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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない W03 審判 全部無効 観念類似 無効としない W03 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W03 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W03 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W03 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない W03 |
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管理番号 | 1325961 |
審判番号 | 無効2015-890101 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-12-28 |
確定日 | 2017-02-21 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5639325号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5639325号商標(以下「本件商標」という。)は、「Butterflylush」の欧文字と「バタフライラッシュ」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成25年7月13日に登録出願、第3類「化粧品,せっけん類」を指定商品として、同年10月24日に登録査定、同年12月27日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する登録商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。 1 登録第4479169号商標 登録第4479169号商標(以下「引用商標1」という。)は、「LUSH」の欧文字を横書きしてなり、平成8年12月6日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同13年6月1日に設定登録され、同年9月13日に指定商品中、第3類「香料類」について、放棄により一部抹消の登録がされたものである。 2 登録第5013148号商標 登録第5013148号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ラッシュ」の片仮名を横書きしてなり、平成18年6月1日に登録出願、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品」を指定商品として、同年12月22日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第177号証を提出した。 1 引用商標の周知著名性について (1)請求人について 請求人コスメティック ウォーリアス リミテッドは、英国に所在するラッシュリミテッド(甲4)に引用商標について通常使用権を許諾し、ラッシュリミテッドが株式会社ラッシュジャパン(以下「ラッシュジャパン」という。)に通常使用権を再許諾している。 (2)ラッシュについて ヘアケア・スキンケアのリテールビジネスを行うことを目的として、1994年に英国においてラッシュリミテッドが設立され、1995年に英国プール市にラッシュ第一号店を開店した。現在は、世界49ケ国、約800店舗を展開している(甲5)。 ラッシュジャパンは、平成10年10月1日に設立され、平成11年3月4日にスキンケア、ボディケア、ヘアケア、浴用化粧品等の商品を販売するラッシュの日本第一号店を東京都目黒区自由が丘に開店した。その後、全国に店舗数を増やし、本件商標の出願日前には、国内に151店舗を展開している(甲6)。売上は、平成23年6月期で120億円、平成24年6月期で149億円、平成25年6月期で152億円、平成26年6月期で145億円を計上しており(甲7)、富士経済研究所による平成24年の化粧品・美容サービス業態の市場調査においても、「ライフスタイル提案型ブランド」の代表として「ラッシュ」が取り上げられており、「05年頃から『ラッシュ』(ラッシュジャパン)などが出店を加速して市場が拡大し始めた」(甲8)とされている。ボディケア市場の調査においても、「ボディクリーム・ローション市場は・・・『ラッシュ』などライフスタイル提案型ブランドが牽引することで拡大が続いている」と分析されている(甲9)。また、平成22年11月27日の日経MJには、SNS(交流サイト)のミクシイにラッシュのコミュニテイーがあり、最大の「ラッシュ・ラブ」は11万人が登録していることや、ラッシュジャパンの発行するフリーペーパー「ラッシュタイムズ」が年5回、120万部発行されていること、ラッシュ商品のファン層が厚いこと等を示す記事が掲載されている(甲10)。 