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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X30
審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X30
審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X30
審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X30
管理番号 1230271 
異議申立番号 異議2009-900435 
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2011-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2009-11-24 
確定日 2010-12-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第5258227号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5258227号商標の指定商品中、第30類「そばの品種である『会津のかおり』以外のそばを原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・もち・そばがき」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5258227号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成20年11月8日に登録出願、第30類「茶,そばつゆ,香辛料,そば粉,即席そばのめん,そばのめん,もち,そばがき」を指定商品として、同21年7月7日に登録査定、同年8月21日に設定登録され、その後、商標権の一部抹消登録申請書が提出され(同22年9月28日受付)、指定商品中「そばの品種『会津のかおり』以外のそばを原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・もち・そばがき,そばつゆ,香辛料」について、商標権の一部放棄による抹消登録がなされているものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第123号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号該当について
申立人である福島県は、「会津のかおり」の名称を本件商標の登録出願前から同県産のそばの新品種として品種登録を行うと共に、当該品種の保護育成を図ると共にこの品種名のブランド化を図るべく、公益的な見地から多方面にわたって広く広報活動を行ってきたものである。かかる背景を知りながら、一個人が当該品種名と紛らわしい名称を商標登録して独占することは、著しく公序良俗に反するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第14号該当について
本件商標は、登録査定日より以前に品種登録を受けたそばの品種の名称と同一又は類似の商標であって、その品種の種苗又はこれに類似する商品について使用するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第14号に違反して登録されたものである。
3 商標法第3条第1項第3号および同第4条第1項第16号該当について
本件商標は、そばの品種「会津のかおり」と類似するから、かかる本件商標をその指定商品「茶,そばつゆ,香辛料,そば粉,即席そばのめん,そばのめん,もち,そばがき」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質や原材料を表示した語句にすぎないと認識するにとどまるから、本件商標は、自他商品の識別機能を果たし得ないとものというべきである。また、その指定商品中、上記以外の商品(そばを使用していない商品)について使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。

