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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W05
管理番号 1312023 
審判番号 無効2015-890059 
総通号数 196 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-07-17 
確定日 2016-02-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5680213号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5680213号の指定商品中、第5類「薬剤」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5680213号商標(以下「本件商標」という。)は、「ロキプロフェン」の文字を標準文字で表してなり、平成25年12月3日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料」を指定商品として、平成26年5月9日に登録査定、同年6月27日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、以下のとおりである。
(1)「ロキソ」の文字と「LOXO」の文字を二段に横書きしてなり、平成18年11月14日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、平成19年6月8日に設定登録された登録第5053267号商標(以下「引用商標1」という。)。
(2)「ロキソニン」の文字よりなる商標(以下「引用商標2」という。)及びその英文字表記の「LOXONIN」の文字よりなる商標(以下「引用商標3」といい、引用商標2及び3を併せていうときは、以下「引用使用商標」という。)。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第72号証(枝番を含む。なお、枝番を有する証拠において、枝番の全てを引用する場合は、枝番の記載を省略する。)を提出した。
(1)利害関係
本件商標は、引用商標1と類似する。また、引用使用商標は、請求人及びその親会社である第一三共株式会社(以下「第一三共」といい、請求人と併せていうときは、以下「請求人ら」という。)の製造・販売に係る商品を示すものとして、広く認知されている(甲5?甲61)ところ、本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)は、後記のとおり、本件商標を、引用使用商標の実際のパッケージと共通点が多いパッケージによる鎮痛剤(審決注:提出された証拠から、請求人の製造・販売に係る商品を含め、以下「解熱鎮痛薬」との表記で統一する。)を販売する意図が推認される事実がある。さらに、本件商標は、その語頭「ロキ」に相応した「Loki」なる英文表記を用いたパッケージを採択する余地があったにもかかわらず(甲71の1及び2)、あえて引用使用商標の英文字表記「LOXONIN」と共通する「Lox」を採用した経緯がある(甲69の2)。これらの事情を勘案すれば、本件商標権者が、本件商標を付した解熱鎮痛薬を製造・販売すれば、請求人らの業務に係る商品との間に出所の混同を生じ、その結果、引用使用商標に化体した業務上の信用が著しく損なわれ、請求人らの事業活動に損害を被るおそれがある。
したがって、請求人は、本件審判を請求するにつき、法律上の利害関係を有する。
(2)請求の理由
本件商標の登録は、以下の理由により、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
ア 商標法第4条第1項第11号について
(ア)商標の類否
本件商標は、その構成中、前半の「ロキ」の文字は、特定の意味合いを有さない造語であるのに対して、後半の「プロフェン」の文字は、医薬品についてのステムそのものであるから(甲63、甲66)、識別力は低く、両者の間には識別力の高低に著しい差異が認められる。それゆえ、「ロキ」と「プロフェン」の語は、観念上の結合程度は極めて弱く、分離して観察されやすいものである。
してみれば、本件商標は、識別力の低い「プロフェン」の文字部分を除いた「ロキ」の文字部分より、「ロキ」の称呼をもって取引に資される場合も少なくないというべきである。
一方、引用商標1は、その構成文字に相応して「ロキソ」の称呼を生ずる。
そうすると、本件商標より生ずる「ロキ」の称呼と引用商標1の称呼とは、語尾の一音相違にすぎない。
したがって、本件商標は、引用商標1と称呼及び外観において類似する商標である。
また、後記のとおり、「ロキ」は、請求人らの業務に係る解熱鎮痛薬を表示するものとして著名な引用商標2と語頭文字を共通にするものであるから、実際に解熱鎮痛薬を取り扱っている本件商標権者が本件商標を使用すれば、現実の取引において、直ちに請求人の商品を想起させ、商品の出所の混同を生じさせるおそれが極めて高い類似の商標といわざるを得ない。
(イ)商品の類否
本件商標の指定商品中の「薬剤」は、引用商標1の指定商品と同一である。
(ウ)まとめ
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)引用商標2の著名性
