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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W39
管理番号 1365079 
審判番号 取消2019-300316 
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2019-04-19 
確定日 2020-07-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5833583号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5833583号商標(以下「本件商標」という。)は、「エコサイクル」の片仮名を標準文字で表してなり、平成27年10月26日に登録出願、「自転車の貸与」を含む第39類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同28年3月11日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和元年5月13日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、平成28年5月13日から令和元年5月12日までの期間(以下「要証期間」という。)である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第2条第3項第8号の使用について
ア 知的財産高等裁判所は、商標法第2条第3項第8号の「頒布」について、「商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の『頒布』とは、同号に並列して掲げられている『展示』及び『電磁的方法により提供する行為』と同視できる態様のもの、すなわち、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれることをいい、標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていない場合には、商標法第2条第3項第8号所定の標章を付した広告の『頒布』に当たらないものと解するのが相当である。」(平成22年(行ケ)第10012号 知財高裁)(甲1)との解釈を示している。
イ また、特定の者の使用のみに供するために作成、配布された商品カタログについて、「原告は、商取引において商品カタログを配布する相手はその配布の目的からして取引相手あるいは将来取引相手になる可能性のある者に配布することで足り、取引相手の上記2社に本件各カタログが配布されたのであれば『頒布』されたと解すべきである旨主張するが、本件各カタログは原告の主張する通常の商品カタログのように取引相手あるいは取引の可能性のある者一般を対象に配布されることを予定したものではなく、上記のとおり、専ら原告の完全子会社あるいは独占的輸入業者である上記2社の使用のみに供するために作成、配布されたものであって、その性質上、日本国内において上記2社以外には他に配布される可能性がなかったのであるから、『頒布』には当たらないというべきであり、原告の上記主張は採用することができない。」(平成18年(行ケ)第10104号 知財高裁)(甲2)との判断を示している。
(2)乙1ないし乙9について
ア 乙3ないし乙6及び乙9は、書証のどこにも本件商標の記載がないので、本件商標の使用の事実を証する証拠となり得ないものである。
イ 乙1及び乙8は、被請求人が、名古屋大学向けに作成した資料であって、同大学に、被請求人のレンタサイクルサービスを提案し、採用してもらうための説明資料なので、この段階では「エコサイクル」の名称でレンタサイクルサービスが行われていたことを証するものでないことは明らかである。
ウ 乙1及び乙8は、その表紙中央部に「?名古屋大学様向け?」と記載されていることから明らかなように、被請求人が名古屋大学との間でのみ使用するために作成し、同大学の担当者に配布して、被請求人のレンタサイクルの採用を働きかけるための資料であって、同大学の関係者以外には配布される可能性のなかったものである。
そうとすれば、乙1及び乙8は、その表紙に「エコサイクル」の記載があったとしても、被請求人が、特定人である名古屋大学向けに作成した資料であって、当事者以外の者が目にする機会もなく、また、当事者以外には配布される可能性もなかったものなので、前記(1)イの判例(甲2)と同様に判断されるべきものであり、頒布に当たらないものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙9を提出した。
1 被請求人は、駐車場や駐輪場の運営管理を主たる事業とする法人であるが、乙1は、被請求人が、2017年5月13日に名古屋大学向けに作成した「エコサイクル」なる名称のレンタサイクルサービスの利用手順を記載した資料である。
「エコサイクル」は、事前登録した会員に自転車を貸与するサービスであるが、被請求人は、乙1に係る資料を持参して、2017年5月16日に名古屋大学に赴き、レンタサイクルサービス「エコサイクル」の内容等を説明し、同大学における「エコサイクル」の採用に向けての宣伝広告活動を行った(乙2)。
2 その後、被請求人と名古屋大学の担当者とはメールにて頻繁に交信していたが(乙5及び乙6)、大学構内における駐車場や駐輪場の課題検討に関し、2017年7月20日に同大学内で改めて面談の場が設けられ(乙7)、前回の面談で得られた同大学のニーズを汲んだレンタサイクルサービス「エコサイクル」の提案が改めてなされた(乙8)。
3 乙1ないし乙9より、被請求人は、2017年の5月と7月の2度にわたって名古屋大学に赴き、同大学の担当者に対し、レンタサイクルサービス「エコサイクル」の説明・提案を伴った宣伝広告活動を行っており、被請求人が、本件商標の指定役務中の「自転車の貸与」等の役務に関する広告や取引書類に本件商標を付して頒布していたことは明白であり、このような行為は商標法第2条第3項第8号等の「使用」に該当するといえる。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
(1)本件商標に係る商標権者(以下、単に「商標権者」という。)は、2017年(平成29年)5月13日に、名古屋大学向けに「スマートフォンを利用した会員制の自転車の貸与」(以下「使用役務」という。)についての説明書(以下「説明書1」という。)を作成した(乙1)。
(2)説明書1の表紙には、「エコサイクル」の片仮名をゴシック体で表してなる商標(以下「使用商標」という。)が記載されている。
(3)商標権者は、2017年(平成29年)5月16日に、名古屋大学を訪問し、同大学の担当者に対して、説明書1を持参して、使用役務について説明した(乙2及び被請求人の主張)。
