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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W42
管理番号 1348841 
審判番号 取消2016-300722 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-10-14 
確定日 2019-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5621414号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5621414号商標の指定役務中,第42類「インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5621414号商標(以下「本件商標」という。)は,「ブロマガ」の片仮名と「BlogMaga」の欧文字を上下二段に書してなり,平成24年9月13日に登録出願,第42類「インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンピュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供,インターネットにおけるブログのためのサーバーの記憶領域の貸与,ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,ウェブログ上の電子掲示板用サーバの記憶領域の貸与及びこれに関する情報の提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供又はこれに関する情報の提供,インターネットホームページを閲覧するための電子計算機の貸与,インターネット上で利用者が交流するためのソーシャルネットワーキング用サーバコンピュータの記憶領域の貸与,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供,インターネット等の通信ネットワークにおいて利用可能な記憶装置の記憶領域の貸与」を指定役務として,同25年10月11日に設定登録され,その後,商標権の一部無効審判が請求された結果,同28年7月11日に上記指定役務中「ウェブログの運用管理のための電子計算機用プログラムの提供,オンラインによるブログ作成用コンピュータプログラムの提供,インターネット上の情報を閲覧するためのコンピュータプログラムの提供」についての登録を無効とする旨の審決の確定登録がされているものである。
そして,本件審判の請求の登録日は,平成28年10月31日である。

第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を審判請求書,弁駁書及び口頭審理陳述要領書において,その要旨を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定役務中,「インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークにおけるホームページの設計・作成又は保守に関する情報の提供,インターネット等の通信ネットワークにおける情報・サイト検索用の検索エンジンの提供,インターネット等の通信ネットワークを利用するためのコンピュータシステムの設計・作成又は保守に関するコンサルティング,インターネット等の通信ネットワークを利用するプログラムの設計・作成又は保守,コンピュータにおけるウィルスの検出・排除及び感染の防止・パスワードに基づくインターネット情報及びオンライン情報の盗用の防止並びにコンピュータにおけるハッカーの侵入の防止等の安全確保のためのコンビュータプログラムによる監視,インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」(以下「取消請求役務」という。)について,継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)被請求人の提出に係る証拠について
ア 乙第3号証について
乙第3号証は,被請求人によれば,ブログの検索を行えるウェブサイトとのことである。しかしながら,同乙号証をもって予告登録日前3年以内(以下「要証期間内」という。)における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)要証期間における証拠ではない
同乙号証のホームページの右下には,印刷日と推察される「2017/01/18」と日付の記載があるものの,該証拠が要証期間内に閲覧可能であったウェブページであるか否かは何ら立証されていない。よって,同乙号証は要証期間内における本件商標の使用の事実の証拠とはならない。
(イ)本件商標の使用の事実が確認できない
同乙号証中には,「FC2 ブロマガ」の文字が太い文字で顕著に記載されているほか,「ブログランキング」の記載がある。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(ウ)指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」であるところ,同乙号証においては被請求人が,自らが運営するウェブサイトを通じて配信するブログ記事の提供を行うに際して,ブログ記事の閲覧を希望する利用者に対して,それらの者の便宜のため,ウェブサイト内のブログ記事を検索するための機能を利用させているにすぎず,上記指定役務に係る「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」に使用している事実は確認できない。
以上のとおり,乙第3号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
イ 乙第4号証について
乙第4号証は,被請求人によれば,インターネットアーカイブサイトにおける,ブログの検索を行えるウェブサイトとのことである。しかしながら,同乙号証をもって要証期間内における本件商標の使用の事実が立証されたということはできない。
(ア)本件商標の使用の事実が確認できない
同乙号証中には,「FC2 ブロマガ」の文字が太い文字で顕著に記載されているほか,「ブログランキング」の記載がある。しかしながら,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(イ)指定役務についての使用の事実が確認できない
被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務は「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」であるところ,同乙号証においては被請求人が,自らが運営するウェブサイトを通じて配信するブログ記事の提供を行うに際して,ブログ記事の閲覧を希望する利用者に対して,それらの者の便宜のため,「ブログ記事の提供に関する情報の提供」という役務に付随して,ウェブサイト内のブログ記事を検索するための機能を利用させているにすぎず,上記指定役務に係る「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」に使用している事実は確認できない。
したがって,乙第4号証は,本件商標が本件指定役務について使用されていたことを証するものであるとはいえないので,同乙号証をもって,要証期間内に本件商標がその商標権者(被請求人),専用使用権者又は通常使用権者によって使用された事実が立証されたということはできない。
ウ 使用に係る「ブロマガ」の片仮名が,本件商標と社会通念上同一であるかについて
本件商標は,「ブロマガ」の片仮名を上段に,その下段に「BlogMaga」の欧文字を書した二段書きの構成よりなるものである。
