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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1205301 
審判番号 無効2007-890169 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-29 
確定日 2009-10-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4920906号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4920906号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4920906号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成17年6月8日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年11月24日に登録査定、同18年1月13日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人は、本件商標の登録の無効の理由に下記の2件の登録商標を引用しており、いずれも、現に有効に存続しているものである。
(a)登録第1592525号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、昭和46年2月24日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同58年5月26日に設定登録され、その後2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされたものである。さらにその後、指定商品については、平成16年9月8日に第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第24類「布製身の回り品,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」に書換登録がされている。
(b)登録第2205094号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、昭和55年9月30日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年1月30日に設定登録されたものである。
(以下、これらをまとめていうときは、引用各商標という。)

第3 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第121号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標1との類似性について
本件商標は、5角形の幾何図形を、そのほぼ外形線上及び内側に2重の点線をもって書し、さらに、上下間の中央に外形の五角形を横断するように、2本の点線で描かれた弓形の図形を2つ横に並べて配し、右2つの弓形が中央部で結合する部分に点線で描かれた短い横線を配してなるものである。
これに対して、引用商標1は、本件商標と同様の5角形の図形を、そのほぼ外形線上及び内側に2重の点線をもって書し、小さな縦長の長方形の図形を上下中央部のやや上部の左外側に付し、かつ、上下間中央に本件商標と同様に左右に並んだ2本の弓形の点線によって描かれた図形を描いてなるものである。
本件商標と引用商標1は、その外周を構成する5角形が、最外周が実線で描かれ、そのわずかに内側及び少し距離を開けた内側に点線で同様の5角形が描かれ、上部の2本の点線と両側に描かれた2本の点線は交差しているという点、及び5角形の縦横の比率、両側の傾斜の角度及び底部の突出の角度が同じである。
両商標の基本的構成にこのようなほぼ同一と評価しえる図形が使用されていることにより、本件商標と引用商標1との間には非常に強い共通性が認められる。
さらに、本件商標に描かれた横に並んだ2つ弓形の図形は、引用商標1に描かれた横に並んだ2つの弓形との共通性を非常に強く印象付ける作用をもっている。したがって、この部分が類似していることは明らかである。
このように、5角形の図形がほぼ同一である点と、2つ並んだ弓形の図形の強い共通性に照らすならば、本件商標が引用商標1に類似していることは明らかというべきである。
確かに、本件商標は、引用商標1に比して、2つの弓形を構成する点線が平行でないなどの微細な相違点は存在するが、単に2つの弓形を構成する点線が平行でないということだけでは類似性は否定されないのであって、本件商標が全体として観た場合に引用商標1と彼此相紛れるおそれのある外観であることは明らかである(甲第115号証ないし甲第118号証の登録異議の申立についての決定参照)。
