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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y41 |
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管理番号 | 1233449 |
審判番号 | 無効2010-890057 |
総通号数 | 136 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2010-07-21 |
確定日 | 2011-02-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4881448号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4881448号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4881488号商標(以下「本件商標」という。)は、「childjiyuugakuen」の欧文字を横書きしてなり、平成16年10月12日に登録出願、同17年5月25日に登録査定がなされ、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,図書の供覧,図書の貸与,美術品の展示,映画・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,娯楽施設の提供,遊戯用器具の貸与」を指定役務として、同年7月22日に設定登録されたものである。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第210号証(枝番号を含む。)を提出した。 請求の理由 1 「自由学園」の著名性 「学校法人自由学園」(以下「自由学園」という。)は、大正10年(1921年)4月15日に、羽仁吉一・もと子夫妻により、東京目白(現在の豊島区西池袋)に女子のための中等教育を行う学校として創立された(甲3、甲4)。請求人を英語で表記する際には、「Jiyugakuen」が使用されている(甲209、甲210)。 羽仁吉一・もと子の二人は、当時の一流紙、報知新聞の元記者であり、後に婦人啓蒙雑誌「婦人之友」を創刊、編集・発行するジャーナリストであった(甲4、甲39、甲40)。 校名である「自由学園(Jiyugakuen)」は、新約聖書ヨハネによる福音書第8章第32節にあるイエス・キリストの言葉「真理はあなたたちを自由にする(Ye shall know the truth,and the truth shall make you free.)」からとられた(甲4の1)。羽仁吉一・もと子の二人は、自分たちの理想とする教育を行うため、当時の女学校令によらない「各種学校」として「自由学園」を発足させた(甲4の1)。 昭和2年に「自由学園(Jiyugakuen)」は、現在の東京都東久留米市に土地を求めて移転し、初等部が設立された(甲4の3)。その後、昭和10年に男子部、昭和14年に幼児生活団(幼稚園)、昭和24年に大学に相当する男子最高学部、翌昭和25年に女子最高学部(短期大学に相当)ができ、4歳児から22歳までの青年男女を育てる一貫教育校となった。当初は、文部省令によらない各種学校だった女子、男子の中等科、高等科は、戦後の学制改革の際に文部省が許可を与え、新制中学、高等学校となった。しかし、最高学部は今日も学校教育法によらない各種学校のままであり、自由学園独自の教育を行っている(甲4の1)。 このような歴史を有する「自由学園(Jiyugakuen)」の語は、平凡社「世界大百科事典」(甲5)、小学館「日本大百科全書」(甲6)、「日本歴史大事典」(甲7)といった我が国を代表する辞書、百科事典に掲載されている。さらに、「広辞苑」(甲8、甲13ないし甲16)をはじめとする辞書、辞典、百科事典、人名辞典、その他各種事典に、独立した項目として、また「羽仁もと子」の業績の一つとして紹介されてきた(甲8ないし甲12、甲50ないし甲69)。 上記したように、「自由学園(Jiyugakuen)」標章は、請求人により、大正10年(1921年)から90年近くの永きにわたり、一貫して「教育(知識の教授)」並びに「教育」に関連するサービスについて使用されている。そして、「自由学園」における教育(知識の教授)のユニークさは、古くから現在に至るまで、途絶えることなく教育に関する書籍、新聞・雑誌等に取り上げられてきた(甲17ないし甲25、甲36ないし甲38、甲41、甲42、甲49、甲70ないし甲189)。 加えて、女優の故岸田今日子氏、指揮者の故山本直純氏、映画監督の羽仁進氏を始め数多くの知識人や著名人が自由学園の卒業生として輩出しており(甲190、甲191)、非政府組織(NGO)の活動家や、その先駆的な芸術教育から生まれた写真家・音楽家等の活躍についても各種メディアで取り上げられている(甲45ないし甲48、甲192ないし甲202)。 