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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X35
管理番号 1300611 
審判番号 取消2014-300125 
総通号数 186 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2015-06-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-02-20 
確定日 2015-04-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5179244号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5179244号商標(以下「本件商標」という。)は,「桃太郎」の文字を標準文字で表してなり,平成19年6月23日に登録出願,第35類「コンピュータソフトウェアの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として,同20年11月7日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録日は,平成26年3月10日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定役務中,第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」について登録を取消す,審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書,弁駁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1 請求の理由
被請求人は,本件商標を,その指定役務中,第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について継続して3年以上日本国内において使用した事実は見いだせない。また,本件商標権者以外の者が,通常使用権の許諾を受けて本件商標を使用した事実も認められない。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,通常使用権者が運営しているウェブショップ「桃太郎\王国\プレミアム」において「ポーチ」を販売している旨を主張している(乙9ないし乙14)。
しかし,これら「ポーチ」のうち,携帯型ゲーム機の専用ポーチは,「携帯用液晶画面ゲームおもちゃの本体収納用ケース」等として「第28類 おもちゃ」に属する商品であり(甲3),また,特定のソフトウェアの専用ケースであれば,「携帯用液晶画面ゲームおもちやのゲームプログラムを記憶させたROMカートリッジ及びディスク」用のケースとして第9類に属する商品であって(甲4),いずれについても取消請求役務には該当しない。
(2)仮に前記ウェブショップにおいて汎用性のあるポーチが販売されていたとしても,当該ウェブショップの名称「桃太郎\王国\プレミアム」は,本件商標の使用とはいえない。
(3)被請求人は,通常使用権者が運営しているリアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」においても,本件商標が取消請求役務について使用されていると主張し,埼玉県所在の「ふじみ野店」とされる店舗内陳列棚に「ポーチ」が展示されている写真を提出している(乙14)。
当該写真には,トートバッグが陳列され,該トートバッグの表示パネルには,緑色で大きく書された「ミクトート\バッグ」の文字と,ピンク色で小さく書された「缶バッジ2コつき!!」の文字,青色で最下欄に小さく書された「Happyくじ2013 Summer Ver.\G賞その1」等の文字が視認され,バッグの価格等が記載された表示パネルは全く見られないから,これらバッグは特定のくじの当選賞品であったものと認められる。
しかるに,小売店内においてトートバッグが展示されているといっても,それ自体を販売する目的で展示されたものではなく,来店者に対して特定のくじへの参加ないしは購入を誘引する目的で,当選賞品として展示されたものであるならば,取消請求役務について使用されているとはいえない。
(4)リアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」において顧客に提供されているとしたビニール製包装袋(乙15及び乙16)や,店舗スタッフが着用している黒色エプロン等(乙17)については,これらに付された「momoTARO」のデザイン文字が本件商標と社会通念上の同一であるか否かはさておき,同リアル店舗内にて「かばん類及び袋物」の範疇に含まれる商品が実際に販売されていない以上は,これらが取消請求役務に関する本件商標の使用証拠となりえない。
また,前記リアル店舗の看板や幟旗(乙18及び乙19)のほか,被請求人のウェブサイトや建物看板(乙20ないし乙22)についても同様に,取消請求役務との関係が示されたものではないから,使用証拠とはなりえない。