また、本件商標の中央部には点線で短い横線が記されているが、右の図形は、両商標の類似性をさらに高めるものに他ならない。引用商標1には、2つの弓形の図形に挟まれた中央部に「ダイヤモンドポイント」と呼ばれる菱形の図形が存在する。これに対し、本件商標においては、右「ダイヤモンドポイント」と同様の位置に短い横線が形成されることとなり、2つの弓形の図形に挟まれた中央部に図形が存在するという点においてより共通性が増すことになるからである。
(イ)本件商標と引用商標2との類似性
引用商標2は、二つの弓形の図形と、その中央にある「ダイヤモンドポイント」と呼ばれる菱形の図からなる。
本件商標に描かれた横に並んだ2つの弓形の図形は、引用商標2に描かれた横に並んだ2つの弓形の図形との共通性を非常に強く印象付ける作用をもっている。
したがって、この部分が類似していることは明らかである。そして、前述のとおり、2つの弓形の図形が存在するという強い共通点があるために、本件商標は、引用商標2に類似している。
(ウ)以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に反してなされたものである。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
(ア)請求人の商標の周知著名性
請求人は、引用商標1及び引用商標2を100年以上も前から、請求人を表示する商標として、請求人商品に使用しており、我が国においては、引用商標1及び引用商標2を用いた商品は、著名な請求人商標である「LEVI’S」と並んで、少なくとも、昭和40年代より現在に至るまでの長年にわたって、「メンズクラブ」、「アン・アン」、「ホットドッグプレス」、「リーバイスブック」、「チェックメイト」、「Popeye」等々の男性誌、女性誌を問わず、各種雑誌記事等(甲第6号証ないし甲第113号証)に記載され、テレビにおいてコマーシャルフィルムが放送されており、その中でも、請求人は、引用商標1及び引用商標2を強調した宣伝広告を続けてきた。その結果、引用商標1のうち、その外周五角形形状とその内部の二つのアーチ形状がこれらの雑誌等の視聴者に大きな印象を与え、当該部分のみで、請求人の商品を表示するものとして認知される識別力が高い部分となり、周知著名となっているものである。
請求人のジーンズパンツの日本における売上は、平成7年(前年12月1日から同年11月31日までの会計年度における売上高、以下同じ。)から平成11年は、250億円を超え、平成12年から平成15年までも、平成13年を除き年間売上高が200億円を超えており、平成13年の年間売上高も200億円近くある。平成7年から平成15年までの期間に限っても、請求人のジーンズパンツの売上総数は5千万本を超えている。宣伝広告費は、過去10年間において毎年約15億円から29億円という膨大な金額に上っている(甲第114号証)。
また、請求人は、平成11年7月から同12年5月までの間、全国3箇所において、「リーバイス ヒストリー展」を開催した(甲第114号証)。当該展覧会のポスター、チラシ及び入場券には、請求人の登録商標たる「LEVI’S」の欧文字と引用商標1及び引用商標2が使用された請求人のジーンズパンツのバックポケットを16個並べた写真が用いられており、これらのポスター、チラシ及び入場券を目にした需要者に、引用商標1及び引用商標2が請求人の商品であることを表示する商標であることを強烈に印象づけるものとなっている。なお、当該展覧会の延べ入場者数は35766名であった。
さらには、平成12年6月28日、東京地方裁判所において請求人が提起した商標権侵害差止等請求訴訟において、請求人の商標が請求人の商品又は営業表示として需要者に広く認識され、周知となっていることが認められ、標章の使用の差止が認められた(甲第4号証)。右事件は、控訴されたが、平成13年12月26日、東京高裁も東京地裁の右判決を維持し(甲第5号証)、右判決は確定した。
以上のとおり、引用商標1及び引用商標2は、遅くとも、本件商標の出願日である平成17年6月8日までには、請求人の取り扱うジーンズパンツに限られず、スカート、シャツ、ジャケット等、請求人が取扱うあらゆる商品を表示するものとして周知著名になっていたものである。
(イ)引用各商標の独創性
引用商標1の内部の二つのアーチ形状からなる二重破線及び引用商標2は、請求人が100年以上も前から、競業者の商品と区別するため、そのジーンズパンツのバックポケットに採用したものであるが、当該二重破線の形状は、ジーンズパンツの形状やバックポケットの用途等から一般的に生まれるものではなく、極めて独創性が高いものである。この二つのアーチ形状からなる二重破線は、外周部をなす五角形部分の形状と相俟って、その特徴的なバックポケットのステッチ様の商標を構成するのであり、引用商標1もまた独創的なものといえる。引用商標1及び引用商標2は、その高い独創性とその周知著名性とが相俟って、強い出所表示機能を有するものである。
(ウ)請求人の商品及びこれに使用される商標の特性
請求人は、1853年にアメリカにおいて設立された会社であり、19世紀後半に、耐久性のあるデニム地を使い、ポケットを金属のリベットで補強した「ジーンズ」を世界で初めて製造・販売した会社である。その後100年以上にわたって、請求人は、引用商標1及び引用商標2を含む多くの商標を付したジーンズを販売してきたものである。
