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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1093761 
審判番号 無効2001-35149 
総通号数 52 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-05 
確定日 2004-03-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4307980号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4307980号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4307980号商標(以下「本件商標」という。)は、「XGAMES」の欧文字を横書きしてなり、平成10年7月16日に登録出願され、以下の商品を指定商品として、同11年8月20日に設定登録されたものである。
<指定商品>
第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」
第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,スキーワックス,釣り具」

第2 請求人の主張
請求人「イーエスピーエヌ・インク」(以下、略称していう場合は「ESPN社」という。)は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第34号証を提出している。
1 請求の利益について
請求人は、本件商標に酷似する商標「X GAMES」(XとGの文字の間に半文字程の間隔がある。以下「引用商標」という。)を日本において、アパレル、帽子、ノート、めがね等の商品に使用する計画であり、また、引用商標につきすでに商標出願を行っている。従って本件商標が無効とされないときは引用商標の使用及び商標登録に支障を来たすおそれがあるので、本件審判請求をすることについて利害関係を有する。
2 引用商標の著名性
(1)引用商標について
請求人は、平成7年(1995年)にインラインスケート等9種目の競技会を企画し、その全体を指称する商標として「X GAMES」を創作、創案し、同年4月以降米国において、競技会名として使用を開始した。平成7年以降毎年開催され、請求人その他のテレビ放送網を通じ報道され、かつ、この商標を付した各種商品の販売がなされている。
(2)請求人について
請求人「ESPN社」は、「ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー」の関連会社として「X GAMES」を開催している企業であり、全米最大のCATV局で、二つの組織によりテレビ放送事業を行っている。同社は、平成8年(1996年)当時までに米国内に7千2百万人、海外190カ国に1億5千2百万所帯の加入者を有するケーブルテレビ及びサテライトスポーツ番組を提供する「ESPN」、そして、米国内に5千万人の加入者を有する「ESPN2」であった。(甲第2号証及び甲第3号証)
(3)引用商標の発表の時期と競技大会の開催について
請求人は、平成7年(1995年)に他のスポーツ競技とは違った若者と家族が楽しむことができることを目的とするスポーツ及び娯楽としてのスケートボード等9種目のスポーツを競技対象種目とする競技大会の開催を企画し、その競技会名「X GAMES」は、平成7年(1995年)4月に競技のサウンドトラック(映画のトーキー用フィルム)を発売したので、遅くともこの時期には公表したことになる。
そして、本件商標の出願時の平成10年(1998年)までに競技大会は次のとおり開催され、世界的に報道された。
(A)「X GAMES」開催の歴史(甲第4号証95頁)
(i)平成7年(1995年)4月に競技のサウンドトラック(映画のトーキー用フィルム)を発売。同年6月に米国ロードアイランド州で最初の競技会「X GAMES」を開催した。
(ii)平成8年(1996年)6月に中国上海にて3種目のエキジビションを開催し、同年6月末に「第2回X GAMES」をカリフォルニア州サンディエゴ市において開催した。
また、テキサス州で出場権を争う「X GAMES予選会」を開催した。
(iii)平成9年(1997年)1月、初の「ウインター・X GAMES」を開催し、同年5月、米国のオーランドのディズニーワールドで「X GAMES予選会」を開催した。
同年6月に「第3回X GAMES」をサンディエゴ市で開催した。(甲第5号証)。
(iv)平成10年(1998年)1月に米国コロラド州にて第2回「ウインター・X GAMES」を開催し、同年4月にタイのプーケット等の地において「X GAMES予選会」を開催し、同年6月にサンディエゴで第4回大会を開催した。同年12月にブラジルサンパウロでラテンアメリカ地区の「X GAMES予選会」を開催すると発表した(甲第6号証)。
(B)「X GAMES」の種目内容
「X GAMES」は、次の種目を競技する大会であり、サマーゲーム及びウインターゲームの内容を示すと次のとおりである。
<サマーゲーム>(甲第4号証94頁)(i)アグレッシブ・インライン・スケートは、4個の車輪が靴底の中央に一列に並んだインラインロ一ラースケートによるジャンプや障害物を競う競技。(ii)スケートボーディングは、バンク(傾斜)やレールなどの障害物が点在するコースでスケートボードによる競技。(iii)ウエイク・ボーディングは、ボートに引かれながらボートが引き起こす波を利用してジャンプやスピンを競うスノーボードの水上版。(iv)ストリート・リユーンユは、スケートボード状のリユージュに仰向けになり最高時速110キロで峠道を滑り下りる競技。(v)スポーツクライミングは、頂上までの順位を競う競技と難易度の高い人工壁を上る競技。(vi)スカイサーフィンは、スノボーを改造したボードをつけたままスカイダイビングをする競技。(vii)ビッグ・エア・スノーボーディングは、会場に巨大なジャンプ台と人工雪を持ち込み、スノーボードによるジャンプの高さ、距離等を競う競技。(viii)バイク・スタントは、自転車により、さまざまな斜面をもつ競技台でジャンプなどの技を競う競技。(ix)フリースタイル・モトクロスは、ダートコースに点在するジャンプ台を使った競技。
