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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1268399 
審判番号 取消2011-300940 
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-10-07 
確定日 2012-12-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第1317595号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1317595号商標(以下「本件商標」という。)は、「MCS」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月28日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、昭和52年12月26日に設定登録、平成19年12月12日に指定商品を第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」をはじめとする第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がなされているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中「第9類 電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「第9類 電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用について
ア 乙第1号証は三井金属鉱業株式会社及び株式会社エム・シー・エスの「TAB TAPE」のパンフレットであるが、商品「TAB TAPE」についての自他商品識別標識としての「MCS」の使用は見いだせない。なお、同パンフレットの最終頁に「MCS」なる標章があるが、「製造元 株式会社エム・シー・エス」の上に配置していることからすれば、当該標章は同社の社標にすぎないものであり、取引の経験則からして、この「MCS」は商品「TAB TAPE」の製造元表示に止まると解される。
このパンフレット中には「MMS TAB TAPE」なる標記が本文中数多く見いだせるが、商品パンフレットにおいて商標は本文中で表示されるのが一般的であることから、当該商品の商標は「MMS」であると推測される。
イ 乙第4号証中の「株式会社エム・シー・エス」は会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
ウ 乙第5号証の料金明細書の「エム・シー・エス様」は同書類の宛先としての会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
エ 乙第6号証の輸出許可通知書の「MCS,INC.」は輸出者を表示した会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
オ 乙第7号証の「INVOICE」における「MCS,INC.」及び「MCS」は商品名の表示「TAB TAPE」とは全く離れた位置に配置され、その位置からして同書類の発行者としての会社名・社標の表記に止まるものであって、商品「TAB TAPE」についての自他商品識別標識としての使用でない。
カ 乙第8号証の「Air Waybill」における「MCS,INC.」はこの書類の宛先としての会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
キ 乙第9号証の「送付書」における「株式会社エムシーエス」は発送元としての会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
ク 乙第10号証の「梱包ラベル」の「MCS,INC.」は製造元又は送付元としての会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
ケ 乙第11号証の「梱包段ボール」については、この段ボールの中味が不明であるので、本件商標が「TAB TAPE」に使用されていることを何ら立証するものではない。また、「梱包段ボール」が本件審判の予告登録前3年以内のものであることが何ら立証されていない。
加えて、「梱包段ボール」に表示された「MCS」は、「株式会社エム・シー・エス」の社標であって発送元の表示に過ぎず、このような発送元の表示は商品取引における自他商品識別標識としての商標の使用に当たらない。
コ したがって、被請求人の提出した証拠方法によっては、通常使用権者が予告登録前3年以内に本件商標を取消請求に係る指定商品に使用していたことを立証していない。
3 口頭審理における陳述
(1)通常使用権者による使用について
本件商標について、株式会社エム・シー・エスが通常使用権者であることは認める。
(2)乙第1号証のパンフレットについて
ア 頒布時期
