• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y03
管理番号 1190864 
審判番号 無効2007-890178 
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-11-29 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5042458号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5042458号商標(以下「本件商標」という。)は、「DHCサンカット」の文字を標準文字で表してなり、平成18年6月21日に登録出願、第3類「日焼け止め用化粧品」を指定商品として、平成19年4月20日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(1)登録第521293号商標(以下「引用商標1」という。)は、「サンカツト」の片仮名文字を横書してなり、昭和32年4月24日に登録出願、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として、同33年5月29日に設定登録され、その後、四回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、当該商標権は現に有効に存続しているものである。
(2)登録第5023484号商標(以下「引用商標2」という。)は、「SUN CUT」の欧文字を横書してなり、平成18年6月5日に登録出願、第3類「化粧品,香料類(但し,薫料を除く)」を指定商品として、同19年2月2日に設定登録がなされ、当該商標権は現に有効に存続しているものである。
以下、「引用商標1」及び「引用商標2」を一括して「引用各商標」という。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第51号証を提出した。
(1)請求の理由
ア 本件商標は、出願日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であって、その商標登録に係る指定商品又はこれらに類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 請求の根拠
本件商標は、以下の理由から明らかなように、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、本件商標は同法第46条第1項第1号により無効とされるべきものである。
ウ 具体的理由
(ア)本件商標と引用各商標の構成について
本件商標は、甲第1号証に示すとおり、欧文字の「DHC」と片仮名文字の「サンカット」を一連に横書きにしてなる商標であることから、全体として「ディーエイチシーサンカット」の称呼が生ずる商標である。
また、本件商標中「DHC」の文字部分は、商標権者である「株式会社ディーエイチシー」の広く知られたハウスマークであることから、本件商標を見て、「DHC」の「サンカット」という商品であると理解されることには疑う余地もなく、本件商標は「DHC」部分と「サンカット」部分とに分離判断され、その結果、「サンカット」の文字部分も要部となり、よって、本件商標は「ディエイチシーサンカット」の称呼のほか、「サンカット」の称呼をも生ずるものである。
一方、引用各商標は、甲第2号証及び甲第3号証に示すとおりの構成からなり、その表記から「サンカット」の称呼が生ずる商標である。
(イ)本件商標が分離判断されるべき点について
本件商標が「DHC」部分と「サンカット」部分とに分離判断される点については、以下に述べる理由から明らかである。
すなわち、本件商標のうち、「DHC」の欧文字部分は、商標権者である「株式会社ディーエイチシー」の商号の英語表記として需要者・取引者に広く知られたものである(甲第4号証)。そして、かかる商標権者の商号の英語表記である「DHC」は、商標権者を表す基本商標として、商標権者が製造販売するほぼ全商品に使用されているものであり(甲第4号証)、商標権者に係る代表的出所標識として広く知られたハウスマークである。
一方、本件商標中「サンカット」部分は、かかる商標権者である「DHC」が製造販売する個別の商品の出所標識として独立して認識される部分であって、商標の要部足りうる部分というべきである。
すなわち、本件商標における「DHC」の文字部分は、商標権者の業務主体を表す周知・著名な代表的出所表示標識として把握される部分であることから、本件商標の構成においては分離判断され、それのみで独立して認識される部分となる一方、「サンカット」の文字部分についても、商標権者の取り扱いに係る個別の商品商標として、独立して認識される部分となるのである。
なお、本件商標中の「サンカット」の文字部分については、「日やけ止め用化粧品」を取り扱う化粧品業界において、日焼け止め用化粧品の一般的な名称であると認識されるに至っている又は慣用されているものとは言えず、また、「日焼け止め」という商品の効能を示す表示として一般的に使用されているものと認めることもできないものであって、本件商標において、「サンカット」の文字部分も、自他商品識別機能を発揮するものというべきである。