なお、甲第7号証は、1997年度大会開催時の入場者用案内書である。
<ウインターゲーム>(甲第8号証088頁)(i)アイスクライミングは、16mを超える氷の壁をアイゼンとアイス・アックスだけで登る競技。(ii)スキーボーディングは、lm足らずと短くツインチップ形状のスキーを使用して種々のトリックを競う競技。(iii)スノーマウンテンバイキングは、雪上用のバイクで種々の障害の設けられたコースを6名のライダーが走り順位を競う。(iv)スノークロスは、スノーモービルを使用し、一周0.8kmほどのコースを4周して順位を競う競技等。
(C)「X GAMES」への観客数、報道等について
(i)平成7年(1995年)の「第1回X GAMES」の観客数は約20万人、スポンサーはナイキ、AT&Tなど7社であった(甲第4号証95頁)。
(ii)平成9年(1997年)の「ウインターX GAMES」は、198カ国に放映された(甲第4号証95頁)。
(iii)同年6月に開催された「第3回X GAMES」の観客数は約22万人であった(甲第9号証)。そして、テレビ放送の視聴者は1400万所帯と推定される。ちなみに、この数はナショナルホッケーリーグやワールドカップの1日当たりの視聴者数を上回っている(甲第9、10号証)。
平成10年(1998年)6月までに多数の報道がなされ、甲第11号証は、そのクリッピングである。
(iv)平成10年(1998年)6月の「第4回X GAMES」は、AT&T、ポンテイアック等の大企業が多数後援した(甲第4号証94頁)。観客数は約24万人であった(甲第9号証)。
ESPNは、この競技会の模様を36.5時間放映し、外国向けにESPNインターナショナルが25.6時間放映した(甲第10号証)。
当大会の取材にCNN、USAToday、などの著名テレビや新聞社など、700人の報道陣が詰めかけた(甲第9号証)。また、当大会開催に関連し、当競技に関連する商品、すなわちスケートボード等が年間10億ドル(1050億円)を売り上げた(甲第10号証)。
なお、日本からも、第1回大会から選手が参加しており、種目インラインで3名が優勝している(甲第4号証)。
(D)商標権の取得について
請求人「ESPN社」は、本件商標の出願前に米国における商標権として、(i)登録第2089996号、出願日平成8年(1996年)1月11日、登録日平成9年(1997年)8月19日、区分第41類、(ii)登録第2126126号、出願日平成8年(1996年)1月11日、登録日平成9年(1997年)12月30日、区分第25類、(iii)登録第2211559号、出願日平成8年(1996年)10月11日、登録日平成10年(1998年)12月15日、区分第9類を取得している(甲第12号証)。
また、日本における商標権として登録第4163171号、出願日平成8年5月15日、登録日平成10年7月3日、区分第41類を取得している(甲第13号証)。
(E)「X GAMES」商標商品の販売
請求人は、「X GAMES」を商標とした商品の商品化を行っている(甲第14号証)。特にノート、バインダー、スポーツバッグ、アパレルなどが販売されている。また、日本においてもソニー社のプレイステーション用ゲームソフトが販売されており(甲第4号証)、また、アパレル、帽子、ノート、めがねなどの商品も企画中(甲第15号証)である。
(F)日本での報道状況
日本での報道の状況は、「X GAMES」の競技会はNHK衛星第1で平成9年(1997年)9月から放送が開始され、平成10年当時既に10数回放映された(甲第16号証)。また、CS、CATV局「スポーツi.ESPN」で第1回大会から放映された。甲第17号証は平成10年(1998年)2月及び8月の番組構成表である。
以上の状況からすれば、本件商標を出願した平成10年7月以前に引用商標「X GAMES」は既に世界的に著名な商標となっていたと認められるものである。
3 平成10年以降における引用商標の著名性
平成10年以降において請求人の主催する「X GAMES」イベントは、我が国においても数多くの放送・報道の対象となっている(甲第18号証)。
また、平成10年以降、請求人は日本において引用商標と同一の商標について、8件の登録出願を行っている(甲第19号証)。
4 商標法第4条1項第15号について
上記のとおり、引用商標「X GAMES」は本件商標の出願当時、請求人の主催する前記スポーツイベントを指すものとして、すでに世界的に著名な商標となっており我が国おいても周知・著名なものとなっていた。また、請求人は、引用商標を付してスポーツバッグやアパレル等を販売している。
ところが、本件商標の指定商品は、被服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴及び運動用具などを含んでおり、これらは前記スポーツに直接使われるものであり、またこれら以外の指定商品もこれらと関連の強いものである。
それ故、本件商標をその指定商品に使用したときは、需要者があたかも請求人の商品であると誤認するか少なくとも請求人と何らかの経済的又は組織的に関係がある者の商品であると誤認し出所について混同するおそれがあるものである。
上記見解はすでに特許庁によっても確認されている。即ち、引用商標と同一ないしこれと酷似する「XGAME」なる商標に関し出願された、平成10年商標登録願第107914号及び平成10年商標登録願第102620号については拒絶査定がなされている(甲第20号証及び甲第21号証)。
5 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は世界的に(特に米国において)著名な商標であるところ、本件商標は引用商標に酷似し、しかも、引用商標が著名となった後に出願(平成10年7月)されたものである。