これに対し,乙第2号証ないし乙第7号証には,「ブロマガ」の片仮名が表示されているものであり,該文字は,本件商標中の「ブロマガ」の片仮名部分と同じであるが,本件商標の下段に配された「BlogMaga」の欧文字部分の使用の事実が存在しないものである。よって,「ブロマガ」の片仮名のみの使用をもって,本件商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということはできない。
そして,本件商標の構成中の「ブロマガ」の片仮名は,特定の意味を理解させるとはいえない造語というべきものであって,これを欧文字で表す場合は,「blomaga」と表示するのが一般的といえるものである。
他方,構成中の「BlogMaga」の欧文字も,特定の意味を有しない造語といえるものであって,これを片仮名で表す場合は,「ブログマガ」と表示するのが一般的といえるものである。
そうとすれば,本件商標の「ブロマガ」の片仮名と,「BlogMaga」の欧文字とは,同一の称呼及び観念を生ずるものということができず,本件商標からは,その構成各文字に相応して「ブロマガ・ブログマガ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
これに対し,使用に係る「ブロマガ」の片仮名からは,「ブロマガ」の称呼を生じ,特定の観念が生ずるともいえないものである。
したがって,使用に係る「ブロマガ」の片仮名は,本件商標の「平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」ということができないので,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
被請求人が引用する知財高裁平成28年(行ケ)第10086号は,取消の対象とされた登録商標が取り消しを免れるためには,自他商品又は役務の出所表示機能を果たす態様で使用されることを要するか否かが争われた事案であり,商標法第50条第1項に規定される,「登録商標」に含まれるとされる,いわゆる「社会通念上同一の商標」の適用範囲を拡大解釈するものでないことは明らかであり,該判決を引用すること自体失当である。
エ 本件商標の使用に係る役務について
乙第3号証及び乙第4号証によれば,被請求人は,自身の運営するウェブサイトにおいて,ブログ記事を販売又はダウンロードを伴わない形式で提供し,記事を購入,閲覧することを希望する利用者のため,同ウェブサイトに検索機能を設け,利用者がウェブサイト内の目当てのブログ記事を探し出すための支援を行っているとみられるものであるが,それらは第9類の「電子出版物」や第41類の「電子出版物の提供」に該当するものであって,このような役務は,被請求人が本件商標を使用していると主張する指定役務「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」には該当しない。
被請求人の提出した答弁書によれば,「被請求人は,ブログ等の販売(有料での提供)を希望する者が作成したブログ等を,自社の管理するサーバーに記憶し,これを購読することを希望する者に販売するというサービスを行っている」とされる。そして,被請求人は,そのサービスの一環として「数多く存在するブログを一定の条件を入力することで検索できる機能を設けて」いると説明している。
しかしながら,各種ウェブサイトの運営者が,自らのウェブサイトを通じて公衆に閲覧可能にしている,数多く存在する各種情報(ブログ記事等)を(閲覧等を希望する利用者のため),一定条件(キーワード等)を入力することで検索できる機能を設けることは,例えば,ウェブサイトにおいて記事コンテンツや動画の販売・ダウンロードを伴わない提供を行う者・ウェブサイトにおいて各種商品の販売・小売の業務における便益の提供を行う者等が,それぞれ「記事コンテンツの販売・記事コンテンツの小売の業務における便益の提供,各種商品の販売・各種商品の小売の業務における便益の提供」の役務を行う際に付随して行われるものにすぎず,被請求人が「ブロマガ」商標を用いて行っている役務は,「ブログ記事の販売」や「ブログ記事のウェブサイトを通じたダウンロードを伴わない提供」に他ならない。
ところで,「検索エンジンの提供」が一般にどのような役務内容であると理解されるかについて,辞書やインターネット上の用語辞典をひもとけば,「インターネットの中から目的に応じた情報(主にウェブページ)を検索する機能。また,そのためのサーバーやサービス。サーチエンジン。検索サービス。検索サイト」(三省堂『大辞林』:甲3)「インターネットのwwwでは,数えきれないほどのページがあり,知りたい情報がどこにあるのかを発見することはむずかしい。そこで,キーワードから目的のページを検索する機能をもち,また,あらかじめ分類して体系的に整理したものを用意しているwwwのページを一般に検索エンジンといっている。代表的なものにYahoo!(ヤフー)やGoogle(グーグル)などがある。」(小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』:甲4),「キーワードを入力すると,関連するWebサイトを探し出して表示するシステムのこと。検索エンジンには,Webサイトの情報が膨大なデータベースに蓄えられており,ポータルサイトが提供するサービスのひとつになっている。検索エンジンは,大きく3つの種類に分かれる。(ア)サイトをプログラムによってデータベース化した『ロボット型検索エンジン』,(イ)サイトを人がカテゴリー別に分けてデータベース化した『ディレクトリー型検索エンジン』,(3)自前でデータベースを構築せずに,ほかの検索エンジンのデータベースを利用した『メタ型検索エンジン』である。例として,ロボット型ではGoogle,ディレクトリー型ではYahoo!が挙げられる。」(ASCII.jpデジタル用語辞典:甲5)のように記載されている。
すなわち,インターネット上に数多に存在するウェブサイトを一定の条件を入力等することにより検索を可能するサービスであるという一定の理解が示されている。
これに対して,インターネットを利用する各種コンテンツ提供・電子商取引サービスにおいては,ウェブサイト上に数多くの情報が存在することは間々あることであり,被請求人が主張するように,ウェブサイト内に存在する数多くの情報の中から,ウェブサイトの利用者が,目当ての情報にたどり着くためにウェブサイト上のプログラムの機能としての検索機能を利用させることがあるが,「検索エンジンの提供」の使用に該当するのであれば,インターネットを利用するほぼすべてのコンテンツ提供・電子商取引サービスが「検索エンジンの提供」を役務として提供することになるが,これは上記のような「検索エンジンの提供」の役務内容に関する一般的な理解に鑑みれば,コンテンツ提供・電子商取引サービスにおいて付随的に提供される検索機能の提供と,「検索エンジンの提供」は別個の役務として区別されるべきである。
(2)不使用についての正当な理由は存在しない。
被請求人は本件商標を使用していないことについて正当な理由があることは何ら主張立証していない。
3 口頭審理陳述要領書(平成29年9月8日付け)
(1)使用に係る「ブロマガ」の片仮名が,本件商標と社会通念上同一であるかについて
被請求人は,本件商標の「BlogMaga」の部分から生ずる称呼は「ブロマガ」であるとして,その理由を述べるところである。
ア 「g」を含む英単語の存在について
被請求人は,「HongKong」,「PingPong」,「Sign」,「Foreign」などの既成語において「g」が「グ」と発音されないことをもって,本件商標構成中の「BlogMaga」中の「g」が「グ」とは発音されないと主張するものと推察するが,「Blog」(ブログ)と「Maga」(マガ)を組み合わせたと思しき造語である「BlogMaga」と被請求人が列挙する既成語は全く関係のない文字構成に係るものであって,何ら事案を共通にするところがない。被請求人は,英単語で,英語における発音の法則によって「g」を発音しない単語を恣意的に列挙しそれらが存在することをもって「BlogMaga」の「g」が「グ」と発音されないというのは論理の飛躍である。「g」を「グ」と発音する英単語は枚挙にいとまがないが,たとえば「Dog(ドック)」,「Morning(モーニング)」,「Long(ロング)」,「Bag(バッグ)」など極めて平易な英単語においても「グ」は発音されることが一般的であるし,そもそも「Blog(ブログ)」という単語自体が「グ」を発音するのであり,これを省略する法則は存在しない。被請求人のサービスの需要者は一般消費者なのであるから,「g」から「グ」の発音を想起すること,「Blog」から「ブログ」という発音を想起することがむしろ通常である。
