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審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X20
審判 一部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X20
管理番号 1277911 
審判番号 無効2013-890004 
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-01-17 
確定日 2013-07-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5523954号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5523954号の指定商品中、第20類「いす」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5523954号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、「白樺」の漢字と「しらかば」の平仮名を上下二段に書してなり、平成23年9月20日に登録出願、第20類「いす」のほか、第11類、第21類、第25類及び第44類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同24年8月21日に登録査定、同年9月28日に設定登録されたものである。
そして、本件商標は、平成25年2月27日に放棄による登録の抹消がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第28号証(枝番を含む。)を提出した。
1 利害関係について
請求人は、昭和20年9月26日に設立された我が国を代表する住宅・建築資材の総合メーカーである(甲4)。今日では、住宅・建築資材メーカーが、資材だけでなく、家具も取り扱うのは一般的となっており、他の大手メーカーであるYKK AP株式会社及び株式会社LIXILなどでも見受けられる。
よって、請求人は、本件審判を請求することにつき、当然に法律上の利益を有している。
実際、請求人は、自社にて製造販売を行っている住宅向けの資材・家具として「日本の樹」シリーズを有しており、「杉」、「栗」、「栃」、「銀杏」、「鬼胡桃」及び「沢胡桃」の6種の材木を原材料とする商品を2012年5月より展開している(甲5の1)。
「日本の樹」シリーズは販売以降、大変好評を得ていることから、今後、請求人は上記6種の材木に加え、「白樺」を原材料とする資材・家具の製造販売を検討しており、すでに2013年1月9日付で商標「日本の樹シリーズ 白樺」(第20類)について出願している(商願2013-000864)(甲6)。
以上のとおり、本来は識別力の欠如により登録されるべきでない第20類「いす」に関する本件商標の存在により、「白樺」シリーズの資材・家具の製造販売が阻害されるほか、上記商標「日本の樹シリーズ 白樺」の登録が妨げられるおそれもある。
よって、本件商標は、請求人に不利益を及ぼすものであるから、請求人は本件審判を請求することにつき明らかに法律上の利益を有している。
2 理由の要点
本件商標は、漢字「白樺」及び平仮名「しらかば」を普通に用いられる方法で表示したにすぎないことから、これをその指定商品中「白樺製いす」について使用するときは、その商品の原材料、品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないことから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、前記商品以外の「いす」に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)いすなどの木製の家具については、ブナ材、オーク材など木の種類を原材料として表示することは一般的に行われており(甲8及び9)、毛筆風の漢字「白樺」及び平仮名「しらかば」を上下二段に横書きしてなる本件商標からは、木の一種である「白樺」を容易に認識可能である。白樺とは、やや高い山地の陽地に自生するカバノキ科の落葉高木であり、材は皮付のまま細工物にでき、蝋分に富むので薪材にもなる(甲10)。主として長野県や北海道において多く生息する日本の高原を代表する木の一つとして我が国では広く親しまれており(甲11)、財団法人日本木材総合情報センターによると、白樺はシラカンバともされ、観光地での細工物に使われるほか、器具、家具、さらには削片板、パルプなどの原料になる(甲12)。
このように、白樺は様々な用途を持つ木であり、日本人にとって馴染み深い木であることから、白樺がいすの原材料として用いられることも容易に予想でき、需要者及び取引者は、本件商標が「いす」に用いられた場合には、本件商標から「いすの原材料である白樺」の意味合いを直接的かつ具体的に看取し得る。
(2)我が国において、白樺を原材料とする「いす」が製造販売されている事実は新聞記事やウェブサイトにて数多く確認でき、取引の実情が存在している(甲13ないし19)。甲第13号証は、ジャクパコーポレーションによる、いすなどの木製家具の販売に関する日刊工業新聞の記事であり、販売する家具類の材質の一つとして「白樺」が紹介されている。甲第14号証ないし甲第19号証はいすの販売に関する「楽天」などのウェブサイトであり、いずれのサイトにおいても、いすの原材料が「白樺(シラカバ)」であることが明記されている。
かかる取引の実情を考慮すると、「白樺」がいすの原材料を表す語として普通に用いられていることは明らかである。
(3)本件商標は毛筆風の漢字「白樺」及び平仮名「しらかば」を上下二段の横書きの構成からなる。まず、文字を毛筆風に書することは我が国の一般的な取引の場において散見できるものであって、それにより、かかる構成態様それ自体が特異な字形として印象づけられ、かつ、自他商品の識別標識として機能するような独創的な字形と認識されるとはいい難い。また、本件商標は漢字「白樺」の下段に平仮名「しらかば」を書してなるところ、漢字の読みを併記することはよく行われている手法である。
