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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W4144
管理番号 1347768 
審判番号 不服2017-19221 
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-25 
確定日 2018-12-05 
事件の表示 商願2016- 68872拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「障害福祉士」の文字を標準文字で表してなり,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,運動用具の貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」及び第44類「栄養の指導,介護」を指定役務として,平成28年6月24日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,『障害福祉士』の文字を標準文字で表してなるところ,その構成中の『士』の文字は,『一定の資格・役割をもった者』の意味を有する語であり,国が法律に基づいて資格を特別に付与した者を表示するものとして一般に使用されている。また,『社会福祉士』,『介護福祉士』,『精神保健福祉士』のように,『福祉士』の文字を含む国家資格について,障害者の福祉や社会福祉に寄与することを目的とする業務を行っていることが確認できる。これらの実情からすると,本願商標を出願人が自己の商標としてその指定役務に使用するときは,『障害のある者の福祉に関する資格をもった者』の意味合いを認識させることから,国家資格である『社会福祉士』,『介護福祉士』,『精神保健福祉士』と紛らわしく,また,あたかも国家資格を表す名称の一つであるかのように,需要者に誤認を生じさせるおそれがあるから,これを一私人である出願人が自己の商標として採択・使用することは,善良な商取引の秩序を乱すおそれがあり,穏当ではない。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 末尾に「士」の付された名称の意義について
本願商標は,「障害福祉士」の文字を標準文字で表してなるところ,構成中の末尾の「士」の文字は,「一定の資格・役割をもった者。」を意味するものであり,当該文字を末尾に付した用語の例として,「弁護士」の記載がある(「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)。
そして,上記意味合いにおける「一定の資格」に何が含まれるかは,格別の制限があるものではなく,形式的には,「国家資格」(法令に根拠を有するもの)及び「民間資格」(それ以外のもの)を含み得るものの,末尾に「士」の文字が付された資格の名称において,需要者にとって接する機会が多く,一般に知られているものには,弁護士,公認会計士,税理士,建築士,不動産鑑定士,司法書士,行政書士などの国家資格に係るものが多い。
これらの事情の下では,一般国民は,末尾に「士」の付された名称に接した場合,一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いというのが相当である。
イ 「障害福祉」の文字及び「社会福祉士」等の国家資格について
本願商標は,「障害福祉士」の文字からなるところ,その構成中「障害」の文字は,「さまたげ,身体器官に何らかのさわりがあって機能を果たさないこと。」を意味する語であり,また,「福祉」の文字は,「公的扶助やサービスによる生活の安定,充足。」(いずれも「広辞苑第六版」株式会社岩波書店)を意味する語として,広く一般に理解されているものである。
そして,「障害」の語は,障害者総合支援,障害者自立支援,障害保健福祉施策などの言葉に象徴されるように,また,「福祉」の語は,福祉国家,福祉政策,福祉行政などの言葉に象徴されるように,国や地方自治体が取り組むべき重要な行政課題の一つであって,その具体的な施策の推進及び行政事務は,厚生労働省が所掌し,その長である厚生労働大臣が統括している(厚生労働省設置法第4条第1項,国家行政組織法第10条)。
厚生労働省は,「障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう,必要な障害福祉サービスに係る給付,地域生活支援事業その他の支援を総合的に行い,もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに,障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的」(障害者総合支援法第1条)とする「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)に基づき,「障害福祉サービス」(同法同条)の充実等の障害保健福祉施策を講じているところである。
このように,「障害福祉」の文字は,地域社会における共生の実現に向けて,障害福祉サービスの充実等障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するという障害保健福祉施策の理念を表す文字であって,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するために国や地方自治体が実施する施策や公的サービスという公共的な意味合いを認識させるものである。