乙第1号証のパンフレットに「2005年3月31日現在」の記述があることから、当該パンフレットはこの頃に印刷されたことは明らかであるが、取引の経験則上印刷から3年以上も経過した、本件審判の予告登録日前3年以内に頒布されたとは考え難い。また、乙第14号証ないし乙第16号証は、いずれも2005年3月頃に印刷された乙第1号証のパンフレットが本件審判の予告登録日前3年以内に頒布されたことを何ら立証するものではない。
イ 商標としての使用
パンフレットの5頁(乙第17号証)に小さく表示された標章は、株式会社エム・シー・エスの社標にすぎないし、「TABテープ」のみを製造していることをもって、当該標章が自他商品識別標識としての商標として使用していることを何ら裏付けるものではない。
ウ 乙第18号証の封筒の印刷を示す簡易注文書の写し等及び乙第19号証の名刺の写しは、本件商標の使用及び乙第1号証のパンフレットが本件審判の予告登録日前3年以内に頒布されたことを何ら立証するものではない。
エ 以上のとおり、被請求人の提出した証拠方法によっては、2005年3月頃に印刷された乙第1号証のパンフレットが本件審判の予告登録日前3年以内に頒布されたことを立証できず、しかも、乙第1号証のパンフレット自体が自他商品識別標識としての本件商標の使用を立証するものではない。
(3)乙第5号証ないし乙第8号証、乙第10号証と乙第11号証の関係について
ア 乙第5号証ないし乙第9号証及びこれら証拠方法の鮮明な写しである乙第20号証ないし乙第24号証における標章の使用は、請求人が弁駁書で述べたように、いずれも自他商品識別標識としての商標の使用ではない。
イ 乙第25号証は「TABテープ」の製造工程を述べたものであり、乙第10号証のラベルとおなじものが当該商品の包装に貼付される旨被請求人は述べているが、弁駁書で述べたように、乙第10号証の「梱包ラベル」の「MCS,INC.」は製造元又は送付元としての会社名の表記であって、自他商品識別標識としての使用でない。
ウ 乙第11号証及び乙第26号証の「梱包段ボール」には「三井金属のTABテープ/MCS/株式会社エム・シー・エス/〒750 山口県下関市彦島西山町1丁目1-1」と印刷されているから、その段ボールに梱包されるのは、被請求人から使用許諾を受けていない三井金属のTABテープが梱包されていたといえる。また、梱包段ボール上の「MCS」も発送元の表示にすぎず、商品取引における自他商品識別標識としての商標の使用に当たらない。さらに加えて、この梱包段ボールは商標法第2条第3項の「商品の包装」に当たらず、販売に際して商品を収納する容器ではなく、単に商品を輸送するための容器に過ぎない。
乙第27号証ないし乙第30号証は、梱包段ボールが本件商標の使用を立証していない以上、本件商標の使用を立証し得るものではない。
乙第31号証及び乙第32号証の「TABテープ」の品質に関する資料は商品に関する広告、価格表、取引書類には当たらない。
エ 以上のとおり、乙第5号証ないし乙第8号証、乙第10号証と乙第11号証の関係を示すものとして提出された証拠方法からしても、本件商標が商品「TABテープ」について自他商品識別標識としての商標として使用されていることは何ら立証されていない。
(4)したがって、被請求人の提出した証拠方法によっては、通常使用権者が予告登録前3年以内に本件商標が取消請求に係る指定商品に使用されていることを立証していない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第32号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用事実の要点
本件商標の通常使用権者である「三井金属鉱業株式会社」及びその子会社「株式会社エム・シー・エス」は、本件審判請求の登録前3年以内に我が国においてその請求に係る指定商品中「電子応用機械器具」の範ちゅうに属する「TABテープ」について本件商標を使用している。
(2)本件商標の使用の事実
ア 商標の使用者
(ア)乙第1号証は、「三井金属鉱業株式会社」及びその子会社「株式会社エム・シー・エス」の「TABテープ」のパンフレットである。
(イ)乙第2号証は、「三井金属鉱業株式会社」のホームページであり、その子会社「株式会社エム・シー・エス」との関係が確認できる。
イ 使用に係る商品
(ア)乙第1号証、乙第3号証及び乙第4号証には、請求に係る指定商品「電子応用機械器具」の範ちゅうに含まれる商品「TABテープ」又は「COFテープ」を生産している事実が記載されている。
(イ)乙第5号証ないし乙第11号証の取引書類等には、商品名として「TAB TAPE」又は「TABテープ」が記載されている。
ウ 使用に係る商標
乙第1号証、乙第4号証ないし乙第11号証には、本件商標又は本件商標と社会通念上同一とみなされる商標が記載されている。
エ 使用時期
(ア)乙第5号証の「料金明細書」には、請求日として2011年03月28日と記載されている。
(イ)乙第6号証の「輸出許可通知書」には、許可年月日として2011年03月28日と記載されている。
(ウ)乙第7号証の「INVOICE」には、shipmentの日付として2011年3月29日と記載されている。
