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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W09
管理番号 1338373 
異議申立番号 異議2017-900154 
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-16 
確定日 2018-02-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第5922653号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5922653号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5922653号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成28年7月1日に登録出願、第9類「光波長分割多重化技術を用いた通信ネットワークにおける広帯域接続を可能にする光ファイバー伝送装置,信号伝送装置」を指定商品として、同年12月19日に登録査定、同29年2月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は以下のとおりである。
1 登録第2362272号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、昭和62年3月27日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成3年12月25日に設定登録され、その後、同13年9月4日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、同16年6月2日に、指定商品を第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」並びに第7類、第8類、第10類ないし第12類、第16類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換の登録がされたものであり、当該書換の登録がされた指定商品中、第7類ないし第12類に属する指定商品について、同24年3月21日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。
2 登録第2434659号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和49年6月7日に登録出願、第12類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録され、その後、同14年7月2日及び同24年7月31日に商標権存続期間の更新登録がされ、さらに、同18年1月11日に、指定商品を第12類「全輪駆動小型自動車」とする指定商品の書換登録がされたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の指定役務中、第9類「全指定商品」について、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)指定商品の類否について
前記第1及び第2のとおり、引用商標1の指定商品「電気通信機械器具」は、本件商標の指定商品「光波長分割多重化技術を用いた通信ネットワークにおける広帯域接続を可能にする光ファイバー伝送装置,信号伝送装置」を含んでおり、両商品は類似する。
(2)商標の類否について
ア 本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり構成よりなるところ、前半部の「4K」の文字は、数字1字とローマ字の1字を単に組み合わせたもので、産業機械関連の業界をはじめ各種分野に携わる事業者において、各種製品について、その製品管理又は取引上の利便性から、当該商品の品番、型番、種別、型式、規格等又は役務の種別、等級等を表した記号又は符号として、商取引上類型的に採択・使用されている。したがって、それ自体、自他商品の識別力がない。
特に、近年において、本件指定商品を取り扱う業界においては、「4K」の文字は、「水平解像度がおおよそ4000の映像規格のこと。」(甲5、甲6)として一般に使用されている。したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合、単に、性能、すなわち、上記映像規格を表す表示か、品番、型番、種別等と認識されるにすぎない。
また、実際、本件商標の商標権者(以下「商標権者」という。)の商品カタログにおいても、「4K」の文字は、ビデオ撮影機器の販売に際して、映像規格を表すものとして200箇所以上で使用されている(甲7)。
さらに、近年の「4Kテレビ」の宣伝、普及により、専門的な知識のない一般の需用者でも「4K」は、解像度の高いテレビやビデオの性能を表す語として馴染みのあるものになっている。例えば、東芝では2011年に販売が開始され、パナソニックの「4Kビエラ」は2013年に発売されている。
このような状況において、画像に関連する機器に関して、この「4K」の文字が語頭に存在する場合、需用者、取引者はこの識別力の極めて低い2文字と後部の文字とを分離して看取するものである。
