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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服2007650053 審決 商標
不服200828944 審決 商標
不服200819709 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 登録しない X363742
管理番号 1190877 
審判番号 不服2008-16954 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-03 
確定日 2009-01-08 
事件の表示 商願2007- 21220拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「株式会社イアラ」の文字を書してなり、第36類「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介、建物又は土地の鑑定評価、土地の管理、土地の貸借の代理又は媒介、土地の貸与、土地の売買、土地の売買の代理又は媒介、建物又は土地の情報の提供」、第37類「建設工事、建築物のリフォーム工事、建築工事に関する助言、建築設備の運転・点検・整備、船舶の建造、船舶の修理又は整備、荷役機械器具の修理又は保守、火災報知機の修理又は保守、事務用機械器具の修理又は保守、暖冷房装置の修理又は保守、バーナーの修理又は保守、ボイラーの修理又は保守、ポンプの修理又は保守、電子応用機械器具の修理又は保守、電気通信機械器具の修理又は保守、民生用電気機械器具の修理又は保守、照明用器具の修理又は保守、業務用食器洗浄機の修理又は保守、業務用加熱調理機械器具の修理又は保守、業務用電気洗濯機の修理又は保守、浄水装置の修理又は保守、家具の修理、錠前の取付け又は修理、ガス湯沸かし器の修理又は保守、加熱器の修理又は保守、なべ類の修理又は保守、看板の修理又は保守、浴槽類の修理又は保守、洗浄機能付き便座の修理、畳類の修理、煙突の清掃、建築物の外壁の清掃、窓の清掃、床敷物の清掃、床磨き、し尿処理槽の清掃、浴槽又は浴槽がまの清掃、土木機械器具の貸与」及び第42類「建築物の設計、室内装飾のデザインの考案、その他のデザインの考案、測量、地質の調査、機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計、電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守、電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明、建築又は都市計画に関する研究、土木に関する試験又は研究、計測器の貸与、電子計算機の貸与、電子計算機用プログラムの提供、理化学機械器具の貸与、製図用具の貸与」を指定役務として、平成19年3月12日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『東京都港区南青山2丁目29-9南青山リハイム901号』及び『兵庫県尼崎市水堂町1丁目1-7』所在の法人の名称と同一のものと認められる『株式会社イアラ』の文字を書してなり、かつ、その他人の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号(以下「本号」という。)において、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行)によれば、「八号は旧法2条1項5号に相当する規定である。旧法との相違は『著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称』を加えたことである。その理由はこれらも氏名と同様に特定人の同一性を認識させる機能があるからであり、人格権保護の規定としてはこれらを保護することが妥当だからである。ただ、肖像あるいは戸籍簿で確定される氏名、登記簿に登記される名称と異なり、雅号等はある程度恣意的なものだからすべてを保護するのは行き過ぎなので、『著名な』ものに限ったのである。『氏名』はフルネームを意味する。したがって、氏又は名のうちいずれか一方のときは本号の適用はない。『これらの著名な略称』とは、氏名、名称、雅号、芸名及び筆名の略称の意味である。また、例えば、自己の名称と他人の名称とが同一の場合は、自己の名称についても本号の適用があり、したがって、不登録になる。なお、本号に関して、これは不正競争防止の規定であるから『その他人の承諾云々』のカッコ書きは不要であるとの説もあるが、立法の沿革としては前述のように人格権保護の規定と考えるべきであろう。本号には外国人の氏名、名称も含まれる。」と説明されている。
そして、最高裁昭和57年(行ツ)15号判決(判決日 昭和57年11月12日)(以下「最高裁判決1」という。)において「株式会社の商号は商標法第4条1項8号にいう『他人の名称』に該当」する旨判示されている。
また、最高裁平成15年(行ヒ)265号判決(判決日 平成16年6月8日)(以下「最高裁判決2」という。)において、「8号(商標法4条1項8号)は、その括弧書以外の部分(以下、便宜『8号本文』という。)に列挙された他人の肖像又は他人の氏名、名称、その著名な略称等を含む商標は、括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないとする規定である。その趣旨は、肖像、氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される。したがって、8号本文に該当する商標につき商標登録を受けようとする者は、他人の人格的利益を害することがないよう、自らの責任において当該他人の承諾を確保しておくべきものである。」旨判示されている。
さらに、最高裁平成16年(行ヒ)343号判決(判決日 平成17年7月22日)(以下「最高裁判決3」という。)において、「商標法第4条1項は、商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが、需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号、15号等の規定とは別に、8号の規定が定められていることからみると、8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。」旨判示されている。
そこで、以上の観点から本件について検討する。