さらに、ラッシュ商品やその店舗は、雑誌、新聞、インターネット、テレビ、ラジオ等で多数紹介されており、平成24年6月から平成25年6月までの間だけでも1,307件の記事等が掲載されている(甲11)。また、その内容はラッシュ商品の紹介やラッシュ商品愛用者の感想だけでなく、ラッシュジャパンの社会的活動にも及んでおり、「ラッシュ」の名称は広く知られたものとなっている(甲12?甲154)。 以上のとおり、引用商標は、本件商標の出願前に日本において請求人が使用許諾しているラッシュジャパンの商品を示すものとして広く認識され、周知著名性を有していた。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)商標の類否の判断基準 商標法第4条第1項第11号における商標の類否は、最高裁判決(甲155)の判断基準に照らし、その外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきである。 (2)本件商標における分離観察 本件商標は片仮名で「バタフライラッシュ」と表記され、促音を含め9音と短くない音数で構成されていることから、本件商標が不可分一体としてしか把握され得ないというものではない。このことは、本件商標が、被請求人の販売する商品には「Butterfly lush」と「Butterfly」と「lush」を分離した表記が付されていること(甲156?甲169)からも明らかである。 そして、前記1のとおり、引用商標は、本件商標の出願前から現在に至るまで、請求人が使用許諾しているラッシュジャパンの商品を表示するものとして周知又は著名であったことから、本件商標の指定商品であるせっけん類、化粧品類に使用された「Butterfly lush」又は「バタフライラッシュ」の表示に接した取引者・需要者の中には、同表示に含まれる「lush」又は「ラッシュ」の部分に注目し、ラッシュジャパンの商品を想起する可能性は十分にあり、「Butterfly」及び「バタフライ」と「lush」及び「ラッシュ」との間で区切られたものとして理解し、そのように称呼することが容易に想定される。これは平成14年12月24日東京高裁判決においても示されている(甲170)。 そして、「Butterfly」及び「バタフライ」という文字は、我が国において「蝶」や「水泳の泳方」を意味する平易な英語として広く知られており、一般に商品名や会社名等にも広く採択、使用されていることから(甲171)、識別力の低い文字部分である。一方、「lush」及び「ラッシュ」の文字部分は、引用商標と一致し、需要者の間でラッシュジャパンの商品を示す標章として周知著名性を有することを踏まえると、需要者が本件商標のうち、ラッシュジャパンの商品を示す「lush」又は「ラッシュ」の部分に着目することが容易に想定できる。 この点、平成27年6月5日の異議の決定(甲172)は、「本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものとして把握されるとみるのが相当」であると判断している。 しかし、商標の類否は、商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等により、取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきものであり、本件であれば、引用商標がラッシュジャパンの商品として需要者の間で広く知られているという周知著名性や、本件商標が既成の意味を有しない造語であり、それぞれ意味を有する「Butterfly」及び「バタフライ」と「lush」及び「ラッシュ」に区切ることが自然であるということを考慮すべきであり、本件商標の文字が一連に記載されていることや、一連に称呼することができるという形式的な構成にのみ着目すべきではない。そして、「Butterfly」及び「バタフライ」が商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じないとはいえない場合においても、「Butterfly」及び「バタフライ」の文字部分が「lush」及び「ラッシュ」の文字部分に比して識別力が低く、需要者が「lush」及び「ラッシュ」に着目する結果、引用商標と一致する「ラッシュ」との称呼、引用商標と関連する観念を生じることが十分に想定される。 (3)外観、称呼、観念の類否 前記から、本件商標は、「Butterfly」及び「バタフライ」の文字部分と「lush」及び「ラッシュ」の文字部分とに分離して観察すべきである。 そして、本件商標の構成要素中、前記に記載のとおり、「lush」及び「ラッシュ」の部分が出所を表示する部分として認識されるから、自他識別力のある部分である「lush」及び「ラッシュ」から「ラッシュ」の称呼を生じる。 他方、引用商標は、いずれも「ラッシュ」の称呼を生じるから、本件商標と引用商標は、称呼において共通する。 