したがって,「g」を発音しないいくつかの英単語の存在が,「BlogMaga」中の「g」が「グ」と発音されず,「ブロマガ」と称呼されることの客観的根拠とはなり得ないことは詳細に検討するまでもなく明白である。
イ 被請求人の提供する役務が周知であるとの主張について
被請求人は,「ブロマガ」を使用した役務が周知であると述べるが,提出された証拠においても,依然として「BlogMaga」の使用例は一切見当たらないものである。よって,これらの証拠をもってしても,本件商標に接する需要者等が,片仮名で表した「ブロマガ」と,欧文字で表した「BlogMaga」が同一の商標であると理解・把握するものと推定することは極めて困難である。
なお,被請求人が「ブロマガ」を用いて行っている役務については,被請求人による当該役務のシェアや周知性は何ら客観的な証拠で立証されていないので念のため申し添える。
すなわち,役務内容を紹介するとされる他人のウェブサイト(乙5?乙8)は,いずれもサービス開始時とされる2009年1月20日の記事であり,そのようなウェブサイトの存在が僅かに4例確認できるのみである。また,書籍(乙9?乙13)についても,わずかな数が存在するにすぎず,しかも,「ブロマガ」の文字が数か所みられるとしても本件商標の使用状況を容易に理解できない,小さな表示にとまるものである。両者を合算しても,本件取消審判の要証期間内を含む約10年もの期間において,わずか10例しか存在しないことになる。また,これらウェブサイトのニュース記事を実際に見た者の数や書籍の発行部数は不明であるし,これらの証拠以外の例えば,新聞記事(五大紙を含む全国紙)・雑誌記事など,要証期間内又はそれ以前に「ブロマガ/BlogMaga」の文字からなる本件商標が被請求人の業務に係る商標として使用され,周知なものとなっている事情を証する証拠は一切提出されていない。
乙第14号証ないし乙第24号証にあっては,本件商標「ブロマガ/BlogMaga」はもちろんのこと,被請求人標章「ブロマガ」の記載は一切みられないし,「ブロマガ」を使用したサービスとの関連性も見当たらない。
よって,提出に係る証拠からは,本件商標「ブロマガ/BlogMaga」はもちろんのこと,被請求人標章「ブロマガ」が被請求人の役務との関係で周知であるという事実は存在しないし,その他,本件商標の構成中の「BlogMaga」の語が,「ブロマガ」と同一のものとして理解され,称呼・観念されるとすべき事情は何ら示されていない。
ウ 日本語における「略語」の文化の存在について
被請求人は,「エアーコンディショナー」,「パーソナルコンピュータ」等が夫々「エアコン」,「パソコン」等と略称される例があることをもって,本件商標構成中の「BlogMaga」の自然な称呼「ブログマガ」が「ブロマガ」と略称されると主張するものと推察するが,これらの例は,「Blog」(ブログ)と「Maga」(マガ)を組み合わせたと思しき造語である「ブログマガ(BlogMaga)」とは全く関係のない文字構成に係るものであって,本件とは関連性がない。また,一般論として日本語において略語が使用される場合があることと,「BlogMaga」が「ブロマガ」と呼称されるかは全く関連性がなく,被請求人の主張には論理の飛躍がある。これら事実をもって,「BlogMaga」の自然な称呼である「ブログマガ」が略称されて,「ブロマガ」と称呼されることの客観的根拠とはなり得ないことは,子細に検討するまでもなく明白である。
被請求人は「『BlogMaga』から生ずる称呼が,語呂の悪い『ブログマガ』ではなく,『ブロマガ』として認識されるようになった」と主張するが,被請求人の都合のよい独自説である。なお,念のためあえて付言すれば,かかる主張は被請求人自身が「Blogmaga」から「ブログマガ」の称呼が生じることを認めているに他ならない。また,乙第27号証ないし乙第29号証が,被請求人による本件商標の使用事実を立証するものでないことは明らかである。
エ 「BlogMaga」と「ブロマガ」が併記されている例
被請求人は,欧文字「BlogMaga」と片仮名「ブロマガ」が,他人のウェブサイト等において併記して使用されている例(乙30?乙32)を挙げ,その事実をもって,一般需要者にとっては「ブロマガ」と「BlogMaga」が社会通念上同一の商標であると認識されていると考えているようである。
しかしながら,インターネットユーザーである個人によるインターネット上の書き込み等と思しきものであるところ,被請求人の提供する役務との関連性は全く見られないところである。よって,被請求人とその提供する役務とは無関係の個人が,たまたま,欧文字「BlogMaga」と片仮名「ブロマガ」の双方を用いている例が僅かに3例あることをもって,「一般需要者にとっては『ブロマガ』と『BlogMaga』が社会通念上同一の商標であると認識している」という事実の存在など把握することはできない。
オ 上記アないしエを踏まえた被請求人の主張について
被請求人は,上記アないしエを踏まえ,片仮名「ブロマガ」の使用は本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると結論付けるが,前記したように,上記アないしエはいずれも理由がないから,本件商標の構成中の「BlogMaga」が「ブロマガ」と称呼されるような特別な事情は存在しないものである。
よって,本件商標の構成中に含まれる「BlogMaga」と被請求人の使用する商標「ブロマガ」は,本件商標の「平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」ということができないので,本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
以上より,本件商標が商標権者,専用使用権者,通常使用権者によって使用された事実は依然として立証されない。
(2)使用行為(商標法第2条第3項各号)について
上記で主張したように,本件商標又はそれと社会通念上同一の商標の使用の事実は確認できないから,被請求人の主張が,商標法第2条第3項各号のいずれの使用に該当するかを問うまでもないが,念のため反論すれば,被請求人の使用態様として提出された証拠はインターネット上のものに限られることからすれば,同法第2条第3項第7号はともかくとして,同第3号及び同第4号の使用の事実は何ら立証されていない。
(3)使用役務と指定役務の同一性について
被請求人は,同人が本件商標を使用していると主張する役務「検索エンジンの提供」について,請求人が提出した甲第3号証ないし甲第5号証に記載された「検索エンジンの提供」の語句の意味合いとして「インターネットの中から目的に応じた情報(主にウェブページ)を検索する機能」(甲3),「キーワードを入力すると,関連するウェブサイトを探し出して表示するシステムのこと」(甲5)との記載と,同人が提供していると主張する「インターネットのサイト上にキーワードを入力することで,サーバーの記憶領域に記憶されたブログデータの内から,それに関連するものを抽出することができる機能」が合致していると主張するが,被請求人は,甲第3号証ないし甲第5号証に記載された,辞書やインターネット上の用語辞典に記載された語句の意味合いを正しく理解していない。甲第4号証によれば,「インターネットのwwwでは,数えきれないほどのページがあり,知りたい情報がどこにあるのかを発見することはむずかしい。そこで,キーワードから目的のページを検索する機能をもち,また,あらかじめ分類して体系的に整理したものを用意しているwwwのページを一般に検索エンジンといっている。代表的なものにYahoo!(ヤフー)やGoogle(グーグル)などがある。」と記載されている。