以上述べたように、百科事典等の辞書・事典等には、いずれも「学校法人自由学園」という名称ではなく、単に「自由学園」という名称の略称が独立した項目名として掲げられており、また、各種新聞・雑誌記事にも、「自由学園」という略称をもって繰り返し紹介されている。すなわち、請求人の名称の略称としては、すべて「自由学園(Jiyugakuen)」が使用されていることから、「自由学園(Jiyugakuen)」といえば請求人を指称するものとして、本件商標の登録出願時には、既に世間一般に知られた「著名な略称」となっており、その状態は、本件商標の登録査定時においても継続していたというべきである。 2 商標法4条1項8号該当性 商標法4条1項8号は、他人の名称の著名な略称を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができない旨規定する。 8号の保護法益については、a)立法の沿革、b)他人の承諾が登録の条件となっていること、c)登録無効審判請求の場合に私益の保護を目的とする条項についてのみ適用されると解される除斥期間の規定の適用があること(商標法47条)、d)出所混同防止のための4条1項10号・15号との整合性がとれないこと、等から、他人の人格権を保護する趣旨の下に設けられたものと解されている(特許庁「工業所有権法逐条解説[第16版]」1062ページ、網野誠「商標〔第6版〕」335ページ、小野昌延「注解商標法」162ページ、田村善之「商標法概説〔第2版〕」217ページ、東京高裁昭和36年3月30日判決行裁集12巻3号540ページ等)。 また、8号にいう「他人」とは、自己以外のもので、現に日本国に生存する自然人又は現存する法人をいい(大判昭3.3.29評論18巻諸法238ページ)、「他人」の「名称」の中には、学校法人や株式会社等の法人の名称が含まれる。 ここで、請求人の法人としての正式名称は、「学校法人自由学園」であるから、これから「学校法人」の文字を除いた「自由学園(Jiyugakuen)」の部分は、商標法4条1項8号にいう「(現存する)他人の」「名称」の「略称」に該当する。また、被請求人は、本件商標「childjiyuugakuen」の登録に関し、請求人から何らの承諾も得ていない。 確かに、本件商標は、欧文字のみで構成されており、「自由学園(Jiyugakuen)」そのものを構成要素とするものではない。しかしながら、被請求人の商号や甲第26号証及び甲第30号証から明らかなように、本件商標が「チャイルド自由学園」を単にローマ字表記したにすぎないものであることが明らかであり、上記8号の趣旨にかんがみれば、本件商標に対しても8号が適用されてしかるべきである。 なぜなら、「自由学園(Jiyugakuen)」という請求人の「名称の略称」は、前記1で述べたとおり、請求人の永年の使用により既に著名となっているからである。この点に関し、「東京自由学園」という構成からなる商標(登録第4145910号)に対して過去に請求人が請求した無効審判(甲第31号証:無効2003-035193)で審決は、「自由学園」の著名性を認定した(甲31)。 翻って本件について考えてみるに、本件商標の商標法4条1項8号該当性を判断する際に、その著名性の認定について異なる判断をするいわれはないから、本件においても、請求人の略称「自由学園(Jiyugakuen)」の商標法4条1項8号にいう著名性は、認定されるべきである。 3 審査基準 特許庁商標課編の「商標審査基準」では、商標法4条1項8号に関し、その第3項に「本号でいう『著名』の程度の判断については、商品又は役務との関係を考慮するものとする。」と記載されている。 そして、本件商標は、前記のとおり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,図書の供覧,図書の貸与,美術品の展示,映画・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,娯楽施設の提供,遊戯用器具の貸与」を指定役務とするものであるところ、これらはいずれも、請求人がその著名な略称「自由学園(Jiyugakuen)」を使用して提供する役務と密接な関係を有するものである。 すなわち、請求人は、前記した教育事業のほかにも、「自由学園」という略称の下において、以下に掲げるような事業を現実に行っている。 (ア)会館事業として、「自由学園明日館」の施設貸出を行い、各種セミナーやコンサート等を開催し、好評を博している(甲28、甲32ないし甲34)。 (イ)また、自由学園の卒業生により創設された「自由学園工芸研究所」においては、玩具等を中心とする美術工芸品の製造のみならず、展示・販売等も行っている(甲4の1、甲29、甲35)。 このように、請求人の略称である「自由学園」は、本件指定役務との関係を考慮してもなお、著名であるといい得るものである。 4 最高裁判決 他方で、商標法4条1項8号にいう「著名」の意義に関しては、本号が人格権を保護法益とするものであり、人格権とは、本来、有名であるか否かにより保護の必要性の程度に差異が生ずるものではないから、ここでいう「著名」の程度、範囲等は、当該略称が、当該人格に対する評価が問題となり得る範囲の社会において、当該特定の人格を表示するものとして、正式な「名称」と同視することを可能とする機能を持ち得るか否かという趣旨に従って考えられるべきである。 