県から合計13,118件あったことがうかがえるが、その受注が具体的にいかなる標章に係るどのような商品であるかは明らかでない。
なお、上記(ア)bのとおり、原登録商標の使用に係る商品「女性用ソックス」、「タイツ」、「ストッキング」等は、日本全国に店舗網を有するとする大手量販店が運営するインターネット通信販売サイトに掲載されていることはうかがえるが、その掲載時期は不明である上、その掲載されている商品について、いつ、どのような注文がなされたかは明らかでない(甲19)。
ウ 原登録商標の使用に係る商品の売上金額等
甲第2号証によれば、原登録商標の使用に係る商品の売上高は、2000年度(平成12年度)に約2億6,150万円であったものが、最盛期の2007年度(平成19年度)には約65億1,500万円に達し、その後、漸減して、2013年度(平成25年度)には約36億4,700万円となったとされ、その間の総額は、約615億9,000万円に及ぶとされる。
また、甲第14号証の別紙2によれば、原登録商標の使用に係る商品(インナーウェア(婦人肌着、ランジェリー)、レッグウェア(ストッキング、婦人ソックス・タイツ等、紳士ソックス・タイツ等))の売上金額は、2010年度(平成22年度)が約56億6,400万円(インナーウェア合計:約12億3,500万円、レッグウェア合計:約44億2,900万円)とされ、以後同様に、2011年度(平成23年度)が約47億1,600万円(約11億6,200万円、約35億5,400万円)、2012年度(平成24年度)が約39億9,100万円(約9億4,600万円、約30億4,500万円)、2013年度(平成25年度)が約39億2,100万円(約5億9,000万円、約33億3,100万円)、2014年度(平成26年度)が約40億500万円(約4億4,700万円、約35億5,800万円)、2015年度(平成27年度)が約46億4,100万円(約5億4,600万円、約40億9,400万円)、2016年度(平成28年度)が約47億100万円(約8億7,700万円、約38億2,400万円)、2017年度(平成29年度)が約48億4,700万円(約11億8,900万円、約36億5,700万円)とされる。
さらに、甲第14号証の別紙3によれば、「2017年版 インナーウェア市場白書」(株式会社矢野経済研究所作成)に掲載された市場規模を前提として、上記売上金額に基づく各商品についてのシェアを試算した場合、「インナーウェア」については、2012年度(平成24年度)から2016年度(平成28年度)までの間、順次、「0.5%」、「0.4%」、「0.3%」、「0.4%」、「0.6%」で推移しており、また、同期間の「ストッキング」、「婦人ソックス・タイツ」及び「紳士ソックス・タイツ」については、同様に、「ストッキング」が「4.4%」、「4.0%」、「3.9%」、「5.2%」、「3.3%」、「婦人ソックス・タイツ」が「3.0%」、「4.2%」、「4.8%」、「5.4%」、「6.5%」、「紳士ソックス・タイツ」が「0.3%」、「0.6%」、「0.8%」、「0.7%」、「0.9%」で推移しているとされる。
なお、請求人のアパレル事業全体の売上高において、原登録商標の使用に係る商品の売上高が占める割合は、2013年度(平成25年度)から2017年度(平成29年度)までの間、6%弱ないし7%弱とされる(甲第14号証の別紙2、甲17、甲18)。
エ 原登録商標の使用に係る商品の広告宣伝等
(ア)広告宣伝費
甲第2号証によれば、原登録商標の使用に係る商品の広告宣伝費は、2006年(平成18年度)度から2011年度(平成23年度)までの間については、2008年度(平成20年度)に最多の約3億3,900万円とされるほか、その他の年度は、おおむね2億円ないし3億円とされ、2012年度(平成24年度)及び2013年度(平成25年度)については、それぞれ、約9,900万円及び約7,750万円とされる。
また、甲第14号証の別紙6及び甲第15号証によれば、原登録商標の使用に係る商品(インナーウェア、レッグウェア)の広告宣伝費は、2013年度(平成25年度)が約1,754万円(全額レッグウェア)、2014年度(平成26年度)が約6,143万円(インナーウェア:約2,929万円、レッグウェア:約3,214万円)とされ、以後同様に、2015年度(平成27年度)が約9,024万円(約2,513万円、約6,511万円)、2016年度(平成28年度)が約1億2,041万円(約6,701万円、約5,340万円)、2017年度(平成29年度)が約1億6,152万円(約1億1,893万円、約4,259万円)とされる。
なお、2013年度(平成25年度)の広告宣伝費については、上記のとおり、証拠の内容によって、金額に大差があり、齟齬が生じている。
(イ)広告宣伝活動
a 販売店向け商品カタログ