また、観念においても、前記のとおり、引用商標は、ラッシュジャパンの商品を示すものとして周知著名であり、本件商標の「lush」及び「ラッシュ」の文字部分からラッシュジャパンが販売する商品が容易に想起されるものであるから、本件商標と引用商標は、観念上も類似する。 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼が共通し、観念が類似する類似商標であるといえる。 (4)指定商品の同一性 本件商標の指定商品である化粧品及びせっけん類は、引用商標の指定商品と同一であることは明らかである。 3 商標法第4条第1項第10号について (1)引用商標の周知著名性 前記で述べたとおり、引用商標と同一及び類似の標章は、本件商標の出願前に日本について請求人が使用許諾しているラッシュジャパンの商品を示すものとして需要者の間で広く知られていたものである。 (2)商標及び商品の同一性、類似性 本件商標が引用商標に類似し、その使用される商品が同一であることは前記記載のとおりである。 4 商標法第4条第1項第15号について (1)「混同のおそれ」の意義 商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生じさせるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)(甲173)。そして、商標間に類似性が認められない場合においても、本件商標と引用商標との観念の関連性や、引用商標の周知著名性、使用される商品の同一性に照らし、混同を生じるおそれがあることは、平成24年6月6日知財高裁判決(甲174)や平成14年12月24日東京高裁判決においても示されている。 (2)本件における「混同を生じるおそれ」 前記記載のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標である。また、仮に類似性が認められないとしても、引用商標は、ラッシュジャパンの商品を表すものとして需要者の間で広く認識されており、本件商標中に「lush」及び「ラッシュ」が含まれていることから、本件商標に触れた者がラッシュジャパンの商品を想起することは容易に考えられ、本件商標と引用商標の関連性は極めて高いといえる。また、本件商標である「Butterflylush」及び「バタフライラッシュ」は、それ自体特定の意味を有する語ではなく、「Butterfly」及び「バタフライ」と「lush」及び「ラッシュ」の語を繋げた造語であることからも、本件商標に触れた需要者が、独立した意味を有する「Butterfly」及び「バタフライ」と「lush」及び「ラッシュ」とに区切って把握することが想定され、このことによっても、本件商標に触れた需要者がより容易にラッシュジャパンの商品を観念するといえる。 本件商標が使用される商品と、引用商標が使用される商品の需要者は共通しており、仮に本件商標と引用商標との間に類似性が認められない場合においても、本件商標を指定商品に使用されたとき、その取引者及び需要者において、当該商品が、請求人又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所につきいわゆる広義の混同を生じるおそれがあることは否定できない。 本件商標は、これに接した取引者及び需要者に対し引用商標を連想させて、引用商標を使用してきた特定の者又はその者と組織的・経済的に何らかの関係がある者の商務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。 5 商標法第4条第1項第19号について (1)引用商標の周知著名性について 「1 引用商標の周知著名性について」に記載したとおり、本件商標の出願時には、引用商標は、ラッシュジャパンの商品を示すものとして需要者に広く認識されていた。したがって、引用商標は、請求人が引用商標を使用許諾しているラッシュジャパンの商品を表示するものとして、日本国内において需要者の間に広く認識されている商標である。 (2)引用商標との類似性について 「2 商標法第4条第1項第11号について」に記載したとおり、本件商標は、引用商標と類似の商標である。 (3)不正の目的について 引用商標が周知・著名な商標であったこと、被請求人の主な事業が「化粧品、健康食品、食品、雑貨等の美容健康関連商材の企画開発・販売、輸出業務」、「化粧品、健康食品、美容関連雑貨等のPB製品の企画・製造受託業務」であることからすれば(甲197、審決注:甲197の提出はない。)、被請求人は、本件商標の出願時、当然に引用商標について知っていたといえる。さらに、被請求人は、被請求人の販売するまつげ美容液について「Butterfly lush」と「Butterfly」と「lush」との間にスペースを設け、より引用商標を想起しやすい方法で表記したうえで、「バタフライラッシュ」と併記し、同まつげ美容液を販売している(甲176?甲184、審決注:甲178?甲184の提出はない。)。