引用商標2を使用した第一三共の医療用医薬品(以下「本件医療用医薬品」という。)は、昭和61年の発売以来、30年近くにわたり、鎮痛・炎症・解熱などの治療薬として、我が国において絶大な定評を得てきた。本件医療用医薬品は、医療機関、医師・薬剤師等の医療従事者向けに、自社の医療情報担当者等を通じプロモーション活動を盛大に行ってきた結果、平成23年度の売上高は、約610億円に達し、医療用医薬品国内売上高ランキングにおいて、トップ10に位置する(甲5)。
この点、第一三共の件外商品「メバロチン」は、同ランキング26位であり、平成23年度売上高は約331億円でありながら、特許庁の審決及び東京高裁の判決においてその著名性が認定された(平成16年(行ケ)256号判決、平成16年(行ケ)129号判決等)。このように、上記売上高・ランキングの「メバロチン」が著名性を認定された以上、売上高約610億円、前記ランキングトップ10に位置する本件医療用医薬品の著名性を否定するに足る理由はない。
本件医療用医薬品は、現在、世界約30力国で販売されており、さらに、平成23年1月には、本件医療用医薬品に加えて、OTC版「ロキソニン(LOXONIN)」(甲6、以下「本件OTC版医薬品」という。)の発売が開始された。本件OTC版医薬品は、発売開始前より国内において極めて広く注目を集め、発売後僅か2年足らずで約150億円(2,400万個)を売り上げたほか、発売以来、OTC医薬品市場におけるブランドシェアは、右肩上がりで拡大し(甲6?甲61)、平成23年末には、「日経トレンディ」の「2011年ヒット商品ベスト30」において第9位に選出された(甲39)。その事実は、テレビ、各種新聞、インターネットその他のメディアにおいて、広く記事として掲載され、引用商標2を広く知らしめる契機の一つとなった(甲39?甲59)。その他、請求人は、著名な女優を起用したウェブ上の広告(甲60)、テレビコマーシャル(甲61)、新聞広告、雑誌広告等を発売以来、継続的かつ盛大に行っている(甲60等)。
本件医療用医薬品及び本件OTC版医薬品(両者を併せていうときは、以下、単に「本件医薬品」という。)の普及により、2万種類の薬剤中1位の検索結果を得た引用商標2の著名性の程度が極めて高いものであることを否定することは不可能である。
以上のように、少なくとも本件商標の出願時点において、引用商標2は、取引者・需要者間で著名となっていたことは明白である。
なお、引用商標2は、過去の審査等においても、その著名性が認められており、また、防護標章登録も認められている(甲67)。
(イ)引用商標2の独創性の程度
引用商標2は、格別の意味を有しない造語であり、「ロキソニン」なる名称の商品は、薬剤の分野のみならず、国際分類のいずれの分野においても存在しないことから、独創性の高い商標であることは明らかである。
(ウ)本件商標と引用商標2との類似性の程度
本件商標は、引用商標2を想起させる文字として広く需要者・取引者に定着している「ロキ」の文字に加えて、語尾「ン」をも共通にするものであるから、著名な引用商標2とは極めて類似性の程度が高い商標である。しかも、本件商標中の「プロフェン」の文字部分は、医薬品についてのステムであるから、取引者・需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものということはできない。
(エ)請求人らの業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、商品等の取引者・需要者の共通性その他の取引実情
a.本件商標の指定商品中の「薬剤」は、本件医薬品と共通するため、取引者・需要者が共通するところ、薬剤の分野において著名な引用商標2と類似する本件商標がその指定商品について使用されれば、取引者・需要者は、それが請求人ら又はこれらと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるとの出所の混同を生ずるおそれは極めて高いといわざるを得ない。
b.本件商標権者の関連会社のアカウントを通じて、インターネット上のサイトで解熱鎮痛薬のパッケージが募集された事実があり、これによれば、本件商標権者が、本件商標を、引用商標2と同じ解熱鎮痛薬に使用する意図を有していたことが推認される(甲69の1及び2、甲70、甲71)。すなわち、本件OTC版医薬品のパッケージは、ゴシック体で表された「ロキソニン」の文字の上段に、やや小さいゴシック体で表された「痛みに速く効く」の文字が記載され、下段には「LOXONIN」が記載されている(甲70)ところ、本件商標権者が「採用」としたパッケージにも、ゴシック体で表された「ロキプロフェン」の文字の上段に、やや小さいゴシック体で「痛みにすばやく効き」と記載され、下段には「Loxprofen」が表されている(甲69の2)。また、「頭痛・生理痛」の効能表記、「12錠」入りという点も共通する。
しかも、パッケージのデザインを募集する際に、自ら「ロキソニンSと同じ」と記載しており(甲69の1及び3)、本件商標権者の使用意図に係る商品は、請求人の商品を意識した同様の商品であることを自認しており、上記記載から、請求人に無断で「ロキソニン」の名称を自社製品のパッケージの製作に際して使用したこと及び「ロキソニン」といえば、誰もが知っている著名な商品であろうということが前提となっていることの2点が分かる。