請求人は、2000年(平成12年)の春頃から2018年(平成30年)の春頃までの間に、おおむね年2回(春夏と秋冬)、原登録商標の使用に係る商品(主に靴下、タイツ、ストッキング)が掲載された商品カタログ(販売店向けとされるもの)を発行したことがうかがえる(甲1の1?甲1の56、甲1の58、甲1の59、甲13)。
上記商品カタログは、甲第14号証の別紙1によれば、頒布部数が不明な時期はあるものの、2000年(平成12年)の春頃から2018年(平成30年)の春頃までの間に発行されたとする主に靴下、タイツ、ストッキングが掲載されているものの部数は、660部ないし2,100部(別個にCDによるものが数十枚程度あり。)とされ、2008年(平成20年)の春頃から2014年(平成26年)の秋頃までの間に発行されたとする主にルームウェアが掲載されているものの部数は、650部ないし900部とされるところ、その具体的な頒布先や発行部数を客観的に裏付ける証左の提出はない。
b 街頭ポスター及びラッピングカー
請求人は、2002年(平成14年)の秋又は冬頃に、原登録商標の使用に係るストッキングについて、女性タレントを起用した街頭ポスターの掲示及び車体を広告で覆ったラッピングカーの実行をしたことがうかがえるが、その掲示又は実行をした期間及び地域等の詳細は不明である(甲1の9、甲5)。
c 特設売場の設置
請求人は、広告宣伝活動の一環として、全国の百貨店、ショッピングセンター及びスーパーマーケットにおける原登録商標の使用に係る商品の特設売場の設置を挙げるが、その設置については、上記イ(ア)aにおいて述べたとおり、請求人が主張する時期及び店舗における設置の事実等を認めることができない(甲6)。
d ショー又はイベントへの出展
請求人は、原登録商標の使用に係る商品をファッションショー(「Tuche UNO COLLECTION IN 05AW神戸コレクション」)(甲7)及び2018年(平成30年)5月19日及び20日に開催された「日経ウーマンEXPO」(甲22の2)に出展したとするが、前者については、出展に係る具体的な商品やその商品の紹介方法、参加人数などといった詳細が不明であり、また、後者については、会場内に原登録商標が表示された看板を掲げたブースが設置され、ブラジャーが展示されている様子はうかがえるものの、それが請求人の主張に係る「日経ウーマンEXPO」の会場であるか否かは明らかでなく、そのブースへの訪問者数等も不明である。
e 販促品
請求人が宣伝広告物(販促物)として提出したもの(甲8)は、原登録商標が付されていることは見受けられるものの、いずれも、どのような商品に係る販促活動で用いたものか示されておらず、その頒布時期(期間)、頒布場所(地域)及び頒布数等の詳細も不明である。
f その他
請求人が雑誌「saita」(2019年11月号)に掲載されたとする読者座談会のページ(甲22の1)においては、原登録商標の使用に係るブラジャーが紹介されているものの、その出典を裏付ける証拠の提出はない。
また、請求人は、2015年(平成27年)10月18日に、イズミゆめタウン佐賀でアクティバランスイベントを開催したとするところ(甲22の3)、その証拠の内容によれば、店舗内と思しき場所で何らかの説明などがされている様子はうかがえるものの、その開催の時期及び場所を裏付ける証拠の提出はなく、具体的にいかなる標章に係るどのような商品に係る説明などがなされているかも明らかでない。
なお、請求人が2017年(平成29年)5月12日に作成したとする「中期経営計画 CAN20 第2フェーズ<2017年度?2020年度>」(甲18)においては、売場の拡大戦略の1つとして、「レディースアパレルショップ/Tuche」(「Tuche」の構成中の「e」の文字については、アクサンテギュが付されている。)との記載があり、また、インナーウェアの重点化商品の1つとして、「Tuche『縫い目ゼロ』『future bra』で発信力強化」の記載とともに、「Tuche」(「Tuche」の構成中の「e」の文字については、アクサンテギュが付されている。)の表示がされたインナーウェアに係るポスター様のものが掲載されているが、これらがどのように実行されているかを具体的に示す証拠の提出はない。
オ 原登録商標の使用に係る商品についての新聞及び雑誌の記事
(ア)新聞
原登録商標の使用に係るストッキングは、2001年(平成13年)8月30日付け「日経流通新聞」とされるものにおいて、原登録商標が付された商品包装の写真とともに、商品開発に女性タレントを起用した柄ストッキングの新製品を秋に発売し、全国の百貨店、専門店、コンビニエンスストア等で取り扱う旨の記事が掲載され、また、2002年(平成14年)7月30日付け「日経流通新聞」とされるものにおいては、原登録商標が付された商品包装の写真とともに、同月末に、上記ストッキングの新柄のものを発売すること及び上記ストッキングの初年度秋冬の販売実績が500万足であった旨の記事が掲載され、さらに、2003年(平成15年)7月30日付け「日刊工業新聞」とされるものにおいては、請求人が上記柄ストッキングの同年秋冬商品の概要を発表した旨の記事が掲載されたことがうかがえる(甲9の1、甲9の2、甲9の4)。