引用商標1及び引用商標2のステッチは、縫製の過程で微妙にずれることがあり、また、100年以上のジーンズ製造販売の歴史があるゆえに、ポケットの形状又はステッチの形状が微妙に異なるモデルが販売されていることがある(甲第114号証の1ないし4参照)。しかし、請求人の商品には、共通して、不変的に2つの弓形の図形からなる商標が使用されており、この形状は、「アーキュエットステッチ」と呼ばれジーンズを購入する需要者にとってジーンズのブランドを判断する重要な要素となっている。
このように、請求人の商品に使用されている「アーキュエットステッチ」の商標は、その形状にある程度の幅を有しつつ、全体的には、2つの弓形の図形として需要者に認識されているものである。
(エ)請求人の商品との混同を生ずるおそれ
上記のような請求人の商標の著名性及び商品の特性を考慮すれば、本件商標が実際に商品に使用された場合には、請求人の商品との混同を生じることが明らかである。
まず、商品の特性上、ポケットの形状及びその内部のステッチの形状にはばらつきがあることが当然のこととして需要者には受け入れられており、商標の細かな差異は混同のおそれを否定する理由にならない。例えば、確かに仔細に検討すれば、ポケットの外周のうち、左右各辺に沿う2本の線の上方の間隔は、本件商標の方が引用商標1ないし引用商標2より大きい。しかし、請求人の実際の商品の中には、本件商標と同様に、上方の間隔の広がりの程度が大きいものも存在するのであり(甲第114号証の1ないし4参照)、これらの商品については、上記差異の存在は当てはまらない。なにより、需要者は、実際の商品を目にするに当たっては、かかるミリ単位の相違を重要な要素として認識するものではない。
さらに、仔細に検討すれば、本件商標のポケット形状の内部を形成する二つの弓形の図形は、横方向中央に想定される縦軸に対して線対称ではなく、また弓形の図形を形成する二本の曲線は左右の各端部においては間隔が広く、弓形の図形が結合する部分においては結合しているという特徴が認められる。
しかし、本件商標が実際に使用されているのは、ジーンズの後ろポケット部分である。そして、ジーンズの後部ポケットは、垂線に対して斜めに取り付けられており、左右のアーチが線対称であるか否かという点は実際の商品を見るに当たっては容易に認識されるものではない。
通常の一般人がジーンズパンツの購入にあたって商品を選択するに際しては、各ブランドのブランドイメージが重要となるのであり、請求人の引用商標1等の宣伝広告等で周知著名となっているブランドについての記憶を頼りに、商品の選択を行うことが一般的で、細部についてのデザイン等の差異によって商品を識別することは通常行われない。すなわち、日用衣料品たるジーンズパンツを購入する際に普通に払われる注意力の程度は、経験則上、それほど高度なものとはいえないというべきである。また、本件商標が使用される商品の特性を考慮に入れた場合、混同のおそれを判断するに当たっては、単純に商標を平面的なものとして比較することは妥当ではない。
前述のとおり、本件商標は、ジーンズの後ろポケットを象ったのであるが、消費者が実際に購入したジーンズを着用する場合、ジーンズの後ろポケットは、臀部の曲線に合わせて、立体的な形状となる。このように、実際に着用されたジーンズを消費者が目にする場合には、見る角度によって、実際には線対称である左右のアーチが線対称に見えないことがある。そして、逆に、かかるアーチが実際には線対称でない場合でも、見る角度によって線対称に見える場合もあるのである。
このように、実際に商品を購入した消費者が使用している商品をさらに他の消費者が目にした場合に生じる混同の観点から言えば、本件商標の左右のアーチが必ずしも左右対称ではないという点は、何ら大きな差異ではないのである。
また、請求人のアーキュエットステッチが非常に有名になった結果、2つの弓形の図形からなる後ろポケットのステッチは、請求人を示すものであるということは需要者にとって常識となっている。これは、甲第17号証の、各社から販売されているジーンズの後ろポケットの比較記事において、2つの横に並んだ弓形の図形を採用しているのが請求人だけであることからも明らかである。このように「2つの弓形の図形=請求人のジーンズ」ということを知っている需要者が、本件商標が付された商品を見た場合、請求人の商品のバリエーションの一つであるか、少なくとも請求人と被請求人との間に何らかの経済的な関係があるものと誤解する可能性があることは明らかである。
この点を示すため、請求人の商品と本件商標が実際に付された商品の写真を甲第86号証及び甲第87号証に示す。甲第86号証は、請求人の商品を販売するインターネットのオンラインショップのウェブサイトにおいて掲載されている請求人の代表的な商品である「501」という商品の後ろポケット部分の写真である。甲第87号証は、被請求人のウェブサイトにおいて掲載されている被請求人の「S0500XX」の商品の後ろポケット部分の写真である。甲第86号証の請求人の後ろポケット部分のステッチを良く知る者が、甲第87号証の被請求人の商品の後ろポケット部分のステッチを目にした場合は、2つの弓形の図形がまず目につき、両者に細かな違いがあるとしても、構成の軌を一にするものであるため、これを請求人の商品と混同することは明らかである(審決注:証拠方法の記載からみれば、甲第86号証と記載されているのは、甲第119号証の誤りと認められ、また、甲第87号証と記載されているのは、甲第120号証の誤りと認められる。)。
