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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X30
管理番号 1343143 
審判番号 無効2016-890031 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-05-20 
確定日 2018-07-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第5555564号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成29年1月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成29年(行ケ)第10053号、平成29年10月25日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり審決する。 
結論 登録第5555564号商標の指定商品中、第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5555564号商標(以下「本件商標」という。)は、「千鳥屋」の文字を標準文字で表してなり、平成23年12月21日に「菓子及びパン」を含む第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として登録出願、その後、その指定商品については、同24年6月6日付け手続補正書により補正され、同年12月14日に登録査定、第30類「茶,コーヒー及びココア,調味料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」を指定商品として、同25年2月8日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件審判の請求の理由として引用する登録商標は、以下の2件であり、これらをまとめていうときは、以下「引用商標」という。
1 登録第1811505号商標(以下「引用商標1」という。)は、「チドリヤ」の文字を横書きしてなり、昭和58年12月9日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成8年3月28日及び同17年9月13日に商標権の存続期間の更新登録がされ、同27年9月27日に商標権の存続期間が満了し、同28年6月8日に商標権の登録の抹消登録がされているものである。
2 登録第1811506号商標(以下「引用商標2」という。)は、「CHIDORIYA」の文字を横書きしてなり、昭和58年12月9日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同60年9月27日に設定登録され、その後、平成8年3月28日及び同17年9月13日に商標権の存続期間の更新登録がされ、同27年9月27日に商標権の存続期間が満了し、同28年6月8日に商標権の登録の抹消登録がされているものである。

第3 請求人の主張(平成29年1月17日付け審決(以下「1次審決」という。)前の主張)
請求人は、本件商標の指定商品中、第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」(以下「本件指定商品」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証を提出した。
[請求の理由]
本件商標は、上記第2の引用商標と類似する商標であって、本件指定商品は、引用商標の指定商品「菓子、パン」に類似する商品である。
したがって、本件商標は、本件指定商品について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されているものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録が無効とされるべきものである。
1 請求人の利害関係について
請求人は、平成28年4月1日付けで商標「チドリヤ」を指定商品第30類「菓子」に商願2016-037825として、同日付けで商標「CHIDORIYA」を指定商品第30類「菓子」に商願2016-037826として、同年4月7日付けで商標「千鳥屋」を指定商品第30類「菓子」に商願2016-040333として、それぞれ出願しており、現在、本件商標の先登録の存在に基づいた、商標法第4条第1項第11号に該当するとの拒絶理由通知を受けている(甲17?甲19)。
よって、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有するものである。
2 本件商標と引用商標の類否について
(1)称呼の同一性
本件商標は、標準文字にて「千鳥屋」と漢字で書してなり、引用商標1は、ゴシック文字にて「チドリヤ」と片仮名で書してなり、引用商標2は、ゴシック文字にて「CHIDORIYA」とローマ字で書してなるものである。
本件商標と引用商標との相違点は、本件商標が漢字表記であるのに対して、引用商標1が片仮名表記であり、引用商標2がローマ字表記であるという点だけである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上、同一である。
(2)観念の類似性
株式会社岩波書店発行の広辞苑第6版には、「チドリ」の称呼に関する記載として「千鳥」のみが存在する。
