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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 025
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない 025
管理番号 1205211 
審判番号 無効2006-89096 
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-07-21 
確定日 2009-10-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4751430号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4751430号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、平成9年3月31日に登録出願され、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー」を指定商品として、同16年2月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第415号証を提出した。
1 本件商標は商標法(以下「法」という。)4条1項7号、同項10号、同項15号に該当するから、本件商標の登録は法46条1項1号により無効とすべきものである。
2 無効理由1(法4条1項7号該当性)
本件商標は、被請求人において、請求人の「Indian商標」を用いたブランドビジネスを妨害する目的で、出願し登録を得たものであり、公正な競業秩序を害するものであるから、公序良俗に反する商標である。
(1)他人の業務を妨害する目的で出願し登録を得た商標は公正な競業秩序を害するおそれのある商標であり、公序良俗に反するものであり、登録を無効とすべきものである。このことは、母衣旗事件判決(平11.11.29東高民13判・平10(行ケ)18号)(「母衣旗判決」)の示すところである。
ア 法4条1項7号は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標は、登録を受けることが出来ない、と規定し、公序良俗に反するおそれのあることを商標の不登録事由に定める。そして、「公序」と「良俗」と別の言葉は用いているが、要は、「公序良俗」とは結局のところ「社会的妥当性」をいう。
そして、「社会的妥当性」の有無は、法が樹立、維持、発展させようとする健全な商標秩序に合致するか否かによって判断するものである。法の目的に反するような商標、健全な商標秩序を害するおそれのある商標、の登録を認めることが出来ないことは当然の事である。そして、「健全な商標秩序を害するおそれがあるか否か」、即ち、「社会的妥当性を有するか否か」、即ち「公序良俗に反するおそれがあるか否か」は、社会通念、即ち、普通の常識と普通の見識とを有する一般人の認識を基にして、判断すべきものである。
イ 法4条1項は、7号以外で、商標登録を認めることの出来ない場合を類型化して例示している。即ち、これらは、「健全な商標秩序を害するおそれがある場合」、即ち、「社会的妥当性を欠く場合」を類型化したものである。然しながら、「健全な商標秩序を害するおそれがある場合」、「社会的妥当性を欠く場合」はかかる類型化したものにつきるものではない。
よって、法は4条1項7号において、「公序良俗に反するおそれのある商標」は登録を認めないと規定して、類型化し得なかったものを法4条1項7号で登録を認めないこととしたのである。
したがって、法4条1項7号の「公序良俗に反するおそれのある場合」が多岐にわたることは当然である。判例上表れたものを幾つか列挙しても、次のようなものがある。
(ア)「博士の学位を付与された者を…尊敬し、その名誉を重んずるという社会的文化的秩序又は善良な風俗を害するおそれ」がある場合(昭56.8.25東高判、昭55(行ケ)95号)
(イ)「商標の保護と需要者の利益を保護する法の意図する商品流通秩序の維持の目的に反する」場合(昭56.8.31 東高判、55(行ケ)96号等)
(ウ)「公正な競業秩序を害するおそれ」がある場合(平11.11.29東高判、平10(行ケ)18号)(母衣旗事件判決)
(エ)「公正な取引秩序を乱すおそれ」がある場合(平成11.12.22東高判、平10(行ケ)185)
ウ 上記裁判例からも明らかなように、「公序良俗に反するおそれのある場合」とは「健全な商標秩序を害するおそれのある場合」であり(このような商標の登録を認めないのは当然である)、「社会的妥当性を欠く場合」であり(このような商標の登録を認めないのも当然である)、多岐にわたるのである。もとより、「公序良俗に反するおそれのある場合」が、商標の構成自体に問題がある場合や構成自体に特に問題がなくても使用する商品との関係で社会の一般的道徳観念に反するような場合に限られるものではない。
そして、法4条1項7号の「公序良俗を害するおそれ」(害するおそれであって、害する、ではない)は、これをことさら制限的に解さなければならないものではない。ことさら制限的に解することは、健全な商標秩序を害するおそれのある商標、社会的妥当性を欠く商標の登録を認めることにつながり、法が樹立、維持、発展せんとする健全な商標秩序の阻害をもたらすことにつながる。法4条1項7号をことさら制限的に解することは誤りである。
エ 以下(2)に述べる通り、本件商標は、被請求人において、請求人の「Indian商標」を用いたブランドビジネスを妨害する目的で、出願し登録したものである。かかる商標の登録を認めることが健全な商標秩序を害するおそれを有することになり、社会的妥当性を欠くことになることは明白である。即ち、本件商標が公序良俗に反するおそれのある商標であることは明白である。これは、母衣旗事件判決の示すところでもある。そして、本件商標の登録を認めることにより、正当な企業努力を営々と積み上げて来たまっとうな者が正当な利益を害され、先願主義を悪用する者がまっとうな者の犠牲の上に不当な利益を得ることを容認する結果をもたらし、また、普通の常識と普通の見識を有する者の認識(請求人が「Indian」ブランドの日本における正当な唯一の出所であるとの認識)(即ち、これが健全な商標秩序である)と乖離した商標登録状況をもたらしているのである。
(2)本件商標が公序良俗に反する商標であることは以下の事実から明かである。
ア 本件商標の出願の前である平成9年始めには、「Indianロゴ」(審決註:別掲(2))「ヘッドドレスロゴ」(審決註:別掲(3))等の「Indian商標」は需要者の間で請求人が衣類等に使用する商標として周知であり、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」は請求人の略称として需要者の間に周知であった。少なくとも、需要者の間に広く浸透していた。被請求人は、これを知って、本件商標の出願をした。本件商標は、二重の円の図形の中に「Indiaロゴ」及び「Indianロゴ」と同じ書体の「Motorcycle」を同大に上下2段に配してなるものである。かかる出願はまっとうな事業者であれば決してしない類のものである。本件商標の出願が被請求人において請求人の業務を妨害する目的でなしたものであることは、本件商標の構成自体から明らかである。
(ア)「Indian」ブランドはヴィンティージバイカー系のアメリカンカジュアルのファッションブランドであり、その顧客層はファッションに関心を持つ若年男性層である(甲254)。即ち、「Indian」ブランドの商品の需要者はかかるファッションに関心を持つ若年男性層である。
(イ)平成5年1月29日、請求人の設立及び「Indian」ブランドビジネスの開始が報じられた(甲13)。
(ウ)平成5年1月から同年11月にかけて、雑誌「ブルータス」に21回にわたり、「Indian」ブランドの復活、アパレルマーチャンダイジングブランドとしての展開、日本においても「Indian」ブランドのマーチャンダイジングビジネスが展開されることが報じられた(甲226ないし246)。
雑誌「ブルータス」の読者層は「Indian」ブランドの商品の需要者と重なる(甲247)。また、雑誌「ブルータス」は発行部数が月25万部に昇り、広告価値の非常に高い媒体である(甲249、250)。
この結果、「Indian」ブランドは日本において平成5年11月項には充分需要者の間に浸透し(甲247)、日本において「Indian」ブランドがブームになるのが時間の問題である程度に需要者の間に浸透していた(甲26)。
(エ)平成5年(1993年)7月24日付け繊研新聞(甲24)に、「米アンティークバイク『インディアン』ウエア発売」との見出しの下、スコット・カジヤ(「カジヤ」)を社長(当時)とする請求人が設立され、同年秋から、「インディアン」をイメージキャラクターにした商品の輸入販売及びライセンス事業が開始される旨の記事が掲載された。
また、同日付け日経流通新聞(甲25)にも、「米国のオートバイメーカー、インディアン・モトサイクル社(マサチューセッツ州)のライセンス供与を行っている『インディアン・モトサイクル・ジャパン』(東京・渋谷、スコット・カジヤ社長)は、米国で人気上昇中のアンティークバイク『インディアン・モトサイクル』関連商品のライセンス事業を、国内で展開する。」、「『インディアン』は1901-53年まで製造された高級バイクで、米国を象徴するブランドの一つ。会社は53年に解散したが、実業家のフィリップ・ザンギ氏が92年1月に再建した。」との各記載を含む記事が掲載された。
(オ)「POPEYE」1993年(平成5年)11月10日号(甲26)に、「1940年代、アメリカでハーレー・ダヴィッドソンと人気を二分したバイクメーカーがインディアン・モトサイクル社」であり、そのロゴグッズは、「アメリカを象徴するトレードマークのひとつとして、・・・未だに根強いインディアン・マニアを持つほどの存在」であるところ、これらのロゴグッズがアパレルなどのキャラクターグッズとして復活しており、「米国では既にブームとなっている模様」で、「日本でもブーム着火は時間の問題だといえる。」との記事が掲載された。「POPEYE」も、「Indian」ブランドの商品の需要者の間で広く読まれている雑誌である。このことは、被請求人も、「POPEYE」に請求人の企業努力に便乗する商品の広告を出した(甲34)からも明かなことである。
(カ)請求人は、平成6年1月から、「Indianロゴ」(特徴ある筆記体の欧文字「Indian」)、「ヘッドドレスロゴ」(「Indianロゴ」を配した右向きのインディアンの酋長の図形)、「『Indianロゴ』/MOTOCYCLE」、「『Indianロゴ』MOTOCYCLE」等を付したシャツ、ジャケット、帽子等の輸入販売を開始した(甲27、12、14ないし18)。輸入販売にかかる商品は「アーバンメディソン」(甲27)などの「Indian」ブランドの需要者に影響力のある店舗で販売された。これらの店舗で販売されたということ自体、「Indian」ブランドが需要者の間に充分浸透していたことを示すものである。
(キ)平成6年1月から12月、請求人は、「Indian」ブランドの需要者層である若い男性向けのカジュアルファッションの「ビームス」、「シップス」、「ユナイテッドアローズ」等の大手専門店で配布されている月刊広報誌「DICTIONARY」に、「Indianロゴ」及び「ヘッドドレスロゴ」を表示した請求人及びマスターライセンシーのサンライズ社の広告を掲載し、配布した(甲28)。「DICTIONARY」という影響力のある広報誌に広告が掲載されたということ自体、「Indian」ブランドが充分需要者の間に浸透していたことを示すものである。
(ク)平成6年始め、「アーバンメディスン」を所有開設している株式会社クラスから、若者向けカジュアルファッション流行の発信地として知られる東京都内の渋谷公園通りにある大きな「アーバンメディスン」の店舗内に、「インディアン」ブランドの衣類を販売するショップインショップを開設したいとの申し入れがあり、請求人はこれを承諾した。その結果、「アーバンメディスン」内に「Indian」ブランドのショップインショップが開設された。「アーバンメディスン」内にショップインショップを開設したいとの求めによりショップインショップが開設された、ということ自体、「Indian」ブランドが充分需要者の間に浸透していたことを示すものである。尚、株式会社クラスは「ビギ」等にOEMで商品を供給している有名な会社である。
(ケ)平成6年始め、請求人は、マスターライセンシーであるサンライズ社を通じて、「Indian」ブランドを使用したバッグの製造販売につき、マルヨシとサブライセンス契約を締結した。マルヨシは、同年5月ころ、展示会を開催して「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」、「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」、二重の円の図形の中に「左向きのインディアンの図形」を配した商標、二重の円の図形の中に「『左向きのインディアンの図形』+『Indianロゴ』MOTOCYCLE」を配した商標、等を使用してバッグの製造販売を開始し(甲30、31)、「旬刊ファンシー」平成6年6月25日号(甲29)、「グッズプレス」1994年(平成6年)11月号(甲32)及び「フィールド・ギア」1994年(平成6年)12月号(甲33)において、これらの商標を使用したバッグ、Tシャツ等の商品広告が掲載された。
(コ)即ち、既に平成6年始めには、「Indianロゴ」、「『Indianロゴ』/MOTOCYCLE」、「『Indianロゴ』MOTOCYCLE」、「ヘッドドレスロゴ」、「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」、を始めとする「Indian」ブランドは、請求人を出所とするアメリカンカジュアルのヴィンティージバイカーのファッションブランドとしてアパレルについて需要者の間で周知であった。アパレルについて周知になっていたからこそアクセサリーであるバッグへのライセンスが展開されたのである。また、同様に、「Indian Motocycle Japan」、「インディアンモトサイクルジャパン」、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」も請求人の略称として需要者の間に周知であった。
そして、このこと(周知)は、被請求人が、米国で「インディアンの復活」が報じられた(甲6、7)平成3年7月の直後の平成3年11月にすかさず「インディアンモーターサイクル」を旧第17類に出願し、登録を得(甲8)ながら、「インディアンモーターサイクル」は商品に一切使用せず、「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」よりなる商標(甲257)や二重の円の図形の中に「左向きのインディアンの図形」を配し、その下に長方形の図形を配し、その中に「『Ind1anロゴ』/MOTOCYCLE」を配した商標(甲258)を平成6年9月21日に第25類に出願したこと、平成7年に入って「Indianロゴ」、「『Indianロゴ』/Motocycle」、「ヘッドドレスロゴ」と類似する商標、等を使用したジャケット、シャツ、帽子等の販売を開始し、請求人の警告を無視してこれを継続した(甲34ないし47、甲76ないし79)ことから明らかである。