第3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成22年8月17日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
1 異議申立人提出の証拠によれば次の事実が認められる。
(1)「会津のかおり」の品種登録について
「そば」(Fagopyrum esculentum Moench)の品種の名称「会津のかおり」(あいづのかおり)(以下「引用標章」という。)は、福島県が、平成19年4月2日に品種登録出願し、同21年3月16日に種苗法第18条第1項の規定により品種登録されたものである(甲第1号証ないし甲第3号証)。
(2)品種登録された「会津のかおり」の認識の程度について
ア 福島県は、生産性が高く食べておいしい当県固有のそばの品種開発を目指して、平成14年度から県独自の優良系統そばの選抜や隔離栽培を実施していたところ、同19(2007)年3月9日に、下郷町の在来種から育成した「会津3号」が、試験の結果、実の収穫量が1アール当たり約21.5キロに上り、東日本で栽培されている一般的な品種より二割近く多く、また粒が丸々として、そば粉の出がよく、さらに食味試験の結果、色、香り、味も優れた評価だったとして、新品種が完成したことを公表した(甲第6号証、甲第7号証)。
イ 平成19年4月5日付け「日本農業新聞」は、「福島県は4日、県が育成したそばの新品種名を公表した。そばの品種開発で初めてとなる『そば会津3号』は『会津のかおり』と命名。2日、農水省に品種登録を出願し、受理された。県の気象条件など栽培に適した品種で、オリジナルブランドとして期待される。・・・名称公募には県内外から145点があった。風味の良い会津のそばをイメージ。」の旨の記事を掲載している(甲第76号証)。同趣旨の記事は、同日付け「福島民報」(甲第8号証)及び「福島民友」(甲第9号証)にも掲載されている。さらに、KFB福島放送は、2007年4月5日に県内のテレビニュースにおいて、県が開発したそばとしては初めての新品種の名称は「会津のかおり」に決まったことなど前記新聞記事と同趣旨の紹介を放送しており、その内容はインターネットにおいても公表されている(甲第97号証)。
ウ さらに、平成19年4月12日ないし同21年6月22日付け新聞(甲第10号証ないし甲第75号証、甲第77号証ないし甲第83号証)、同19年8月ないし同20年12月のパンフレット・チラシ・雑誌(甲第84号証及び甲第96号証)、同19年5月2日ないし同21年6月のインターネット情報(甲第98号証ないし甲第123号証)には、同19年7月14日ないし16日に、全国のそば職人や愛好家が集う「第3回 日本そば大学講座喜多方学舎」で会津のかおりの誕生秘話の講演や圃場を見学したこと、同20年2月16日ないし24日に「蔵のまち喜多方冬まつり」が開催され、そばフェスタにおいて会津のかおりが販売されたこと、「福島県旅館組合タイアップ企画 地産地消セミナー」において「会津のかおり」を提供したこと等各種イベント等において、会津のかおりを紹介、販売したことなど、「会津のかおり」に係る福島県、市町村、そば関連の各種団体、種子の生産者等の活動を通して、その品種の特長、生産の状況等について紹介や説明がされている。
(3)以上の認定事実によれば、福島県は、生産性が高く食べておいしい当県固有のそばの品種開発を目指して、平成14年度から県独自の優良系統そばの選抜、隔離栽培を実施していたが、同19年3月に新品種開発が完成したことを公表した。県が開発したそばとしては初めての新品種の名称は、同年4月4日に公募による「会津のかおり」に決定した。これらの経緯については、新聞、テレビ、インターネット等により報道されている。
上記のように福島県、市町村、そば関連の各種団体、種子の生産者などの活動は、新聞、雑誌、パンフレット・チラシ、テレビ、インターネット等を通じて多量に継続して報道されていることが、前記認定のとおり認められるから、そばの品種「会津のかおり」の名称は、本件商標の登録査定時には、そばの種子の取引者はもとより、その品種を原材料とする製品などに接する一般の需要者においても福島県を中心に県の内外において広く認識されていたものということができる。
(4)本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、構成中央に縦書きで、黒色をもって筆記体の「会津の風香」の文字とその「風香」の文字の右側に小さく「かおり」の文字を表した文字商標とその左上方に、透過した青色の線で描かれた枝に、朽ちた橙に色づいた1つの柿の図形を、その下に、同じく透過した青色の線で噴煙を上げる山を描いた図形商標との結合商標であるところ、中央に顕著に表された「会津の風香」及び「かおり」の文字部分は、背景的な図形部分より独立して捉えられるものである。
そして、当該文字部分のうち「風香」の部分は、特定の意味及び読みをもって知られた語ではなく造語と認められ、その右側の小さく表された「かおり」の文字が振り仮名のように表されていることから、該文字は「かおり」の当て字として理解されるものである。
してみれば、本件商標は、その構成中、中央に顕著に表された文字部分から、「アイヅノカオリ」の称呼を生じるものといわなければならない。
そして、上記(3)のとおり「会津のかおり」が本件商標の登録査定時においてそばの品種名として広く知られていることからすれば、本件商標は、そばの品種名である「会津のかおり」の観念を生ずるものである。
(5)品質の誤認のおそれについて
本件商標とそばの品種名「会津のかおり」とは、「アイヅノカオリ」の称呼、そばの品種名としての「会津のかおり」の観念及び「会津のかおり」の文字構成(外観)を共通にするものである。
そうすると、本件商標は、看者をしてその構成中「会津の風香/かおり」の文字部分から、そばの品種名「会津のかおり」を想起・連想するものとみるのが自然であるから、本件商標は、これをその指定商品中「茶,そば粉,即席そばのめん,そばのめん,もち,そばがき」に使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、該文字をそばの品種「会津のかおり」を使用した商品であることを表示したものと認識すると判断するのが相当である。
してみれば、本件商標をその指定商品中「そばの品種である『会津のかおり』以外のそばを原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・もち・そばがき」に使用するときは、取引者、需要者をして、その商品があたかも「そばの品種『会津のかおり』を原材料とするそば茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・そばもち・そばがき」であるかのように商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「そばの品種である『会津のかおり』以外のそばを原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・もち・そばがき」について、商標法第4条第1項第16号に違反してされたものである。