(エ)乙第8号証の「Air waybill」には、その受理日として2011年3月28日と記載されている。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者により本件請求に係る指定商品について使用されている。
2 口頭審理における陳述
(1)株式会社エム・シー・エスが本件商標の通常使用権者である事実について
株式会社日立製作所は、本件商標を株式会社エム・シー・エスが使用することについて、株式会社エム・シー・エスと商標使用許諾契約を締結している(乙第12号証)。
(2)商標法第2条第3項各号に該当する使用及びその時期について
ア 乙第1号証のパンフレットを頒布した事実及び本件商標の使用について
(ア)本件商標の通常使用権者である株式会社エム・シー・エスは、乙第1号証のパンフレットを2005年3月31日以降に印刷して現在も使用している。パンフレット6頁の株式会社エム・シー・エスの概要が記載された枠内に「設立:1989年7月20日(2005年3月31日現在)」と記載されていることからも、本パンフレットが2005年3月31日以降に印刷されたものであることが確認できる(乙第13号証)。このパンフレットの裏表紙に本件商標と社会通念上同一である「MCS」の記載がある。
(イ)このパンフレットは、2005年3月以降、株式会社エム・シー・エスの顧客に頒布しており、現在も継続して取引会社へ頒布している。具体的な配布先取引企業は、国内では、シャープ株式会社(乙第14号証)、ルネサスエレクトロニクス等(乙第15号証)、海外では韓国のサムスン等(乙第16号証)である。
(ウ)パンフレットを配布した取引会社に対して、株式会社エム・シー・エスは、2011年4月1日に組織変更があったため取引会社の担当者宛に新組織図をメールで送信している(乙第15号証)。
(エ)パンフレットの5頁の左下に掲載されている「フレキシブルTAB」に小さく本件商標「MCS」の表示が確認できる(乙第17号証)。
(オ)乙第13号証のパンフレットで、株式会社エム・シー・エスでは「TABテープ(COFやTCPもTABという。)」のみ製造している企業であり、取引に係る商品はすべて「TABテープ」であることが確認できる。
(カ)したがって、株式会社エム・シー・エスが取引において使用する資料、書面等に表されている標章の使用は、「TABテープ」の使用に関わるものであるということができる。そして、封筒(乙第18号証)、名刺(乙第19号証)に表記された標章又は商号は、株式会社エム・シー・エスの場合、「TABテープ」のみ製造していることから、それらに表記されている標章「MCS」の使用が商標の使用ではないと明確にいえるものではない。
イ 乙第5号証ないし乙第8号証、乙第10号証と乙第11号証の関係について
乙第5号証ないし乙第8号証は、通常使用権者である株式会社エム・シー・エスが、2011年3月に台湾企業へ商品「TABテープ」を輸出した際に使用した取引書類である。
なお、乙第5号証ないし乙第9号証は、若干不鮮明であったので、より鮮明な同一資料を乙第20号証ないし乙第24号証として提出する。
(ア)乙第20号証(乙第5号証)は、「TABテープ」を台湾企業へ輸送した運送会社である日本通運株式会社からの「料金明細書」であり、その請求日は、2011年3月28日となっていることが確認できる。
(イ)乙第21号証(乙第6号証)は、「TABテープ」を台湾企業へ輸出する際に必要である福岡空港税関支署長が発行した「輸出許可通知書」であり、その許可日は、2011年3月28日となっていることが確認できる。
(ウ)乙第22号証(乙第7号証)は、台湾企業へ「TABテープ」を譲渡した際の株式会社エム・シー・エスの「INVOICE(送り状)」である。その日付は、2011年3月19日及び同月29日となっていることが確認できる。
(エ)乙第23号証(乙第8号証)は、株式会社エム・シー・エスが、台湾企業へ「TABテープ」を輸出する際に福岡空港税関へ提出用の「Bill of landing(船荷証券)」であり、その日付は、2011年3月28日となっていることが確認できる。
(オ)乙第10号証の上段の写真は、製造した「TABテープ」がアルミパッケージに包装されたものである。「TABテープ」は、精密機器のため製造ラインで塵対策、酸化防止のために窒素を封入し密封される(乙第25号証)。
また、下段の写真は、アルミパッケージで包装された「TABテープ」を入れた段ボールである。アルミパッケージ及び段ボールには、商品「TABテープ」の製造ロット番号、Snメッキされた日付、出荷数量、出荷日が記載されているラベルが貼付され、出荷日は、2011年10月4日となっていることが確認できる。
(カ)乙第11号証は、乙第10号証の下段の写真のラベルが貼付される前の段ボールを大写しした写真であり、段ボールには、本件商標と社会通念上同一である「MCS」の記載がある。
(キ)乙第26号証は、乙第10号証及び乙第11号証に写されている段ボールと同じ段ボールの現物を切り取ったものであり、これに商品名「TABテープ」、通常使用権者名「株式会社エム・シー・エス」、本件商標と社会通念上同一である「MCS」の記載がある。