通常であれば、登録商標をそのまま商品名として表記することが合理的であるにもかかわらず、このように敢えて「Butterfly」と「lush」との間にスペースを設けて、商品名として表記していることは、引用商標を想起させ、引用商標に化体する信用や名声にただ乗りする意思があるからに他ならない。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第39号証を提出した。 1 引用商標の周知著名性に対する反論 (1)売り上げについて 請求人は、甲第7号証に基づき、請求人の各年の売上を主張するが、自らの売上額を示すのみで客観性に乏しく、引用商標の指定商品に係る業界全体の総売り上げに対して、請求人の示す売上額が多いのか、又は少ないのかが定かでなく、甲第7号証は周知著名性を立証するに際しての証拠資料としては不十分であるといわざるを得ない。 (2)市場調査結果について 請求人は、国内化粧品市場調査に関する客観的資料として、甲第8号証及び甲第9号証を提出しているが、請求人が紹介されている記事は、「ライフスタイル提案型ブランド」という曖昧な表現の市場予測に関するものであり、引用商標の指定商品との関連性が不明であるばかりか、2011年度、及び2012年度の市場動向を示す記事であり、少なくとも本件商標の査定時(2013年度)における周知著名性を立証できるものではない。 (3)雑誌掲載記事について 請求人は甲第10号証として、コミュニティサイトの「ラッシュ・ラブ」の登録人数が11万人である旨を主張するが、この点についても母数を明示しておらず、11万人の登録人数が多いのか、又は少ないのかが客観的に判断できるものではないと共に、甲第10号証は、2010年時点の情報であり、本件商標の査定時における引用商標の周知著名性を立証するための資料としては不十分である。なお、甲第10号証において紹介されている標章は「ラッシュ・ラブ」又は「ラッシュタイムズ」であり、少なくとも引用商標とは同一ではなく、これら標章と引用商標の周知著名性の因果関係が不明である。 また、請求人は甲第11号証及び甲第12号証ないし甲第154号証において、引用商標の過去の雑誌掲載等をもって、引用商標の周知著名性を立証しているが、甲第11号証においては、発行年(放送年)及び発行部数等が記載されておらず、甲第12号証ないし甲第154号証においても、大半の証拠において発行年月日が記載されていなかったり、不鮮明であるために判別できなかったりと、証拠として不十分なものといわざるを得ない。 さらに、雑誌の中で紹介されている請求人の商品と思われる紹介記事についても、引用商標が目立つような商標的な態様で表示されているものとはいえず、読者は一字一句を確認しなければ、引用商標の存在を確認することができない程度のものである。 2 商標法第4条第1項第11号に対する反論 本件商標と引用商標は、平成27年6月5日の異議決定(以下「本件異議決定」という。)においても示されているとおり、外観、称呼、観念において相紛れることのない非類似の商標である。以下、本件商標と引用商標の類否につき検討する。 (1)外観 ア 本件商標の全体構成について 本件商標の全体は、欧文字の「Butterflylush」と、片仮名の「バタフライラッシュ」を上下二段に併記したものであり、その構成中、上段部分の「Butterflylush」及び下段部分の「バタフライラッシュ」の文字は何れも同書、同大、等間隔にまとまりよく一連に表示されているものであり、一連一体の商標として認識されるものである。 イ 商標の使用態様に基づく類否判断の可否について 請求人は、甲第156号証ないし甲第169号証に基づき、被請求人の使用態様に言及し、「Butterfly」と「lush」は分離可能であるかのような主張を行うが、このような使用態様を考慮した類否の判断は、通常、不正競争防止法第2条第1項第1号における混同のおそれや、商標権侵害の成否を判断する際に参酌されることはあっても、登録商標の範囲を定めるに際して参酌されることは許されるべきものではない。これは商標法第27条第1項の規定からも明らかであると共に、本件異議決定においても述べられていることである。 ウ 本件商標の分離観察の可否について 請求人は、引用商標が周知著名であるがゆえに「Butterflylush」の「lush」の文字部分について着目し、「Butterfly」と「lush」に分離観察が可能である旨を主張するが、必ずしも引用商標は本件商標の査定時において周知著名性を有していたとはいえない。また、本件異議決定においても述べられているとおり、本件商標は同書、同大、等間隔にまとまりよく一連に表示されているものである。 以上のことを考慮しても、「lush」の部分を直ちに分離観察すべき根拠も乏しいといえる。このことは、例えば、請求人が過去に行った以下の異議申立における異議決定において、「lush」の文字部分を抽出して要部認定がされていない点からも明らかである(乙1?乙6)。 エ 「Butterfly」の識別力の有無について 請求人は「Butterfly」、又は「バタフライ」は特定の意味を有する平易な英語として一般に広く採択、使用されているものとして甲第171号証を証拠として提出しているが、甲第171号証は単に単語「バタフライ」の用語説明に過ぎないものである。