その後、2010年(平成22年)12月3日付け「日経MJ(流通新聞)」とされるものにおいては、原登録商標が表示された看板が掲げられた売場と思しき写真とともに、請求人が、女性下着ブランド「トゥシェ」の新シリーズとして、自由に装飾品を選べる女性用下着を2011年(平成23年)の2月ないし4月を目途に総合スーパー(GMS)等で販売する旨の記事が掲載され、また、「情報ディスク」の見出しに係る記事(出典は不明)においては、「Tuche HOMME(トゥシェ オム)」(「Tuche」の構成中の「e」の文字については、アクサンテギュが付されている。)と称する請求人の業務に係る男性用フットカバーが、全国の量販店などで販売している旨の記載とともに、紹介されたことがうかがえる(甲9の11、甲9の12)。
(イ)雑誌
2007年(平成19年)2月3日の「週刊東洋経済」とされるものにおいて、請求人の企画販促担当者へのインタビューとして、上記(ア)で述べた柄ストッキングについて、2001年(平成13年)8月に発売され、同年秋冬には500万足のヒットとなったこと、2005年(平成17年)に下降した売上げが翌年に持ち直したこと、年間平均1,500万足のブランドに成長した旨の記載がある記事が掲載されたことがうかがえる(甲9の7)。
カ アンケート
甲第10号証及び甲第12号証は、株式会社矢野経済研究所が作成した「2012年度版 インナーウェア市場白書」と称する報告書に掲載された「『ストッキング』に対する消費者の意識と購買実態 インターネットによる消費者調査結果」とされるものであり、「ストッキング」に対する消費者の意識、購買実態を検証することを目的とし、2012年(平成24年)8月末に、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の20代ないし50代の女性であって、「ストッキング」を1年に1回以上購入し、週に1回以上着用する年代ごとの100人を対象として、購買実態を調査したとされるものである。
そして、上記調査結果のうち、「ストッキングブランドの認知度」とするものは、調査対象のブランドとして、「満足」、「SABRINA(サブリナ)」、「MIRACARAT(ミラキャラット)」、「Tuche(トゥシェ)」、「ASTIGU(アスティーグ)/肌・魅・輝・・・(全11種類)」、「Relish(レリッシュ)」、「f-ing(エフィング)」及び「Mirica(ミリカ)」を挙げ、それぞれについて、回答者が「知らない」、「知っているが購入したことはない」、「買いたい」又は「買ったことがある」の選択肢から回答する形式であるところ、その結果においては、年代ごとにばらつきが見られるものの、全体平均では、「満足」(知らない:27.5%、買ったことがある:53.8%)や「SABRINA(サブリナ)」(知らない:36.0%、買ったことがある:40.5%)の認知度、購買経験度が高くなっており、「Tuche(トゥシェ)」については、「知らない」との回答が52.8%と半数を超え、「買ったことがある」との回答も24.8%にとどまっている。
なお、上記調査対象のブランドのうち、「SABRINA(サブリナ)」は、請求人の業務に係る商品についてのものであって、少なくとも2004年(平成16年)の春夏のストッキングに係るカタログ(甲1の14)や2015年(平成27年)の春夏のタイツ及びストッキングに係るカタログ(甲13の1)に掲載されたことがうかがえ、また、遅くとも2015年度(平成27年度)以降、請求人の業務に係るレッグウェアの主力ブランドとされていることがうかがえる(甲17)。
キ 小括
上記アないしカによれば、請求人は、2000年(平成12年)に、原登録商標を使用した自己の業務に係る女性用靴下やタイツを発売した後、原登録商標の使用に係る商品を、例えば、ストッキング、女性用下着、ルームウェア等に順次拡大しながら、原登録商標を継続して使用しており、また、その使用に係る商品については、2014年(平成26年)11月以降、請求人が開設するインターネット通信販売用のウェブページを通じた販売がされていて、少なくとも2018年(平成30年)の5月ないし11月に全国から注文があったとはいい得るものの、請求人提出の甲各号証を総合してみても、上記原登録商標を使用した各種商品が、全国のデパート、量販店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等といった店舗や請求人発行のカタログ等により、全国的に継続して販売されているとは認めることができない。
