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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W05
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W05
管理番号 1365149 
審判番号 不服2020-3135 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-06 
確定日 2020-08-05 
事件の表示 商願2018-21000拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第5類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成30年2月21日に登録出願されたものである。
その後、原審における平成31年1月22日付けの手続補正書により、その指定商品は、第5類「サプリメント,パン酵母を主原料とする顆粒状の加工食品,パン酵母を主原料とし食物繊維・乳酸菌・抹茶を配合した顆粒状の加工食品,パン酵母を主原料とし抹茶を配合した顆粒状の加工食品」と補正された。

2 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「生きてる」の文字及び「酵母」(「母」の文字の一部は円図形で表されている。)の文字を上下二段に、やや右上に傾斜して表した構成からなるところ、全体として特殊な構成態様であるともいい難いから、いまだ普通に用いられる域を脱しない方法で表してなるものというのが相当である。
また、本願商標の構成中「酵母」の文字は、「出芽によって繁殖する円形もしくは楕円形の微細な単細胞の菌類の総称」の意味を有するものであり、本願の指定商品を取り扱う分野においては、原材料として使用され、また、生きた酵母を配合した商品が取引されている実情がある。
そうすると、本願商標は、その指定商品に使用したときは、「生きた酵母を配合した商品」ほどの意味を容易に認識させるから、商品の品質を表示するにすぎない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は、別掲1のとおり、上段に「生きてる」の文字を、それに横幅を揃えて下段に「酵母」(「母」の文字の内部の点は円状である。)の文字を大きく表し、全体をやや左下に傾斜させた構成よりなるところ、その構成上の特徴(書体、段、傾斜)は、商品の包装等において商品名を表示、記述する際に普通に採択されている程度のものであり、全体として「生きてる酵母」の文字を表したものと容易に認識できる。
そして、本願商標の構成文字は、「生物が、生命を保つ。生命あるもののように作用する。」の意味を有する「生きる」の語(「広辞苑 第7版」岩波書店)を、状態が続いて現在に至ることを表すように変化させた「生きてる」の文字と、「出芽によって繁殖する球形もしくは楕円体の微細な単細胞の菌類の総称」の意味を有する「酵母」の文字(前掲書)を結合させた、「生きて(い)る酵母」程度の意味合いを容易に認識、理解させる平易な表現である。
イ ところで、本願の指定商品と関連する業界において、プロバイオティクス(腸内細菌のバランスを改善し、健康に有益な作用をもたらす生きた微生物。乳酸菌・ビフィズス菌・納豆菌など。また、それらを含む食品・医薬品などを指す。「デジタル大辞泉」小学館)に則した商品が注目を集め、別掲2のとおり、生きてる酵母(生きている酵母、生きた酵母)を内容物又は原材料に含む商品が広く製造、販売されて実情がある。
ウ そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、「生きて(い)る酵母」が含まれることを記述したものと認識、理解させ、単に商品の品質(内容物)又は原材料を表示するにすぎないものである。
エ 請求人は、本願商標の構成態様(傾斜、デザイン化した「母」の文字)は取引上普通に用いられる方法ではなく、また、その構成文字(「生きている」の語から「い」を抜いている。)も取引上普通に用いられているものではなく、本願商標は請求人が創作した造語といえるため、出所識別標識として認識される旨を主張する。
しかしながら、本願商標の構成態様(書体、段、傾斜)は、取引上普通に用いられる域を脱しない程度に表されたものであり、「生きてる酵母」の文字を容易に認識させるものであって、独立して出所識別標識として機能するほどの特徴を備えるものではない。また、本願商標を構成する「生きてる酵母」の文字は、我が国の需要者及び取引者における日本語の理解力の程度を鑑みれば、上記アのとおり、「生きて(い)る酵母」程度の意味合いを容易に認識させる平易な表現であり、現に、別掲2(1)ないし(5)のとおり、取引上も普通に採択されているような表現にすぎない。
したがって、請求人の主張は採択できない。
オ 以上のとおり、本願商標は、その指定商品について、商品の品質(内容物)又は原材料を普通に用いられる方法で表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性について
請求人は、甲第13号証ないし甲第77号証を提出し、本願商標は、請求人により永年にわたって使用されており、請求人の取り扱う商品を表示する商標として取引者及び需要者に広く認識されているため、自他商品の出所識別標識としての機能を果たす旨を主張するため、本願商標の商標法第3条第2項該当性について以下のとおり検討する。
