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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W39
審判 全部申立て  登録を維持 W39
管理番号 1357909 
異議申立番号 異議2019-900247 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-09-02 
確定日 2019-12-12 
異議申立件数
事件の表示 登録第6150230号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6150230号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6150230号商標(以下「本件商標」という。)は、「キラリ光る小豆島」の文字を標準文字で表してなり、平成31年4月2日に登録出願、第39類「車両による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,船舶による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,引越の代行,船舶の貸与・売買又は運航の委託の媒介,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,配達物の一時預かり,倉庫の提供,駐車場の提供,駐車場の管理,荷役機械器具の貸与,自動車の貸与,自転車の貸与,機械式駐車装置の貸与,包装用機械器具の貸与,車椅子の貸与,企画旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,ガソリンステーション用装置(自動車の修理又は整備用のものを除く。)の貸与」を指定役務として、令和元年5月22日に登録査定され、同年6月7日に設定登録されたものである。

2 引用標章及び引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章及び商標は次のとおりである。
(1)申立人が引用する標章
申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するとして引用する標章は、「キラリ光る小豆島」の文字からなり(以下「引用標章」という。)、同人等が小豆島の土庄町及び小豆島町において商号登記しているとする商号である。
(2)申立人が引用する商標
申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、同人の使用許諾に基づく使用権者及び同人が「車両による輸送」等について使用し、小豆島内及び島外で十分に知られた存在となっていると主張するものである。
ア 「キラリ光る小豆島」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。引用標章と同じ。)
イ 別掲1及び別掲2のとおりの構成からなる商標など「キラリ光る小豆島」の文字をデザイン化した商標(以下「引用商標2」という。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第8号及び同第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第8号について
ア 他人の商号登録された事業名と同一であること
本件商標は「キラリ光る小豆島」であるところ、申立人は、小豆島の土庄町において、平成25年3月7日より「キラリ光る小豆島」を事業の名称として商号登記している(甲2)。
なお、小豆島は土庄町、小豆島町の2町からなるところ、土庄町においては申立人が、小豆島町では申立人の妻が、それぞれ「キラリ光る小豆島」を商号登記している(甲2、甲3)。登記された事業の内容によると、宿泊施設、飲食店、観光用土産物品の販売等を目的とした事業の事業者名であることがわかる。これらの商号登記があることから、小豆島の島内全域において、「キラリ光る小豆島」をこれらの事業名に広く用いることができる事業者は、事実上、申立人らに限られている。
そして、商号登記をしたうえで事業活動をしているのであるから、「キラリ光る小豆島」は、申立人の事業者名として商号登録された正規の名称であって、商標法第4条第1項第8号にいう「他人の名称」として正に保護されるべき対象である。さらに、商標権者は、申立人らの承諾を何ら得ていない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
イ 申立人の事業等
申立人は、平成18年以来、小豆島の土庄町に居所を構え、オリーブを栽培して食用油を生産している他、太陽光発電事業も行っており、同所の表札兼ポストには「キラリ光る小豆島」と掲示されている(甲4)。
また、申立人は、自身の名刺、申立人が代表者の「有限会社サンパワー小豆島」における名刺に「キラリ光る小豆島」を用いている(甲5)。
