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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X0531
管理番号 1243179 
審判番号 不服2010-16053 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-16 
確定日 2011-08-12 
事件の表示 商願2008- 80236拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第5類及び第31類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品とし、平成20年10月1日に立体商標として登録出願され、指定商品については、平成21年6月22日付け手続補正書により、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,はえ取り紙」及び第31類「ペットフード,飼料,飼料用たんぱく」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、その商品の形状、もしくはその商品の包装の形状の一形態を容易に認識させる立体的形状を普通に用いられる域を脱しない程度に表してなるものであるから、これをその指定商品について使用するときは、単に商品の形状、もしくは商品の包装の形状そのものを表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)立体商標における商品等の形状
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項第5条第2項)。しかしながら、立体商標における商品等の立体的形状が商標法第3条第1項第3号に該当しないとし、識別機能が肯定されるためには、以下のような要件を充たす必要がある。
ア 商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。
イ また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。
ウ さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
(2)本願商標について
本願商標は、立体商標として登録出願されたもので、別掲のとおり、上部円形面が下部円形面よりやや小さいが、扁平な円筒に見える立体的形状の上部円形部分の全面に、それよりもやや小さい程度の大きさでハート形を浮き上がらせて凸部とした構成よりなるものである。
(3)指定商品「薬剤」との関係について
本願の指定商品中の薬剤に用いられる錠剤の形状は、円筒や楕円体が一般的であるが、ハート形、多角形等の特徴的な形状の商品も複数あり、また、錠剤の表面に図形が施されているものも多い。さらに、錠剤の中でも、噛むことができ、水なしで服用できるチュアブル錠については、特段、噛まずに飲み込みやすい形状にする必要もなく、美感や購買意欲を高めるために、様々な形状へ加工され得るものである。
これらについては、以下のインターネット情報(いわゆる健康食品に係るものも含む。)においても明らかである。
ア 錠剤について、様々な形状の商品が製造(加工)、販売されている例
(ア)REDAS株式会社のウェブサイトにおいて、タブレット(錠剤)で加工可能な形状について、「錠剤は、丸形、三角形、俵型、ハート形などの要望に合せて加工いたします。」の記載がある(http://www.e-oem.jp/process.html)。
(イ)株式会社アイ・メディカルのウェブサイトにおいて、錠剤で加工可能な形状について、「三角型」、「ハート型」等の形状が記載されている(http://www.newmagazine.ne.jp/zbk-aimedical.htm)。
(ウ)清光薬品工業株式会社のウェブサイトにおいて、錠剤で加工可能な形状について、「三角型」、「フットボール型」等の形状が記載されている(http://www.seiko-yakuhin.co.jp/jutaku/tablet.html)。
(エ)日本タブレット株式会社のウェブサイトにおいて、錠剤に打刻可能な図形等、及び錠剤で加工可能な形状について、「三角型」、「四角型」、「六角型」、「八角型」、「ラグビーボール」等の形状が記載され、特殊形状の錠剤の金型が各種あることが記載されている(http://www.j-tab.com/orignal.html)。
(オ)「手作り職人のブログ」と称するウェブサイトにおいて、「錠剤のいろんな形」(2009年1月11日付けの記事)の見出しのもと紹介されている錠剤の形状は、長方形、五角形、六角形、八角形等の多角形やクローバー形、ハート形、歯車形等の立体的形状である(http://kentapb.blog27.fc2.com/blog-entry-1504.html)。
(カ)「猫が大好き.net お金をかけずに猫を飼う」と称するウェブサイトにおいて、ペット用フィラリア薬「Strongheart」の商品(チュアブル錠)の形状は、ハート型の立体的形状である(2010年10月19日付け記事 http://neko.ga-daisuki.net/pages/user/search/?keyword=%83X%83g%83%8D%83%93%83O%83n%81%5B%83gvs=http%3A%2F%2Fneko.ga-daisuki.net%2Ffr=sb-sesaei=Shift_JIS)。