また、この6文字を等間隔で配置したとしても、「K」の文字の字形とそれに続く「J」の文字の字形(縦線が中心より右寄り)の文字形状の特徴により、両文字間には他の文字間よりも大きな空間が看取される。したがって、本件商標は、視覚的にも「4K」の文字と「JEEP」の文字とで分離して看取される。
さらに、申立人の所有に係る商標「JEEP」は、自他商品識別力の極めて高い商標であることから、語頭部分に識別力の低い文字「4K」を付加した場合、2つの部分から成っている商標と認識され、要部は「JEEP」の文字部分であると判断されるのが自然である。
識別力の強弱や文字形状によって本件商標が分離して判断されるべきことは、特許情報プラットホームの本件商標の「出願・登録情報」において、検索用の商標の欄には、「4K JEEP」と記載され、1文字分の間隔が明確に入れられていること、また、同称呼の欄には「ジープ」の称呼が独立して記載されていること等からも伺われる(甲8)。
イ 本件商標と引用商標の類似性について
分離して看取される本件商標の要部は、後半部の「JEEP」のローマ字4文字であり、本来、いわゆる造語であり、固有の意味は有しない。しかし、現状では、英和辞典によれば「《軍用などの》ジープ;【商標】ジープ《軍用jeepに似た小型車》《小型の》護衛空母(jeep carrier);《陸軍俗》新兵、等と記載されており(甲9)、基本的に「商標」として説明されている。そして、その商標は、申立人の所有に係るものである。
したがって、引用商標の「JEEP」と本件商標の後半部分「JEEP」は共通しており、すなわち、分離して看取される要部が同一であり、全体として類似する関係に有るものである。「JEEP」が「4K」と結びつけられることで、両者が一体不可分となり、一連にのみ看取され、称呼されるような特別な状況はない。
また、4KとJの間には母音はなく、一連で発音(称呼)をするに当たっても「4K」と「JEEP」は分離され、「ヨンケイ」と「ジープ」となり、他の称呼は生じ難い。
以上のように、対比されるべき本件商標は、引用商標1と、称呼、外観、観念の何れにおいても相紛らわしく、本件商標と引用商標とは全体として類似するものである。
(3)まとめ
以上述べたように、本件商標と引用商標1は、「ジープ」の称呼、外観を共通にする類似商標であり、また、本件商標の指定商品も引用商標の指定商品と類似し、したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標2「JEEP」の周知、著名性について
ア 歴史
例えば、辞典類、インターネット記事、雑誌等には、「jeep/ジープ」は、第2次大戦中にアメリカ陸軍が採用した四輪駆動小型自動車につけられた愛称であって、戦後は各国において軍関係でなく、民間でもレジャー用を含めあらゆる分野で広く使用されていることや、「ジープ」の名称の由来などが紹介されている(甲11?甲14)。
すなわち、「jeep」は多目的車を意味するgeneralpurpose carの頭文字GPを、漫画映画ポパイに出てくる犬のよう動物のjeeeeepという鳴き声に由来する等の諸説が挙げられている。
誕生から75年が経過し、伝統的なJEEPブランドとなっている7本縦型スロットグリルのフロントマスクや貝殻のようなエンジンフード、頑丈なバンパー丸型ヘッドライトを備え、今や、JEEPは、申立人の伝統的な独特なデザインを有する四輪駆動車(「全輪駆動小型車」)として日本及び世界において広く知られている。
イ 著名商標としての認定など
「JEEP」(称呼「ジープ」)は、特許情報プラットフォーム「日本国周知・著名商標」に申立人「エフシーエー ユーエス エルエルシー」の登録商標として掲載されており、著名な商標としての証左になる(甲15)。
また、「JEEP」の名称は、昭和47年9月5日付けの「商標研究会」発行の「新版日本有名商標録」において、「ジープ・インターナショナル・コーポレーション」の登録商標として掲載されている(甲16)。なお、社名は平成27年2月4日付けにて、現在、申立人に変更されている。
ウ 専門雑誌、カタログ等による宣伝広告等
「jeep/ジープ」は、申立人の四輪駆動車として、今まで、多くの雑誌、新聞等に紹介されている。
(ア)「雑誌」による紹介
例えば、株式会社グラフィス「ジープスタイルブック2016」(平成27年12月28日発行)、株式会社ライトハウスメディア「オーシャンズ6月号」(平成28年6月1日発行)、株式会社光文社発行「VERY6月号」(平成28年5月7日発行)、株式会社マガジンハウス「Tarzan」(平成27年7月9日発行、同年8月13日発行、同年9月10日発行)にはそれぞれ「jeep」の専門情報の掲載や宣伝広告がなされている(甲17?甲22)。
(イ)「カタログ」による紹介
平成26年、27年の申立人発行の日本向け「カタログ」(抜粋)にも「JEEP」(「jeep」の表記も有り)について詳しく紹介されている(甲23?甲27)。例えば、甲第23、24号証のカタログは35,000部発行されている。
(ウ)大手新聞各社での宣伝掲載
平成27年から28年に大手新聞各社の全国版に掲載されたた広告(抜粋)(甲28?甲36)に示されているように大きな紙面で「jeep」の広告が行われている。
