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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない 025
管理番号 1261512 
審判番号 無効2011-890067 
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-28 
確定日 2012-07-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3306886号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3306886号商標(以下「本件商標」という。)は、「JEFFERY WEST」の欧文字と「ジェフェリー ウエスト」の片仮名とを二段に横書きしてなり、平成7年1月25日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同9年2月20日に登録査定、同年5月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第19号について
ア 請求人及び請求人の商標について
請求人であるマーク リチャード ジェフェリー(Mark Richard Jeffery)及びガイ アンソニー ウエスト(Guy Anthony West)は英国ノーサンプトンにおける幼なじみであり、両名の名前をとり、1987年に英国で靴製造会社「Jeffery-West」(以下「ジェフェリーウエスト社」という。)を設立した(甲第2号証)。
両名はジェフェリーウエスト社を共同経営するとともに、同社設立当初から製造販売する靴に「JEFFERY-WEST」の商標(以下「請求人商標」という。)を付し、継続して使用している(甲第2号証、甲第3号証)。
イ 請求人商標の周知性について
(ア)世界における使用実績
請求人は、会社設立以来、製造販売する全ての靴に請求人商標を付し、継続して使用している。
設立当初は英国及び欧州地域を主たる販売地域としていたが、英国の伝統的な皮革製紳士靴を基礎としつつ、靴の一部に赤やオレンジといった鮮やかな色彩を取り入れ、モダンなデザインを施した特徴ある紳士靴は、英国のみならず他の国においても10代後半から30代前半の男性に広く人気を博し、遅くとも1992年頃から海外展開を進めている。
その海外売上高は1992年において既に261,109英国ポンド(当時邦貨換算約60,055,070円 1英国ポンド230円として試算)となり、英国を含む全売上高である658,067英国ポンド(当時邦貨換算約151,355,410円 1英国ポンド230円として試算)の約39.7%を占めている。その後も海外売上高は全売上高の40%前後を占め、本件商標の出願時である1995年においてはその海外売上高は538,677英国ポンド(当時邦貨換算約70,028,010円 1英国ポンド約130円として試算)を記録している(甲第4号証)。
また、英国以外における広告宣伝も積極的に行っており、各国のファッション雑誌等において広く広告を掲載している(甲第5号証、甲第6号証)。
このように請求人商標は本件商標の出願時である1995年当時において世界主要国において広く知られた商標であったといえる。
なお、請求人はこれら請求人商標を保護すべく、英国、共同体商標、マレーシア、シンガポール及び米国等において第25類(靴類)について商標登録を有しており、また中国、日本、ロシアを指定国とした国際登録を有している(甲第7号証、甲第8号証)。
(イ)日本における請求人商標の周知性について
請求人は日本においても1992年から販売代理店等を通じて請求人商標を付した商品の販売を開始している。上述のとおり請求人の商品は英国伝統技術を活かしつつモダンで特徴あるデザインを施した紳士靴(以下「請求人商品」という。)であり、日本のファッション界においても高く評価されている。請求人は日本における直営店は有していないものの、請求人商品のファッション性の高さ故に量販店で大量に販売される性質のものではなく、ブランドショップなどでファッションアイテムのーつとして販売されている(甲第10号証、甲第11号証)。
具体的には国内メンズブランドの草分け的存在である「メンズビギ(MEN’S BIGI)」(甲第12号証)、「ジュンメン(JUN MEN)」(甲第13号証)や「ビームス(BEAMS)」(甲第14号証)は請求人商品の高い完成度とそのデザイン性に注目し、請求人商品の販売を行っている(甲第10号証、甲第11号証)。なお、「メンズビギ(MEN‘S BIGI)」による請求人商品の販売については雑誌でも紹介されている(甲第15号証)。
日本国内における請求人商品の卸売量は1992年度で1,527足、金額にして約49,000英国ポンド(審決注:「4500英国ポンド」は誤記と認めた。)、本件商標の出願前の1994年度には4,002足、金額にして約133,000英国ポンド、1995年度には10,819足、金額にして約236,000英国ポンドとなる(甲第10号証)。このように請求人商標を付した請求人商品は日本国内においても輸入紳士靴として少なくない販売量を誇っている。
