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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0935363841
審判 全部申立て  登録を維持 W0935363841
審判 全部申立て  登録を維持 W0935363841
審判 全部申立て  登録を維持 W0935363841
管理番号 1340397 
異議申立番号 異議2017-900339 
総通号数 222 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-06 
確定日 2018-05-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5971269号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5971269号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5971269号商標(以下「本件商標」という。)は、「Swift光」の文字を標準文字で表してなり、平成29年2月16日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント」、第35類「広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報収集,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電話回線自動選択装置の利用契約の取次を含む市外電話・国際電話への加入契約の取次若しくは代理又は募集の代理,小型携帯無線呼出機・自動車電話・携帯電話その他の通信機器による通信への加入契約の取次・媒介又は代理,電子計算機端末による通信(インターネット・その他の通信ネットワークを利用した電子計算機端末による通信を含む。)の加入契約の取次・媒介又は代理,有線テレビジョンその他のテレビジョン放送・有線ラジオ放送その他のラジオ放送・衛星放送に関する契約の代理・媒介又は取次 」、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定着物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,信用購入あっせん,クレジットカード・デビットカードの利用者に代わってする支払代金の清算,クレジットカードの発行者に代わってする支払代金の清算,電子マネーの利用者に代わってする支払代金の清算,クレジットカードの発行及び利用に関する情報の提供,クレジットカード利用金額に関する情報の提供,残高照会に関する情報の提供,クレジットカードの発行者に代わって行う会員の募集及びその管理,前払式証票の発行,電子プリペイドカードの発行,移動体電話機・電子計算機端末を通じて行われるインターネット上での商品の売買に関する代金の回収代行,その他の商品売買代金の回収代行,通信料金の請求及び代金の回収に関する代行,情報提供料の請求及び代金の回収に関する代行,ガス料金又は電気料金その他の公共料金の徴収の代行,インターネットによる商品売買代金の回収代行,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引,外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券先渡取引・有価証券店頭指数等先渡取引・有価証券店頭オプション取引若しくは有価証券店頭指数等スワップ取引又はこれらの取引の媒介・取次ぎ若しくは代理,有価証券等清算取次ぎ,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,慈善のための募金」、第38類「電気通信(放送を除く。),テレビ会議通信,インターネット又は移動体電話による通信若しくはその他の通信手段を利用したメッセージ・音楽・映像・画像・文書・データ・文字情報の通信及びこれらに関する情報の提供,インターネット又は移動体電話による通信若しくはその他の通信手段を利用した番組放送スケジュールに関する情報の提供,インターネット又は移動体電話による通信若しくはその他の通信手段を利用したデータ通信,インターネット又は移動体電話による通信若しくはその他の通信手段を利用した通信ネットワークへの接続の提供及びこれに関する情報の提供,インターネット又は移動体電話による通信若しくはその他の通信手段を利用した通信ネットワークへの接続の提供に関するコンサルティング,その他の電気通信に関する助言(放送を除く。),音声・文字データ・画像の伝送交換,通信機能を有するテレビゲーム機(家庭用及び業務用を含む)による通信,オンデマンド方式による映像・音声の伝送交換,電子計算機端末その他の通信機器による通信,電子メール通信,複数宛先に同時に送信する電子メール通信,電子メールの自動転送,電子掲示板通信,電子データの自動転送,データ通信に関する情報の提供,人工衛星による通信,人工衛星を利用した伝送交換,付加価値通信網による通信,付加価値通信網の提供,電子計算機端末その他の通信機器を利用した通信に関する情報の提供,放送,電気通信端末による報道をする者に対するニュースの供給その他の報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与,電話加入権の貸与,電気通信に関する情報の提供,放送に関する情報の提供,電話帳記載情報の提供」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,コンピュータネットワークまたは携帯電話によるゲームの提供,娯楽施設の提供,テレビジョン受信機の貸与,ラジオ受信機の貸与」を指定商品及び指定役務として、同年7月21日に登録査定、同年8月10日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標等
(1)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の3件であり(以下、これらをまとめて「引用商標」ということがある。)、いずれも現に有効に存続しているものである。