この点、請求人が精査した限り、化粧品及び化学分野に関する専門書において、「サンカット」が、「日焼け止め用化粧品」又は「日焼け止め」という商品の効能を表示するものとして使用されている事実は見当たらなかった。例えば、丸善株式会社発行の「化粧品事典」において、「日焼け」について紹介する頁の中には、「目の保護のためには・・・(略)サングラスのガラスレンズはUVAを透過するため、UVカットレンズのものが推奨される」、「赤ちゃんにもUVケアは必要ですか?」、「科学的な紫外線の防御策としては、UVケア化粧品の塗布が有効・・・」との記載があり、日焼けの原因たる紫外線の対策を意味する文言として、「UVカット」若しくは「UVケア」との記載はあるが、「サンカット」との記載はない。また、同書の索引欄には、「日焼け止め化粧品」を示す用語として、「サンスクリーン化粧品〔sunscreen cosmetic〕→日焼け止め化粧品」及び「サンプロテクター〔sun protector〕・・日焼け止め化粧品ともいう」との記載はあるが、「サンカット」の記載はない(甲第5号証)。同様に、株式会社廣川書店発行の「香粧品事典」においても、日焼け止め製品として「サンスクリーン」との記載が、日焼け止めクリームとして「サンスクリーンクリーム」との記載が、紫外線防御機能を持たせた化粧品として「サンスクリーン剤」との記載があるが、「サンカット」との記載はない(甲第6号証)。また、萬株式会社発行の「化粧品成分事典」においても、紫外線吸収剤等の日焼け止め用化粧品を示す表示として「サンスクリーン剤」等の記載はあるが、「サンカット」との記載はない(甲第7号証)。また、イーワイ コワーズ発行の「化学専門用語」においても、日焼け防止用化粧品を示すものとして、「sun care product」との記載が、日やけ止め化粧品を示すものとして「sunscreen cosmetics」との記載があるが、「サンカット」の記載はない(甲第8号証)。
次に、一般的な辞書に「日焼け止め用化粧品」及び「日焼け止め」という商品の効能を表示するものとしてどのような表示が記載されているか調べたところ、「サンスクリーンクリーム」(甲第9号証)、「SUNSCREEN」(甲第10号証ないし甲第13号証)、「suntan lotion(日焼け止めローション)」(甲第10号証及び甲第14号証)、「(anti-)sunburn cream〔oil〕」(甲第12号証)、「anti-suntan [anti-sunburn、sun-screening]cream」、「anti-suntan oil」(甲第15号証)の表示は認められるが、「サンカット」との表示はない。
また、インターネット上において、日焼け止め用化粧品及び「日焼け止め」という商品の効能を表示するものとしてどのような表示がなされているか調べたところ、「UV化粧品」、「サンスクリーン剤が入っている化粧品」、「UV対策化粧品」、「サンスクリーン日焼け止め」(甲第16号証)の表示は認められるが、「サンカット」との表示はない。
更に、インターネット上で化粧品を販売するサイトにおいて、化粧品のカテゴリーを示すものとしてどのような表示がなされているか調べたところ、「日焼け止め」、「UVケア」の表示は認められるが、「サンカット」との表示はない(甲第17号証ないし甲第19号証)。
更に、化粧品各社のホームページから、「日焼け止め用化粧品」及び「日焼け止め」という商品の効能を示すものとして、どのような表示がなされているか調べたところ、「UVカット」(甲第20号証ないし甲第23号証)、「サンスクリーン」(甲第23号証)、「UVケア」(甲第24号証)、「プロテクター」(甲第25号証)、「UV Power Protector」(甲第26号証)、「UV Protective」(甲第27号証)、「フェイスプロテクター」(甲第28号証)、「日やけ止め」(甲第29号証)等の表示は認められるが、「サンカット」との表示はない。
以上のように、専門辞書の記載、一般的な英和・和英辞典の記載及びインターネットの化粧品取り扱いサイト上における用語の使用例等を検討しても、「サンカット」が、「日やけ止め用化粧品」を取り扱う化粧品業界において「日焼け止め用化粧品」を一般的に表示するものとして認識されるに至っている又は慣用されているものとは言えず、また、「日焼け止め」という商品の効能を示す表示として一般的に使用されているとは認められないことは明らかである。
この点、もともと、いわゆる「日焼け止め用化粧品」は、紫外線を吸収するか、反射させるか等の方法で日焼けを防ぐものとして製造されてきた(甲第31号証)。そして、その「紫外線(Ultra Violet)」を防止することを示すため、「紫外線対策」または「紫外線カット」という意味で広く使用されている言葉は、上記辞書等の記載から見るに、「UV対策」、「UVカット」などの語であり、「サンカット」は、「日焼け止め用化粧品」又は「日焼け止め」という効能を示す語として一般に使用されてはいない。
ここで、「サンカット」なる語について考えてみると、国語辞典において「サン」は「太陽」の意であることが掲載されており、「他の語と複合して用いられる」ことの例として「サングラス」、「サンルーム」の例が掲載されている(甲第30号証)。また、「カット」については、「(i)切ること、また、一部を切り取り除くこと。(ii)洋裁で、裁断すること。(iii)髪を適当な長さに切りそろえること。また、その髪形。(iv)野球で、他の野手への送球を途中で捕球すること。(以下略)」の意であることが記載されており(甲第30号証)、実際には、「カット」は「切る」という意味合いで用いられることが多い。以上から、「サン」と結合させた「サンカット」なる語が、「太陽を切る」という意味合いを想起させることがあるとしても、日焼けが紫外線によるものと広く知られている以上、「太陽を切る」を意味する「サンカット」が、日焼け止めという商品の効能を一般に表示しているとは到底認められない。「サンカット」は、日本人に広く知られた「サン(SUN)」と「カット(CUT)」という言葉を組み合わせて請求人が作り出した創造商標であり、「サン」が「太陽」、「カット」が「切る」等の意味合いでそれぞれ知られているとしても、「サンカット」という語は、上記のように、辞書上にも存在せず、特定の意味合いがあるものとはいえないのであって、識別力を有する商標として出所表示機能を果たすものなのである。
なお、引用商標2は、平成19年2月2日を登録日とするものであるところ、少なくとも同年に、特許庁においては、「SUNCUT」に自他商品識別機能があるものと判断している。
以上のことから、商標権者にかかる出所標識として広く知られたハウスマークである「DHC」の文字部分と、識別力のある「サンカット」の文字部分とを、其々その構成中に含む本件商標は、「DHC」と「サンカット」の各部分において、独立して取引の対象となる要部であるというべきである。そして、それぞれの要部は、いずれも他の商標との類否判断の対象となる部分といえ、したがって、本件商標からは、「ディーエイチシーサンカット」の称呼のほか、「ディーエイチシー」及び「サンカット」というそれぞれの称呼をも生ずるものというべきである。