すなわち,「検索エンジン」とは全世界的なコンピュータネットワークシステムともいうべき「インターネット」という極めて無限かつ膨大な情報量のなかで,検索キーワードに関連した「ウェブサイト」等を探し出すための仕組みを示すものであり,被請求人を含む単なる一企業が運営管理するサーバーコンピュータに蓄積された情報というごく限られた情報の中で,検索キーワードに関連した情報等を探し出すための仕組みとは,目的・規模・情報処理能力において何ら対比するに値しないものである。
つまり,「単なる一企業が運営管理するサーバーコンピュータに蓄積された情報というごく限られた情報の中で,検索キーワードに関連した情報等を探し出すための仕組み」というのは,個人が利用しているコンピュータ等の端末装置にプリインストールされているオペレーションソフトウェア「例えば,マイクロソフトコーポレイションのOS「ウィンドウズ」)の一機能である,端末の記憶領域に記憶されたデータの中から,検索キーワードに関連した情報等を探し出すための仕組み(例えば「ウィンドウズ」の一機能である「エクスプローラー」)と大差ないものである。このようなものは,コンピュータ端末やサーバーコンピュータ上の一ソフトウェア機能にすぎず,このようなソフトウェア機能が「検索エンジン」であると理解することなど到底できない。インターネットを利用する各種コンテンツ提供・電子商取引サービスにおいては,ウェブサイト上に数多くの情報が存在することは間々あることであり,被請求人が主張するような,「ウェブサイト内に存在する数多くの情報の中から,ウェブサイトの利用者が,目当ての情報に辿り着くために,ウェブサイト上のプログラムの機能としての検索機能を利用させること」というのは,「検索エンジンの提供」は別個の役務として区別されるべきである。被請求人が説明するように,同人の提供するサービスの内容が「需要者である『ブログ記事等の販売を希望する者』が作成したブログ記事等をサーバーに記憶して,これを購読することを希望する者に販売するサービス」であるならば,『ブログ記事等を販売することを希望する者』は,「被請求人のサーバーに保管されたデータを検索し,目的の情報を得る」ことを目的として被請求人のサービスを利用するのではなく,「(自らが作成した)ブログ記事のデータを被請求人のウェブサイトを通じてインターネットユーザーの閲覧に供する(ブログ記事の販売)」ことを目的として,被請求人の役務を利用していることが,被請求人の説明から無理なく理解できるところである。
してみると,請求人が提出した平成29年2月23日付け弁駁書において甲第3号証ないし甲第5号証を用いて説明した「検索エンジンの提供」の役務内容に関する一般的な理解,並びに,被請求人が説明する被請求人によるサービス提供の流れに鑑みれば,コンテンツ提供・電子商取引サービスにおいて付随的に提供される検索機能の提供と,「検索エンジンの提供」は別個の役務として区別されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第34号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標を使用している役務
本件商標の商標権者は,本件商標を指定役務中の「インターネットにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」に使用している。
(2)被請求人が提供するサービスの説明
被請求人は,ブログ等の販売(有料での提供)を希望する者が作成したブログ等を,自社の管理するサーバーに記憶し,これを購読することを希望する者に販売するというサービスを行っている。このようなサービスの一環として,数多く存在するブログを一定の条件を入力することで検索できる機能を設けており,これが本件商標の指定役務中の「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」にあたることは明らかである。
(3)使用態様について
提出する証拠には,前述のようなサービスを行うに際し,本件商標が指定役務「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」に使用されている事実が示されている。すなわち,各提出証拠のうち,乙第3号証及び乙第4号証には,片仮名「ブロマガ」の文字が複数表示されている。ここで,本件商標は,片仮名「ブロマガ」及び欧文字「BlogMaga」を二段に横書きしてなるものであり,そのいずれも「ブロマガ」の称呼を生じる一方,特定の観念を生じないものである。
したがって,本願商標の構成中の「片仮名」の使用であっても,本件商標との関係では,社会通念上同一の商標の使用と認められる。
なお,商標法第50条の主な趣旨は,登録された商標には,その使用の有無にかかわらず,排他独占的な権利が発生することから,長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは,当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め,国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので,一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものであり,同法第50条所定の「使用」は,当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用(商標法第2条第3項各号)されていれば足り,出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきであるから,商標権者の使用について,出所表示機能を果たす態様の使用か否かについて検討する必要はない(知財高裁平成28年(行ケ)10086号)。
よって,「ブログ検索サービスの提供」を行っていることが示されている,乙第3号証及び乙第4号証における片仮名「ブロマガ」の使用は,本件商標の「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」についての使用であるといえる。
(4)本件商標の使用者
本件商標は,商標権者である被請求人がそのサービスを使用する際に使用をしている。
(5)商標の使用の事実及び期間等
乙第3号証は,ブログの検索を行うことができるウェブサイト上の検索ページの写しである。当該ページ上には「ブロマガ」の語が複数使用されている事実が記載されている。
次に,乙第4号証は,ウェブサイト上の過去の記載を確認することができるサービス「WAYBACKMACHINE」を使用し,乙第3号証と同様の頁について,一例として,平成28年4月30日当時の記載を確認したものである。乙第4号証(審決注:乙第3号証の誤り。)と同様,「ブロマガ」の語が使用されていることが確認できる。これらの使用例を見れば,ブログ等を有料で提供することを希望する者が作成した各種記事等を「キーワード」,「価格」,「ジャンル」等の様々な項目から検索することができる検索エンジンを提供していること,それらのウェブサイト上において「ブロマガ」の語が使用されていることが明らかである。
以上より,商標権者である被請求人が,本件審判請求の要証期間内に,本件商標を,請求にかかる指定役務中,少なくとも「インターネットサイトにおけるブログ検索用の検索エンジンの提供」について使用している事実は明らかである。
2 口頭審理陳述要領書(平成29年8月14日付け)
(1)社会通念上同一の商標の使用か否かについて
ア 合議体の見解・請求人の主張について
