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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W19
管理番号 1325953 
審判番号 不服2016-2719 
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-02 
確定日 2017-02-17 
事件の表示 商願2015-15135拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第19類「手すり(金属製及び金属製を主とするものを除く。)」を指定商品として、平成27年2月4日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係において、『手すりの一類型』を表したと認められるから、これをその指定商品に使用するも取引者・需要者は、通常採用し得る手すりと認識するに止まり、単に該商品の形状のみからなる立体商標を表したにすぎないものとみるのが相当である。そうすると、本願商標は、単に商品の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2に示す事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、平成28年9月21日付け証拠調べ通知書によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。

4 証拠調べ通知に対する請求人の意見の要旨
請求人は、前記3の証拠調べ通知に対し、平成28年11月2日付け意見書を提出し、要旨以下のように主張した。
「手すり」は、掴部と脚部の両方が備わっていなければ、「手すり」の一類型とはいえず、証拠調べ通知書で示された証拠は、全て、それら両方が揃った「手すり」として不可欠な形状をしたものばかりであるが、本願商標に係る立体的形状は、「手すり」の脚部に相当する部分を有さないことから、該証拠をもって、「手すり」の一類型を表したものとはいえない。
したがって、本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、よって、商標法3条1項3号に該当するものではない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
立体商標における商品の形状に係る判示
商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決、平成22年(行ケ)第10253号判決)。
イ 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性
本願商標は、別掲1のとおり、角を丸くした長方形外枠内に、縦に2本、横に3本の棒をそれぞれ等間隔に配した格子状矩形の立体的形状からなり、指定商品を第19類「手すり(金属製及び金属製を主とするものを除く。)」とするものである。
ところで、本願指定商品を含む「手すり」は、「手すり」に関する事典(別掲2の後掲1)の記載によれば、「手すり」を取り扱う業界においては、「手すり」には、人間の行動をスムーズにするために、階段、廊下、トイレや浴室等に設置される「補助手すり」と、高所からの墜落を防ぐために、バルコニーや屋上に設置される柵や壁である「墜落防止手すり柵」の二つがあることが認められる。また、「手すり」という場合には、実際に手で握る「笠木」の部分を指す場合と、「手すり子」(笠木を支える縦の棒(縦桟)のことで、縦桟の部分が面の場合もある。)を含む全体を指している場合があることが認められる。
そして、「手すり」を取り扱う業界においては、別掲2の後掲2(1)に見られるとおり、使用者が様々な位置で安定して「手すり」につかまることができるよう、「笠木」を縦及び横に組み合わせて連続的に設置したり、U型、O型、はしご状、波型等、使用する場所に合わせた様々な形状の「手すり」が販売されている事実が認められる。
また、別掲2の後掲2(2)のとおり、「墜落防止手すり柵」については、その「手すり子」の部分に、縦格子、横格子、ひし形格子、井桁格子等の形状が採用されているほか、装飾を施した「手すり子」の面材が使用、販売されている事実も認められる。
そうすると、「手すり」を取り扱う業界においては、商品の機能性及び美観等の向上の観点から、「笠木」や「手すり子」等の部分を含む「手すり」の形状に変更又は装飾が施されることは一般的に行われているといえる。
以上の状況を踏まえると、本願商標に係る立体的形状は、その指定商品である「手すり」との関係においては、これを見た需要者に対して、機能性、美観又はその両方を向上させた、格子状矩形の「補助手すり」の「笠木」部分を認識させるというのが自然である。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「手すり」の「笠木」部分の一類型を表したと認識するに止まり、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標を表したにすぎないものであるというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、平成28年9月21日付け証拠調べ通知に対する意見書において、「手すり」は、掴部と脚部の両方が備わっていなければ、「手すり」とはいえず、証拠調べ通知書で示された証拠は、全て、それら両方が揃った「手すり」として不可欠な形状をしたものばかりであるが、本願商標に係る立体的形状は、「手すり」の脚部に相当する部分を有さないことから、該証拠をもって、「手すり」の一類型を表したものとはいえない旨主張する。
しかしながら、証拠調べ通知書で示した証拠は、「手すり」が「笠木」の部分を指す場合と「手すり子」(請求人のいう「脚部」)を含む全体を指す場合があること及び「手すり」の形状が多種多様であることについて証拠を示したうえで、本願商標は、「手すり」の「笠木」部分の一類型と認定しているところ、請求人は「手すり」は、掴部と脚部(「笠木」と「手すり子」)の両方が備わっていなければ、「手すり」とはいえない旨を主張するばかりでこれを裏付ける証拠の提出も無いことから 、請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)
第1図