そして、本件商標の出願人は、引用商標が最初に使用され、これが最も著名となっている米国に住所を有する者である。また、本件商標の指定商品は、請求人のスポーツイベントに最も深く関連する商品(運動用具、運動用特殊衣服、運動用特殊靴等)が多くを占め、請求人の役務又は商品との誤認を生じ易いものである。
さらに、引用商標も本件商標も造語であって単なる偶然で採用される性質のものではない。
以上の事実に照らせば、本件商標は、引用商標が本件商標の指定商品につき、登録されていなかったことを奇貨として、請求人が確立した商標「X GAMES」の名声・出所表示機能に只乗りし、不正の利益を得る目的で先取り的に出願されたものと認められるべきものである。
従って、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
6 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)被請求人の主張は、請求人が本件審判請求の理由と同旨の理由により本件商標に対してなした登録異議の申立てに対し、本件商標の登録を維持する旨の登録異議の決定をされたから本件審判請求も成り立たない、というにすぎないものである。
しかしながら、登録異議申立制度と無効審判制度とは互いに制度の目的や手続を異にしており異議申立てが成立しなかったからといって審判請求も成り立たないことにならないことは云うまでもない。
(2)請求人は、本件商標と登録出願当時、即ち平成10年(1998年)7月当時、引用商標が米国においてはもとより日本においても広く認識されていた事実を立証するため、更に下記の証拠を提出する。
(i)甲第22号証の平成の新語・流行語を収録した「外辞苑」には、「Xゲーム」が1997年の言葉として登載され、これがスケートボード、インラインスケート等請求人が主催するXGAMESを意味することが説明されており、これはXGAMEが本件商標出願時より1年前の1997年において日本で新語・流行語となっていたことを示すものである。
(ii)甲第23号証の「ニューススポーツ用語辞典」には、「Xゲームズ」「X-games」の言葉が登載され、1995年サンフランシスコで始まったニューススポーツ9種目の高度な技術を競う賞金競技会と説明している。
(iii)甲第24号証の雑誌「Storm」(1999年8月28日号)では、「XGAMES」を特集し、41頁においてその歴史を掲載、これによれば、1997年1月に行われた初のWinter XGAMESは世界198ヶ国に21言語で放送されたことが明かである。
(iv)甲第25号証のスポーツニュースのホームページ「ISIZE SPORTS」の2ページ目には、1997年1月の最初のWINTER-XGAMESが世界198ヶ国に放送されたこと、1998年6月カリフォルニア州サンディエゴで行われた第4回X-GAMESでは1日平均25000人のギャラリーを集め、世界約2億8300万世帯に放送されたことが明かである。
(v)甲第26号証のSports:ESPN(広告)は、2001年9月現在依然放映が続けられていることをしめす。
(vi)甲第27号証の「グッドスケートジャパン」社のホームページでは、数名の日本選手が1995年以来XGAMESの競技に参加していたことが示されている。
(vii)甲第28号証の英和商品名辞典では、請求人の行っている放送ESPNが、米国のスポーツ専門のケーブルテレビ放送であること記されている。
(viii)甲第29号証の日経産業新聞2001年9月12日号では、請求人のESPN放送が米国のインターネットサイト利用のトップを占めている事実が報道されている。
(ix)甲第30号証ないし甲第34号証のビデオテープは、1997年ないし2001年において、米国又は日本でいずれもSummer XGAMESをテレビ放映されて来たものである。(甲第30号証、甲第31号証、甲第33号証は米国放映、甲第32号証、甲第34号証は日本放映のものである。)

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第7号証を提出している。
1 本件商標に対する登録異議の申立てとの関係について
請求人は、本件商標に対し、本件審判請求の理由と同じ理由で登録異議の由立てをしている(乙第1号証)。該登録異議の申立ては、平成11年異議第91612号として審理された結果、平成12年10月6日に「本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に違反して登録されたものではない。」として、「登録第4307980号商標の商標登録を維持する。」との異議の決定がなされている(乙第2号証)。
また、請求人は、本件審判において、登録異議の申立てに提出した証拠に加えて新たに甲第20号証、甲第21号証を提出しているので、以下これらについても言及する。
甲第20号証の商願平10-107914号、甲第21号証の商願平10-102620号のそれぞれの出願経過をみると、商願平10-107914号(乙第3号証)は、出願日平成10年12月18日、拒絶理由通知書(起案日)平成11年10月25日、拒絶査定(起案日)平成12年2月25日であり、商願平10-102620号(乙第4号証)は、出願日平成10年12月2日、拒絶理由通知書(起案日)平成11年11月16日、拒絶査定(起案日)平成12年3月16日、のとおりであり、両登録出願は、いずれも出願人が拒絶理由通知書に応答しなかったため、審査官は実質的に再考の機会なく、これらを商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶査定したものである。しかも、両登録出願についての拒絶理由通知書及び拒絶査定が起案されたのは、本件商標についての異議の決定がなされた平成12年10月6日以前のことである。そして、拒絶理由通知及び拒絶査定は審査官1名の判断によりなされたにすぎないのに対し、その後にされた登録異議の決定は経験豊かな審判官3名の合議による判断であるから、後者の判断が尊重されるべきことは当然のことである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの請求人の主張に理由がないことは明らかである。