請求人は,本件商標構成中の「ブロマガ」と「BlogMaga」は,商標法第50条に規定する場合にあたらず,同一の称呼及び観念を生じないために,片仮名「ブロマガ」の使用は,本件商標の社会通念上同一の商標の使用であるとはいえない旨を述べているが,被請求人は使用に係る「ブロマガ」と本件商標とが社会通念上同一の商標であると考えている。
まず,請求人のあげている社会通念上同一の範囲の定義は,商標法第50条第1項の括弧書きの事を指すと思われるが,当該括弧書きの趣旨については,「工業所有権法逐条解説」によれば,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」,「外観において同視される図形からなる商標」,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標」等の点は,あくまでも例示にすぎず,社会通念上同一の商標であるといえるか否かは,個別具体的に取引社会の通念に照らして判断されるべきである。つまり,その趣旨に照らして考えるのであれば,本願商標に接する需要者が,実際の取引において「BlogMaga」の文字列を,「ブロマガ」と認識している実情が存在すれば,仮に本件商標の構成中の片仮名のみの使用であっても,本願商標と社会通念上同一の商標の使用であると認められる。
本件商標の構成中の欧文字部分は,「BlogMaga」からなるものであり,審判官合議体及び請求人は,ここから「ブログマガ」,という称呼が生ずるのが当然であるかのように認定し,それをもとに,片仮名「ブロマガ」の使用が,本件商標と社会通念上同一の商標の使用にはあたらない旨を述べている。
しかし,被請求人は実際の取引の実情をもふまえて考えれば,ここから生ずる称呼は「ブロマガ」であると考えているため,まずは「BlogMaga」の文字列からいかなる称呼を生ずるものであるのか検討すべきであると考える。
第一に,我が国における欧文字の一般的な読み方として,「g」が必ず「グ」と発音されると断定できるものではない,例えば「HongKong」を「ホンコン」,「PingPong」を「ピンポン」,「Sign」を「サイン」,「Foreign」を「フォーリン」と読むがごとくである。このように「g」を「グ」と読まない場合もあることをふまえれば,「BlogMaga」の文字列から,いかなる称呼を生ずるかは,実際の取引において,需要者がどのような理解をしているのか,取引の実情をふまえて個別具体的に判断する必要があると考えられるところである。
この点,仮に,以前は「BlogMaga」から生ずる称呼が「ブログマガ」であったとしても,少なくとも本件商標の使用の有無を立証すべき要証期間内において当該文字列から生ずる称呼は,「ブロマガ」であると考えられる。なぜなら,被請求人の提供するサービスの名称として使用されているサービスの名称「ブロマガ」が,その需要者にとって周知であると考えられるためである。
イ 被請求人の提供するサービスの周知性について
被請求人は,平成21年1月21日にブログを通じて有料コンテンツの販売・購入ができるサービスを開始しており,そのサービスの名称として用いられたのが「ブロマガ」である。サービスの開始の事実は,当時の各種ニュース記事からも明らかである(乙5?乙8)。当該「ブロマガ」の語は,一般の画面上に表示されるだけでなく,ブログの操作画面等にも表示されるようになり,当該サービスを紹介する書籍も多数発行されている(乙9?乙13)。
ここで,被請求人の提供するFC2は,我が国においても高いシェアを有する,著名なブログサービスである。被請求人は,1999年7月にホスティングサービスを提供する会社として設立され,2001年2月には,ホームページサービスを開始し,2004年10月には,FC2ブログサービスを開始しており,日本国内でブログサービスの先駆者的な立場にある。その後,2006年1月には,ブログのランキングサービスや,2008年5月には英語対応し,2008年7月には繁体字,2008年8月には簡体字,2009年1月には,ハングル,タイ語,2009年2月にはスペイン語,ドイツ語,2009年4月にはロシア語,2009年5月にはフランス語,2013年2月にはベトナム語に対応するなど,世界の人々に向けてブログサービスを提供してきている(乙14)。
FC2ブログのユーザーは,ユーザー数データによれば,既に2012年12月の時点で,500万人弱(490万621人)である(乙15)。また,FC2ブログは,インターネット視聴率の測定及びデジタル市場分析などを業とするコムスコア・ジャパン株式会社のリリースした,「SNS大流星時代を迎えても,日本はまだまだ『ブログ大国』!」という,日本のブログ利用に関するレポートによれば,2011年6月の1ヶ月間に4,670万人以上のブログ訪問者数を記録し,日本国内第1位となっていたことが報道されている(乙16,乙17)。
さらに,2011年度の日本社会情報学会第26回全国大会で発表された「テキスト系CGM利用時の不安に関する自由記述を中心とした調査結果について」という論文や(乙18),マーケティングリサーチ事業を行う株式会社バルクによる,「コミケ(コミックマーケット)に関する調査」とする調査等でも(乙19),高い利用率が示されているように,FC2ブログは既にブログの分野において著名であり,最大手の1つである。
そして,ブログのユーザーが利用する管理画面には,常に「ブロマガ」の紹介がなされている。つまり,これだけの多数のユーザーに対して,随時,「ブロマガ」についての周知の措置がとられていたのである。
このように,周知の措置がとられていたことは,FC2ブログに関して書かれた前述の書籍(乙9?乙13)に掲載された記事や記事中の表示画面に「ブロマガ」の文言が見られることからも明らかである。
さらに,「ブロマガ」は,請求人の提供するブログの有料配信サービスとして,インターネット上で大きく取り上げられている。
乙第5号証は,ウェブメディア「インターネットコム」において,「ブロマガ」が取り上げられた2009年1月20日付けの記事であるが,当該メディアは,月間ページビューが約150万の著名なサイトである(乙20)。
乙第6号証は,ウェブメディア「MarkeZine」で「ブロマガ」が取り上げられた2009年1月20日付けの記事であるが,当該メディアも,月間ページビューが約100万の著名なサイトである(乙21)。
乙第7号証は,ウェブメディア「ZDNet Japan」で「ブロマガ」が取り上げられた2009年1月20日付けの記事であり,当該メディアは朝日インタラクティブ株式会社が運営する,年間ページビューが約600万の著名なサイトである(乙22)。また,同社が運営する「CNET Japan」でも2009年1月20日付けの記事で「ブロマガ」が紹介されているが(乙8),同サイトの年間ページビューは1,300万である(乙23)。
乙第24号証は,「ITmedia NEWS」において,ホリエモン(堀江貴文氏)のFC2ブロマガ等が紹介されている2010年11月30日付けの記事である。「ITmedia」は,ITメディアの様々なコンテンツを網羅する著名なIT総合情報サイトであり,1ヶ月のページビューは300万を超える。また,前記記事が掲載されている「ITmedia NEWS」についても,1か月のページビューは100万を超えている(乙25)。
以上より,控えめに推測しても,数百万の閲覧者が「ブロマガ」をFC2の提供するブログの有料配信サービスとして目にしているはずである。このように数百万を超える閲覧者に示されること自体から判断しても,単なる閲覧者に比して,より範囲が限定される請求人のサービスの需要者,すなわち,自らブログを開設して記事を発信しようとしている者にとって,「ブロマガ」が広く知られていたことは明らかである。
したがって,遅くとも2012年の時点では,「ブロマガ」は,請求人が提供するサービスに係る標章として取引者及び需要者に広く認識されていた。そしてその状況は現在においても変わりはない。
ウ 「ブロマガ」が本件商標と社会通念上同一の商標であること
