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審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199831328 審決 商標
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審判199830905 審決 商標
取消2008300167 審決 商標
審判199830904 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効としない Z12
管理番号 1152169 
審判番号 取消2006-30326 
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-03-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-03-08 
確定日 2007-02-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4457904号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4457904号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAGICAR」の欧文字と「AUTO SECURITY」の欧文字とを上下二段に書してなり、平成12年3月6日に登録出願、第12類「自動車盗難防止警報装置」を指定商品として、同13年3月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、「商標法第53条の2の規定により、本件商標の登録を取り消す」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第21号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人
請求人は、1993年3月23日に「永新電子」を名称として大韓民国(以下「韓国」ということがある。)において設立され、1998年12月10日に「永新イーエルシー」(永新ELC)に会社組織化及び名称変更された会社であり、自動車盗難防止警報装置を専門に製造販売しているものである(甲第2号証の1及び2)。
(2)被請求人
被請求人は、1999年9月9日に大韓民国において設立された会社であり、自動車用品の貿易業・輸出入業等を営むものである(甲第3号証)。
(3)請求人商標
請求人は、大韓民国において遅くとも1996年から現在に至るまで「MAGICAR」の文字からなる商標(ロゴ、書体は時代と共に変更されている。また、ハングルで表記される場合もあるが、これらは社会通念上同一の商標である。以下、これらの商標を総称して「MAGICAR」商標ということがある。)をその製造する自動車盗難防止警報装置に付して販売しており、その売上は、1998年(平成10年)約6億6千万韓国ウォン、2004年(平成16年)では約200億6千万韓国ウォンであり、1998年ないし2004年の売上は、合計で610億9千万韓国ウォン(約73億3千万円)に達している(甲第2号証、甲第4号証ないし同第6号証、枝番を含む、以下同じ。)。
本件商標の登録出願がされた平成12年度の単年度においても約40億8千万韓国ウォン(6億2千万円)であり、自動車盗難防止警報装置という特殊な商品としては極めて高い売上である。ちなみに、日本における自動車盗難防止装置の市場規模が40億円前後(2002年度)と予測されていることからすれば、経済規模が日本の約7分の1である韓国における請求人の売上がいかに高いものであるかは容易に推認されるところである(甲第7号証及び同第8号証)。
さらに、請求人は、「MAGICAR」商標を付した商品について、1999年(平成11年)約71万韓国ウォン、2000年(平成12年)約4千7百万韓国ウォン、2004年(平成16年)では約2千8百万韓国ウォン(甲第5号証の6)の宣伝広告費を投入し、1999年ないし2004年の合計では約2億6千万韓国ウォンに達している。これは自動車盗難防止装置という極めて限定されたマーケットを対象にした広告宣伝費としては極めて高額な広告宣伝費といえる。
以上の事実から、「MAGICAR」商標は遅くとも本件商標の登録出願の平成12年3月項までには請求人にかかる自動車盗難防止装置を表示するものとして韓国内で周知著名となっていた。
したがって、請求人は「MAGICAR」の文字からなる商標の正当な所有者(the proprietor of a mark)であることは明らかであり、韓国はパリ条約の同盟国であるから、請求人は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)(商標法第53条の2)ないし同盟国において商標に係る権利を有する者(パリ条約第6条の7(1))である。
なお、請求人は、現在「MAGICAR」の文字に図形を組み合わせた商標について、韓国を始めとして、イラン、アラブ首長国連邦、タイ、ニュージランド、インド、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、オーストラリア、インドネシア、米国で商標登録を有し、カナダ、マレーシアにおいて登録出願係属中であるが、本件商標の登録出願時点では、韓国その他の同盟国で登録された商標権を有していない。
そこで、商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を「登録商標」と限定して解釈すると、商標法第53条の2にいう「商標に関する権利」に該当しないとも考えられる。しかし、パリ条約第6条の7(1)は「the proprietor of a mark」として「標章」の「所有者」と規定し、商標法第53条の2はパリ条約第6条の7(1)を受けた規定であり、パリ条約第6条の7(1)が、標章の所有者の代理人又は代表者が、信義に違背して登録出願・登録することを排除する趣旨である以上、登録の有無に拘泥する理由はないというべきである。
(4)請求人と被請求人との関係
請求人は、1998年9月23日に審判外アトズと、日本における自動車盗難防止装置に関する独占販売契約を締結した。契約期間は1998年9月23日から1年間であるが、以後自動延長される。アトズは、貿易業等を営む一種の会社(但し、商法上の会社の要件をみたしていない。)であり、代表者は、被請求人と同じくパク・ヘグである(甲第11号証の1及び2)。
請求人は、この契約に基づいて1999年1月に6万ドルの輸出をした(甲第12号証)。
1999年10月頃、パク・ヘグはアトズを閉鎖ないし解散し、大亜ティーアンドシー(被請求人)を設立した。アトズと被請求人は、代表者を同じくし、アトズの閉鎖ないし解散とほぼ同時に被請求人が設立されており、実質的には同一主体といえる。仮に両者が形式的には同一法人ではないとしても、実質的な会社の運営主体である代表者が同一である被請求人のその後の行動を見れば、商標法第53条の2及びパリ条約第6条の7(1)が規定する「代理人」と同一視すべき法的地位にあると判断すべきである。
また、仮に両者が別人格としても、本件契約上の地位は、アトズの閉鎖ないし解散により、その後継会社である被請求人に承継されていた。