2 請求人の弁駁に対する答弁(平成14年9月10日付)
(1)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、請求人が主催する競技会の名称「X GAMES」が、本件商標の出願時(平成10年7月16日)に我が国において広く認識されていた旨主張する。しかしながら、甲第25号証によれば、請求人が米国において主催する競技会の名称に「X GAMES」の語が初めて用いられたのは、本件商標の出願よりわずかに1年前の1996年(平成9年)6月である。この競技会は年に1回ないし2回しか行われないことからみて、本件商標の出願前に、請求人が主催する競技会の名称として「X GAMES」の語が用いられたのは、多くてもたかだか3回程度である。この程度の開催回数の海外の競技会の名称が、我が国において広く認識されていたとは到底考えられないところである。
また、甲第16号証によれば、我が国において「Xゲーム」なる番組が放送されたことがうかがえるが、これらは地上波放送に比べ著しく視聴者の少ないBS放送によるものであって、しかも主として早朝や深夜に数回放送されたにすぎないものである。
さらに、甲第17号証はCS放送の番組編成表と思われるが、1998年(平成10年)当時、CS放送の普及度はBS放送よりもさらに低いものであるから、これによっても請求人が主催する競技会の名称が我が国において広く認識されていたということはできない。テレビの番組名をすべて著名と認定し、これを保護するとすれば、国民の商標選択の自由は著しく制限されることとなるが、自由に番組名を採択できる番組名付与者との衡平を欠き妥当でないことは明らかである。
以上のとおり、本件商標の出願時に、請求人が主催する競技会の名称「X GAMES」が我が国おいて広く認識されていたとは言い得ず、本件商標が商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとする請求人の主張には理由がないものである。
因みに、東京高裁平成13年12月20日判決は、商標「POLO S PORTS」の出願時において、商標「POLO」が著名でなかったことをとらえて、商標法第4条第1項第15号の適用を否定している(乙第5号証)。商標法第4条第3項の規定からみて当然のことである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
請求人は、本件商標が、請求人が確立した商標「X GAMES」の名声・出所表示機能に只乗りし、不正の利益を得る目的で出願されたものである旨主張する。しかしながら、前述のとおり、本件商標の出願時において、「X GAMES」の語が我が国はもとより米国でも広く認識されていたものとは認められないことからみて、「X GAMES」の語には只乗りするような名声は伴っておらず、何ら不正の利益を得ることができないものであることは明らかである。
しかも、欧文字「X」は「未知の物事」を表す文字として広く用いられており(乙第6号証)、実際「X day」「X-FILE」等、他の話と結合して様々な造語を形成しているところである。ここで「GAMES」の語は我が国においてもごくありふれた語であるから、これと欧文字「X」とを結合させて「XGAMES 」の話を創作することに特段の独創性は認められず、被請求人が独自に「XGAMES」の語を創作したことは極めて自然なことである。請求人が同様の手法で「X-Sports」「X-Surf」「X-Music」等、欧文字「X」とありふれた語と結合させた語を多数創作している(乙第7号証)ことは、被請求人はもとより誰にでも「XGAMES」の語を創作するチャンスがあったことを裏付けるものである。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものとする請求人の主張には理由がないものである。
3 まとめ
以上のとおり、請求人の主張はいずれも理由がないものであるから、答弁の趣旨どおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1 請求人が提出した甲各号証に基づく事実について
(1)甲第2号証であるザ・ウォルト・ディスニー・カンパニー作成の「有価証券報告書(証券取引法第24条第1項に基づく報告書)」(事業年度 平成8年10月1日〜平成9年9月30日)の「(2)放送部門」中の「ケーブル及び国際放送」の項(32、33頁)には、当社のケーブル及び国際放送業務は、主にケーブルテレビ番組の制作配給、番組の米国内外の市場へのライセンスの付与並びに外国に本拠を置くテレビ局及びテレビ配給会社との合弁事業への投資を業務内容とし、当社は、ディズニー・チャンネル、ESPNインクの80%を所有していること、ESPNインクは、国内で72百万人、海外では190か国152百万世帯の加入者のいるケーブル及びサテライトスポーツ番組サービスであるESPN及び国内で50百万人の加入者のいるESPN2を運営しており、1997年には、国内で約5百万人の加入者のいる24時間のスポーツ・ニュース・ケーブルチャンネルであるESPNewsの放送を開始したこと、ESPNは、ヨーロッパ全域に衛星伝達ケーブルで家庭に直接スポーツ番組を流しているユーロスポーツの株式の33%、スポーツビジョン・オーストラリアの25%及びESPNブラジルの50%を所有ていること、ESPNはアジアのほぼ全域にわたってスポーツ番組を提供しているESPNとSTERの合弁事業の所有権50%及びカナダにおけるその他のメディア資産の中でザ・スポーツ・ネットワークを所有するネット・スターの事業の33%を所有していること等が記載されている。