「Butterfly」、又は「バタフライ」の語が本件商標の指定商品に係る「化粧品」、又は「せっけん類」の意味合いにおいて常用的に使用されている点については、請求人は何ら証拠を示していない。 なお、被請求人にて独自に調査した範囲おいては、「Butterfly」、又は「バタフライ」は、請求人が主張するように一般に商品名や会社名等として広く採択、使用され、識別力の低い語であるとは到底考えられない。 かかる妥当性を示すものとして、互いに非類似の商標として併存登録されている例がある(乙7?乙32)。 すなわち、「Butterfly」、又は「バタフライ」の語が、請求人が主張するように一般に商品名や会社名等として広く採択、使用されており識別力の低い文字であるとするならば、前記のような併存登録は生じないはずである。 (2)称呼 前記で主張したとおり、本件商標はそれぞれの構成全体をもって一体のものとして看取されるべきものであり、「バタフライラッシュ」の一連の称呼のみが生じるものである。本件商標と引用商標は、識別上重要な要素を占める語頭において「バタフライ」の有無という顕著な差異を有する。また、本件商標は促音を含め全体で9音の音数から構成されているが、「バタフライ」はその内の半数以上を占める5音から構成されており、両称呼の全体に及ぼす影響は極めて大きいといえる。また、それぞれ一連に称呼した場合においても語調、語感を異にして聞き誤るおそれはないものと認められる。さらに、本件商標の全体構成を考慮しても、称呼上重要な語頭である「バタフライ」が称呼として省略され、「lush」、又は「ラッシュ」の文字部分のみを分離、抽出し、「ラッシュ」の称呼として他者に伝達されるような事情も存在しない。 (3)観念 前記記載のとおり、本件商標はそれぞれの構成文字全体をもって一つの造語よりなるものと認識し把握されるものであり、特定の観念が生じるものではない。 一方、引用商標1は「緑の茂った」「水々しい」程度の観念を生じ、引用商標2は引用商標1の観念に加え「大急ぎの」「切迫した」といった観念が生じるため、本件商標と引用商標は観念において互いに相紛れることはない。 3 商標法第4条第1項第10号に対する反論 前記において主張したとおり、請求人が提出した使用証拠のみでは、引用商標が本件商標の査定時において周知性を有していたとは認められない。 また、例え、本件商標の査定時において引用商標が周知性を有していたとしても、本件商標と引用商標は全く非類似の商標である。 したがって、他の要件を詳述するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に該当するものではない。 4 商標法第4条第1項第15号に対する反論 (1)本件商標と引用商標は非類似であることについて 前記において主張したとおり、本件商標はそれぞれの構成文字全体をもって一体のものとして看取されるべきものであり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり別異のものであるから、本件商標をその指定商品について使用した場合に、これに接する取引者及び需要者が引用商標又はラッシュジャパンを連想、想起するようなことはないというべきである。 (2)引用商標の周知著名性が混同を生じるおそれに与える影響について ここで、被請求人は本件商標と引用商標が非類似の場合においても、引用商標の周知性を考慮すると、本件商標は引用商標との関係で混同を生じるおそれがあるとして商標法第4条第1項第15号に該当すると主張する。 しかしながら、取引の実情及び引用商標に関連する無効審決及び異議決定等を総合的に考慮したとしても、両商標において混同を生じるような特段の事情をうかがわせる証拠もない。 本件商標と引用商標は、その前提として非類似の商標であるため、引用商標の周知著名性の有無にかかわらず、両商標において混同を生じるおそれは無いといえる。 (3)具体的な取引の実情について 本来、登録商標の範囲は願書の記載に基づいて定めるべきであり、実際の使用態様に基づき登録商標の範囲を定めるべきではないことは、前記において主張し、異議決定においても述べられているとおりである。 ア 表示形態について 請求人は、取引の実情として、被請求人が「Butterfly」と「lush」を分離して表記していることに言及し、これに接した需要者及び取引者は「lush」及び「ラッシュ」の部分に着目すると主張する。 しかしながら、前記においても主張したとおり、「Butterfly」又は「バタフライ」の語は、少なくとも本件商標の指定商品との関係においては識別力のある語であり、例え「Butterfly」と「lush」の間にスペースを設けて表記したとしても、一連一体の商標として認識されるか、又は語頭である「Butterfly」の語に注意が向くはずであり、引用商標を連想又は想起させるものとは認められない。 イ 販売商品、販売形態及びその需要者層について (ア)被請求人の販売商品、販売形態及びその需要者層について 被請求人が販売する商品は、請求人が証拠として提出する甲第156号証ないし甲第169号証に示されているとおり、化粧品の中でも特異なまつ毛美容液(以下「本件商品」という。)