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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W38
管理番号 1365135 
審判番号 取消2017-300241 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-04-03 
確定日 2020-07-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第5650834号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5650834号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5650834号商標(以下「本件商標」という。)は、「Fashion TV」の文字を標準文字により表してなり、平成25年7月18日に登録出願、第38類「テレビ番組の放送,その他の放送」を指定役務として、同26年2月21日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成29年4月18日にされたものであるから、商標法第50条第2項にいう「その審判の請求の登録前三年以内」とは、同26年4月18日ないし同29年4月17日(以下「要証期間」という場合がある。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び平成30年9月28日差出しの上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、被請求人(本件商標権者)により、過去3年以上にわたり、日本国内において一度も使用されていない。
また、本件商標に関し、専用使用権者又は通常使用権者の登録がされていないこと(甲1)から、これらの使用権者による本件商標の使用を推認させる根拠もない。
さらに、本件商標の不使用について、本件商標権者に正当な理由が存するとの根拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)乙第1号証及び乙第2号証に示される使用標章と本件商標との同一性
乙第1号証及び乙第2号証に示される使用標章(以下「使用標章1」という場合がある。)は、本件商標と構成を異にし、社会通念上同一のものとはいえない。
ア 本件商標について
本件商標の外観は、「Fashion」の欧文字と「TV」の欧文字とを1文字分のスペースを空けて一連に構成されており、その構成から「ファッション」「ティヴィ」「ファッションティヴィ」の称呼及び「はやり。流行」「テレビ」の観念が生じ、さらに、「Fashion」部分が欧文字であることから、全体として、「海外のファッションに関するテレビ」という印象を想起させる。
イ 使用標章1について
使用標章1の外観は、「ファッションTV」の片仮名及び欧文字をスペースを空けることなく一連にまとまりよく構成されており、その構成から「ファッションティヴィ」の称呼が生じ、また、その構成中、「ファッション」部分が外来語を表す日本固有の片仮名であることから、「日本のファッションに関するテレビ」という印象を想起させる。
ウ 本件商標と使用標章1との対比
「Fashion TV」からなる本件商標と「ファッションTV」からなる使用標章1とを比較すると、本件商標の構成中の「Fashion」部分のみを片仮名に変更し、かつ、「TV」との間にスペースを設けてないものであるから、書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものではなく、また、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものでもない。
さらに、本件商標からは「ファッション」「ティヴィ」「ファッションティヴィ」と様々な称呼が生じるのに対し、使用標章1からは「ファッションティヴィ」の称呼のみを生じるものであるから、両者は、同一の称呼が生じるとはいえない。
加えて、本件商標は「海外のファッションに関するテレビ」という印象を連想させるのに対して、使用標章1は「日本のファッションに関するテレビ」という印象を連想させるものであるから、両者は、同一の観念が生じるとはいえず、また、商標の前半部分は他の商標との識別上重要な要素を占める部分であるところ、使用標章1は、その前半部分を片仮名にして使用している点が本件商標の重要な要素の変更に当たる。
したがって、使用標章1は、本件商標と社会通念上同一とは認められない。
(2)使用標章1に係る役務と本件商標の指定役務との関係
使用標章1に係る役務は、本件商標の指定役務ではない。
本件商標の指定役務は「テレビ番組の放送,その他の放送」であるのに対し、使用標章1に係る役務は番組のチャンネル名であるところ、前者は、テレビ番組その他の番組が公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信・有線電気通信の他人のための送信をいう(甲2)のに対し、後者は、テレビ番組のチャンネル名にすぎず、テレビ番組が公衆に直接受信されることを目的として送信される無線通信・有線電気通信自体ではないことから、使用標章1に係る役務は、本件商標の指定役務ではない。
したがって、指定役務との関係においても、本件商標が使用されている事実を示す証拠として不十分である。
(3)乙第9号証に示される使用標章と本件商標との同一性
乙第9号証に示される使用標章である「ファッションTV」及び「FashionTV JAPAN」(以下、前者を「使用標章2」、後者を「使用標章3」という場合がある。)は、本件商標と構成を異にし、社会通念上同一のものとはいえない。
ア 本件商標について
本件商標の外観、称呼及び観念は、上記(1)アのとおりである。
イ 使用標章2及び使用標章3について
使用標章2の外観、称呼、観念については、上記(1)イのとおりである。
また、使用標章3の外観は、「FashionTV」の欧文字と「JAPAN」の欧文字との間に半角程度のスペースを空けるにすぎず、全体としてまとまりよく一連に構成されており、その構成から「ファッションティヴィジャパン」という称呼のみが生じ、「海外のファッションに関するテレビの日本版」との印象を想起させる。
ウ 本件商標と使用標章2及び使用標章3との対比
使用標章2が本件商標と社会通念上同一と認められるものとはいえないことは、上記(1)ウと同様である。
また、使用標章3は、本件商標に「JAPAN」を付け加え、一連に横書きにしてなるものであるから、書体のみに変更を加えた同一の文字からなるものではなく、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものでもない。
さらに、本件商標からは「ファッション」「ティヴィ」「ファッションティヴィ」と様々な称呼が生じるのに対し、使用標章3からは「ファッションティヴィジャパン」の称呼のみを生じるものであることから、両者は、同一の称呼が生じるとはいえない。
加えて、本件商標は「海外のファッションに関するテレビ」という印象を連想させるのに対して、使用標章3は「JAPAN」の文字を付け加えることによって、明らかに日本版という印象を連想させるものであるから、両者は、同一の観念が生じるとはいえない。
したがって、使用標章2及び使用標章3は、商標の識別上重要な要素を変更しないとはいえないことから、本件商標と社会通念上同一とは認められない。
(4)使用標章の使用許諾について
ア 乙第4号証は、使用標章1ないし使用標章3の使用許諾を立証する証拠としては不十分である。
すなわち、乙第4号証の宣誓書は、その信頼性を裏付ける、例えば、公証の添付がなく、その内容の信ぴょう性に欠け、また、当該宣誓書は、2017年9月4日付けのものであるから、要証期間の使用を立証するものではない。
したがって、被請求人による「商標の使用権を他社に許諾する行為は、本件商標権者により認められている」旨の主張について、乙第4号証の宣誓書をもって立証することは、本件審判との関係ではできず、また、被請求人が、当該宣誓書をもって、「実際本件商標権者は『スカパー』による『FashionTV』の放送を許諾している」旨主張することについては、当該宣誓書が要証期間外のものであることから、立証として不十分である。
イ 被請求人は、乙第5号証及び乙第6号証の1の「Agreement(合意書)」、乙第6号証の2の「Letter of Amendment(修正書面)」並びに乙第7号証の1及び乙第7号証の2をもって、株式会社JFCC(以下「JFCC社」という。)が本件商標の使用を許諾されていることを主張しているが、その主張は、次のとおり、認められない。
(ア)被請求人は、乙第7号証の1及び乙第7号証の2をもって、乙第5号証及び乙第6号証の1の合意書が2015年当時も有効である旨主張するが、当該合意書には日本語の訳文が添付されていないことから、その主張自体失当である。
すなわち、法令上、審判手続においては、外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分について、その文書の訳文を添付しなければならない(商標法施行規則第22条第6項で準用する特許法施行規則第61条第1項)ところ、同規則の趣旨は、審判事務の取扱いに際して、審判手続に関与する者が、各自異なった言語を用いることとすれば、相互の意思疎通を十分に図ることができず、審判手続が混乱し、その公正を欠くことを防止することにあると解されるから、審判手続の公正を図るという同規則の趣旨に鑑みれば、被請求人は、乙第7号証の1及び乙第7号証の2について、訳文を添付しなければならず、その添付がない場合には、証拠になり得ないし、その主張も根拠を有しないこととなる。
よって、乙第7号証の1及び乙第7号証の2は、乙第5号証及び乙第6号証の1の合意書並びに乙第6号証の2の修正書面が2015年当時に有効であった証拠とはいえない。
(イ)乙第7号証の1は、2015年2月27日付け請求書(Invoice)であるから、2009年3月20日までに受領される必要のあるエントリフィーの受領書にはなり得ず、乙第6号証の1の合意書の発効条件にはなり得ない。
また、乙第7号証の2は、JFCC社とF.TV Paris-FOL(「ファッションティーヴィー パリ-フォル」。以下「ファッションTVパリ」という場合がある。)との金員に関する書面のようであるが、フランス語と思しき書証であるから、その内容が不明瞭である。
(ウ)乙第5号証ないし乙第6号証の2の署名が、本人によるものかが不明である。
(エ)乙第5号証(合意書)は、英語と日本語訳とに齟齬があり、その書証の信ぴょう性に疑義がある。
すなわち、上記合意書の契約有効期間は、その日本語による抄訳「発効日から5年間継続する」を参照すると「2008年11月28日から2013年11月28日」であると解されるところ、当該合意書の「10.TERM」には、「run for a period of one year」との記載があり、「発効日から1年間」であると解釈することができる一方、例えば、当該抄訳に沿った「five years」との記載は見受けられないことから、その書証には、正確性に疑義があり、証拠として不適切である。
なお、仮に、上記日本語による抄訳が正確であったとしても、要証期間との関係において、上記合意書の契約期間の満了日(2013年11月28日)は、その要証期間前のものにすぎない。