第4 取消理由に対する商標権者の意見(要旨)
1 商標権者による商標権の一部放棄
本件商標の商標権者は、平成22年9月28日付け「商標権の一部放棄書」により、本件商標の指定商品の一部について、権利を放棄したので、前記商標権の一部放棄後の指定商品は、第30類「そばの品種『会津のかおり』を原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・もち・そばがき」となった。
2 商品の品質について誤認を生じさせるおそれ
本件商標権者による前記商標権の一部放棄の結果、本件商標は商品の品質について誤認を生じさせるおそれはなくなったものである。
3 結語
以上のとおり、本件商標権者による前記商標権の一部放棄の結果、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない商標となったので、その商標登録を維持されるべきものである。

第5 当審の判断
1 上記第3の取消理由は、妥当なものであって、本件商標の登録は、その指定商品中「そばの品種である『会津のかおり』以外のそばを原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・もち・そばがき」について、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
また、その指定商品中「そばつゆ,香辛料」については、一般にそばの実は、該商品の原材料として用いられてなく、「会津のかおり」の文字がそばの品種である「会津のかおり」を使用した商品であることを表したものと認識させるというべき事情は見いだせない。
してみれば、本願商標は、これを「そばつゆ,香辛料」に使用しても、取引者、需要者をして、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「そばの品種である『会津のかおり』を原材料とする茶・そば粉・即席そばのめん・そばのめん・もち・そばがき,そばつゆ,香辛料」については、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではない。
なお、商標権者は、本件商標について、商標権の一部放棄を理由にその取消理由が解消する旨述べているが、登録異議の申立てにおいては、「取消決定が確定したときは、その商標権は、初めから存在しなかつたものとみなす」(商標法第43条の3第3項)と規定されていることから、その取消の効果は登録時まで遡及するものである。
他方、商標権の権利放棄の効果は、専ら当該放棄に係る権利の抹消登録後において発生するものであって、放棄前にまでその効果が遡及するものではないから、本件商標の登録後にされた商標権の一部放棄の事由は、本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当するとした先の取消理由の認定判断に何ら影響を及ぼすものではない。
2 申立人のその他の申立て理由
(1)商標法第3条第1項第3号該当について
本件商標は、別掲に示すとおり、その構成中央に縦書きで、黒色をもって筆記体の「会津の風香」の文字とその「風香」の文字の右側に小さく「かおり」の文字を表し、左上部に、透過した青色の線で描かれた枝と色づいた1つの柿の図形を、下部に、同じく透過した青色の線で噴煙を上げる山を描いてなるものであるから、本件商標全体として十分に自他商品の識別標識としての機能を果たすものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当について
本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、その構成自体が、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与える標章からなるものでないことは明らかであるから、構成上、公序良俗を害するおそれがあるものとはいえない。
また、本件商標は、その構成中央に大きく表された文字が「会津の風香」であること、及び「会津のかおり」の語が格別に創造性の高い語でないことからすれば、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあって、取引秩序の商道徳に反し、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に著しく反するものとまではいえないというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。
(3)商標法第4条第1項第14号該当について
本件商標の指定商品第30類「茶,そばつゆ,香辛料,そば粉,即席そばのめん,そばのめん,もち,そばがき」と「(そばの品種の)種苗」とは、
別異のものであり、また、生産・販売部門、用途及び需要者等を異にするものであるから、類似しない商品というべきである。
してみれば、本件商標は、種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と類似するものの、その品種の種苗と同一又は類似の商品について使用するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第14号に違反して登録されたものとはいえない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項により結論掲記の指定商品について取り消すべきものとし、本件異議申立に係るその余の商品についての登録は、取り消すべき理由がないものであるから、同法第43条の3第4項の規定により、登録を維持すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
本件商標(登録第5258227号商標)

(色彩については原本参照)

異議決定日 2010-10-27 
出願番号 商願2008-94101(T2008-94101) 
審決分類 T 1 651・ 272- ZC (X30)
T 1 651・ 21- ZC (X30)
T 1 651・ 13- ZC (X30)
T 1 651・ 22- ZC (X30)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 内藤 隆仁小田 明 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 鈴木 修
井出 英一郎
登録日 2009-08-21 
登録番号 商標登録第5258227号(T5258227) 
権利者 岩井 芳夫
商標の称呼 アイズノカオリ、アイズノフーカ、カオリ、フーカ 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 
代理人 水野 博文 

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