さらに、本件商標は、語頭の「ロキ」について、これに相応するとみるのが自然な「Loki」等の英文字表記を用いたデザインも複数あったにもかかわらず(甲71の1及び2)、あえて「Loxprofen」を採択した点も(甲69の2)、引用使用商標における「LOXONIN」を意識し、語頭3文字を一致させた採択であったと推察せざるを得ない。また、本件商標権者が、上記英文表記を併記する可能性も否定できず、当該英文表記が表示されたパッケージの解熱鎮痛薬が市場に流通すれば、これに接する取引者・需要者は、容易に引用使用商標及びその商品を連想、想起するものといえるから、請求人の商品との出所の混同のおそれはより高いものとなる。
(オ)以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
ウ 商標法第4条第1項第19号について
本件商標権者は、本件医薬品が著名な解熱鎮痛薬であることを当然に知悉していると考えられ、結果的に、その著名性に着目して、引用商標2を想起させる「ロキ」の文字を、需要者の注意を惹く語頭に配するとともに、ステムである「プロフェン」を結合した本件商標を解熱鎮痛薬の名称として採択し使用することは、長年の営業活動によって築き上げた本件医薬品に関する営業上の信用や名声にフリーライドすることとなる。
また、前記のとおり、本件商標権者は、引用商標2を使用した解熱鎮痛薬のパッケージと共通性が多く、かつ、「ロキプロフェン」の英文字表記として、語頭3文字を一致させた「Loxprofen」を用いたパッケージを採択せんとした事実があり(甲69の2)、当該事実は、引用商標2にフリーライドする意図を推認せざるを得ない。また、本件商標権者が、上記英文字表記を併記したパッケージを使用した解熱鎮痛薬を市場に流通するとすれば、本件医薬品との出所混同のおそれはより高いものとなるから、引用商標2に係る営業上の信用や名声が毀損されるおそれは極めて高いものといわざるを得ない。
以上より、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するためのものとして、日本国内及び外国における取引者・需要者の間に極めて広く認識されている引用商標2と同一又は類似の商標を不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第7号について
本件商標の登録及びその使用は、本件医薬品と他社製品との区別を困難なものとして、市場に混乱を招くばかりか、症例や効能等に適した製品の選択の妨げとなり、ひいては医療過誤等の極めて深刻な事態を招くおそれがある。
この点に関して、薬剤名称の採択に関する「新規承認医薬品名称類似回避フローチャート」(甲62)は、薬剤の取り違え等による公衆の衛生を害するおそれを防止し、医療安全を厳格に確保するために、類似の名称を厳格に排除している。
また、「医薬品製造指針」(甲65)及び「医薬品製造販売指針」(甲66)によれば、医薬品の国際一般名称(以下「INN」という。)が、各国の商標権に抵触しないように命名されるものであることから、販売名の語尾にINNのステムを付した名称の採択回避についての指針が明示されている。そして、本件商標のような態様よりなる商標の登録及び使用は、世界保健機関(WHO)の設定するINNの趣旨に反するものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為というべきである。
また、請求人と何ら関係が認められない第三者が、自己の商標として、本件商標を、その指定商品について独占的に使用することは、公の秩序を害するおそれが高いものである。そして、著名商標と極めて近似した商標の登録は、商標に化体した業務上の信用を適切に保護し、健全な競業秩序の維持を図ることを目的とする商標法第1条の趣旨に反する事態を招くおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

4 被請求人の答弁
被請求人は、上記3の請求人の主張に対して、何ら答弁するところがない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標2の著名性
(ア)請求人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)及び請求の理由によれば、以下の事実を認めることができる。
a.第一三共は、昭和61年に、引用商標2を付した鎮痛・炎症・解熱などの医療用医薬品(本件医療用医薬品)を発売した。本件医療用医薬品は、「2011年(平成23年)度決算・医療用医薬品国内売上高ランキング上位100」において10位であり、その売上高は約610億円であった(甲5)。
b.請求人は、平成23年1月に、本件医療用医薬品の薬効成分を転用した、いわゆる“スイッチ薬”といわれる、一般用医薬品「解熱鎮痛薬」(本件OTC版医薬品)を発売し、同商品に、「LOXONINS」(その構成中の「S」の文字部分は、色彩において、他の文字部分に比べ、薄い色で表示されている。以下同じ。)及び「ロキソニンS」の文字よりなる商標を付した。本件OTC版医薬品は、その発売前後を通して、「解熱鎮痛薬『ロキソニンS』(又は「ロキソニン」)新発売」、「OTC医薬品として初めて医療用成分『ロキソプロフェンナトリウム水和物』を含有した解熱鎮痛薬『ロキソニンS』を新発売」などと記載され、雑誌や新聞等で取り上げられた。また、本件OTC版医薬品は、平成23年末には、「日経トレンディ」の「2011年ヒット商品ベスト30」において9位に選出され、このことが各種メディアに取り上げられた。さらに、日本最大級の医薬品検索サイト等を運営する総合医療メディア会社である株式会社QLifeによる「お薬探しの“切り口”4月実績:トップ50」の発表(2013年(平成25年)5月9日現在)によれば、「4月に最も多く検索されたお薬は【ロキソニン】」であった(以上、甲6?甲59、甲70)。なお、「ロキソプロフェンナトリウム水和物」(Loxoprofen sodium hydrate)について、本件OTC版医薬品の広告(甲60)や新聞記事(甲13、甲15、甲18、甲19等)によれば、「三共株式会社(現 第一三共株式会社)が創製した非ステロイド性消炎鎮痛成分で、1986年に医療用医薬品『ロキソニン』として承認を取得、発売され、すぐれた有効性と安全性で長年にわたり国内で汎用されています。」などと記載されている。