また、紳士靴の流行に関する記事として請求人商品が紹介された雑誌の該当ページの写しを提出する(甲第16号証)。
なお、参考までに「JEFFERY WEST」に関するインターネット検索結果を行ったところ、請求人商品に関する多数の検索結果が確認されている(甲第17号証、甲第18号証)。
以上述べたところから、請求人商標は紳上靴の取引者及び需要者、とりわけ主要なターゲットである10代後半から30代前半の男性には本件商標の出願時である1995年1月25日において日本国内において広く認識されていた商標であるといえる。
ウ 本件商標と請求人商標との対比
本件商標は上述のとおり欧文字「JEFFERY WEST」と片仮名「ジェフェリー ウエスト」を二段に併記した態様からなる商標である。他方、請求人商標は欧文字「JEFFERY-WEST」からなる商標である。
両者を対比すると「-(ハイフン)」及び片仮名の有無という微差はあるものの、構成する欧文字は完全に同一であり、また片仮名もその欧文字の称呼を示したものにすぎないといえる。このため本件商標は請求人商標と称呼において同一であり、外観についても類似し、観念においても請求人又は請求人商標を示すものといえる。
以上より、本件商標は請求人商標と類似することは疑いの余地がないものである。
エ 本件商標権者(被請求人)の「不正の目的」について
被請求人は、愛知県名古屋市に所在する靴の専門商社である。同社ホームページによれば「弊社はフットウェア専門商社で、創業以来50年以上の歴史を有しております。輸入卸、国内卸、そして自社企画商品の製造/卸と幅広く手がけるほか、有名ブランド品をはじめとして自社オリジナルブランド品を日本全国の大手量販店・小売店並びに専門店等の多彩な流通チャネルに提案し、販売をしている会社です。」との記載、また「フットウェア専門商社コマリヨーは、国内はもちろんのこと地球を包む綿密なネットワークで、時代が放つ最新のフットウェアを逃がさずキャッチ。」との記載がある(甲第19号証)。
これらの記載から、被請求人は靴の専門商社として国内のみならず海外のブランドについても広く知識を有しており、1995年1月25日の出願時において請求人及び請求人商標を当然了知していたものと考えられる。また、上述のとおり請求人商標は創業者であるリチャード ジェフェリーとガイ アンソニー ウェストの名前に由来する商標であり、普通名称ありふれた名称でないことは明白である。これを靴専門商社である被請求人が全くの偶然で商標として採用することはありえないと言わざるをえない。
さらに、被請求人は米国のスケートボード用シューズとして著名なピエール・アンドレ・セニゼルゲ所有の「ETNIES」シューズに使用の商標につき、所有者に無断で1994年7月1日これを出願、登録した事実がある。当該登録は無効審判において商標法第4条第1項第7号に反するものとして無効となり、当該審決は確定している(甲第20号証)。
当該事実からも明らかなとおり、少なくとも被請求人は1994年代中頃には著名な海外ブランドの輸入販売を有利に進めるため、日本で商標登録されていない商標を先取り的に登録することを目的として商標登録出願を行っていたことがうかがえる。
本件商標と請求人商標の同一・類似性、被請求人の事業、被請求人の過去の商標登録及び無効審決の事実を考慮すると、被請求人による本件商標には、請求人商標が日本において登録されていないことを奇貨として先取り的に商標登録せんとする意思が明白であり、「不正の目的」があることは明らかである。
オ まとめ
以上より、本件商標は、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている請求人商標と類似する商標であり、不正の目的をもって使用するものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第10号及び第15号について
ア 請求人商標の周知性及び著名性について
上記(1)イ(イ)のとおり、請求人商標は、遅くとも本件商標の出願時である1995年1月25日において日本国内において、請求人商品の属する紳士靴の取引者及び需要者、とりわけ主要なターゲットである10代後半から30代前半の男性には広く認識されていた商標であるといえる(甲第10号証ないし甲第16号証)。
イ 本件商標と請求人商標との対比
上記(1)ウのとおり、本件商標は請求人商標と類似し、商品についても請求人商標は紳士靴に使用しているものであるのに対し、本件商標は「靴類」等を指定商品としている類似する商品であることは明らかである。
ウ 被請求人の「不正競争の目的」について
上記(1)エのとおり、被請求人による本件商標には、請求人商標が日本において登録されていないことを奇貨として先取り的に商標登録とする意思が明白であり、「不正の目的」及び「不正競争の目的」があることは明らかである。