(5)被請求人の業務部部長による陳述書(乙23)は,取消請求役務との関係で本件商標の使用事実は示されていない。
(6)被請求人は,「株式会社オフィス片山」に対して使用許諾を行っているとして契約書(乙24)を提出しているが,当該契約書は,単に使用許諾契約の存在を推認させるにすぎず,株式会社オフィス片山が,本件商標を取消請求役務に使用していた事実を示すものではない。
3 口頭審理陳述要領書
(1)乙第9号証等のポーチについて
被請求人が新たに追加提出した書証は,本来的には携帯型ゲーム機の専用ポーチであっても,これを使用する者の裁量によって他の用途に流用ないし転用することができることを示しているにすぎない。
(2)ウェブショップ名称「桃太郎\王国\プレミアム」について
被請求人の通常使用権者が運営するウェブショップの名称は,乙第5号証に示されるとおりであり,ロゴたる使用標章は,あくまで「桃太郎」と「王国」及び「プレミアム」の各文字が密接に結合し,標章全体としてデザイン的にもまとまりよく一体的に書されているうえ,とくに「桃太郎」と「王国」の両文字については書体デザインや彩色も統一されている。
また,当該ウェブサイトの上端に表示されたブラウザ・インデックスには「桃太郎王国は,・・・買取サービスを提供するアソビのリサイクルショップです。」とあり,「桃太郎王国」であることが表示されている。
なお,被請求人が主張するように,本来的な「桃太郎王国」だけではなく,「桃太郎」のみをもって商取引に付される場合があるとしても,それは前記ロゴの使用態様が「桃太郎」に類似していることを意味するにすぎず,前記ロゴが本件商標と実質的に同一であるとか,「桃太郎」と社会通念上の同一性があるといったことを意味するわけではない。
(3)リアル店舗で陳列されている「トートバッグ」について
被請求人は,通常使用権者が運営するリアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」で販売されているトートバッグが,「Happyくじ」により販売されている「商品」である旨を主張しているが,「Happyくじ」を実施している株式会社サニーサイドアップのウェブサイト(甲12)によれば,「Happyくじ」の実施店舗を訪れた顧客は,「800円」の代金を支払うことにより「くじ」を1回引く権利を取得し,その「くじ」の結果に対応した各賞に該当する商品のいずれかを必ず入手することができる,と理解される。
この「Happyくじ」なるビジネスにおける「商品」は,その商取引の対象となっている「印刷されたくじ」であって(甲14),「D賞」の「マルチフラットポーチ」などは「くじ」の景品にすぎない。
(4)新たに提出された書証その他について
被請求人は,被請求人から通常使用権者に納品した商品リスト(乙35)等を提出しているが,その商品リストのどこにも本件商標は使用されていない。
4 平成27年2月2日付けの上申書
被請求人は,「ファミコンショップ桃太郎」の店頭に陳列されたという「トートバッグ」(乙14)の入手経路を示す証拠として,被請求人から通常使用権者への納品書写し(乙39及び乙40)を提出している。
しかしながら,これら納品書写しは,被請求人から通常使用権者に対する商品納入事実を示すものであるとしても,本件審判の請求前に「ファミコンショップ桃太郎」において商品が販売された事実を証するものではない。
また,「ファミコンショップ桃太郎」の運営主体であるという大東物産による商品履歴台帳の写し(乙41)は,ワープロ印字された書類にすぎないから,その作成時期や掲載内容について信憑性が乏しいものである。
そして,前記納品書写し等に掲載されたトートバッグは,2012年7月10日までの期間限定キャンペーンにおいて,録画済みディスクの購入特典として同ディスクの購入者に無償で提供されたものとされているところ(乙42),その中古品が販売されていたと主張される「ファミコンショップ桃太郎」の店頭写真(乙14)に示されたトートバッグは「Happyくじ2013SummerVer.」と表記されているので,両者は異なる商品であることが明らかである。
さらに被請求人によると,前記店頭写真(乙14)は,2014年4月25日に送信された電子メールの添付ファイルとして受領されたものであって(乙43),同日に撮影されたものであるというのであるから,2014年12月15日に撮影されたという「ファミコンショップ桃太郎」の店舗外観写真(乙44)とともに,いずれも本件審判の請求後に撮影されたものにすぎない。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求める,と答弁し,その理由を答弁書,口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第44号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は,埼玉県さいたま市緑区大牧1502-7所在の「大東物産株式会社」(以下「大東物産」という。)との間で「エーツーフランチャイズチェーン加盟店契約書」(乙1,以下「フランチャイズ契約書」という。)及び「桃太郎商標に関する使用許諾契約書」(乙2,以下「商標使用許諾契約書」という。)を作成している。