(ウ)引用各商標と本件商標の類否について
上記で述べたとおり、本件商標から、「サンカット」の称呼が生ずる一方、引用各商標からも同様に「サンカット」の称呼が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用各商標とは、称呼上、類似する商標というべきである。
また、本件商標の指定商品と引用各商標の指定商品中「化粧品」は、同一又は類似することが明らかであり、また引用各商標は本件商標の出願日以前に出願されたものである。
(エ)過去の審決例について
上記に述べた判断は、各商標の各構成要素が分離判断される結果、互いに類似するとした、以下の審決・判決からも、明らかである。
平成12年(行ケ)第461号審決取消請求事件(甲第32号証)
平成4年(行ケ)第218号審決取消請求事件(甲第33号証)
平成6(行ケ)第32号審決取消請求事件(甲第34号証)
さらに、審決(甲第35号証ないし甲第44号証)においても、周知・著名商標以外の部分から独立の称呼が生じる結果、商標が互いに類似すると判断されている。
また、「商標審査基準の解説(第5版)」(甲第45号証)においても、「登録商標が著名な商標と他の文字等の結合商標である場合、すなわち著名商標を一部に含む商標の著名商標以外の部分の扱いについては何等定められていないが、このような結合商標については、著名商標を含む故に、いわゆるハウスマーク(代表的出所表示)等として著名商標部分とそれ以外の部分から構成されるものと需要者に容易に認識され、そして「○○○」の「×××」の如く理解される場合が少なくないとして、著名商標以外の部分を分離、抽出して、類否判断をする実務例も少なくない」としており、引用各商標と本件商標とが称呼上類似する商標と言うべきことは、特許庁の審査基準上も明らかである。かかる点からも、本件商標はやはり、「DHC」の「サンカット」の如く理解される場合が少なくないのであり、よって引用各商標と称呼上類似するというべきである。
(オ)本件商標がその商標権者によって効能表示ではなく商標として実際に使用されている事実について
本件商標の商標権者は、本件商標について、「DHCサンカット」として標準文字出願により登録を受けているが、実際の商品(クレンジング剤)には、「DHC」、「サンカット クレンジング」と二段書きで書して商品名として表示し、その商品がどのような種類の化粧品であるかを示すものとして括弧書きで「日焼け止め専用クレンジング」と表示している(甲第46号証-1)。また、乳液についても同様に、商品名としては「DHC」、「サンカットQ10 50プラス」(甲第46号証-2)及び「DHC」、「サンカットQ10 50プラス」、「ライトラメ」(甲第46号証-3)と二段書きで書して商品名として表示し、商品の種類を表示するものとして括弧書きで「日焼け止め乳液」と表示している(甲第46号証)。
また、実際に商品前面に付された態様を見ても(甲第46号証)、文字の装飾も異なる上、「DHC」部分は横書き、「SUNCUT」は縦書きと文字の態様(フォント及び文字体)が異なることは然ることながら、「DHC」と「SUNCUT」の文字をそれぞれ、分断して商品に付して使用しており、本件商標の商標権者も、実際には、「SUNCUT」を商品の出所表示として使用しているものであり、決して商品の効能表示として使用しているものではない。そして、実際に需要者等この使用態様を目にした者は、やはり「DHC社の『サンカット』という商品である」若しくは「DHC社のこの商品の名前は『サンカット』」と認識するといわざるを得ない。
したがって、上述のとおり「サンカット」の言葉が、商品の効能表示であるとはいえず、本件商標の商標権者も「SUNCUT」という表示を単独で用い、商品の出所表示として使用していることから、本件商標の「サンカット」部分は、商標として使用される部分であり、本審判において、先願商標との類否判断される場合においても、本願商標が「DHCサンカット」としてのみ把握されているので、「DHC」と「サンカット」は分断されて認識されることがないとは到底考えられないものである。
(カ)請求人による申し入れにより同業他社が「サンカット」が請求人の商標であると認め、その使用を中止した事実について
請求人は、引用商標1が「SUN(サン)」と「CUT(カット)」という日本人に一般的に親しまれて広く知られている英語から構成される造語であることから、「日焼け止め用化粧品」を指称するものとして、「Sun screen」、「UVカット」のように使用されることにより、商標がその識別力を失わないように、適宜対応を行っている。
先般、請求人は、インターネットのウェブサイト上で「サンカット」という標章を使用した日焼け止め化粧品を製造又は販売していた第三者に対し、当該商品の製造販売の差止め等を求める文書を送付した。そして、当該文書を受領した第三者は、皆、請求人の引用商標1の商標権を尊重し、使用を中止した経緯がある(甲第47号証)。
本来出願人の造語商標であっても、第三者により長年使用されることにより、登録商標がその識別力を失い、慣用商標又は効能表示にすぎないものとなってしまう場合があるが、請求人は、引用各商標は請求人の登録商標であることから、慣用商標又は効能表示となることを防ぐために、上記対応をした次第である。引用各商標は、上述のとおり、英語辞典等辞書にも掲載されておらず、普通名称でも慣用商標でも、特定の商品の効能表示でもない。
したがって、引用各商標が請求人の登録商標であり、普通名称としても、慣用商標としても、商品の効能表示としても使用されていない以上、「サンカット」及び「SUNCUT」の語は、化粧品等商品について自他商品識別機能を有する商標であり、「DHC」という著名な企業の商号の一部と「サンカット」の文字を結合させてなる本件商標は、「DHC」の構成部分においては分離判断され、「サンカット」のみで独立して認識されるため、引用各商標と類似するというべきである。
(2)弁駁の理由
ア 引用各商標の自他商品識別表示機能について