(サ)平成6年9月21日、被請求人は、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の「Indian商標」が請求人の企業努力により市場で広く認識されていたことを知って、また、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」が請求人の企業努力の結果請求人の略称として市場に広く認識されていたことを知って、また、二重の円の図形の中に「左向きのインディアンの図形」を配した商標、をマルヨシがバッグに使用した商標であることを知って、甲第257及び258号証の商標の出願をした。かかる甲第257及び258号証の商標の出願という行為は、まっとうな事業者であれば決してしようとしない類の行為である。「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等を用いた事業は、既に請求人が開始し、軌道に載せ、市場に「Indian」ブランドを浸透させていたのである。「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」は請求人の略称として充分市場に浸透していた。事実、「Indianロゴ」等を用いた商品を販売したり、「Indian」を含む商標の出願をし、登録を得たりしたのは被請求人のみである。
(シ)念のため付言するに、商標の周知とは、需要者の間に相当広く知られていることを云う。売上高の多寡は周知性をみる一つの尺度ではあっても、全てではない。売り出し開始前でも、雑誌等で広く紹介され、需要者の相当多数の者が「今か今か」と待っている状態であれば周知である。「Ind1anロゴ」などの「Indian商標」が既に平成6年の始めに「周知」であったことは、上述のことから明かである。
(ス)請求人は、マスターライセンシーのサンライズ社を通じて、平成7年、「Indian商標」を使用した革製ジャケットの製造販売につき、西澤株式会社(以下「西澤社」という。)とサブライセンス契約を締結した。
西澤社は、平成7年10月ころ、パンフレットを配布して「『1ndianロゴ』/MOTOCYCLE」、「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」等の「Indian」商標を付した革製ジャケットの製造販売を開始し、平成7年から平成8年にかけて巨額の資金を投入して広告宣伝を行った(甲48ないし57)。この結果、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」、「『Indianロゴ』/MOTOCYCLE」、「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」、等の「Indian商標」は、レザージャケット等についても請求人を出所とする商標として尚一層需要者の間に浸透し周知になった。
(セ)平成6年9月以降も、西澤社による「Indian」ブランドのレザージャケット等の販売と併行して、請求人による「Indian」ブランドのシャツ、ジャケット、帽子等のアパレル製品の販売も継続された。
(ソ)平成6年9月以降も、請求人は企業努力を傾注して、「『ヘッドドレスロゴ』/『Motocycleロゴ』(「Indianロゴ」と同一書体の「Indian Motocycle Co.,Inc.」)」よりなる商標(「Indian/Motocycle商標」)、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」その他の「Indian商標」を付したシャツ、ジャケット、帽子、ベルト、靴などの商品の販売、ライセンスを継続し、これらの商品は売上を順調に伸ばし、また、新聞雑誌等に広く広告、宣伝、紹介され、「Indian/Motocycle商標」、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の「Indian」ブランドは代表的なアメリカンカジュアルのヴインテイージバイカー系のファッションブランドとしてプレステイージのあるブランドとしての地位を固め、ますます強固にしていた(甲32、33、84)。
(タ)このこと(尚一層の浸透及び周知)は、翌平成8年の秋冬シーズンに西澤社が前年の投資の成果を回収しようとした矢先、すかさず、被請求人が平成8年の秋冬シーズンの初めから、「インディアンモーターサイクル」と同一性の範囲内にない、「『Indianロゴ』/Motocycle(書体は「Indianロゴ」と同じ)」(注.「Motorcycle」ではない)等を使用した革製ジャケット等の販売を開始したことから明らかである(甲76ないし79)。このことは、また、被請求人が、請求人の申立による仮処分決定(甲59)を受けた後も、「インディアンモーターサイクル」と同一性の範囲内にない、「『Indianロゴ』/Motorcycle(「Indianロゴ」と同じ書体)」の商標等を使用して、革製ジャケット等の製造販売広告等を行い(甲61ないし63)、「インディアンモーターサイクル」と同一性の範囲内にない、「Indianロゴ」と同一又は酷似した「Indian」や「Indian/ Motorcycle」 、「Indian Motorcycle」等を使用して、革製ジャケットやTシャツの輸入製造販売広告を行ったことからも明らかである(甲65ないし75)。
このことは、また、平成8年、被請求人が、請求人から「Indianロゴ」等の使用の差止の請求の訴を提起されるや(東京地方裁判所平成8年(ワ)第9391号)、これに対抗するため、「インディアンモーターサイクル」に対する商標権を基にして請求人らに対し訴を提起したことからも明らかである(東京地方裁判所平成8年(ワ)第140265号事件)(甲80)。(尚、この被請求人の訴は、権利の濫用であるとして棄却され、東京高等裁判所においても同様に判断された(後述)。)
(チ)であったからこそ、また、被請求人は、平成9年3月31日、「『Indianロゴ』/Motorcycle(書体は「Indianロゴ」と同じ)」よりなる商標(甲261、262(本件商標))を出願したのである。
(ツ)即ち、被請求人は、「Indianロゴ」が需要者の間に請求人の商標として周知であり、少なくとも需要者の間に広く浸透しており、また、「Indian Motocycle」が需要者の間に請求人の略称として周知であり、少なくとも需要者の間に広く浸透していることを知って、本件商標を出願したのである。かかる出願は、被請求人において、請求人の企業努力の成果を収奪し、請求人の業務を妨害する意図に基づくものでなければ、なされないものである。現に、本件商標のような商標登録出願をしたのは、一人被請求人のみである。
イ 本件商標の登録の前である平成16年初めには、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の「Indian商標」は、需要者の間で請求人が衣類等に使用する商標として周知であり、「Indian Motorcycle」 、「インディアンモトサイクル」は請求人の略称として需要者の間に周知であった。本件商標の出願の後である平成9年4月以降も、請求人は企業努力を傾注して、「『ヘッドドレスロゴ』/『Motocycleロゴ』(「Indianロゴ」と同一書体の「Indian Motocycle Co.,Inc.」)」よりなる商標(「Indian/Motocycle商標」)、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」、その他の「Indian商標」を付したシャツ、ジャケット、帽子、ベルト、靴などの商品の販売、ライセンスを継続し、これらの商品は売上を順調に伸ばし、また、新聞雑誌等に広く広告、宣伝、紹介され、「Indian/Motocycle商標」、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の「Indian」商標は代表的なアメリ力ン力ジュアルのヴインテイージバイ力一系のファッションブランドとしてプレステイージのあるブランドとしての地位を固め、ますます強固にしていた(甲85及び361)。
例えば、
(ア)1997年(平成9年)4月21日付け(甲85)繊研新聞には、「Indian/Motocycle商標」及び「Indianロゴ」を使用し、請求人の商号を示して請求人の同年秋物・冬物コレクション(展示会)の開催を知らせる広告が掲載され、同年6月10日付け同新聞(甲87)には、「Indianロゴ」を胸に付した衣服(トレーナー)の写真と共に「インディアンモトサイクルカンパニージャパン・・・・・・は、秋冬物から『インディアン』ブランドにニット・力ットソーを加え、ライセンスビジネスを強化する。」との記事が掲載された。
尚、甲90、91、92、94号証等にも「1ndian/Motocycle商標」が表示されている。
(イ)「イージーライダーズジャパン」1997年(平成9年)12月号(甲94)には、請求人を問い合わせ先として、「Indianロゴ」等を付した衣類等の広告が掲載され、「POPEYE」1998年(平成10年)1月10/25日号(甲97)、同年3月25日号(甲101)、「メンズエクストラ」同年4月号(甲104)には、「Indianロゴ」等を付した衣服、オートバイ模型、自転車等の広告が掲載された。
(ウ)1998年(平成10年)5月27日付け繊研新聞(甲106)に、「Indianロゴ」を掲げて請求人の同年秋物・冬物コレクション(展示会)の開催を知らせる広告が掲載され、同年6月11日付け同新聞(甲111)には、「インディアンモトサイクルカンパニージャパン・・・・・・は、今秋冬物からカジュアルブランドの『インディアン』に“レッド・アンド・ゴールド”ラインを新設する。」との記事が掲載された。
(エ)2000年(平成12年)1月から12月にかけて、「東京ストリートニュース!」、「BOYS RUSH」、「Lightning」、「Free&Easy」、「BORN’BiKERS」をはじめとする10種類前後の若者向けカジュアルファッション月刊誌に、毎月のように、「Indianロゴ」、「Indian/Motocycle商標」等を付したTシャツ、帽子、ジャケット等に関する請求人の広告宣伝及び紹介記事が掲載された(甲117ないし145、147、148以下)。
「東京ストリートニュース!」2000年(平成12年)3月号(甲126)には、「Indianロゴ」等を付した請求人の衣類等の広告とともに、「バイカー、ネイティブ好きの心をくすぐる、今やヤロウファッションを語る上で欠かせないのがインディアンモトサイクル。休日のオープン前ともなれば店の前には列ができ、限定キャップはプレミアが付くほどの人気なんだ。ファッションリーダー・井野っちが着始めて火が付いたって話も有名。」との文章が掲載されており、「BOYS RUSH」2000年(平成12年)4月号(甲128)には、「インディアンモトサイクルをたまには違う気分で着たい」との見出しの下、「インディアンモトサイクル、今、すげー人気だよな。でも、みーんな同じような着方してないか?」との文章とともに請求人の衣類の広告写真が掲載されている。
即ち、平成12年には、「インディアンモトサイクル」、「Indian Motocycle」は請求人の略称として、また、商標として、広く知られるに至っていたのである。
(オ)「Indianロゴ」、「Indian/Motocycle商標」等に関する請求人のライセンス先及びライセンス商品は、平成12年10月現在、三竹産業(皮革製品)、元林(ライター等)、兼松日産農林(マッチ)、プランニングジャパン(カット&ソー商品)、福井めがね工業(眼鏡)、丸石自転車(自転車)、ライフギアコーポレーション(鞄類)及びオーエイチプラン(ライダー用皮革製品)の合計8社に上った(甲201)。また、請求人は、「Indianロゴ」や「Indian/Motocycle商標」等を付したカット&ソー、ニット類、デニム製品、バッグ類、ジュエリー及びアクセサリー類、皮革製品、帽子等の各商品を自ら製造又は輸入して販売し、平成12年9月には、前記渋谷の1号店に続き、直営店の2号店を福岡市内にオープンした。
(カ)2001年(平成13年)1月から2004年(平成16年)1月にかけて、「BOYS RUSH」、「Lightning」、「smart」、「Free&Easy」、「BORN’BiKERS」をはじめとする10種類前後の若者向けカジュアルファッション雑誌、及び、「Kyushu walker」、「シティ情報Fukuoka」等の地方誌において、毎月のように、「Indianロゴ」や「Indian/Motocycle商標」等を付したジャケット、ブルゾン、デニムパンツ、スニーカー、眼鏡、アクセサリー及びライター等に関する請求人等の広告宣伝及び紹介記事が掲載された(甲146、149ないし196、268ないし339)。
上記のうち、例えば「RIDERS CLUB」2000年(平成12年)12月号(甲145)には、「ハーレーを凌いだビッグブランド」との小見出しとともに、背中に「Indianロゴ」等を付した黒革のライダージャンパーの写真が掲載されている。また、「smart」2002年(平成14年)5/13&5/27号(甲189)には、「Indianロゴ」を掲げ、「インディアン、春の新作紹介。」との見出しの下に、春物のTシャツ、スニーカー、バッグ等の請求人の商品が写真とともに紹介されているが、そこには、「『インディアン』って聞くと、あのネイティヴアメリカンの濃ゆ?いスタイルを思い描きがち。けれど、ここのスタイルはちと違う。」との記載がある。これは、「Indian」ブランドが、若者向けカジュアルブランドファッションの中でも、いわゆるネイティブ系のブランドとして一般的なものであることを前提にした記載である。その後も、引き続き、若者向けカジュアルファッション雑誌に毎号のように、「Indianロゴ」等を付した請求人の商品及び請求人の広告宣伝及び紹介記事が掲載されている(甲360ないし379)。
(キ)この間、請求人は、平成13年7月ころには、直営店の3号店である久留米店を開店し、平成14年9月14日には、4号店である神戸店を開店した。また、平成16年9月には、仙台店を開店した(甲375、377)。請求人が直接取り引きする小売店は、平成14年7月ころ現在で、全国100店舗近くに及び(甲197)、請求人のライセンシーである前記プランニングジャパンの取引先小売店は全国で150店舗近く(甲198)(尚、甲355参照)、同じく請求人のライセンシーである前記オーエイチプランの取引先小売店は全国で70店舗以上に及ぶ(甲199)(尚、甲355、356、357参照)。
(ク)「Indianロゴ」等を付した商品や請求人が広告宣伝紹介された上記媒体は「Indian」ブランドの需要者に影響力のある告知媒体である。
このことは、請求人が一貫してかかる媒体を告知媒体としていること、被請求人が平成7年から「インディアンモーターサイクル」と同一性の範囲内にない「Indianロゴ」やこれを含む商標を用いて「Indianロゴ」等の「Indian商標」の周知性に只乗りした便乗商法を開始したときに、被請求人自身かかる媒体に請求人の便乗商品の告知をしたことからも明らかである。当然の事ながら、事業者は告知価値の無い又は低い媒体に告知したりしないのである。また、「Indianロゴ」等を付した商品(ヴィンテージバイカー系のアメリカンカジュアル)の需要者はファッションに敏感であり、かかる需要者の間では、前頁買い切ったような「純広」は「ダサ」く、広告価値が低い。逆に、コーディネートの紹介として、小さな告知に小さく商標が掲げられ、「ジャケット/インディアンモトサイクル」等と記載された告知の方が広告価値が高いのである。関連需要者はかかる告知に価値を認め、それこそ「目を皿にして」記事に目を通すのである。このことは、被請求人も平成7年より只乗り便乗商品の販売を開始した際に、同商品の告知の方法として、上記のような手法によったことからも明らかである。事業者は広告価値の無い或いは低い告知方法は採らない。