である。 また、その販売形態についても、被請求人は独自の販売店舗を有さず、本件商品の全ては卸売業者を通じて販売され、その商品の大半は美容室や美容サロン等において流通する。この点、例えば検索サイトGoog1eにおいて、キーワード「LUSH まつ毛美容液」と検索しても、被請求人の商品は一切ヒットせず(乙36)、「Butterfly まつ毛美容液」(乙37)又は「バタフライまつ毛美容液」(乙38)と入力しなければ、本件商品をインターネット上で見つけることはできない。本件商品についてインターネット上の通販サイトを通じて購入する需要者とは、本件商品について知識を持ち、主に美容情報に敏感で、年齢層も20?40代を中心とする成人女性であり、化粧品ブランドにも拘りをもち、商品を購入する際には、他のブランド商品とも十分に比較検討を行った上で、最終的に自身の気に入ったブランド商品を購入する者であると考えられる。 (イ)請求人の販売商品、販売形態及びその需要者層について 一方で、請求人はせっけん類を中心とする商品を販売しており、まつ毛美容液については一切販売を行っていない(乙39)。 また、その販売形態についても、請求人が証拠として提出する甲第6号証にもあるとおり、主にラッシュジャパンが展開する請求人の商品のみを取り扱う店舗、請求人が管理するインターネット上の通販サイトにおいて販売されており、本件商品との販売形態も大きく異なるものである。 以上のとおり、本件商品と被告の販売する商品は全く異なり、その販売形態及び需要者層についても全く異なるものであるから、これら具体的な取引実情を総合的に判断したとしても、本件商標と引用商標の間に混同が生じるおそれがないことは明らかである。 ウ 関連無効審決及び異議決定について 請求人は、平成25年6月24日審決の無効審判において「Lush Repair\ラッシュリペア」の商標が、平成26年9月3日決定の異議申立において「MEN’SLUSH\メンズラッシュ」の商標が、それぞれラッシュジャパンを想起し連想するのが相当であるから、商標法第4条第1項第15号に該当するとの無効審決及び異議決定がなされているとして甲第175号証及び甲第176号証を提出している。 しかし、本件商標と「Lush Repair\ラッシュリペア」及び「MEN’SLUSH\メンズラッシュ」は商標の構成態様等が異なり、事案を全く異にするものであるから同列に扱うべきではない。 エ 小括 以上のとおり、そもそも本件商標と引用商標は非類似であるため、混同のおそれが生じないことは明らかであるが、本件商標と引用商標の取引形態、商品の取引者及び需要者の共通性等を総合的に勘案しても、本件商標が引用商標との関係において請求人の商品であると誤信させるおそれがある(狭義の混同)商標であるとは認められず、また、その商品等が他人との聞にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化グループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信させるおそれがある(広義の混同)商標であるとする特段の事情も存在しないといえる。 5 商標法第4条第1項第19号に対する反論 本件商標が必ずしも周知著名でないこと、本件商標が引用商標と類似しないこと、本件商標が指定商品に使用されることによって、請求人、又はこれと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、出所について混同を生じるおそれがあるとは認められないことは、前記において主張したとおりである。 したがって、本件商標の使用により、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあるとは認められず、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって登録されたものでないことは明らかである。 第5 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)証拠及び請求人の主張の趣旨によれば以下のことが確認できる。 ア 請求人は、英国在のLUSH Ltd(ラッシュリミテッド)に引用商標の通常使用権を許諾し、同社を介して我が国の株式会社ラッシュジャパンに通常使用権を再許諾していると推認できること(甲4及び請求人の主張の趣旨)。 イ 請求人は、1994年に英国において設立され、1995年に英国プール市にラッシュ第一号店を開店し、現在は、世界49ケ国で約800店舗を展開していること(甲5及び請求人の主張の趣旨)。 ウ ラッシュジャパンは、神奈川県愛甲郡愛甲町に本社を置き、ラッシュリミテッドの子会社として1998年(平成10年)10月1日に設立され、平成11年3月4日に第一号店を東京都目黒区自由が丘に開店し、その取扱商品は「スキンケア、ボディケア、ヘアケア、浴用化粧品」等であり、平成25年9月9日以前には全国に151店舗を展開し、平成27年7月28日現在、144店舗を展開していること(甲4、甲6、甲7及び請求人の主張の趣旨)。 