(ア)「サン」が「太陽」、「カット」が「切る」等の意味合いでそれぞれ知られており、「サンカット」なる語が「太陽を切る」という意味合いを想起させることがあるとしても、日焼けが紫外線によるものと広く知られている以上、「サンカット」が日焼け止めという商品の品質・効能を表現するものと一般に認められているとはいえず、自他商品の識別標識として機能し得ない文字に該当するものとは到底認められない。
(イ)書籍における記載について
被請求人は、被請求人の主張の根拠として、「化粧品成分ガイド」(乙第3号証)、「化粧品成分用語事典2006」(乙第4号証)、「スーパー・コスメティック・サイエンス」(乙第5号証)という3つの書籍に「サンカット商品」若しくは「サンカットパウダー」の記載がされていることを挙げているが、化粧品及び化学分野の専門書において「日焼け止め」という商品の効能表示として使用されている語は、一般的に「UVケア」、「UVカット」、「サンスクリーン」、「サンプロテクター」等であり、一般的な辞書においても「日焼け止め」を示す表示としては、「サンスクリーン」等の記載が使用されていることが認められ(甲第5号証ないし甲第15号証)、今般、被請求人が引用するこの3つの記載があるという事実のみをもって、引用各商標が自他商品の識別標識としての機能を具備していないとは到底いえないものである。
(ウ)JANコードに関する記載・対応について
被請求人は、財団法人流通システム開発センターが運営・管理する共通商品コードとしての「JANコード」を管理するデータベース「JICFS」の体系中、「ボディケア化粧品」の範疇に「UVケア」のカテゴリがあり、そこに「UVケア」として「サンカット」の記載がある(乙第6号証の1及び2)ことから、「サンカット」が化粧品の分野において、「日焼け止め」を意味し、「日焼け止め用化粧品」の原料若しくは成分表示として充分に認知されているだけでなく、UVケア商品の一つが「サンカット」であると認定されていると主張する。
しかし、乙第6号証の2第6頁の「サンカット」の記載の下には、「UVカット効果のある顔用の乳液は・・」との記載があり、JICFS商品分類においては紫外線防止という効果を示す表現として「UVカット」の語が使用されていることが明らかであり、「サンカット」が「日焼け止め」の意味で使用されている事実はない。また、被請求人は、上記JICFS商品分類の記載によって、「サンカット」が「日焼け止め用化粧品」の原料若しくは成分表示として充分に認知されているだけでなく、UVケア商品の一つが「サンカット」であると認定されていると主張するが、「サンカット」が一体どのような原料又は成分表示として認知されていると主張するのか、「サンカット」がどのような商品を意味するものと認定されていると主張するのかは全くもって不明である。
更に、該JICFS商品分類については、「JICFSでは、利用者における一層の活用度向上を目的として、定期的に『分類変更』を実施しております。今後の変更情報については本ホームページでもご案内してまいりますので、随時ご確認ください」とあり(乙第6号証の1第10頁)、その内容は流動的なものにすぎないところ、かかるJICFS商品分類における「サンカット」の記載のみをもって、「サンカット」が化粧品の分野において、「日焼け止め」を意味し、「日焼け止め用化粧品」の原料若しくは成分表示として充分に認知され、UVケア商品の一つが「サンカット」であると認定されているとは到底いえないものである。なお、請求人は、「サンカット」が慣用商標又は効能表示となることを防ぐため、財団法人流通システム開発センターに対し、JICFS商品分類における上記「サンカット」の使用を中止するよう既に申し入れた(甲第48号証)。
以上の次第であり、JICFS商品分類における「サンカット」の記載をもって、「サンカット」の語が「日焼け止め」を意味し、「日焼け止め用化粧品」の原料若しくは成分表示として認知され、UVケア商品の一つが「サンカット」であると認定されているとは到底認められないものである。
(エ)請求人の有価証券報告書における記載について
被請求人は、請求人の第65期有価証券報告書の一部に「サンカット化粧品」の記載があることを指摘する。
これについては、請求人の研究所部門が「研究開発活動」の欄を記載した際に当該表示を用いたものであるが、当該報告書の文責者がこのような表現を使用したからといって、誤った理解のもとで記載された表示であり、かかる記載をもって、「請求人自らが『サンカット』を品質・効能表示として使用」しているとはいえない。
なお、上記記載部分については、「UVプロテクター」に訂正する旨の訂正報告書を提出する予定である(甲第49号証)。
(オ)特許・実用新案の公報における記載について
被請求人の列挙した41件の明細書を精査したところ、まず、乙第9号証、乙第15号証及び乙第16号証は、発明若しくは考案が化粧品に関するものではなく、また、化粧品に関する記載において「サンカット」の語が用いられているわけではないので、「サンカット」の語が「日焼け止め用化粧品」の品質・効能表示であるとする被請求人の主張の根拠とはならない。
次に、乙第8号証、乙第10号証ないし乙第14号証においては、「サンカット化粧料」(乙第8号証の1)、「サンカットパウダーファンデーション」(乙第8号証の2)、「油中水型サンカット化粧料」(乙第8号証の3)、「サンカットクリーム」(乙第10号証ないし乙第12号証)、「サンカット水中油型乳液」(乙第13号証)の記載が見受けられた。しかし、乙第10号証の1ないし17及び乙第11号証は、発明者や代理人が重複するなど、記載事項に関連がある発明であることから、同一人物が明細書の記載中に「サンカット」という表記を使用したものと同視でき、乙第13号証の1ないし5についても同様である。したがって、純粋に41件の記載例が見つかったものとはいえないところ、明細書を記載したある特定人物が「サンカット」を請求人の登録商標と知らないで、文中に表現の一つとして用いたとしても、これによって「サンカット」が一般的に化粧品の専門分野において「日焼け止め」を意味していると認められるものではない。また、そもそも、これらの記載においては、どのような趣旨で「サンカット」の語を使用しているかは不明である。例えば、乙第13号証においては、発明の実施例の一つとして、「サンカットクリーム」の記載がある一方、「日焼け止め乳液」という表現も使用されているところ、どういった品質・効能を「サンカット」とし、どういった商品を「サンカットクリーム」と表現したかったのか、当該表現の記載者の意図は明らかではなく、かかる事実からも、「サンカット」が一般的に化粧品の専門分野において「日焼け止め」を意味しているとは認められない。