(エ)テレビでのコマーシャルや自由にアクセス可能なネット上の動画情報
ネット上等の動画情報の抜粋写真を提出する(甲37)。これらの動画は、インターネット上で現在も見ることができるものである。
(オ)日本における正規販売店の数
申立人の日本における正規販売店は、北海道から沖縄県まで41都道府県に存在している(甲38)。
また、例えば、店舗写真(世田谷及び沖縄)に示されているように、店舗正面側には、黒塗りの壁に「jeep」が表示され、さらに、インターネットによる各店舗紹介ページの一部にも「DODGE」「CHRYLER及び図形」及び「jeep」が表示されている(甲39、甲40)。
(カ)近年の宣伝広告の費用
日本における「jeep/ジープ」の近年の宣伝広告費用は、2012年から2017年までが、それぞれ6億3千万円、6億9千万円、12億9千万円、9億7千万円、11億6千万円、14億2千万円となる(甲41)。
(キ)販売台数
甲第42号証には「JEEP」ブランドの近年における世界各国での販売台数が示されているが、日本国における販売台数は、2011年は3,184台、2012年が5,055台、2013年は5,097台、2014年が6,843台、2015年は7,130台、2016年が9,382台、2017年が9,884台となる。特に近年、販売台数が伸びていることが理解できる。昨年2016年の日本国内販売台数は過去最多となり、(前年比30%増)を記録し、この5年では3倍の数になっている。
(ク)新規登録台数による他車との比較
日本自動車輸入組合の統計情報(甲43)によれば、例えば、2011年から2016年までの「JEEP」の車名別輸入車新規登録台数の比較は、2011年度(3,721台)60車中12位、2012年度(4,956台)64車中12位、2013年度(5,596台)65車中12位、2014年度(6,802台)64車中9位、2015年度(7,279台)62車中9位、2016年度(9,745台)59車中7位となっており、「jeep/ジープ」の新規登録台数は、この6年間、常に全体の上位を保っており、特に、近年は、他の著名ブランドの自動車と共にベストテンに入っている。
(ケ)イベント情報
「第44回東京モーターショー2015」及び「札幌モーターショー2016」に出展した(甲44、甲45)。
また、プロサッカーチームのユベントスFCの公式スポンサーになり、東京・青山にオフィシャルカフェをオープンした(甲46)。
さらに、2014年世界最高峰のプロサーフィン・ツアー(WSL)とパートナーシップをスタートし、これにより、世界中の有名なサーフスポットを舞台に年間10戦以上ものコンテストが組まれるワールドサーフリーグのワールドチャンピオン争いにおいて、“jeepリーダーズ・ツアー・ランキング”のネーミングを表示する権利を得ている(甲47)。
(コ)日本及び世界での商標登録の状況
日本において「ジープ」、「JEEP」を含む商標は、28件が出願又は登録されている(甲48)。また、世界各国でもそれぞれ多くの商標登録が行われている(甲49)。
(サ)小括
以上の事実からも、商標「JEEP」は、本件商標の登録出願時前及び登録査定時において、既に米国その他の国はもとより、日本国内においても特別な四輪駆動車(全輪駆動小型車)の名称として、一般に広く知られ、現在に至るまで周知、著名なものとなっている。
(2)出所の混同について
ア 商標の類似性
本件商標は、申立人に係る周知商標「JEEP」を含んでおり、「4K」の部分と「JEEP」の部分の識別力の違い、さらに文字形状からくる分離感、加えて周知、著名性の相違から、分離して称呼され、観察される。
したがって、両者は要部である「JEEP」の部分が同一であり、全体として類似する商標である。
イ 引用商標の独創性及び周知性、著名性
「JEEP」の名称は、いわゆる造語であることは発祥国の米国でも明らかである。また、「JEEP」が周知、著名な商標で有ることについては上述したとおり。
ウ 商品の関連性
申立人の前身であるフィアットは1899年、イタリアのトリノで設立され、1900年から乗用車の生産を開始して以降、商用車やトラクター、船舶や航空用エンジンの生産、冶金事業、航空事業など、多角的な事業展開を推進している。そして、申立人は、2016年度において、14兆7091億円を売上げ世界6位の自動車メーカーである。
世界の自動車メーカーが、自動運転システムの開発競争を行う状況の中で、各社は、電子機器や通信機器に関しても関心と関連を持っており、商品「電気通信機械器具」に関する商品分野は商品「自動車」とますます密接な関連性が増している。
例えば、申立人は、ほぼすべてのモデルに定速走行・車間距離制御装置やアクティブパークアシスト、車線維持補助装置などの先進運転支援システムを導入している(甲50)。さらに、2017年1月8日、ハンドルやブレーキが無い小型の試験用車両を中心に、カリフォルニア州などの公道で、自動運転車を走らせている米グーグルとの共同開発した自動運転車のミニバンを初公開するなど、自動運転車に注力している(甲51)。
そして、現在JEEPには、総合運転支援システムが搭載されている(甲26、甲27)。これはスマートフォン等の通信機器を使って車両の種々の操作を可能とするシステムである。
このような現状により、本件商標の指定商品は、申立人の主な事業分野である商品「自動車」とも、出所の混同を考慮すべき関連性が存在している。