ア 登録第5921900号商標(以下「引用商標1」という。)は、「SWIFT」の欧文字を横書してなり、2014年4月17日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成26年10月17日に商標登録出願、第9類「アプリケーション開発用ソフトウェア、その他のソフトウェアアプリケーションの開発に使用されるコンピュータソフトウェア」を指定商品として、同29年2月10日に設定登録されたものである。
イ 登録第5757027号商標(以下「引用商標2」という。)は、「APPLE SWIFT」の欧文字を標準文字で書してなり、2014年5月26日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成26年11月26日に商標登録出願、第9類「アプリケーション開発用ソフトウェア及び他のソフトウェアアプリケーションの開発に使用されるコンピュータソフトウェア」を指定商品として、同27年4月10日に設定登録されたものである。
ウ 登録第5868810号商標(以下「引用商標3」という。)は、「SWIFT PLAYGROUNDS」の欧文字を横書してなり、2015年11月5日にジャマイカにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成28年5月6日に商標登録出願、第9類「コンピュータソフトウェア開発用コンピュータソフトウェア、コンピュータプログラミング指導を内容とする教育用コンピュータソフトウェア」を指定商品として、同年7月22日に設定登録されたものである。
(2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、「Swift」の欧文字からなるものであり、申立人が作ったプログラミング言語の名称として使用されており、周知であると主張するものである(以下「申立人商標」という。)。
2 申立人
申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く、インターネット関連製品・デジタル家庭電化製品及び同製品に関連するソフトウェア製品を開発・販売する多国籍企業であって、パーソナルコンピュータを市販化した最初の会社であり、その製品である「Macbook」や「iMac」は、コンピュータ業界において広く知られている。近年は、スマートフォン「iPhone」の爆発的なヒットに加え、タブレットコンピュータ「iPad」や時計型コンピュータ「Apple Watch」も大きな話題を呼んだ。加えて「iTunes」における音楽配信サービスにより、音楽産業の業態に変革を与えるほど大きな存在となっており、我が国において申立人及びその製品・サービスを知らない者はいないといって過言ではない。
3 申立人商標
申立人商標は、iOS、Mac、Apple TV、Apple Watch向けのアプリケーションを開発するために申立人が作った強固で直感的なプログラミング言語の名称として使用されているものであって、申立人製品向けアプリケーション開発者であれば必ず目にすることのある商標である(甲3?甲5)。当該プログラミング言語を学ぶためのアプリケーションとして「Swift Playgrounds」を申立人は提供しており、同アプリケーションでは当該プログラミング言語のコードの基本について学習できるレッスンを受けることができる(甲4)。
申立人の当該プログラミング言語は、2014年に発表された後、広くアプリケーション開発者に利用されていること、及び申立人が発表、販売する製品・サービス・新機能等は常に我が国の需要者・消費者の注目を広く集めること等を考慮すれば、申立人商標は我が国において周知商標と位置付けられる。
4 商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標は、「Swift光」の文字からなるところ、同商標は英単語「Swift」と日本語「光」を組み合わせた商標であることは明らかであるところ、周知商標である申立人商標がそっくりそのまま語頭に取り込まれており、同部分が本件商標に接する需要者・消費者に強い識別標識として認識されることは明らかである。
なお、本件商標権者である株式会社Invincibleのウェブサイト(http://hikarisvc.jp/swift/company.html)によれば、本件商標は超高速光インターネットサービスについて使用されている(甲6)。したがって、本件商標中の「光」は、単に「光回線」「光インターネット」を表すにすぎず、識別力のない部分であって、コンピュータ等のIT分野における申立人商標が有名であることを鑑みれば、「Swift」の文字部分が強い出所表示機能を有することは疑いない。
したがって、本件商標の要部が「Swift」の部分にあることは明らかであるから、本件商標は、「スイフト」の称呼及び英単語「SWIFT」が意味する「敏速な」という観念ないし申立人が提供する「Swift」というプログラミング言語の観念を生じさせ、引用商標と称呼及び観念を共通にする類似の商標である。
しかして、「商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかということにより判定すべきものと解するのが相当」(最高裁昭33(オ)1104号昭36.6.27判決)であり、「その商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(最高裁昭39(行ツ)110号昭43.2.27判決)のであるから、周知商標であるというような取引における明白な実情については、商標の類否判断において、当然配慮、斟酌されるべき要素である。そうすると、申立人の製品及びその提供するサービスは我が国において広く知られていること、申立人商標は申立人の製品向けアプリケーション開発者であればほぼ100%認知している商標であることを考慮すると、それと同一の要素をそのまま含む本件商標は、この点からも、引用商標と混同を生じるおそれの高い類似の商標と解すべきである。
また、本件商標の指定商品及び指定役務中「腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子応用機械器具及びその部品」は、引用商標の指定商品と同一又は類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 商標法第4条第1項第15号該当性