第2図


第3図


別掲2(当審においてした証拠調べ通知の要旨)
本願商標は、別掲1のとおりの立体的形状からなり、指定商品を第19類「手すり(金属製及び金属製を主とするものを除く。)」とするものであるところ、「手すり」は、後掲1のとおり、実際に手で握る「笠木」の部分を指す場合と、「手すり子」(笠木を支える縦の棒(縦桟)のことで、縦桟の部分が面の場合もある。)を含む全体を指している場合がある。
そして、「手すり」を取り扱う業界においては、後掲2のとおり、「笠木」を縦及び横に組み合わせて連続的に設置したり、U型、O型、はしご状、波型等、使用する場所に合わせた様々な形状の「手すり」が販売されている事実及び「墜落防止手すり柵」については、その「手すり子」の部分に、縦格子、横格子、ひし形格子、井桁格子等の形状が採用されているほか、装飾を施した「手すり子」の面材が使用、販売されている事実も認められる。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「手すり」の「笠木」部分の一類型を表したと認識するに止まり、単に商品の形状のみからなる立体商標を表したにすぎないものと認める。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

後掲1 「手すり」について
「[NA選書]手すり大全」(日経BP社発行 78頁?79頁)において、「基本 いまさら聞けない手すりのQ&A」との項目中に、「Q[1] そもそも『手すり』とは何を指すの?」の見出しの下、「世の中で手すりと呼ばれているものには、大きく分けて『補助手すり』と『墜落防止手すり柵』の二つがあることを知っておいてください。前者は上りや下りや立ち座りなど、人間の行動をスムーズにするためのものです。これには、階段や廊下に設置する『歩行補助手すり』と、トイレや浴室などに設置する『動作補助手すり』・・・があります。『墜落防止手すり柵』は文字通り、高所からの墜落を防ぐためのものです。バルコニーや屋上などに設置する柵や壁がそれです。側壁のない階段に設置する手すりは、歩行補助手すりであり、墜落防止手すり柵でもあります。また、『手すり』という言葉が、実際に手で握る『笠木』の部分を指している場合と、『手すり子』を含む全体を指している場合があります。・・・なお、『手すり子』とは、笠木を支える縦の棒(縦桟)のことで、ここが面になっている場合には『腰壁』あるいは『手すり壁』と呼びます。」との記載がある。

後掲2 「手すり」を取り扱う分野における「手すり」の形状について
(1)「補助手すり」の形状について
ア 「Daiwa Kasei」のウェブサイトにおいて、「製品情報」の「システムバス」の項目中に、「移動の助けになる どこでも手すり」の見出しの下、「浴室内での移動をサポートする手すりを、動線に沿って全面に設置しています。壁パネルが全面補強となっているため、手すりの位置や数を自由に変更できます。」との記載がある。
(http://www.daiwakasei.co.jp/product/systembath/kaigo_systembath_unitbath/yutoricare/feature/feature-handrail.html)
そして、「■連続手すり」として、「浴槽への出入りや、浴槽内での立ち座りをサポートする手すりです。移乗台に腰かけた状態から浴槽に入るまでをスムーズにし、浴槽内での滑りを防止する役割も果たします。さらに、湯船につかった場合には入浴姿勢を安定させることもできます。手すりが連続している分、サポートできる範囲が広く安心です。」との記載とともに、縦と横に組み合わされて壁に設置された手すりの写真が掲載されている。


「■U型手すり」として、「立ち寄りのサポートをするのが、U型手すりです。イスに座るときや、介助する方に洗い流してもらう時など、両手でしっかりと掴まり立ちができるため、安定した立ち座りが可能になります。」との記載とともに、壁に設置されたU型の手すりの写真が掲載されている。


「■O型手すり」として、「O型手すりは主に横移動をサポートします。O型になっていることで、体格や身体レベルの異なる方々が使用してもそれぞれの方にとって使いやすい高さ・向きを実現します。また、湿度が高く、事故の起こりやすい浴室では、万が一の時につかみやすい位置に手すりを備え付けていることが安心へとつながります。」との記載とともに、壁に設置されたO型の手すりの写真が掲載されている。



イ 「QUNETTO」のウェブサイトにおいて、「製品情報」の「トイレ・風呂・玄関等用動作補助手すり」の項目中に、「QUNETTO\トイレ・玄関等用\クネット樹脂\立つ、座る、そのときの安心に。」の見出しの下、「縦・横・斜め付けが可能な万能手すり」及び「L型手すり」との記載とともに、波型及び波型と直線をL型に組み合わせた形状の手すりの写真が掲載されている。
(http://www.qunetto.co.jp/products/jyushi_dousa/)