(イ)本件OTC版医薬品に付された「ロキソニンS」の文字よりなる商標は、その構成中の「S」の文字部分が、その表示方法からみて、商品の種別、規格等を表す記号、符号等と理解されるといえるから、これら商標における要部は、「ロキソニン」であると認められる。したがって、本件OTC版医薬品に付された商標は、実質的に引用商標2と同一のものと認めることができる。
(ウ)前記(ア)及び(イ)で認定した事実によれば、引用商標2は、請求人らの業務に係る解熱鎮痛薬(本件医薬品)を表示するものとして、本件商標の登録出願日(平成25年12月3日)には既に、医薬品を取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その著名性は、本件商標の登録査定日(平成26年5月9日)においても継続していたものと推認することができる。
イ 本件商標と引用商標2との類似性
(ア)本件商標と引用商標2との類否について検討するに、本件商標は、前記1のとおり、「ロキプロフェン」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「ロキプロフェン」の称呼を生じるものであり、特定の意味合いを有しない造語である。そして、その構成中「プロフェン」の文字部分は、指定商品中の薬剤との関係においては、薬理学的に又は構造的に類似性のある化合物群に使用される語幹であって、「イブプロフェン系の抗炎症薬」を表す「-profen」 の片仮名表記であることから、商品の成分を理解させるものであり、自他商品の識別力はないか、あったとしても極めて弱いものといえる。
他方、引用商標2は、前記2(2)のとおり、「ロキソニン」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「ロキソニン」の称呼を生じ、特定の意味合いを有しない造語である。
そこで、本件商標から生じる「ロキプロフェン」の称呼と引用商標2から生じる「ロキソニン」の称呼とを比較するに、両称呼は、語頭におけ「ロキ」の2音及び末尾音における「ン」の音を共通にし、中間音において「プロフェ」と「ソニ」の音において相違する。
しかして、「ロキ」の2音は、一般的に語頭の音の方が聴者に比較的強い印象、記憶を残しやすいこと、上述のとおり、本件商標においては、「プロフェン」の文字部分が、自他商品の識別力はないか、あったとしても極めて弱いものといえるであること、さらに、引用商標2が請求人らの業務に係る解熱鎮痛薬の商標として長年使用され、取引者・需要者の間に広く認識されていることなどからすれば、聴者の印象、記憶に強く残る音であるというべきである。
他方、本件商標の中間部に位置する「プロフェ」及び「ソニ」の音は、聴覚上注意のあまり及ばない中間に位置することから、本件商標と引用商標2の称呼は、これを一連のものとして称呼した場合に、聴者に語調、語感が顕著に異なるとの印象を強く与えるとはいい難いものである。
以上によれば、本件商標の「ロキプロフェン」と引用商標2の「ロキソニン」を一連のものとして称呼した場合、共通する音が聴者の記憶、印象に残りやすいのに対し、相違する音が称呼全体に及ぼす影響は小さいことから、両称呼の全体の語感、語調は、近似しているということができる。
次に、両商標の外観の類否については、本件商標の「ロキプロフェン」と引用商標2の「ロキソニン」を対比すると、本件商標(小文字を含む7文字構成)と引用商標(5文字構成)とは、語頭の「ロキ」及び語尾の「ン」において共通し、本件商標の「プ」「ロ」「フェ」の文字、引用商標の「ソ」「ニ」の文字において相違する。
しかして、「ロキ」の文字は、看者の注意を強く惹きつける冒頭部分に位置すること、加えて、引用商標2が請求人らの業務に係る解熱鎮痛薬の商標として長年使用され、取引者・需要者の間に広く認識されていることから、該文字が看者の印象、記憶に強く残るものといえ、さらに末尾においても「ン」の文字を共通にすること、及び両商標の相違点が看者の注意を強く惹くとは言い難い中間に位置していることをも踏まえるならば、本件商標と引用商標2の外観についても、相当程度の共通点が存在するということができ、本件商標と引用商標2の称呼及び外観における共通点と相違点を対比すれば、両商標は相当程度の類似性を有するということができる。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標2の商品の関連性
本件商標の指定商品と引用商標2の商品間の関連性、取引者・需要者の共通性については、本件商標に係る指定商品中の「薬剤」は、引用商標に係る使用商品「解熱鎮痛薬」を包含するものであり、また、該商品以外の薬剤においても、その製造者、流通経路、販売場所等を同じくする関連性の強いものであると認めることができる。