(ク)乙第27号証は、その段ボールを製造した業者の証明書であり、その発注日は平成22年9月14日となっていることが確認できる。
(ケ)乙第28号証は、段ボールを発注した際の購買発注書、検収書であり、これらに記載されている日付は、本件審判請求の登録前3年以内であることが確認できる。
(コ)乙第29号証は、「TABテープ」を出荷する際の箱詰め作業手順書であり、これに記載されている日付は、本件審判請求の登録前3年以内であることが確認できる。
なお、乙第14号証から、この段ボール箱が商品「TABテープ(COFテープ)」を梱包して取引先企業へ納品した事実及びその納品日が本件審判請求の登録前3年以内であることが確認できる。
(サ)乙第30号証は、株式会社エム・シー・エスが取引会社へ商品「TABテープ」を輸送した際のトラブルメールであり、これに添付の写真からMCS表記の段ボールで出荷している事実が確認できる。そして、このメールに記載されている日付は、本件審判請求の登録前3年以内であることが確認できる。
(3)他の補完証拠として、次の証拠を補充する。
ア 乙第31号証は、株式会社エム・シー・エスが取引会社へ提出した商品「TABテープ」の品質に関する資料で公証人役場にてとった確定日付は、本件審判請求の登録前3年以内であることが確認できる。そして、用紙の右下には、本件商標と社会通念上同一である「MCS」の記載がある。
イ 乙第32号証は、株式会社エム・シー・エスの品質保証部が顧客に対して提出した際のメールと「TABテープ」の品質に関する資料であり、その資料の右下には、本件商標と社会通念上同一である「MCS」の記載がある。そして、これに記載されている日付は、本件審判請求の登録前3年以内であることが確認できる。
(4)段ボールの「MCS」の表示が商標法第2条第3項第1号の商品の包装に標章を付する行為に該当するものであり、乙第20号証ないし乙第23号証により、商標法第2条第3項第2号の商品の包装に標章を付したものを輸出したこと、及び、同第8号の商品に関する取引書類に商標を付して頒布したことを立証する。
(5)以上のとおり、乙第1号証ないし乙第32号証により、被請求人の通常使用権者である株式会社エム・シー・エスが、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内に商標法第2条第3項第1号、第2号及び第8号に該当する「使用」を行っていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 乙各号証について
(1)乙第20号証(乙第5号証)は、日本通運株式会社発行の料金明細書(請求日:2011年03月28日)の写しであり、AWB NO「NEC-90670650」、荷送人「MCS,INC.」、荷受人「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD」、個数「126」、計算重量「1,803.0 KG」、品名「TAB TAPE」、INV NO「N110328AB,S,A,B,C,D,**」の記載がある。
(2)乙第21号証(乙第6号証)は、輸出許可通知書の写しであり、輸出者「MCS,INC.」「YAMAGUCHI KEN SHIMONOSEKI SHI HIKOSHIMANISHIYAMACHO 1-1-1」、仕向人「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD」「2,WEI 5TH RD.,CHUNGKANG ECONOMIC PROCESSING ZONE WUCHI TOWN,TAICHUNG HSIEN 435 TAIWAN R.O.C」、AWB番号「NEC-90670650」、貨物個数「126個」、許可年月日「2011/03/28」、品名「PRINTED CIRCUITS」の記載がある。
(3)乙第22号証(乙第7号証)は、「INVOICE」2通の写しであり、各書面の右上に「MCS」の文字(以下「使用商標」という。)、発行者を「MCS,INC」「1-1-1 Hikoshima-nishiyama Shimonoseki,Yamaguchi 750-0093 JAPAN」とし、Consignee(荷受人)「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD」「2,WEI 5TH RD.,CHUNGKANG ECONOMIC PROCESSING ZONE,WUCHI TOWN,TAICHUNG HSIEN 435,TAIWAN,R.O.C.」、Invoice date(送り状日付)「29TH MAR.,2011」、Description of goods(商品の説明)「TAB TAPE,」、Shipping Schedule(出荷予定)の欄に、Flight(航空便)「No:CI0111/29」、ETD(FUKUOKA)(福岡出発時刻)「09:55/29」、ETA(TAIPEI)(台北到着時刻)「11:10/29」及びESTIMATED DELIVERY DATE(予定配達日)「29TH MAR.,2011」の記載があり、Invoice number(送り状番号)については、それぞれ「N110328AB」及び「N110328S」の記載がある。