すなわち、請求人は前記契約に基づいて1999年4月10日ないし9月16日に自動車盗難防止装置を供給(販売)した。その後、1999年10月項アトズは閉鎖ないし解散されたが、その後、2002年12月17日ないし2004年2月19日にかけて、被請求人に自動車盗難防止装置が供給(販売)されている。そして、2001年4月2日ないし2003年9月26日にかけて、被請求人から請求人に対して自動車盗難防止装置が継続的に注文されており、2001年8月13日には請求人から日本の顧客に対し、被請求人を日本における代理人として紹介する電子メールが送信されており、2002年10月18日には請求人から被請求人に対して日本の顧客を紹介するFAXが送信されている。さらに、2004年5月21日には、請求人から被請求人に対して内容証明郵便で、請求人と被請求人との間の2003年7月16日ないし2004年3月29日にかかる取引の代金が支払われていないことを内容とする代金請求書が発送されている(甲第13号証ないし同第17号証)。
このように請求人と被請求人は、まさに「MAGICAR」商標にかかる自動車盗難防止装置についての請求人とアトズとの間で交わされた独占販売契約書の内容どおりの取引をアトズ閉鎖後に継続して行っており、かつ、アトズと被請求人は代表者が同じであることから、被請求人は、前記契約の当事者としての地位を承継していたことは明らかである。
さらに、仮に契約当事者の地位が引き継がれていなかったとしても、通常取引開始の合意から実際の発注に至るまでは2ないし3ヶ月を要することから、被請求人による最初の注文日である2001年4月2日の約3週間前である2001年3月9日において、被請求人と請求人とは、自動車盗難防止装置等の販売について特別の契約上、慣行上の取引関係に入っていたことは明らかであり、したがって、当該時点において代理人の地位にあったといえる。
以上から、本件商標の登録出願は、その商標に関する権利を有する者の「代理人」によってされたものである。
(5)本件商標と請求人商標(「MAGICAR」商標)の類否
本件商標は、上記構成よりなるところ、下段の「AUTO SECURITY」は単に指定商品の用途・効能を表すにすぎないから、上段の「MAGICAR」が要部として分離ないし抽出される。
他方、請求人商標は、「MAGICAR」の文字からなるから、本件商標と請求人商標とは要部において綴り字を同じくする。
よって、本件商標と請求人商標とは、外観及び称呼上類似すると認められ、かつ、本件商標の指定商品は請求人商標にかかる商品と共通する。
また、請求人は、被請求人に対し本件商標の登録出願をなすにつき承諾を与えた事実はなく、正当な理由もない。それどころか、請求人は、日本においては他の商標の使用を余儀なくされる事態が生じている(甲第2号証)。
以上から、本件商標の登録出願は、正当な商標所有者の我が国への参入を妨害し、また、外国における周知著名商標の信用にただ乗りする意図でされたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条の2に該当し、取り消されるべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、何らの答弁もしていない。

4 当審の判断
商標法第53条の2は、「登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代者であった者によってされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定されているところ、ここにいう「パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)」とは、これらの同盟国、加盟国及び締約国の商標法による商標権をいうものと解される(社団法人発明協会発行「工業所有権法逐条解説」参照)。
そこで、請求人の主張及び甲各号証によれば、請求人は、「MAGICAR」の文字からなる商標を使用した商品の取引の実情等について、(ア)請求人は、「MAGICAR」の文字からなる商標の正当な所有者(the proprietor of a mark)であることは明らかであり、韓国はパリ条約の同盟国であるから、パリ条約の同盟国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)(商標法第53条の2)ないし同盟国において商標に係る権利を有する者(パリ条約第6条の7(1))である。(イ)請求人は、現在「MAGICAR」の文字に図形を組み合わせた商標について、韓国を始めとして、イラン、アラブ首長国連邦、タイ、ニュージランド、インド、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、オーストラリア、インドネシア、米国で商標登録を有し、カナダ、マレーシアにおいて登録願係属中であり、本件商標の登録出願時点では、韓国その他の同盟国で登録された商標権を有していないが、標章の所有者である旨主張している。
確かに、甲各号証によれば、請求人は、上記諸国において登録商標を所有し又は登録出願中であることが認められる。しかし、これらの商標権の設定登録日は、本件商標の登録出願日である2000年(平成12年)3月6日以後であり、本件商標の登録出願時に、請求人がこれらの同盟国、加盟国及び締約国において、これらの同盟国等の商標法による商標権を所有していると認め得る証拠はない。
また、請求人は、「商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を『登録商標』と限定して解釈すると、商標法第53条の2にいう『商標に関する権利』に該当しないとも考えられる。しかし、パリ条約第6条の7(1)は『the proprietor of a mark』として『標章』の『所有者』と規定し、商標法第53条の2はパリ条約第6条の7(1)を受けた規定であり、パリ条約第6条の7(1)が、標章の所有者の代理人又は代表者が、信義に違背して出願・登録することを排除する趣旨である以上、登録の有無に拘泥する理由はないというべきである。」旨主張する。 しかしながら、該規定における「商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)」は、これらの同盟国等の商標法による商標権をいうものと解すべきことは上述のとおりであるから、この請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。
そうとすれば、請求人は、商標法第53条の2に規定する同盟国、加盟国及び締約国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者ではないというべきであるから、本件商標は、上記法条に該当するものではないといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により、取り消すべき限りではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-12-06 
結審通知日 2006-12-11 
審決日 2006-12-22 
出願番号 商願2000-29894(T2000-29894) 
審決分類 T 1 31・ 6- Y (Z12)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 久我 敬史
小林 和男
登録日 2001-03-09 
登録番号 商標登録第4457904号(T4457904) 
商標の称呼 マジカー、マジカーオートセキュリティ 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

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