2 本願商標の本号の該当性について
(1)本願商標の構成について
本願商標は、前記第1のとおり「株式会社イアラ」の文字を書してなるものであり、その構成中に「資本金が株式という均等な形式に分割され、出資者すなわち株主が組織する有限責任会社。その機関は、株主総会・取締役会・代表取締役・監査役などから成る。」(広辞苑第五版)を意味する「株式会社」の文字を有するものであることから、商号の一つを表示したものと認められる。
また、前記最高裁判決1からすれば、「株式会社イアラ」の商号は、本号における「他人の名称」に該当するものである。
(2)本願商標「株式会社イアラ」と同一の商号の他人の存在について
請求人の提出による平成19年11月28日付け手続補足書(以下「補足書」という。)における提出物件1及び当審における職権による調査により、昭和54年1月23日設立、「ファッションモデルの養成及び斡旋、ファッションショ-の企画及び制作、タレント、モデル等の紹介、劇場、映画、テレビ、ラジオ放送等の企画及び制作」等を業務内容とする「東京都港区南青山2丁目29番9号南青山リハイムビル901号」在の「株式会社イアラ」(「株式会社イアラ」のウェブサイト参照(http://www.iara-ag.co.jp/aboutus.html))の存在が認められる。
また、補足書における提出物件2によると、「兵庫県尼崎市水堂町1丁目1-7」在(以下「兵庫県」在という。)の「株式会社イアラ」については、その存在が明らかではない。
そして、当審において職権により調査するも、「兵庫県」在の「株式会社イアラ」の存在は確認できなかった。
してみれば、「兵庫県」在の「株式会社イアラ」をもって、本願商標と同一の商号の他人の存在とする原査定の認定は、誤りであるといわざるを得ない。
(3)「他人の承諾」を得たものであるかについて
請求人は、前記(2)に挙げた「東京都港区南青山2丁目29番9号南青山リハイムビル901号」在の「株式会社イアラ」から、本願商標を登録することについての承諾を得たことを証明するための書類(承諾書等)を提出していない。
したがって、本願商標は、これを登録することについて、他人の承諾を得たものとは認められない。
(4)まとめ
前記(1)ないし(3)で認定したとおり、本願商標は、他人の名称からなる商標であり、かつ、当該他人の承諾を得ているとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものであり、これを登録することはできない。

3 請求人の主張(要旨)
請求人(出願人)は、「商標法第4条第1項第8号は、人格権の保護を趣旨として設けられた規定であるところ、この法の趣旨に照らせば、『他人』の承諾については、あらゆる『他人』の承諾を必要とすると解するのではなく、承諾を得ないことにより、客観的に人格権の毀損が認められるような事情がある場合に必要とすると解すべきである。」旨主張する。
しかし、本号の規定が、最高裁判決3において判示されているとおり、「人(法人等の団体を含む。)は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されている」こと、さらに、「他人の承諾」は、最高裁判決2において判示されているとおり、「8号本文に該当する商標につき商標登録を受けようとする者は、他人の人格的利益を害することがないよう、自らの責任において当該他人の承諾を確保しておくべきもの」であることから、その他人の人格権の保護の観点より、承諾を必要とするものであり、「客観的に人格権の毀損が認められるような事情がある場合に必要」とする請求人の意見は失当であると言わざるを得ない。
また、請求人は、「原査定は、約40年も前の裁判例を示して、『本願については、他人の名称が著名か否かにかかわらず、その他人の承諾が必要である』という判断に固執している。」旨主張している。
しかしながら、前記最高裁判決2及び3は、それぞれ、平成16年6月8日及び平成17年7月22日に判決されているものであり、その内容も、原査定で提示した「東京高裁昭和44年(行ケ)第6号判決」と特に異なる内容が判示されているものではない。
そして、原査定は、判例の一つを挙げ、認定をしたものであり、最高裁判決3からすれば、「他人の名称が著名か否かにかかわらず、その他人の承諾が必要」とした原査定の認定に誤りはなく、請求人のこの点についての意見も、失当であると言わざるを得ない。
その他の請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すことはできない。

4 結論
以上によれば、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲

審理終結日 2008-10-31 
結審通知日 2008-11-04 
審決日 2008-11-26 
出願番号 商願2007-21220(T2007-21220) 
審決分類 T 1 8・ 23- Z (X363742)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 潤稲村 秀子榎本 政実 
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 小川 きみえ
豊田 純一
商標の称呼 イアラ 
代理人 松尾 憲一郎 

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