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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201412426 審決 商標
不服201313747 審決 商標
不服20118833 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W1825
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W1825
管理番号 1293700 
審判番号 不服2013-24489 
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-12 
確定日 2014-10-24 
事件の表示 商願2013-5225拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「GALAPAGOS」の文字を標準文字で表してなり,第18類「かばん類,袋物,皮革製包装用容器,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,革ひも」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として,平成25年1月29日に登録出願されたものである。

2 原査定の理由の要点
原査定は,以下(1),(2)のとおり,認定,判断し,本願を拒絶したものである。
(1)本願商標は,「Galapagos Islands(ガラパゴス諸島)」(以下「ガラパゴス諸島」という。)を認識させるものであって,これをその指定商品中の「かばん類,袋物,洋服,帽子,バンド,ベルト,靴類」に使用するときはその商品の産地又は販売地を普通に用いられる方法で表示するものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標は,国際連合教育科学文化機関(UNESCO)(以下「ユネスコ」という。)の世界自然遺産として登録されているガラパゴス諸島を認識させるものであるから,このような出願を一私人である出願人が営利目的で自己の商標として登録し,使用することは,エクアドル共和国の尊厳,国民感情,ひいては国際間の信義則を保つ観点から適当ではないから,商標法第4条第1項第7号に該当する。

3 当審の判断
(1)本願商標について
本願商標は,前記1のとおり,「GALAPAGOS」の文字を標準文字により表してなるものであり,第18類及び第25類の商品を指定商品とするものであるところ,別掲に示すとおり,「GALAPAGOS」の文字及びその読みである「ガラパゴス」の文字が,ガラパゴス諸島を示すものとして,一般的に使用されていることから,本願商標は,ガラパゴス諸島を容易に認識させるものである(別掲(1)?(3))。
(2)商標法第3条第1項第3号該当について
ガラパゴス諸島は,エクアドルのガラパゴス州を構成する火山群であって,イザベラ島のほか13の大島と多数の小島からなり,コーヒーやサトウキビを産出。近海は好漁場でエビ・マグロがとれ,塩・硫黄・トカゲの皮・魚類を輸出。1935年にダーウィンがビーグル号で来訪し,「種の起源」を生み出すもととなり,1936年に国立公園に指定され,特異な動植物(特に鳥類・は虫類)が生息するため専門家・観光客が多いこと,1978年に初の自然遺産として世界遺産一覧表に登録されたことなどが認められる。
また,当地が世界遺産に登録された1978年頃から我が国の旅行社もガラパゴス諸島への旅行を企画し,現在では「世界遺産の地を巡る」「ダーウインが進化論を着想した島」などとして,複数の旅行社において企画旅行が催行されていることなどが認められる。
(別掲及び外務省ウェブサイト「世界遺産条約」;http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/kyoryoku/unesco/isan/world/isan_1.html)
これらのことから,ガラパゴス諸島は,は虫類等の特異な動植物が生息し,世界遺産に登録された地として,また,世界的に著名な観光地として広く知られているものといえる。
そして,前記(1)のとおり,本願商標は,ガラパゴス諸島を認識させるものであり,また,ガラパゴス諸島において,鳥類やは虫類等の特異な動植物が生息し,トカゲの皮を輸出しているところ,本願商標の指定商品には,は虫類やトカゲの皮を原材料とするかばん類,バンド,ベルト等が含まれ,また,観光地で一般に販売される袋物,洋服,帽子等が含まれる。
そうすると,本願商標は,これを,その指定商品中の「かばん類,袋物,洋服,靴下,帽子,バンド,ベルト,靴類」に使用するときは,これに接する取引者・需要者が,ガラパゴス諸島で生産されたものであると認識するに止まるものであり,その商品の産地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と言わざるを得ない。
また,本願商標が前記商品の産地を表示するものと認識される以上,これは,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めることは公益上適当とはいえない。
したがって,本願商標は,前記の指定商品について,商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第7号該当について
前記(2)のとおり,本願商標は,その指定商品中の「かばん類,袋物,洋服,靴下,帽子,バンド,ベルト,靴類」について,商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