(2)甲第3号証であるザ・ウォルト・ディスニー・カンパニー作成の英文による「1998年アニュアル・レポート」47頁には、ESPN2は60か月の間に6100万世帯が加入したこと、ESPNインターナショナルは世界20の言語によって米国以外の国の1億5000万以上の世帯に送り出していること、また「X Games」ブランドはタイとブラジルで行われた限定(予選)イベントで海外進出を果たしたこと等が記載されている。
(3)甲第4号証である雑誌「DIME」1999年9月2日号の「X Games」大会について紹介している記事には、「『X Games』とは、米国のスポーツ専門CATV局ESPNが主催する、インラインスケート、スケボー、BMXなどストリート系スポーツの一大コンペティション。その観客数は、95年の第1回大会から年々増加し、今年6月25日〜7月3日に開催された第5回大会では、約22万人を動員した。また、その模様は、ESPNにより全150か国に放映され米国だけでも65万世帯もが視聴するビッグイベントになっている。」(93頁)、「『X Games』は、日本でも・・・90年に設立されたCS、CATV局『スポーツi・ESPN』で、第1回大会から放映されている。」(94頁)と記載、また「日本からの選手も第1回大会から出場し、しかも、今年は、インラインで過去最大の3名もが優勝を果たしている。」(95頁)と記載されている。
そして、同号証95頁では、「X Gamesの歩み」として、1995年4月/「The Extreme Games」(後に「X Games」に改称)のサントラ発売、6月/ESPN本社があるロードアイランド州にて、第1回「X Games」開催、観客動員数は19万8000人、1996年3月/「X Games」の体験型プロモーションを全米12都市で展開、4月/「X Games」の撮影技術がスポーツ・エミー賞を受賞、6月/中国・上海にてインラインスケート・・・のエキシビジョンを開催、6月末/第2回「X Games」開催。テキサス州で「X Games」出場権を競う予選を開始、1997年1月/初の「ウインター・X Games」を開催、198か国で放映、観客は3万8000人を動員、4月/96年「X Games」が2年連続でスポーツ・エミー賞を受賞、5月/オーランドのディズニーワールドで「X Games」の予選を開催、6月/第3回「X Games」開催、観客数過去最高の22万1000人、1998年1月/コロラド州にて第2回「ウインター・X Games」開催、2月/フロリダ州を皮切りに98年度予選開催、タイ・プーケットで初の海外予選が開かれる、200名の選手参加、6月/第4回「X Games」開催、1999年1月第3回「ウインター・X Games」開催、6月/サンフランシスコで、第5回「X Games」開催、約22万人動員されたことが記載されている。
(4)甲第5号証の雑誌「U.S.News&WORLD REPORT」1997年6月30日号(53頁)には、3年前に生まれたこの「X Games」は瞬く間にディズニー所有のケーブルネットワークの目玉になったこと、ほぼ200か国に向けて放送される今年の試合に向け、世界最高クラスの選手400人以上がサンディエゴに集まり、ゴールデンアワーの視聴率を独占しようとしていることが記載されている。
(5)甲第6号証である1998年10月6日のインターネット・ニュースによると、ESPNブラジルは、ラテンアメリカ諸国にとって初の「X Games」の限定(予選)イベントをブラジルのサンパウロで1998年12月1日から6日にかけて行うと発表したことが記載されている。
(6)甲第7号証である1997年度イベントプログラムでは、そのプログラムの2葉目に「1997 XGames」と表示、その頁のESPN X Gamesエグゼグティブ・ディレクターの手記によると、ESPN、ESPN2、ABCスポーツ、ESPNインターナショナル、ESPNスポーツゾーンで「X Games」が放送されること、世界175か国20か国語で伝えていくであろうと記載されている。
(7)甲第9号証である1998年6月29日発行の「SAN DIEGO UNION TRIBUNE」における、サンディエゴで行われた第2回「X Games」についての記事には、大会開催地に来る見物人の数が年々増加し、観客数が昨年221,500人であったものが今年242,850人に増加していること、1997年にはケーブルネットワークの加入者が1400万世帯まで増えたこと、昨日終了したサンディエゴで行われた2回目の大会に関し、競技を放送するために今年は37時間半の特別枠が設けられ、ABCでは、3週間週末にその模様が放送され、さらにこの大会は21か国語、17か国や地域で放送されたこと、マスコミもこのスポーツの流行にのりCNN、Nickelodeon、HBO、The Boston Globe、USA Todayが今年新たに公式報道メディアリストに加わったこと、この記事を取り扱った700以上の新聞、雑誌、テレビ局等のなかには海外の雑誌の25社とBBCラジオも含まれていたこと、が記載されている。
(8)甲第10号証である1998年6月19日発行の「Los Angels Times」の記事によると、「X Games」がロードアイランドで行われてから3年の間に、ESPNはそのイベントのおかげで多数の加入者を集め1998年の視聴者数は1400万世帯であり、これは1997年に比べると2倍になっており、この数字を日割り計算してみると、1997年の「X Gemes」の影響によって、ナショナル・ホッケイ・リーグやサッカーワールドカップの試合の観客数を超える人数が1日に加入したことになること、今年はESPNでは、国内向けに36時間半、ESPNインターナショナルを通じて海外には25.6時間を使ってこの内容を放送する予定であること等が記載されている。