ウ 「株式会社モルテン健康用品事業本部」のウェブサイトにおいて、「製品情報」の「生活動作支援用具」の項目中に、「手すり(ルーツシリーズ)\ルーツ」の見出しの下、「置くだけで生活動作を広げる床置き型手すり」との記載とともに、縦と横に組み合わせたはしご状等の形状の手すりの写真が掲載されている。
(http://www.molten.co.jp/health/product/shien/04.html)



エ 「DIPPERホクメイ」のウェブサイトにおいて、「製品情報」の項目中に、「玄関用手すりLuna」の見出しの下、縦と横に組み合わせたはしご状の部分を有する手すりの写真が掲載され、「構造」の「特徴1」として、「アーム・・・握る場所を2段設けることにより、立ち座りの支えとして使用できます。」との記載がある。
(http://www.dipper-hokumei.co.jp/genkan/genkan.html)



オ 「マツ六株式会社」のウェブサイトにおいて、「製品情報」の「トイレ」の項目中に、「BAUHAUS 32セレクトL型ハンド」の見出しの下、L型の手すりの写真が掲載されている。
(http://www.mazroc.co.jp/products_1/wc/bau0014)


また、上記の項目中に、「たよレールhigh 省スペースH型 ショートタイプ」の見出しの下、縦と横に組み合わせたはしご状の部分を有する手すりの写真が掲載されている。
(http://www.mazroc.co.jp/products_1/wc/bau0450)


さらに、上記のウェブサイトにおいて、「製品情報」の「寝室・居室」の項目中に、「たよレール BZ-N01」の見出しの下、縦と横に組み合わせたはしご状の手すりの写真が掲載されている。
(http://www.mazroc.co.jp/products_1/living_bed/bau0429)



カ 「TOTO」のウェブサイトにおいて、「商品を選ぶ」の「福祉機器」の項目中に、「玄関・廊下・手すり」の見出しの下、「ポイント1:玄関・廊下の転倒防止の配慮(移動サポート)」として、「動作にあわせて、手すりを連続して設置」「○フリースタイル手すり」「○住宅用上がりかまち手すり」「○住宅用屋外手すり」との記載とともに、壁、扉及び階段に合わせて施工された手すりの写真が掲載されている。


また、上記の見出しの下、「ポイント2:便器からの立ち座りに配慮(立ち座りサポート)」として、「トイレ用手すり(システムタイプ)」との記載とともに、便器の形に合わせた形状と縦と横に組み合わせた形状からなる手すりの写真が掲載されている。
(http://www.toto.co.jp/products/ud/entrance/index.htm)



(2)「墜落防止手すり柵」の形状について
ア 「LIXIL」のウェブサイト上の「WEBカタログ『LIXIL ウォールエクステリア 総合カタログ 2016→2017」の94頁に、「ベランダ手すりII」の見出しの下、「バリエーションが豊富で、安全性・施工性を考慮した設計の手すりです。」との記載とともに、「面材バリエーション」として、「一段笠木」に「たて格子」「ヒシクロス格子」「パネルタイプ」「鋳物格子」「隠し間柱パネルタイプ」「全面パネルタイプ」として、また、「二段笠木」に「二段笠木/たて格子」「二段笠木/パネルタイプ」として紹介された、縦格子、ひし形格子及び装飾を施した格子等の「手すり子」を有する各種手すりの写真が掲載されている。
(http://webcatalog.lixil.co.jp/iportal/CatalogViewInterfaceStartUpAction.do?method=startUp&mode=PAGE&catalogId=9626290000&pageGroupId=53&volumeID=LXL13001&designID=newinter)



イ 「文化シヤッター」のウェブサイトにおいて、「商品紹介」の「手すり・笠木」の項目中に、「手すりK型・D型・M型」の見出しの下、「格子バリエーション 格子は19種類の中からお選びください。」との記載とともに、「●シースルーパネル格子」「●粗目横格子」「●テクモク横格子105」「●テクモク横格子45」「●アルミ横格子」「●直線格子」「●千本格子」のほか、「●ダイヤクロス洋風格子」「●ダイヤクロス和風格子」として紹介された、縦格子、横格子、ひし形格子、井桁格子等の「手すり子」を有する各種手すりの写真が掲載されている。
(http://www.bunka-s-pro.jp/handrail/kdm_02.html)




審理終結日 2016-12-07 
結審通知日 2016-12-16 
審決日 2016-12-28 
出願番号 商願2015-15135(T2015-15135) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W19)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 藤田 和美
田中 幸一

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