インターネット検索エンジンGoogleで「4KJEEP」を文字間隔を開けず英語入力検索すると、2017年8月18日現在において、約10,200件がヒットし、その中のほぼ全てが申立人のJEEPに関連する情報である。そして、「4K」と「JEEP」が組み合わされて使用されているのは、「JEEP」の4K画像で有ることを示しているものと理解されるものが散見される。このことは、「4KJEEP」の語は四輪駆動車「JEEP」に関する語であるとの認識が多くの需用者においてなされることを意味する(甲52)。このような明らかな混同は「JEEP」の周知、著名性による状況である。
(3)小括
以上のように、本件商標には、前輪駆動小型車として著名な申立人の商標である「JEEP」の部分を含んでおり、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が申立人又は同人と何らかの関係を有する者若しくは申立人の承諾を受けた者の業務に係る商品であるかのように感受する。
したがって、本件商標の指定商品への使用は、商品の出所について混同を生ずるおそれが高く、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)米国での「jeep」の周知、著名性
ア 歴史とブランドとしての定着度について
米国登録商標「jeep」は、米国におけるjeepの販売開始後に登録されたが(甲4)、米国及び世界において永年継続して使用されている。昨年は、申立人のホームページや各種媒体などでjeepが販売開始から75周年を迎えたことが紹介された(甲14等)。
このように、米国における「jeep」の歴史は、非常に長い年月にわたる。
イ 販売台数及び代理店数
世界各国のjeepの販売台数は、米国の販売台数が群を抜いている(甲42)。昨年2016年の売上げは、92万6千台で、日本の販売台数の約93倍に相当する。日本(約1億2千万人)と米国(約3億1千万人)の人口比からしても、米国における四輪駆動車「jeep」の浸透度は高いものである。米国においては、四輪駆動車の代名詞的な存在と言っても過言ではない。
これに相応して、米国国内における代理店の数は、2,361であり、これは日本の30倍以上に相当する。これら状況によって米国においてjeepのブランドが長い歴史の中で四輪駆動車を表示する商標として需用者に親しまれていることが理解される。
(2)両商標の類似性
本件商標が、米国において全輪駆動車を表示する商標として著名な商標である「jeep」を含んでいることは明か。申立人の商標は「jeep」も「JEEP」も周知、著名であるが、両者の関係は社会通念上でも同一のものであると。
以上のことから、本件商標と米国において広く認識されている「jeep」と本件商標とは類似するものである。
(3)不正の目的について
本件商標は、米国で周知、著名な申立人の商標と類似の商標であり、出所の混同を生ぜしめ、あるいは、申立人の周知著名な商標についての出所表示機能を稀釈化させる可能性がある。さらに、申立人の商標は永年にわたって世界で使用され、そして、それは造語である。このような状況から、本件商標は不正の目的をもって出願されたことが推認される。
(4)まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同第項19号に該当する。

第4 取消理由の通知
審判長は、商標権者に対して、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づいて取り消すべきものである旨の取消理由を平成29年10月5日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第5 商標権者の意見
1 不使用取消審判について
申立人が、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する引用商標1に対して、商標権者は、平成29年9月29日付けで商標法第50条の規定による商標権の取消審判を請求した。
上記取消審判においては、本件異議申立において指定商品の類否判断の対象となっている「電気通信機械器具」の取消を求めているので、上記取消審判の審決が確定するまで、本件異議申立の審理を中断されたい。
2 本願商標が登録維持されるべき理由
上記1の取消審判の請求が成り立たない場合であっても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
本件商標は、「4」「K」「J」「E」「E」「P」の数字及び英文字6文字で横一列に書して構成されている。
取消理由通知書において、「本件商標は、…その構成中の「K」の文字と「J」の文字は、その字形から、これらの文字の間にやや間隔があるように看取されるものである」と指摘する。
しかしながら、英文字「K」の右側と英文字「J」の左側は、文字の構造上、裏地の色を閉める空間(面積)が大きく占めている。英文字「K」と「J」をこの順番で並べると「K」と「J」との間に大きい空間か形成されるため、あたかも「K」と「J」との間に間隔が存在するものと錯覚していると思慮する。
しかしながら、実際は「K」と「J」との間の間隔が最も狭く、単に間隔の大きさだけで区切ると、「4」「KJ」「EEP」と読め、「ヨン・キロジュール・イー・イー・ピー」と読むのが合理的である。