以上のように,被請求人が提供するサービスが広く知られていたことを踏まえて考えれば,仮に本件商標のように,「ブロマガ」と「BlogMaga」が併記されていたとしても,その知名度が故に,その欧文字から生ずる称呼は「ブロマガ」であるとして違和感なく受け入れられていたと考えられる。
この点については,以下のような日本語におけるいわゆる省略の文化も大きく影響を与えていると考えられる。我が国においては,語呂の悪い語,冗長な語等を略して使用するという事が広く行われており,言語の使用上の特徴の一つとして挙げられている。一例をあげれば,「エアーコンディショナー」を「エアコン」,「パーソナルコンピュータ」を「パソコン」,「ドラゴンクエスト」を「ドラクエ」,「キムラタクヤ」を「キムタク」等であるが,同様の例は枚挙に暇がない。
また,このような,いわゆる略語における使用例は,4音で構成されるものが圧倒的に多く,さらに複数の語が結合した結合語において,結合する各語の前半部分を2語ずつ抽出した態様での使用例が非常に多い。例えば,上記「エアコン」が「エアー」,「コンディショナー」の前半2語「エア」「コン」を結合したものであり,「ドラクエ」が「ドラゴン」,「クエスト」の前半2語「ドラ」「クエ」を結合した結合語として使用されているようである。
上記のような点は,被請求人の独断による見解ではなく,各種書籍やウェブサイトにおいても,例えば以下のように記されている。
乙第26号証は,言語学者の窪園晴夫氏による書籍「新語はこうして作られる」の一部の写しである,その中において,複合語が短縮される際の類型が記されており,二語が結合した複合語においては,それぞれの語の語頭から,ニモーラ(二拍)ずつを取るパターンが基本的なものである,「ニモーラ(二拍)+ニモーラ(二拍)」という音韻構造が日本語の複合語短縮において非常に安定したものである等とされている。
その他,株式会社日本ネーミング&リサーチのウェブサイト,他,各種ウェブサイトにおいて,「日本人が略語を好むこと」,「結合語について,二つの言葉のそれぞれ前半部分をとった4文字読みが多いこと」,「略語には4音構成のものが多いこと」等に触れた記述は多数存在しているところである(乙27?乙29)。
以上の点を踏まえれば,片仮名「ブロマガ」に対して,欧文字表記が「BlogMaga」であったとしても,そのサービス及びサービスの名称の周知性も相まって,少なくともその需要者にとっては,「BlogMaga」から生ずる称呼が,語呂の悪い「ブログマガ」ではなく,「ブロマガ」として認識されるようになった。つまり,需要者にとっては,「ブロマガ」と「BlogMaga」が社会通念上同一の商標であると認識されていたと考えるのが自然である。この点は実際の使用において,「BlogMaga」が「ブロマガ」として表記されている点からみても明らかである(乙37?乙39)。
エ まとめ
上記のとおりの現実の取引の実情をふまえて考えるのであれば,片仮名「ブロマガ」の使用は,本件商標と社会通念上同一の商標の使用といって差し支えがない。
(2)商標法第2条第3項各号の該当性について
被請求人は,本件商標と社会通念上同一の商標である「ブロマガ」を,指定役務「インターネットサイトにおけるブログの検索エンジンの提供」に係るサービスを行うに際し,インターネットサイト上に表示している。これは「役務の提供を受ける者の利用に供するもの」である,「インターネットサイトにおけるブログの検索エンジンの提供に係るウェブサイト」に標章を付すものであるから,商標法第2条第3項第3号に該当し,これを通じてサービスを提供する行為にあたるために,同法第2条第3項第4号に該当する。
また,「インターネットサイトにおけるブログの検索エンジンの提供」は,ウェブサイト上に表示される映像面を介して提供されるサービスであるために,「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供にあたり,その映像面に標章を表示して役務を提供する行為」,すなわち,商標法第2条第3項第7号に該当する。
(3)その他請求人の主張について
ア 要証期間について
請求人は,乙第1号証ないし乙第3号証について,要証期間における証拠ではない旨を主張している。この点,乙第1号証及び乙第2号証は本件商標の本件商標の書誌事項及び現在有効に存続していることを示すために提出したものであるので,商標の使用の有無とは本来的に無関係のものである。
一方,乙第3号証については,乙第4号証との関係で,本件商標の使用の事実を示す証拠の一つとなっている。すなわち,被請求人は乙第3号証を答弁書作成時点でのウェブサイトの状態,乙第4号証を当該ページの要証期間における状態を表すものとして提出しており,これにより,本件商標が継続して使用されてきたことを示すものであって,これらが一体となって,要証期間における本件商標の使用状態を表すものとなっている。乙第3号証のみを取り上げ,要証期間における証拠ではないとする請求人の主張が失当であることは明らかである。
イ 本件商標の使用に係る役務について
本件商標の使用に係る役務について触れるまえに,念のため,被請求人が提供するサービスの流れについて説明する。被請求人の行うサービスでは,ブログ記事等をインターネット上において販売することを希望する者の記事等を,サーバーの記憶領域に格納する。一方でこれを購入することを希望する者は,検索機能を通じて自己の欲する情報を見つけ,購入を実行すると,これをサーバーの記憶領域から呼び出し,購入者のパソコン等の画面上に表示するというサービスを行っており,この過程において,購入者の購入金額の一部をブログ等を販売する者の「システム利用手数料」として販売者から受領し,その残額は販売者へ支払っている。このような一連の流れの中においては,「ブログ記事等の販売を希望する者」と「ブログ記事等の購入を希望する者」の両者がサービスの提供を受ける需要者として想定されるところである。
請求人は,被請求人が提供しているサービスは,「インターネットサイトにおけるブログ検索用エンジンの提供」にはあたらない旨主張している。その理由を要約すれば,被請求人が提供する「インターネットサイトにおけるブログ検索用エンジンの提供」のサービスは,商標の使用の有無を判断するうえでの,指定役務としての「インターネットサイトにおけるブログ検索用エンジンの提供」には該当せず,あくまで付随的なサービスにとどまるものというものである。
また,請求人は甲第3号証ないし甲第5号証を提出しているが,これらは「検索エンジンの提供」の語句の意味合いを明確にすることを目的としたものであると考えられるところである。そこで,これらの各証拠を見るに,「検索エンジン」という語句の意味として,「インターネットの中から目的に応じた情報(主にウェブページ)を検索する機能」(甲3),「キーワードを入力すると,関連するウェブサイトを探し出して表示するシステムのこと」(甲5)等と記されており,「インターネットサイト上にキーワードを入力する事で,サーバーの記憶領域に記憶されたブログデータの内から,それに関連するものを抽出することができる機能」は,「検索エンジン」の定義に合致する。なお,その証拠中には,「Yahoo!」や「Google」等が挙げられているが,これらは検索エンジンの一例として挙げられているにすぎず,上記のような語義から見れば,被請求人の提供する機能が「検索エンジン」から除外されるものではないことは明らかである。また,被請求人は上記のような機能を提供しているのであるから,これが「インターネットサイトにおけるブログ検索エンジンの提供」にあたることも同様である。
さらに,請求人は,被請求人が提供する上記のようなサービスが「付随的」なものである旨主張している。この点について,請求人は以下のように述べている。
「・・・インターネットを利用するほぼ全てのコンテンツ提供・電子商取引サービスが『検索エンジンの提供』を役務として提供することになるが,これは上記のような『検索エンジンの提供』の役務に対する一般的な理解に鑑みれば,コンテンツ提供・電子商取引サービスにおいて付随的に提供される検索機能の提供と,『検索エンジンの提供』は別個の役務として区別されるべきである。」 この点,インターネットを利用するほぼすべてのコンテンツ提供・電子商取引サービスが「検索エンジンの提供」を役務として提供することになるか否かと,被請求人が提供する役務が「検索エンジンの提供」にあたるのか否かは直接の関係はない。指定役務に該当するか否かは,サービスを提供する者の,そのサービスの内容を踏まえたうえで,個別具体的に判断されるべきものである。