本件商標は、英単語「Swift」と日本語「光」を組み合わせたものであるところ、申立人商標はコンピュータ関連サービス分野で広く知られているものであるから、本件商標における「Swift」の文字は、即座に申立人を想起させ、強い出所表示機能を担う一方で、「光」の文字は単なる「光回線」等を想起させるにすぎない記述的な表示であって、その識別力は弱いものと解されるから、本件商標に接する需要者・取引者は、本件商標から「申立人に関係する何らかの商品・役務」をイメージすると考えられ、その出所を混同するおそれが高い。
特許庁審査基準では、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」についての考慮事項として、以下を挙げている。これらについて検討すると、本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人商標の希釈化汚染化が生じるおそれがある。
(1)その他人の標章の周知度
申立人商標が周知であることは前記のとおりである。
(2)その他人の標章が創造標章であるかどうか
「Swift」は既存の言葉ではあるが、コンピュータ・IT分野においては十分な識別力を有する商標である。
(3)その他人の標章がハウスマークであるかどうか
申立人のハウスマーク(社標)には該当しないが、申立人の製品向けアプリケーション開発との関連で使用される商標であり、需要者・消費者の認知度は非常に高い。
(4)企業における多角経営の可能性
申立人は、上記のとおりコンピュータの分野以外にも音楽事業等様々な事業分野で商品・役務展開している。例えば、申立人本社では、コンピュータ関連製品の他、マグカップやTシャツ、文房具等が販売されている(甲7)。したがって、多角経営の可能性は十分に認められる。
(5)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
商品等の関連性があることは、本件商標の指定商品・役務から十分に認められる。特に本件商標は、第9、35、38、41類においてコンピュータ、インターネット、電気通信、ゲームの提供等、申立人が販売、提供する商品・役務と関連深い商品・役務を数多く指定しており、本件商標「Swift光」に接する取引者・需要者は、「申立人に関係する何らかの商品・サービス」「申立人の新コンセプトによる商品・サービス」「申立人の子会社・関連会社の製造販売ないし提供する商品・サービス」「申立人の新事業により生まれた商品・サービス」等を想起することは必至であって、その出所について混同を生じさせるおそれが極めて高いというべきである。
また、商標法第4条第1項第15号には、いわゆる「広義の混同」、すなわち、ある他人の業務に係る商品等であると誤信されるおそれのある商標のみならず、その他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものであるから、申立人商標に、単なる「光回線」等を認識させるにすぎない「光」を付加したにすぎない本件商標は、少なくとも、申立人と何らかの関係にある営業主の業務に係る役務と誤認されるおそれがあることは明らかである。
さらに、商標法第4条第1項第15号は、単純な「出所の混同」のみならず「ただ乗り」「希釈化」をも防止しようとする規定であるとの解釈が最高裁判例(最高裁平10(行ヒ)85号平成12.7.11判決)であるから、「ただ乗り」「希釈化」により、申立人の業務上の信用が損なわれる状況となっているのである。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3 当審の判断
1 申立人商標の周知著名性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社を置く、インターネット関連製品・デジタル家庭電化製品及び同製品に関連するソフトウェア製品を開発・販売する企業であって、コンピュータ業界においては、その製品「Macbook」や「iMac」、スマートフォン「iPhone」に加え、タブレットコンピュータ「iPad」や時計型コンピュータ「Apple Watch」を開発した企業として知られている。
イ 申立人のウェブサイトにおいて、「iOS、Mac、Apple TV、Apple Watch向けのアプリケーションを開発するためにAppleが作った強固で直感的なプログラミング言語。それがSwiftです。」と記載されている(甲3)。また、「Swift Playgroundsは、Swiftをインタラクティブに楽しく学べるiPad用の革命的アプリケーションです。」と記載されている(甲4)。
ウ ウェブサイト「Tech2GO」において、「Appleが開発した言語『Swift』とは?基礎から徹底解説!」のタイトルの下、申立人商標を紹介する記事がある。また、ウェブサイト「CNET Japan」において、「アップルの新プログラミング言語『Swift』--その目的と意味するところ」のタイトルの下、申立人商標を紹介する記事がある(甲5)。
(2)周知著名性の判断
以上によれば、申立人商標は、申立人の業務に係るプログラミング言語を表示するものとして、申立人のウェブサイトや、複数のインターネット記事に記載されていることが確認できる(甲3?甲5)。
しかしながら、申立人商標の使用状況を具体的に示す証拠や、申立人商標の取扱い量や売上高等、その周知著名性を量的に把握することのできる証拠等の提出はなく、また、広告実績等も不明である。
申立人は「『Swift』は、2014年に発表された後、広くアプリケーション開発者に利用されていること、及び申立人が発表、販売する製品・サービス・新機能等は常に我が国の需要者・消費者の注目を広く集めること等を考慮すれば、申立人商標は我が国において周知商標と位置付けられる。」旨主張しているが、これを客観的に裏付ける証拠は見当たらない。
そうすると、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国において、申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして取引者、需要者間に広く認識されていたということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「Swift光」の欧文字及び漢字を標準文字で表してなるところ、これらの文字は、同書、同大、等間隔で、まとまりよく一体に表されているものである。