なお、この点について、請求人が株式会社エドウィンの登録した同様の形状のジーンズポケットのステッチに関する商標に対して行った無効審判2003年第35035号事件(審決注:証拠方法の記載からみれば、請求人は、甲第88号証と記載しているが、甲第121号証の誤りと認められる。)においても、請求人の商標と株式会社エドウィンの商標は互いに類似するものではないものの、2つの弓形のステッチが「ともに二重の破線をもって、五角形の外周部左右両辺からバックポケットの中央部に向かって形成され、これが中央部で下向きに形成されており、両ステッチ部分の形状をおおまかに観察すれば、互いに近似する形状であり、この点において、両者は構成の軌を一にするといえるものである」として、混同のおそれを認定している。
本件商標も、2つの弓形のステッチが二重の破線をもって、五角形の外周部左右両辺からバックポケットの中央部に向かって形成され、これが中央部で下向きに形成されているものであり、おおまかに観察すれば、請求人の商標と互いに近似する形状であることは明らかである。
これに、請求人の商標が周知著名であることを考慮すれば、本件商標は、需要者において、商品の出所について混同を生じるおそれがあるものである。
以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第15号に反してなされたものである。
(3)結論
したがって、本件商標の商標登録は無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号の非該当性
本件商標は、引用各商標とは基本的構成態様を異にするものであり、基本的に非類似の商標であることが明らかであるから、商標法第4条第1項第11号の適用を受けるものではない。
即ち、引用各商標のポケット形状の内部に形成された、ないしは形成されるであろう部分は、ポケット形状の左右各辺からポケット形状の内部に向かうそれぞれが2本の曲線からなるアーチが左右一つずつ、計二つ形成され、それぞれのアーチがポケット形状の内部において次第に下降して結合する形状からなるが、左右のアーチを形成する2本の曲線がほぼ平行で、ポケット形状の横方向中央において結合する左右のアーチが仮想中央縦軸に対して線対称であり、かつ、左右アーチの中央結合部は互いに交錯して明確な菱型図形(請求人はその形状に照らしてダイヤモンドポイントと呼んでいる)を形成していて、かかる引用各商標に接する者に落着いた整然たる印象を与えている。
これに対して、本件商標は、ポケット形状の内部の左右のアーチを形成するそれぞれ2本の曲線が、ポケット形状の左右の各端部で2本の曲線の間隔が広く、ポケット形状の内部の左右のアーチが結合する位置に近づくほどその間隔が狭くなっていて平行ではないし、また、当該アーチは、仮想中央縦軸に対して線対称とはなっておらず、右側に形成されるアーチは、右側の端部から内部の結合位置に向かい、緩やかに上昇した後、急激に降下する曲線によって表されているが、左側に形成されるアーチは、右側のアーチより下方にして、両アーチの結合位置と同程度かやや低い位置を端部とし、ポケット形状の内部に向かい、長めに上昇を続け、他方のアーチの頂上部の高さまでは至らない地点で下降して結合位置に至るものであって、このような左右各アーチの形状の違いにより、左右のアーチが全体としてポケット形状の上辺に対し斜めに(右側のアーチが上方に)形成されるように表現されており、かつ、左右アーチの中央結合部は、左右アーチの先端が一点に収束し、その接合点の下部に短く水平線を形成するのみである。本件商標は、あたかも、カモメが両翼を思い切り広げて大空を飛び、いずれかの方向へ旋回を試みているかの如き構図であり、かかる本件商標に接する者に、動きに満ちた活動的な印象を与えている。
このように、本件商標は、引用各商標に比して、左右に形成されるアーチの形状、位置取り等の基本的構成態様が全て異なり、引用各商標の落着いた整然たる印象とは対極にある動きに満ちた活動的な印象を看者に与えるものであり、全体として非類似の商標であることは明白である。
実際、商標の類似・非類似は、取引の事情を勘案して、時と場所を異ならしめて離隔的に観察されることが想定されるが、そのような場合、特に対比される両商標から受ける看者の印象が支配的であると思われ、そのような観察方法による場合においても、看者をして、引用各商標とは全く異なる動きに満ちた活動的な印象を生ぜしめる本件商標の非類似は明らかである。
なお、引用商標1にのみ存在し、引用商標2には存在しない略五角形のバックポケットの外周に沿う2本の線の部分は、ジーンズポケットにおいてありふれたものであり、商標としての自他商品識別機能という側面からこれを観察した場合、これと一体的に形成された前記せる左右のアーチ部分の識別機能に埋没し、商標としての要部と評価するに足るものではない。
上記より、本件商標は、引用各商標とは類似せず、商標法第4条第1項第11号に該当しないことが明らかである。