(9)甲第11号証は、米国における1998年3月から7月にかけての「X Games(X GAMES)」、それに関係する競技についての記事を掲載している新聞・雑誌を収集(全263頁)したものであるが、その新聞・雑誌は、例えば、「SAN DIEGO BUSINESS JOURNAL」、「NORTH COUNTY TIMES」、「THE SAN DIEGO UNION-TRIBUNE」、「TIMES-PICAYUNE NEW ORLEANS」、「ROLLING STONE」、「PACIFIC FLYER OCEANSIDE」、「DAILY UTAH CHRONICLE SALT LAKE CITY」、「PROVIDENCE JOUNAL-BULLETIN」、「PRESS-ENTERPRISE RIVERSIDE」、「JET SPORTS SANTA ANA」、「DISNEY ADVENTURES NEW YORK」等であり、「X Games」関係の記事が掲載されていることが認められる。
(10)甲第12号証の米国登録商標情報によると、商標「X GAMES」は、登録者「ESPN,Inc.」により第41類の役務、第9類の商品に登録(登録番号2089996、同2211559)がされていると共に、第25類「wearing apparel, namely, shirts, T-shirts, sweatshirts, sweatshirts, tank tops, tops, hats, caps, shorts, pants, jackets, neckties, belts, blouses, coats, dresses, pajamas, footwear, socks, underwear, bandannas, headbands, neckbands, wristbands, beach wear, swim wear, vest, gloves, mittens, skirts, scarves, sleepwear and sunvisors」(衣服、すなわち、シャツ、Tシャツ、スエットシャツ、スエットシャツ、タンクトップ、帽子、ショートパンツ、ズボン、ジャケット、ネクタイ、ベルト、ブラウス、コート、ドレス、パジャマ、はき物、ソックス、肌着、バンダナ、ヘッドバンド、 ネックバンド、 バンド、ビーチウエア、水泳ウエア、ベスト、手袋、ミトン、スカート、スカーフ、 スリープウェアー、サンバイザー)を指定商品としても登録(登録番号2126126)がされている。また、同甲号証(登録番号2126126)の記載によると、それらの指定商品については、「DATE OF FIRST USE; 1996.03.30;DATE OF FIRST USE IN COMMERCE: 1996.03.30」(最初の使用及び商業的使用はいずれも1996年3月30日)と記載されている。
(11)甲第14号証の商品カタログ(作成日等不明であるが、7葉目の「The Fourth Annual Summer XGames will be held June 20th - 28th, 1998, in San Diego, CA,broadcast to over 220 million homes worldwide.」の記載からすると、1998年(平成10年)6月に米国サンディエゴで開催された夏の「X Games」前に発行されたものと推測される。)によると、その1、4、5、7、9、11、13ないし44葉の各葉には「X」の文字を図案化した如き図形と、その上部分に地球儀風の円形図形と右側に「Games」の文字を組み合わせた標章(以下「X Games図形」という。)が表示され、11葉目には「X Games図形」の「Games」の文字の「ames」の上段に「pump up with the Xgames brand」の文字を「X Games図形」と組み合わせて表示し、同頁には、シャツ、眼鏡、ノート等の写真が掲載されている。また、8葉目には、「X Games図形」を胸部分に表示している「シャツ」、同図形を文字盤に表示している「腕時計」や側面に表示している「スポーツバッグ」等が掲載され、その腕時計の説明文には「The ADVANCE WATCH COMPANY XGames wach line is・・・」、「スポーツバッグ」には、「PYAMID SPORTS BAGS will launch two XGames bag line:・・・」等と記載されている。また「X Games」の文字からなる商標が付されている「眼鏡」(2葉目)、「X GAMES」の文字からなる商標が付されている「時計」(16〜39葉目)が掲載されている。
(12)甲第15号証の「X Gamesの商品プラン」(作成日不明)によると、「X Games」と各葉に表示し、その商品展開アイテムの項の「衣類」には「Tシャツ、トレーナー、スウェット類」、「用品」には「インラインスケート、スノーボード、スケートボード、サングラス、腕時計、タオル、キャップ、文具、ゲーム、装飾品、寝具類他」と記載、「展開流通先」の項には、「スポーツ専門店を中心に展開。スポーツ関連の通信販売。」と記載され、具体的にデザインされたTシャツ、スノーボード、時計、サングラス等が掲載されている。
(13)前出甲第4号証の雑誌「DIME」95頁には、プレステ用ソフト(テレビゲームおもちゃのソフトウェア)として、「X Games図形」と共に「X GAMESプロボーダー」と表示され、説明文に「有名選手8名が出演する公式ゲームソフト『X GAMESプロボーダー』5800円。」と記載され、発売中であることが記載されている。
(14)甲第16号証の「NHK衛星第1 X Games放送実績」としての朝日新聞のテレビ番組表の頁には、97年の「Summer X Games」は同年9月に5回深夜に各1時間ずつ放映、98年「Winter X Games」は同年2月ないし4月にかけて6回深夜又は早朝に各1時間程度ずつ放映、98年「Summer X Games」は同年7月、8月にかけて8回深夜又は早朝に各1時間ずつ放映をするものとして記載されている。
また、甲第17号証の97年12月24日付株式会社ジャパンスポーツチャンネル作成の「番組編成表」によると、2月4日から2月26日にかけて「WINTER X GAMES」を1日1回或いは3回各2時間程度合計15回放映、8月4日から7日にかけて「What is X-GAMES?」と題する番組を1日1回或いは3回各30分合計9回、8月10日から9月6日にかけて「X GAMES」を1日1回或いは2回、各2時間若しくは3時間、合計22回ほど放送されることが記載されている。