フランチャイズ契約書は,平成23年10月31日に作成され,同第5条「商標の使用の許諾」に基づき,被請求人が所有する商標及びその他営業に関する表示の使用を大東物産に許諾している。さらに,商標使用許諾契約書は平成24年1月31日に作成され,第1条に基づき,被請求人は大東物産に対して「甲(すなわち被請求人)が所有する桃太郎の商標の使用,及びその他営業に関する表示」の使用を許諾している。
すなわち,大東物産は,被請求人が所有する本件商標に関して商標法第31条に基づく通常使用権者である。
上記フランチャイズ契約書の作成は平成23年10月31日,商標使用許諾契約書の作成は平成24年1月31日であり,これらはいずれも本件商標の審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に該当する。
本件商標において,取消請求役務について上述した2通の契約書は明記していないが,フランチャイズ契約書第11条の「上記以外で小売販売を目的とし,甲(すなわち被請求人)が取扱商品と認めた商品」,さらに,商標使用許諾契約書第3条第1項の「中古ゲーム『等』」には取消請求役務が含まれる。
(2)被請求人の通常使用権者である大東物産は,「ファミコンショップ桃太郎」の名称で複数のリアル店舗を運営している。
ア 乙第4号証のウェブサイトは,その左上にある「桃太郎/王国/プレミアム」の部分をクリックすると,大東物産が「桃太郎」の名称で展開するウェブショップにリンクしている(乙5)。
乙第5号証のウェブサイトの最下段にある「特定商取引法に基づく表示」の部分をクリックすると,販売業者として「大東物産株式会社」の表示があり(乙6),その右にあるURLは上述した乙第4号証「ファミコンショップ桃太郎」のウェブサイトにリンクしている。
イ 乙第5号証のウェブサイトの「桃太郎/王国/プレミアム」の左上にある「商品を探す」に単語「ポーチ」を入れて検索すると,大東物産がウェブサイト「桃太郎/王国/プレミアム」で販売しているポーチが多数ヒットする(乙9)。
これらの「ポーチ」はいずれも携帯型ゲーム機の専用ポーチ,又は,特定のソフトウェアをモチーフとしたポーチであり,基本的に携帯型ゲーム機又はソフトウェアのアクセサリとして販売される。
したがって,被請求人が取扱商品と認めた「商品」,さらに,商標使用許諾契約書第3条第1項の「中古ゲーム『等』」に該当する。
そして,大東物産がウェブサイト「桃太郎/王国/プレミアム」でこれらの商品を販売することは,本件商標を取消請求役務について使用するものである。
ウ 乙第9号証の検索結果は,本件商標が要証期間に取消請求役務について使用されていたことを確認することができる(乙11及び乙12)。
エ 本件商標は,大東物産が運営するリアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」においても,取消請求役務について使用されている。
ファミコンショップ桃太郎リアル店舗である埼玉県ふじみ野市苗間1-13-19所在のふじみ野店において「ポーチ」を販売している状況の写真を乙第14号証に示す。
ファミコンショップ桃太郎では,顧客用にビニール製包装袋を提供しており,そこには「momoTARO」のロゴが印刷されている(乙15及び乙16)。また,店舗スタッフは「momoTARO」ロゴが入った黒色のエプロンを着用し,顧客用のメンバースカートにも「momoTARO」のロゴが入っている(乙17)。
「ファミコンショップ桃太郎」は,その店舗写真(乙18及び乙19)から明らかなように,店名の看板に「桃太郎」,「momoTARO」等のロゴを表示し,店頭に「桃太郎」の幟を配置するなど,本件商標及びそのローマ字表記であり,商標法第50条第1項に基づき同一と認められる「momoTARO」を積極的に表示することによってブランド展開を行っている。
オ 被請求人の所在地の1つである「物流センター」(乙20)の建物前にある標識にも「MOMOTARO」のロゴが含まれている(乙22)。また,被請求人によるブランド展開の証言として,被請求人である株式会社エーツーの経営企画部部長兼業務部部長である石綿氏の陳述書を添付する(乙23)。
被請求人は,「桃太郎ブランド」のさらなる展開として,たとえば東京都西東京市所在の株式会社オフィス片山との間でも,桃太郎商標に関する使用許諾契約書(乙24)を作成し,同社は,フランチャイズ店として,同契約書第1条に記載する東京都清瀬市において「ファミコンショップ桃太郎秋津店」を,さらに,東京都西東京市において「ファミコンショップ桃大郎ひばりが丘店」を運営している。
2 口頭審理陳述要領書
(1)請求人は,「ポーチ」のうち携帯型ゲーム機の専用ポーチは「第28類 おもちゃ」に属する商品であり,特定のソフトウェアの専用ケースは「第9類 携帯用液晶画面ゲームおもちゃのゲームプログラムを記噫させたROMカートリッジ及びディスク」に属する商品であるから,いずれも請求取消役務に該当しない旨述べている。