エ 小括
以上のとおり、引用商標の著名性、本件商標と引用商標2との類似性の程度、両商標に係る商品の関連性の強さ、取引者・需要者の共通性の程度を考慮すれば、被請求人が本件商標を解熱鎮痛薬を含む薬剤に使用した場合、その取引者・需要者において、これを請求人あるいは請求人と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するか、又は、請求人あるいは請求人と上記のような関係のある会社が新たに販売を開始した「ロキソニン」のシリーズ商品の一つ又はそれに何らかの改良を施した新商品であると混同するおそれがあるというべきである。
また、本件商標は、請求人の提出した証拠によっては、その指定商品中の「薬剤」以外の商品について、上記のような混同を生じさせるおそれがあるというべき理由を見いだせないものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「薬剤」については、商標法第4条第1項同第15号に該当し、該商品以外の指定商品ついては、該当するとはいえないものである。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、前記1のとおり、「ロキプロフェン」の文字からなるところ、その構成文字に相応して「ロキプロフェン」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語よりなるものと認められる。
イ 引用商標1について
引用商標1は、前記2(1)のとおり、「ロキソ」の文字と「LOXO」の文字を二段に横書きしてなるところ、その構成文字に相応して、「ロキソ」の称呼を生じ、特定の意味合いを有しない造語よりなるものと認められる。
ウ 本件商標と引用商標1との対比
本件商標と引用商標1は、それぞれ前記構成よりなるものであるから、外観上明らかに区別し得る差異を有するものである。
また、本件商標より生じる「ロキプロフェン」の称呼と引用商標1より生じる「ロキソ」の称呼は、語頭部分の「ロキ」を共通にするものであるとしても、構成する音数等において著しい差異を有するものであるから、両称呼は、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、本件商標と引用商標1は、いずれも造語よりなるものであるから、観念上比較することができない。
そうとすれば、本件商標と引用商標1は、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
エ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標と認めることができない。
(3)商標法第4条第1項第7号及び第19号該当性について
本件商標は、引用商標2との関係において、その指定商品中の「薬剤」以外の商品について、上記(1)のとおり、取引者・需要者に混同を生じさせるおそれが見いだせないものである。そして、本件商標権者が、引用商標2を剽窃する目的で本件商標を登録出願し、本件商標をその指定商品について使用することにより、引用商標2の著名性に便乗し、不正に利益を得ようとする意図があったと認めるに足りる証拠の提出はないから、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標と認めることができない。
また、本件商標は、登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとか不正の目的をもって登録出願されたものである等の公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標に該当するものであると認めるに足りる証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当する商標と認めることができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第15号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の商品については、同法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものではないから、その登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-12-04 
結審通知日 2015-12-08 
審決日 2016-01-18 
出願番号 商願2013-98677(T2013-98677) 
審決分類 T 1 11・ 263- ZC (W05)
T 1 11・ 22- ZC (W05)
T 1 11・ 261- ZC (W05)
T 1 11・ 262- ZC (W05)
T 1 11・ 271- ZC (W05)
T 1 11・ 222- ZC (W05)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 中束 としえ
前山 るり子
登録日 2014-06-27 
登録番号 商標登録第5680213号(T5680213) 
商標の称呼 ロキプロフェン 
代理人 谷山 尚史 

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