(オ)乙第6号証の1と乙第6号証の2との間には、契約期間についての齟齬があることから、その書証の信ぴょう性には疑義がある。
すなわち、乙第6号証の1(合意書)は、その契約有効期間が、日本語による抄訳「発効日から5年間継続する」及び当該合意書の「10.TERM」の「run for a period of five years」との記載から、2009年3月20日ないし2014年3月20日であると解される一方、乙第6号証の2(修正書面)は、当該合意書(乙6の1)についての修正書面であって、その下部には、「Letter of Amendment」に「Regarding Clause10.・・・beginning on March 25th 2014」(日本語による抄訳:当該合意書を、2014年3月25日から始まる契約上の年を2年間延長する・・・)との記載がある。
そうすると、上記合意書(乙6の1)とその修正書面(乙6の2)との間には、契約期間について、「2014年3月21日から2014年3月24日」まで空白期間が存在することになるが、他に契約期間が連続していることを示す書証はないことから、これらは、両書証の信ぴょう性に疑義を生じさせるものであって、証拠として不十分である。
また、契約期間は、本件商標権者及び使用権者の両当事者にとって最も重要な条項の一つであるにもかかわらず、その点が曖昧不明瞭な上記合意書(乙6の1)及び修正書面(乙6の2)は、証拠として不十分であり、要証期間の本件商標の使用許諾を裏付ける証拠とはなり得ない。
仮に、上記修正書面(乙6の2)に記載のとおり、契約有効期間が「2016年3月25日」に満了したときは、当該修正書面には更新についての記載がないことから、要証期間の末日までの使用許諾については立証されていない。
(カ)乙第6号証の1の合意書が有効に発効していたのか疑わししい。
すなわち、上記合意書の発効の条件は、「If payment of the entry fee will not be received by the March 20th 2009,this AGREEMENT is regarded to be null and void.」(日本語による抄訳:エントリーフィーが2009年3月20日までに受領されないと、本合意書は無効と見なされる。)との記載によれば、そのエントリーフィーの支払いが条件であるが、そのエントリーフィーの受領証と思しき書証は添付されていない。
そうすると、上記合意書は、有効に発効したかどうか不明である。
(キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、乙第6号証の1の合意書をもって、2009年3月20日から2014年3月20日まで使用許諾がなされたのかは不明であり、また、その修正書面である乙第6号証の2についても、信ぴょう性に疑義があるから、要証期間における本件商標の使用許諾の事実は立証されていない。
なお、仮に、上記合意書(乙6の1)が有効に発効したものであったとしても、その契約期間の満了日(2014年3月20日)は、要証期間前であるから、やはり、要証期間における本件商標の使用の許諾は立証されていない。
(5)乙第10号証について
被請求人は、乙第10号証の「Term Sheet(条件規定書)」をもって、2016年9月1日からは、株式会社Brand Screen(以下「Brand Screen社」という。)によるチャンネル配信があったことを主張する。
確かに、上記条件規定書には、2016年9月1日から開始することの記載はあるが、Brand Screen社による本件商標の使用を示す書証は添付されておらず、また、「2016年3月31日をもって終了」(乙12)した後、要証期間の末日までの使用事実の主張及び立証もない。
さらに、被請求人は、乙第4号証の宣誓書をもって、本件商標権者がBrand Screen社に対する使用許諾をしていることを主張するが、当該宣誓書は、要証期間外の2017年9月4日付けのものであるから、要証期間の使用許諾の書証にはなり得ない。
したがって、被請求人により、2016年9月1日から使用権者による本件商標の使用の事実は示されていない。
(6)乙第11号証の1及び乙第11号証の2について
被請求人は、乙第11号証の1及び乙第11号証の2の「Fashion TV」番組のスクリーンショット画面をもって、本件商標の使用の事実を主張する。
確かに、上記画面中央左端には「Fashion TV」と「特集」との上下二段の文字が確認できるものの、IPTV等で当該画面が誰によって提供されているのか、また、その画面のインターネットアドレス(URL)については示されていない。
したがって、上記スクリーンショット画面は、本件商標の使用の事実を立証するものではない。
なお、上記スクリーンショット画面のいずれも「Fashion TV」と「特集」とが上下二段に表示されており、全体として、「ファッションティーヴィー トクシュウ」との称呼が生じ、「海外のファッションのテレビに関する特集」との印象を想起させるものであるから、本件商標と社会通念上同一のものの使用ではない。
(7)乙第12号証について
乙第12号証は、単なるインターネット上のニュースにすぎず、商標権者、使用権者による本件商標の使用事実を立証するものではない。
(8)乙第13号証について
乙第13号証は、ウィキペディアのウェブページであるところ、当該ウェブページは、誰もが自由に書き込めるものであることは広く知られていることから、その真実性は、別の証拠で担保される必要がある。
しかしながら、被請求人は、「『Fashion TV』チャンネルについては、日本国内での衛星放送やモバイルによる展開も含めて、詳細がウィキペディアに掲載されている」と主張するのみで、その真実性は別の証拠で担保されていないことから、上記ウェブページ(乙13)は、使用事実を示す証拠として不十分である。
よって、上記ウェブページ(乙13)は、何ら商標権者、使用権者による使用事実を立証するものではない。
(9)その他
ア 商標の本質的機能は出所識別標識にあるところ、商標の「使用」は、自他商品・役務識別力がある態様で使用されるべきである。
しかしながら、被請求人の使用標章である「ファッションTV」「FashionTV JAPAN」は、いずれも単にファッションに関するテレビを示すにすぎず、自他役務識別力がある態様での使用ではない。
よって、被請求人は、本件商標を出所識別標識としての態様で「使用」をしている事実を証明していない。
イ 被請求人は、我が国での売上げ、視聴率等を立証していないことから、実際に我が国において、商業上、本件商標が使用されているかは不明であり、また、具体的に、本件商標の商業上の使用に係る商標使用許諾契約書がないことから、我が国において、実際に本件商標を使用していることが立証されていない。
よって、被請求人は、本件商標を業として使用していることを証していない。
(10)まとめ
上記(1)ないし(9)によれば、被請求人の提出した乙各号証は、要証期間の本件商標の国内における指定役務についての使用事実を立証するものではない。
3 口頭審理陳述要領書における主張
(1)被請求人は、追加の証拠として、乙第14号証の「宣誓書」(2018年7月19日付け)を提出して、2009年3月4日付けの合意書(乙6の1)等の「FTV」が「FashionTV」グループを意味することを主張している(なお、当該宣誓書中、「合意書」がどの合意書を指すのか明らかでない。)。
しかしながら、後日の宣誓により、合意書中の文言に新たな意味を付加することはできない。
そもそも、宣誓は、宣誓者からの一方的な主張であり、宣誓書は、その宣誓を客観的に証明したものである。他方、合意書は、当事者の合意内容を客観的に証明するものであり、合意の成立には各当事者の承諾が必要である。この点、上記宣誓書(乙14)の内容は、本件商標権者のみによる一方的な宣誓にすぎず、相手方である「ファッションティーヴィー ホールディング リミテッド」等が「FashionTV」グループに属することの承諾書又は資本関係を示す書類、それら以外の証拠も提出されていない。
そして、乙第5号証、乙第6号証の1の「合意書」等には、「Fashion TV Paris - FOL s.a.r.l.・ ・ ・ hereinafter referred to as:“FTV”」(日本語による抄訳:ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.・・・ (以下「FTV」と称する))と明記されているところ、ここから客観的に理解できることは、単に「FTV」が「ファッションTVパリ」ということであって、「FTV」に「ファッションTVパリ」以外の者が含まれていることを客観的に理解、認識することは到底できない。
そうすると、被請求人の口頭審理陳述要領書における、「『FTV』の略語は、『ファッションTVパリ』や本件商標権者を含む『FashionTV』グループを示すために使用されている」との主張、「本件商標権者は・・・JFCC社や『スカパー』に対して『権限付与』及び『許可』を与えていた」との主張、「『FashionTV』グループに含まれる本件商標権者が本件商標の使用をJFCC社に許諾しているということも含まれる」との主張、及び「JFCC社に許諾された商標には、本件商標権者が所有する本件商標も含まれているという認識で、合意書等は作成されている」との主張は、いずれも失当である。
したがって、上記宣誓書(乙14)における宣誓は、合意書に何ら影響を与えるものではなく、被請求人は、本件商標権者とJFCC社及び「スカパー」との間で本件商標の使用等に関する何らかの取決めが存在することを立証できていない。しかも、本件商標権者が本件商標の使用権を他社に許諾するための契約書又はそれに類する合意書等が提出されていないことから、被請求人は、乙第4号証の宣誓書をもって、「商標の使用権を他社に許諾する行為は、本件商標権者により認められている」ことを主張、立証できていない。
(2)被講求人は、2009年3月4日付け「合意書」(乙6の1)とその「修正書面」(乙6の2)の契約期間について、「5日間の空白期間があるが、何らかの事情により」、その契約期間が5日延長されたと主張する。
しかし、契約期間は契約における重要事項の一であるから、「何らかの事情により」だけでは契約期間が有効に延長されたかどうか明らかでなく、仮に、本件商標権者が当事者であるならば、空白期間が存在することの理由を当然に把握しているはずであるのに、その理由を知らないのは当事者としてはあり得ず、極めて不自然である。
4 平成30年9月28日差出しの上申書における主張
本件商標は、本件商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれにおいても使用されておらず、取り消されるべきである。
この点、被請求人は、(i)本件商標の使用者は、本件商標権者から使用許諾を受けた通常使用権者であるとした上で、当該通常使用権者は、本件商標権者とは別法人のファッションTVパリと契約関係にあるJFCC社及び「スカパーJSAT株式会社」(以下「JSAT社」という場合がある。)であり、(ii)JFCC社が放送事業者である「株式会社スカパー・ブロードキャスティング」(以下「ブロードキャスティング社」という場合がある。)に対して放送の許諾をしているなどと主張している。