ジュール「J」は、電力量や熱量などの単位であり、ヨン・キロジュール「4KJ」は、4000ジュールを意味し、イー・イー・ピー「EEP」は、Electrical Evoked Potential(電気的誘発電位)の略語を意味する。これらの用語は、いずれも、第9類の「科学用、航海用、測量用、写真用、映画用、光学用、計量用、測定用、信号用、検査(監視)用、救命用及び教育用の機器」及び「電気の伝導用、開閉用、変圧用、蓄電用、調整用又は制御用の機械器具」に関連する分野において用いられる用語といえる。
したがって、本件商標は、「4K」と「JEEP」と分けるのではなく、「4KJ」と「EEP」とで分けるのが自然であるといえ、本件商標の構成中の「EEP」の文字部分が取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。
3 結論
本件商標と引用商標1とを対比すると、外観、称呼、観念のいずれも両商標は類似するものではない。
よって、本件商標は、商標法4条1項第11号に該当しない。

第6 当審の判断
1 審理猶予について
商標権者は、意見書において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する引用商標1に対し、平成29年9月29日付けで商標法第50条の規定による商標権の取消審判を請求したことを理由に、当該取消審判の審決が確定するまで、本件異議申立の審理を中断されたい旨述べる。
しかしながら、商標法第50条第1項に規定する取消審判においては、取り消すべき旨の審決が確定したときは審判の請求の登録の日に商標権が消滅したものとみなされるのであり(同法第54条第2項)、同法第43条の3に規定する登録異議の申立ての審理及び決定に、取消審判の審理結果が影響を及ぼさないことは明白であるから、上記商標権者の意見には審理を猶予すべき理由がない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)指定商品の類否
本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品中の「電気通信機械器具」の範疇に含まれる商品である。
したがって、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似の商品である。
(2)商標の類否
ア 本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、ゴシック活字体で表した「4KJEEP」の文字を横書きしてなるものであるところ、その構成中の「K」の文字と「J」の文字は、その字形から、これらの文字の間にやや間隔があるように看取されるものである。また、本件商標は、構成文字全体もって、親しまれた意味合いが生ずるものではない。
そして、本件商標中の「4K」の文字部分は、本件商標の指定商品の属する電気通信機械器具との関係からみると、例えば、申立人提出の甲第5号証に「水平解像度がおおよそ4000の(横方向におおよそ4000の点が描ける)映像規格」の記載がある。また、「現代用語の基礎知識2017」(自由国民社、2017年1月1日発行)の「4K」の項目(1064頁)には、「800万画素の高解像度テレビ」との記載が認められ、同書の「4Kテレビ」の項目(610頁)には、「フルハイビジョンの4倍に当たる画素数で高画質を実現したテレビ。」との記載がある。さらに、2012年6月21日付け日経産業新聞(1頁)には、「4K・8K 未来映す 超高精細、世界を先導/『自然の光景と見間違えるほどの画像を創り出す』--。パナソニックやソニー、シャープなど国内のテレビ大手が深刻な販売不振に陥る中、日本勢反攻の糸口となりそうなのが『4K』と呼ばれる超高精細画像技術だ。・・・4Kで撮影を実現するのに不可欠な高解像撮像素子。実はこの分野で世界をリードするのは日本勢だ。ソニーは4K映像撮影の核となるCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーを熊本県菊陽町のグループ工場で自社生産する。4K映像を撮影できる業務用カメラ『F65』では、超高解像の大判CMOSセンサーを採用。センサーの有効画素数は約1900万画素の撮影能力を持ち、同センサーを使えば将来は4Kを超える映像も撮影できる。」との記事が掲載され、2013年1月7日付け日経産業新聞(6頁)には、「・・JVCケンウッド 4K画質に対応・・JVCケンウッドの『DLA-X55R』はフルハイビジョンの4倍の高画質である4Kに対応。・・独自の画像処理技術で映像を4Kに変換する。映画監督の意図した映像を忠実に再現することを目的に米THX社が設けた3Dディスプレー規格の認証を取得し、臨場感のある映像にこだわる人々の支持を狙う。」との記事が掲載されている。
そうすると、本件商標中の「4K」の文字部分は、その指定商品について使用した場合には、「フルハイビジョンの4倍の解像度をもつ商品」などの意味合いをもって、商品の品質、機能等を表示したものと認識されるにすぎないものであって、自他商品の識別機能を有しないものということができる。