一方、検索サイト(Google、Yahoo!、Bing、goo、インフォシーク)にて、「チドリヤ」と「CHIDORIYA」を検索すると、検索文字「チドリヤ」に対して、Googleの場合は「もしかして:千鳥屋」と表記され、Yahoo!の場合も「千鳥屋ではありませんか?」と表記される。そして、検索結果のほぼ9割が「千鳥屋」、「ちどりや」及び「CHIDORIYA」の文字であり、これ以外に検索されたのは、「馳どり屋」のみである(甲24)。
この結果を踏まえれば、世間一般的には「チドリヤ」、「CHIDORIYA」という商標に接したときには、約9割以上の人が「千鳥屋」を観念するものであり、本件商標と引用商標とは、観念においても同一又は類似する。
(3)禁反言
被請求人は、本件商標の審査において、平成24年4月27日付け発送の拒絶理由通知書(甲1)に対して、同年6月6日付けで提出した手続補正書にて、指定商品を補正し、登録査定を受けている。
このことは、審査時に、本件商標と引用商標とが観念及び称呼の点において同一又は類似であるとの拒絶理由を認めたからである。
したがって、審査時に認めておきながら、本件審判において、「本件商標は、引用商標と同一でないことはもちろん、引用商標に類似するものであるともいい得ない。」と主張することは、禁反言の法理に反する。
3 指定商品の類否について
本件指定商品は、引用商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」に類似する。これについては、平成24年1月1日施行の「類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)」(甲4)において、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」の各商品について、「菓子及びパン」と互いに類似する商品であることが明記されている。
(1)判断時期
本件商標の登録出願時(平成23年12月21日)には、「類似商品・役務審査基準(国際分類第9版対応)」(甲5)が運用されており、これによれば、第30類に属する「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」と「菓子及びパン」とは非類似の商品として例示されていた。
その後、上記「類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)」が平成24年1月1日に発効し、それに対応して商標法施行令別表及び同法施行規則別表の一部改正が行われ、「類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)」では、上記「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」と「菓子及びパン」とは類似する商品として明示されている。
すなわち、「類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)」は、本件商標の登録出願時(平成23年12月21日)には発効しておらず、本件商標は、「類似商品・役務審査基準(国際分類第9版対応)」に従って、第30類に属する「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」と「菓子及びパン」とは非類似の商品として登録されたものと思慮する。
(2)判断時期の例外
無効2013-890034の審決(甲7)において、「本件商標の登録出願時及び登録査定時には、『サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ』と『菓子及びパン』とは非類似の商品と・・・されていたとしても、両商品の製造場所及び販売場所の同一性並びに需要者の同一性などの実情からすれば、類似の商品であったというべきであり、・・・」と結論付けられている。
本件商標は、「類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)」の発効前に出願され、登録査定時及び設定登録時には、既に「類似商品・役務審査基準(国際分類第10版対応)」が発効していたのであるから、上記審決に従えば「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」と「菓子及びパン」とは、登録査定時において類似する商品として取り扱われてしかるべきものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定に基づき、本件指定商品についての登録を無効にされるべきものである。

第4 被請求人の主張(1次審決前の主張)
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べた。
[答弁の理由]
「本件商標登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してなされているものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。」という請求人の主張は、本件商標と引用商標の類否及び本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否のいずれの点からしても成り立たない。
1 利害関係
請求人提出の書証によれば、請求人の代表者及び被請求人はいずれも引用商標の出願人として名を連ねていることが分かるが、請求人が本件審判請求についてどのような利害関係を有するかは不明である。
請求人が本件審判請求について利害関係を有するものでない限り、本件審判請求は、不適法であるとして却下されるべきである。
2 無効理由非該当性
(1)商標の類否について