第4条第1項第10号について
以上より、本件商標は、需要者の間に広く認識されている請求人商標と類似する商標である。さらに本件商標は不正競争の目的をもってされたものであるから商標法第47条第1項の適用はないものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に反して登録されたものである。
第4条第1項第15号の該当性について
本件商標は、紳士靴の商標として需要者の間に広く認識されている請求人商標と類似する商標である。また本件商標の指定商品も「靴類」等であることから、本件商標を付したこれらの商品に接する取引者及び需要者は請求人らの商品であると誤認すると考えられる。また、仮に請求人商品そのものと認識しないとしても、請求人商標を付した「靴類」等の指定商品に接する取引者又は需要者は、請求人からライセンスを受けた商品である、といった誤解を与える可能性も十分にある。さらに商標の類似性、商品の関連性から、請求人と被請求人がいわゆる親子関係や系列会社といった緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信させるおそれが十分にあるといえる。
以上より、本件商標は請求人の業務にかかる商標と混同を生ずるおそれのある商標であることは明らかである。
さらに、本件商標は不正競争の目的をもってされたものであるから商標法第47条第1項の適用はないものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に反して登録されたものである。
(3)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に反して登録されたものであり、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。
2 答弁の理由
(1)請求人商標の英国(諸外国)における著名性について
ア 請求人は、1987年にジェフェリーウエスト社を設立し、英国、欧州地域を主たる販売地域とし、1992年頃から海外進出を始めたと主張し、1992年から1996年の売上実績を示す資料を提出している(甲第4号証)。
しかし、甲第4号証は、いかなる性質の表であるか不明であり、単にこの審判請求のために請求人自らが作成した資料とも考えられる。すなわち、当該資料には何ら客観性がなく、実際の売上実績の証拠としては、何ら請求人商標の著名性を証する証拠とはなり得ないものである。仮に、上記売上実績が事実であったとしても、甲第4号証からは、いかなる商標が付されたいかなる商品がどれだけ売れたかを確認することができず、さらには、販売相手先が不明であることから、請求人商標の著名性を証明したことにはならない。
なお、甲第4号証に示された売上額のレベルでは、全世界においてはもちろん、英国内においてさえ、著名であることを証する証拠とはなり得ないと考える。
イ 甲第2号証は請求人ホームページ等の写しであって、何ら公的な資料ではなく、客観性が全くない。また、甲第3号証もジェフェリーウエスト社年次報告書であることから、同様に、客観性が全くない。つまり、両証拠は、請求人が独自に作成した客観的意見等が全く反映されていない資料であり、当該資料をもって、請求人商標が著名であることを証明することは到底できない。
ウ 請求人は中国及びオーストラリアの雑誌に広告を掲載したことを、甲第5号証及び甲第6号証で証明しているが、これをもって、請求人商標の著名性を証明するに至らないことは明らかである。すなわち、甲第5号証及び甲第6号証はいつ発行された、いかなる雑誌の広告であるかが不明確であるだけでなく、各雑誌の発行部数も示されておらず、本件商標が出願された時点での、請求人商標の著名性を証する証拠とはなり得ないことは明らかである。ことに、甲第6号証の場合には、その文章中に「3 September 1996」との日付を確認することができる。つまり、該雑誌は、本件商標の出願日より後の、1996年9月に発行されたものであることは明らかで、証拠能力に欠けるものである。
エ 請求人は、諸外国への出願一覧及び登録証等を、甲第7号証ないし甲第9号証の2として提出しているが、諸外国における登録の事実のみをもって著名性を証明することはできない。しかも、甲第7号証に挙げられている各国出願は、最先のもので1999年3月25日に出願されたものであって、いずれも本件商標の出願日よりも後の出願である。したがって、甲第7号証ないし同第9号証の2は証拠能力に欠けるものである。
オ 以上の理由により、請求人商標が、本件商標の出願時において、日本を除く各国において、著名でなかったことは明らかである。
(2)請求人商標の日本国における著名性について
ア 請求人は、日本国内の売上高・販売数量の資料として甲第10号証を提出しているが、当該資料は請求人自らが作成したものであり、客観性が全くない。ことに、日本の企業への販売総数が、本件商標の出願日前まででわずか約7千足であり、該数字をもって、本件商標の出願日の時点で著名性を獲得していたとは到底言えない。