また、乙第22号証の1は、「INVOICE」の用紙であり、上部に「MCS,inc」と住所の記載があり、右上には「MCS」の文字がある。
(4)乙第23号証(乙第8号証)は、日本通運株式会社発行の2011年3月28日付けAir Waybill(航空貨物運送状)の写しであり、Shipper’s Name and Address(荷送人)「MCS,INC.」「YAMAGUCHI,JAPAN」、Consignee’s Name and Address(荷受人)「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD.」「2 WEI 5TH RD.,CHUNGKANG ECONOMIC PROCESSING ZONE WUCHI TOWN TAICHUNG HSIEN 435 TAIWAN R.O.C.」、Request flight/Date(依頼便/日付)「CI0111/29」、No of Pieces RCP(受領個数)「126」、Chargeable Weight(運賃重量)「1803.0」、Nature and Quantity of Goods(商品の性質及び量)「TAB TAPE」「126 SLAC」「INVOCE NO:N110328AB,S,A,B,C,D,**ORIGIN:JAPAN」の記載がある。また、左上、右上及び右下の3カ所に「NEC 9067 0650」の記載がある。
(5)乙第12号証は、平成6年1月5日付け「商標使用許諾契約書」の写しであり、そこには「株式会社日立製作所(以下、甲という。)と、株式会社エム・シー・エス(以下、乙という。)とは、甲の商標を乙に使用許諾することに関し、次の通り契約を締結する。」「第1条(定義)1.『本件商標』とは、甲の所有に係る商標登録第1317595号商標『MCS』をいう。2.『本件商品』とは、『半導体TAB用キャリアテープ』をいう。」及び「第14条(期間)本契約の有効期間は、本契約締結日より第10条又は第11条の規定により早期に終了した場合を除き、本件商標の権利存続期間満了日である平成9年12月26日迄とする。」と記載され、甲及び乙(住所の記載は、山口県下関市彦島西山町一丁目1番1号)両者の代表取締役の記名押印がなされている。
そして、平成9年6月6日付け覚書及び平成19年6月12日付け覚書には、その契約が平成29年12月26日まで延長されたことが記載されている。
(6)乙第29号証は、株式会社エム・シー・エス作成の「TABテープ」の「箱詰め作業手順書 第89版」であり、冒頭に「改定 2011年9月15日(第89版)台湾微電PS箱について記載」の記載があり、7ページには「28 海外向けの製品は、一箱毎に重量を量る。」との記載がある。また、13ページには、「5 PS箱を用意し組み立て●●●テープを留め形作る。」「当日の出荷リール数に関係なくPS箱を使用する ※台湾微電社のみ限定」の記載があり、「MCS」の文字が表示された箱の写真が掲載されている。
2 前記1によれば、次のとおり認めることができる。
(1)株式会社エム・シー・エスは、商標権者との間で締結した「商標使用許諾契約書」及びその覚書に基づき、商品「半導体TAB用キャリアテープ」について、平成6年1月5日から平成29年12月26日まで、本件商標の使用許諾を受けた(上記1(5))。
また、上記商品「半導体TAB用キャリアテープ」は、回路基板であるから、本件商標の指定商品中「第9類 電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品と認められる。
そして、職権調査によれば、本件商標の商標登録原簿には専用使用権の設定の登録がなされていないから、株式会社エム・シー・エスは本件商標に係る通常使用権者であるとみるのが相当である。
(2)乙第20号証(乙第5号証)及び乙第21号証(乙第6号証)に記載されたAWB NO(AWB番号)「NEC-90670650」と乙第23号証(乙第8号証)に記載された「NEC 9067 0650」が一致すること、乙第20号証(乙第5号証)ないし乙第23号証(乙第8号証)の荷送人(輸出人等)が「MCS,INC」で、荷受人(仕向人等)が「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD.」で、それぞれ一致すること、乙第20号証(乙第5号証)、乙第21号証(乙第6号証)及び乙第23号証(乙第8号証)に記載された個数が「126」で一致すること、乙第20号証(乙第5号証)ないし乙第23号証(乙第8号証)に記載された商品「TAB TAPE」と「PRINTED CIRCUITS」は、いずれも回路基板であって、同一のもの(以下「使用商品」という。)と認められること及び乙第22号証(乙第7号証)と乙第23号証(乙第8号証)の出荷予定と依頼便/日付が「CI0111/29」で一致し、前者の発着日及び配達予定日から2011年3月29日に荷送りされたと認められること(上記1(1)ないし(4))を総合すると、株式会社エム・シー・エスは、乙第20号証(乙第5号証)ないし乙第23号証(乙第8号証)を用いて、2011年(平成23年)3月29日に、「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD」に、使用商品「TAB TAPE」を126個、輸出したと認めることができる。