このことは、「国際自由学園」商標(登録第4153893号)に対する無効審判事件で、最高裁平成16年(行ヒ)第343号判決(甲208)が、以下のように判示したことからも明らかである。 すなわち、「商標法4条1項は、商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが、需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号、15号等の規定とは別に、8号の規定が定められていることからみると、8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。 そうとすると、人の名称等の略称が8号にいう『著名な略称』に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当ではなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべき」と判示した。 5 「含む」の意義 前記したとおり、「自由学園」という請求人の名称の略称は、「教育」その他の役務について、請求人の永年の使用により著名性を獲得しているものであるところ、本件商標「childjiyuugakuen」は、「自由学園」を表音で表した「jiyuugakuen」を主たる構成要素とし、前半部分に「child(チャイルド)」という識別力の無い語を付加したにすぎない。 すなわち「child(チャイルド)」の語は、一般に「子ども」の意をもって親しまれ日常的に使用される普通名詞であり、「知識の教授」を始めとする本件商標の指定役務との関連からも、また、被請求人が小学校や中学校を受験するための学習塾(幼児教室)を経営している(甲26、甲30)事実からしても、役務の提供を受ける者を特定し、当該役務の質(内容)を明らかにする表示として使用される用語であるから、本件指定役務との関係においては、自他役務の識別力を有しないものである。 加えて、前述のとおり、「自由学園」は、請求人の略称として著名であることから、本件商標に接する看者は、「自由学園」の部分にのみ強い注意を引き付けられるというべきである。実際に、インターネットの検索エンジンを使用すると、「チャイルド自由学園」を「自由学園」と記述した記事が発見された(甲27)。 このような事実からも明らかなとおり、本件商標が、商標法4条1項8号にいう「他人の著名な略称」を「含む」商標に該当することは、明らかというべきである。 6 商標法4条1項10号及び同15号該当性 本件商標と請求人商標「自由学園(Jiyugakuen)」の上述の構成において、本件商標は、請求人商標「自由学園(Jiyugakuen)」に酷似した「jiyuugakuen」をその構成要素とし、冒頭に「child」という識別力の無い語を付加したにすぎない。すなわち「child(チャイルド)」の語は、カタカナ語として通用するほど日本人にはなじみの深い英単語であり、「知識の教授」という指定役務との関連では、「幼児」という対象ないし主たる需要者を意味する内容表示として頻繁に使用される用語である。 加えて、前述したとおり請求人商標「自由学園(Jiyugakuen)」は、周知性を獲得しているものであり、これを勘案すれば、本件商標中「jiyuugakuen」の部分は特に強い識別力を発揮し、本件商標を目にした者は、即座に請求人商標「自由学園(Jiyugakuen)」を想起するというべきである。 さらに、「自由学園(Jiyugakuen)」の上記周知性により、本件商標全体からは「幼児の(あるいは「幼児向け」の)『自由学園』」との観念が生じるから、あたかも、被請求人が経営する幼稚園であるかのごとき誤解を生じさせる。また、「自由学園」の語は、「生徒の自主性を尊重し、自由に伸び伸びと育てる学園」といった鮮烈な印象を与えるものであり、独創性のあるものである。さらに、請求人は、幼児教室と呼ばれる小学校受験のための教育等を行う学習塾を経営している者であるが、本件商標が使用された学習塾の看板等を見た者は、請求人がその一貫した教育思想の下に経営する学習塾であると誤信したり、あるいは、被請求人の幼児教室に通うことにより、請求人の運営する初等部(=小学校)に合格し易いかのごとき観念上の誤認・混同をも生じさせるおそれがある。 このことは、特許庁商標課編「商標審査基準」の4条1項11号に関する基準の4.結合商標の類否に関する基準(6)において、周知な他人の登録商標と他の文字とを結合した商標は『その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。』とされていることからも明らかである。 請求人商標からは、「ジユウガクエン」の称呼が生ずるが、本件商標からも、横一連に表されているとはいえ「child(チャイルド)」が識別力のない語である以上「チャイルドジユウガクエン」のほか「ジユウガクエン」という単独の称呼も生じると考えるのが自然である。 したがって、本件商標は、外観、観念及び称呼において、請求人商標と類似する。 