(ケ)以上述べた通り、本件商標の出願の前である平成9年始めはもとより、本件商標の登録の前である平成16年2月には、若年男性向けのいわゆるアメリカンカジュアル系のブランドファッション市場において、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等は請求人の商標として需要者の間の広く認識され、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」は請求人の略称として、需要者の間に広く認識されていた。他方、被請求人は、「インディアンモーターサイクル」と同一性のない「Indianロゴ」や「Indianロゴ」を含む商標を使用してきた。
ウ 本件商標の登録後も被請求人は本件商標と同一性の範囲内にない「Indianロゴ」や「Indian Motocycle」等を使用している。
(ア)上述の通り、被請求人は、本件商標の登録当時はもとより、本件商標の出願当時、既に「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」、「『ヘッドドレスロゴ』/Motocycle」等の「Indian商標」が市場で広く認識されていることを知っていた。また、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」が請求人の略称として市場で広く認識されていることを知っていた。
(イ)被請求人が、平成7年以降、「Indianロゴ」や「Indianロゴ」を含む商標を使用して、Tシャツ、革製ジャケット、革製シャツ等を市場に投入し、市場を混乱させ、請求人の企業努力の成果を収奪し、請求人の業務を妨害して来たことは上述した通りである。被請求人のかかる行為により市場が攪乱され、需要者の間に混乱が生じさせられ、請求人やライセンシーの業務が妨害されたことは、云う迄もない。
(ウ)被請求人は、平成16年5月11日、「被服」を指定商品として、「Indian」を商標登録出願した(甲386)。かかる出願は、まっとうな事業者であれば決してしようとしない類の出願である。
(エ)更に、被請求人は、平成17年5月30日、業界紙である繊研新聞に甲第380号証の広告を掲載し、被請求人が本件商標を含む商標の商標権者であることを広告した。「Indian」ブランドの中核となる商標は「Indianロゴ」である。被請求人は、「Indianロゴ」を使用したシャツやジャケット等の商品の売り込みを企図していた。然しながら、日本市場は、請求人が「Indianロゴ」及びその他の「Indian商標」の正当な出所であると認識しているので、まっとうな小売店、問屋はこれらを取扱おうとしなかった。これは、請求人が、その取引者より得た確かな情報である。かかる広告は、被請求人が「Indianロゴ」を使用した便乗商品を販売するための布石としてなしたものであることは明白である。この広告が、小売店や問屋を狙ったものであることは、広告媒体が繊研新聞という業界紙であることから明白である。
(オ)そして、かかる広告をした後、被請求人は、「Indianロゴ」に類似した筆記体の「Indian」(以下、「類似Indian」という。)及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標を襟の織ネームに付したシャツの製造を開始した(甲381、382)。この「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標は、請求人の長年の使用に係る周知の「Indianロゴ」よりなる商標と類似するものである。加えて、被請求人は、タグに、「類似Indian」を大書して使用した(甲381)。
(カ)その上で、被請求人は、バイヤー向の2005年秋・冬物の展示会のオーダーシート(甲383)に、ブランド名として、「Sugar Cane」や「Buzz R1ckson’s」等と並べて「Indian Motorcycle」と表示し、「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標を襟の織ネームに付したシャツの注文を取った。このオーダーシートには、「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標を表示していない。これらのシャツの胸や背や袖には、「Indian Motorcycle」を含むデザインが大書して付してあり、あたかも襟の織ネームの商標も「Indian Motorcycle」であるかのようによそおっている。
即ち、被請求人は、「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」を商標として襟の織ネームに付して使用していながら、あたかも「Indian Motorcycle」を商標として使用しているかの如くよそおって、その製造にかかる上記シャツの発注を受け、業者に販売しているのである。
(キ)そして、被請求人は、かかる商品を、「Indianロゴ」を始めとする「Indian」ブランドの商品の需要者を対象とした雑誌「Men’s Brand」に広告した(甲384)。(「Indian」ブランドは、アメリカンカジュアルのビンテージバイカー系ブランドであり、その需要者はファッションに関心をもつ若年男性層である(甲254)。)そして、この広告において、被請求人は「Indianロゴ」を使用した(49頁左下、50、52、54頁右下)。
加うるに、被請求人は、「Indianロゴ」を大書したエンブレムを広告に掲載した(49頁右下)。この「Indianロゴ」の使用様態は、「Indianロゴ」を大書し、「MOTORCYCLE」を著しく小書するものであり、かつ、赤い地に、「Indianロゴ」は白抜きの黒文字で大書し、「MOTORCYCLE」は単に黒文字で著しく小書して表示するものであり、看者の目を惹くのは「Indianロゴ」であり、「MOTORCYCLE」は看者の目を惹かず、実質的に「Indianロゴ」を単体で使用するのに外ならない。
更に、被請求人は、被請求人もその商品も1901年創立のIndlan Motocycle Companyの前身のHendee Mamufactuaring Companyと全く無関係であるにも関わらず、これを関連があるかの如き欺瞞的な広告をしているのである(甲第384号証の広告中のエンブレムには「Indianロゴ」が大書され、「Hendee Mamufac tuaring Company」が併記してある。)
(ク)その上、被請求人は、そのウェブサイトで、トップページに、「SUGAR CANE」や「BUZZ RICKSON’S」などのブランド名と並べて「INDIAN MOTOCYCLE」(注.「INDIAN MOTORCYCLE」ではない)を配し、「INDIAN MOTOCYCLE」のページに、「2005 INDIAN MOTOCYCLE COLLECTION」の見出しの下に、かかる商品の写真を配し、宣伝している(甲385)。
即ち、被請求人は、「INDIAN MOTOCYCLE」を商標として、自らのブランド名として、使用しているのである。
(ケ)「Indianブランド」の中核は「Indianロゴ」である。そして、「Indianロゴ」はもとより、その他の「Indian商標」も、請求人が、営々としたかつ正当な企業努力を重ねて周知ならしめたものである。
また、「INDIAN MOTOCYCLE」は、請求人の略称であるが、その地道な持続的な企業努力の積重ねにより、周知の「Indlan」ブランドの出所として既に周知である。被請求人のかかる「Indianロゴ」及びこれに類似した「類似Indian」並びに「INDIAN MOTOCYCLE」(これらは本件商標と同一性の範囲内にない)の使用により、需要者は、被請求人が請求人のライセンシーであるとの誤認をし、被請求人のかかる便乗商品を購入するおそれがある。
即ち、被請求人は、請求人の企業努力の成果を収奪し、請求人の業務を妨害するため、「Indianロゴ」に類似する「類似Indian」及び「右向きのインディアン図形」からなる商標をシャツに使用し、その広告に「Indianロゴ」を使用しているのであり、ウェブサイトで「INDIAN MOTOCYCLE」を使用しているのである。被請求人の狙いが、「Indianブランド」の中核である「Indianロゴ」の使用であることは明白であり、今回の商品の販売及び広告並びにウェブサイトの広告はその下準備であることは明白である。現に、被請求人は、既に活字体の「Indian」を第25類に出願しているのである(甲386)。このような出願は、まっとうな企業であればおよそ考えもしない類の行為である。
(コ)シャツに付した「Indianロゴ」に類似した筆記体の「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標、シャツのタグに付した「類似Indian」、広告に使用した「Indianロゴ」及び「左向きのインディアンの図形」からなる商標、並びに、広告中のエンブレムに使用した「Indianロゴ」は、いずれも、本件商標はもとより、その他の被請求人の「Indian」関連の商標と同一性の範囲外にある。
また、被請求人がそのウェブサイトの広告で使用した、「INDIAN MOTOCYCLE」も本件商標はもとより、その他の被請求人の「Indian」関連商標と同一性の範囲外にある。
(サ)本件商標を始め「Indianロゴ」を含む商標を出願し登録しながら、これを商品に使用せず、これと同一性のない商標(「類似/Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標を商品の襟の織ネーム及びタグに使用し、「Indianロゴ」+「左向きのインディアンの図形」からなる商標及び「『Indianロゴ』を大書したエンブレム」を広告に使用)を使用するという行為は、被請求人が片仮名の「インディアンモーターサイクル」を出願し登録を得ながら、これを一切商品に使用せず、これと同一性のない「Indianロゴ」、「『Indianロゴ』/Motocycle(書体は「Indianロゴ」と同じ)」(注.「Motorcycle」ではない)、「Indianロゴ/Motorcycle(書体は「Indianロゴ」と同じ)」などを商品に使用し、しかも、かかる商標を使用した商品を、請求人の企業努力により「Indianロゴ」等の「Indian商標」が衣類について市場に浸透し、平成6年になってマルヨシにバッグについてライセンスするまでになった直後である平成7年に、シャツ等を売出し、また、平成7年に請求人が「Indianロゴ」等の「Indian商標」を皮革製ジャケット及びパンツについて西澤社にライセンスし、西澤社が広告宣伝をして、「Indianロゴ」等の「Indian商標」を皮革製品について請求人を出所とする商標として市場に浸透させたその翌年、西澤社が前年の投資の成果を回収しようとした矢先である平成8年に、皮革製ジャケットやパンツを売出し、他方、平成6年に本件商標等を出願し、平成9年に「『Indianロゴ』/Motorcycle(書体は「Indianロゴ」に同じ)」を要部とする商標2件を出願したのと同じ手口である。
(シ)被請求人のかかる行為は、展示会ではブランド名を「Indian Motorcycle」にしておきバイヤーからのオーダーを取り付け、実際に市場に出す商品については、ブランドを標示する襟の織ネーム及びタグに「Indianロゴ」に類似した単体の「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標を使用し、また、需要者向の雑誌広告には、「Indianロゴ」及び「左向きのインディアンの図形」からなる商標を使用し、また、雑誌広告中のエンブレムには「Indianロゴ」を使用し、更に、需要者向けのウェブサイトの広告には、「INDIAN MOTOCYCLE」をブランド名として表示し、あたかも、正規に請求人から「Indianロゴ」等の「Indian商標」の使用をライセンスされた者であるかの如き外観を創りだし、「類似Indian」を襟の織ネームやタグに使用したシャツを販売するものであり、周知の「Indian」ブランドの中核である「Indianロゴ」を広告に使用し、かつ、周知の請求人の名称である「INDIAN MOTOCYCLE」を使用して、請求人の13年以上にわたる地道な営々とした企業努力の成果を収奪する悪質な行為であり、被請求人には、健全な商標秩序を尊重し正当に商標を使用する、という意思が無いことを証明するものである。
(ス)尚、「Indianロゴ」が「Indian」ブランドの中核として如何に周知であるかは、「Old G1ory/『Indianロゴ』」という「Indianロゴ」の周知性に便乗した商品が輸入販売されていることからも明らかである(甲387、388)。
(セ)中核である「Indianロゴ」を始めとする「Indian商標」は、請求人の平成5年よりの継続した着実な真摯な企業努力の積重により、既に長期にわたり需要者の間で周知である。このことは、三菱商事社の100%子会社であるライフギアコーポレーション社やヤング産業やオーエイチプラン社やプラニングジャパン社を始め、各業界の多くの企業が、請求人より「Indian商標」のライセンスを受け、ロイヤルティーを支払って、商品を製造販売していることから明白である(甲355ないし357参照)。
ちなみに、請求人は、平成8年から直営ブティックの開設を始め、現在直営ブティックは、東京2店、仙台1店、神戸1店、久留米1店、福岡1店である。また、直接の卸先は50店舗にのぼっている。
この13年にわたる請求人の企業努力の成果により、「Indianロゴ」を中核とする「Indian商標」が周知商標として確立し、その結果としてライセンシーが如何に確立しているかは、眼鏡や自転車などの二次的商品についてもライセンシーを得ていることからも明かである。これらの商品はブランドビジネスの中核である衣類についてブランドが確立しない限り、ライセンスを受けようとする者は存しない。このことは、また、ライフギアコーポレーションやヤング産業のようなそれぞれの業界で権威のある会社もライセンシーとなっていることからも明かである。このような企業は、商いが大きいので、広範囲に卸売が出来る規模のブランドでない限り、ライセンスを取得することはしないのである。「Indianロゴ」を中核とする「Indian商標」が長く周知であることは、平成6年に請求人がシャツ等の衣類のアクセサリーであるバッグについてマルヨシにライセンスしたこと(甲29ないし33)、平成6年に被請求人が本件商標等の出願をしたこと、平成7年に皮革製ジャケット及びパンツについて西澤社にライセンスしたこと(甲48ないし57)、並びに、平成7年に、すかさず、被請求人が「インディアンモーターサイクル」と同一性の無い「Indianロゴ」等を使用したシャツ等の販売を開始したこと(甲34ないし46)、平成8年に、「Indianロゴ」等を使用した皮革製ジャケットやバッグの販売を開始し(甲76ないし79)、仮処分決定を受けた(甲59)後も、「Indianロゴ」やこれに類似した書体の「Indian」等を使用したシャツ等を販売した(甲65ないし75)ことからも明白である。