(15)甲第22号証の「外辞苑」(2000年7月25日平凡社発行)によると、「Xゲーム」の項が設けられ、その説明として、「1997年の言葉。スケートボード、インラインスケート、ストリートリュージュ、スカイサーフィン・・・など若者たちが街のなかの遊びとして楽しんでいたスポーツにアメリカのケーブルテレビ会社が競技ルールを導入して、試合形式にしたもの。」等と記載されている。
また、甲第23号証の「スポーツ用語事典」(2000年12月8日遊戯社発行)によると、「Xゲーム X Games」の項が設けられ、その説明として、1995年、サンフランシスコで始まった、ニュースポーツ9種目の高度な技術を競う賞金競技会、等と説明されている。
(16)甲第24号証の雑誌、季刊「Storm」(平成11年8月28日八重洲出版発行)によると、表紙に「ALL ABOUT OF THE」「X Games」と二段に記載し、「X Games」のイベント内容が特集されているものであり、その記事の内容は、本件商標の出願後である1999年7月にサンフランシスコで開催された「X Games」の競技の模様、97年(平成9年)又は98年から「X Games」に参戦し活躍しているSayaka Yabe、Maki Komori(21、22頁)、Ayumi Kawasaki等の日本人選手の紹介等が掲載されている。
また、同雑誌の12頁によると、「SPECIAL PRESENT」として「今回はX Games特集! そこでほんの少しだけれど、会場内の売店で買うことができたノベルティグッズをプレゼントしちゃおう!」と記載して、「X Games」の欧文字を表示してあるTシャツ、帽子、ウインドブレーカー、ヨーヨーおもちゃが掲載されている。
(17)甲第25号証のインターネットホームページである「ISIZE SPORTS NEWS DIGEST」1999 6月11日号(印刷2001年10月17日)には、「【エクストリームスポーツ特集】」として、「No1 エクストリームスポーツとは」の見出しの下、米国スポーツ専門チャンネル「ESPN」が1993年、複数のストリート系競技を集め、新しいスポーツ大会として創造したのが「X-GAMES」の始まりで、95年6月24日〜7月1日まで米国ロードアイランド州ニャーポートで記念すべき第1回大会が開催されたこと、当初は大会名を「EXTREME GAMES」と呼んでおり、96年6月24日〜30日に米ロングアイランド州で開かれた第2回大会から正式に「X-GAMES」の名称が使われたこと、が記載され、そして「No2 『ESPN』メディア主導型スポーツ」の見出しの下、「ESPN」は自ら主催したこの大会を全米で放送し、メディア主導型のビジネススポーツとして育成。これまでマイナーだった各種エクストーム系スポーツを一躍メジャースポーツに育て上げ次々とヒーローを生み出したこと、等が記載され、また「No5 拡大する『X-GAMES』」のタイトルの下、97年1月30日〜2月2日までカルフォルニア州ビッグベアレイクで、初の「WINTER X-GAMES」が開催され、世界198か国に放映されたこと、98年1月の第2回「WINTER X-GAMES」は2万5000人を動員、同年6月の第4回の「X-GAMES」は1日2万5000人のギャラリーを集め、世界約2億8300万世帯に放送されたこと、今年6月下旬に開催される第5回「X-GAMES」もすでに800万人以上が参加、アジア、オセアニア、欧州で予選大会が繰り広げられていること等が記載されている。
(18)甲第27号証のインターネット上の「GOOD SKATES, Inc.」ホームページ(印刷2001年10月17日)では、日本人が「X-Games」大会の選手として、1996年に1名、1997年と1998年にそれぞれ3名、1998年から2000年までの「Asian X-Games」大会にもそれぞれ選手として参加していることが記載されている。
2 上記で認定した事実及び請求人の主張からすると、以下のとおり認めることができる。
(1)請求人ESPN社について
請求人ESPN社は、件外ザ・ウオルト・ディズニー・カンパニーのケーブル及び国際放送部門の業務を行う関連会社であって、主にケーブルテレビ番組の制作・配給等を行うスポーツサイトにおける米国最大手のCATV局であり、「ESPN」と「ESPN2」を運営している会社である。
そして、「ESPN」は、米国内で7200万人の視聴者をもち、海外では衛星伝達ケーブルなどにより、ヨーロッパ全域、アジア、そしてカナダのネット・スター(ザ・スポーツ・ネットワークを所有)、スポーツビジョン・オーストラリア、ESPNブラジル等へ20種の言語で190か国、1億5200万世帯の加入者のいるケーブル及びサテライトスポーツ番組サービスを行っている(甲第2号証及び同第3号証)。また、「ESPN2」は、米国内の加入者として、1997年(平成9年)に5000万人、1998年(平成10年)には6100万人である(甲第2号証及び同第3号証)。
(2)「X GAMES」(引用商標)について
請求人ESPN社は、1995年(平成7年)6月に、同社が企画した、インラインローラースケート、スケートボード、自転車等によるストリート系スポーツ競技を主体とする最初の大会を「The Extreme Games」(夏の競技大会)の名称で米国ロードアイランド州で開催し、1996年(平成8年)6月に第2回大会を「X Games」と名称を改めて、米国カルフォルニア州サンディエゴで開催した。その後、1997年(平成9年)、1998年(平成10年)のいずれも6月に米国同地で第3回、第4回大会を開催し、その後も、1999年(平成11年)6月にサンフランシスコで第5回大会を開催し、その各大会の間に、体験型プロモーションを全米12都市で開催(1996年3月)、「X Games」大会の出場予選等を米国内(1996年6月、1997年5月、1998年2月)及び海外(1996年中国で3種目のエキジビション、1998年タイ、ブラジルで予選)においても行っている(甲第3号証、同第4号証及び同第6号証)。