また、原登録商標の使用に係る商品のうち、ストッキングについては、その発売がされた2001年(平成13年)の秋冬に500万足が販売されてヒット商品となり、その後、2007年(平成19年)頃には年間平均で1,500万足が販売されたなどとされていることからすれば、その当時においては、同種商品の中で一定程度のシェアを占めていたことが推測されるが、それがどの程度であったかは明らかでなく、請求人の試算による2012年度(平成24年度)ないし2016年度(平成28年度)のそのシェアについても、4%前後で推移しているものの、その多寡を評価し得る証拠の提出はない。その他、婦人ソックス・タイツについては、請求人の試算で2016年度(平成28年度)に6.5%のシェアとされるが、これについても、その多寡を評価し得る証拠の提出はないし、インナーウェアや紳士ソックス・タイツについては、請求人の試算による2012年度(平成24年度)ないし2016年度(平成28年度)のシェアがいずれも1%に満たないものである。
さらに、請求人は、原登録商標の使用に係る商品について、2006年度(平成18年度)から2017年度(平成29年度)までの間、広告宣伝活動に数千万円ないし数億円の費用をかけたとするが、その活動の詳細については明らかでなく、その他、広告宣伝活動として、例えば、2002年(平成14年)の秋又は冬頃にストッキングについての街頭ポスターを掲示したり、2005年(平成17年)に神戸で開催されたファッションショーへ出展したりしたことはうかがえるものの、原登録商標の使用に係る様々な商品(女性用靴下、タイツ、女性用下着、ルームウェア等)について、それぞれ、いつ、どのような広告宣伝活動がされたかは不明である。
加えて、原登録商標の使用に係るストッキングについては、その発売から10年程経過した2012年(平成24年)8月に行われたアンケート結果によれば、ストッキングのブランドとして「知らない」との回答が半数以上を占めており、請求人の業務に係るストッキングの他のブランドに比しても、その認知度は低い。
そうすると、原登録商標は、2000年(平成12年)以降、請求人の業務に係る女性用靴下、タイツ、ストッキング、女性用下着、ルームウェア等について使用されているとはいい得るものの、請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていると認めることはできない。
してみれば、原登録商標は、請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとはいえない。
(3)商標法第64条第1項に規定する要件との関係について
上記(1)及び(2)によれば、本願標章は、原登録商標と同一の構成態様からなるものであり、また、請求人と原登録商標の商標権者とが同一人であることは認められるものの、他人が、原登録商標をそれに係る指定商品とは非類似の本願の指定商品に使用したとしても、その商品と請求人の業務に係る指定商品とが出所の混同を生ずるおそれがあるものとはいえない。
したがって、本願標章は、商標法第64条第1項に規定する要件を具備するものではない。
3 請求人の主張について
請求人は、企業活動の多角化の傾向が顕著なものとなっている近年、請求人が下着を始めとする繊維及びファッション関連の商品に関して様々なバリエーションの商品を販売していること、原登録商標は幅広い商品に使用される商標として需要者に認識されていること、原登録商標の著名性の程度が高いこと、本願の指定商品である「生理用パンティ,生理用ショーツ」は女性用の下着と極めて関連性が高いものであって売場も共通する商品であることに鑑みると、本願標章が、請求人に無断で、繊維及びファッション関連の商品である本願の指定商品に使用されると、「Tuche」ブランドの新商品が発売されたとの誤認を招くおそれは極めて大きいといえる旨主張する。
しかしながら、原登録商標が女性用靴下、タイツ、ストッキング、女性用下着、ルームウェア等について一定の期間使用されているとしても、提出された証拠によっては、原登録商標が請求人の業務に係る指定商品を表示する商標として、需要者の間に広く認識されているとはいえず、他人が、原登録商標をそれに係る指定商品とは非類似の本願の指定商品に使用したとしても、その商品と請求人の業務に係る指定商品とが出所の混同を生ずるおそれがあるものとはいえないこと、上記2(3)のとおりである。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願標章は、商標法第64条第1項に規定する要件を具備しないものであるから、防護標章として登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願標章



審理終結日 2019-10-10 
結審通知日 2019-10-15 
審決日 2019-10-29 
出願番号 商願2014-99711(T2014-99711) 
審決分類 T 1 8・ 82- Z (W05)
T 1 8・ 81- Z (W05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 田中 敬規
特許庁審判官 中束 としえ
石塚 利恵
商標の称呼 トゥシェ、テュシェ 
代理人 山田 威一郎 

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