しかしながら、上記(i)については、本件商標権者とJFCC社、JSAT社及びブロードキャスティング社との間には何らの契約関係は存在しておらず、また、上記(ii)については、JFCC社は、本件商標権者とは別法人であるファッションTVパリとの間でのみ合意書を締結しているところ、ファッションTVパリは、本件商標権者ではないばかりか、同人から本件商標権に関して何らの使用権も付与されていないことから、被請求人による上記主張は、いずれも認められるべきではない。
この点について、請求人は、以下のとおり、詳述する。
(1)被請求人によるJFCC社とJSAT社及びブロードキャスティング社との関係の説明について
本件商標を付した番組のチャンネルを運営しているJFCC社は、ブロードキャスティング社が行っている放送網を利用しているところ、JFCC社及びブロードキャスティング社は、いずれも本件商標権者と使用許諾関係にはない。
また、被請求人は、JSAT社について、ブロードキャスティング社と兄弟会社であると主張しているものの、仮に、両社が兄弟会社であるとしても、別法人であることは明らかであるから、JSAT社も、本件商標権者と使用許諾関係にはない。
そして、JFCC社と合意書を締結したファッションTVパリは、本件商標権者とは別法人であって、本件商標権者から本件商標に関する使用権を付与されていないことを踏まえると、本件商標は使用されていない。
なお、被請求人が「『FashionTV』グループは同社(請求人代理人注:『スカパー』)と直接契約を締結していない」と主張しているとおり、「スカパー」は、ファッションTVパリのみならず、本件商標権者とも契約関係にはない。
(2)被請求人による「FashionTV」の衛星放送を行っていた者の説明について
放送主体がブロードキャスティング社であるか否かはさておき、同社は、本件商標権者と何ら契約関係にはなく、本件商標の使用許諾を受けていないことは明らかであるから、本件商標の使用があったとはいえない。
(3)被請求人による「FashionTV」グループについての構成、各社の役割、特に、本件商標権者と「ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.」の役割を裏付ける証拠の説明について
被請求人は、「FashionTV」グループにおいて、本件商標権者が商標出願等を行い、登録後の管理を行う役割を担っているなどと主張する。
しかし、被請求人による上記主張は、次のとおり、認められない。
ア 被請求人も認めているとおり、本件商標権者を含む「ファッションTVグループ」なる「ファッションTV」との名称が付された複数の法人の集団内における本件商標権者の役割は、「格別な取決めがあるわけではない」のであるから、別途、本件商標に関する放送事業者等に対する使用権を許諾することのできる権限を付与する契約等を締結しない限り、ファッションTVパリにそのような権利が付与されているなどということはできない。
また、被請求人は、「FashionTV」グループの組織図(乙23)を提出するが、当該組織図は、単なる私的文書であるところ、作成日、作成者が分かる客観的な記載はなく、公証もされていない。
そして、本件商標権者とファッションTVパリとの間には、本件商標に関する契約関係はないのであるから、ファッションTVパリに、放送事業者等に対する商標等の使用権を許諾する権利が付与されていないことは明らかである。
そうすると、ファッションTVパリに対して本件商標に関する何らの権利も付与されていない以上、同法人と合意書を締結したJFCC社には、本件商標について使用する権利は付与されておらず、本件商標についての使用があったとはいえない。
イ 被請求人は、ファッションTVパリが「FashionTV」グループを代表して他社と契約を締結しているが、グループ内における格別な取決めがあるわけではないなどと主張していることから、ファッションTV パリが、「FashionTV」グループの一員であるかが不明であることは明白である。
そもそも、契約の締結は重要な役割であるにもかかわらず、その役割についての格別な取決めもなく、その役割を証明する客観的な証拠も提示できず、出資比率等の具体的な支配関係も明らかにできない以上、ファッションTVパリは、「FashionTV」グループとしてではなく、独自に契約を締結していることを示すにすぎない。
そうすると、ファッションTVパリが、「FashionTV」グループを代表して他社と契約を締結する役割を担うという被請求人の主張は、疑わしいといわざるを得ず、上記役割を担っていることにはならない。
ウ 上記ア及びイによれば、本件商標権者及びファッションTVパリは、独自に出願又は契約等を行っているにすぎないと捉えるのが自然であり、一つのまとまりをもったグループを代表していたとは認定できないことはもちろん、本件商標について、両者に使用する権利は何ら付与されていない。
(4)被請求人は、合意書等(乙5、乙6の1、乙6の2)における「FTV」は、ファッションTVパリのみならず、複数の企業を指しているなどと主張する。
しかしながら、上記合意書等の締結当事者は、ファッションTVパリのみであること及び、当該合意書等においても、締結当事者たるファッションTVパリのみを「FTV」と定義していること等の事情を併せると、当該合意書等における「FTV」とは、ファッションTVパリのみを指すものであると解するのが合理的解釈であって、その他の複数の企業が含まれているなどと解釈することは、当該合意書等の明文に反するばかりか、不自然な解釈であるから、被請求人の主張に理由はない。
また、被請求人は、「仮に、合意書内に『商標』に関する記述がなかったとしても、『JFCC社』及び放送事業者等は『ファッションティーヴィードットコム』名義の商標を使用することを許諾されていたと考えるべきである」などと主張する。
しかしながら、被請求人による上記主張は、何ら根拠のない主張であるばかりか、上述のとおり、そもそも、上記合意書等の締結当事者であるファッションTVパリは、本件商標に関して何ら実施権も有していないのであるから、本件商標を使用することを許諾すること自体、不可能である。
(5)まとめ
したがって、本件商標は、商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれにおいても使用されておらず、取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び平成30年9月13日付け上申書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、要証期間に「テレビ番組の放送」及び「IPTVによる放送」について使用されていた。
(1)テレビ番組の放送における使用について
ア 本件商標は、以下のとおり、要証期間に、「スカパー」(「スカイパーフェクティーヴィー(Sky PerfecTV)」の略称であり、スカパーJSATグループ所属の各社が運営する有料多チャンネル放送サービスのブランド名である。)による「衛星放送」において「チャンネル名」として使用されていた。
(ア)「テレビ放送」には、「地上波放送」と「衛星放送」の2種類があり、「地上波放送」が放送局から地上の中継所を介して家庭のテレビに電波を送っているのに対し、「衛星放送」は地上局から上空数万キロにある人工衛星にテレビ電波が送られ、人工衛星を中継所として、直接家庭のテレビに電波が送られる仕組みになっている。これにより、地上の障害物の影響を受けることなく、広範囲に電波を送信することができる。
また、「衛星放送」は、人口衛星の種類により、BS放送とCS放送があるところ、BS放送は、放送衛星(Broadcasting Satellite)を使用した放送であり、CS放送は、通信衛星(Communication Satellite)を使用した放送であって、現在、後者に使用されている通信衛星は複数あり、東経110度、124度及び128度の上空に静止している。
(イ)本件商標が使用されている衛星放送は、東経124度と128度の通信衛星を使用した放送であり、「CS124/128(degree)」のように表記される。
そして、上記衛星放送には、映画、スポーツ、海外ドラマ、釣り、旅、アニメ等、分野が特化されたチャンネルが100以上あり、視聴希望者は、その中から観たいチャンネルを選び、月額の視聴料を払うことにより観ることができる。
イ 本件商標は、「スカパー!ALLチャンネルガイドBOOK」の「2015・秋冬」(乙1)及び「2016・春夏」(乙2)のとおり、ファッション関連の番組を専門とするチャンネルの「チャンネル名」として使用された。当該ガイドブックは、いずれかのチャンネルを視聴している者及び視聴希望者に頒布される印刷物であり、視聴者が利用するものであるとともに、全てのチャンネルの情報を宣伝するための広告物でもある。
そして、上記ガイドブックには、その「チャンネル一覧」(乙第1号証の5ページ目、乙第2号証の6ページ目)中に「ファッションTV」のチャンネル名が表示されており、また、その99ページ目に「ファッションTV」のチャンネルで放送される番組や特徴、視聴料等の情報が掲載されている。
ウ 上記ガイドブック(乙1、乙2)には、本件商標とは異なり、「Fashion」の部分の音訳を片仮名で表した「ファッション」の文字と欧文字の「TV」を結合した「ファッションTV」の標章が使用されているところ、「fashion」の語は、「服装などのはやりや流行」を意味する英単語として、我が国において良く知られており、当該英単語からは「ファッション」の称呼が自然に生じるといえる(乙3)から、欧文字の「fashion」と片仮名の「ファッション」からは、同一の称呼及び観念が生じ、別の称呼や観念が生じることはない。
また、本件商標を構成する「Fashion」の文字と「TV」の文字との間には一文字程度の間隔があるが、両文字は、同一書体をもって、その全体が、外観上、まとまりよく表されていて、その全体から淀みない「ファッションティーヴィー」の称呼が発生するため、一体的な商標として把握される一方、「ファッションTV」の文字は、片仮名と欧文字との結合商標であるが、同一書体で一連に表記されているため、その全体から「ファッションティーヴィー」の称呼が自然に生じる。
そうすると、上記ガイドブックに使用されている「ファッションTV」の標章は、本件商標と社会通念上同一のものと認められるべきであり、当該標章の使用は、本件商標の使用と認められるものと確信する。
エ 本件商標の使用者が本件商標権者から使用許諾を受けた通常使用権者であることについて、本件商標権者は、「Fashion TV」グループに属するドイツ法人である一方、我が国においては、当該グループに属する、専ら契約を行うフランス法人が、日本法人に対して「Fashion TV」のチャンネルの放送権及び商標の使用権を与え、許諾された日本法人は、放送事業者に「Fashion TV」の番組を提供して、放送事業者が上述の衛星放送を行っているところ、その詳細は、次のとおりである。
(ア)本件商標権者は、ファッションショー等のファッションに関連したテレビ番組を作成して、世界中に配信している「FashionTV」グループの一社である。そして、当該グループは、数社から構成されており、本件商標権者は、当該グループが使用する商標等の知的所有権を世界各国で出願、登録し、管理する役割を担っている。