「千鳥屋」の漢字からなる本件商標と「チドリヤ」の片仮名からなる引用商標1及び「CHIDORIYA」のローマ字からなる引用商標2が、外観において全く異なることは明らかである。
また、本件商標と引用商標は、いずれも「チドリヤ」の称呼を生じるものの、各商標から生じる観念について、請求人は、具体的に何らの主張もしていない。表音文字で表された引用商標に、例えば、様々な漢字を当てはめることが可能であり、様々な観念を生じ得るのであるから、表意文字である漢字で表された本件商標の観念と同一であるとはいい得ない。
さらに、本件商標は、「千鳥屋」の漢字からなるものであるから、「チドリヤ」以外の称呼が生じ得ない訳ではない。
以上のように、請求人の主張は成り立たず、本件商標は、引用商標と同一でないことはもちろん、引用商標に類似するものであるともいい得ない。
(2)商品の類否について
請求人は、「本件指定商品は、引用商標の指定商品『菓子、パン』に類似する商品である。」と主張するが、その具体的な理由についての主張、立証は、本件審判請求書には見当たらない。
(3)まとめ
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではなく、無効理由は存在しない。

第5 1次審決後の当審における当事者の上申
請求人及び被請求人は、平成29年(行ケ)第10053号において陳述した内容について、以下の1及び2のとおり、当審において上申した。
1 請求人の上申
請求人は、以下のとおり上申し、甲第25号証ないし甲第39号証を提出した。
(1)本件商標と引用商標の類否判断の誤り
ア 「千鳥屋」の文字は、特定の意味を有し、造語ではない。
請求人の代表者であるAは、原田家の先祖が寛永7年に佐賀県で創業した和菓子屋「千鳥屋」の後継者であり、昭和48年1月1日に大阪府及び兵庫県を中心とした関西一円で「千鳥屋」という屋号及び商号で和菓子の製造販売を行い、昭和61年11月11日に会社を設立し、以来、大阪府及び兵庫県を中心として関西一円で菓子製造販売業を行っている。一方、被請求人は、上記和菓子屋「千鳥屋」の後継者の一人(長男)であり、昭和39年に東京を中心とした関東一円で「千鳥屋」という屋号及び商号で和菓子の製造販売を行い、以来、東京を中心として関東一円で菓子製造販売業を行っていた者である。
この和菓子屋「千鳥屋」は、被請求人及びAらの父Bが飯塚市に店舗を移転させて営業を開始し、その後、福岡に工場及び店舗を多数展開して飛躍的に発展させたものである。父Bの死後、昭和29年に、「千鳥屋」の事業を承継して発展させたのが被請求人及びAらの母Cである。BとCには、男子として長男被請求人、二男D、三男A及び四男Eの4名がおり、各々両親の事業である和菓子製造販売業に携わるようになった。長男の被請求人は、東京で「千鳥屋」の屋号及び商号で菓子製造販売業を営み、二男Dと四男Eは、福岡県で両親の上記「千鳥屋」の事業を承継し、Aは、大阪及び近畿地区で「千鳥屋」の事業を承継し、現在に至っている。
すなわち、本件商標である「千鳥屋」は、50年以上もの間、九州地区、関西地区、関東地区でそれぞれ営業活動をしており、これらの地区では著名な和菓子屋の屋号及び商号であった。「千鳥屋」という屋号及び商号は、全国的にその名が知られているものであり、造語でないことは明白である。
イ 引用商標1の「チドリヤ」の文字は、本件商標「千鳥屋」の称呼を片仮名で表記したものであり、引用商標2の「CHIDORIYA」の文字は、同じく本件商標「千鳥屋」の称呼をローマ字で表記したものである。
「チドリヤ」又は「CHIDORIYA」の文字を本件指定商品に付した場合、これに接する取引者及び需要者は、九州地区、関西地区、関東地区でそれぞれ50年以上もの間、営業活動している著名な和菓子屋「株式会社千鳥饅頭総本舗」、「株式会社千鳥屋本家」、請求人の「株式会社千鳥屋宗家」、被請求人の関係する会社「千鳥屋総本家株式会社」の屋号及び商号である「千鳥屋」をそれぞれ観念する。
また、広辞苑第6版には、「チドリ」に関する記載として「千鳥」のみが存在し、「千鳥 1.多くの鳥。 2.(数多く群をなして飛ぶからか、また、鳴き声からか)チドリ目チドリ科の鳥の総称。嘴(くちばし)は短くその先端にふくらみがあり、趾(あしゆび)は3本、後趾を欠く。河原などに群棲し、歩行力も飛翔力も強い。イカルチドリ・コチドリ・ムナグロなどいずれも美しい。世界に約70種、日本には12種が分布。古来、詩歌では冬鳥とされる。」との記載がある。上記広辞苑には、これ以外「チドリ」の称呼に関する記載は存在しない。したがって、「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」に接する取引者及び需要者は、「千鳥屋」という屋号及び商号を観念するといえる。
さらに、Google、Yahoo!、Bing、goo、インフォシークの各検索サイトにおいて、「チドリヤ」と「CHIDORIYA」を検索した場合、Googleの場合は「もしかして:千鳥屋」と表記され、Yahoo!の場合も「千鳥屋ではありませんか?」と表記される(甲24)。
すなわち、上記2社の検索サイトでは、「チドリヤ」の検索文字を、「千鳥屋」の検索の誤りではないのかと判断している。そして、4社の検索サイトの検索結果のほぼ9割が「千鳥屋」、「ちどりや」及び「CHIDORIYA」の文字であり、これ以外に検索されたのは、「馳どり屋」のみである。
このような検索結果によれば、一般的には「チドリヤ」、「CHIDORIYA」という商標に接したときには、約9割以上の者が屋号及び商号「千鳥屋」を観念する。