そこで,被請求人が提供するサービスの内容を踏まえて検討するに,そのサービスの流れは,前述のとおりであり,需要者である「ブログ記事等の販売を希望する者」が作成したブログ記事等をサーバーに記憶して,これを購読することを希望する者に販売するサービスである。この際,販売すべきブログ等の記事の内容や種類をもとに,これを的確に抽出することができるようにするための機能の提供が,需要者である「ブログ等を販売する者」にとっても,「これら購入する者」にとっても非常に重要になってくる。このようなサービスは被請求人の提供する複合的なサービスの内の一つであって,単なる付随的な役務とはいえない。
特にサービスの提供の内容や提供の形態において日々進歩を遂げるウェブ関連サービスにおいては,複合的な役務が合わさることで一つの役務として提供されている事も多く,これを明確に主たる役務,従たる役務として切り分けることは非常に困難であって,それぞれが複合的に提供される役務であると理解するのが自然である。
本件についても,ブログ等の販売を希望する者の作成したブログ等をサーバーの記憶領域に記憶するというサービスが提供される一方で,その格納したデータを適切に抽出することを可能にすることの重要性を鑑みれば,「インターネットサイトにおけるブログ検索エンジンの提供」が明らかに付随的な役務にすぎないとはいえない。
以上の点を踏まえれば,被請求人が提供するサービスが,指定役務中の「インターネットサイトにおけるブログ検索エンジンの提供」にはあたらないとする請求人の主張は失当である。
3 上申書(平成29年10月13日付け)
(1)上申の理由
乙第4号証,乙第15号証,乙第30号証ないし乙第32号証について,以下のとおり各証拠について補足説明を行うとともに,証拠書類を提出する。
(2)上申の内容
乙第4号証は,代理人弁理士三井直人が,ウェブサイトの過去の表示の状態を確認することができるインターネットアーカイブサイト「Wayback Machine」にアクセスし,その結果を出力したものであるため,その旨の陳述書を提出する。
なお,陳述書の原本については,上申書と同日付けで提出の「取消2016-300709」において,乙第41号証として提出するため,その陳述を援用し,本件については,その写しを乙第33号証として提出する。
また,平成29年8月14日付けで提出の証拠説明書におけるこれら各号証の作成者については,「被請求人代理人弁理士三井直人」と訂正する。
乙第15号証は,FC2の担当者より提供を受けたブログ閲覧者データである。
乙証第30号証ないし乙第32号証については,復代理人弁護士壇俊光が当該ページにアクセスし,その内容を出力したものであるため,その旨の陳述書を提出する。なお,陳述書の原本については,上申書と同日付けで提出の「取消2016-300709」において,乙第42号証として提出するため,その陳述を援用し,本件については,その写しを乙第34号証として提出する。
また,前記証拠説明書におけるこれら各号証の作成者については,「被請求人復代理人弁護士壇俊光」と訂正する。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及びその提出した証拠によれば,以下のとおりである。
(1)乙第3号証について
乙第3号証は,被請求人のウェブサイトの「ブロマガランキング」であるところ,その左上部に「ブロマガランキング」の記載,その下に「FC2ブロマガ」の記載,その下の中央部に「ブロマガランキング」,また,その下に映画,スポーツ,政治・経済等のコンテンツが,1位から20位まで表題とその説明書きが記載されている。
また,ランキングの4位ないし7位の右側に,「ブロマガ検索」の項において,「月刊ブロマガ」及び「単体ブロマガ」の文字の表示,その下にそれぞれ,上から順に「キーワード」,「ジャンル」,「価格」及び「表示順」の文字の表示があり,その一番下に「検索」のボタンが表示されている。
さらに,右下部に「2017/01/18」の記載がある。
(2)乙第4号証について
乙第4号証は,被請求人のウェブサイトの「ブロマガランキング」であるところ,その左上部に「ブロマガランキング」の記載,その下に「WaybackMachine」の記載,さらにその下に「FC2ブロマガ」の記載,右上部に「4/30/2016」の記載,その下の中央部に「ブロマガランキング」,また,その下に映画,スポーツ,政治・経済等のコンテンツが,1位から20位まで表題とその説明書きが記載されている。
また,ランキングの4位ないし7位の右側に,「ブロマガ検索」の項において,「月刊ブロマガ」及び「単体ブロマガ」の文字の表示,その下にそれぞれ,上から順に「キーワード」,「ジャンル」,「価格」及び「表示順」の文字の表示があり,その一番下に「検索」のボタンが表示されている。
(3)乙第5号証ないし乙第8号証について
乙第5号証は,「japan.internet.com」のウェブサイトであるところ,2009年1月20日に「FCブログ,記事を月額購読制にできる課金記事『ブロマガ』を開始」の見出しの下,「FC2は,2009年1月20日,同社が運営する無料Blogサービス『FC2ブログ』にて,ユーザーがBlog記事を月額購読制にできる,課金記事『ブロマガ』を開始した。」の記載があり,同様の記事が,同日のウェブサイト「MarkeZine」(乙6),「ZDNet Japan」(乙7)及び「CNET Japan」(乙8)にも記載されている。
(4)乙第11号証及び乙第13号証について
ア 乙第11号証は,書籍の「はじめてのFC2ブログ」であるところ,その226頁には,「SECTION/71/ブログの記事を有料化するには」の見出しの下,「ブロマガとは」の項に,「ブログの記事に課金設定をしておくことで,月額購読ポイントを支払った読者のみがその記事を閲覧できるようにする機能です。」の記載,227頁には,「月額の設定」の項に,「ブロマガを利用するのに,必ず必要な設定が月額の設定です。」の記載,228頁には,「ブロマガは記事単位」の項に,「ブロマガは記事単位で設定できます。」の記載,229頁には,「ブロマガの売上を確認する」の項に,「ブロマガの売上は,ブログ管理ページで『ホーム』の[ブロマガ(課金機能)の管理]をクリックすると確認できます。」の記載がある。
そして,奥付には,「発行日2010年3月25日」と記載されている。
イ 乙第13号証は,書籍の「はじめてのFC2ブログ/最新かんたんブログ作成入門」であるところ,その222頁には,「SECTION/70/ブログの記事を有料化するには」の見出しの下,「ブロマガとは」の項に,「ブログの記事に課金設定をしておくことで,読者が雑誌を購入するようにブログの有料記事を購読できる仕組みのことです。」の記載,223頁には,「ブロマガの販売方式」の項に,「ブロマガの販売方式には,『有料ブログモード』と『バックナンバーモード』『単独販売』の3種類があります。」の記載,224頁には,「ブロマガは記事単位で設定できる」の項に,「ブロマガは記事単位で設定できます。」の記載,225頁には,「ブロマガの売上を確認する」の項に,「ブロマガの売上は,ブログ管理ページで『ホーム』の[ブロマガ(課金機能)の管理]をクリックすると確認できます。」の記載がある。
そして,奥付には,「発行日2012年3月10日」と記載されている。
(5)被請求人が提出した他の証拠について
ア 乙第9号証ないし乙第25号証は,書籍やウェブサイトの情報等であるところ,これらは,「ブロマガ」がFC2の提供するブログの有料配信サービスとして,広く知られたことを証明する証拠として提出されているものであるが,いずれの証拠においても,本件商標の取消請求役務についての使用は見いだせない。
