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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W4142
管理番号 1347793 
審判番号 不服2018-2427 
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-21 
確定日 2018-12-06 
事件の表示 商願2016- 52622拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「国際税務士」の文字を標準文字で表してなり,第41類「税務に関する知識の教授並びにこれらに関する情報の提供,税務に関する検定試験の企画・運営又は開催並びにこれらに関する情報の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍及び電子出版物の企画・制作・提供,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」及び第42類「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として,平成28年5月16日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は、『国際税務士』の文字を標準文字により表してなるところ、その構成中の『士』の文字は、『一定の資格・役割をもった者』の意味を有する語であり、例えば、『弁護士』、『公認会計士』、『税理士』、『行政書士』及び『司法書士』のように『○○士』という名称は、高度な専門性が要求される業であって、国が法律に基づいて資格を特別に付与した者を表示する事例が多いものと認められる。そして、本願商標の構成中の「国際税務」の文字については、国境を越える取引に関連して発生する課税関係についてアドバイスを提供する国際税務業務が広く行われているところ、我が国では、顧客の依頼により税務代理・税務書類の作成・税務相談などを業とする国家資格である税理士が存在することは一般に知られている。これらを考慮すると、本願商標に接する需要者、取引者は、国際税務に係る税務代理・税務書類の作成、又は税務相談などを行うことを業とする税理士に類する国家資格の一つであるかのごとく誤信するものと認められ、ひいては公の秩序を害するおそれがあるものと判断する。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 末尾に「士」の付された名称の意義について
本願商標は,「国際税務士」の文字からなるところ,構成中の末尾の「士」の文字は,「一定の資格・役割をもった者。」を意味するものであり,当該文字を末尾に付した用語の例として,「弁護士」の記載がある(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)。
そして,上記意味合いにおける「一定の資格」に何が含まれるかは,格別の制限があるものではなく,形式的には,「国家資格」(法令に根拠を有するもの)及び「民間資格」(それ以外のもの)を含み得るものの,末尾に「士」の文字が付された資格の名称において,需要者にとって接する機会が多く,一般に知られているものには,弁護士,公認会計士,税理士,建築士,不動産鑑定士,司法書士,行政書士などの国家資格に係るものが多い。
これらの事情の下では,一般国民は,末尾に「士」の付された名称に接した場合,一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いとするのが相当である。
イ 「国際税務」の文字及び「税理士」の業務について
本願商標は,「国際税務士」の文字からなるところ,その構成中「国際」の文字は,「複数の国家に関係していること。」を意味する語であり,また,「税務」の文字は,「租税の賦課・徴収に関する行政事務。」(いずれも「デジタル大辞泉」株式会社小学館)を意味する語として,それぞれ広く一般に理解されているものである。
そして,「国際」と「税務」を結合させた「国際税務」の語については,原審で示した国境を越えた取引に関連して発生する課税関係に対するアドバイス等の業務を各種税理士法人や税理士事務所が提供している実情に関する記載(拒絶査定の【別掲2】)においては,例えば,「国際税務とは、国境を越えて取引を行う場合のような国際間の税務問題をいいます。・・このような複数国間の税務問題の取り扱いに関するテーマが『国際税務』となります。」(同(7)),「国際税務とは、企業が国境を越えて取引を行う際に発生する税務問題を指します。」(同(10)),「国際間の取引があった場合、いったいどの国が、どういう利益について、どんな方法で税金を課するのか?それに対してどうすればいいのか?を考えるのが『国際税務』なのです。」(同(14))のように説明されている。
また,グローバル化が進む今日では,経済活動において複数国間にまたがる国際取引が日常化しているところ,原審で示した実情によると,国際取引における税務問題に係る具体的な業務として,例えば,国際取引に関する外国税額控除や租税に関する相談業務,源泉所得税等の取扱いに対するアドバイス業務,非永住者の個人所得税申告書の作成等の税務相談や税務書類の作成等の業務(拒絶査定の【別掲2】(3),(12),(15)等。)が,「国際税務」と称されている。
これらを併せ考慮すれば,「国際税務」の文字は,「複数国間での取引において発生する税務問題に関する業務」の意味合いで使用されているものといえる。また,こうした複数国間での取引において発生する税務問題を「国際税務」と称し,これらの業務を専門的に取り扱う税理士法人や税理士事務所が,別掲のとおり,原審で示した実情(拒絶査定の【別掲2】)以外にも,多数存在しているところである。
そして,その「税理士」については,我が国においては,「他人の求めに応じ、各種税金の申告・申請、税務書類の作成、税務相談などを行うことを職業とする者。」(「デジタル大辞泉」株式会社小学館)として,広く一般に知られている。