ウ なお、多くの特許庁審査官は、本件商標(「千鳥屋」)が、引用商標(「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」)に類似すると判断している(甲1)。さらに、被請求人は、本件商標と引用商標との類似性を認め、本件商標の指定商品を補正しているのであるから、被請求人がその類似性を否定する主張をすることは、禁反言の法理に反する。
(2)まとめ
以上によれば、本件商標と引用商標とは、称呼が同一であり、共に特定の観念を生じ、観念上、相紛れるおそれがあるから、外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当であり、本件商標の登録査定時において、本件指定商品と引用商標の指定商品とが互いに類似するので、本件商標は、商標法4条1項11号に該当するものである。
2 被請求人の上申
(1)本件商標と引用商標の類否判断の誤りについて
ア 請求人の主張のうち、本件商標「千鳥屋」は、50年以上もの間、九州地区、関西地区、関東地区でそれぞれ営業活動しており、これらの地区では著名な和菓子屋の屋号及び商号であること並びに「千鳥屋」という屋号及び商号は全国的にその名が知られているものであることについては、「和菓子屋」ではなく「菓子屋」であり、関西地区については「50年以上」ではなく「約40年以上」である点を除き認める。
イ 本件商標を構成する「千鳥屋」の文字のうち「千鳥」の語については、広辞苑第6版等の一般的な辞書に記載されているが、「千鳥屋」の語は記載されていないから、「千鳥屋」の語は、一種の造語であるといえる。もっとも、本件商標の「千鳥屋」から「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じることについては争わない。
また、引用商標の「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」についても、同様に、一種の造語といえるものであるから、特定の観念を生じない。
請求人は、「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」の文字は、漢字からなる本件商標「千鳥屋」の称呼そのものを片仮名及びローマ字でそれぞれ表記したものであり、「チドリヤ」又は「CHIDORIYA」の文字を本件指定商品に付した場合、これに接する取引者及び需要者は、著名な和菓子屋「株式会社千鳥饅頭総本舗」等の屋号及び商号「千鳥屋」をそれぞれ観念すると主張する。
しかしながら、その理由について、具体的な取引の実情に関する主張立証は見当たらないから、請求人の主張は理由があるとはいえない。
検索サイトの検索結果についても、「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」の検索結果として、「千鳥屋」のほか、「京都ちどりや」、「千鳥屋宗家」、「千鳥屋総本家」、「手ぬぐいのちどり屋」及び「キルトリサイクルきものちどりや」等が表示されているから(甲24)、上記検索結果をもって、「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」の文字が、直ちに「千鳥屋」のみに結び付き、特定の者の商標としての「千鳥屋」を観念させるものとはいい難い。そして、ほかに「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」の文字から「千鳥屋」の観念が生じるというべき取引の実情を示す証拠はない。そもそも、検索サイトにおける特定の文字についての検索結果のヒット件数の割合を、その特定の文字から特定の観念を思い浮かべる需要者の割合に直結させようとすること自体が失当である。
ウ また、過去の商標の登録例、その他判決例等をもって、本件商標と引用商標が類似であるとすることができるものではない。
(2)まとめ
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼が同一であるとしても、外観及び観念において相紛れるおそれはなく、外観、称呼及び観念を総合して全体的に考察すれば、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当であるから、本件商標の登録査定時において、本件指定商品と引用商標の指定商品とが類似であるとしても、本件商標は、商標法4条1項11号に該当しない。

第6 当審の判断
1 審決取消判決の拘束力について
商標登録無効審判事件についての審決の取消訴訟において、審決取消判決が確定したときには、審判官は、商標法第63条第2項で準用する特許法第181条第2項の規定に従い、当該審判事件について更に審理を行い、審決をしなければならないところ、再度の審理ないし審決には、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、当該審決取消判決の拘束力が及ぶ。
2 平成29年(行ケ)第10053号判決(以下「1次審決取消判決」という。)について
知的財産高等裁判所は、1次審決取消判決において、本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について、以下のとおり判示した。
[本件商標と引用商標の類否について]
(1)商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。
(2)本件商標は、「千鳥屋」の文字(標準文字)を横書きしてなるものであり、「チドリヤ」の称呼が生じるものと認められる。これに対し、引用商標は、「チドリヤ」又は「CHIDORIYA」の文字を横書きしてなるものであり、「チドリヤ」の称呼が生じることは明らかであるから、本件商標と引用商標は、称呼において同一であると認められる。