以上より、本件商標は普通に用いられる方法で表示されているといえる。
(4)小括
需要者及び取引者は、本件商標を「いす」に用いた場合には「いすの原材料である白樺」の意味合いを直接的かつ具体的に看取し、かつ、本件商標は普通に用いられる方法のみからなる。
よって、本件商標は第3条第1項第3号に違反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきである。
4 第4条第1項第16号該当性について
上述のとおり、本件商標から「いすの原材料である白樺」の意味合いが生じることは明らかであり、本件商標を「白樺製以外のいす」に用いた場合には、商品の品質の誤認を生じるおそれがある。
よって、本件商標は第4条第1項第16号に違反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標を「いす」に用いた場合には「いすの原材料である白樺」の意味合いが直接的かつ具体的に生じ、その商品の原材料、品質を表示するにすぎず自他商品識別標識としての機能は果たし得ないことより、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、「白樺製以外のいす」に使用したときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し商標登録を受けることができないものであるから取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件商標の登録抹消の効果について
被請求人は、平成25年2月26日付けの上申書において、「本件商標登録を放棄することとし、『商標権抹消登録申請書』及び『商標権の放棄書』を提出した。」旨上申しているところ、その登録は、上記第1のとおり、平成25年2月27日である。
ところで、商標法第35条で準用する特許法第98条第1項第1号によれば、商標権の放棄による消滅は登録しなければ効力を生じないと規定されているから、平成25年2月27日に登録された、本件商標の放棄の効果は、本件無効審判の請求の日(平成25年1月17日)には遡及しない。
そして、商標法第46条第2項によれば、同条第1項の審判は、商標権の消滅後においても請求することができるとされており、この趣旨に照らしても、商標権の放棄以前になされた本件無効審判の理由が、当該商標権の放棄により、解消するということはできない。
2 利害関係について
無効審判の請求人は、審判請求をするについて法律上の利益を有することを要すると解されるところ、請求人は、商標「日本の樹シリーズ 白樺」(第20類)について出願(商願2013-000864)をしている(甲6)。
そして、請求人は、本件商標の存在によって、その商標登録出願との間で直接的な影響を受けることがあり得るとみられるから、本件審判の請求について利害関係を有する者というべきである。
3 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)請求人の主張及び同人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 白樺とは、やや高い山地の陽地に自生するカバノキ科の落葉高木であり、材は皮付のまま細工物にでき、蝋分に富むので薪材にもなる(甲10)。主として長野県や北海道において多く生息する日本の高原を代表する木の一つとして我が国では広く親しまれており(甲11)、白樺はシラカンバともされ、観光地での細工物に使われるほか、器具、家具、さらには削片板、パルプなどの原料になる(甲12)。
イ 我が国において、白樺を原材料とする「いす」が製造販売されている(甲13ないし甲19)。
ウ いすなどの木製の家具については、ブナ材、オーク材など木の種類を原材料として表示することは一般的に行われている(甲8及び甲9)。
(2)判断
前記(1)によれば、本件商標をその指定商品中「いす」に使用するときは、当該商品が白樺を原材料に使用した「いす」であると認識され、白樺を原材料として使用していない「いす」に使用すると、当該商品が白樺を原材料としてなるものとその品質について誤認を生ずるおそれがあるというのが相当である。
そして、被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。
したがって、本件商標は、商品の品質、原材料を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから商標法第3条第1項第3号に該当し、また、本件商標は、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標というべきであるから同法第4条第1項第16号に該当する。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第20類「いす」について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号に基づき、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)




審理終結日 2013-05-31 
結審通知日 2013-06-05 
審決日 2013-06-18 
出願番号 商願2011-71013(T2011-71013) 
審決分類 T 1 12・ 272- Z (X20)
T 1 12・ 13- Z (X20)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 大森 健司
前山 るり子
登録日 2012-09-28 
登録番号 商標登録第5523954号(T5523954) 
商標の称呼 シラカバ 
代理人 川本 真由美 
代理人 鮫島 睦 

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