エ ラッシュジャパンの売上は、平成23年6月期で120億円、平成24年6月期で149億円、平成25年6月期で152億円、平成26年6月期で145億円を計上しているとの主張があること(甲7及び請求人の主張の趣旨)。 オ 富士経済研究所による平成24年の化粧品・美容サービス業態の市場調査において、「ラッシュ」が取り上げられ、「05年頃から『ラッシュ』(ラッシュジャパン)などが出店を加速して市場が拡大し始めた」とされ(甲8)、ボディケア市場の調査においても、「ボディクリーム・ローション市場は・・・『ラッシュ』(ラッシュジャパン)などライフスタイル提案型ブランドが牽引することで拡大が続いている。」とされていること(甲9)。 カ 平成22年11月27日の日経MJには、SNS(交流サイト)のミクシィ(合議体注記:「ミクシィ」は株式会社ミクシィの登録商標)にラッシュのコミュニテイーがあり、ラッシュの商品の使われ方が紹介されている「ラッシュ・ラブ」は11万人が登録していること、ラッシュジャパンの発行するフリーペーパー「ラッシュタイムズ」が年5回、120万部発行されていること、ラッシュ商品のファン層が厚いこと等を示す記事が掲載されていること(甲10)。 キ ラッシュ商品やその店舗は、雑誌、新聞、インターネット、テレビ、ラジオ等で紹介されており、平成24年6月から平成25年6月までの間だけでも1,307件の記事等が掲載されているとの主張があること(甲11及び請求人の主張の趣旨)。 ク 2012年(平成24年)6月から2013年(平成25年)8月にかけて、ラッシュジャパンの取り扱う浴用化粧品、せっけん、スキンケア・ボディケア・ヘアケア用化粧品等やその店舗が雑誌、新聞等で紹介され、ここにおいて引用商標が使用され、また、「Lush」や「ラッシュ」の文字が文中に表示されていること(甲12?甲154)。 (2)引用商標の周知著名性について 前記(1)を総合して検討すると、「LUSH」の欧文字からなる引用商標1及び「ラッシュ」の片仮名からなる引用商標2は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ラッシュジャパンの業務に係る商品「せっけん類,化粧品」を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたといえるものである。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、前記第1のとおり、「Butterflylush」及び「バタフライラッシュ」の文字を二段に横書きしてなるところ、その構成中、上段部分の「Butterflylush」及び下段部分の「バタフライラッシュ」の文字は、いずれも、同書体、同じ大きさで等間隔をもって表されていることから、外観上一体のものとして看取されるものであり、下段の片仮名部分は、上段の欧文字部分の読みを表したものと理解されるものである。 請求人は、「『Butterfly』及び『バタフライ』という文字は、我が国において『蝶』や『水泳の泳方』を意味する平易な英語として広く知られており、また、一般に商品名や会社名等にも広く採択、使用されていることから(甲171)、識別力の低い文字部分である。『Butterfly』及び『バタフライ』の文字部分と『lush』及び『ラッシュ』の文字部分とに分離して観察すべきであり、需要者が『lush』及び『ラッシュ』に着目する結果、引用商標と一致する『ラッシュ』との称呼、引用商標と関連する観念を生じることが十分に想定される。」旨主張している。 しかしながら、本件商標の構成中の「Butterflylush」の文字部分は、語頭を大文字で表し、続く文字を小文字で表してなるから、全体が1つの語であるかのように認識されるものであり、また、本件商標から生じると認められる「バタフライラッシュ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであるから、「Butterfly」と「lush」の文字間で分断することは自然とはいえず、「Butterfly」の文字と「lush」の文字からなるものと理解されるとはいえないものである。 仮に、「Butterfly」の文字が「蝶」等の意味を有する平易な英語であることから、本件商標の構成中の「Butterfly」の文字部分及びその表音として理解される「バタフライ」の文字部分が認識されるとしても、これらの語が、その指定商品との関係において、商品の品質等を表示するものとして取引上、普通に使用され、該文字部分が自他商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないと認めるべき特段の実情は見いだせず、また、請求人がいうように「Butterfly」及び「バタフライ」の文字が一般に商品名や会社名等にも広く採択、使用されているとしても、そのことをもって識別力の低い文字ということもできない。 