そして、本件商標が、漢字を書してなるものであるのに対し、引用商標は、片仮名又はローマ字を書してなるものであるから、本件商標と引用商標の外観は同一であるとはいえない。もっとも、本件商標と引用商標は、いずれも格別の特徴を有しない文字からなる商標であり、我が国において、外来語以外でも同一語の漢字表記と片仮名表記又はローマ字表記が併用されることが多く見られる事情があること、証拠(甲34?甲36)及び弁論の全趣旨によれば、「千鳥屋」をローマ字で表記することも一般的に行われていることが認められることなどを考慮すると、本件指定商品及び引用商標の指定商品の需要者にとって、文字種が異なることは、本件商標と引用商標が別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではないというべきである。
次に、本件商標から、「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じることについては当事者間に争いがなく、本件商標からは、「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じるものと認められる。
また、証拠(甲39)及び弁論の全趣旨によれば、「チドリヤ」という語は、広辞苑等の辞書に掲載されていないものの、広辞苑第6版には、「チドリ」に関して「千鳥」の語が掲載され、「1.多くの鳥。2.チドリ目チドリ科の鳥の総称。」などの意味の記載と共に、「ちどり-あし【千鳥足】」、「ちどり-やき【千鳥焼】」などの例が挙げられていること、「屋」という語が、屋号又は商号を表す際に用いられるものであることなどが認められる。そして、本件商標の登録査定時において、「千鳥屋」が、九州地区、関西地区、関東地区では著名な菓子屋の屋号及び商号であり、「千鳥屋」という屋号及び商号が全国的にその名を知られているものであることについては当事者間に争いがなく、引用商標は、「千鳥屋」の称呼を片仮名又はローマ字で表記したものといえることからすると、本件商標と同様に、引用商標から「千鳥屋」という菓子屋の屋号又は商号との観念が生じるものと認めるのが相当である。このことは、検索サイトの検索結果(甲24)において、「チドリヤ」及び「CHIDORIYA」の検索結果として、「千鳥屋」が多数検索されることや、「チドリヤ」の文字を検索した際に、「千鳥屋」の検索の誤りであることを指摘する検索サイトが複数あることからも裏付けられる。
(3)本件指定商品及び引用商標の指定商品は、いずれも基本的には、さほど高価とはいえない日常的に消費される性質の商品(食品)であり、これらは同一の営業主により製造又は販売されることがあり、同一店舗で取り扱われることも多いことからすると、本件指定商品については、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認され、商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるといえる。このように、本件指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品であり、その取引者、需要者には、広く一般の消費者が含まれるから、商品の同一性を識別するに際して、その名称、称呼の果たす役割は大きく、重要な要素となるというべきである。なお、一般の消費者としては、商標の外観を見て商品の出所を判断することも少なくないと考えられるものの、前記認定のとおり、本件商標と引用商標の外観については別異のものであることを認識させるほどの強い印象を与えるものではない。そうすると、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、上記のような取引の実情をも考慮すると、外観及び観念に比して、称呼を重視すべきであるといえる。
以上によれば、本件商標と引用商標は、称呼において同一であり、両商標からは同一の観念を生じるものといえるから、本件指定商品の需要者にとって、引用商標と同一の称呼を生じる本件商標を付した商品を、引用商標を付した商品と誤認混同するおそれがあるものと認められる。
3 判断
上記第5のとおり、当審において、当事者から平成29年(行ケ)第10053号において陳述した内容について上申があり、そして、再度の審理ないし審決には、上記2のとおりの1次審決取消判決の拘束力が及ぶ。
そうすると、本件商標と引用商標とは、商標が類似し、本件指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといわなければならない。
4 結論
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、本件審判請求に係る指定商品である第30類「サンドイッチ,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-05-23 
結審通知日 2018-05-28 
審決日 2018-06-08 
出願番号 商願2011-92216(T2011-92216) 
審決分類 T 1 12・ 263- Z (X30)
T 1 12・ 261- Z (X30)
T 1 12・ 262- Z (X30)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 小松 里美
田中 敬規
登録日 2013-02-08 
登録番号 商標登録第5555564号(T5555564) 
商標の称呼 チドリヤ、チドリ 
代理人 高橋 浩三 
代理人 高良 尚志 

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