イ また、請求人は甲第11号証で取引先を、また、甲第12号証ないし甲第14号証で取引先の詳細を説明しているが、これらは、請求人商標の著名性を証明する資料とはなり得ない。すなわち、取引先を開示したところで、当該取引先が実際日本国内で販売しているのか、どのような広告をしているのか、日本国内での売り上げはいかなるものかが全く不明である。よって、該資料は、請求人商標の日本国内における著名性の証明にはならない。
ウ 請求人は日本国内における雑誌2誌に、請求人商標の付された履物が掲載されていることを甲第15号証及び甲第16号証で示しているが、両誌とも1ページにも満たない単なる製品情報の一部として掲載しているにすぎず、また、請求人が継続的に行っている広告という訳でもないため、当然該資料が請求人商標の日本国内における著名性を証明することにはならないことは言うまでもない。
ことに、甲第15号証の雑誌は、いつ販売されたものかさえ立証されておらず、甲第16号証の雑誌は、本件商標の出願日より後の1995年5月に発行された雑誌と考えられることから、本件商標の出願時における請求人商標の日本国内における著名性の証明資料にはなり得ない。
エ 甲第17号証及び同第18号証は、現時点でのインターネット検索エンジン結果や英国靴連盟情報網インターネットサイトであり、当然、本件商標の出願時における請求人商標の日本国内における著名性の証明資料にはなり得ない。
オ 以上の理由により、請求人商標が本件商標の出願時において、日本国において著名でなかったことは明らかである。
(3)よって、請求人商標は、本件商標の出願日の時点で、日本国内においてはもとより、諸外国においても周知・著名でなかったことは明らかであるので、本件商標は商標法第4条第1項第10号又は同第15号に反して登録になったものではない。
(4)請求人の主張する被請求人の「不正の目的」について
ア 上述のとおり、請求人商標は、本件商標の出願日の時点において、日本国内においてはもとより、諸外国においても周知・著名でなかったことは明らかである。そのため、「不正の目的」については論ずるまでもないが、念のため、被請求人に不正の目的がなかったことについて述べておく。
イ 請求人は、被請求人のホームページの写しを甲第19号証として提出し、該ページに「フットウェア専門商社のコマリヨーは、国内はもちろんのこと地球を包む綿密なネットワークで、時代が放つ最新のフットウェアを逃がさずキャッチ。」と記載があること、及び甲第20号証として被請求人の過去の審決例を根拠に、被請求人には不正の目的があったとしているが、以下のとおり、被請求人には不正の目的はない。
ウ 先ず、現代取引社会においては、経営等の視野を日本国内に限らず海外に向けるのは極く自然なことであり、また、海外にまで視野を広げていた場合であっても、海外ブランドをすべて認識することは困難なことであり、特に著名でない商標を認識することは極めて困難なことである。
エ また、請求人は、甲第20号証として過去の被請求人の審決例を提出しているが、該先例は本件と事案を異にするものであり、該審決をもって、不正の目的があったと言うことはできないことは明らかである。
なお、この審決においては、被請求人は、当該登録商標は必要のないものとして答弁書を提出しておらず、その結果、請求人の主張が認められたにすぎないものである。
オ 以上のとおり、被請求人がホームページ上に「地球を包む綿密なネットワーク」等、世界に注目していることを記載すること及び実際に世界に着目することはごく自然な行為であることから、被請求人に不正の目的がないことは明らかであり、また、請求人が提出した証拠をもって、被請求人に不正の目的があったと認定することはできない。
カ よって、被請求人に不正の目的及び不正競争の目的がなかったことは明らかであるので、本件商標は商標法第4条第1項第19号に反して登録になったものではない。
(5)まとめ
以上のとおり、請求人が提出した証拠はいずれも、本件商標の出願時において、請求人商標が著名であったこと証する証拠となり得ず、また、被請求人に不正の目的があったことを証する証拠となり得ないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
1 請求人商標の周知・著名性について
請求人は、請求人商品は1992年から我が国に販売し、請求人商標は本件商標の登録出願の時(平成7年1月25日)には、日本国において広く認識されていた旨主張し、証拠を提出しているので、該証拠について検討する。
(1)甲各号証について
ア 甲第2号証は、本件商標の登録査定後である2011年(平成23年)7月25日にプリントアウトされた「ジェフェリーウエスト社」のホームページ及びその翻訳と認められ、該ホームページ(翻訳)には、ジェフェリーウエスト社は請求人が1987年に創業した靴製造会社である旨が記載されている。