また,国は,「社会福祉士」,「介護福祉士」,「精神保健福祉士」を国家資格として定めるところ,一定の専門的知識及び技術をもった者が,身体上若しくは精神上の障害がある者に対する相談業務や援助,介護等を業として行うにあたって,これらの国家資格の名称を独占的に使用させているものであり,これらの資格は,それぞれ「社会福祉専門職の一つ。」として,「【社会福祉士】日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談・援助を行う。」,「【介護福祉士】日常生活に支障がある人に,入浴・排泄・食事その他の介護・指導を行う。」,「【精神保健福祉士】精神障害者の退院や社会参加の促進,在宅生活の支援などを行う。」と,「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店)にも掲載され,その職務内容は,障害保健福祉施策と密接な関係を持つものとして,国民に広く認識されている。
ウ 判断
上記ア及びイのとおり,国及び地方自治体の障害保健福祉施策の理念を表し,公共的な意味合いを持つ「障害福祉」の文字,及び一般国民が一定の国家資格を付与された者を表していると理解することの多い「士」の文字を組み合わせてなる「障害福祉士」の文字は,「障害福祉に関する国家資格」の観念を想起させるものといえ,かつ,名称中に「福祉士」の文字を有する「社会福祉士」,「介護福祉士」,「精神保健福祉士」が,障害保健福祉施策に係る社会福祉専門職の国家資格として,国民に広く認識されていることを併せて考慮すれば,これらの国家資格の名称と同様に,「福祉士」の文字を構成中に有する「障害福祉士」の文字は,「社会福祉士」,「介護福祉士」,「精神保健福祉士」の名称と紛らわしいものであり,あたかも「障害福祉に関する国家資格」という公的な資格の名称を表すものと理解される場合も決して少なくないとみるのが相当である。
そうすると,「障害福祉士」の文字よりなる本願商標をその指定役務について使用したときは,これに接する需要者,取引者に,その役務が障害福祉に関する国家資格に関連するもの,あるいは,障害福祉に関する専門的知識及び技術を兼ね備えた国家資格保持者による役務であるかのごとく,誤信させるというべきであり,そのような商標の登録を認め,指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の国家資格制度に対する信頼を損ねるとともに,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は,本願商標と同一又は類似する名称の国家資格は,存在しないばかりでなく,他の法律によって,使用を規制されているといった事実も見出し得ない。また,「社会福祉士」及び「介護福祉士」は,親しみのある語であるから「障害福祉士」とは紛れようがなく,「精神保健福祉士」についても,指定役務の需要者,取引者は,「●●福祉士」が国家資格であるか民間資格であるかを慎重に判断する傾向にあり,「精神保健福祉士」と「障害福祉士」とは十分区別でき,相紛らわしくない。よって,「障害福祉士」と,これらの国家資格とは,相互に非類似であり,「障害福祉士」が国家資格を表す名称の一つであるかのごとく誤認を生ずるおそれはなく,国家資格制度の秩序を乱すおそれがあるとも認め難いから,社会公共の利益に反するものではない旨,主張する。
しかしながら,上記(1)のとおり,「日常生活を営む上で何らかの障害がある者」に対する施策や公的サービスという公共的な意味合いを有する「障害福祉」の文字と,社会福祉専門職の国家資格として広く認識されている「社会福祉士」,「介護福祉士」,「精神保健福祉士」に共通する「福祉士」の文字とを「障害福祉士」のように表した本願商標は,上記三つの国家資格の名称と相紛らわしいといわざるを得ないものである。
また,「障害福祉」の文字は,国や地方自治体の重要な施策と関連性の高い語として認識されているものであり,障害保健福祉施策に係る国家資格である「社会福祉士」,「介護福祉士」,「精神保健福祉士」の存在を併せて考慮すれば,本願商標に接する需要者,取引者は,「障害福祉士」が「障害福祉に関する国家資格」を表したものと容易に認識するというべきであるから,そのような商標の登録を認め,指定役務について独占使用権,排他権を付与することは,国民の国家資格制度に対する信頼を損ね,取引秩序を乱すおそれがあり,社会公共の利益に反するものである。
したがって,かかる請求人の主張を採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第7号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-09-18 
結審通知日 2018-09-25 
審決日 2018-10-23 
出願番号 商願2016-68872(T2016-68872) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (W4144)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石塚 文子野口 沙妃 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
真鍋 恵美
商標の称呼 ショーガイフクシシ、ショーガイフクシ 
代理人 佐藤 富徳 

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