一方、本件商標中の「JEEP」の文字部分は、「第二次世界大戦中にアメリカ陸軍の要請により開発された四輪駆動小型車で、戦後は、米国以外の国でも軍用、民生用として生産され、四輪駆動車の代名詞となっている」(甲11?甲13)もので、たとえ我が国における電気通信機械器具の需要者であっても、「JEEP」の文字が、いずれの者の業務に係るものか正確には知らないまでも、「四輪駆動小型車の一つ」を表するものであることについては、よく知られているといえる。
そうとすれば、本件商標は、その構成中の「JEEP」の文字部分が、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められることから、「JEEP」の文字部分を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも、許されると解するのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して、「ヨンケージープ」又は「フォーケージープ」の称呼を生ずるほか、要部である「JEEP」の文字部分より、単に「ジープ」の称呼をも生ずるものであって、「四輪駆動小型車の一つ」の観念を生ずるものということができる。
イ 引用商標1について
引用商標1は、別掲(2)のとおり、ゴシック活字体で表した「JEEP」の文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「ジープ」の称呼を生ずるものであって、「四輪駆動小型車の一つ」の観念を生ずるものと認める。
ウ 本件商標と引用商標1との対比
(ア)外観
本件商標は、前記アのとおり、その構成中の「JEEP」の文字部分が取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部であって、該「JEEP」の文字部分は、引用商標1とその書体において近似し、かつ、綴りを同じくするものである。
したがって、本件商標の要部と引用商標1は、外観上相紛らわしく、類似する商標と認める。
(イ)称呼
本件商標は、その構成中の要部である「JEEP」の文字部分より「ジープ」の称呼を生ずるものであって、該称呼は、引用商標1より生ずる「ジープ」の称呼と共通するものである。
したがって、本件商標と引用商標1は、称呼上類似する商標と認める。
(ウ)観念
本件商標の要部である「JEEP」の文字部分と引用商標1は、いずれも「四輪駆動小型車の一つ」の観念を生ずるものであるから、観念上類似する商標と認める。
(エ)したがって、本件商標と引用商標1は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。
ウ 小括
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標権者の主張について
商標権者は、本件商標構成文字の間隔は、「K」と「J」との間隔が最も狭いこと、「4KJ」の部分が「4000ジュール」を意味し、「EEP」の部分は、Electrical Evoked Potential(電気的誘発電位)の略語を意味することから、本件商標は、「4K」と「JEEP」と分けるのではなく、「4KJ」と「EEP」とで分けるのが自然である旨主張する。
しかしながら、本件商標構成文字におけるそれぞれの文字間の間隔の差は、これに接した需要者が明確に認識することができないほどの微差にすぎない。そして、その構成中の「K」の文字と「J」の文字は、その字形から両文字間の空白が多く、やや間隔があるように看取される場合があることに加え、本件商標の指定商品が属する電気通信機械器具の商取引における「4K」の文字の使用の実情及び「JEEP」の文字部分の著名性を考慮すれば、本件商標の構成中、「JEEP」の文字部分が、取引者・需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることから、該文字部分を要部として取り出し、これと他人の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することが許されることは上述のとおりであるから、商標権者の主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるといわざるを得ないから、その他の登録異議の申立ての理由について論及するまでもなく、本件商標は、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(1) 本件商標


別掲(2) 引用商標1


別掲(3) 引用商標2


異議決定日 2017-12-18 
出願番号 商願2016-75727(T2016-75727) 
審決分類 T 1 651・ 261- Z (W09)
T 1 651・ 262- Z (W09)
T 1 651・ 263- Z (W09)
最終処分 取消  
前審関与審査官 箕輪 秀人 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
酒井 福造
登録日 2017-02-17 
登録番号 商標登録第5922653号(T5922653) 
権利者 株式会社日本ビデオシステム
商標の称呼 フォーケイジープ、ヨンケイジープ、ジープ 
代理人 伊藤 寛之 
代理人 江藤 聡明 
代理人 奥野 彰彦 

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