イ 甲第4号証は、請求人が「請求人商品輸出額集計表」とする書面であるが、「JEFFERY-WEST/EXPORT SALES 01.06.92-31.05.96」の見出しの下に、「Total Sales」「Export(Non UK)」などの各欄に、「1992/3」「1993/3」「1994/5」「1995/6」の金額等の記載があるが、その金額を裏付ける証拠はなく、また、我が国への輸出額は確認できず、さらに、請求人商標の使用状況についても不明である。
ウ 甲第5号証は、請求人が「中国雑誌広告資料」とする書面であり、「Jeffery-West」の文字及び靴の写真が確認できるが、雑誌の発行日、発行部数などは不明である。
エ 甲第6号証は、請求人が「オーストラリア雑誌広告資料」とする書面であり、「JEFFERY-WEST」の文字及び靴の写真が確認できるが、雑誌の発行日、発行部数などは不明である。なお、最終ページに「3 September 1996」の日付が表示されているが、該日付は、本件商標の登録出願後である。
オ 甲第7号証及び甲第8号証は、「請求人 出願・登録商標一覧(第25類)」と題する一覧表及び各国の商標登録証などであるが、それら商標の出願日は、いずれも本件商標の登録出願後である。
カ 甲第10号証は、請求人が「卸売金額一覧」とする書面であり、上段に「JEFFERY-WEST」「JAPAN」「SALES ANALYSIS」の記載があり、その下に「YEAR」「INVOICE」「CUSTOMER」「PAIRS」「VALUE?」の各項目からなる一覧が記載されている。
そして、「INVOICE」欄の「1529」は、「YEAR」欄が「1992」、「CUSTOMER」欄が「International Trading Co.,Arakawa-ku,Tokyo」、「PAIRS」欄が「65」、「VALUE?」欄が「2,453.75」と記載されている。
また、「INVOICE」欄の「1530」は、「YEAR」欄が「1992」、「CUSTOMER」欄が「Washo Trading Co.,Fukushima-ku,Osaka」、「PAIRS」欄が「51」、「VALUE?」欄が「1,986.45」と記載され、「INVOICE」欄の「2358」は、「YEAR」欄が「1994」、「CUSTOMER」欄が「Beams Co Ltd.,Shibuya-ku,Tokyo」、「PAIRS」欄が「42」、「VALUE?」欄が「1,890.00」と記載されている。
キ 甲第11号証は、ジェフェリーウエスト社が日本の会社にあてたINVOIVCEであり、1992年12月11日付けの「International Trading Corporation」あてのインボイスの1枚目には「Invoice No 1529」「INVOICE TOTAL: 2453.75」の記載があり、2枚目には「Invoice number 1529」「Black Leather Monk Chukka Boot」「Black Leather Trim Loafer」「Black LeatherrGeorge Monk Boot」「Invoice total ?2453.75」の記載がある。
1992年12月12日付けの「Washo Trading Co Ltd」あてのインボイスの1枚目に「Invoice No 1530」、「INVOICE TOTAL: 1985.45」の記載があり、2枚目には「Invoice number 1530」「Black Jodphur Boot」「Invoice total ?1986.45」の記載がある。
1994年5月16日付けの「Beams & Co Ltd」あてのインボイスの1枚目に「Invoice No 2358」、「INVOICE TOTAL: 1890.00」の記載があり、2枚目には「Invoice number 2358」「Black George Boot」「Tan Chelsea Boot」「Black Chelsea Boot」「Invoice total ?1890.00」の記載がある。
ク 甲第12号証ないし甲第14号証は、いずれも本件商標の登録出願後の2011年7月25日にプリントアウトされた「服DB」と称するウェブページであり、「メンズビギ/MEN’BIGI」「ジュンメン/JUN MEN」「ビームス/BEAMS」のブランド情報であり、いずれにも請求人商標の記載はない。
ケ 甲第15号証は、請求人が「『GQ(ジーキュー)JAPAN』抜粋(写)」とするものであり、中段に「メンズ・ビギのスタイリッシュな英国製靴『ジェフェリー・ウェスト』」の見出しの下に、「今年は・・・『ジェフェリー・ウェスト』の靴を別注した」との記載があるが、発行日の記載はない。
コ 甲第16号証は、請求人が「『フットウェア・プレス』抜粋(写)」とするものであり、「特集 95-96秋冬ファッショントレンド」 の見出しの下、「靴」の写真とともに「クラシック感が新しい(JEFFERY-WEST)」との記載がある。そして、左下に「フットウェア・プレス ’96/5」と記載されていることから、本件商標の登録出願後のものといえる。