したがって、これら明細書上に「サンカット」という表現が記載されている例を以っては、被請求人の主張する、「サンカット」が「日焼け止め用」の意味する語として用いられていることが明白であるとはいえない。
(カ)第三者の使用
被請求人は、化粧品の取引において「日焼け止め用化粧品」を「サンカット」と称して普通に使用されていると主張し、その根拠として、乙第17号証ないし乙第36号証を提出している。この中には、審判請求書に記載したように、請求人が申し入れをし、使用を中止してもらったもの(甲第47号証)が含まれており、現在、そのような商品が存在はしないが、インターネット上に記載のみが残っているものが含まれている。また、それ以外のものについては、請求人は、引き続き、これらの「サンカット」商標の無断使用者に対し、使用中止を求めることを検討している。
また、乙第37号証ないし乙第55号証は、化粧品に関する記載ではなく、「サンカット」の語が「日焼け止め用化粧品」の品質・効能表示であるとする被請求人の主張の根拠とはならない。
(キ)統計上の数字について
被請求人は、経済産業省の平成18年度生産動態統計を挙げ(乙第56号証)、そこに「日焼け止め及び日やけ用化粧品」が32,951,000個販売されている旨の記載があることから、請求人からの申し入れにより、それまで「サンカット」という標章を使用した日焼け止め化粧品を製造・販売していた第三者が、その使用を中止した事実を示す書面として提出した甲第47号証に表れる個数と照らし合わせ、平成18年度の販売総個数に比して、わずか0.035%に範囲の同業者であるので、請求人の対応によっては、引用各商標が慣用商標及び効能表示となることを防止されたとは考えられないと主張する。
しかし、被請求人の提出した乙第56号証は、「日焼け止め及び日やけ用化粧品」全体の年間販売総数を示したものであって、これら全ての商品が「サンカット」の語を使用していたわけではなく、かかる数字と請求人の申し入れに応じた「サンカット」の標章を以前使用していた者の製品の在庫数と対比して、引用各商標が慣用商標及び効能表示となることを防止されたとは考えられないとする被請求人の主張は、明らかに失当である。逆に、被請求人の論拠に従えば、日焼け止め用化粧品を製造販売していた第三者のうち、当時「サンカット」商標を不正に使用していた者の数が非常に少なかったというべきであり、「サンカット」の語が慣用商標及び効能表示になっていないことの証左となるものである。
イ 本件商標と引用各商標の類否
被請求人は、本件商標は「ディーエイチシーサンカット」又は「ディーエイチシー」のみの称呼が生ずるものであって、引用各商標からは「サンカット」の称呼が生ずるので、互いに聞き誤るおそれがない別異の称呼として聴取されるものであると主張する。そして、「識別性がないか又は識別性の極めて薄い登録商標(α)と該登録商標を含む商標の対比について、αを含む商標からは、αの称呼を生じないと認定し、称呼上類似しないと認定された次のような審決例に徴しても明らかなところである」と主張して、審決例(乙第57号証ないし乙第60号証)等を列挙している。
これらは、いずれも商標とその指定商品との関係を考慮した上で、個別具体的に判断されたものであり、本件商標と引用各商標の類否判断に影響を及ばずものではない。
すなわち、本件商標の「DHC」部分は、商標権者にかかる出所標識として知られたハウスマーク部分であり、「サンカット」の文字部分は、英和辞書等上に存在する語ではなく、「サン(SUN)」は「太陽」、「カット(CUT)」は「切る」等の意味合いでそれぞれ広く知られているとしても、化粧品について、特定の品質・効能表示となっているものとは認められず、自他商品識別機能を有する部分であるので、本件商標からは「ディーエイチシーサンカット」の称呼の他、「ディーエイチシー」及び「サンカット」の称呼もそれぞれ生じるというべきであり、本件商標は、引用各商標と類似する商標であるといわざるを得ない。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第60号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標と引用各商標について
本件商標の構成は、甲第1号証に示されたとおり、標準文字で「DHCサンカット」としてなるものであって、平成18年6月21日に登録出願、第3類「日焼け止め用化粧品」を指定商品として、平成19年4月20日に登録されたものである。
そして、本件商標を構成する「DHCサンカット」の文字は、「DHC」と「サンカット」の文字との結合であるところ、「DHC」の文字は被請求人の商品の出所を示す標識であるばかりでなく、被請求人の組織及び製造・販売にかかる製品を表徴する社標であり、化粧品業界における著名な商標の表示であるのに対し(乙第1号証)、「サンカット」の文字は、「サン」が「太陽」を意味する「sun」で、「カット」が「切る、遮る」等を意味する「cut」であるところから(乙第2号証)、「サンカット」は「太陽光をカットする、直射日光を遮る」等の意味合いを想起させるものである。
したがって、「サンカット」の文字は、商品「日焼け止め用化粧品」の品質・効能を表現するものとして自他商品の識別標識として機能し得ない文字に該当するものである。
被請求人が「サンカット」は自他商品の識別標識としての機能を具備しないと主張する根拠は、以下の証拠に基づくものである。
すなわち、(i)「化粧品成分ガイド」によると「酸化チタン」が特性として紫外線速断効果を有し、サンカット商品には欠かせない原料の一つとされており(乙第3号証)、(ii)「化粧品成分用語事典 2006」によると酸化チタンの複合球状粉体をファンデーションに応用したものを「サンカットパウダー」とされており(乙第4号証)、更に(iii)「スーパー・コスメティック・サイエンス」によるとUVカット素材としてサンカットパウダーが肌を完全にガードするものであると紹介されているのである(乙第5号証)。