これらのポーチは,携帯型ゲーム機の専用ポーチであるか,又は特定のソフトウェアをモチーフとするものであるが,そのコンパクトなサイズ,ファッション性の高いデザイン及び形状,そして若い世代を中心とする自由な発想で商品を利用する購買者層からして,単に「おもちゃ」又は「電気機械器具類」の付属品として使用されるだけでなく,実質的に汎用ポーチとして使用されている。
このような汎用ポーチとしての使用は,本件審判の請求前から一般的に行われているものであるから(乙25ないし乙28),本件審判の請求前には,汎用ポーチとしての使用は以前から一般的であったと理解すべきである。
このように,乙第9号証ないし乙第14号証に示すポーチ類は,いずれも単なるおもちゃ又は電気機械器具類の付属品ではなく,汎用的な「かばん類及び袋物」である。
(2)請求人は,被請求人の通常使用権者が運営するウェブショップの名称「桃太郎/王国/プレミアム」が本件商標とはいえないと主張し,その理由として「桃太郎王国」と「桃太郎」とが非類似であると述べている。
しかし,該ウェブショップの名称は,「桃太郎/王国/プレミアム」であって,該ロゴからは,「桃太郎王国」,「桃太郎プレミアム」,「桃太郎王国プレミアム」,「王国プレミアム」などの称呼も生じるかもしれないが,だからといって「桃太郎」単独でまったく称呼されないと断定することはできない。
乙第5号証には,被請求人のウェブサイト「桃太郎/王国/プレミアム」のロゴが左上に表示されているが,このロゴを一般的なユーザが見た場合に最も注意を引く部分は左側に大型フォントで書した「桃太郎」である。右側の「王国」,「プレミアム」はいずれもフォントが小さく二段併記で書されており,左側の「桃太郎」との一体感が乏しく,あくまでも「王国」,「プレミアム」は付記的な表示といえる。
したがって,「桃太郎/王国/プレミアム」のロゴから「桃太郎」の部分が取引対象とされることはきわめて自然といえる。
乙第30号証には,「桃太郎王国」が取引対象とされている記載も確認できるが,これをもって「桃太郎/王国/プレミアム」が「桃太郎王国」の態様のみで取引され,「桃太郎」の態様による取引が否定されるものではない。むしろ「桃太郎」及び「桃太郎王国」の共通部分である「桃太郎」が,現実の取引における要部として機能していることを示すものといえる。
このように,通常使用権者は,「桃太郎/王国/プレミアム」のロゴを使用しており,そのうち「桃太郎」の部分についても現実に取引対象とされていることから,これは本件商標の使用である。
乙第31号証の「COPYRIGHT(C)2002-2012 Daitou Bussan Co. Ltd.」なる記載から,同サイトが,少なくとも,2002年から2012年まで運用されていたことは明らかであり,また,「Last Up Date:11/03/2014 12:50:21/Since Jan.1.2002」とも記載されていて,現在に至るまで継続して運用されている。
(3)請求人は,通常使用権者が運営するリアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」で販売されているトートバック(乙14)がノベルティ又は景品に類するものであって,商標法上の「商品」の概念に該当しない等と述べている。
「Happyくじ」は,一般的に「キャラクターくじ」,「コンビニくじ」等と呼ばれる商品販売の形態であり,Happyくじ自体は株式会社サニーサイドアップがコンビニエンスストアのファミリーマート,その他の家電販売店などを中心に展開している(乙33)。購買者はHappyくじ開催店で一定金額(通常では500円から800円程度)の「くじ」を購入する。各くじにはA賞,B賞などの商品が記載されており,それに対応する商品を手に入れる仕組みである。たとえば,2014年10月には「初音ミク」のHappyくじが展開中である(乙34)。
乙第34号証に,「商品一覧」と書かれていることからも明らかなように,A賞,B賞などの対象は何らかのノベルティ又は景品ではなく,純粋にコンビニエンスストア等を流通経路として有償で販売されている商標法上の商品であり,大東物産は,そのようなトートバッグを仕入れて販売しているものである。
また,請求人は,トートバッグに価格などが記載された表示パネルが見られないと述べているが,該トートバッグは,販促用のノベルティ又は景品ではなく,通常の流通過程において独立した商取引の対象とされる商標法上の商品である。
乙第35号証は,被請求人から通常使用権者に納品した商品リストであり,納品した商品の中から,リアル店舗での販売を目的として納品されたかばん類及び袋物を抽出したものである。
(4)請求人は,リアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」において顧客に提供したビニール袋(乙15及び乙16)並びに店舗スタッフが着用しているエプロン(乙17)が本件商標の使用証拠になり得ず,またリアル店舗の看板や幟旗(乙18及び乙19),並びに被請求人のウェブサイトや建物看板(乙20ないし乙22)も使用証拠になり得ないと述べている。