(ソ)被請求人のかかる商法が健全な商標秩序を害するものであり、全く反社会的なものであることは、明白である。被請求人の行為は過去13年以上にわたり、請求人及びライセンシー各社が真摯な企業努力により築き上げた「Indian」ブランドに土足で踏み込むようなものであり、かかる商法、かかる行為は当然の事ながら禁圧しなければならない。本来、被請求人は、請求人より周知の「Indianロゴ」等の「Indian商標」のライセンスを受け、及び、周知の請求人の名称である「INDIAN MOTOCYCLE」のライセンスを受け、ロイヤルティーを支払ってこれらを使用すべきものである。それが、ビジネスの常道であり、ライフギアコーポレーションを始めとする多くの名の通った企業が行っていることであり、まっとうな企業であれば必らずすることである。被請求人のなしていることは、全くかかるビジネスの常道を踏み外しているものである。加うるに、被請求人は、アメリカンカジュアルのブランドである「Sugar Cane」やミリタリーブランドである「Buzz Rickson’s」等を有しており、「Indian」ブランドは単なる便乗であり、被請求人にとっては、「Indian」ブランドが確立しているため、便乗は「おいしいもの」である。
(タ)そして、本件商標は、「インディアンモーターサイクル」と同様、被請求人において、かかる便乗商法を継続するための手段として、即ち、自らは本件商標を使用せず、これと同一性のない「Indianロゴ」や「INDIAN MOTOCYCLE」等を使用し、かかる使用に対し請求人よりクレームを受けるや、かかる商標登録をもって逆に請求人に対し訴を提起し、収奪妨害行為を継続するために、商標の先願主義を悪用して出願し登録を得たものである。このことは、上述の通り、上述の平成7年以降の被請求人の行為、平成16年4月の「Indian」の出願、及び、平成17年5月以降の被請求人の行為、即ち、商品の襟の織ネーム及びタグには「類似Indian」及び「右向きのインディアンの図形」からなる商標を使用していること、雑誌広告には「Indianロゴ」及び「左向きのインディアンの図形」からなる商標を使用し、広告中のエンブレムには「Indianロゴ」を使用していること、から明らかである。尚、被請求人の「インディアンモーターサイクル」商標(登録第2634277号商標)に基づく請求人らに対する請求は、権利の濫用として、東京地裁及び東京高裁で排斥されている(甲80、甲263)。ちなみに、被請求人は上告受理申立をしたが、これを取下げた(甲264、265)。他方、請求人は「Indianブランド」のみを扱っている。被請求人の衣類についての便乗により請求人の築き上げた「Indianブランド」に傷がつくことは、請求人にとって死活問題である。
(チ)被請求人のかかる便乗商法は禁圧すべきものであり、その手段である本件商標は、健全な商標秩序を害するものであり、その登録を無効とすべきものである。
(3)よって、本件商標は、請求人の「Indian」商標を用いたブランドビジネスを妨害する目的で出願し、登録を得たものであり、法4条1項7号に該当するから、その登録を無効とすべきものである。
3 無効理由2(法4条1項10号該当性)
(1)ア 本件商標は、二重の円の図形の中に「Indianロゴ」を配し、「Indianロゴ」の下に「Indianロゴ」と同書同大の「Motorcycle」を上下2段に配してなるものである。
イ 上述の通り、本件商標の出願時はもとより、本件商標の登録時においても「Indianロゴ」は請求人がTシャツ、ジャケット、皮革製ジャケット、皮革製パンツ等に使用する商標として、需要者の間に周知であった。
ウ 本件商標は、請求人の上記の周知商標「Indianロゴ」と類似する。
エ 本件商標の指定商品は、洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着、和服、エプロン、えり巻き、靴下、ショール、スカーフ、手袋、ネクタイ、ネッカチーフ、マフラーであり、請求人が「Indianロゴ」及び「ヘッドドレスロゴ」並びに「Indian Motocycle」を使用するTシャツ、ジャケット、皮革製ジャケット、皮革製パンツ等に類似する。
(2)よって、本件商標は、法4条1項10号に該当するから、その登録を無効とすべきものである。
4 無効理由3(法4条1項15号該当性)
(1)ア 本件商標は、二重の円の図形の中に「Indianロゴ」を配し、「Indianロゴ」の下に、「Indianロゴ」と同書同大の「Motorcycle」を上下2段に配してなるものである。
イ 「Indianロゴ」は、本件商標の出願当時、即ち、平成6年9月当時、仮に周知でなかったとしても、少なくとも、請求人がTシャツ、帽子などに使用する商標として需要者の間に広く浸透していた、また、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」は、請求人の略称として、需要者の間に広く浸透していた。本件商標の登録時には、「1ndianロゴ」は、請求人が衣類等に使用する商標として需要者の間で広く認識されており、「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」は、請求人の略称として、需要者の間に広く認識されていた。
ウ 本件商標は、「Indianロゴ」に類似し、「Indian Motocycle」に類似する。
エ したがって、本件商標の出願時においても本件商標の登録時においても、本件商標をその指定商品に使用するときは、かかる商品が被請求人の業務に係る商品であるとの誤認を生じさせるおそれがあった。
(2)よって、本件商標は、法4条1項15号に該当するから、その登録を無効とすべきものである。
5 弁駁書の要点
被請求人の答弁書中の主張はいずれも理由がない。本件商標は、法4条1項7号及び4条1項10号又は4条1項15号に該当するから、その登録は無効とすべきものである。
(1)法4条1項7号について
被請求人の主張は、法解釈の面でも事実の面でも、請求人の主張立証に対する反論を構成しうるものではない。
本件商標が請求人の「Indian」商標を用いたブランドビジネスを妨害する目的で登録出願し、登録を得たものであることは、請求人が審判請求書において詳細に主張し立証したところである。
尚、念のため付言するに、かかる妨害目的というような主観的な要件は、間接事実(登録出願の前、登録出願の後登録の前、登録の後の被請求人の行為とその行為の背景となる事実や被請求人の行為、等)により認定しなければならない。自らかかる妨害目的で商標の登録出願をし登録を得たと自白する者はいないからである。そして、かかる間接事実に照らせば、被請求人がかかる妨害目的で本件商標の登録出願をし、登録を得たものであることは、既述の通り、明白である。
よって、本件商標は法4条1項7号に該当するものである。
(2)法4条1項10号について
本件商標は「Indianロゴ」に類似する。本件商標は、ありふれた三角形の図形を多数配して縁取りした楕円形の図形の中に「Indianロゴ」及び同一書体同大の「Motorcycle」を上下2段に大書して配したものであるが、同縁取りをした楕円形の図形はありふれたものであり、識別力を有する部分ではない。
そして、「Indianロゴ」及び「Motorcycle」は上下2段に配してあるのであり、「Indianロゴ」と「Motorcycle」とは構成上可分であり、「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している」のではない。
したがって、本件商標において「Indianロゴ」は要部である。
本件商標における「Indianロゴ」は、「Indian」商標の中核をなす請求人の周知の商標「Indianロゴ」と外観、称呼及び観念において同一である。
したがって、本件商標は、請求人の周知の商標「Indianロゴ」と類似する
以上のとおり、本件商標は、法4条1項10号に該当するものである。
(3)法4条1項15号について
本件商標は、「Indianロゴ」の下に同大の「Motorcycle(「Indianロゴ」と同じ書体)」を上下2段に配したものである。「Motorcycle」は「Motocycle」と称呼において類似する。即ち、本件商標は、請求人の略称である「Indian Motocycle」、「インディアンモトサイクル」と類似する。
もとより、本件商標は、「Indianロゴ」と類似する。
したがって、本件商標をその指定商品である衣類に使用すれば、本件商標を使用した商品に接した需要者は、これを請求人を出所とする商品と誤認するおそれが極めて高いものである。
本件商標の出願当時、本件商標をTシャツ等に使用するときは、需要者の間に出所について混同を生ずるおそれがあったことは明らかである。(尚、登録時にかかる出所の混同のおそれがあったことは言うまでもない。)
よって、本件商標は、仮に法4条1項10号に該当しないとしても、法4条1項15号に該当するものである。
6 平成19年7月2日付け提出の上申書
請求人が「1ndian」ブランドビジネスを正当に展開するものであり、「Indian」商標の正当な出所であることは、請求人の取扱い商品に関連する取引者、需要者に止まらず、世間一般の広く認識するところである。本件商標は、被請求人において請求人の業務を妨害する目的で登録出願をし、登録を得たものである。
(1)請求人が日本において「Indian」商標の正当な出所であり、「Indian」ブランドビジネスを正当に行う会社であると世間一般に広く認識されていることは、OLCライツ・エンタテインメント社(「ディズニーランド」のオリエンタルランド社の子会社)(「OLC社」)提供、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社(以下、「ソニー・ピクチャーズ社」という。)配給の平成19年正月第2弾の映画「世界最速のインディアン」の封切に際して、OLC社のタイアップ申し入れにより、請求人が同映画にタイアップしていることからも明らかである。(同映画の「インディアン」とは、1901年設立のIndian Motocycle Company(=旧インディアン社)が製造した「Indian」のオートバイのことであり、同映画は「インディアン」のオートバイで時速360キロの世界最高記録に挑戦し実現した63歳の男をテーマにした映画である。)
(2)即ち、OLC社は、請求人や被請求人の業務内容や「Indian」ブランドに関するビジネスの内容を調査した上で、請求人を正当と認めて、タイアップの申し入れをしたのである。もとより、ソニー・ピクチャーズ社も承知した上でのことである。請求人は日本に「Indian」ブランドを正当に導入し、企業努力を傾注して市場を開拓し、「Indian」ブランドを日本市場に浸透させたものであり、その営々とした企業努力とその成果とをOLC社もソニー・ピクチャーズ社も正当に評価したのである。即ち、請求人は、請求人の扱っている商品の業界以外においても、正当な「Indian」商標の出所として認識されているのである。
(3)かかるタイアップに対して、被請求人の行ったことは、タイアップ商品について、平成6年9月に出願し登録した商標(登録第4751422号、登録第4751423号)(甲257、甲258)をもってクレームをつけることであったのである。
かかる商標は、平成6年請求人がその輸入販売をした商品に使用して市場に浸透させた商標である、「ヘッドドレスロゴ」の下に「MOTOCYCLE」を配した商標(甲12ないし甲18、甲32)、と酷似するものであり、あるいは、平成6年請求人がその輸入販売をした商品に使用して市場に浸透させた商標である「Indianロゴ」の下に「MOTOCYCLE」を配した商標(甲12ないし甲18、甲32)と平成6年ライセンシーのマルヨシがバッグに使用した「左向きのインディアンの図形」(甲29ないし甲33)とを組み合わせたものである(以上、甲391ないし404)。
(4)この被請求人の行為からも、被請求人の上記登録第4751422号及び4751423号商標が被請求人において請求人の業務を妨害する目的で登録出願をし、登録を得たものであることが明白である。
(5)と同時に、本件商標は、「Indianロゴ」と、これと同一書体の「Motorcycle」とを上下2段に配した「Indian/Motorcycle」を要部とするものであり、かつ、「Indianロゴ」が請求人の企業努力により請求人の商標として尚一層周知になり、「Indian Motocycle」が請求人の略称としてまた商標として尚一層周知になった平成9年3月31日になって出願されたものであり、しかも、平成8年12月16日に仮処分決定(甲59)が出された直ぐ後に出願したものであり、本件商標もまた、被請求人において請求人の業務を妨害する目的で登録出願をし、登録を得たものであることが明白である。
7 平成19年7月31日付け提出の上申書
(1)本件商標は、被請求人において他人の業務を妨害する目的で登録出願をし、登録を得た商標である。
「Indian」ブランドの中核は、「Indianロゴ」である。その独特の書体と「インディアン」という短音節の爽やかな語感とが相侯って、「Indian商標」の中で最も強い顧客吸引力を有するのである。これは、インディアン・モトサイクル・カンパニー・インク(「新インディアン社」)が、「Indian」ブランドをマーチャンダイジングのブランドとして1991年に起ち上げたときから、不変である。であるからこそ、被請求人は、片仮名の「インディアンモーターサイクル」を登録出願し、登録を得ながら、これを商品に使用しなかったのである。であるからこそ、被請求人は、平成6年請求人が「 Indianロゴ」等を使用した衣類、バッグ等を日本市場に導入し衣類やバッグや靴等に使用する商標として市場に浸透させるや、平成6年9月、「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」よりなる商標及び「左向きのインディアンの図形/『「 Indianロゴ」』/MOTOCYCLE」よりなる商標を登録出願し、「Indian」ブランドが更に市場に浸透するや、仮処分決定(甲59)を受けた直後の平成9年1月、「Indian Motorcycle」を要部とする商標5件登録出願し、平成9年3月「『 Indianロゴ』/Motorcycle」を要部とする本件登録商標等2件を登録出願し、更に、平成16年5月に「Indian」を登録出願したのである(甲256)。
そして、今、被請求人は、「Indianロゴ」に酷似した書体の標章を単体として(「Indian/Motorcycle」、「Indian Motorcycle」などのように他の文字と組み合わせることなく)、インディアンの図形などと組み合わせて、襟ネームに、商標として使用することを開始したのである(甲406、甲408、甲410、甲411)。被請求人は、これまでは、 襟ネームには、「Indianロゴ/Motorcycle」などを使用していたのである。
被請求人の目的は、最初の「インディアンモーターサイクル」の登録出願時より、請求人が「Indian」ブランドを日本市場に導入し、企業努力を傾注して市場に浸透させるや「『ヘッドドレスロゴ』/MOTOCYCLE」等2件(平成6年9月)「Indian Motorcycle」等5件(平成9年1月)及び「『Indianロゴ』/Motocycle」2件(平成9年3月)、「Indian」(平成16年5月)等を次々と登録出願したのである。このことは、請求人において、既に明らかにしたところである。
そして、「Indian」ブランドの中核である「Indianロゴ」と同一又は酷似した「Indian」を商標として使用すれば、需要者をして請求人の展開する真正の「Indian」ブランドとより効率的に混同させることが出来、請求人の企業努力の成果への便乗をより効率的に行なうことができる。