また、我が国で最も普及している共通商品コードは「JANコード」と言われるものであり、POSシステム、在庫管理、受発注システム等に用いられているバーコードもJANコードから生成されたものであって、このJANコードは、経済産業省の外郭団体「財団法人流通システム開発センター」が運営・管理しているものである。
そして、このJANコードを一元管理するデータベース「JICFS」の体系によると、「ボディケア化粧品」の範疇に属する「UVケア」とは、「サンカット、日焼け止めクリーム、日焼け止めシート、など」となっている(乙第6号証の1、2)。
つまり、「サンカット」とは、化粧品の専門分野において「日焼け止め」を意味し、「日焼け止め用化粧品」の原料若しくは成分表示として充分に認知されているだけでなく、我が国のあらゆる商品を網羅・体系化している国に準ずる機関においてもUVケア商品の一つが「サンカット」であると認定されていることが上記の事実から立証される。
また、請求人の第65期有価証券報告書(自:平成18年4月1日、至:平成19年3月31日)第19頁「化粧品事業」の項において、「当社従来品よりUVA領域の紫外線カット効果に優れるとともに透明感のある化粧膜のサンカット化粧品「ボーテ ド コーセー ウルトラサンプロテクターUV」を開発いたしました。」と記載しているのである(乙第7号証)。
そうであるからして、「サンカット」はもはや化粧品分野、流通分野での表示に限らず、法人としての公式記録にも「サンカット」の語は「日焼け止め用」を意味する語として用いられていること、明白である。
したがって、請求人自らが「サンカット」を品質・効能表示として使用していながら、一方で「サンカット」が登録商標であるとの主張をすることは、全く失当である。
更に、上記被請求人の主張は、これまで数多く出願された特許及び実用新案においても立証できるものである。
即ち、本願の出願日、平成18年6月21日より17年前の平成1年12月12日、及びそれ以降に出願された特許出願及び実用新案登録出願において、「サンカット」の語は「日焼け止め用」を意味する語として41件の明細書に記載されている。その出願人若しくは特許権者並びに実用新案権者は、当業者として充分な技術知識と認識をもつ法人らである(乙第8号証の1ないし乙第16号証)。
そうとすると、「サンカット」の語が「日焼け止め用」を意味することは明らかなところであって、このことは、「サンカット」の語を最初に明細書に記載した請求人においても充分に承知しているところである(乙第8号証の1ないし3)。
また、化粧品の取引において、各化粧品会社が展示する「日焼け止め用化粧品」を「サンカット」と称して普通に使用されていることは本件商標の出願審査時に被請求人が提出している13の証拠資料(平成19年41月19日、意見書添付の参考資料5ないし9の4)によっても明らかなところであるが、被請求人は更に化粧品に関し「サンカット」の表示を使用する事例を示す(乙第17号証ないし乙第36号証)。
更に、「サンカット」の語は、化粧品以外の商品においても「太陽光をカットする、直射日光を遮る」という品質・効能表示として広く使用されている(乙第37号証ないし乙第55号証)。
ところで、請求人は甲第47号証を示して同業他社が「サンカット」を請求人商標と認め、その使用を中止した旨主張する。
しかし、経済産業省の平成18年度生産動態統計によると、「日やけ止め及び日やけ用化粧品」は32,951,000個販売されている(乙第56号証)。そして、請求人の求めに応じたのが11社、記載された在庫総数は11,712個、個数を明記した会社の在庫数の平均は2342.4個である。つまり、誓約書を取りつけたのは、平成18年度の販売総個数に比して僅か0.035%の範囲の同業者であって、これをもって慣用商標又は効能表示となることを防止できたとは到底考えられない。
したがって、「サンカット」の語は、化粧品等の特定の分野に限定的に使用されている特殊な技術用語ではなく、むしろ一般の需要者を含め広範に使用されている品質・効能表示であることは甲第47号証の存在を持っても否定し得ないものである。
そのため、本件商標は、これをその指定商品「日焼け止め用化粧品」に使用した場合、「サンカット」の文字が識別力を有しないため、これを除いた「DHC」の文字部分が自他商品の識別標識として機能する要部を形成するのであり、商標法上、これより一連の「ディーエイチシーサンカット」又は「ディーエイチシー」の称呼、及び「商標権者(DHC)の日焼け止め用化粧品」又は「商標権者(DHC)」のみの観念を生ずるのであり、これをもって商取引に資されるものである。
してみれば、本件商標は、その限定した指定商品について使用する限りにおいて、「サンカット」のみの称呼及び「日焼け止め化粧品」のみの観念は生じないものである。
これに対し、引用商標1は、「サンカット」の片仮名文字を横書きにしてなり、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品とするものである。
同じく、引用商標2は、「SUN CUT」の欧文字を横書きにしてなり、第3類「化粧品、香料類(但し、薫料を除く)」を指定商品とするものである。
そして、引用各商標は、その構成文字に相応して、「サンカット」の称呼を生じ、商品「化粧品」に関しては「日焼け止め用化粧品」の観念を生ずるものである。
(2)本件商標と引用各商標が類似しないことについて
ア 称呼について
本件商標は、上述の理由により「ディーエイチシーサンカット」又は「ディーエイチシー」のみの称呼を生ずるものであり、引用各商標からは「サンカット」の称呼が生ずるものである。
そこで、この「ディーエイチシーサンカット」又は「ディーエイチシー」と引用各商標より生ずる「サンカット」の称呼について比較すると、両称呼は、構成音数及び配列音を異にし、互いにその語感を全く異にする異質の称呼であり、互いに聞き誤るおそれがない別異の称呼として聴取されるものである。