また、上記グループ内の別の法人であるファッションTVパリは、世界各国において、現地の放送事業者等にテレビ番組を配信し、放送する権利を与えるためのライセンス契約を締結する役割を担っており、その契約の際に、現地の放送事業者等に対して商標等の使用権も許諾しているところ、ファッションTVパリが商標の使用権を他社に許諾する行為は、本件商標権者により認められている(乙4)。
(イ)我が国においても、ファッションTVパリは、放送する権利及び商標の使用について、日本法人であるJFCC社と「合意書」を交わしている(乙5、乙6の1、乙6の2)ところ、被請求人は、当該合意書が2015年当時も有効であることを証明するため、ファッションTVパリの請求書及びJFCC社の「入金通知」の各写しを提出する(乙7の1、乙7の2)。
また、JFCC社は、我が国において、「FashionTV」のチャンネルを運営し、「スカイパーフェクトプラットフォーム」において放送する権利を獲得しており、商標の使用も許諾されている(乙5、乙6の1)。
なお、上記「スカイパーフェクトプラットフォーム」とは、「スカパー」が行っている衛星放送全般を指しており、「BSデジタル放送及び東経110度CSデジタル放送」、「東経124・128度CSデジタル放送」等の各放送をそれぞれ「プラットフォーム」という(乙8)。
(ウ)「FashionTV」のチャンネルを放送している放送事業者はブロードキャスティング社であるが、「Fashion TV」グループは、同社と直接契約を締結していない。
しかしながら、我が国で「Fashion TV」の事業を運営していたJFCC社との契約において、「スカパー」による放送を許諾していることから判断して、放送事業者による商標の使用も許諾されていたと判断されるのが自然であり、実際、本件商標権者は、「スカパー」による「Fashion TV」の放送を許諾している(乙4)。
オ 上記アないしエによれば、本件商標は、「テレビ番組の放送」について、チャンネル名として使用されており、放送の視聴者が利用するガイドブック(乙1、乙2)に付されていることから、商標法第2条第3項第3号にいう「使用」がされているとみなされるべきである。
また、上記ガイドブックは、「スカパー」のいずれかのチャンネルを視聴している者及び視聴を希望する者に頒布されており、それらの者が、いまだ視聴していないチャンネルについての情報を入手することができることからすれば、「ファッションTV」以外のチャンネルを視聴している者に対する広告宣伝のために頒布され、「ファッションTV」の視聴を促す手段ともなっている。そして、当該ガイドブックが広告媒体として作成され、頒布されたものであることは、当該ガイドブック2ページ目に「どんなチャンネルなのか、どんな番組を放送しているのか。きっと新しいお気に入りのチャンネルを見つけることができるはずです。」の文言が記載されていることからも分かる。
さらに、上記ガイドブックのチャンネル紹介ページ(99ページ目)には、全て欧文字の「fashiontv」の標章も使用されているところ、当該標章は、本件商標と同様に、全て欧文字で構成されており、本件商標とは、大文字と小文字の違いや、「Fashion」と「TV」の間の空白の有無の違いはあるが、社会通念上同一といえるものである。
そうすると、本件商標は、放送に関する広告に付して頒布されていることから、商標法第2条第3項第8号にいう「使用」がされているとみなされるべきである。
(2)IPTVでの放送
ア IPTVとは、「Internet Protocol Television」の略称であって、インターネット上で通信を行うための規約IP(インターネットプロトコル)方式を利用したIP放送の一種で、ブロードバンド回線を利用した映画やテレビ番組の映像配信サービスであり、その映像は、スマートフォンやタブレットコンピュータ等を受信機として視聴することができる。
イ 本件商標は、上記番組の配信について使用されている。
すなわち、JFCC社は、乙第6号証の1の合意書により、「IPTV」を含むテレビジョンサービスに「Fashion TV」を再配信するライセンスが与えられ、2011年6月に、「ファッションTV」が視聴できるAndroidスマートフォン向けのアプリの無料配信を開始した。視聴希望者は、当該アプリをスマートフォン等にダウンロードすることにより、「ファッションTV」を視聴できるようになる(乙9)。
その後、2016年9月1日からは、ファッションTVパリとの契約により、Brand Screen社が「IPTV」向けの「ファッションTV」のチャンネルの配信を行っている(乙10)。
そして、本件商標権者は、上記IPTV向けのチャンネルの配信についても許諾しており(乙4)、本件商標は、スマートフォン等により「Fashion TV」を視聴する際に、画面上に表示される(乙11)。
したがって、上記配信における商標の表示は、商標法第2条第3項第7号にいう「使用」に該当する。
(3)その他
上記(1)の「ファッションTV」の配信については、インターネット上のニュースにも掲載されており(乙12)、また、「Fashion TV」チャンネルについては、国内での衛星放送やモバイルによる展開も含めて、その詳細がウィキペディアに掲載されている(乙13)。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定役務について、本件審判の請求の登録前から、本件商標権者から許諾された通常使用権者により使用されている。
2 口頭審理陳述要領書
(1)合議体の暫定的見解について
ア 請求人は、被請求人の主張に係る乙第1号証及び乙第2号証に示される使用役務(使用標章1に係る役務)は、テレビ番組の「チャンネル名」にすぎず、テレビ番組が公衆に直接受信されることを目的として送信される無線通信、有線電気通信自体ではないから、本件商標の指定役務(本件審判の請求に係る指定役務)ではない旨主張している。
(ア)本件審判事件において、「本件商標の指定役務」とは、「テレビ番組の放送,その他の放送」であるところ、被請求人が主張している「本件商標が使用されている役務」は、当該指定役務中の「テレビ番組の放送」である。これは、いくつかの放送局により提供されており、1つの放送に1つのチャンネルが割り当てられていて、その「チャンネル」には、地上波デジタル放送であれば、「1」「2」「3」「4」等の「チャンネル番号」が付されるとともに、各チャンネルには、新聞等のテレビ番組欄に表示されているように、放送局の各放送を示す「NHK総合テレビ」「NHK Eテレ」「日本テレビ」「テレビ朝日」等の「チャンネル名」が使用されている。そして、当該「チャンネル名」は、各放送を他の放送と識別する機能を有しており、放送を受信する視聴者は、「チャンネル名」により、放送がどの放送局により放送されているかを識別することができる。
そうすると、テレビ番組の放送について使用されるチャンネル名は、商標としての出所表示機能を有しており、また、各放送局としては、提供する放送内容に一定の質を維持するよう企業努力をすることにより、チャンネル名が放送の質の保証機能も有することとなり、さらに、放送局がチャンネル名を使用することにより、宣伝広告となるため、当該チャンネル名は宣伝広告機能も有しているといえる。
したがって、「チャンネル名」は、「テレビ番組の放送」について使用されることにより、商標としての機能を発揮することができる。
(イ)本件商標は、「スカパー」が提供している多数の衛星放送のチャンネルのうちの1つのチャンネル名として使用されており、そのチャンネルにおいては、ファッションやライフスタイル等に関連した各種のテレビ番組が放送されており、この放送を受信した視聴者は、「ファッションTV」というチャンネル名により、そのチャンネルが特定の放送事業者による放送であることを認識することとなる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、本件商標を「テレビ番組の放送のチャンネル名」として使用することは、本件商標の指定役務である「テレビ番組の放送」についての使用に該当する。
イ 合議体は、被請求人による「本件商標の使用者は、本件商標権者から使用許諾を受けた通常使用権者である。」との主張は認められないとの見解を示すとともに、その理由を述べているが、その理由に対する被請求人の意見は、以下のとおりである。
(ア)「ファッションTVパリ」は、合議体の見解どおり、本件商標の権利者であった事実はない。
(イ)合議体の見解中、特に強調されているのは、「JFCC社に許諾された全ての知的・産業財産権(商標を含む。)とは、『ファッションTVパリ』の所有に係るもののみであり、そこに本件商標権者の所有に係るものが含まれているとは認められない。」という点と解されるところ、被請求人は、次のとおり、この点についての説明をする。
a 乙第4号証の宣誓書において述べているように、国際的なテレビジョンチャンネルである「FashionTV」は、幾つかのグループ会社により構成されているところ、グループを構成する会社には、本件商標権者のように、世界中において商標権等を出願、登録、管理しているものや、ファッションTVパリのように、各国の放送事業者やその代理人との間で契約を締結しているものが含まれており、グループ全体の密接な協力の下で事業が運営されている。
したがって、各国の事業者との契約や合意は、ファッションTVパリがグループを代表して行っているが、実際には、その事業者と「FashionTV」グループとの間で締結されているものであり、その事業者は、グループ全体のサポートを受けて各国で事業を運営しているのである。
b 乙第5号証、乙第6号証の1及び乙第6号証の2の合意書等において、「FTV」の略語は、ファッションTVパリや本件商標権者を含む「FashionTV」グループを示すために使用されているところ、被請求人は、当該合意書等における「FTV」が「FashionTV」グループを意味していることの証拠として、本件商標権者の代表者の宣誓書を提出する(乙14)。
また、上記合意書等に記載されている「FTV」が行うべき業務は、多岐にわたっており、グループに属する各社が担当別に業務を行っているところ、合議体の見解に係る理由に示されたように、「FTV」がファッションTVパリのみを示していると考えると、番組の配信のような技術的な業務も含む全ての業務を契約等担当のファッションTVパリが行うこととなり、当該合意書等に係る内容が実現困難なものとなってしまう。
さらに、合意書において業務ごとに担当会社を明記した場合、その合意書は、かなり煩雑なものとなり、分りにくいものとなる。
加えて、事業者側としても、「FashionTV」が責任をもって業務を行ってくれればよく、グループ内のどの会社がどの業務を担当するか、ということは、現場の担当者さえ知っていればよく、合意書を交わす際には、重要なことではない。
c 本件商標権者は、乙第5号証、乙第6号証の1及び乙第6号証の2として提出した合意書等の有効期間内において、JFCC社や「スカパー」に対して「権限付与」及び「許可」を与えていた。
「FashionTV」のチャンネルを我が国で放送するという事業を行うための合意書においては、商標の使用に関する詳細な取決めは記載されないのが実情であり、JFCC社及び「スカパー」が放送を行う上において支障をきたすことのないようにするため、商標の使用やサブライセンスについての権限の付与や許可が与えられている。
d 乙第5号証の合意書の有効期間は、訂正した訳文のとおり、発効日である2008年12月1日から1年間である。