(キ)株式会社明治のウェブサイトにおいて、栄養補助食品の「アミノコラーゲン Petit」の商品(チュアブル錠)の形状は、ハート形の立体的形状である(http://www.meiji.co.jp/health/amicolla/products/petit.html)。
(ク)楽天市場の「美容できれい」と称するウェブサイトにおいて、栄養補助食品の「ストロベリー&ミルクダイエット」の商品(チュアブル錠)の形状は、ハート形の立体的形状である(http://item.rakuten.co.jp/biyoudekirei/10000379/)。
(ケ)「ニューサイエンス正規代理店ケイエスティ」と称するウェブサイトにおいて、栄養補助食品の「ライフスタイル2 子供用天然マルチビタミン」の商品(チュアブル錠)の形状は、ネコやイヌ等の動物形の立体的形状である(http://homepage2.nifty.com/keiesuty/lifestyle-kidsmv.html)。
イ 錠剤の表面に図形が施されている例
(ア)「くすりのしおり」と称するウェブサイトにおいて、睡眠導入剤の「エバミール錠1.0」の商品(錠剤)の形状は、扁平な円筒形状の円形部分の片面に、それよりもやや小さい大きさで六角形の図形と、その内部に「C F」の文字が施されている(http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=9341)。
(イ)上記ウェブサイトにおいて、感染症治療薬(抗生物質)の「シンクル錠250」の商品(錠剤)の形状は、扁平な円筒形状の円形部分の片面に、それよりもやや小さい大きさで、内部を三つ叉状の線で3つに区切られた円図形が施されている(http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=6480)。
(ウ)「Yahoo!ヘルスケア」と称するウェブサイトにおいて、消化器官用薬の「ミヤBM」の商品(錠剤)の形状は、扁平な円筒形状の円形部分の片面に、それよりもやや小さい大きさで半円状の図形と、その半円の途切れた部分に「M」の文字が施されている(http://health.yahoo.co.jp/hospital/medicine/detail/2/2316009F1022/)。
以上のとおり、錠剤については様々な形状があり得るものであること、本願商標の形状は、錠剤の形状としては一般的である扁平な円筒形状にハート形の装飾を施してなるにすぎないものであることを総合的に勘案すれば、本願商標の形状が構成中のハート形の凸部等に特徴を有していたとしても、その程度の特徴は、指定商品の機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものというのが相当である。
そうとすれば、本願商標をその指定商品中「薬剤」に使用しても、取引者・需要者は、単に商品の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(4)指定商品「ペットフード」との関係について
本願の指定商品中のペットフードには、ペットフードとして一般的なドライタイプの商品(ペットフードとしてのクッキー、ビスケット等も含む。)の形状として、ハート形、星形等の特徴的な形状の商品が多数あり、これらについては、以下のインターネット情報でも明らかである。
(ア)「Three Dog Bakery」と称するウェブサイトにおいて、ペットフード(犬用クッキー)の商品の形状には、扁平な円筒に見える立体的形状の上部円形部分に、それよりもやや小さい程度の大きさでハート形、花形等を浮き上がらせて凸部とした立体的形状のものが含まれている(http://www.threedog-store.jp/shopdetail/001000000048/order/)。
(イ)「リリーフラワーのオンラインショップ」と称するウェブサイトにおいて、ペットフード(犬用ビスケット)の商品の形状には、ハート形、星形等の様々な立体的形状のものが含まれている(http://www.lily-flower.jp/?mode=grpgid=126620sort=p)。
(ウ)「PET FOOD & GOODS TOM CAT」と称するウェブサイトにおいて、ペット(ドッグ)フードの「ビューティープロ[成犬用]6kg」の商品の形状は、ハート形の立体的形状である(http://www.e-tomcat.com/shop/goods/goods.aspx?goods=np104060)。
(エ)「SUPER DOGS」と称するウェブサイトにおいて、ペット(ドッグ)フードの「キャスター&ポラックス ウルトラミックス キャナイン アダルト 500g」の商品の形状には、ハート形の立体的形状のものが含まれている(http://www.super-dogs.jp/SHOP/CPUMA001.html)。