そして,仮に,当該商品が商標法第3条第1項第3号に該当しないものであるとしても,以下のとおり,本願商標は,全指定商品について,商標法第4条第1項第7号該当するものである。
ア 世界遺産について
ユネスコは,1972年(昭和47年)の第17回総会において,「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(以下「世界遺産条約」という。)を採択した。
同条約は,文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷,破壊等の脅威から保護し,保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とするものであって,締約国は,自国内に存在する遺産を保護する義務を認識し,最善を尽くす(第4条),自国内に存在する遺産については,保護に協力することが国際社会全体の義務であることを認識する(第6条),「世界遺産委員会」(委員国は締約国から選出)を設置(第8条),同委員会は各締約国が推薦する候補物件を自己の定めた基準に照らして審査し,顕著な普遍的価値を有すると認められたものの「世界遺産一覧表」を作成するほか,締約国の要請に基づき,同一覧表に記載された物件の保護のための国際的援助の供与を決定する(第11条,第13条)などを規定している。
また,2013年4月現在,同条約の締約国数は190か国,我が国においては,1992年(平成4年)9月30日に発効している。
(外務省ウェブサイト「世界遺産条約」;http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/kyoryoku/unesco/isan/world/isan_1.html)
イ ガラパゴス諸島の世界遺産登録について
ガラパゴス諸島は,前記(2)のとおり,世界的に著名な観光地として広く知られているところ,1978年に初の自然遺産として世界遺産一覧表に登録され,さらに海洋保護区(1994年にガラパゴス国立公園の一部に指定された。)が2001年に追加登録された。
最初の登録時には,絶滅の危機にある希少な動植物がガラパゴス諸島に集中しており,ガラパゴスの自然は,「現在進行している地質学的過程と生物進化を代表する顕著な見本」であり,「絶滅のおそれがある生物が存続している生息地」であるとの理由によりその価値が認められた。さらに2001年に海洋保護区が登録されたときには,自然遺産の基準である自然美,地形地質,生態系,生物多様性のすべての基準が適用された。
そして,登録に至るまでには,エクアドル政府,チャールズ・ダーウィン財団,ユネスコ,フランクフルト動物学会,国際自然保護連合(IUCN),世界自然保護基金(WWF)等によるガラパゴスの普遍的な価値を立証する共同の努力があったが,特にチャールズ・ダーウィン研究所(チャールズ・ダーウィン財団によりガラパゴス諸島サンタ・クルス島に1964年設置)とガラパゴス国立公園により共同で行われてきた自然保護活動の努力が大きいといわれる。
(国立国会図書館調査及び立法考査局「レファレンス平成21年3月号危機にある世界遺産-ガラパゴス諸島の事例-;http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200903_698/069801.pdf)。
ウ 本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
前記(1)のとおり,本願商標は,その表示からガラパゴス諸島を容易に認識させるものである。
そして,前記ア,イのとおり,「ガラパゴス諸島」は,1978年に初の自然遺産として世界遺産一覧表に登録され,2001年には海洋保護区が追加登録されていること,世界遺産一覧表に登録されることは,ユネスコに設置された「世界遺産委員会」により顕著な普遍的価値を有するものと評価されたことであり,その登録により,「ガラパゴス諸島」の保有国であるエクアドル共和国を含め世界遺産条約の締約国には,これを人類全体のための世界の遺産として損傷,破壊等の脅威から保護し,保存する義務が生じることが認められる。
また,このような自然遺産の選定基準に適合する状態を維持・管理するため,エクアドル政府,ユネスコをはじめ多くの団体及びエクアドル国民などによる自然保護活動の努力がなされていることが認められる。
加えて,日本も世界遺産条約の締結国として,ガラパゴス諸島の保護,保存に協力すべき立場にある。
そうすると,自然遺産として世界遺産一覧表に登録された「ガラパゴス諸島」を容易に認識させる本願商標について,一私人である請求人に登録を認め,その指定商品について使用をする権利を専有させることは,これを人類全体のための世界の遺産として保護・保存する活動を行ってきたユネスコやエクアドル共和国の権威・尊厳を害し,かつ,エクアドル共和国を含む世界遺産条約の締結国や団体に所属する国民の感情を害し,我が国とエクアドル共和国及び世界遺産条約の締結国の友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり,国際信義に反するといわざるを得ない。
したがって,本願商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であって,商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(4)請求人の主張について