(4)商標権者は、2017年(平成29年)7月14日に、名古屋大学向けに使用役務に関する仕様変更についての説明書(以下「説明書2」という。)を作成した(乙8)。
(5)説明書2の表紙には、使用商標が記載されている。
(6)商標権者は、2017年(平成29年)7月20日に、名古屋大学を訪問し、同大学の担当者に対して、説明書2について提案した(乙7及び被請求人の主張)。
2 前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、前記第1のとおり「エコサイクル」の片仮名を標準文字で表してなるものであり、使用商標は、前記1(2)のとおり「エコサイクル」の片仮名をゴシック体で表してなるものである。
そうすると、両商標は、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標であるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。
(2)使用役務について
使用役務は、「スマートフォンを利用した会員制の自転車の貸与」であるから、本件商標の指定役務中「自転車の貸与」に含まれる役務であるといえる。
(3)使用者について
前記1(1)及び(4)のとおり、説明書1及び2は、商標権者が名古屋大学に対し、使用役務を説明・提案するものであるから、当該役務を宣伝するものであり、また、当該役務の取引上必要な書類であるといえる。
そうすると、説明書1及び2は、使用役務に関する広告又は取引書類ということができる。
また、前記1(2)及び(5)のとおり、説明書1及び2の表紙には、使用商標が記載されているのであるから、説明書1及び2には、使用商標が付されているといえる。
そして、前記1(3)及び(6)のとおり、商標権者は、名古屋大学に対して、説明書1及び2により、説明・提案したのであるから、説明書1及び2を頒布したといえる。
そうすると、商標権者は、使用役務に関する広告又は取引書類に当たる説明書1及び2に使用商標を付して、名古屋大学に対し頒布したということができる。
したがって、使用商標の使用者は、商標権者である。
(4)使用時期について
前記1(3)及び(6)のとおり、商標権者が、名古屋大学に対して、説明書1及び2により、説明・提案したのは、平成29年5月16日及び同年7月20日である。
そうすると、商標権者が、使用役務に関する広告又は取引書類に当たる説明書1及び2に使用商標を付して、名古屋大学に対し頒布したのは、平成29年5月16日及び同年7月20日であるといえ、いずれも要証期間内である。
(5)小括
以上によれば、商標権者は、要証期間内である平成29年5月16日及び同年7月20日に、本件商標の指定役務中「自転車の貸与」に含まれる使用役務に関する広告又は取引書類に、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して頒布したと認めることができる。
そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「・・・役務に関する広告・・・若しくは取引書類に標章を付して・・・頒布・・・する行為」に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、説明書1及び2は、商標権者が名古屋大学向けに作成した資料であって、同大学に使用役務を提案し、採用してもらうための説明資料なので、この段階では「エコサイクル」の名称で使用役務が行われていたことを証明するものでない旨主張している。
しかしながら、たとえ使用役務自体が行われていないとしても、使用商標について、商標法第2条第3項第8号の使用行為が行われていたこと上述のとおりである。
(2)請求人は、説明書1及び2は、商標権者が名古屋大学との間でのみ使用するために作成し、同大学の担当者に配布して、使用役務の採用を働きかけるための資料であって、同大学の関係者以外には配布される可能性のなかったものであるから、平成18年(行ケ)第10104号判決と同様に、「頒布」に当たらないと判断されるべきである旨主張している。
ところで、「商標法第2条第3項第7号(審決注:平成14年改正前の条文であり、現行商標法の第2条第3項第8号。)にいう『取引書類に標章を付して頒布する』ことは、特定の役務に関する取引書類に標章を付して、当該役務の提供を求める特定の取引先に対して配布することによってされるのが通常であり、本件商標を付した取引書類が原告の内部資料にとどまっている段階であれば格別、これを取引先に現に送信した事実が認められる以上、指定役務についての登録商標の使用と認めるに妨げはない。」(平成13年(行ケ)第530号判決(東京高裁))。
そして、名古屋大学は、商標権者にとって、取引先というべきであるから、商標権者が取引先というべき名古屋大学に対して、使用役務に関する広告又は取引書類に当たる説明書1及び2により、説明・提案した事実が認められる以上、たとえ名古屋大学の関係者以外に配布される可能性がなかったとしても、説明書1及び2は「頒布」されたというべきである。
なお、請求人が挙げる平成18年(行ケ)第10104号判決は、「取引相手あるいは取引の可能性のある者一般を対象に配布されることを予定したものではなく、・・・専ら原告の完全子会社あるいは独占的輸入業者・・・の使用のみに供するために作成、配布されたもの」であることから、「頒布」に当たらないと判示したものであり、上記にいうような関係が何ら認められない一般の取引先を相手とする本件とは事案を異にするものである。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、本件商標の指定役務中「自転車の貸与」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

審理終結日 2020-05-19 
結審通知日 2020-05-26 
審決日 2020-06-08 
出願番号 商願2015-102886(T2015-102886) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W39)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大房 真弓 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 板谷 玲子
山田 啓之
登録日 2016-03-11 
登録番号 商標登録第5833583号(T5833583) 
商標の称呼 エコサイクル 
代理人 田中 尚文 
代理人 特許業務法人栄光特許事務所 
代理人 渡部 彩 

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