(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号の非該当性
本件商標は、引用各商標とは類似せず、商標法第4条第1項第10号には該当しない。また、引用各商標に係る商品と混同を生ずるものでもなく、商標法第4条第1項第15号にも該当するものではない。
請求人の主張するように、引用各商標が請求人の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていて、いわゆる周知性を獲得していたとしても、前記せる如く、本件商標は、引用各商標とは全く非類似の商標であるので、商標法第4条第1項第10号の要件を充足せず、その適用を受けないことは明らかである。
また、仮に、引用各商標が請求人の商品を表示するものとしていわゆる著名性を獲得していたとしても、本件商標と引用各商標が前記せる如く、基本的構成態様を明確に異にする全く別異の商標で、看者に与える印象においても対極にあるといえる程に異なっている点に鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用したとしても、いわゆる狭義の混同のみならず、広義の混同を生ずるおそれも全く存在しないのである。
更に、ジーンズポケット形状内に左右のアーチを備えた標章が登録商標として多数並存している事情(乙第1号証ないし乙第21号証)及び、実際の取引の場にあっても群生している事情に照らせば、その群生状態にあって、引用各商標が請求人の商品を表示するものとして、即ち、群生する他の標章と明確に識別できるものとして著名であるとするならば、引用各商標とは全く印象の異なる本件商標が混同を生ずる余地は皆無に等しいのである。
このように、本件商標は、その指定商品に使用しても、請求人の商品と混同を生ずるおそれはなく、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)結論
以上のように、本件商標は、引用各商標とは類似せず、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に該当せず、また、その指定商品に使用しても、請求人の商品と混同を生ずるおそれもなく、商標法第4条第1項第15号にも該当するものではない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1(以下、本件商標と引用商標1をまとめていうときは「両商標」という)とは、いずれも、ジーンズのバックポケットに付されたステッチを表したものと認められるところ、その構成は、別掲(1)及び(2)のとおり、ポケット形状の外周近くで概ねその形状に沿って五角形を形成する2本の線の部分と、ポケット形状の左右の各辺からその内部に形成された2本の曲線の部分とからなるものであり、ポケット形状の内部に形成された部分は、ポケット形状の左右各辺からポケット形状の内部に向かう2本の曲線からなるアーチが左右一つずつ、計二つ形成され、それぞれのアーチがポケット形状の内部中央において結合する形状からなるものである。 そして、両商標は、上記した点において、互いに近似する形状ということができる。
しかしながら、両商標は、ポケット形状の内部の左右のアーチを形成するそれぞれ2本の曲線が、引用商標1においてはほぼ平行であるのに対し、本件商標においてはポケット形状の左右の各端部で2本の曲線の間隔が広く、ポケット形状の内部の左右のアーチが結合する位置に近づくほどその間隔が狭くなっており平行ではない。また、両商標とも、上記左右の各アーチがポケット形状の横方向中央において結合しているものの、引用商標1においては、横方向中央に想定される縦軸に対して線対称であるのに対して、本件商標においては、線対称とはなっておらず、右側に形成されるアーチは、右側の端部から内部の結合位置に向かい、緩やかに上昇した後、急激に降下する曲線によって表されているが、左側に形成されるアーチは、右側のアーチより下方にして、両アーチの結合位置と同程度かやゝ低い位置を端部とし、ポケット形状の内部に向かい、長めに上昇を続け、他方のアーチの頂上部の高さまでには至らない地点で下降して結合位置に至るものであって、このような左右各アーチの形状の違いにより、右側のアーチが左側のアーチより大きく見えるように構成されており、かつ、左右のアーチが全体としてポケット形状の上辺に対し斜めに(右側のアーチが上方に)形成されるように表現されている点において差異がある。
そうとすれば、これらの差違点が、両商標を離隔的に観察する場合においても、それぞれ別異の印象を看者に与えること明白であるから、両ステッチの形状部分をおおまかに観察すれば、両商標は構成の軌を一にし、互いに近似する形状といえるとしても、両商標は、互いに非類似の商標とみるのが相当である。
(イ)本件商標と引用商標2との類否について
本件商標は、上記したとおり、ジーンズのバックポケットに付されたステッチであって、バックポケットの外周近くで概ねその形状に沿って五角形を形成する2本の線の部分と、バックポケット左右の各辺からその内部に形成された2本の曲線の部分とからなるものである。