なお、上記合意書においては、「FTV」がJFCC社に全ての知的・産業財産権の使用を許諾する、との記載があるが、これには、上述のとおり、「FashionTV」グループに含まれる本件商標権者が本件商標の使用をJFCC社に許諾しているということも含まれる。
e 2009年3月4日付け合意書(乙6の1)の前文において、当事者は、2008年11月28日付け合意書(乙5)に記載されたエントリーフィー及び前払金が支払われたことを合意している。
また、乙第6号証の1の合意書においては、エントリーフィーと前払金が2009年3月19日までに支払われることを条件に有効になると記載されており、その場合の合意書の発効日は、2009年3月20日となるところ、ファッションTVパリは、JFCC社に対して、2009年3月16日付け請求書を発行し、JFCC社は、同年3月17日付けで支払いを完了している(乙15)。
これにより、乙第6号証の1の合意書は有効となり、契約期間は、2009年3月20日から5年間ということになる。
なお、乙第6号証の1の合意書においては、「FTV」がJFCC社に全ての知的・産業財産権の使用を許諾する、との記載があるが、これには、上述のとおり、「FashionTV」グループに含まれる本件商標権者が本件商標の使用をJFCC社に許諾しているということも含まれる。
f 2011年11月12日に締結した乙第6号証の1の合意書の修正書面(乙6の2)においては、2014年3月25日から始まる契約上の年を2年間延長することに同意し、さらに、2014年と2015年に一定の最低保証金を受け取ることが記載されている。
上述のとおり、2009年3月4日付け合意書(乙6の1)の契約期間は、2014年3月20日までであり、その合意書の修正書面(乙6の2)においては、2014年3月25日から始まる契約上の年と記載されていることから、5日間の空白期間があるが、何らかの事情により、前の契約期間が5日間延長されたためと思われる。
また、上記修正書面の記載によれば、2年間の延長が最低保証金の支払いを条件としているように読めるが、この最低保証金(2回)は支払われているため、2年間の延長はなされている。
この点について、被請求人は、既に提出した乙第7号証の1及び乙第7号証の2により、2015年の最低保証金の支払いを証明したが、2014年の最低保証金の支払いを証明するため、新たに乙第16号証を提出する。ファッションTVパリは、JFCC社に対して2014年1月30日付け請求書を発行し、JFCC社は、同年3月28日と4月16日に分割して支払を完了している。
なお、被請求人は、外国語で作成された乙第7号証の1及び乙第7号証の2について、それらの訳文を提出する。
g 合議体は、JFCC社に許諾された全ての知的・産業財産権(商標を含む。)とは、ファッションTVパリの所有に係るもののみであり、そこに本件商標権者の所有に係るものが含まれているとは認めらないとの見解を示している。
しかしながら、上述のとおり、乙第5号証、乙第6号証の1及び乙第6号証の2の合意書等に記載された「FTV」は、「FashionTV」グループを意味しており、そこには本件商標権者も含まれるため、当該合意書等は、JFCC社に許諾された商標には本件商標権者が所有する本件商標も含まれているという認識で作成されている。
そして、上記合意書等において最も重要な事項は、「FashionTV」のテレビ放送を我が国で行うことであるため、その基本的事項である各種料金の支払いやテレビ番組の供給に関連した合意事項が優先し、商標の使用等についての詳細な取決めがなされることなく、事業の推進を最優先することとなる。
実際に、「スカパー」は、衛星放送において本件商標をチャンネル名として使用してテレビ番組を放送しており、それは、本件商標権者を含むグループ会社全体による事業としてなされていることからすれば、本件商標権者は、グループに属する法人として、当然にその事業に関わっており、事業を支障なく進めるために、JFCC社や「スカパー」に対して、積極的に商標の使用やサブライセンスの許諾をしていると判断するのが自然である。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件商標の使用者は、本件商標権者から使用許諾を受けた通常使用権者である。
(2)請求人の弁駁書における主張について
ア 請求人は、乙第1号証及び乙第2号証に示された「ファッションTV」(使用標章1)と本件商標「Fashion TV」とは構成を異にするため、社会通念上同一のものとはいえない旨主張している。
そして、請求人は、「社会通念上同一と認められる商標」とは、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標で、商標の識別上重要な要素を変更しないものをいう旨述べているところ、被請求人もこの見解には同意する。
これを本件に当てはめてみると、本件商標は「Fashion TV」であるのに対し、使用標章1は「ファッションTV」であり、両者は、「Fashion」のローマ字を片仮名の「ファッション」に変更したものであるから、この変更は、上記の定義に当てはまる。
また、本件商標にはスペースがあるのに対し、使用標章1にはスペースがないが、これは、微差にすぎず、商標の識別上重要な要素の変更には該当しない。
さらに、本件商標から「ファッション」「ティヴィ」及び「ファッションティヴィ」の称呼が生じるとするならば、使用標章1は、片仮名とローマ字の結合商標であるから、それぞれの部分からも称呼が生じ、本件商標と同様に、「ファッション」「ティヴィ」及び「ファッションティヴィ」の称呼が生じるものであり、両者からは同一の称呼が生じる。
加えて、「Fashion」の文字と「ファッション」の文字とは、いずれも我が国で良く知られた単語であるから、前者から「海外のファッション」、後者から「日本のファッション」というような別々の異なった観念が生じることはなく、両者は、同一の観念が生じるとするのが自然である。
したがって、本件商標と使用標章1とは、社会通念上同一のものといえる。
イ 請求人は、乙第9号証に示した「ファッションTV」(使用標章2)及び「Fashion TV JAPAN」(使用標章3)と本件商標とは構成を異にするため、社会通念上同一のものとはいえない旨主張しているが、そのうち、「ファッションTV」(使用標章2)と本件商標との比較については、上記アで述べたとおりである。
また、「Fashion TV JAPAN」(使用標章3)と本件商標「Fashion TV」との比較では、使用標章3の構成中の「JAPAN」は国名であって、自他商品又は自他役務の識別力を有していないため、使用標章3の要部は、「Fashion TV」であり、これと本件商標とを比較すると、外観がほぼ同一であるから、同一の称呼及び観念を生じる。
したがって、使用標章3は、本件商標を明確に含むものであるから、これが使用されたときは、本件商標が使用されたものとみなされるべきである。
ウ 請求人は、乙第4号証の宣誓書について、その信頼性を裏付けるもの、例えば、公証の添付がないため、その内容の信ぴょう性に欠ける旨主張するところ、被請求人は、署名者が「この宣誓書は本人が署名したものであること」を宣誓した、公証人の認証を付した新たな宣誓書を提出する(乙14)。
また、請求人は、乙第4号証の宣誓書について、要証期間後に作成されたものであるから、要証期間の使用を立証するものではない旨主張しているが、当該宣誓書は、商標の使用を新たに立証するものではなく、過去に締結された乙第5号証、乙第6号証の1及び乙第6号証の2の合意書等の内容を補足説明するためのものであるから、要証期間後に作成されていたとしても、証拠として十分に機能するものである。
エ 乙第7号証の1及び乙第7号証の2について訳文が付されていないとの請求人の主張に対し、被請求人は、上述のとおり、それらの訳文を提出する。
なお、乙第7号証の1及び乙第7号証の2は、それぞれ、2015年にJFCC社からファッションTVパリに支払われた最低保証金に関する後者が発行した請求書と、銀行によるJFCC社からの入金の通知書である。
オ 請求人は、乙第5号証、乙第6号証の1及び乙第6号証の2の合意書等にされた署名が本人によるものか不明である旨主張しているが、この点を確認するには、筆跡鑑定を行う必要があり、10年近く前になされた署名の筆跡鑑定は、署名者を探し出すことも含めて、実質的にかなり難しく、また、借用書のような書類であれば、本人以外の者が本人になりすまして署名することもあるかもしれないが、当該合意書等は、当事者が共同で事業を行うための合意事項を確認した書面であり、当事者にとって自らに不利益となるような事項が記載されているとは思われないため、本人以外の者が署名するような格別な理由も見当たらない。
したがって、上記合意書等は、署名者本人がその意思に基づいて作成したものであり、真正に成立したものと推定することができる。
カ 乙第5号証の合意書の訳文に誤訳があるため、その信ぴょう性に疑義がある旨の請求人の主張に対し、請求人は、誤訳を訂正するため、上述のとおり、正しい訳文を提出する。
したがって、乙第5号証の契約期間の満了日は、正しくは、発効日である2008年12月1日から1年間である。
なお、請求人は、上記合意書が要証期間前に作成されたものであることを気にかけているが、当該合意書は、本件商標権者と商標使用者の関係を証明するための証拠書類の一部であり、商標の使用を直接証明するものではないから、要証期間前のものであっても格別問題はない。
キ 請求人は、乙第6号証の1の合意書と乙第6号証の2の修正書面との間で契約期間についての齟齬があり、その信ぴょう性に疑義がある旨主張しているが、この点については、上記(1)イ(イ)のe及びfにおいて述べたとおりである。
なお、請求人は、上記修正書面(乙6の2)において、契約有効期間が2015年3月25日に満了するとの記述があるように主張しているが、そのような記述はない。
ク 乙第6号証の1の合意書の発効条件であるエントリーフィーの受領についての証拠が提出されていない旨の請求人の主張に対し、被請求人は、2009年3月に支払われたエントリーフィーについて、乙第15号証を提出する。
また、請求人は、乙第6号証の1の合意書の契約期間の満了日が要証期間前であるから、要証期間における本件商標の使用の許諾は立証されていない旨主張しているが、上記合意書(乙6の1)は、乙第5号証と同様に、本件商標権者と商標使用者の過去の関係を証明するための証拠書類の一部であり、商標の使用を直接証明するものではないから、要証期間前のものであっても格別問題はない。
ケ 「条件規定書」(乙10)の「権利」の欄には「ドコモ」と記載されているが、これは、「ドコモ」がスマートフォン等にテレビ番組を配信することを示している。
そして、上記配信については、2016年10月12日付けオンラインニュースに、NTTドコモが提供する「dTV」において「FashionTV」の新しいチャンネルが新設され、番組が配信されることが掲載されており(乙17)、また、公式サイトにおいても、「FashionTV」について案内されている。
このように、本件商標は、IPTVにおいても「チャンネル名」として使用されており、「ドコモ」による本件商標の使用は、乙第4号証の宣誓書において述べられているように、本件商標権者により許可されている。