上述のとおり、請求人は、本件商標と請求人商標との間に「狭義の混同を生ずるおそれ」があると思料するが、仮に、同10号に該当しない場合であっても、本件商標が、その指定役務について使用された場合には、請求人商標「自由学園(Jiyugakuen)」との関係で、あたかも請求人又は請求人と業務上あるいは組織上何らかの特殊な関係がある企業体が提供する役務であるかのごとく誤認・混同されることは、必至である。 このことは、前記「東京自由学園」無効審判審決(無効2003-035193)の認定からも明らかである。 よって、本件商標と請求人商標との間に、たとえ「狭義の混同を生ずるおそれ」がなくても「広義の混同を生ずるおそれ」があることは明らかであり、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であって、商標法4条1項15号に該当する。 7 結語 以上詳述したように、「自由学園」は、百科事典等の辞書、事典、教育史に関する書籍、一般史実に関する書籍、その他各種事典等に、必ずと言っていいほど掲載されている。そして、これらの事典類における項目は、いずれも「学校法人自由学園」ではなく「自由学園」という略称で請求人について記載しているものである。また、その他の一般大衆向け雑誌や新聞等でも、「自由学園」という略称で、記事が掲載されている。 このように、教育関係者・研究者のみならず、国民一般に向けられた日本の有数の各百科事典においてまで、請求人の略称が紹介されている以上、その略称の著名性を否定し、これを含む商標の登録を許すことは、請求人の名称に関する法人としての人格権を害するものであることは明らかである。 また、前記最高裁判決のとおり、本号における「著名性」は、需要者に限定して検討する必要性は存在せず、8号の趣旨から考えて、請求人が属する社会、業界において著名であれば足りるものである。請求人の属する社会、業界は、その独自の教育思想、高い教育理念から、教育の専門家、知識人の属する社会とオーバーラップしているものであり、このような社会において、請求人の法人としての氏名権、信用が害されることを許さないことこそ、8号の趣旨である。 本件商標を構成する「チャイルド」の語は、「東京自由学園」や「国際自由学園」における「東京」や「国際」の語と同様に、その後に続く語を形容するために付加される語であり、法4条1項8号の適用にあたっては、区別されるべき理由はない。 これまで述べてきたように、「自由学園」は、請求人が運営する学校名及び略称として、本件商標の出願日(平成16年10月12日)より、はるか以前から、我が国において広く知られ、著名性を獲得している。しかして、本件商標は、その請求人の著名な略称「自由学園(Jiyugakuen)」に酷似した「jiyuugakuen」を含む「childjiyuugakuen」の欧文字よりなるものであり、かつ、請求人の承諾を得たものではない。 さらに、本件商標は、外観、観念及び称呼において、請求人商標と類似しているのみならず、その指定役務について使用された場合には、請求人商標「自由学園(Jiyugakuen)」との関係で、あたかも請求人又は請求人と業務上あるいは組織上何らかの特殊な関係がある企業体が提供する役務であるかのごとく、誤認・混同されることは、必至である。 したがって、本件商標は、商標法4条1項8号、同10号、同15号に該当し、その登録は、同法46条1項の規定により無効とされるべきである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 「自由学園」の著名性について 請求人「学校法人自由学園」は、大正10年(1921年)4月15日に、報知新聞の元記者であり、雑誌「婦人之友」を創刊、編集・発行するジャーナリストであった羽仁吉一・もと子夫妻により、現在の豊島区西池袋に女子のための中等教育を行う学校として創立され、昭和10年に男子部、昭和14年に幼児生活団(幼稚園)、昭和24年に大学に相当する男子最高学部、翌昭和25年に女子最高学部(短期大学に相当)ができ、4歳児から22歳までの青年男女を育てる一貫教育校となった。当初は、文部省令によらない各種学校だった女子、男子の中等科、高等科は、戦後の学制改革の際に文部省が許可を与え、新制中学、高等学校となった。なお、最高学部は、今日も学校教育法によらない各種学校のままである(甲4)。 そして、この「自由学園」は、多数の辞書、辞典、百科事典、人名辞典、その他各種事典に独立した項目として、また、「羽仁もと子」の業績の一つとして紹介されている(甲5ないし甲16、甲54ないし甲69)。 また、本件商標の出願日前に「自由学園」は、雑誌、新聞、各種文献に独立した項目として取り上げられ、また、「羽仁もと子」の業績の一つとして紹介されている(甲50ないし甲53、甲70、甲72ないし甲92、甲94、甲95、甲97ないし甲109、甲111ないし甲131、甲139ないし甲152、甲154ないし甲157、甲164ないし甲167、甲169ないし甲175、甲177ないし甲196、甲198、甲200ないし甲202、甲206)。 