そして、本件商標は、「Swift」の文字部分が「速い、迅速な」等の意味を有する英語として看取され、構成文字全体に相応して「スイフトヒカリ」の称呼を生じるものである。そして、「スイフトヒカリ」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、「電気通信」の役務の分野において、「光」の文字が「光回線」や「光インターネット」を表すために使用されている例があるとしても、本件商標に係る指定商品及び指定役務中、引用商標に係る指定商品と類似する「腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子応用機械器具及びその部品」及び「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の分野においては、具体的な品質等を表すものとはいい難いことから、「Swift」と「光」の文字を一体に組み合わせた本件商標に接する需要者は、その構成文字全体をもって、親しまれた特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものと理解するとみるのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「スイフトヒカリ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
この点、申立人は、「本件商標は、・・・周知商標である申立人商標がそっくりそのまま語頭に取り込まれており、同部分が本件商標に接する需要者・消費者に強い識別標識として認識されることは明らかである。・・・本件商標中の『光』は、単に『光回線』『光インターネット』を表すにすぎず、識別力のない部分であって、コンピュータ等のIT分野における申立人商標が有名であることを鑑みれば、『Swift』の文字部分が強い出所表示機能を有することは疑いない。」とし、本件商標の構成中「Swift」の文字部分が本件商標の要部である旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、申立人商標の周知著名性は認められないから、本件商標に接する取引者、需要者が、その構成中の「Swift」の文字部分に着目するとみることはできない。
また、甲第6号証では、本件商標の商標権者である「株式会社インビンシブル」のプレスリリースにおいて、本件商標とともに「光回線」、「光インターネット」の文字が記載されていることは確認できるものの、「光」の文字が「腕時計型携帯情報端末,スマートフォン,電子応用機械器具及びその部品」及び「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」との関係において、特定の商品の品質又は役務の質を表すものとして、取引上、一般に用いられていることを示す証拠の提出はなく、本件商標の構成中の「光」の文字部分に自他商品・役務識別標識としての機能がないということはできない。
してみれば、本件商標中の「Swift」の文字部分が、前記商品及び役務に関連する本件商標に接する需要者、消費者に特に強い識別標識として認識されるということはできないから、上記申立人の主張は採用できない。
(2)引用商標について
ア 引用商標1は、前記第2のとおり、「SWIFT」の欧文字を横書してなり、該文字は、「速い、迅速な」の意味を有する英語として看取されるものであり、これよりは、「スイフト」の称呼及び「速い、迅速な」の観念を生じるものである。
イ 引用商標2は、前記第2のとおり、「APPLE SWIFT」の欧文字を同じ書体でまとまりよく一体に横書してなるところ、その構成文字は、果実の「リンゴ」の意味を有するよく知られた英語「APPLE」と、「速い、迅速な」の意味を有する英語「SWIFT」を組み合わせたと看取され、構成文字全体から生じる「アップルスイフト」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、その構成全体として具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、その構成全体として、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものとみるのが相当である。
してみれば、引用商標2は、全体の構成文字から「アップルスイフト」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
ウ 引用商標3は、前記第2のとおり、「SWIFT PLAYGROUNDS」の欧文字を同じ書体でまとまりよく一体に横書してなるところ、その構成文字は、英語「SWIFT」と、「運動場」の意味を有する英語「PLAYGROUNDS」を組み合わせたものと看取され、構成文字全体から生じる「スイフトプレイグラウンズ」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
また、引用商標3は、全体として具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これに接する需要者は、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものと理解するとみるのが相当である。
そうすると、引用商標3は、その構成文字に相応して、「スイフトプレイグラウンズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標と引用商標1を比較すると、外観においては、5文字ないし6文字という比較的短い構成中において、欧文字部分の頭文字以外の文字に大文字と小文字の差異を有すること、「光」の漢字の有無に差異を有することから、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「スイフトヒカリ」の称呼と、引用商標から生じる「スイフト」の称呼とは、構成音数や「ヒカリ」の音の有無において明らかに相異するから、両者は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
また、観念においては、本件商標は、親しまれた特定の観念を生ずるとはいえないのに対し、引用商標1は、「速い、迅速な」の観念を生じるものであるから、両者は相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標1は、外観及び称呼において明らかに相異し、観念においても類似するものとはいえないから、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