イ 乙第26号証ないし乙第29号証は,略称について説明した書籍やインターネット記事情報であるところ,これらは,いずれも本件商標の取消請求役務についての使用は見いだせない。
ウ 乙第30号証ないし乙第32号証は,インターネット記事情報であるところ,これらに,ウェブサイト上での「ブロマガ」及び「BlogMaga」の文字の記載があるとしても,その使用者及び使用役務も不明であり,いずれも本件商標の取消請求役務についての使用は見いだせない。
2 上記1からすれば,次のとおり判断できる。
(1)使用商標
被請求人のウェブサイトである乙第3号証及び乙第4号証の「ブロマガランキング」には,「ブロマガ検索」の文字が見出しとして表示されており,「検索」の文字は,「文書やデータの中から,必要な事項をさがし出すこと(株式会社岩波書店[広辞苑第六版])等を意味する語であり,自他役務の識別標識としての機能を果たさないものであるから,「ブロマガ」(以下「使用商標」という。)の文字部分が,自他役務の識別標識としての機能を果たし得る商標として使用されているものと認められる。
(2)使用商標の使用に係る役務について
被請求人のウェブサイトである乙第3号証及び乙第4号証の「ブロマガランキング」には,「ブロマガ検索」として,「キーワード」,「ジャンル」,「価格」及び「表示順」の入力若しくは指定する枠が設けられており,ブログ記事の中から入力した条件にあったブログを検索できる機能を提供していると認めることができるが,これは,被請求人が運営するウェブサイトにおいてブログ記事の提供を行うに際し,閲覧者の便宜のためにブログ記事を検索する機能を提供しているにすぎず,これはブログ記事を提供するための付随的な役務であって,市場において,独立して商取引の対象となるものとはいえず,第42類に属する「インターネット検索エンジの提供」の役務にも該当しない。
したがって,被請求人は,「インターネットサイトにおけるブログ検索用検索エンジンの提供」の役務を提供しているとは認めることができない。
その他,被請求人が提出した証拠においては,被請求人が,取消請求役務を行っている事実は見いだせない。
(3)使用商標が本件商標と社会通念上同一であるかについて
ア 商標法第50条に規定する商標登録の取消審判における「登録商標」には,いわゆる「社会通念上同一の商標」を含むものであり,「その社会通念上同一の商標」と認められるものは,例えば,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標」などである(商標法第50条第1項)。
イ そこで,本件商標と使用商標を比較してみるに,乙第3号証及び乙第4号証には,本件商標中の上段の「ブロマガ」の片仮名と同一の文字からなる「ブロマガ」(使用商標)の文字が表示されているが,本件商標中にある下段の「BlogMaga」の欧文字部分が存在しないものであるから,「ブロマガ」の片仮名のみでは,本件商標の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということができない。
上記のとおり,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば,使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標とは認めることができず,本件商標の取消請求役務について使用をされたものとはいえない。
したがって,被請求人が,要証期間内に取消請求役務について,本件商標と社会通念上同一の商標を使用していた事実を認めることができない。
その他,被請求人が提出した乙各号証において,本件商標を要証期間内に取消請求役務について使用をしたことを認め得る証左は見いだせない。
3 被請求人の主張について
(1)被請求人は,「・・・数百万の閲覧者が『ブロマガ』をFC2の提供するブログの有料配信サービスとして目にしているはずである。このように数百万を超える閲覧者に示されること自体から判断しても,単なる閲覧者に比して,より範囲が限定される請求人のサービスの需要者,すなわち,自らブログを開設して記事を発信しようとしている者にとって,『ブロマガ』が広く知られていたことは明らかである。・・・遅くとも2012年の時点では,『ブロマガ』は,請求人が提供するサービスに係る標章として取引者及び需要者に広く認識されていた。そしてその状況は現在においても変わりはない。」旨を主張している。
しかしながら,商標権者が,「ブロマガ」の片仮名を「ブログの有料配信サービス」等で使用しているとしても,提出に係る証拠からは,「ブロマガ」の片仮名が,商標権者が提供する「ブログ記事配信サービス」を指称するものとして理解され,観念されるとすべき証拠は何ら示されていないものである。
また,提出に係る証拠からは,「ブロマガ」の片仮名が,商標権者の業務に係る「インターネットサイトにおけるブログ検索用検索エンジンの提供」を表すものとして使用される事実は,一切認められず,また,該文字が周知,著名であるとする証拠,例えば,売上高,提供した役務の実績,並びに該文字の広告・宣伝した時期,回数及びその方法など具体的な証拠の提出もない。
(2)被請求人は,「・・・片仮名『ブロマガ』に対して,欧文字表記が『BlogMaga』であったとしても,そのサービス及びサービスの名称の周知性も相まって,少なくともその需要者にとっては,『BlogMaga』から生ずる称呼が,語呂の悪い『ブログマガ』ではなく,『ブロマガ』として認識されるようになった。つまり,需要者にとっては,『ブロマガ』と『BlogMaga』が社会通念上同一の商標であると認識されていたと考えるのが自然である。この点は実際の使用において,『BlogMaga』が『ブロマガ』として表記されている点からみても明らかである。」旨を主張している。
しかしながら,上記(4)のとおり,使用商標は,片仮名のみであり,本件商標の構成文字に応じた表記の変更とみることはできないから,「ブロマガ」の片仮名及び「BlogMaga」の欧文字からなる本件商標とは,「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ということができず,両者を社会通念上同一の商標とみることはできない。
さらに,被請求人の提出した証拠からは,「BlogMaga」の欧文字が「ブロマガ」と称呼又は表示されるものとして認識されているといえるほどの周知性があるものとは認められない。
よって,被請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求役務について,本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また,被請求人は,取消請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2018-02-27 
結審通知日 2018-03-01 
審決日 2018-03-22 
出願番号 商願2012-74287(T2012-74287) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (W42)
最終処分 成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2013-10-11 
登録番号 商標登録第5621414号(T5621414) 
商標の称呼 ブロマガ、ブログマガ 
代理人 田中 克郎 
代理人 三井 直人 
代理人 山本 典弘 
代理人 宮川 美津子 
代理人 鈴木 一永 
復代理人 壇 俊光 
代理人 工藤 貴宏 
復代理人 高橋 淳 
代理人 波田野 晴朗 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 涌井 謙一 
代理人 江頭 あがさ 
代理人 高藤 真人 

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