しかし,商標法上の商品であるトートバッグ等がリアル店舗「ファミコンショップ桃太郎」で販売されているのであるから,その店員がエプロンを着用し,販売された商品をビニール袋に入れる行為は,その商品の「小売又は販売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に他ならない。
3 平成27年1月13日付けの上申書
被請求人は,通常使用権者のリアル店舗「桃太郎ふじみ野店」に,「初音ミク 2DaysコンプリートBOX 特製トートバッグ」(G6797269)1個を2013年6月29日付で(乙39),さらに,1個を2013年8月1日付で(乙40)納品している。
これに対応する通常使用権者の「桃太郎ふじみ野店」の「商品履歴台帳」(乙41)を見ると,2013年7月1日に,上述した乙第39号証の商品を「株式会社エーツー」から仕入れており,この商品は同7月22日に売上となっている。また,2013年8月5日に,上述した乙第40号証の商品を同様に「株式会社エーツー」から仕入れており,この商品は同8月7日に売上となっている。
なお,乙第39号証ないし乙第41号証,後述する乙第44号証の店舗写真でも明らかなように,現在は,通常使用権者のリアル店舗名として「ファミコンショップ桃太郎」ではなく「桃太郎」のみを使用する状況も多くなっている。
乙第41号証の上段の商品名称の欄に,「初音ミク 2DaysコンプリートBOX 特製トートバッグ」に続き「DVD/Blu-ray初音ミク」と記載されているとおり,通常使用権者では,仕分上この商品を「DVD/Blu-ray」に分類している。
この商品は,新品状態ではトートバッグとDVD/Blu-rayがセット(「コンプリートBOX」)で販売され,2012年4月27日から同7月10日までの予約特典としてトートバッグが付属していた(乙42)。
このうちトートバッグだけが中古品として独立の取引対象となり,「桃太郎」ふじみ野店で販売されたものである。
乙第42号証に示すトートバッグは,通常使用権者は商品コード(G6797269)で納品管理していた。
なお,乙第42号証のトートバッグが,新品状態でDVDの予約特典(ノベルティ)であったことは事実であるが,それが乙第39号証ないし乙第41号証に示すように,「桃太郎」ふじみ野店にて中古品として独立して買取・販売の対象とされている以上,「桃太郎」では商標法上の商品として取引対象にされていることは明らかである。
被請求人代理人から撮影者(リアル店舗「桃太郎」ふじみ野店の店長)に宛てた電子メールの写しを添付する(乙43)。
この電子メールの発信は,2014年4月25日16時25分であり,この日に被請求人代理人は,リアル店舗「桃太郎」ふじみ野店を訪問し,その後に乙第14号証の写真を電子メール経由で受領している。したがって,写真撮影は2014年4月25日となる。
さらに,乙第14号証を撮影した「桃太郎」ふじみ野店の写真を提出する(乙44)。この撮影日は,2014年12月15日である。
(5)上述したように,被請求人は,本件商標を,「ポーチ」,「トートバッグ」等の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供について,審判の請求の登録前3年以内に現実に使用している。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
(1)乙第1号証は,「株式会社エーツー」及び「大東物産株式会社」の連名による平成23年10月31日付けの「エーツー フランチャイズチェーン加盟店契約書」(写し)であり,「株式会社エーツー」を「甲」とし,「大東物産株式会社」を「乙」として,両当事者間における「エーツー・フランチャイズチェーン加盟」に関する契約を内容とするものであって,その第2章の「第4条 フランチャイズ権付与」に「甲は乙に対し,次に記載する場所において店舗を設置し,経営する権利を付与する。」の記載と,「店舗名」に「ファミコンショップ桃太郎ふじみ野店」及び「住所」に「埼玉県ふじみ野市苗間1-13-19」の記載がある。
そして,その「第5条 商標の使用の許諾」に「甲は乙に対し,本契約期間中に本事業を行うに際し,第2章第4条に記載した店舗において,甲が所有する商標の使用,及びその他営業に関する表示の使用(以上を総称して,以下「標章」という)を許諾する。」の記載があり,第3章「第7条 標章の使用」に「甲は乙に対し,乙が甲より許諾された標章を看板,店内表示,袋等に使用することを義務付ける。」の記載がある。
(2)乙第39号証は,本件商標権者から,大東物産(桃太郎店舗)桃太郎ふじみ野店に宛てた,売上日付を2013年6月29日とする,「納品書」(写し)であり,その「商品コード/商品名」の欄に「G6797629 初音ミク 2DaysコンプリートBOX 特製トートバッグ」の記載,「数量」の欄に「1」及び「単価」の欄に「509」の記載がある。
乙第40号証は,乙第39号証と同様の「納品書」(写し)であり,売上日付を2013年8月1日とするものである。