イ 本件商標と引用商標2を比較すると、外観においては、その構成文字が明らかに相異するから、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「スイフトヒカリ」の称呼と、引用商標2から生じる「アップルスイフト」の称呼とは、構成音や音数において明らかに相異するから、両者は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標2は、外観及び称呼において明らかに相異し、観念においても類似するものとはいえないから、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ 本件商標と引用商標3を比較すると、外観においては、その構成文字が明らかに相異するから、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「スイフトヒカリ」の称呼と、引用商標3から生じる「スイフトプレイグラウンズ」の称呼とは、構成音数や「プレイグラウンズ」及び「ヒカリ」の音の有無において明らかに相異するから、両者は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と引用商標3は、外観及び称呼において明らかに相異し、観念においても類似するものとはいえないから、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 以上より、本件商標は、引用商標とはいずれも非類似のものである。
(4)申立人の主張について
申立人は「申立人の製品及びその提供するサービスは我が国において広く知られていること、申立人商標は申立人の製品向けアプリケーション開発者であればほぼ100%認知している商標であることを考慮すると、それと同一の要素をそのまま含む本件商標は、この点からも、引用商標と混同を生じるおそれの高い類似の商標と解すべきである。」旨主張している。
しかしながら、申立人の製品及びその提供するサービスは我が国において広く知られているとしても、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない、非類似の商標であることは上記(3)のとおりであって、両者はその印象が明らかに異なる全く別異の商標であるから、混同を生じるおそれはないものである。
また、申立人商標については、上記1のとおり、申立人の業務に係る商品及び役務の商標として取引者、需要者間に広く認識されていたとはいえないものであるから、本件商標は、申立人商標と同一の文字をその構成中に含んでいたとしても、商品及び役務の出所の混同を生ずるおそれはないものである。
よって、申立人の主張は採用することができない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と申立人商標の類似性について
本件商標は、前記第1のとおり、「Swift光」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「スイフトヒカリ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
これに対して、申立人商標は、前記第2のとおり、「Swift」の文字からなるところ、当該文字は、「速い、迅速な」の意味を有する英語であり、これより、「スイフト」の称呼及び「速い、迅速な」の観念を生じるものである。
そこで、両者を比較するに、外観においては、5文字ないし6文字という比較的短い構成中において、「光」の漢字の有無に差異を有するから、その外観は明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「スイフトヒカリ」の称呼と、申立人商標から生じる「スイフト」の称呼とは、構成音数や「ヒカリ」の音の有無において明らかに相異するから、両者は、明瞭に聴別できるものである。
また、観念においては、本件商標は、親しまれた特定の観念を生ずるとはいえないのに対し、申立人商標は、「速い、迅速な」の観念を生じるものであるから、両者は相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標と申立人商標は、観念において類似するものとはいえず、外観及び称呼において明らかに相異するものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標である。
(2)出所混同のおそれについて
上記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国において申立人の業務に係る商品及び役務の商標として取引者、需要者間に広く認識されていたとはいえないものである。
そして、上述のとおり、本件商標は、申立人商標とは別異の商標である。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品及び指定役務に使用した場合、取引者、需要者が申立人商標を連想、想起することはないというべきであり、その商品及び役務が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれがないものと判断するのが相当である。
(3)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-05-18 
出願番号 商願2017-18210(T2017-18210) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W0935363841)
T 1 651・ 261- Y (W0935363841)
T 1 651・ 263- Y (W0935363841)
T 1 651・ 262- Y (W0935363841)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
真鍋 恵美
登録日 2017-08-10 
登録番号 商標登録第5971269号(T5971269) 
権利者 株式会社Invincible
商標の称呼 スイフトヒカリ、スウイフトヒカリ、スイフト、スウイフト、ヒカリ 
代理人 重泉 達志 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 

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