ア 証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、昭和48年(1973年)に生きている生菌酵母「スパーライフ」の製造・販売を目的に創業(甲23)、健康食品の企画・開発・製造及び販売を事業内容としており、独自の製法により、腸内に生菌として届く「生きてる酵母」を開発した(甲13)。
(イ)請求人の取り扱う商品の正式名称や包装に表示された標章の具体的態様などは必ずしも明らかではないが、遅くとも2012年(平成24年)9月15日時点において、「SPERLIFE」の文字の下に「生きてる」及び「酵母」の文字を幅を揃えて上下二段に横書き(傾斜はない)した標章を表示した包装の商品(「SPERLIFE」、「生きてる酵母BO」など)が確認できる(甲23、甲24、甲64)。そして、2016年(平成28年)以降、本願商標と構成文字及び構成態様が共通する標章(「生きてる」及び「酵母」の文字を幅を揃えて上下二段に表し、全体をやや左下に傾斜させている。)を包装に表示した商品(「生きてる酵母BR」、「生きてる酵母EY」、「生きてる酵母Ca」、「生きてる酵母BF」など)が確認できる(甲25、甲26、甲28、甲49、甲68ほか)。
なお、請求人の商品「アカデミア酵母」は、その包装の正面中央に、「生きてる酵母」の文字を両端を下げたアーチ状に横書きし、その下に「アカデミア酵母」の文字を顕著に表示している(甲17)。
(ウ)請求人の商品の年間の売上げは、「生きてる酵母」は約1千百万円(2015-2016)、約1千百万円(2016-2017)、約1千2百万円(2017-2018)である一方で、「アカデミア酵母」は約2億8千万円(2015-2016)、約3億6千万円(2016-2017)、約3億3千万円(2017-2018)とされる(甲21)。
(エ)上記(イ)に掲げる請求人の商品の広告又は紹介記事が、新聞や雑誌等(甲23?甲77)に掲載されているが、商品紹介として、例えば「生きたまま腸に届いて腸内環境を改善」(甲25)、「酵母が生きたまま腸まで届き、機能性を発揮する点が大きな特徴」(甲26)、「炭水化物(糖質)を分解し、強酸に負けることもなく、生きて腸まで届く」(甲30)、「生きてる酵母は生きたまま腸まで届くので死菌にはない働きで腸内フローラに大活躍します」(甲53)などのように、「生きてる酵母」の意味合いやそれに相応する機能を紹介する記述を伴うことが多い。
(オ)上記(1)イのとおり、請求人以外の事業者においても、生きてる酵母を内容物又は原材料に含む商品を広く製造、販売しており、「生きてる酵母」の文字を、別掲2(1)ないし(5)のとおり、商品の包装や広告に顕著に表示する商品もみられる。
イ 以上を踏まえて検討するに、確かに請求人は、長年にわたり、独自の製法により腸内に生菌として届く「生きてる酵母」に着目した商品(当該文字を包装に表示する商品を含む。)を製造、販売しているとしても、当該文字は商品の品質(内容物)又は原材料を表示又は記述するために請求人以外の事業者も採択しているため、請求人のみが独占的に使用するものではないこと明らかである。
また、請求人による本願商標に係る使用態様にしても、把握できる限りにおいて一貫したものではなく、本願商標の構成文字及び構成態様が共通する標章を商品の包装に表示する商品(「生きてる酵母BR」、「生きてる酵母EY」、「生きてる酵母Ca」、「生きてる酵母BF」など)がある一方で、「生きてる酵母BO」や「アカデミア酵母」は、本願商標と共通する構成文字(「生きてる酵母」)を含むが、構成態様の子細(傾斜、段など)が異なる標章を表示するものがある。さらに、請求人の商品「SPERLIFE」(生きてる酵母BO)や「アカデミア酵母」の包装には、「生きてる酵母」の文字が商品名を修飾するような態様で並列して表示されていることもあって、商品の品質(内容物)又は原材料を表記する文字部分であるとの印象を強調するとしても、「生きてる酵母」の文字部分が、請求人の商品に係る固有の商標であるとの強い印象を与えるものとは評価し難い。
さらに、本願商標と構成文字及び構成態様が共通する同一商標を表示する商品は、確認できるだけでも2016年(平成28年)以降の5年未満の販売期間にすぎず、販売実績も年間で約1千数百万円程度のものと考えられる。なお、「アカデミア酵母」は、年間で約3億円前後の販売実績があるとしても、当該商品に表示されている標章は、本願商標と同一の構成態様の標章ではない上に、上記のとおり、当該商品の包装に表示された「生きてる酵母」の文字部分は、請求人の商品に係る固有の商標であるとの強い印象を与えるものではないから、本願商標に係る請求人の出所識別標識としての知名度の向上に寄与するものではない。
加えて、請求人の商品の新聞、雑誌等における掲載にしても、請求人の商品に係る「生きてる酵母」の意味や機能(酵母が生きたまま腸まで届くこと)を紹介する記述を伴うことが多いため、当該文字が商品の内容物又は原材料を記述することを印象づけるもので、むしろ、請求人固有の商標であるとの印象は希薄になる。
そうすると、本願商標は、請求人による継続した使用によって、請求人の業務に係る商品として、我が国の需要者の間において広く認識されるに至っているものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、請求人による使用実績によっては、我が国の需要者の間において、請求人の業務に係る商品として広く認識されているものとはいえないから、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
よって、結論のとおり審決する。



別掲 別掲1(本願商標)