また、乙第11号証の1及び乙第11号証の2に示すスクリーンショット画面が「ドコモ」により提供されていることは、当該画面の上部に「docomo」と表示されていることからも明らかであり、さらに、当該画面に表示されている「Fashion TV/特集」の標章は、その構成中の「特集」の部分には自他商品又は自他役務の識別力がなく、当該標章の要部は「Fashion TV」であるから、当該標章は、本件商標と実質的に同一のものといえる。
コ 請求人は、乙第12号証について、単なるインターネット上のニュースにすぎず、本件商標権者、使用権者による本件商標の使用事実を立証するものではない旨主張しているが、これは、実際に、「スカパー」により「ファッションTV」の放送が行われていたことを証明するための第三者が配信した記事の写しであるから、信ぴょう性は高く、補強証拠としての役割を果たしている。
なお、乙第13号証は、本件商標権者や使用権者による本件商標の使用事実を直接立証するものではないが、これまでの「ファッションTV」の番組の放送状況等についての理解を容易にするために提出したものである。
サ 請求人は、被請求人の使用標章である「ファッションTV」「FashionTV JAPAN」は、いずれも単にファッションに関するテレビを示すにすぎず、自他役務識別力がある態様での使用ではない旨主張しているが、使用標章の使用態様は、いずれも自他商品又は自他役務を識別するために表示されており、使用標章に接した視聴者は、当該使用態様により、他者の役務と識別できるものであるから、使用態様について格別問題はない。
シ 請求人は、被請求人が我が国での売上げ、視聴率等を立証していないことから、実際に我が国において、商業上、本件商標が使用されているか不明である旨主張しているが、JFCC社から「ファッションTVパリ」への所定の支払により、それが「FashionTV」グループの収益となり、本件商標権者にも分配されて、それが売上げとなる。
また、テレビ放送の視聴率は、視聴率測定用の装置が置かれている家庭を対象に調査されているが、「スカパー」により放送されている番組は、希望している視聴者のみが視聴できるものであり、その数は常に変動しているためか、視聴率の調査は行われていない。
さらに、本件商標の使用については、上述したとおり、合意書等において商標の使用等も含めて当事者間で合意がなされているため、商標使用許諾契約書のような詳細な契約書は締結されていないが、商標が使用されているかどうかは、そのような書面があるかどうかではなく、本件商標権者から許諾されている者が商標を使用しているかどうかにより判断されるべきものである。
ス 被請求人は、上述のとおり、本件商標と社会通念上同一のものが「スカパー」における放送のチャンネル名に使用されていることを主張、立証したが、「スカパー」の放送画面にも、本件商標は付されている。
すなわち、2015年12月26日に放送されたテレビ画面の写し(乙18)のとおり、上記放送画面上には「fashiontv」の商標が表示されているところ、当該商標は、本件商標とは異なり、全て小文字で表されており、「fashion」と「tv」の間にスペースがないが、実質的に本件商標と同一の商標といえる。
そして、上記放送画面は、要証期間に放送されたテレビ放送の画面であるから、本件商標の指定役務について商標が使用された事実を証明している。
なお、「スカパー!ALLチャンネルガイドBOOK」(乙1、乙2)の99ページの下半分には、過去に放送されたテレビ放送の画面の写真が掲載されているが、それらの左上にも「fashiontv」の商標が付されている。
3 平成30年9月13日付け上申書における主張
(1)口頭審理における審尋に対する回答
ア 「FashionTV」の衛星放送に関するJFCC社とJSAT社及びブロードキャスティング社との関係について
(ア)JFCC社と「スカパー」各社との関係については、両者間において、JFCC社から「スカパー」に「FashionTV」という番組を供給する「番組供給契約」が交わされていたが、JFCC社が平成26年3月31日をもって解散したため、その契約内容の詳細は不明であり、「スカパー」側の契約当事者も明確ではない。
なお、「FashionTV」という番組がJFCC社を介して「スカパー」に供給される流れについて説明すると、FashionTVの放送センター(イスラエル国 テルアビブ)から送信される放送信号を、JFCC社が業務を委託しているA社の地上局が受信し、A社にてテロップ入れ等の国内向けの編集がなされた後、「スカパー社」に送られて、ブロードキャスティング社により、番組が放送されていたところ、A社は、他社からの依頼により衛星放送を受信して編集し、それを送出する業務を行う日本法人であり、JFCC社は、衛星放送の信号を受信する施設等を有しているA社に対し、番組の受信、編集及び「スカパー」への送出を委託していたのであり、被請求人は、この点を明らかにするため、「FashionTV」の我が国におけるアドバイザーの回答書面を乙第19号証として提出する。
(イ)JSAT社とブロードキャスティング社の両社は、いずれも「株式会社スカパーJSATホールディングス」の子会社であり、両社の関係は、兄弟会社である。
そして、JSAT社は、「スカパー」の衛星放送の視聴者を獲得するための国内における営業等を担当しており、プロモーションの一環として、「チャンネルガイドブック」と称する冊子を発行し、その冊子において、チャンネル名として、「ファッションTV」の商標を使用していた。
また、ブロードキャスティング社は、衛星放送業務を担当しており、「ファッションTV」のテレビ放送を行っていた。
被請求人は、上記「スカパー」3社の関係を証明するため、各社のホームページの会社概要を提出する(乙20?乙22)。上述のとおり、「FashionTV」の衛星放送を行っていた者は、ブロードキャスティング社であり、同社の会社概要については、乙第22号証のとおりである。
イ 乙第4号証の宣誓書に記述されている「FashionTV」グループの構成及び構成各社の役割について
(ア)乙第4号証に記述されている「FashionTV」グループの構成会社は、以下の6社である。
a ファッションティーヴィー ホールディング リミテッド
b エフ.ティーヴィー プログラムゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.
c ファッションティーヴィードットコム・ゲーエムベーハー
d ファッションティーヴィー リミテッド
e ファッションティーヴィー プログラムゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.
f ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.
(イ)被請求人は、上記aないしfの6社の構成を表示した組織図を乙第23号証として提出する。当該組織図は、2015年以前に作成されたものであるため、上記「FashionTV」グループに属していない「エフ.ティーヴィー リミテッド(F.TV Limited)」も記載されているが、当該会社は、その後、当該グループから外れている。
(ウ)上記6社中、aは、bないしdの3社の株式を所有している持株会社であり、グループ全体の経営戦略を立てる役割を担っている。
また、bは、「FashionTV」の本来の目的である、最新のファッションや生活様式に関する情報や番組等を契約会社に提供するための業務を行っており、dも、bと同様の作業を行っているが、ヨーロッパ以外への提供が主な業務である。
さらに、eは、オーストリアの法人であり、オーストリア及びその周辺数か国での放送権を有しているところ、創業者がオーストリア国籍であることもあり、オーストリアでの放送を主とした法人が持株会社から独立して設立されている。
(エ)上記6社中、cは、「FashionTV」グループ及び契約会社が使用する商標や知的財産に関する権利を世界的に保護するために、商標出願等を行い、登録後の管理を行う役割を担っているところ、当該役割については、当該グループ内における格別な取決めがあるわけではないため、この役割を証明するような客観的な証拠は存在しないが、FashionTVに関連する商標が、実際にcの名義で出願、登録されているという事実があり、例えば、我が国においては、関連する商標の全てがcの名義で出願、登録されている(乙24)。
なお、「FashionTV」グループ内の他社が名義人となる商標等がどこかの国に存在していたとして、それは、営業上等の特別な事情による例外的なものであり、原則、本件商標権者であるcが出願人であり、登録名義人である。
(オ)上記6社中、fは、「FashionTV」グループを代表して他社と契約を締結しているところ、このことについては、当該グループ内における格別な取決めがあるわけではないため、それを証明する客観的な証拠は存在しない。
なお、fの法人証明書(乙25)において、その活動の項目に「契約締結」等に関する記述はないが、fの契約締結に関する業務や契約会社からの入金を管理する業務は、他社のための代行業でなく、自らが当事者となる契約の締結や会計であるから、当然に登記簿等の公的書面に業務として記載されるものではない。
(カ)上記(ア)ないし(オ)で述べたとおり、上記6社中、c(本件商標権者)及びf(ファッションTVパリ)の「FashionTV」グループ内の役割については、客観的な証拠が存在しないが、そのことをもって、上述のような役割を担っていないと判断されるべきではない。
(2)被請求人がこれまでに提出した合意書等は、ファッションTVパリとJFCC社との間で、「FashionTV」のテレビ番組を我が国において放送するという共通の目的を達成するために、合意事項を列挙したものであり、ライセンス費用等は、当該合意書等のとおりにJFCC社からファッションTVパリに支払われているが、ファッションTVパリの所掌範囲外の業務等は、当然に「FashionTV」グループ内の企業がJFCC社をサポートする必要があり、JFCC社も当然にそのような支援を受けられると理解していたはずである。
したがって、両当事者(ファッションTVパリとJFCC社)は、上記合意書等に記載された「FTV」の略称が特定の一企業を指しているというよりも、JFCC社をサポートする複数企業を意味していると考えていたものと推察する。
また、テレビ番組を放送するに当たっては、放送事業者やそれに関連してプロモーションを行う関連企業は、当然に関係する商標を自由に使用できなければ業務に支障を来すこととなることから、両当事者は、その点を理解して「FashionTV」の番組を放送する事業を進めていたものと考えられ、仮に、上記合意書等において「商標」に関する記述がなかったとしても、JFCC社及び放送事業者等は、本件商標権者名義の商標を使用することを許諾されていたと考えるべきである。

第4 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、平成25年(2013年)7月18日に登録出願、同26年(2014年)2月21日に設定登録されたものであるところ、商標登録原簿の記載によれば、その設定登録時の商標権者は、アメリカ合衆国所在の「ファッション テレビジョン エルエルシー」であり、その後、その商標権は、英国所在の「ファッション テレ セツルメント コーポレーション リミテッド」に移転され、さらに、本件商標権者である「ファッションティーヴィードットコム・ゲーエムベーハー」に移転されている(平成27年(2015年)12月24日受付)。
2 衛星放送における本件商標の使用について
(1)被請求人の提出に係る証拠について