よって、被請求人は、2007年7月に、「Indianロゴ」を大書し、その下に「MOTORCYCLE」を小書して配した標章を付したシャツを掲載し、「Indianブランド」の総称である「インディアン」、「INDIAN」を使用し、被請求人と何の関係も無いにも係わらず1901年設立のインディアン・モトサイクル・カンパニー(旧インディアン社)のオートバイに言及した、パブリシティー記事を、Lightning誌に掲載した(甲405)。これにより、被請求人を請求人のライセンシーと誤認し、被請求人の商品を請求人の正規ライセンシーの商品と誤認する需要者が増えてきている(甲415)。即ち、被請求人は、より効率的に、「Indian商標」の周知性への便乗を成し遂げているのである。
そして、これと同時に、「Indianロゴ」に酷似した態様の「Indian」を単体で使用した標章を襟ネーム等に付したシャツの製造販売を開始した(甲406ないし甲412)。これにより、需要者は、被請求人を請求人のライセンシーと誤認し、被請求人の商品を請求人から正規にライセンスを受けた商品であると混同している(甲415)。即ち、被請求人は、より効率的に、「Indian商標」の周知性への便乗を成し遂げているのである。
即ち、これらの事実は、被請求人において、「Indian」ブランドのマーチャンダイジングビジネスが日本市場で請求人の企業努力により成功しているのを見て、請求人の企業努力の成果を収奪し、請求人からクレームを受けるや本件商標に対する商標権をもってこれに対抗し、請求人の「Indian」ブランドビジネスを妨害することを目的として、本件商標を登録出願し、登録を得たものであることを如実に示す一例である。
念のため繰り返すが、かかる「他人の業務を妨害する目的」は、間接事実により認定する以外にないものであり(かかる「目的」を自認するものは居ないから、これは当然である)、かかる間接事実には、本件商標の態様、登録出願時及びその前後の被請求人の行為並びにその行為のなされた状況も当然含まれるのである。
即ち、本件商標が、請求人の業務を妨害する目的で登録出願をし登録を得たものであることは、上述のことからも明らかであるのである。
(2)「Indian」ブランドは、トータルブランドとして既に周知である。
請求人の「Indianロゴ」 を中核とする「Indian」ブランドが、トータルブランドとして周知であることは、2007年7月18日から20日にかけて開催されたIFF(INTERNATIONAL FASHION FAIR)に出展され、繊研新聞で他のブランドとともに紹介されている(甲413、甲414)ことからも明らかである。請求人の平成6年の「Indian」ブランドの日本市場への導入以来の営々として真塾な企業努力の継続した積み重ねが如何に大変なものであったか、また如何に成果の大きなものであったか、何人もこれを正しく認識すべきものであり、被請求人において襟を正すべきものである。
8 結論
よって、本件商標の登録は法46条1項1号により、無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第62号証を提出した。
本件商標は、法4条1項7号、10号及び15号の何れにも該当するものではなく、請求人が主張するような無効理由はない。
1 事実関係について
請求人は、多くの審判決で尽く否定されているにも拘わらず、その主張全般にわたって事実に反する主張を相変わらず繰り返す。このような請求人の主張が誤った心証形成を意図したものであることは明らかで、被請求人としては反論の必要性さえ疑問のあるところであるが、このような請求人の欺瞞的主張によって、誤った査定や審決がなされた過去の経緯もあるので、前提となる事実関係について先ず明らかにしておく。
なお、以下に記する事実関係については、関連する審判事件での審判決や不正競争行為差止等請求控訴事件(平成16年(ネ)第745号)での判決によって既に認定されているところである(乙1?8)。
(1)被請求人(東洋)について
被請求人は、昭和40年に設立された会社であるが、前身となる「テーラー東洋」及び「港商社」の時代から数えると、60年近くの歴史を持つ老舗アパレルメーカーで、アメリカンカジュアル衣料の専門業者としては日本最有力である。また、被請求人は、多くの著名ブランド商品を市場に提供しており、「SUGAR CANE」「SUN SURF」「BUZZ RICKSON’S」「CHESWICK」「JOHN SEVERSON」「STYLE EYES」等は、アメリカンカジュアル衣料の代名詞的なブランドとなっている。更に、被請求人は、ジーンズに代表される日本におけるアメリカンカジュアル衣料の歴史においてもオピニオンリーダーとしての役割を果たしてきており、「スーベニアジャケット」の通称「スカジャン」が、被請求人の前身「テーラー東洋」が横須賀で販売していたジャンパーを語源としている程で、そして今や、ジーンズ、ジャケット、アロハシャツ等のアメリカンカジュアル衣料の全般について、多くの取引者や需要者から高い信頼と支持を得、市場での地位は不動なものとなっている(乙25、26)。
(2)請求人(インディアンジャパン社)について
請求人は、平成5年6月3日に設立された会社で、定款の記載からすると、装身具から酒類及びオートバイに至るまで多種多様な商品の販売や、出版、広告代理、映像の企画・制作及び著作権の取得・譲渡・貸与等の業務を目的としている。そして、その主要業務は、他者に商標の使用を許諾することによって利益を得るブランドビジネスである。
(3)旧インディアン社について
旧インディアン社は、明治34年に創業された米国のオートバイメーカー「INDIAN MOTO(R)CYCLE CO.,INC.」で、およそ50年前の昭和28年に操業を停止しその後解散し、以来、関係者を含め如何なる事業活動も行っていない。そして、同社の過去の実績や同社が存続時に使用していた商標等については大凡請求人主張のとおりである。
請求人は、旧インディアン社の過去の実績や商標使用の事実を示す資料を請求人らと何らかの関係を有する者による実績や事実であるかのように証拠として提出し、あたかも、請求人と同社との間には、何らかの関係や継続性があるかのような主張を繰り返す。しかしながら、同社と請求人らとの間には、法的には勿論のこと経済的にも社会的にも一切関係がない。
(4)サンギインディアン社について
請求人らが実際に関係したのは、旧インディアン社やその関係者などではなく、米国人フィリップ エス ザンギ(「ザンギ」)が、1990年に設立した同名の米国法人(「ザンギインディアン社」)である。
ザンギインディアン社の社名、住所、社章は、いずれも消滅した旧インディアン社と同一であるが、両社の間には如何なる関係も継続性もない。ザンギインディアン社を設立したザンギという人物は、旧インディアン社及び同社商標に関連して国内外200人にも及ぶ人々から金員等を詐取したとして平成8年6月5日に逮捕され(乙15)、米国連邦裁判所により「投獄90ケ月、百万ドルを超える詐取金の返還支払を命ずる。」との判決を受け直ちに収監された人物である(乙16、20、21)。
ザンギインディアン社の実体は、起訴状(乙17)の記録からも明らかにされており、要するに、ザンギインディアン社と旧インディアン社とは全く関係のない別法人で、彼の犯罪行為の道具として利用するために意図的に旧インディアン社と同一の商号、同一の社章、同一の住所を採用し、あたかも、旧インディアン社との間に何等かの関係又は継続性があるかのように装ったにすぎない会社である。しかも、ザンギインディアン社は、投資家から金員等を詐取しただけで、オートバイの製造は勿論、企業本来の事業活動はおろかその準備行為すら一切せずに、設立後間もなく倒産しているのである(乙18、20)。
(5)カジヤ、サンライズ社、西澤社及びマルヨシについて
ザンギインディアン社の実体は前記のとおりであるが、同社より日本をテリトリーとする旧インディアン社の商標を登録し使用する権利を譲り受けたと主張する者がカジヤで(乙22)、カジヤより請求人商標A(登録第2710099号商標)を譲り受けたのが請求人で、請求人の親会社であり「インディアン商標」のマスター・ライセンシーと自称するのがサンライズ社、請求人より前記請求人商標A等の使用許諾を受けたのが西澤及びマルヨシである。
(6)「インディアン商標」について
ザンギとカジヤとの契約が有効であるか否かは当事者間の問題であるとしても、旧インディアン社が存続時使用していた商標について、日本ではもとより米国にあっても如何なる原権も有さないザンギやザンギインディアン社が、旧インディアン社が使用していた商標やこれを原型起源とする商標(「インディアン商標」)について、他者による採択や使用を制限することができるような権限を有さないことは論ずるまでもない。そうとすると、旧インディアン社と無関係であることについては、請求人も被請求人も(何人であろうと)同等であって、「インディアン商標」を被服等の商標として採択し使用することに関し、一方が正当な使用者で他方が不正な使用者であるとか、一方が他方の商標を冒用したとかといった関係になるものではなく、偶々、商標の採択動機やその原型起源が同じであったということにすぎないのである。請求人らが採択し使用する商標が、旧インディアン社のオートバイ商標とその態様が全く同一であることは認めるところであるが、これは請求人ら自らの創作によるものではなく、単に旧インディアン社が存続時に使用していたオートバイ商標をそのままデットコピーし自らの商標として採択したにすぎず、両標章の態様が同一であるからといって、請求人らとは全く関係のない旧インディアン社の過去の実績や名声を根拠に、請求人らに限って何か特別な権利や地位を有することにならないのはいうまでもないことである。
(7)両者(請求人・被請求人)商標の近似性について
両者が採択使用する商標の構成やロゴ書体が近似していることは、どちらか一方が他方を真似したものでも単なる偶然でもないことは前記した通りである。即ち、両者の商標はいずれも、旧インディアン社が存続時使用していた商標(乙27?29)を原型起源とするもので、同社のバイクイメージや1900年初期の時代イメージを種々商品に再現することを意図しての採択である。このような試みは、同社が消滅した4年後には既に行われており(乙30、31)、現在でも同様の商品を取り扱う者は各国に存在する。請求人も被請求人もその内の一業者にすぎず、これらの業者が採択使用する商標は、程度の差はあっても旧インディアン社の商標に依拠しているのであるから、その構成や書体が近似してしまうのは必然であって、請求人らのように、「自分達だけが『インディアン商標』を独占的に使用する権限を有する。」などと全く根拠のない主張をする者は外に誰一人としていない。我が国においても関連する多くの商標が古くより登録されているのである(乙32)。
(8)被請求人による「インディアン商標」採択の起源
被請求人は、平成2年の終わりころ、被請求人の評判を知った数百人からなる米国ヴィンテージバイクの愛好家団体より彼らのバイクジャケットを作るよう依頼され(乙24、33)、彼らの奨めでこのバイクジャケットを市販品化することとし、そしてまた、彼らの提案によりこのバイクジャケットの商標を「インディアンモーターサイクル」とすることとし、同商標を平成3年11月5日に出願し、平成6年3月31日に、登録第2634277号商標(「被請求人商標」)として登録を受けたことが被請求人による「インディアン商標」採択の始まりである。被請求人商標がカタカナ表記となっているのは、当初ロゴデザインが決まっていなかったことから、取り敢えず音表示で出願したことによるもので、このような出願手法は、先願主義を基調とする我が国の法制上一般的に採られている手法であって特に不自然なことではない。その後、本件商標を含め、ロゴデザインが決まったものに付いてはその都度出願してきたが、これら商標の登録(乙10)が出願から7年?10年近くの長期間を要したことも当事者間の問題を複雑にした要因と言わざるを得ない。
(9)その後の経緯
被請求人は、被請求人商標「インディアンモーターサイクル」が公告され登録されたことを踏まえ商品販売の具体的な企画に着手するとともに、商標「INDIAN MOTORCYCLE」についてのカナダ国商標権者「INDIAN MANUFACTURING LTD.」(「カナダインディアン社」)と業務提携し(乙19、23)、平成7年初期に商社(蝶理、フジエンタープライズ)を介して同社商品を輸入することから「インディアン商標」商品の販売を開始したものである(乙34、35)。
これら「インディアン商標」商品についての最初の雑誌広告は、平成7年6月25日発行の雑誌「ポパイ」による(乙36)。そして、被請求人が当初使用していた「インディアン商標」の全ては、カナダインディアン社から輸入した商品に元々付されていたもので、このことは同社の商品カタログ(乙37)と照合すれば容易に判明するところであって、請求人らが使用する「インディアン商標」に依拠してのものでは断じてない。
(10)関連する審判事件
「インディアン商標」に関しては、請求人被請求人間で権利の有効性やその帰属を争った多くの事件があるが、何れの事件においても、本審判事件での請求人の主張と同趣旨の主張は否定され又は採用されておらず、最終的に下記事件の全てにおいて請求人は敗訴している。
(ア)平成6年審判第13787号
請求人は、平成6年8月11日、被請求人商標(登録第2634277号商標)に対し、同商標は法4条1項7号、8号、15号に該当する商標であることを理由に登録無効審判を請求した。
これについて特許庁は、平成9年9月30日、請求人の主張を否定し、請求不成立の審決をし(乙1)、同審決はそのまま確定した。
(イ)平成10年審判第30518号
請求人は、平成10年5月26日、被請求人商標に対し、同商標は継続して3年以上我が国において使用されていないとし、不使用を理由とする登録取消審判を請求した。
これについて特許庁は、平成11年10月13日、被請求人が使用する商標「Indian Motorcyc1e」及び「INDIAN MOTORCYCLE」は、同商標の使用と認められるとして請求不成立の審決をした。同審決は審決取消請求事件(平成11年(行ケ)第443号)判決で維持され(乙2)、同判決は、最高裁の決定により確定した。
(ウ)取消2000-31423号
請求人は、平成12年11月29日、被請求人による「インディアン商標」の使用は被請求人商標の不正使用に当たるとし、不正使用を理由とする同商標の登録取消審判を請求した。
これについて特許庁は、一旦は請求人の主張を認めて同商標の登録を取り消す旨の審決をしたが(甲251)、同審決は審決取消請求事件(平成15年(行ケ)第181号)判決で取り消され(乙3)、同判決は、最高裁の決定によって確定し、被請求人商標の登録は維持された。
(エ)無効2003-35031
請求人は、平成15年1月30日、被請求人商標(登録第2634277号商標)に対し、再び、同商標は法4条1項7号に違反して登録された商標であることを理由に登録無効審判を請求した。
これについて特許庁は、平成16年2月24日、請求人の主張を退け、請求不成立の審決をした。同審決に対し請求人は、東京高裁に審決取消請求事件(平成16年(行ケ)第108号)を提起したが、請求棄却の判決がなされ(乙4)、同判決は、最高裁の決定によって確定し、被請求人商標の登録は再び維持された。
(オ)異議2004-90314外
本件商標を含む被請求人の出願に係る「インディアン商標」9件(乙10)は、7年ないし10年近くの審査期間を経て平成16年2月27日に設定登録されたものであるが、これらの登録商標に対しても、請求人は、本審判事件と同様の主張によって登録異議申立をした。