サ 甲第17号証は、「jeffery west 靴」をキーワードとしたYahoo!検索及び「jeffery west」をキーワードとしたGoogle検索の検索結果であり、いずれも本件商標の登録出願後の2011年7月25日にプリントアウトされたものであり、いずれにも本件商標の登録出願の日前における請求人商標に係る記載はない。
シ 甲第18号証は、本件商標の登録出願後の2011年7月25日にプリントアウトされたウェブサイトであり、「英国靴連盟情報網」の見出しの下、「JEFFERY WEST どちらかというとデザイナーブランドだけど、センス最高です。」との記載があるが、本件商標の登録出願の日前における請求人商標に係る記載はない。
(2)以上によれば、次のとおりである。
ア ジェフェリーウエスト社は、請求人が1987年(昭和62年)に創業した靴製造会社である(上記1(1)ア)。
イ 請求人が「請求人商品輸出額集計表」とする書面には、1992年ないし1994年の総販売額(Total Sales)及び輸出額(Export(Non UK))などが記載されているが、それを裏付ける証拠などの提出はない(上記1(1)イ)。
ウ 甲第10号証の「卸売金額一覧」なる書面は、「INVOICE」番号「1529」「1530」及び「2358」について、甲第11号証の靴に係る「INVOICE」と番号、日付、顧客、金額が一致する(ただし、1992年12月12日付けの「Washo Trading Co Ltd」あてのインボイス1枚目の金額を除く。)ことから、該書面の記載内容をある程度認めることができる。
しかしながら、該「卸売金額一覧」の記載内容が事実だとしても、本件商標の登録出願の日前についてみれば、1992年は数量1,527足、金額約48,902ポンド、1993年は数量498足、金額約12,768ポンド、1994年は数量4,002足、金額約132,774ポンドであり、3年間の合計でも6,027足、約194,444ポンドであり、数量、金額ともに大きいものとはいえず、この程度の実績によっては請求人商標が我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない(上記(1)カ、キ)。
エ 雑誌及びウェブサイト等は、発行時期が不明であるか(上記(1)ウ、エ、ケ)、本件商標の登録出願後のものである(上記(1)オ、ク、コ、サ、シ)から、本件商標の登録出願の日前における我が国又は外国における請求人の使用の事実を認め得る証左とはいえない。
オ その他、請求人商標が本件商標の登録出願の日前において我が国又は外国の需要者の間に広く認識されている商標と認め得る証拠の提出はない。
(3)そうすると、請求人提出に係る証拠を総合してみても、請求人商標は請求人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
2 商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号について
上記各法条の適用にあたっては、請求人商標が請求人の商品を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていることが適用要件の一つと解されるところ、前記2のとおり、請求人商標はその登録出願の時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないから、上記各法条に該当するものということができない。
3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第1
5号及び同第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-02-28 
結審通知日 2012-03-02 
審決日 2012-03-13 
出願番号 商願平7-6344 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (025)
T 1 11・ 271- Y (025)
T 1 11・ 222- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 1997-05-16 
登録番号 商標登録第3306886号(T3306886) 
商標の称呼 ジェフェリーウエスト、ジェフリーウエスト 
代理人 宮嶋 学 
代理人 宮嶋 学 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 柏 延之 
代理人 齋藤 晴男 
代理人 宮城 和浩 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 柏 延之 
代理人 塩谷 信 
代理人 黒瀬 雅志 
代理人 宮城 和浩 
代理人 高田 泰彦 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 高田 泰彦 
代理人 塩谷 信 

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