ア 乙第1号証は、使用期限を2016年(平成28年)3月末とする「スカパー!ALLチャンネルガイドBOOK 2015・秋冬」であり、乙第2号証は、使用期限を2016年(平成28年)9月末とする「スカパー!ALLチャンネルガイドBOOK 2016・春夏」であるところ、いずれも、JSAT社による発行とするものであって、チャンネル名一覧には「ファッションTV」の記載があり、99ページには当該番組の紹介が掲載されている。
なお、乙第2号証のガイドブックにおいては、「ファッションTVは、2月29日に販売を終了、3月31日に放送を終了いたします。」の記載がある。
イ JSAT社は、株式会社スカパーJSATホールディングスのグループ会社であり、その事業内容は「メディア事業及び宇宙事業」である。また、ブロードキャスティング社も株式会社スカパーJSATホールディングスのグループ会社であり、その事業内容は「コンテンツ制作事業、番組供給事業」である(乙20?乙22)。
ウ 乙第4号証は、本件商標権者の代表者による2017年9月4日付け宣誓書であり、(a)「FashionTV」グループが、本件商標権者やファッションTVパリを含む複数の企業により構成されていること、(b)本件商標権者が、当該グループを代表して、世界各国において商標の登録をしていること、(c)ファッションTVパリが、本件商標権者名義で登録された商標の使用について、他社にライセンスを与える権限を与えられていること、(d)本件商標権者が、JFCC社及びBrandScreen社に対し、本件商標をその指定役務に使用すること及び、日本において、放送事業者にサブライセンスを与えることについての権限を与えていること、(e)本件商標権者が、「スカパー」によるCS放送及びドコモによるIPTV(スマートフォン、タブレット等)について本件商標を使用することを許可していることなどの記載はあるが、当該(d)にいう「権限付与」及び(e)にいう「許可」について、いつ、どのような方法で、どれくらいの期間の「権限付与」及び「許可」をしたかの記載はない。
エ 乙第5号証は、2008年11月28日に、「Fashion TV Paris?FOL s.a.r.l.」、JFCC社及び株式会社プロシード(以下「プロシード社」という。)の間で締結された合意書であるところ、これには、その冒頭に「Fashion TV Paris?FOL s.a.r.l.・・・hereinafter referred to as:“FTV”」(ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.・・・(以下、「FTV」と称する))と記載され、その前文には、当該合意書の発効要件(期日までのエントリーフィーの支払い)及びその要件を満たしたときの発効日(2008年12月1日)、FTVが「Fashion TV」というテレビチャンネルを運営する全ての権利を有し、その運営をしていること及びそのテレビチャンネルに関係する全ての権利、商標、ブランド及びロゴを有していることなどの記載、並びに「JFCCは、2008年12月1日よりも遅れることなく、チャンネルの運営を開始する意思があり、開始することを確約する。」の記載がある。
また、上記合意書における条項1.1には、合意書の目的に関し、「JFCCは、日本においてのみ、標準画質(SD)の全てのチャンネルを、スカイパーフェクトプラットフォームのプレミアムパッケージに再配信するライセンスを得ることを望んでおり、FTVはJFCCにそのライセンスを与えることを望んでいる。」との記載がある。
さらに、上記合意書における条項3.1には、ライセンスに関し、FTVが、「本合意書の枠内において、またその目的に限定して、本合意書の契約期間及び条件に従って、JFCCに、全ての知的・産業財産権の使用を許諾する。」との記載がある。
なお、上記合意書の契約期間は、「発効日から1年」である。
オ 乙第6号証の1は、2009年3月4日に、「Fashion TV Paris?FOL s.a.r.l.」、JFCC社及びプロシード社の間で締結された合意書であるところ、その冒頭に、「Fashion TV Paris?FOL s.a.r.l.・・・hereinafter referred to as:“FTV”」(ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.・・・(以下、「FTV」と称する))と記載され、その前文には、乙第5号証の合意書に関してエントリーフィーの支払がされたこと、本合意書(乙6の1)の発効要件(期日までのエントリーフィーの支払)及びその要件を満たしたときの発効日(2009年3月20日)、FTVが「Fashion TV」というテレビチャンネルを運営する全ての権利を有し、その運営をしていること及びそのテレビチャンネルに関係する全ての権利、商標、ブランド及びロゴを有していること、JFCC社が、乙第5号証の合意書に基づいて、全契約期間の間のスカイパーフェクトCS124度/128度についての当該合意書に規定された条件に基づく「Fashion TV」というテレビチャンネルの配信を維持することを確約するなどの記載がある。
また、乙第6号証の1の合意書における条項1.1には、合意書の目的に関し、「JFCCは、標準画質(SD)と高画質(HD)の全てのチャンネルを、IPTV、モバイル装置プラットフォーム、その他の電子メディア、及びVODサービスのような新しいメディアサービスを含む、全ての基礎的でプレミアムなテレビジョンサービスに再配信するライセンスを得ることを望んでおり、FTVはJFCCにそのライセンスを与えることを望んでいる。」との記載がある。
さらに、乙第6号証の1の合意書における条項2.1(i)には、JFCC社の責務に関し、「SPTV合意書(【審決注】乙第5号証の合意書)において認められた再配信のライセンスを条件として、JFCCは日本においてのみ、標準画質(SD)のチャンネルを、スカイパーフェクトプラットフォーム(技術的詳細、スカイパーフェクトCS124度/128度、を含む)のプレミアムパッケージに配信する。当事者達(【審決注】本合意書の締結当事者全員)は、SPTV合意書の契約期間を本合意書の消滅まで延期することに同意する。」との記載があり、同じく(ii)には、「ここにおいて認められた再配信のライセンスを条件として、JFCCは、標準画質(SD)と高画質(HD)のチャンネルを、その他テレビジョンサービスプロダイバーに配信する」との記載がある。
加えて、乙第6号証の1の合意書における条項3.1には、ライセンスに関し、FTVが、「本合意書の枠内において、またその目的に限定して、本合意書の契約期間及び条件に従って、JFCCに、全ての知的・産業財産権の使用を許諾する。」との記載がある。
なお、乙第6号証の1の合意書の契約期間は、「発効日から5年」といえる。
カ 乙第6号証の2は、2011年11月12日に、「Fashion TV Paris?FOL s.a.r.l.」、JFCC社及びプロシード社の間で同意された乙第6号証の1の合意書に関する修正書面であり、その冒頭に、「Fashion TV Paris?FOL sarl・・・(hereinafter FTV)」(ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.・・・(以下、「FTV」と称する))と記載され、当該合意書の条項10.(合意書の契約期間)に関し、当事者達(【審決注】本修正書面の当事者全員)が2014年3月25日から始まる契約上の年を2年間延長することに同意し、約束する旨、FTVが、2014年3月25日及び2015年3月25日に一定の最低補償金を受け取る旨の記載がある。
キ 乙第7号証の1及び乙第7号証の2は、2015年にJFCC社からファッションTVパリに支払われた最低保証金に関する請求書及び銀行によるJFCC社からの入金の通知書とされるものであるところ、乙第7号証の1は、2015年2月27日に作成されたものであり、これには、目的として「ファッションティーヴィー フォル エス.エー.アール.エル.と株式会社JFCCとの間における2009年3月4日付合意書、及び2011年11月12日付修正書面条項4.4」と記載されており、指示として「配信活動による収益についての最低保証金 3月に支払可能」及びその金額が記載されている。また、乙第7号証の2は、2015年3月20日に作成されたものであり、これには、ファッションTVパリを口座の名義人とする預金口座に、発注者をJFCC社として、2015年3月20日に、乙第7号証の1に記載の金額と同額の金額が入金された旨の記載がある。
ク 乙第8号証は、「Wikipedia」による「スカパー!」の語の検索結果であり、「スカパー!(英称:SKY PerfecTV!)とはスカパーJSATグループ各社が運営する有料多チャンネル放送サービスのブランド名。2012年10月1日に以下のサービスを一元化した。・・・スカパー!プレミアムサービス(旧称:スカパー!)-東経124・128度CSデジタル放送(衛星一般放送)のプラットフォーム。」の記載がある。
ケ 乙第14号証は、本件商標権者の代表者による2018年7月19日付けの宣誓書であり、「FTV」の文字は、通常「Fashion TV」の略語として使用されており、合意書中に使用されている略語の「FTV」は、「Fashion TV」グループを意味している旨の記載がある。
コ 乙第15号証の1及び乙第15号証の2は、2009年にJFCC社からファッションTVパリに支払われた最低保証金に関する請求書及び銀行によるJFCC社からの入金の通知書とされるものであるところ、乙第15号証の1は、2009年3月16日に作成されたものであり、これには、目的として「ファッションティーヴィー フォル エス.エー.アール.エル.と株式会社JFCCとの間における2009年3月4日付合意書」と記載されており、指示として「日本における配信のためのエントリーフィー 日本における配信1年目のための前払い金」及びその金額が記載されている。また、乙第15号証の2は、2009年3月19日に作成されたものであり、これには、ファッションTVパリを口座の名義人とする預金口座に、発注者をJFCC社として、2009年3月17日に、乙第15号証の1に記載の金額と同額の金額が入金された旨の記載がある。
サ 乙第16号証の1ないし乙第16号証3は、2014年にJFCC社からファッションTVパリに支払われた最低保証金に関する請求書及び銀行によるJFCC社からの入金の通知書とされるものであるところ、乙第16号証の1は、2014年1月30日に作成されたものであり、これには、目的として「ファッションティーヴィー フォル エス.エー.アール.エル.と株式会社JFCCとの間における2009年3月4日付合意書、及び2011年11月12日付修正書面条項4.4」と記載されており、指示として「配信活動による収益についての最低保証金 3月に支払可能」及びその金額が記載されている。また、乙第16号証の2及び乙第16号証の3は、前者が2014年3月28日、後者が同年4月16日に作成されたものであり、これには、いずれも、ファッションTVパリを口座の名義人とする預金口座に、発注者をJFCC社として、2014年3月28日及び同年4月16日に入金された金額が記載されているところ、その合計金額は、乙第16号証の1に記載された金額と同額の金額が入金された旨の記載がある。