しかしながら、請求人の主張は何れも認められず、全ての商標についてその登録を維持する旨の決定がなされた(乙5)。
(カ)平成7年審判第28124号
被請求人は、請求人がかつて有していた請求人商標A「Ind1an/インディアン図/ind1an Motocyc1e co.,Inc.」(登録第2710099号商標)に対し、平成7年12月28日、法4条1項7号、11号に違反して登録されたものであることを理由に登録無効審判を請求した。
これについて特許庁は、同商標は法4条1項7号に違反して登録されたものであることを理由に登録無効の最初の審決をしたが、同審決は東京高裁判決により取り消された。そこで特許庁は更に審理し、その結果、今度は法4条1項11号に違反することを理由に再び登録無効の審決をした。同審決は、審決取消請求事件(平成14年(行ケ)第140号)判決によって維持され(乙6)、同判決は、最高裁の決定によって確定し、これによって請求人商標Aの登録無効が確定した。
その結果、請求人が提起していた商標権侵害訴訟事件(平成8年(ワ)第9391号)での請求は棄却され、同時に、同案件での仮処分事件(平成8年(ヨ)22126)での決定は全く根拠のないものとなった。
(キ)無効2002-35287
被請求人は、請求人がかつて有していた請求人商標B「Ind1an」(登録第4022987号商標)に対し、平成14年7月4日、同商標は被請求人所有の先願商標(登録第4751423号)に類似するもので、法8条1項(先願規定)に違反して登録されたものであることを理由に登録無効審判を請求した。
これについて特許庁は、両商標は類似しないとして請求不成立の審決をしたが、同審決は審決取消請求事件(平成15年(行ケ)第422号)判決で取り消され(乙7)、同判決は最高裁決定により確定し、これによって請求人商標B「Indian」の登録無効が確定した。
(ク)無効2003-35064
被請求人は、請求人がかつて有していた請求人商標C「横向きインディアン図」(登録第4116047号商標)に対し、平成15年2月20日、同商標は被請求人所有の先願商標(登録第4751422号)に類似するもので、法8条1項(先願規定)に違反して登録されたものであることを理由に登録無効審判を請求した。これについて特許庁は、平成15年7月27日、請求人商標Cは、先願に係る前記登録商標に類似するものであるから、法8条1項に違反して登録されたものであるとして、その指定商品中、「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類、寝巻き類、下着、水泳着」について登録を無効にするとの審決をし(乙12)、同審決はそのまま確定し、これによって、請求人商標C「横向きインディアン図」の登録無効が確定した。
2 法4条1項7号(無効理由1)について
4条1項7号は、構成自体が矯激、卑猥、差別的若しくは他人に不快な印象を与える商標、特定の国若しくは国民を侮辱する商標、一般的に国際信義に反する商標、他の法律によってその使用等が禁止されている商標、その他その商標を使用することが公序良俗に反するような商標の登録を排除することを目的する公益保護の規定である。
請求人は、「本件商標は、使用する意思もないのに、単に請求人らの『インディアン商標』を用いたブランドビジネスを妨害する目的で出願し登録を得たものであるから、その登録は公正な競業秩序に反し、第7号に違反して登録されたものである。」と主張する。
しかしながら、かかる請求人の主張は、法4条1項7号の適用解釈を全く無視しているもので、要するに、「自分らが行うブランドビジネスにとって邪魔になる商標は、公正な競業秩序を害するものである。」との身勝手な主張をしているにすぎない。
(1)商標自体に公序良俗違反のない本件商標が法4条1項7号に該当する場合とは、その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高裁平成14年(行ケ)第616号事件判決)。
そこで、本件商標の出願の経緯についてみると、先に述べた事実関係からも明らかなように、出願の経緯が著しく社会的相当性を欠き、登録を認めることが法の予定する秩序に反するとは到底認めることはできない(東京高裁平成16年(行ケ)第108号、乙4:10?13P)。
本件商標が法4条1項7号に該当するとの請求人の主張に対しては、上記事件を含む多くの関連事件において判断が既に下されていて、実質的に新たな主張根拠や証拠が示されたわけでもない本件審判事件において、これら審判事件での判断は、本件商標の場合にあっても何ら変わるものではなく、そのまま適用されるべきものである。
(2)勿論、旧インディアン社又はその関係者が現存し、インディアン商標の周知著名性が維持されているのであれば、国際信義又は競業秩序の観点から、本件商標の登録適格(第7号該当性)について議論しなければならないところであるが、かかる事実が全くないことは、全ての審判事件において既に認定されているところである。そもそも、仮に、旧インディアン社の商標の著名性が今も維持されているとするなら、同社とは無関係な請求人が、他の商品区分において同社商標と全く同一態様からなる商標について何故登録を受けられたのか、その説明が付かないはずである。
(3)請求人は、「インディアン商標の日本における正当な出所である。」とか「本件商標は、正規のブランドビジネスの成果に只乗りし、これを妨害せんとして出願したものである。」とか、根拠のない主張を繰り返す。
しかし、「正当な出所」とか「正規のブランドビジネス」とかを主張するのであれば、そして又、他者による「インディアン商標」の採択使用が不正であるというのであれば、それなりの根拠を示すべきで、少なくとも「インディアン商標」の正当な継承者として認められるような何らかの事実の立証が必要不可欠である。にも拘わらず、請求人は、関係を示す一片の証拠も提出しないばかりか、ザンギが詐欺罪で逮捕されたことを知りながら、旧インディアン社の存続時の実績や商標使用の事実を、あたかも、請求人らと関係する者の実績や事実であるかのような主張や宣伝を相変わらず繰り返し、ブランドビジネスを展開するのである。このような請求人の行為は、需要者のみならずサブライセンシーをも欺く虚偽的行為と謂わざるを得ない。
(4)我が国において、「インディアン商標」を被服等の商標として採択したのは被請求人が最先であることは、前記した事実関係から明らかで、被請求人による本件商標の採択の基となった被請求人商標の採択時期は、遅くとも出願日である平成3年11月5日以前であって、請求人らによる「インディアン商標」に関する如何なる事実行為よりも先行している。
これ以前の事実があるとすれば、請求人が提示する1991年7月1日付けの「ザ・デイリーニュース」と、同年7月5日付けの「USA・ツディー」の僅かな掲載記事があるのみで、その内容たるや、ザンギが金員を詐取するために行った一方的な発表にすぎず、事業の存在や周知著名化の根拠となる使用事実を証明するものではない。
そもそも、日本の一衣料品会社である被請求人が、外国で発行されたこのような英字紙を日々購読していたと考えること自体が極めて不自然で、百歩譲って、偶然にも被請求人が当該記事を読み、これをヒントに「インディアン商標」を採択し出願したとしても、当該記事はザンギの一方的なコメントにすぎないのであるから、このことが我が国での商標出願又は登録の適否を左右する要因になり得るはずもない。ましてや、請求人が主張するように、該米紙報道によって、「『Indian』ブランドが、ザンギインディアン社の商品を表示するものとして周知となった。」などということには到底なり得ないのである。このことは、後のザンギの犯罪行為やザンギインディアン社が、準備行為を含め発表内容の一切を実行せずに倒産している事実に照らせば尚更明らかである。
(5)上記事柄に関する関連事件における判決の認定は、以下の通りである。
ア 平成15年(行ケ)第181号:東京高裁判決(乙3)
これ(ザンギインディアン社)が旧インディアン社の周知著名であった略称や「インディアン商標」の正当な承継者とは到底いえない。したがって、カジヤ・サンライズ社・被告(本件審判請求人)・西澤・マルヨシがその使用権限を有しないことも明らかである(乙3:39P)。
原告(本件審判被請求人)が本件商標(被請求人商標)ないし原告使用商標を被服等の商標として採択した動機は、被告(本件審判請求人)と同様、旧インディアン社とは無関係な立場で、旧インディアン社の略称又は「インディアン商標」を利用しようとしたことにあり、原告が、被告が本件引用商標を被服等に使用していたことを認識しつつ、敢えて原告使用商標を被服等に使用する行為を行ったとは認められず、他に上記事実を認めるに足りる的確な証拠はない(乙3:42P)。
イ 平成16年(行ケ)第108号:東京高裁判決(乙4)
本件商標(被請求人商標)の出願が、ザンギインディアン社の業務を妨害する意図に基づくものであるとは到底推認できない。さらに、被告(本件審判被請求人)が上記記事(甲6、7)に接したかどうかにかかわらず、アメリカンカジュアル衣料の取引業者として、インディアンブランドの衣料の事業を開始しようと考え、本件商標を出願したとしても違法視すべき点は何ら存在しない(乙4:12P)。
ウ 平成16年(ネ)第745号:東京高裁控訴審判決(乙8)
ザンギ・インディアン社は、投資家から資金を集めてこれを詐取するため、オリジナル・インディアン社(旧インディアン社)と同一会社であるかのように装った会社で、これがオリジナル・インディアン社の周知著名であった米国インディアンブランドの承継者とは到底いえない。したがって、被控訴人(本件審判請求人)、サンライズ社、西澤、マルヨシその他のライセンシーが、オリジナル・インディアン社の米国インディアンブランドの使用権限を有しないことも明らか(乙8:P21)。
(6)被請求人は一貫してアメリカンカジュアルを扱い続け、完成度の高いモノ作りで世界に知られるメーカーで、フライトジャケット、ハワイアンシャツ、デニム衣料、バイクジャケットと制覇し、当該商品分野においては日本ではもとより世界的にも信頼され認知されている会社である。そうとすると、何故、怪しげな人物の誘いからライセンスビジネスを目的とし、平成5年に設立された請求人会社の如何なるグッドウィルを盗用せんとするのか、被請求人会社にとってその必要性は微塵も存しない。
3 法4条1項10号(無効理由2)について
4条1項第10号は、出願時において既に他人の周知商標が存在することを前提に、出願商標が当該他人の周知商標と同-又は類似の商標であって、当該他人の周知商標と同一又は類似の商品を指定商品とする場合に適用されるものである。請求人らが使用する「インディアン商標」が本件商標に類似するものであること、そして請求人らが使用する商品中には本件商標に係る指定商品と同一又は類似する商品が含まれていることは認めるところである。
しかしながら、請求人らが使用する「インディアン商標」が周知であったとの主張については、如何なる商品、如何なる時点においても一切認めることはできない。特に、法4条1項第10号を適用するに当たって、請求人らが使用する「インディアン商標」が周知であったかどうかの判断時は、本件商標の出願日(平成9年3月31日)である(第4条3項)ことからすると、本件商標が第10号に該当する商標でないことは尚更明らかである。
(1)請求人は、請求人らが使用する「インディアン商標」の周知性を頼りに主張するが、如何なる商標が、何時、如何なる者の使用行為によって、如何なる商品に付いて周知商標となっているのかが暖味である。
仮に、請求人主張が「旧インディアン社の商標として周知であった。」との主張であるならば、同社は1953年に消滅して以来、関係者を含め一切の営業活動を行っておらず、その周知性が維持されていないことは既に多くの審判決において認定されているところで、「インディアン商標」が同社の周知商標ということはできない。そもそも、請求人らと旧インディアン社とは如何なる関係も関連ものないのであるから、旧インディアン社の過去の実績を請求人らと何らかの関係がある者の実績であるかのような主張は論外である。
(2)また、請求人主張が「ザンギ或いはザンギインディアン社の商標として周知であった。」との主張であるならば、同人同社による周知著名に至った使用事実はもとより、事業活動そのものの存在すらないのであるから、かかる請求人の主張は認められない。
(3)請求人は、本件商標の周知性の認定判断において、全く意味をなさない資料を証拠として大量に提出している。即ち、請求人が提出した周知性主張に関係すると思われる資料のほとんどは、旧インディアン社に関する資料であったり、本件商標の出願日以降の資料であったりして、請求人らが本件商標出願前に「インディアン商標」を使用したことが窺える資料は極僅かである。しかも、それらの中にも、英文パンフレットがあったり、単に、請求人らがブランドビジネスの開始を一方的に発表したにすぎない業界紙の記事があったりして、周知性の有無を判断するうえで最も重要な要素となる商品の販売実績等について明らかにされている証拠は一切ない。
例えば、上記業界紙では、「『Indian』ブランドのブーム着火も間近」などと紹介されているが、このフレーズは、請求人らが行おうとしていたブランドビジネスを自ら宣伝するために用いたキャッチコピーにすぎず、このような状況が現実にあったわけではない。実際のところは、米国においては、ザンギインディアン社は投資家から金員を詐取しただけで設立後間もなく倒産しており、日本においても、請求人らの使用実績が皆無に等しかったことからして、その当時、「ブーム着火も間近」などというにはほど遠い状況であった。その後、請求人らによるライセンスビジネスの開始によって某かの販売事実があったとしても、東京高裁判決(乙8)で、「(請求人)のライセンス事業の主力商品は、革製のジャンパー、ブーツ、バックなどの衣服、身の回り品であるが、それらのライセンシーであるマルヨシ、西澤、ギャロップあるいはオーエイチプランニングが比較的短期間のうちにライセンス事業から撤退していることは、(請求人)とサンライズ社によるライセンス事業が、その主力商品においても必ずしも順調に進んでいたわけではなく、その販売実績がさしたるものではなかったことを推認させるものである(乙8:21P)。」と判示しているように、請求人らによる使用が、到底、周知性を獲得するに至るようなものでなかったことは疑問の余地のないところである。
(4)請求人が本審判事件で提出した証拠は、他の事件でも同様に提出しているが(乙13、14)、次に記するように、何れの事件においても、その周知性は否定されている。
ア 平成14年(行ケ)第140号 東京高裁判決(乙6)
本件商標(請求人商標)の登録査定時(平成7年3月30日)において、その主張するように、本件商標(請求人商標)が原告(本件審判請求人)に係る被服等を表示するものとして周知であったとまで認めることはできない(乙6:16P)。
イ 平成15年(行ケ)第181号 東京高裁判決(乙3)
原告(本件審判被請求人)による原告使用商標の使用が開始された時点(平成7年5月ころ)で、被告(本件審判請求人)ら本件引用商標が被告らないしそのライセンシーの商品を表示するものとして取引者及び需要者の間に広く知られ、周知性を獲得するに至っていたものということはできず、・・・したがって、原告が革製ジャケット等の商品に原告使用商標を使用したものとしても、取引者及び需要者がこれを被告ら又は被告等と経済的又は組織的に何らかの関連を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所につき混同を生ずるおそれがあったものということはできない(乙3:40P?41P)。