さらに、出願日以降においても、「自由学園」は、雑誌、新聞、各種文献に取り上げられている(甲17ないし甲25、甲132ないし甲138、甲197、)。 以上の事実を総合すれば、請求人の略称としての「自由学園」、及び、請求人が提供する役務「知識の教授」について使用する「自由学園」の文字からなる商標(以下、場合によって「引用商標」という。)は、本件商標の登録出願時はもとより、登録査定時においても、既に、我が国において需要者を含め一般に広く認識され、著名性を獲得していたものということができる。 2 商標法第4条第1項第8号について 本件商標は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔の「childjiyuugakuen」の文字よりなるものであるところ、構成前半の「child」の文字は、「子供、幼児」を意味する極親しまれた平易な英語であり、該構成にあっては、独立してかかる意味合いで把握されることが容易であるというべきである。そして、上記1に認定のとおり、「自由学園」は、請求人の名称の著名な略称であるということができ、その表音を片仮名で表せば「ジユウガクエン」であり、これをローマ字書きした場合、「jiyuugakuen」であるのに対し、本件商標は、「childjiyuugakuen」であり、「jiyuugakuen」は、漢字「自由学園」以外の文字を想起させるものではなく、かかる「jiyuugakuen」を含み、請求人の承諾を得たものでないこと明らかであるから、本件商標は、商標法4条1項8号に該当するものといわざるを得ない。 3 商標法4条1項10号について 上記1に認定のとおり、「自由学園」は、請求人が「幼稚園、中学校、高等学校、各種学校における知識の教授」に使用する周知・著名な商標であるということができ、その表音を片仮名で表せば「ジユウガクエン」であり、これをローマ字書きした場合、「jiyuugakuen」であるのに対し、本件商標は、「childjiyuugakuen」であるから、かかる「jiyuugakuen」を含み、その称呼及び観念は、同一であるから、本件商標と引用商標とは、類似するものであり、また、その指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授」については、請求人の提供している役務と同一又は類似するものである。 したがって、本件商標は、その指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授」については、商標法第4条第1項第10号に該当する。 4 商標法4条1項15号について 上記1に認定のとおり、「自由学園」は、請求人の著名な商標であるということができ、その表音を片仮名で表せば「ジユウガクエン」であり、これをローマ字書きした場合、「jiyuugakuen」であるのに対し、本件商標は、「childjiyuugakuen」であるから、かかる「jiyuugakuen」を含み、その称呼及び観念は、同一であるから、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある商標である。また、本件商標の指定役務は、いずれも教育に関係するものといえるものである。そうとすると、本件商標を、その指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授」以外の役務について使用したときは、これに接する取引者・需要者は、本件商標より、直ちに請求人の引用商標「自由学園」を連想、想起し、請求人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのごとく、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。 したがって、本件商標は、その指定役務中「技芸・スポーツ又は知識の教授」以外の役務については、商標法4条1項15号に該当する。 5 結び 以上のとおり、本件商標は、商標法4条1項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-28 |
結審通知日 | 2011-01-05 |
審決日 | 2011-01-18 |
出願番号 | 商願2004-93219(T2004-93219) |
審決分類 |
T
1
11・
23-
Z
(Y41)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
鈴木 修 |
特許庁審判官 |
前山 るり子 内山 進 |
登録日 | 2005-07-22 |
登録番号 | 商標登録第4881448号(T4881448) |
商標の称呼 | チャイルドジユウガクエン、チャイルドジユーガクエン、チャイルドジユウ、チャイルドジユー、チルドジユウガクエン、チルドジユウ |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 井滝 裕敬 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 加藤 ちあき |
代理人 | 藤倉 大作 |