シ 乙第19号証は、ファッションTVの日本におけるアドバイザーとされるN氏が被請求人代理人へ宛てた送信日時を2018年9月5日とするメールであり、これには、「お尋ねの下記(1)については、放送事業会社である『スカパー社』とFTVの日本におけるライセンシーであるJFCCとは、『Fashion TV』という番組を供給する『番組供給契約』をかわしていました。」及び「Fasshon TV」供給方法等についての記載はあるものの、問合せ内容と推認される、上記「(1)」が提出されておらず、また、上記「スカパー社」がJSAT社又はブロードキャスティング社であるのか、あるいは、株式会社スカパーJSATホールディングスの上記以外のグループ会社であるのかは明らかでなく、かつ、N氏が具体的に上記各社とどのような関係であったのかも明らかではない。
ス 乙第23号証は、「ファッションTV」グループの組織図とされるものであり、その内容によれば、「ファッション ティーヴィー グループ」として、「ファッションティーヴィー ホールディング リミテッド」の下、「エフ.ティーヴィー プログラムゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.」、「エフ.ティーヴィー リミテッド」、「ファッションティーヴィードットコム・ゲーエムベーハー」及び「ファッションティーヴィー リミテッド」の4社が配置されているほか、当該「ファッションティーヴィー ホールディング リミテッド」及び4社とは別個に、「ファッションティーヴィー プログラムゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.」があり、かつ、その下に「ファッションティーヴィー パリ-フォル エス.エー.アール.エル.」が配置されていることがうかがえるが、それぞれがどのような役割を担っているかなどは不明である。
なお、被請求人は、乙第23号証は、2015年以前に作成されたものであると主張しているが、その作成時期及び作成者は明らかにされていない。
(2)判断
上記(1)によれば、ファッションTVパリとJFCC社とは、「Fashion TV」というテレビチャンネルを我が国において配信することに関し、合意書等を締結した。
具体的には、2008年(平成20年)11月28日に、ファッションTVパリが、JFCC社に対し、同社が同年12月1日から我が国において上記テレビチャンネルに係る標準画質の全てのチャンネルをスカイパーフェクトプラットフォームに再配信するライセンスを許諾し、かつ、当該ライセンスに関し、ファッションTVパリが有する全ての知的・産業財産権の使用を許諾する旨の合意を両者がしたものであり、その契約期間は、同年12月1日から1年間であった。
その後、上記ファッションTVパリとJFCC社との間の合意は、IPTV等への再配信に係るライセンス許諾のほか、おおむねその内容を変更することなく、両者が新たに2009年(平成21年)3月4日に締結した合意書により、契約期間が同年3月20日から5年間に延長され、さらに、両者が2011年11月12日に同意した当該合意書の修正書面により、当該契約期間が2014年(平成26年)3月25日から2年間に延長された。
しかしながら、上記合意書等に基づき、JFCC社が、我が国において、スカイパーフェクトプラットフォームに再配信する形式で「Fashion TV」というテレビチャンネルの提供を行っていたことがうかがえるのは、2015年(平成27年)の秋以降、2016年(平成28年)3月31日までであり、それ以前に当該テレビチャンネルの提供が行われていたかは明らかでなく、仮に、その提供が行われていたとしても、その提供に当たり、いかなる標章が使用されていたかは明らかでない。
また、そもそも、本件商標は、平成25年(2013年)7月18日に登録出願され、同26年(2014年)2月21日に設定登録されたものである上、要証期間を含め、ファッションTVパリが本件商標の商標権者であったことは1度もなく、かつ、上記契約期間中に本件商標をその対象に追加するなどといった合意がなされたことを認めるに足る事実も見いだせないことからすれば、上記ファッションTVパリとJFCC社との合意書等において、ファッションTVが有する全ての知的・産業財産権の使用を許諾する旨の合意がなされていたとしても、その合意の対象に本件商標が含まれているとは認められない。
この点について、被請求人は、本件商標権者の代表者による宣誓書及び「ファッションTV」グループの組織図とされるものによれば、上記ファッションTVパリとJFCC社との合意書等の対象には本件商標も含まれている旨主張するが、当該合意書等においては、その内容に係る「FTV」がファッションTVパリを指すものであることが明確に定義付けられている上、少なくとも2008年(平成20年)11月28日及び2009年(平成21年)3月4日に締結された各合意書においては、いずれも「FTVは、(Fashion TV)チャンネルに関係する全ての権利、商標、ブランド及びロゴを有している。」「FTVは、本合意書の枠内において、またその目的に限定して、本合意書の契約期間及び条件に従って、JFCCに、全ての知的・産業財産権の使用を許諾する。」と明記されており、また、当該組織図によっては、本件商標権者とファッションTVパリとの関係のみならず、それぞれがどのような役割を担っているかも不明であるから、当該宣誓書の内容のみをもって、にわかに当該合意書等の対象に本件商標が含まれていると認めることはできない。
してみれば、被請求人が本件商標に係る通常使用権者であるとするJSAT社が、要証期間に発行した「スカパー!ALLチャンネルガイドBOOK」(乙1、乙2)において、「ファッションTV」のチャンネル名を記載したり、その番組紹介を掲載したとしても、それをもって、要証期間における本件商標の使用と認めることはできない。
(3)小括
以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によっては、要証期間に、JSAT社が通常使用権者として、日本国内において、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を衛星放送に使用したものと認めることができない。
3 IPTV(Internet Protocol Television)の放送による使用について
被請求人は、JFCC社、Brand Screen社及び「ドコモ」が本件商標権者からIPTV向け配信の許諾を受け、本件商標を使用していた旨主張する。
(1)乙第9号証は、「(株)スイートルーム」が、報道関係者各位に発した2011年6月24日付けのプレスリリースであり、これには、「ファッションTVが視聴出来るAndroidアプリがドコモマーケットに無料で登場」の見出しの下、JFCC社が同年6月24日からAndroidスマートフォン向けアプリ「FashionTV JAPAN」の配信をドコモマーケットで開始した旨及びその概要には「配信コンテンツ」として「ファッションTV」が記載され、また、「FashionTV JAPAN」の文字が表示された画面のスマートフォンの写真が掲載されている。
しかしながら、上記配信が行われていた期間は明らかでない上、少なくとも上記配信開始時点(2011年(平成23年)6月24日)において、本件商標は、その登録出願すらされておらず、さらに、上記配信がファッションTVパリとJFCC社との合意に基づくものであるとしても、当該合意の対象に本件商標が含まれているとは認められないこと、上記2(2)のとおりである。
したがって、JFCC社が要証期間に本件商標をIPTVに使用したことを認めることができない。
(2)乙第10号証は、2016年(平成28年)7月に、ファッションTVパリとBrand Screen社の間で合意された「条件規定書」であるところ、これには、権利を「IPTV(スマートフォン、タブレット、ウェブデバイス、等)ドコモ/エイベックス」、領域を「日本」とすること、「2016年8月31日まで」及び「2017年2月28日まで」の所定金額の支払期限に関し、前者の支払いが期限内になされることを条件に2016年9月1日をプロジェクト開始日とすること並びに後者の支払いが期限前になされない場合には、Brand Screen社がfashiontvチャンネル及びFTVに関するコンテンツを頒布する全ての権利を直ちに失うなどの記載がある。
しかしながら、Brand Screen社が上記支払いをしたことにより、プロジェクトが開始されたことを裏付ける証左の提出はない。
また、2016年10月12日付け「ORICON NEWS」の「『dTV』女性向けの新チャンネル開設『FashionTV』も配信」の見出しに係る記事(乙17)によれば、同日に開設された女性向けの新チャンネル「ガールズch」に「FashionTV」の配信が含まれている旨の記載があり、さらに、「Fashion TV」番組のスクリーンショットとされるもの(乙11の1、乙11の2)には、「Fashion TV」の表示のほか、「dTV」及び「docomo」の表示がされていることがうかがえるが、当該配信及び当該スクリーンショットに係る画像のいずれについても、Brand Screen社によるものであるかが明らかでない上、当該画像については、その撮影日、撮影者も明らかでない。
したがって、Brand Screen社が要証期間に本件商標をIPTVに使用したことを認めることができない。
(3)小括
以上のとおりであるから、JFCC社、Brand Screen社のいずれも、要証期間に本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)をIPTVに使用したものと認めることはできない。
4 その他、本件商標が、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって、本件審判の請求に係る指定役務である第38類「テレビ番組の提供,その他の放送」について使用されていたことを認めるに足る証拠の提出はない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判の請求に係る指定役務である第38類「テレビ番組の提供,その他の放送」について、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、上記指定役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2020-03-06 
結審通知日 2020-03-09 
審決日 2020-03-24 
出願番号 商願2013-55657(T2013-55657) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W38)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 謙司 
特許庁審判長 田中 敬規
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2014-02-21 
登録番号 商標登録第5650834号(T5650834) 
商標の称呼 ファッションティービー、ファッションテイブイ、ファッションテレビ、ファッション 
代理人 瀬戸 一宏 
代理人 鮫島 睦 
代理人 田中 陽介 
代理人 川添 昭雄 
代理人 特許業務法人 清水・醍醐特許商標事務所 

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