請求人は,「GALAPAGOS」,「ガラパゴス」,「タスマニアタイガー」及び「軽良タスマニア」等の登録商標を引用し,本願商標もこれらと同様に登録されるべきである旨主張する。
しかしながら,商標法第3条及び同第4条各号に該当するか否かの判断は,査定時(審判においては審決時)を基準とし,その指定商品の取引の実情等を考慮して,個々の商標ごとに個別具体的に判断されるべきものであるところ,「GALAPAGOS」以外の登録例は,本願商標と商標及び指定商品並びにその判断時期が異なるものであって,本件における前記判断の参考となるものではない。
また,「GALAPAGOS」の登録例にしても,同商標の登録査定は,本審決よりも15年余り前になされたものであり,この間に,世界界遺産条約の締約国や世界遺産一覧表への登録が増加し,日本を含む世界遺産条約の締約国において,世界遺産の保護,保存等に対する認識も高まっているものといえ,また,それに伴いガラパゴス諸島の観光地としての認識も一層高まっているものといえるから,その登録をもってしても,本件の前記判断を左右するものとはいえない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
(1)「コンサイス外国地名事典第3版」株式会社三省堂発行
ガラパゴス諸島Galapagos Islands
エクアドルのガラパゴス州を構成する火山群。東太平洋,本土の西方1,000km…。イサベラ島のほか13の大島と多数の小島からなる。…コーヒー・サトウキビを産出。近海は好漁場で,エビ・マグロがとれる。塩・硫黄・トカゲの皮・魚類を輸出。…’35ダーウィンがビーグル号で来訪し,「種の起源」を生み出すもととなる。1936年国立公園に指定。…特異な動植物(特に鳥類・爬虫類)が生息するため,専門家・観光客が多い。
(2)「株式会社アートツアー」のウェブサイト
…ガラパゴスでしか見られない動物たちがはるか遠い時代から独自の進化を続けながら今もなお生きづき進化を続けています。…ガラパゴスは南アメリカの赤道直下にある国,エクアドル共和国の国立公園です。ガラパゴス旅行には,事前に現地事情を正確に把握してからお出かけになることをお勧めいたします。…個人旅行でも団体旅行でも多様なニーズにお応えできます。1978年からオペレーションを始めたガラパゴス旅行のパイオニアとして私どもア-トツアーが…(http://www.galapagos.co.jp/)
(3)「特定非営利活動法人日本ガラパゴスの会」のウェブサイト
特定非営利活動法人日本ガラパゴスの会(JAGA)/The Japan Association for Galapagos/チャールズ・ダーウィン財団日本窓口/「Rescue Galapagos! ガラパゴス写真展」/【日時】:2008年7月8日(火)?7月20日(日)/JICA地球ひろば開館時間(http://www.j-galapagos.org/databox/data.php/act-kokunai-kako-20080708/code)
(4)「H.I.S.世界遺産50選エクアドルガラパゴス諸島」のウェブサイト
ダーウィンが進化論を着想した島 ガラパゴス諸島 ここでしか出会えない固有の動植物溢れる島,ガラパゴス諸島。キト(エクアドル)やグアヤキル(エクアドル)を経由してガラパゴスへ!(http://www.his-j.com/world_heritage/usa/galapagos.html?cid=gglGGKEY=%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%83%91%E3%82%B4%E3%82%B9%E8%AB%B8%E5%B3%B6%20%E3%83%84%E3%82%A2%E3%83%BC)
(5)「世界ツアーズ」のウェブサイト
ガラパゴス諸島はエクアドル共和国に属する国立公園で,南米大陸から西に約1000kmの太平洋上に赤道をまたぐように点在し,大小さまざまな島々で構成されています。…各島とも動植物共に異なった固有の進化を遂げているので,島を訪れる全ての人にすばらしい体験をさせてくれるでしょう(http://www.sekaitours.co.jp/southamerica/index.html?utm_source=Adwords&utm_medium=CPC&utm_campaign=july_promotion)
(6)「YAHOOJAPANトラベル」のウェブサイト
ガラパゴス諸島【東京発着】サンタクルス島に滞在・独自の進化を辿るガラパゴス諸島をアイランドホッピング♪うれしい夕食2回付.キトでは世界遺産の旧市街を(日本語ガイド),サンタクルス島ではダーウイン研究所を…(http://abroad.tour.travel.yahoo.co.jp/bin/atour_search?areacd=0800&countrycd=EC&citycd=GPS)



審理終結日 2014-07-31 
結審通知日 2014-08-06 
審決日 2014-09-05 
出願番号 商願2013-5225(T2013-5225) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W1825)
T 1 8・ 22- Z (W1825)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 安子佐藤 淳 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 前山 るり子
小林 由美子
商標の称呼 ガラパゴス 
代理人 大谷 嘉一 

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