また,国は,「税理士」を国家資格として定め,他人の求めに応じて業として行う税務代理・税務書類の作成・税務相談の「税理士業務」(税理士法第2条)を,税理士又は税理士法人の独占業務とし(同法第52条),国家試験に合格した一定の水準以上の知識及び技術を修得した者,又は同法が定めるこれと同等の知識及び技術を有する者に,税理士の資格を付与し(同法第3条),これらの者が独立した公平な立場において,その専門的知識及び技術をもって税理士業務を遂行することで,租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現(同法第1条)を図っているものである。
ウ 判断
上記ア及びイによれば,「国際税務」と称される業務には,複数国間での取引において発生する税務問題に対する税務相談や税務書類の作成が含まれ,こうした業務を専門的に取り扱う税理士法人や税理士事務所が多数存在する実情があること,及び「税理士」が税務相談等の税に関する業務を行う国家資格として広く国民に認識されていることを併せ考慮すれば,「国際税務士」の文字は,これに接する取引者,需要者に,「複数国間での取引において発生する税務問題を取り扱う税理士に類する国家資格」を表すものとして理解される場合も決して少なくないとみるのが相当である。
そうすると,「国際税務士」の文字よりなる本願商標をその指定役務について使用したときは,これに接する取引者,需要者に,その役務が複数国間での取引において発生する税務問題に関する専門的知識及び技術を兼ね備えた国家資格に関連する役務であるかのごとく,誤信させるというべきであり,その登録を認め,その指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の国家資格制度に対する信頼を損ねるとともに,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は,「士」の文字を含む資格は,国家資格に限らず,公的資格,民間資格でも多数使用されていることを述べ,証拠方法として資料1及び資料2を提出している。そして,「○○士」が当然に国家資格であると認識されるとはいえないこと,及び「国際」の文字は,国家資格,公的資格,民間資格のいずれにも使用されておらず,国家資格の付与はその国の主権にかかわることで,自国以外の国に対する資格付与は,その対象国の主権を侵害することになるから,国内の国家資格に「国際」の文字が使われる可能性は,将来的にもほとんどないことを述べ,「国際税務士」の文字は,民間資格であると認識され,国家資格と誤認混同されることはない旨,主張している。
しかしながら,上記(1)のとおり,「複数国間での取引において発生する税務問題に関する業務」が「国際税務」と称されて,当該業務が多くの税理士法人や税理士事務所において取り扱われている実情があり,かつ,税務相談等の税に関する業務は,国家資格を保有する税理士が行うものと,一般の国民に広く認識されていることからすれば,「国際税務士」の文字に接する取引者,需要者は,「複数国間での取引において発生する税務問題を取り扱う税理士に類する国家資格」を表したものと理解するというべきであるから,本願商標は,あたかも国家資格の名称を表したものとして誤信されるといわざるを得ないものである。
イ 請求人は,「国際税務士」は,法律に基づく国家資格ではないことを前提に,当該文字は造語であって,良く知られている「税理士」とは区別できるものであるから,「税理士」と誤信されることはない旨を主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,多くの税理士法人や税理士事務所において,複数国間での取引において発生する税務問題に関する業務が取り扱われている実情があり,かつ,「国際税務士」の構成中の「税務士」の文字は,「税理士」の文字と近似した相紛らわしい文字であることからすれば,「国際税務士」の文字に接する取引者,需要者は,「複数国間での取引において発生する税務問題を取り扱う税理士に類する国家資格」を表したものと誤信するというべきである。
そうすると,本願商標をその指定役務に使用したときは,これに接する取引者,需要者に,「税理士と同等の専門的知識及び技術を有し,複数国間での取引において発生する税務問題を取り扱う税理士に類する国家資格」に関連する役務であるかの如く誤信させるものであるから,そのような商標の登録を認め,その指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の国家資格制度に対する信頼を損ねるとともに,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するものである。
したがって,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 国際税務を専門的に取り扱う税理士法人や税理士事務所の例
1 税理士法人山田&パートナーズのウェブサイトにおいて,「国際税務」の見出しの下,「国際税務のサービスメニュー/1国際税務顧問 親会社と海外子会社との間の費用負担・海外出向社員に対する給与の取り扱い・海外への支払いに係る源泉所得税の取り扱いなど、国際税務に関する各種ご相談に対応いたします。/2税務申告及び財務諸表作成支援 国際税務の知識が要求される税務申告書の作成及び外資系企業・外国法人日本支店が海外親会社・本社に要求される各種報告用資料、英文財務諸表への組替え業務について対応いたします。」の記載がある。
(https://www.yamada-partners.gr.jp/services/international/)