ちなみに、本件商標と引用各商標と同様、識別性がないか又は識別性の極めて薄い登録商標(α)と該登録商標を含む商標の対比について、αを含む商標からは、αの称呼を生じないと認定し、称呼上類似しないと認定された次のような審決例(乙第57号証ないし乙第59号証)に徴しても明らかなところである。
同じく、本件商標と引用各商標の関係と同様、登録商標を含む商標「リポビタンD/プラス」と登録商標「プラス」及び「PLUS」との対比について、両商標は類似しないと判断した審決(無効2000-35621)を支持した平成14年10月24日付東京高裁の平成14年(行ケ)第79号の判決が存在する(乙第60号証)。
本件商標についても、これらの審決例及び判決例と同様の認定がなされるべきものである。
したがって、本件商標と引用各商標は、称呼において相紛れるおそれがない。
イ 観念について
本件商標と引用各商標は、その構成いずれも前記のとおりであり、本件商標がその構成態様から「商標権者(DHC)の日焼け止め用化粧品」又は「商標権者(DHC)」を観念させるのに対し、引用各商標は「日焼け止め用化粧品」を観念させるので、両者の意味合が全く異なるので、互いに観念を異にするものである。
したがって、本件商標と引用各商標は、観念において相紛れるおそれがない。
ウ 外観について
本件商標と引用各商標は、いずれもその構成前記のとおりであり、本件商標が欧文字と片仮名文字からなり、引用各商標が片仮名文字若しくは欧文字の表示であり、互いに構成文字の綴り字及び書体の態様を全く異にするのであるので、外観上において判然と区別されるものである。
したがって、本件商標と引用各商標は、外観において相紛れるおそれがないものである。
(3)まとめ
以上のように、本件商標は、引用各商標と称呼、観念及び外観において非類似であり、指定商品が互いに抵触するとしても、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

5 当審の判断
(1)本件商標について
ア 本件商標は、前記1のとおり、「DHCサンカット」の文字を書してなるところ、その構成各文字は同じ大きさ、同じ間隔、普通の書体(標準文字)で一連に表されているものであるが、その構成にあって「DHC」と「サンカット」は欧文字と片仮名文字の異種の文字からなるものであるから、視覚上、「DHC」と「サンカット」とが結合してなるものとして、両者を分離して認識、把握される場合があるといえるものである。
そして、その構成中「DHC」は、甲第4号証、乙第1号証及びテレビによる宣伝、広告よりすると、被請求人の代表的な商標として同人の業務に係る商品に使用され、本件商標の登録査定時において、化粧品等の需要者の間で広く認識されるに至っていたとの実情が認められる。
イ また、「サンカット」の片仮名文字については、以下の事実が認められる。
(ア)「全成分表示に対応した化粧品成分ガイド 第4版」(乙第3号証)には、「酸化チタン」の項の「特性及び配合製品」として、「紫外線遮断効果に優れ、微粒子なので肌に均一に延ばすことにより透明感のある脂溶性で、不自然な白浮きのないサンカット商品をつくることが出来きます。・・」と記載されている。
(イ)「化粧品成分用語事典2006」(乙第4号証)には、「サンカットパウダー」として「・・既存の有機粉体一酸化チタン複合体と比較して、紫外線カット力は10?20倍、肌への付着力は3?4倍、肌への広がりやすさは1.5?2倍である。」と記載されている。
(ウ)「スーパー・コスメティック・サイエンス」(乙第5号証)には、「続々登場するニューUVカット素材」と題した項の中で、「また、球状ポリエチレンのまわりに微粒子酸化チタンを付着させ紫外線のカット力を高めているサンカットパウダーと呼ばれているものもあります。」との記載があり、次頁に「微粒子酸化チタンをコーティングしたサンカットパウダー」として、その図解が掲載されている。
(エ)請求人に係るものと認められる特許公報(乙第8号証の1)には、「発明の詳細な説明」の「従来の技術及び発明が解決しようとする課題」に「従来、紫外線から皮膚を保護する目的で、紫外線散乱剤や紫外線吸収剤をサンカット化粧料やメーキャップ化粧料に配合することが行われている。・・」との記載があり、同人に係る公開特許公報(乙第8号証の2)中、その「実施例8,9」として「サンカットパウダーファンデーション」が記載されている。さらに、同人に係る公開特許公報(乙第8号証の3)において、発明の名称として「油中水型サンカット化粧料」と表示され、明細書の「従来の技術」の中に、「サンカット化粧料」の用語が幾度もでてくる。
(オ)信越化学工業株式会社に係る特許公報及び公開特許公報(乙第10号証の1ないし17)には、実施例の中で「サンカットクリーム」と記載されている。また、株式会社カネボウ化粧品及び信越化学工業株式会社に係る特許公報(乙第11号証)には、実施例9「サンスクリーン剤(クリーム)」の製造方法の中に「・・A及び成分11を加添加してサンカットクリームを得た。」との記載がされている。
(カ)花王株式会社に係る特許公報(乙第12号証)には、発明の実施の形態として「本発明の化粧料は、・・・でき、例えば、下地クリーム、サンカットクリーム、ファンデーション・・美容液等の化粧料とすることができるが、・・・」との記載がある。
(キ)株式会社資生堂に係る公開特許公報(乙第13号証の1ないし5)には、実施例として「サンカット水中油型乳液」が記載されている。
(ク)高級アルコール工業株式会社に係る特許公報(乙第14号証)には、実施例として「ファンデーション(サンカット)」の記載がある。
(ケ)インターネットのウエブサイト(乙第17号証ないし乙第55号証)上には、化粧品の販売に関わるものと認められる頁の中に、「サンカットエッセンス」(乙第18号証、乙第19号証)「sun cut essence」(乙第18号証)、「サンカット処方」(乙第20号証)、「サンカットクリーム」「肌を守り、整え、サンカット」(乙第24号証)、「UV-Aをカットする効果の高い微粒子サンカットパウダーを配合」(乙第28号証)などの記載が認められる。