この両部分のうち、バックポケット外周に沿う2本の線の部分は、概ねバックポケット自体の形状を表しているにすぎないものではあるが、「男子専科メンズモード事典」(甲第13号証)によれば、この部分自体の形状についても様々なバリエーションが存在することが認められるから、この部分に識別力が存在しない(すなわち、バックポケット左右の各辺からその内部に形成された2本の曲線の部分のみが要部である)ということはできない。そして、バックポケット外周に沿う2本の線の部分とバックポケット左右の各辺からその内部に形成された2本の曲線部分とは、同一のバックポケット上に、同じように形成されたステッチからなるものであって、上記両部分は、一体として、その識別力を形成するものと認められ、全体を不可分のものとして理解・認識されるものとみるのが相当である。
これに対して、引用商標2は、前記したポケット形状の内部に形成された2本の曲線の部分のみからなるものである。
そうとすれば、本件商標と引用商標2とは、明らかに構成を異にするものであって、非類似の商標といわなければならない。
(ウ)以上のとおり、本件商標と引用各商標とは、外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない。
また、少なくとも、本件商標からは、特定の称呼、観念を生ずることはないものと認められるから、本件商標と引用各商標とは、称呼及び観念については比較すべくもない。
そうとすれば、本件商標と引用各商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものということはできない。
2 商標法第4条第1項第第10号について
上記したとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2(及びこれらが商品に使用されている状態の商標を含めて)とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものであるから、その余の要件について検討するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえない。
なお、甲第114号証の1ないし4によれば(細部については不鮮明な写真が多いが)、請求人が過去において使用していた商品の中には、バックポケット外周の左右各辺に沿う2本の線の上方の間隔の広がりの程度が、引用商標1より大きいものも存在していることが認められるが、ポケット形状の内部の左右のアーチを形成する2本の曲線をはじめ、基本的な構成においては、引用商標1と互いに近似する形状ということができるものの、本件商標と類似するといえる商標は見当たらない。
3 商標法第4条第1項第第15号について
(ア)引用商標1、及び、これと酷似した被告のバックポケット形状の周知・著名性について
請求人が提出した甲第6号証ないし甲第9号証、甲第11証ないし甲第19号証、甲第23号証、甲第25号証ないし甲第28号証、甲第30号証ないし甲第33号証、甲第35号証及び甲第36号証、甲第38号証ないし甲第42号証、甲第44号証ないし甲第54号証、甲第56号証、甲第59号証及び甲第60号証、甲第65号証ないし甲第71号証、甲第73号証、甲第80号証ないし甲第85号証、甲第87号証及び甲第88号証、甲第90号証、甲第92号証及び甲第93号証、甲第95号証及び甲第96号証、甲第100号証、甲第103号証ないし甲第105号証、甲第114号証によれば、請求人の取扱いに係るジーンズパンツの宣伝広告が継続してなされ、そこには、引用商標1の形状と酷似したバックポケットの形状(以下「請求人バックポケットの形状」という。)が掲載されていることが認められる。 なお、甲第10号証ないし甲第113号証のうち、バックポケットの形状が不鮮明のものや、出典が推認できない不明な印刷物のものは採用できない。
これらの、各甲号証に示された、昭和47年5月以降における、主としてファッション雑誌における請求人の取扱いに係るジーンズパンツの継続的な宣伝広告によれば、請求人バックポケットの形状は、商品「ジーンズパンツ」を含む本件商標の指定商品の取引者・需要者の間で、広く認識されており、その周知著名性の程度は、極めて高いものであると認められる。
(イ)出所の混同のおそれについて
ある商標が、商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品に使用したときに、当該商品が当該他人の商品に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品が当該他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれ(「広義の混同を生ずるおそれ」)がある商標を含むものと解するのが相当であり、当該商標が、商標法4条1項15号に該当するか否かを判断するに際しては、当該商標と当該他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(平成12年7月11日 最高裁判所第三小法廷判決 平成10年(行ヒ)第85号参照)。