ウ 平成16年(ネ)第745号 東京高裁控訴審判決(乙8)
したがって、被控訴人(本件審判請求人)及びそのライセンスグループが使用する原告各表示は、被控訴人(本件審判請求人)及びそのライセンスグループの商品等表示として、取引者・需要者間に広く認識されているものと認めることはできない(乙8:22P)。
(5)本件商標の出願時点において、商標「Indian Motorcyc1e」について、請求人又は被請求人のうち、どちらの商標がより周知であったかといえば、被請求人はその前年度(1996年度)には、カットソー及びレザ一ジャケットだけで既に年間2億4千万円(出荷価格)以上の販売実績があり(乙61)、アメリカンカジュアル衣料の分野においては、本件商標は被請求人の出所にかかる商品ブランドとして既に全国的に認知されていたのであり、少なくとも、請求人商標の当該分野における認知度より高かったことだけは確かな事実である。
そして、現在に至っては、「INDIAN/MOTORCYCLE/東洋」のキーワードでWeb検索した結果、約9450件もヒットするほどに全国的に著名となっており(乙62)、当業界において、「INDIAN MOTORCYCLE=東洋」といわれる程に認知されているのである。
4 法4条1項15号(無効理由3)について
4条1項15号は、登録出願時において他人の周知著名商標が存在し、出願商標をその指定商品に使用すると、需要者がその商品を当該周知著名商標主(又は関係者)の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれのある場合に適用されるものである。
したがって、本号の適用に当たっては、商標や商品の類似性は特に問われないのであるが、その分、第10号でいうところの商標よりは、より周知の程度が高い商標(いわゆる著名商標)でなければならないとされている。
そうとすると、請求人らが使用する「インディアン商標」は、その主力商品である被服類や身の回り品でさえその周知性が否定されているのであるから(前記)、本件商標をその指定商品に使用しても商品出所につき混同を生ずるおそれはないことは明らかである。
5 結 論
以上のとおり、本件商標には請求人の主張するような無効理由は一切なく、よって、結論同旨の審決を求める。

第4 当審の判断
請求人が本件審判の請求をする利害関係を有するか否かについては当事者間に争いはなく、かつ、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、本案に入って審理する。
1 法第4条第1項第7号該当について
(1)請求人の主張並びに提出した甲第2号証(請求人の作成に係るものと推認し得る)ないし甲第5号証によれば、旧インディアン社は、1901年マサチューセッツ州スプリングフィールドに設立されたオートバイのメーカーであり、1953年操業を停止(工場閉鎖し、製造を中止)し、後に解散したことが認められる。そして、過去において、旧インディアン社の使用していた「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の商標が、該会社のオートバイに使用された結果、米国、ヨーロッパ、日本において需要者の間に広く認識され、周知著名性を獲得するに至っていたことを否定することはできない。
しかしながら、旧インディアン社は、1953年に操業を停止し、後に解散しており、その後において営業活動(製造、販売)を行っていたものとは認め得ることができないから、旧インディアン社が使用していた「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の商標の周知著名性は、過去において高い水準にあったとしても、解散後40数年を経過した、本件商標の登録出願時には、消滅していたに等しいというべきであり、混同を生ずる営業主体(出所)そのものが存在しないから、本件商標は旧インディアン社との関係において、社会の商取引の秩序を乱すものと認めることはできない。
(2)請求人の主張並びに提出した甲第6号証及び甲第7号証によれば、ザンギは、1990年(平成2年)6月26日、かつて旧インディアン社が存在していたマサチューセッツ州スプリングフィールドに、ザンギインディアン社を設立し、前記の旧インディアン社を復活し、「Indian」のオートバイの復活製造及び「Indianロゴ」や「ヘッドドレスロゴ」等を使用した「Indian」ブランドのアパレルやアクセサリー等のマーチャンダイジングビジネスを開始した旨の記事が米国の一般紙「ザ・デイリー・ニュ一ス」1991年(平成3年)7月1日号(甲第6号証)及び「USA・TODAY」同年7月5日号(甲第7号証)により、報じられた事実は認められる。
しかしながら、ザンギインディアン社がこの報道以前に「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の商標を使用していた事実は認められない。そして、かかる報道がなされたのは1991年7月1日であり、この報道のみで、本件商標の登録出願時に、「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の商標がオートバイ、アパレル、アクセサリー等の商品について、サンギインディアン社の業務に係る商品として広く認識されていたものとは認められない。
(3)請求人の主張並びに提出した甲第10号証、甲第11号証、及び甲第20号証によれば、コンセプト・デザイナーであるカジヤは、我が国において、1993年(平成5年)6月3日、株式会社インディアンモトサイクルカンパニージャパン(請求人)を設立し、代表取締役に就任したこと(甲第20号証)、そして、ザンギは、カジヤに「lndian」ブランドのビジネス、「インディアン商標」の出願、登録、ライセンスを含め、日本での権利を譲渡したこと(甲第10号証)、さらに、カジヤは、日本に登録出願した「インディアン商標」を請求人に譲渡したこと(甲第11号証)が認められる。
しかしながら、旧インディアン社とザンギインディアン社とが何らかの関係を有しているものと認め得る証左は見当たらないから、ザンギは、過去において旧インディアン社が使用していた「Indianロゴ」、「ヘッドドレスロゴ」等の商標を単に採択したものといわざるを得ない。そうとすれば、請求人は、カジヤが「インディアン商標」を日本において出願登録した商標権の譲渡を受けた者であるにすぎず、請求人が、唯一の「インディアン商標」の独占的使用権者であるということはできない。
(4)1993年(平成5年)7月24日付け繊研新聞及び日経流通新聞において、請求人が「Indian」ブランドの輸入、ライセンスビジネスの展開を開始する等の内容の記事が報じられたこと(甲第24号証及び甲第25号証)、「インディアン商標」に関して、マルヨシが1994年(平成6年)5月に展示会を開催し、販売を開始したこと(甲第29号証)、同じく、マルヨシ及びサンライズ社の輸入に係るバッグ、Tシャツ、トレーナー等及びサンライズ社の製造に係るTシャツ等が1994年(平成6年)に雑誌等で広告されたこと(甲第32号証及び甲第33号証)、同じく、西澤社が1995年(平成7年)から1996年にかけて展示会を開催するとともに、同社の製造販売に係る革製ジャケットなどの広告宣伝を行ったこと(甲第48号証ないし甲第57号証)、その他の使用の事実等よりすれば、請求人をはじめとする前記各社が「インディアン商標」を使用している事実は認め得るものである。
しかしながら、前記の証拠は、本件商標の登録査定時に、請求人をはじめとする前記各社が使用する「インディアン商標」が、同人らの業務に係る商品標識として周知であったとまで認めることはできない。
(5)請求人は、平成8年7月22日付繊研新聞に、「インディアンモトサイクル商標」が請求人の登録商標であり、類似品の出現など侵害行為には法的措置も辞さない旨を付記して新規ライセンシーの募集広告をしたこと(甲第58号証)、また、平成8年9月に東京地裁に商標権侵害差止の仮処分申請をし、同年12月仮処分決定が出されたこと(甲第59号証)、被請求人は、仮処分決定が出された後も、「インディアン商標」を使用した革製ジャケットやTシャツ等の輸入、製造、販売、広告を継続していたこと(甲第61号証ないし甲第68号証)、被請求人が出願登録している商標中には、海外ブランドを意図して採択されていると推認されてもやむを得ない商標が見られること(甲第1号証)は、請求人主張のとおりである。
しかしながら、上記仮処分が出されたものの、甲第60号証の陳述書に記載されている登録第2710099号商標は、商標登録原簿を徴するに、本件商標の設定登録日(平成16年2月27日)前の平成15年6月12日付けで、無効の審決が確定している。また、被請求人が「インディアン商標」を請求人からの警告、仮処分命令後も使用を継続したこと、被請求人が出願登録している商標中には、海外ブランドを意図して採択されている商標が見られるとしても、これらの事実が、市場を撹乱させ、請求人の業務を妨害する目的で登録出願し登録を得たものと直ちに断定することはできない。
(6)本件商標は、別掲(1)に表示する構成よりなるところ、前記したとおり、(ア)本件商標は、解散後40数年を経過した旧インディアン社との関係においては、社会の商取引の秩序を乱すものと認めることはできず、(イ)本件商標の登録出願時、登録査定時のいずれにおいても、「インディアン商標」は、請求人ほか、サンライズ社、マルヨシ及び西澤社の業務に係る商品標識として広く認識されたものとは認められず、(ウ)請求人が唯一の「インディアン商標」の独占的使用権者であるということはできず、(エ)被請求人が「インディアン商標」を請求人からの警告、仮処分命令後も継続使用(但し、無効審決が確定している)していたり、さらには、被請求人が出願登録している商標中には、海外ブランドを意図して採択されている商標が見られるとしても、それをもって直ちに請求人の業務を妨害しているものとは断定することができないものである。
加えて、請求人は、「Indianロゴ」或いは「ヘッドドレスロゴ」を使用していた前記旧インディアン社と組織的、経済的、人的等何らかの関係にあるとする証左も見出すことができない。
してみれば、本件商標は、請求人の「インディアン商標」を妨害し、公正な競争秩序を乱すものであり、その使用に便乗して不当な利益を得ること(フリーライド)を目的として使用されるものということはできない。また、本件商標は、請求人の「インディアン商標」を冒用して採択したものとも断定することはできない。
そうしてみると、本件商標は、公正な競業秩序、商道徳又は信義則に反するようなものということはできず、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものということができない。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第7号に違反して登録されたものでない
2 法第4条第1項第10号及び同第15号該当について
(1)法第4条第3項について
第4条第3項は、法第4条第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は適用しない旨規定している。
そして、出願に係る商標が法第4条第1項各号に該当するかどうかの判断の時点は査定時であることを前提として、特に法第4条第1項第8号、第10号、第15号、第17号及び第19号についてだけは査定時にこれらの規定に該当していても、商標登録出願時にこれらの規定に該当していなければよいという趣旨を表している。
上記各号についてこのような救済規定を設けたのは、これら各号の場合には商標登録出願時に該当しないのに出願後これらの規定に該当するようになったものまで不登録にするのは酷に失するという理由による(社団法人発明協会が発行した工業所有権法逐条解説[第16版]第1069頁)。
したがって、本件商標が、法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しその登録を無効とするためには、本件商標がその登録出願の時(平成6年9月21日)においても、法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しなければならないことは、法第4条第3項の規定からも明らかである。
(2)請求人が提出した各甲号証について
請求人が提出した証拠のうち、上記(1)の理由により本件商標の登録出願前におけるものについて以下に検討する。
(2-1)旧インディアン社及び旧インディアン社が製造販売するオートバイを紹介したパンフレット(甲第2号証)ないし雑誌記事(甲第3号証)等によれば、旧インディアン社は、1901年(明治34年)に米国において設立されたオートバイメーカーであり、その商品に使用した「Indianロゴ」「ヘッドドレスロゴ」等の商標は、米国、欧州、日本において、旧インディアン社の商標として、需要者の間に周知性を獲得するに至ったことがあるものの、同社は1953年(昭和28年)操業を停止したことが認められる。
(2-2)「ブルータス」に、1993年(平成5年)1月1日、15日合併号を含め同年11月15日まで21回にわたり(甲第5号証、同第226号証ないし同第246号証)、米国において設立され、その後解散したオートバイメーカーの旧インディアン社及びその商品に使用した「Indianロゴ」等の商標に関連した記事及びフィリップ・ザンギが、1991年(平成3年)1月、再び旧インディアン社を興すことを紹介した記事が掲載されている。
(2-3)スコット・サトシ・カジヤの宣誓供述書(甲第10号証)には、インディアン・モトサイクル・ジャパンがスコット・サトシ・カジヤから日本において「インディアン」商標を独占的に使用する権利を買い取ったこと等が記載されている。
(2-4)平成4年商願第10316号、同第10317号、平成5年商願第30601号?同第30609号、同第30611号及び同第30612号に係る商標登録出願により生じた権利並びに商標登録第2674792号商標及び同第2710099号商標の各商標権について、スコット・サトシ・カジヤから請求人に対する各譲渡証書(甲第11号証)が提出されている。
(2-5)新インディアン社の商品カタログ(平成4年)(甲第12号証)は、英語版であり、我が国において、一般の取引者、需要者を対象に頒布されたものとは認められない。
(2-6)請求人の平成5年6月30日付け商業登記簿謄本(甲第19号証)には、衣料品、オートバイ等の輸出入及び販売等の会社設立の目的が記載されている。
(2-7)平成元年1月15日発行の「広告」1、2月号(甲第23号証)は、株式会社サンライズ社の執筆に係る「ハリウッドはあこがれのメディア」と題する記事が掲載されている。
(2-8)平成5年(1993年)7月24日付け繊研新聞(甲第24号証)に、「米アンティークバイク『インディアン』ウエア発売」との見出しの下、スコット・エス・カジヤを社長とするインディアン・モトサイクル・ジャパン(請求人会社)が設立され、同年秋から、「インディアン」をイメージキャラクターにした商品の輸入販売及びライセンス事業が開始される旨の記事が掲載された。また、同日付け日経流通新聞(甲第25号証)にも、「米国のオートバイメーカー、インディアン・モトサイクル社(マサチューセッツ州)のライセンス供与を行っている『インディアン・モトサイクル・ジャパン』(東京・渋谷、スコット・エス・カジヤ社長)は、米国で人気上昇中のアンティークバイク『インディアン・モトサイクル』関連商品のライセンス事業を、国内で展開する。」、「『インディアン』は1901-53年まで製造された高級バイクで、米国を象徴するブランドの一つ。会社は53年に解散したが、実業家のフィリップ・ザンギ氏が92年1月に再建した。」との各記載を含む記事が掲載されている。