そして、同一の用途に使用する書類は一定の書式(用紙)のものを用いるのが一般的であり、乙第29号証に上記1(6)のとおりの記載があることからすれば、株式会社エム・シー・エスは「MITSUI MICRO CIRCUITS TAIWAN CO.,LTD.」以外にも海外に「TAB TAPE」を輸出していると認められる。そうすると、同社は、商品を輸出する際に乙第22号証の1の用紙を用いていたと推認することができる。
3 判断
(1)株式会社エム・シー・エスについて
上記2(1)のとおり、株式会社エム・シー・エスは、平成6年1月5日から平成29年12月26日までの間、商標権者から、「MCS」の文字からなる本件商標の指定商品中「半導体TAB用キャリアテープ」について通常使用権の許諾を受けていた。
してみると、株式会社エム・シー・エスは、本件商標に係る通常使用権者というべきである。
(2)株式会社エム・シー・エスの使用について
ア 上記2(2)の株式会社エム・シー・エスが、乙第22号証の1の用紙を用いて輸出していたと推認できる2011年(平成23年)3月29日ころは、本件審判の請求の登録(登録日は平成23年10月24日)前3年以内である。
イ 使用商品は、上記「半導体TAB用キャリアテープ」と同一の商品と認められるものであって、回路基板であるから、本件審判の請求に係る指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品である。
ウ 本件商標は上記第1のとおり「MCS」の文字からなるものであり、使用商標は多少のレタリングが施されているが「MCS」の欧文字からなるものと認められる。
そうとすれば、両商標は、いずれも「MCS」の文字からなるものといえるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標というべきである。
エ 乙第22号証(枝番号を含む。)のINVOICEは、株式会社エム・シー・エスが「TAB TAPE」を輸出するために必要な書類であるから、「TAB TAPE」(使用商品)についての取引書類というべきであり、また、同社は、該INVOICEを用いて輸出を行っていると推認できることから、使用商品の取引書類に使用商標を付して頒布した(商標法第2条第3項第8号)ということができる。
(3)してみれば、本件商標の通常使用権者(株式会社エム・シー・エム)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内においてその請求に係る指定商品中「第9類 電子応用機械器具及びその部品」の範ちゅうに属する商品「TABテープ(TAB TAPE)」の取引書類に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したというべきである。
(4)請求人の主張について
請求人は、乙第22号証(乙第7号証)について、「INVOICE」における「MCS」は商品名の表示「TAB TAPE」とは全く離れた位置に配置され、その位置からして同書類の発行者としての社標の表記に止まるものであって、該商品についての自他商品識別標識としての使用でないから、本件商標がその請求に係る指定商品に使用されていたことを何ら立証するものではない旨主張している。
しかしながら、取引書類にその発行者としてその名称とともに社標を表示して使用することは取引上、不自然というべきものではなく、また、社標は取引者・需要者をして取引に係る商品の出所表示として認識させるものというのが自然である。そうすると、乙第22号証(乙第7号証)の取引書類には、社標(使用商標)が商品名の表示と離れたところに表示されているとしても、該取引書類全体から、該社標(使用商標)は、商品「TAB TAPE」についての出所表示として認識されるものであって、自他商品識別標識としての機能を果たしているものというべきである。
したがって、請求人のかかる主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品の範ちゅうに属する商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審決日 2012-08-14 
出願番号 商願昭49-142900 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 梶原 良子
堀内 仁子
登録日 1977-12-26 
登録番号 商標登録第1317595号(T1317595) 
商標の称呼 エムシイエス 
代理人 田島 壽 
代理人 井上 学 
代理人 青木 篤 
代理人 ポレール特許業務法人 

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