これを本件についてみるに、本件商標の指定商品は、前記第1のとおり「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」であり、一方、請求人の使用に係る、請求人バックポケットの形状は、前記(ア)で認定・判断したように、ジーンズパンツに係るものであることから、これら商品は、同一あるいは互いに極めて関連性の深い商品といえるものである。
そこで、本件商標と引用商標1の形状について対比するに、本件商標と引用商標1の形状は、前記「1 商標法第4条第1項第11号について」で判断したように、互いに類似するものではないものの、これらの両ステッチは、ともに二重の破線をもって、五角形の外周部左右両辺からバックポケットの中央部に向かって形成され、これが中央部から上向きに形成されており、両ステッチ部分の形状をおおまかに観察すれば、互いに近似する形状であり、この点において、両商標は構成の軌を一にするといえるものである。
一方、両商標におけるアーチを形成する2本の線が平行か、または左右の各端部方向へ広がっている等の相違は、前記した両商標の近似性を凌駕するほどの顕著なものとは認められない。
そして、請求人バックポケットの形状は、前記(ア)で認定・判断したように、商品被服、とりわけジーンズパンツの取引者・需要者の間で広く認識されており、その周知著名性の程度は、極めて高いものであり、他方、被請求人の本件商標、あるいは、そのステッチ部分が周知・著名となっているとの証左はない。
また、本件商標の指定商品は、引用商標1あるいは請求人バックポケットの形状が商品「ジーンズパンツ」に使用された結果、それが獲得している周知性の範囲内の商品といえるものである。
そうとすれば、本件商標を、その指定商品に使用するときには、これに接する需要者は、引用商標1あるいは請求人バックポケットの形状を連想・想起し、当該商品が請求人の取り扱う商品であると誤信するか、又は、請求人との間に密接な関係を有する者の業務に係る商品であると誤信することで、その商品の出所について広義の混同を生ずるおそれがあるというべきである。
4 被請求人のその他の主な主張について
(ア)被請求人は、仮に、引用各商標が請求人の商品を表示するものとしていわゆる著名性を獲得していたとしても、本件商標と引用各商標が基本的構成態様を明確に異にする全く別異の商標で、看者に与える印象においても対極に当たるといえるほどに異になっている点に鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用したとしても、いわゆる狭義の混同のみならず、広義の混同を生ずるおそれも全く存在しない旨主張している。
確かに、本件商標と引用各商標とは、前記1のとおり非類似の商標というべきものである。しかしながら、本件商標と引用商標1とは、互いに近似する形状といえるものであり、本件商標が、他人の業務に係る商品と狭義の混同及び広義の混同を生ずるおそれがある商標と認められることは、前記3のとおりであるから、この点についての請求人の主張は採用することができない。
(イ)被請求人は、ジーンズポケット形状内に左右のアーチを備えた標章が、登録商標として多数並存している事情(乙第1号証ないし乙第21号証)及び、実際の取引の場にあっても群生している事情に照らせば、その群生状態にあって、引用各商標が請求人の商品を表示するものとして、即ち、群生する他の標章と明確に識別できるものとして著名であるとするならば、引用各商標と全く印象の異なる本件商標が混同を生ずる余地は皆無に等しい旨主張している。
しかしながら、当該登録事例の存在は認められるとしても、それらが請求人の商標との関係で混同を生ずるかどうかは、個別・具体的に判断されるものであって、本件商標が、混同を生ずるおそれがある商標と認められることは、前記3のとおりであるから、この点についての請求人の主張は採用することができない。
5 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきであり、同法46条1項に基づき、その登録を無効にすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

別掲(1)本件商標


別掲(2)引用商標1


別掲(3)引用商標2

審理終結日 2008-10-07 
結審通知日 2008-10-10 
審決日 2008-10-21 
出願番号 商願2005-51287(T2005-51287) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Y25)
T 1 11・ 271- Z (Y25)
T 1 11・ 261- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 林 二郎
特許庁審判官 小畑 恵一
杉山 和江
登録日 2006-01-13 
登録番号 商標登録第4920906号(T4920906) 
代理人 谷口 登 
代理人 小谷 悦司 
代理人 中山 健一 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 達野 大輔 
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