(オ)楽天市場の「YUKULU pet goods store」と称するウェブサイトにおいて、ペット(ドッグ)フードの「DARFORD(ダルフォード) ホリスティック ビスケット レバーハート ミニ 200g」の商品の形状は、ハート形の立体的形状である(http://item.rakuten.co.jp/yukulu/0064863200427/)。
以上のとおり、ペットフードについては様々な形状があり得るものであること、特に上記(ア)のように、本願商標の形状と極めて近似した形状の商品が取引されている実情があることを総合的に勘案すれば、本願商標の形状が構成中のハート形の凸部等に特徴を有していたとしても、その程度の特徴は、指定商品の機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものというのが相当である。
そうとすれば、本願商標をその指定商品中「ペットフード」に使用しても、取引者・需要者は、単に商品の形状を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、錠剤であることを容易に認識させる単なる扁平な円筒形状ではなく、扁平形状とはいえ、かなり厚みがあり、しかも、その形状は正確には上部円形面が下部円形面よりやや小さい円錐台であること、錠剤の上面の図形を明らかな突起部として表すことは、突起部が欠けやすいので一般的ではないこと、錠剤の上面に表される図形等は、通常錠剤の中央付近に小さく設けられるものであるが、本願商標は、上部円形面の縁ぎりぎりまで目一杯に使って校正された極めて大きなハート形突起部を、はっきりと厚みが感じられる程度の厚みで浮き彫り状に設けたものであること、市販されている薬を網羅した、「大活字・薬の事典2009年版」(株式会社ナツメ社・2008年7月1日発行)を参照しても、錠剤の上面にはっきりとした突起物のあるものは見られないこと等の理由により、本願商標は、これまでの錠剤のイメージとは異なるユニークな形状であり、一般的な錠剤の形状をイメージさせるものではない旨、主張している。
しかしながら、本願商標が単なる扁平な円筒形状ではなかったとしても、錠剤の形状として一般的な円筒形状との差異は極めて小さいものであること、前記(3)のとおり、錠剤の形状は、一般的な円筒や楕円体の形状以外にも様々なものがあり、特にチュアブル錠については、噛まずに飲み込む通常の錠剤とは異なり、形状にとらわれる必要がないため、チュアブル錠としての機能を害さない範囲であれば、多様なデザインが考えられること及び本願商標の立体的形状が、錠剤の形状として特段欠けやすい形状とはいえないことよりすると、本願商標がハート形の突起部に特徴を有していたとしても、美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲の形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。
イ 請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も登録されるべき旨、主張している。
しかしながら、商標が識別力を有するか否かの判断は、査定時又は審決時において、取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準として、商標ごとに個別具体的に判断すべきであるところ、請求人が証拠として提出した登録例はいずれも本願商標とは構成を異にするものであり、かつ、審判資料1の商標は立体商標の登録例ではないから、本件については上述のとおり判断するのが相当であり、請求人の上記主張は、採用することができない。
ウ 請求人は、本願商標は実際に審判請求人によって「動物用医薬品」、とりわけ、犬糸状虫症予防・消化管内線虫駆除剤について盛大に使用している(審判資料5及び審判資料6)が、本願商標の使用について何ら問題を生じたことはなく、実際の市場における取引者・需要者も審判請求人の商標であると認識して取引されている旨、主張している。
しかしながら、本願商標については上記のとおり判断すべきであり、請求人提出の証拠よりは、請求人が本願立体商標に係る形状の犬用チュアブル錠(但し、実際は、ハート部分に「S」、「LL」等の刻印がある。)を販売していることは認められるとしても、その立体的形状が請求人の業務に係る商品であることを示す出所標識として、取引者・需要者に認識されているとまでは認めることはできないから、この点についての請求人の主張も、採用することができない。
(6)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願商標)


審理終結日 2011-06-15 
結審通知日 2011-06-17 
審決日 2011-06-29 
出願番号 商願2008-80236(T2008-80236) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (X0531)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 千里前山 るり子 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 根岸 克弘
瀧本 佐代子
代理人 浜田 治雄 

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