しかしながら、本件商標の登録出願前にライセンス事業に係る商品が具体的にどれ位販売されたかの事実を証明するものはない。
(2-9)「POPEYE」1993年(平成5年)11月10日号(甲第26号証)に、「1940年代、アメリカでハーレー・ダヴィッドソンと人気を二分したバイクメーカーがインディアン・モトサイクル社」であり、そのロゴグッズは、「アメリカを象徴するトレードマークのひとつとして、‥‥‥未だに根強いインディアン・マニアを持つほどの存在」であるところ、これらのロゴグッズがアパレルなどのキャラクターグッズとして復活しており、「米国では既にブームとなっている模様」で、「日本でもブーム着火は時間の問題だといえる。」との記事が掲載されている。
(2-10)「CLiQUE」平成6年1月号(甲第27号証)は、「スティーブ・マックイーンらが愛した『インディアン・モトサイクル』の関連アイテムが揃う『アーバン・メディスン』が9月にオープンした。特に『インディアン』のシルバーブレスレットは、ライダーズジャケットに次ぐブームの兆し」との記載があるが、同記事は、本件商標の指定商品に係る商品とは認められない。
(2-11)若い男性向けのカジュアルファッションの大手専門店で配布されている月刊広報誌「DICTIONARY」平成6年(1994年)1月号(甲第28号証)に、ヘッドドレスロゴを表示した請求人及び訴外サンライズの広告が掲載されたが、これがいかなる趣旨で掲載されたものであるか不明である上、その発行部数、頒布先は明らかではない。
(2-12)平成6年6月25日付け「旬刊ファンシー」(甲第29号証)には、「『インディアン』が復活・・・マルヨシは5月16?18日、本社2階展示室で’94秋?’95春の展示会を行った。・・・今回、新ブランドとして『インディアン』を商品化」との記載があるが、「Indianロゴ」等の商標の記載はなく、その発行部数も明らかではない上、その内容自体から一般の需要者を対象としたものとは認められない。
(2-13)株式会社マルヨシの商品カタログ(甲第30号証)及び同社作成のバッグの仕様書(甲第31号証)には、いずれもインディアン図形とIndianロゴを組み合せた標章が掲載されているが、前者についてはその発行部数、頒布先は明らかではない。後者については、商品が「バッグ」であり、その製造数量、製造期間、販売実績などが明らかでない。
(2-14)「グッズプレス」11月号増刊(表紙下部の「保存版’94年新製品大カタログ」の表示からすると、1994年11月号と認められる。甲第32号証)に、ヘッドドレスロゴ等を付したバッグ、ブレスレット、Tシャツ、ネックレス、トレーナー、ナップザック、ピンが掲載され、問い合わせ先としてマルヨシ及びサンライズ社の表示がある。
(2-15)「フィールド・ギア」(平成6年12月12日発行、甲第33号証)に、型押し(図形及び文字については判読が困難である。)を付したバッグが掲載され、問い合わせ先としてマルヨシの表示がある。
(2-16)「GET ON」(1995年第5号、甲第49号証)に、「かつてハーレーダビットソンと優秀さを並び評されたアメリカのバイクメーカー、インディアンモトサイクル。・・・」の説明文とともにジャケットの写真が掲載されているものの、Indianロゴ等を確認できない。
(2-17)「マッシモ」(1995年11月号、甲第50号証)に、「INDIAN」「MOTOCYCLE」の文字及び西澤株式会社輸入部の表示とともにジャケットの写真が掲載されているものの、該ジャケットに付されている商標を確認できない。
(2-18)「Hot・Dog」(1995年10月10日、甲第51号証)に、「アメリカンバイクに似合いの革ジャン」の表題の下、「ジェームス・ディーンも愛用した、伝説的なアメリカンバイクのブランド「インディアン」のレーザーウエアが日本上陸。・・・」の説明文、問い合わせ先として西澤(株)の文字及びジャンパーの写真が掲載されているものの、Indianロゴ等を確認できない。
(2-19)「OutRider」(1995年11月号、甲第52号証)に、「伝説的なアメリカンバイクのブランド、インディアンのレーザーウエア。」の説明文、西澤(株)の文字及びジャケットの写真が掲載されているものの、Indianロゴ等を確認できない。
(2-20)「エム・エー・ワン」(1995年12月号、甲第53号証)に、「バイクブランド、インディアンのレーザー」の表題の下、「伝説的なアメリカンバイクブランドとして知られる”Indian”が40年ぶりに復活するバイクに先駆けて、95年の秋冬よりレザーウエアを始めた。・・・」の説明文、問い合わせ先として西澤株式会社輸入部の表示とともにジャケットの写真が掲載されているものの、Indianロゴ等を確認できない。
(2-21)「FINEBOYS」(1995年12月号、1995年12月号別冊、甲第54号証及び同第55号証)に、ジャケットの写真とともに、写真の上部と下部にIndianロゴ、ヘッドドレスロゴの表示及び西澤株式会社通販部の表示が掲載されている。
(2-22)「ブーン」(1996年1月号、甲第56号証)に、上記(2-21)「FINEBOYS」と同様の内容が掲載されている。
(2-23)「FINEBOYS」(1996年1月号、甲第57号証)に、「ジェームス・ディーンにマーロン・ブランド・・・彼らが愛用していたことで有名なのがバイクブランドの『インディアン。』」の説明文、問い合わせ先として西澤の文字及びジャケットの写真が掲載されているものの、Indianロゴ等を確認できない。
(2-24)「繊研新聞」(1996年7月22日、甲第58号証)に、ヘッドドレスロゴ等とともに、「表記しているインディアン商標は請求人の登録商標である。」旨及びサブライセンシー及び正規ディストリビューターとして西澤株式会社を含めて4社の名称が記載されているものの、その商標登録番号や指定商品の記載がなく、読者にとって、その内容を直ちに知り得ない。
(2-25)「ブーン」(1996年12月号、甲第84号証)に、背面に「INDIAN」の文字を付したジャケットの写真が掲載されているものの、「RETURN」の名称と思しき販売者と請求人との関係が明らかでない。
(2-26)上記雑誌である「グッズプレス」、「ブーン」等(甲第32号証、同第33号証、同第48号証ないし同第57号証及び同第84号証)について、いずれもその発行部数、発行地域等が明らかでない。
(3)請求人の「Indianロゴ」等の周知・著名性およびその獲得時期
審判請求書第6頁及び7頁によれば、請求人は、平成6年1月から、「Indianロゴ」(特徴ある筆記体の欧文字「Indian」)、「ヘッドドレスロゴ」(「Indianロゴ」を配した右向きのインディアンの酋長の図形)、「『Indianロゴ』/MOTOCYCLE」、「『Indianロゴ』MOTOCYCLE」等(以下「引用商標」という。)を付したシャツ、ジャケット、帽子等の輸入販売を開始した。輸入販売にかかる商品は「アーバンメディソン」(甲第27号証)などの「Indian」ブランドの需要者に影響力のある店舗で販売されたことを主張している。
しかしながら、これに先立つ平成5年11月に、日本でも「インディアン」ブランドのブーム着火は時間の問題との記事が掲載され、平成6年1月から、請求人は、若い男性向けカジュアルファッションの大手専門店において無料で配布されている月刊広報誌に広告を掲載するなどして、「インディアン」ブランドの宣伝に努めていたものの、どの程度引用商標が取引者、需要者に浸透したかを認めるに足りる証左がないばかりでなく、テレビ、ラジオのマスメディアによる宣伝、広告したことも確認できないことから、この程度の期間では、引用商標が周知著名性を獲得するまでに至ったものと認め難い。
さらに、請求人は、平成5年1月から同年11月にかけて雑誌「ブルータス」に21回にわたり(甲第226号証ないし同第246号証)、「Indian」ブランドの復活、アパレルマーチャンダイジングブランドなどの展開が報じられた結果、「Indian」ブランドは、同年11月頃には需要者の間に浸透していた旨の主張をしているが、該雑誌記事に掲載されている「Indian」ブランドは、旧インディアン社がモーターバイクに使用していたものであり、フィリップ・サンギあるいは請求人がジャケットやTシャツに引用商標を採用あるいは付していたことを確認できるものは、僅かに同年4月1日号(甲第231号証)、同年10月15日号(甲第244号証)、及び同年11月15日号(甲第246号証)だけである。そうすると、当該雑誌をもって引用商標が請求人の使用に係る商品を表示するものとして広く認識されていたということはできない。
また、平成6年5月頃においては、証拠上請求人の最初のライセンシーと認められる訴外マルヨシとのライセンスビジネスが開始し、引用商標を付したバッグが市場に流通し始めたばかりであり、その広告として掲載された雑誌(甲第29号証、同第32号証、甲第33号証)についてその発行部数、発行地域等が明らかでないばかりでなく、その中には「Indianロゴ」等の商標の記載がないものもある(甲第29号証)。さらに、マルヨシの商品カタログ(甲第30号証)及び同社作成のバッグの仕様書(甲第31号証)にもその発行部数、頒布先は明らかではないから、この時点で、引用商標が請求人のライセンスビジネスにかかる商品等表示として市場に浸透し、需要者の間に広く認識されていたということはできない。
さらに、請求人は、平成7年サブライセンス契約を締結した西澤社が、引用商標を付した革製ジャケットを製造販売するについて同年から翌年にかけて巨額の広告宣伝を行った結果、引用商標は、請求人を出所とする商標として、また、請求人の略称として平成7年暮れには需要者の間に周知となった旨主張する。
しかしながら、上記(2)における(2-16)ないし(2-23)及び(2-26)で認定したとおり、その裏付けとする各雑誌(甲第48号証ないし同第57号証)には、引用商標を確認できないもの、確認できてもその発行部数、発行地域等が明らかでないものであるから、当該雑誌をもって引用商標が請求人の使用に係る商品を表示するものとして広く認識されていたということはできない。
さらに、請求人は、ライセンシーが引用商標を付して販売した商品の販売数量、販売額、販売地域などについて立証していないので、引用商標の周知著名に至った時期及びその商品を把握することができない。
(4)法第1項第10号及び同15号該当性
(ア)請求人は、自分が販売又はライセンスに係るTシャツ、ジャケット、皮革製ジャケット、皮革製パンツ等に使用する商標として、需要者の間に広く認識されている「Indianロゴ」と類似する旨主張する。
確かに、提出に係る証拠によれば、「ヘッドドレスロゴ」は、前述のとおり、本件商標出願前より、商品「オートバイ」に使用して周知性を獲得したものと認め得るにしても、「Motocycle」の欧文字を組み合わせた「ヘッドドレスロゴ」或いは「Indianロゴ」は、商品「ジャケット等」に使用して周知性を獲得したものと認めるに足りる証左を見出すことができない。
請求人の提出に係る証拠には、取引状態を示す証拠が含まれておらず、該商品の取引数量、取引地域等が不明であるから、これらの証拠をもってしては、請求人の主張する商品に使用されていたものと推認し得るとしても、本件商標の出願時において、取引者、需要者の間に広く認識されていたとまでは認め得ないところである。
また、本件商標は別掲(1)に表示するとおりの構成よりなるところ、幾何図形とその構成上一連一体のものとしてのみ把握、理解するものといい得る「Indian Motocycle」の欧文字を組み合わせてなるものであるから、「Indianロゴ」とは明らかに別異の商標といわなければならない。
そうすると、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「Indianロゴ」が取引者、需要者間に広く認識されていたものということはできない。
その他、「Indianロゴ」が取引者、需要者間に広く認識されていることを認めるに足る証拠はない。
加えて、本件商標と、「Indianロゴ」とは、上記のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、「Indianロゴ」も本件商標と類似するものとはいい難い。
以上のとおりであるから、本件商標は、法第4条第1項第10号に該当するものではない。
(イ)請求人は、本件商標が「Indianロゴ」及び「Indian Motocycle」と類似するから、その指定商品に使用するときは、商品の出所の誤認を生じさせるおそれがある旨主張する。
確かに、本件商標より生ずると認められる「インディアンモーターサイクル」の称呼と「Indian Motocycle」より生ずると認められる「インディアンモトサイクル」の称呼とは、中間音の「モーター」と「モト」の音に差異を有するものの、比較的冗長で、かつ、聴取し難い中間に位置する音であることを考慮すれば、その称呼において類似する場合があるものといい得るものではあるが、前記のとおり本件商標は、幾何図形とその構成上一連一体のものとしてのみ把握、理解するものといい得る「Indian Motocycle」の欧文字を組み合わせてなるから、十分に区別し得る非類似の商標であるといわざるを得ず、かつ、提出された証拠からは、「Indianロゴ」及び「Indian Motocycle」が、取引者、需要者間に広く認識されていたものとはいえないこと、また、他に両者を関連づけてみるべき理由も見いだせない。
加えて、引用商標は、少なくとも本件商標の登録出願時である平成9年3月31日の時点において、請求人の使用に係るTシャツ、ジャケット等を表示するものとして取引者、需要者に広く認識されていたものとはいえないこと上述のとおりであり、また、請求人の略称としても、本件商標の登録出願時おいて取引者、需要者に広く認識されていたものとも認めがたいものである。
してみれば、請求人と組織的、経済的、人的等何らかの関係にあるとする証左も見出すことができないことからすると、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、法第4条第1項第7号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標


別掲(2)Indianロゴ


別掲(3)ヘッドドレスロゴ


審理終結日 2007-11-08 
結審通知日 2007-11-13 
審決日 2007-11-30 
出願番号 商願平9-34960 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (025)
T 1 11・ 25- Y (025)
T 1 11・ 271- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門倉 武則福島 昇 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 石田 清
小林 和男
登録日 2004-02-27 
登録番号 商標登録第4751430号(T4751430) 
商標の称呼 インディアンモーターサイクル 
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 古木 睦美 
代理人 野原 利雄 

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