そうとすれば、引用商標の周知性を考慮しても、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものとして把握されるとみるのが相当であり、その構成文字全体に相応して、「バタフライラッシュ」の称呼のみを生じるものであり、特定の観念を生じないものというべきである。 (2)引用商標 引用商標は、前記第2のとおり、「LUSH」の文字又は「ラッシュ」の文字を横書きしてなるものであるところ、その構成文字に相応して「ラッシュ」の称呼を生じ、ラッシュジャパンの業務に係る商品「せっけん類,化粧品」を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたことからすれば、これを指定商品中「せっけん類,化粧品」に使用する場合は「(ブランドとしての)ラッシュ」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標とは、その構成文字を異にするから、外観において明らかに相違し、また、本件商標から生じる「バタフライラッシュ」と引用商標から生じる「ラッシュ」の称呼は、「バタフライ」の音の有無という差異を有するから、称呼において相紛れるおそれはない。また、本件商標は、特定の観念を生じないものであり、引用商標は、「せっけん類,化粧品」に使用する場合は「(ブランドとしての)ラッシュ」の観念を生じるものであるから、本件商標と引用商標は、観念において相紛れるおそれはない。 したがって、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、別異のものといえるほどの非類似の商標である。 なお、請求人は、被請求人の販売する商品には、「Butterfly lush」と「Butterfly」と「lush」を分離した表記が付されているから、本件商標は分離観察される旨主張し、甲第156号証ないし甲第169号証を提出しているが、登録商標の範囲は願書に記載した商標に基づいて定められるものであり(商標法第27条第1項)、本件商標は、前記2(1)のとおり、その構成全体をもって一体不可分のものというべきであるから、この点についての請求人の主張は、採用することができない。 よって、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、両者の指定商品が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 前記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。 したがって、本件商標の指定商品が、引用商標が使用されている商品と同一又は類似であり、引用商標が、取引者、需要者の間に広く認識されていたとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 前記2のとおり、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものとして把握されるものであり、その構成中の「lush」又は「ラッシュ」の文字部分が分離抽出されるとみるべき事情はなく、本件商標と引用商標とは、別異のものといえるほどの非類似の商標であるから、引用商標がラッシュジャパンの業務に係る商品を表示する商標として需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標又はラッシュジャパンを連想、想起することはなく、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 前記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であり、また、本件商標が不正の目的をもって使用する商標であるというべき事情は認められない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-23 |
結審通知日 | 2016-09-27 |
審決日 | 2016-10-14 |
出願番号 | 商願2013-58458(T2013-58458) |
審決分類 |
T
1
11・
262-
Y
(W03)
T 1 11・ 25- Y (W03) T 1 11・ 222- Y (W03) T 1 11・ 261- Y (W03) T 1 11・ 263- Y (W03) T 1 11・ 271- Y (W03) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大井手 正雄 |
特許庁審判長 |
大森 健司 |
特許庁審判官 |
原田 信彦 土井 敬子 |
登録日 | 2013-12-27 |
登録番号 | 商標登録第5639325号(T5639325) |
商標の称呼 | バタフライラッシュ |
復代理人 | 石井 あやか |
代理人 | 有吉 修一朗 |
代理人 | 筒井 宣圭 |
代理人 | 佐藤 恒雄 |
代理人 | 遠藤 聡子 |
代理人 | 梶原 圭太 |
代理人 | 森田 靖之 |