さらに、申立人は、「キラリ光る小豆島」の横書きされた文字のみからなる商標権も保有している(甲7、甲8)。
そして、申立人は、平成29年頃より、小豆島産の土産物品の製造・販売を企画し、たとえば、チョコレート生産業者の春日堂、素麺の高松屋などと共同して、オリジナルの商品開発に取り組み、これら業者と打ち合わせ等を重ね、既に商品のラベル、商品見本のパッケージも具体化している(甲6、甲9、甲10)。
このように、本件商標の登録査定時において、「キラリ光る小豆島」を事業名とした具体的な事業活動が進んでいたことからすると、本件商標は、かかる活動実体のある事業者の名称である「キラリ光る小豆島」と同一であって、商号登記もされている事業名であるから、それらの事業者の承諾なしに登録することはできない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 申立人は、平成23年より、小豆島の地域観光の発展を企図して「キラリ光る小豆島」のフレーズを考案して観光アピールに用いることを提唱してきた。
そして、申立人は、「キラリ光る小豆島」のロゴをデザインし、平成23年より、小豆島交通株式会社(以下「小豆島交通」という。)に対して著作権に基づき、車両、看板、印刷物、ウェブサイトにおける使用を許諾してきた。当初は、口頭での許諾の合意のみであったが、平成31年1月に申立人と小豆島交通の間で改めて合意内容が書面化されている(甲12)。
イ 小豆島交通は、当該使用許諾に基づき、名刺やパンフレットといった印刷物、建物の看板、ウェブサイト、観光バスやタクシーの車体ボディなどに、申立人のデザインした「キラリ光る小豆島」のデザインを使用してきている(甲13、甲15、甲21?甲23)。
また、島内マップなどの観光案内の配布物にも、「キラリ光る小豆島」と書かれている(甲29)。
ウ 小豆島の町や観光協会、ホテルなどの関係者も、「キラリ光る小豆島」が申立人のデザインの著作物であること、そのメッセージが広く観光誘引のためのアピールに寄与していることを認めている(甲14、甲16?甲20)。また、土庄町町長は、申立人との協議のもと、インスタ映えする撮影スポットとするべく、「キラリ光る小豆島」の看板を立てる計画を検討中である。
エ 観光バスのカッティングデザイン「キラリ光る小豆島」(甲13)は非常に目立つデザインであることから、小豆島に訪れる観光客(年間約110万人。:甲17?甲20)にも広く知られるところとなっている。さらに、観光バスは県外でも走行することがあるので、たとえば大阪等の近隣の府県を走行する際にも、衆目を集めてきた(甲27、甲28)。
このように、「キラリ光る小豆島」は、観光バス等車両による輸送の事業に関して、平成25年以降、継続して使われてきたので、本件商標の登録出願時には、小豆島内、島外でも十分に知られた存在となっていた。
オ 商標権者は、小豆島の島内に居住している者である(甲1)から、小豆島交通の観光バスやタクシーの車体ボディの全面に「キラリ光る小豆島」と大書されたラッピングデザインを用いている事実を明らかに認識していたはずである。
してみると、商標権者は、申立人の商標登録(甲7、甲8)、商標出願(甲24)が存在する中で、車両による輸送に関して商標登録がなされていなかったことを奇貨として、平成31年4月2日に登録出願し、早期審査により登録に至ったものである(甲1)。
カ 本件商標に係る早期審査の事情説明書において、登録出願後の4月8日時点で、商標権者と小豆島交通との間で使用許諾契約があったかのような外形の使用許諾証書なる書面が提出されているものの(甲26)、小豆島交通の代表取締役は、複数の取締役立ち会いのもと、申立人との面談で、商標権者との間の使用許諾の締結自体を否定しており(甲11)、提出された使用許諾証書の内容は虚偽があり使用許諾契約は存しない。
キ 以上のとおり、商標権者は、小豆島交通が申立人から使用許諾を得て、車両による輸送に使用してきた「キラリ光る小豆島」に係る文字商標について、平成31年4月になって、承諾なしに不当に出願し、かつ、虚偽の内容を伴う書面を添えて早期審査を申請したうえで、権利を取得したものである。加えて、商標権者は運輸業者ではなく、自己の使用事実は示されておらず、自己の業のために出願している訳ではない。
そうすると、商標権者は、「キラリ光る小豆島」が「車両による輸送」について商標登録がなされていないことを奇貨として、小豆島交通に使用許諾を迫る意図があったことも明白であるから、不正な目的をもって出願されたことは明らかである。
ク また、商標法第29条によれば、先行する著作権があれば、登録商標であっても、無断で使用することはできない。
「キラリ光る小豆島」については、申立人が著作権を有したデザインが小豆島交通によって使用されており、小豆島交通は申立人からの使用許諾契約のもとで観光バスやタクシーによる輸送に用いてきた(甲12)。商標権者が第三者に対して使用を許諾するには、自らが使用できるものでなければ、他人に許諾しても使わせることができないはずである。商標権者は、申立人の意向を無視して、商標を他人に使わせることができない立場にある。