(3)乙第41号証は,「店舗名:大東物産株式会社 桃太郎ふじみ野」の「商品履歴台帳」(写し)であり,「商品番号」に「G6797629」,「商品名称」に「初音ミク 2DaysコンプリートBOX 特製トートバッグ・・・」の記載があり,その商品履歴として,「13.07.01」に,「1」個,「509」円で「株式会社エーツー」から「中古仕入」があったこと,「13.07.22」に「1」個,「933」円で「中古売上」があったこと,「13.08.05」に,「1」個,「509」円で「株式会社エーツー」から「中古仕入」があったこと及び「13.08.7」に「1」個,「933」円で「中古売上」があったことの記載がある。
(4)乙第42号証は,2015年1月9日に印刷された「ミクの日大感謝祭」と題するウェブサイト(写し)であり,「販売店別購入特典/期間限定!オフィシャル予約特典キャンペーン」の「期間限定!オフィシャル予約特典キャンペーン」の欄には,「『初音ミク ミクの日大感謝祭 2DaysコンプリートBOX』(Blu-ray版,DVD版共に)を下記対象店舗にて期間内にご予約いただいたお客様に,このコンプリートBOXがゆったり入る『ミクの日大感謝祭』“2DaysコンプリートBOXサイズ 特製トートバッグ”をプレゼント!こちらは2012年7月10日までの期間限定キャンペーンとなっております。」の記載があり,その2葉目には,「SAMPLE」として「『ミクの日大感謝祭』“2DaysコンプリートBOXサイズ 特製トートバッグ”」の記載と商品の写真が掲載されている。
(5)乙第43号証は,弁理士から「ファミコンショップ桃太郎 ふじみの店 店長」に宛てた,2014年4月25日付けの電子メール(2015年1月5日印刷)であり,本日,お店を訪問させて頂いたこと,写真を撮影・送信して頂いたこと」等の旨の記載があり,乙第44号証は,店舗の写真であり,店舗前の看板には,「桃太郎 ふじみ野店」の表示がある。
2 以上によれば,次のとおり判断できる。
(1)本件商標の使用について
ア 本件商標権者は,大東物産との間で「フランチャイズチェーン加盟」に関する契約を締結したものであり,その内容は,大東物産は「埼玉県ふじみ野市苗間1-13-19」に「ファミコンショップ桃太郎ふじみ野店」を設置すること,該店舗において本件商標権者が所有する商標を看板,店内表示,袋等使用すること等であることから,大東物産は,本件商標権者が所有する本件商標権の通常使用権者ということができる(乙1)。
イ そして,通常使用権者である大東物産は,埼玉県ふじみ野市において経営する店舗の看板に,「桃太郎 ふじみ野店」の文字を表示したものである(乙44)。
また,大東物産は,自身が経営する「桃太郎 ふじみ野店」において,取消請求役務で取扱われる商品「かばん類」に含まれる「トートバッグ」を,要証期間である2013年(平成25年)6月29日及び8月1日に本件商標権者から仕入れ,同年7月22日及び8月7日に販売したものである(乙39ないし乙41)。
そして,上記の「トートバッグ」が顧客のために品揃えされ販売されたことは,取消請求役務に含まれる「トートバッグの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務と認められる。
ウ 本件商標は,「桃太郎」の文字を表してなるものであり,上記した大東物産が店舗(ふじみ野店)の看板に表示した「桃太郎」の文字からなる使用商標は,本件商標と同一の文字であるから,社会通念上同一の商標と認められる。
(2)上記によれば,本件商標の通常使用権者は,要証期間に,日本国内において,本件審判の請求に係る指定役務に含まれる「トートバッグの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を行っており,その店舗の看板に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して使用したものであるから,その行為は,商標法第2条第3項第8号にいう「役務に関する広告に標章を付して展示する行為」に該当するものと認められる。
3 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標の通常使用権者が,その請求に係る指定役務について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その取消請求役務について,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-02-13 
結審通知日 2015-02-19 
審決日 2015-03-03 
出願番号 商願2007-65506(T2007-65506) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X35)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 井出 英一郎
田中 亨子
登録日 2008-11-07 
登録番号 商標登録第5179244号(T5179244) 
商標の称呼 モモタロー 
代理人 島野 美伊智 

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