2 EY税理士法人のウェブサイトにおいて,「国際税務」の見出しの下,「海外進出アドバイス/ビジネスのさらなる成長を求めて、海外展開を強化する企業が増えています。しかし、進出する国の税制やリスクを的確に把握するのは容易ではありません。 EYグローバルタックスデスクのネットワークを駆使し、日本及び海外の税務に関連するストラクチャリング、プランニング、税務申告、リスク管理等を支援します。/グローバル税務管理/グローバルでの税務リスク及び連結実効税率の低減のためには、本社主導による税務管理体制の確立が急務となっています。海外展開の状況を検証し、海外子会社からの情報を収集、分析することにより最適なアドバイスを提供します。」の記載がある。
(https://www.eytax.jp/services/international-tax/cross-border-advisory/index.html)
3 税理士法人アイオンのウェブサイトにおいて,「サービスのご案内」の見出しの下,「国際税務/・・・サービス内容/・・・01 日本側の国際税務の相談/(1)輸出入取引関連/(2)海外出向者税務/(3)海外子会社寄附金/02 アジア各国に関する相談及びセカンドオピニオン取得/(1)現地国税務(給与課税、配当や使用料の源泉徴収、VAT、関税など)(2)貿易取引スキーム構築、外貨送金方法の確立(3)人事労務に関する相談/03 移転価格問題の解決(妥当な移転価格水準の試算、税務調査対応)」の記載がある。
(http://www.tax-ion.com/service/international/)
4 税理士法人KMCパートナーズのウェブサイトにおいて,「業務内容」の見出しの下,「国際税務サービス・・・月次巡回監査・月次報告書/近年、経済のグローバル化に伴い企業活動の国際化が進み、取引内容も多種多様化しております。企業の国際活動において、税務コストやリスクを考慮し、最適な税務戦略を立てることが非常に重要になってきております。KMCパートナーズでは、複雑化する国際税務に関して適切なアドバイスを行っております。/タックスヘイブン対策税制/移転価格税制/過小資本税制/非居住者源泉業務/外国税額控除」の記載がある。
(https://www.kaikeinet.jp/operation.html#overseas)
5 クリフィックス税理士法人のウェブサイトにおいて,「業務内容」の見出しの下,「国際税務サービス/外国税額控除の計算および別表作成支援/複雑で特殊な知識を有する外国税額控除の計算や、外国税額控除の別表のみの作成もお受けいたします。・・・タックスヘブン税制に関する計算およびアドバイス/海外子会社がタックスヘブンの対象になるかの判定や、合算課税される場合の税務申告書の作成およびシュミレーション、さらに、タックスヘブン子会社の配当スケジュール等を総合的にサポートすることにより、合算課税を回避スキームの作成や、回避できず合算課税される場合でも、税負担を最小化するようサポートいたします。/移転価格に関するアドバイス/海外の関係会社との取引に際し、クライアントの規模や業種、取引内容等を加味し、最適な取引価格を決定するためのサポートをいたします。」の記載がある。
(https://www.clifix.or.jp/services/service01.html)
6 税理士法人成和のウェブサイトにおいて,「会社概要・事業内容」の見出しの下,「業務内容/・・・国際税務コンサルティング/・海外税制に関する調査/・国際取引コンサルティング業務(外国税額控除、租税条約の適用に関する業務、タックスヘイブン対策税制業務、源泉所得税プランニング業務)/・海外駐在員・短期出張者に関わるタックスプランニング業務/・国際相続・贈与コンサルティング/・海外資産投資に関する税務コンサルティング」の記載がある。
(http://www.seiwa-group.jp/wao/company/)
7 税理士法人中央総研のウェブサイトにおいて,「業務案内」の見出しの下,「税務業務・・・国際税務対策/グローバル化したビジネスは中小企業にとっても地球規模での活動が要求されます。海外取引、海外進出にともない国内、相手国での課税非課税、租税条約、タックスヘイブン課税、移転価格税制などの課題にわたくしたちが取り組み解決いたします。」の記載がある。
(http://chuosoken.com/service/service02/)
8 朝日税理士法人のウェブサイトにおいて,「業務内容」の見出しの下,「国際税務サービス/貴社の国際取引に関して、源泉税マネジメント、タックスヘイブン対策税制、外国税額控除制度、租税条約などに係る、高品質で幅広い税務サービスを提供しております。」の記載がある。
(http://www.asahitax.jp/service/international/)
9 島田&アソシエイツ国際税理士事務所のウェブサイトにおいて,「国際税務サポート」の見出しの下,「国際税務サポートのサービス内容・・・具体的なサポート/クロスボーダースキームの税務リスク検討/タックスヘイブン対策税制の適用除外検討/日本での税務上の居住者・非居住者の検討/過大支払利子税制・過小資本税制の検討/移転価格税制の検討/海外法人への支払い時における源泉所得税の課税関係検討/租税条約届出作成」の記載がある。
(https://shimada-associates.com/international/)
10 FUJITA税理士法人のウェブサイトにおいて、「業務案内」の見出しの下、「海外進出・国際税務/タックスヘイブン税制、移転価格税制、海外進出におけるタックスプランニングなど、国際税務特有の問題に対して的確なアドバイスを実施いたします。」の記載がある。
(https://fujita-tax.com/guide/)


審理終結日 2018-09-28 
結審通知日 2018-10-02 
審決日 2018-10-24 
出願番号 商願2016-52622(T2016-52622) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (W4142)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
真鍋 恵美
商標の称呼 コクサイゼームシ、コクサイゼーム 
代理人 嶋 宣之 

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