別掲2 生きてる酵母(生きている酵母、生きた酵母)を内容物又は原材料に含む商品の事例
(1)「亀山堂」のウェブサイトにおいて、「カメヤマ酵母」(サプリメント)の商品紹介の項に、「カメヤマ酵母の秘密は特殊加工された生きてる酵母の消化耐性」の記載とともに、「生きてる酵母!」の文字を包装容器の正面に表示した商品の写真が掲載されている。
https://www.kameyamado.com/koubo/koubo/
(2)「美Chut!」のウェブサイトにおいて、「プレミアム酵母」の商品紹介の項に、「『生きてる酵母』と『酵母ペプチドDNF-10』があなたの食生活をサポート」の記載とともに、「生きてる酵母」の文字を包装容器の正面中央に表示した商品の写真が掲載されている。
http://bi-chut.com/lp/K008/K008GO01P38
(3)「Amazon」のウェブサイトにおいて、「生きてる酵母&酵素+乳酸菌 360粒」(サプリメント)の商品紹介の項に、「生きてる酵母、酵素、乳酸菌のほかに10種類サポート成分・必須アミノ酸9種を配合」の記載とともに、「生きてる」、「酵母」、「&」、「酵素」、「+」及び「乳酸菌」の文字を包装の正面中央に表示した商品の写真が掲載されている。
https://www.amazon.co.jp(商品名から検索可能)
(4)「千年酵素」のウェブサイトにおいて、「千年酵素(顆粒タイプ)」(サプリメント)の商品紹介の項に、「酵素+生きてる酵母」、「野菜・野草・果物等、109種類もの素材で仕込んだ酵素に“生きてる酵母”を加えた栄養機能食品(ビタミンB1)です。」の記載がある。
https://1000nen.jp/
(5)「@cosme」のウェブサイトにおいて、「ドクターベジフルおそうじ酵母」(サプリメント)の商品紹介の項に、「商品説明」の欄に「『生きてる酵母』『生きて届く乳酸菌&ビフィズス菌』『生きてる麹菌』の強力パワーで悩みをスッキリ。」の記載がある。
https://www.cosme.net/product/product_id/10157802/top
(6)「楽天市場」の「GOODA」のウェブサイトにおいて、「ROTTS/メタバイオ(生酵母・生酵素・生麹配合)」(サプリメント)の商品紹介の項に、「近年ブームになっている酵母、酵素、麹だが、ROTTSがつくるのは、他とは違い『生きている』ことが最大の特徴。」の記載がある。
https://event.rakuten.co.jp/gooda/shop/1805b0662/mainitem/
(7)「天然人オンラインショップ」のウェブサイトにおいて、「スッキリ酵母くん」(サプリメント)の商品紹介の項に、「『スッキリ酵母くん』は酵母菌が生きたままの状態で含まれる画期的な『生きている』健康食品です。」の記載がある。
https://www.100kouso.com/hpgen/HPB/entries/28.html
(8)「amritara」のウェブサイトにおいて、「Happy酵母」(サプリメント)の商品紹介の項に、「奈良県の老舗酒造に棲みつく蔵付き酵母とフランス産のパン酵母をあわせた『複合酵母』を生きたまま小さな顆粒状にしたものを植物性のカプセルに入れました。」の記載とともに、「生きた酵母と/イヌリンの恵み」の文字を表示した商品の写真が掲載されている。
https://www.amritara.com/fs/amritara/c/intestine03?sort=04
(9)「PRナビ」のウェブサイトの記事情報(2014年8月5日付け)において、「8,000万個の生きた酵母がダイエットを強力サポート 医学博士と共同開発した酵素サプリ 核酸×生酵母『ブライトスリム』2014年7月より販売開始」の見出しの下、「『ブライトスリム』は・・・ダイエットサプリメント(栄養機能食品)です。・・・体内で酵素を生み出すチカラを持つ約8,000万個の生きた酵母を200mg配合しました。」の記載がある。
https://prnavi.jp/pr/20140805/43674/
(10)「ふくおか経済Web」のウェブサイトの記事情報(2016年10月25日付け)において、「錠剤型サプリメントリニューアル ヴェントゥーノ 生きた酵母の成分をプラス」の見出しの下、「健康食品や化粧品販売の株式会社ヴェントゥーノ・・・は9月27日、錠剤型サプリメント『快朝酵素』をリニューアルした。・・・従来の『快朝酵素』の成分に、新たにライチ由来の生きた酵母の成分を加えた。」の記載がある。
https://www.fukuoka-keizai.co.jp/news/(商品名から検索可能)



審理終結日 2020-05-25 
結審通知日 2020-06-01 
審決日 2020-06-16 
出願番号 商願2018-21000(T2018-21000) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (W05)
T 1 8・ 13- Z (W05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浦辺 淑絵 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 阿曾 裕樹
大森 友子
商標の称呼 イキテルコーボ、イキテル 
代理人 小山 輝晃 
代理人 澤木 紀一 

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