(コ)以上からすると、「サンカット」の文字が一般的な辞書等に掲載されていないものではあるとしても、「サン」は太陽そのものを表すほか、「日光」の意をも有する語であり(甲第30号証及び乙第2号証)、また、「カット」は元来は「切る」の語義を表す語ではあるが、「UVカット」「紫外線カット」等にみられるように、「遮断する」といった意味合いで理解され得るものといえるから、「サンカット」が「太陽の光を遮断する」程の意味合いで受け止められることが充分にあるというべきであり、また、上記意味合いの語として使用されているものである。
ウ ところで、一連に表された結合商標にあっても、その結合された構成文字等との関係において、主従や軽重の差異が認められる場合には、主となり、要部となる部分から生ずる称呼や観念をもって取引に当たる場合があると解される。
しかして、本件商標は、その指定商品「日焼け止め用化粧品」について使用した場合に、これに接する化粧品等の需要者をして、構成中の「サンカット」の部分が、前記「太陽の光を遮断する」程の意味合いを想起させて、「日焼け止め用の化粧品」に係る用途や効能を表したものと認識させるとみるのが相当であって、識別力が極めて弱いというべきものである。
エ してみると、一連に表された本件商標にあっては、むしろ化粧品等の需要者の間で広く認識されるに至っている「DHC」の部分が強く印象され記憶されて取引に資され場合があるとしても、識別力が極めて弱い「サンカット」部分に殊更に着目して、それに相応した称呼や観念のみをもって取引に資されるとみるべきではないから、本件商標は、「サンカット」のみの称呼は生じないというべきである。
したがって、本件商標は、「ディーエイチシーサンカット」及び「ディーエイチシー」の称呼を生ずるものとみるのが相当であり、特定の観念を有しない造語と認められる。
(2)本件商標と引用各商標との類否について
本件商標は、前記1のとおり、「ディーエイチシーサンカット」及び「ディーエイチシー」の称呼を生ずるものであり、他方、引用各商標は、その構成文字から「サンカット」の称呼を生ずるものである。
そうすると、本件商標より生ずる「ディーエイチシーサンカット」及び「ディーエイチシー」の称呼と引用各商標より生ずる「サンカット」の称呼とは、それぞれの構成音数、構成音が明らかに異なるから、称呼において相紛れることなく判然と区別し得るものである。
また、本件商標と引用各商標は、前記1及び2のとおり、外観構成において明らかに相違するものであるから、外観上類似するものとはいえない。
さらに、本件商標は、前記(1)のとおり、特定の観念を有しない造語であるから、引用各商標と観念について比較することができない。
したがって、本件商標は、その外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用各商標に類似する商標と判断することはできないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、甲第46号証で被請求人の使用商標を挙げ、「サンカット」が識別機能を果たすものとして使用されているから、本件商標においても、同様に要部となる旨主張する。
しかしながら、請求人の示す使用商標の態様は、一連に表示された本件商標とは別異のものというべきであり、登録商標の使用の適否についてはさておき、これをもって一連に表示された本件商標に関する類否の判断が左右されるべきものとはいえない。
イ 請求人は、化粧品及び化学分野に関する専門書において、「サンカット」が、「日焼け止め用化粧品」又は「日焼け止め」という商品の効能を表示するものとして使用されている事実は見当たらず、日焼けの原因たる紫外線の対策を意味する文言として、例えば、「UVカット」又は「UVケア」の記載はあるが、「サンカット」との記載はない。また、一般的な辞書には「日焼け止め用化粧品」及び「日焼け止め」という商品の効能を表示するものとして、「サンカット」の表示はない旨主張する。
しかしながら、日焼けの原因たる紫外線の対策を意味する文言として「UVカット」等の用語例があることや「サンカット」が一般的な辞書等に掲載されていないことをもって、「サンカット」が前記の意味合いをもって看取されることが否定されるものとは言い難く、何らの意味合いをも看取させない造語として、本件商標の構成中において独立して取引上称呼や観念を生ずる要部として把握されるとまではいえないというべきである。
また、化粧品に関して当業者と認め得る者に係る特許明細書の名称や実施例の記載等において、請求人をも含めて、複数の事業者が、「サンカット化粧料」の用例のように、「サンカット」を一般的な用語として採択している事実は、化粧品の需要者をして本件商標における「サンカット」部分に日焼け止め化粧品との関連性を強く印象づけるとの推認を補強するものといわざるを得ない。
したがって、一般の辞書にないことや他の用語が存在すること、また、特許明細書の記載等に対する請求人の反論をもって、前記判断は左右されない。
ウ さらに、商標の類否判断は、対比すべき両商標の構成態様及び指定商品に基づいて個別具体的になされるべきものであるから、請求人が引用する判決例や審決例は本件とは商標の構成態様の異なる事案であり、これによって、前記の判断が左右されるものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-10-31 
結審通知日 2008-11-07 
審決日 2008-11-19 
出願番号 商願2006-57696(T2006-57696) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須田 亮一鈴木 斎 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 末武 久佳
前山 るり子
登録日 2007-04-20 
登録番号 商標登録第5042458号(T5042458) 
商標の称呼 デイエイチシイサンカット、デイエッチシイサンカット、デイエイチシイ、デイエッチシイ、サンカット 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 宮川 美津子 
代理人 伊勢 智子 
代理人 萼 経夫 
代理人 石田 良子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