こうした状況であるにもかかわらず、商標権者は、他人である小豆島交通が使用中の商標であるとわかったうえで、自身を出願人とする出願行為に及んでいる。そして、出願後に使用許諾したかのように振る舞っているが、こうした行動自体は、あたかも商標登録が存在することで、申立人とは関係なしに小豆島交通が使用できる状態となるかのように装うものであって、小豆島交通を誤導させるものにすぎない。
ケ 以上のとおりであるから、本件商標は、申立人と小豆島交通との著作権に基づく使用許諾関係に対して不当に干渉しようとするものにほかならないものであって、明らかに不正な目的でなされたものといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号について
ア 本号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあると解される(最高裁平成16年(行ヒ)第343号)。
そして、本号が「他人の」と規定していること、及び一定の人格的利益を保護するものであることからすると、本号にいう「他人」とは人格権を有する者(自然人、法人)であることを要すると解するのが自然である(権利能力なき社団が含まれることがある。)。
イ そして、申立人は、小豆島の土庄町及び小豆島町において、同人及び同人の妻が事業所の名称として商号登記している「キラリ光る小豆島」(引用標章)が本号にいう「他人の名称」に該当し、これと同一文字からなる本件商標は本号に該当する旨主張している。
しかしながら、商号「キラリ光る小豆島」は、小豆島の土庄町及び小豆島町を営業所として平成25年3月に登記されていることは認められるものの(甲2、甲3)、かかる登記は個人事業主が商号登記したものであって、当該商号が法人格を有するということはできず、また、他に「キラリ光る小豆島」が法人格を有する者の名称又は略称と認めるに足りる事情は見いだせないから、申立人のかかる主張は採用できない。
また、後述するとおり、引用標章「キラリ光る小豆島」は著名な商号(名称)と認めることもできない。
ウ したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するものといえない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 引用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など)によれば、商号「キラリ光る小豆島」が小豆島の土庄町及び小豆島町を営業所として、平成25年3月に登記されていること(甲2、甲3)、小豆島交通は引用商標2を表示したバスを平成25年3月頃から小豆島内・外で運行していること(甲13、甲27)、及び申立人や小豆島交通の役員の名刺、小豆島交通発行の小豆島観光マップに引用商標2が表示されていること(甲15、甲21?甲23、甲29)が認められることから、引用商標2は、小豆島において、ある程度知られていることがうかがえるものの、登記された営業所における営業実績、引用商標2が表示されたバスの台数、運行状況、乗客数など利用実績、及び名刺や小豆島観光マップの配布状況などは確認できず、さらに、申立人及び小豆島交通(以下「申立人等」という。)の主な営業地域は小豆島内であると推認できることからすれば、引用標章及び引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び同人の妻の営業所の商号として並びに申立人等の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そうすると、引用商標は、上記アのとおり、他人(申立人等)の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号所定の他の要件を判断するまでもなく、同号に該当しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第19号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

【別掲1】
引用商標2:一例 (色彩については、異議申立書参照。)



【別掲2】
引用商標2:一例(色彩については、異議申立書参照。)

異議決定日 2019-12-03 
出願番号 商願2019-46226(T2019-46226) 
審決分類 T 1 651・ 23- Y (W39)
T 1 651・ 222- Y (W39)
最終処分 維持  
前審関与審査官 守屋 友宏 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2019-06-07 
登録番号 商標登録第6150230号(T6150230) 
権利者 岡本 真澄
商標の称呼 キラリヒカルショードシマ、キラリヒカル 
代理人 横井 知理 
代理人 横井 健至 
代理人 横井 宏理 
代理人 安田 幹雄 
代理人 片桐 務 

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