また、請求人は、1997年(平成9年)1月には、同社が企画した、冬の競技として、スキー、スノーボード、スノーモービル等を使用した競技や氷の壁を登るアイスクライミング競技等を行う「WINTER X Games」大会を開催している。その後、1998年(平成10年)、1999年(平成11年)のいずれも1月にコロラド州で第2回、第3回の大会を開催している(甲第4号証)。
そして、上記甲号証によれば、請求人が企画し開催する「X Games」は、「X Games」及び「X GAMES」と表記されており、また両表示は、大文字と小文字の関係であり、同一視できるものといえる。
したがって、「X GAMES」(引用商標)の表示は、請求人が企画し開催する「X Games」又は「X GAMES」を表すものといわなければならない(以下「X Games」及び「X GAMES」を「X GAMES」という。)。
(3)「X GAMES」大会とその競技大会の中継、配信について
請求人の開催するスポーツ大会「X GAMES」は、1996年(平成8年)以来、毎年開催され、その間には、予選のための大会等が開催されている。また、1997年からは冬の大会として、「WINTER X GAMES」が開催されている。
そして、「X GAMES」大会及び「WINTER X GAMES」大会の内容は、上記(1)で述べたESPN社のテレビネットワークを通じて、米国内に向け放映それ、更に衛星伝達ケーブルなどにより、ヨーロッパ全域、アジア、そしてカナダ、オーストラリア、ブラジル等へ20種の言語で少なくても175か国へ配信(甲第6号証)されたものと推測され、また、米国内において多くの新聞社によって「X GAMES」について報道(甲第11号証)されたことが認められる。
(4)引用商標「X GAMES」の周知性について
請求人が企画立案し運営するスポーツ競技会「X GAMES」における観客数は、1995年(平成7年)の第1回の大会には19万8000人(甲第4号証)、1997年(平成9年)は221,500人、1998年(平成10年)には242,850人動員('97年、'98年:甲第9号証)されており、また、本件商標の出願後ではあるが、1999年(平成11年)には約22万人動員(甲第4号証)されていることが窺える。
また「WINTER X GAMES」大会では、1997年(平成9年)の第1回では38,000人(甲第4号証)、1998年(平成10年)の第2回では25,000人動員(甲第25号証)されたことが窺える。
そして、「X GAMES」大会の内容は、新聞、雑誌に「X GAMES」の名称と共に報道記事として多数掲載(甲第11号証)され、しかも「X GAMES」大会について、請求人の運営する「ESPN」「ESPN2」等のテレビ放送網を通じてその大会の内容が米国全土に向け放映されたものと推認される。
また、ESPNは、「X GAMES」のイベントによって、その加入者を集め、1998年には1400万世帯となり、前年に比べて2倍となっている(甲第10号証)状況からすると、米国において「X GAMES」に対する視聴者の関心が高まっていたものと推測される。
上記事実からすれば、引用商標「X GAMES」の表示は、少なくとも、本件商標の登録出願時には、請求人の業務に係るスポーツ大会の企画・運営及び開催する役務を表す表示として米国における需要者の間に広く認識され周知・著名なものとなっていたということができる。
また、「X GAMES」大会の内容は、「ESPN」を通じて、「X GAMES」の名称と共に、カナダ、ヨーロッパや日本国その他アジア諸国等世界各国へ配給、配信され、視聴されたものと推測され、わが国においても、その大会の競技選手として第1回大会から競技に参加し、また、同大会の内容等が雑誌で紹介され、その競技内容や大会の状況がNHK衛星第1やCS、CATV局の株式会社ジャパンスポーツチャンネル「スポーツi.ESPN」で放送されていた事情からして、引用商標は、「X GAMES」や「WINTER X GAMES」、その関連競技、インラインローラースケート、スケートボード、自転車等によるストリート系スポーツに関心をもっている者、またストリート系スポーツで使用される運動用具類を取り扱う業界において広く知られていたものとみるのが相当といえる。
(5)請求人による引用商標の商品展開について
請求人は、甲第12号証の米国特許商標庁情報によると、米国において、引用商標と同様の商標である「X GAMES」を、第41類、第9類の商品について登録をすると共に、第25類「wearing apparel, namely, shirts, T-shirts, sweatshirts, sweatshirts, tank tops, tops, hats, caps, shorts, pants, jackets, neckties, belts, blouses, coats, dresses, pajamas, footwear,socks, underwear, bandannas, headbands, neckbands, wristbands, beach wear, swim wear, vest, gloves, mittens, skirts, scarves, sleepwear and sunvisors」の商品について登録し、それらの商品についての最初の商業的使用は1996年(平成8年)3月30日と記載されていることが認められる。
さらに、甲第4号証、同第14号証及び同第24号証によると、「X Games図形」の標章又は「X GAMES」(引用商標)、「X Games」の文字からなる商標は、ゲームソフト、眼鏡、時計、シャツ、スポーツバッグ等への商品へも使用展開されており、また計画されているものと推測できるところである。
3 被請求人が知っていたことについて
請求人の企画運営に係るスポーツ大会を表す「X Games図形」や引用商標「X GAMES」が本件商標が出願された平成10年(1998年)7月16日以前に、米国の需要者の間に周知・著名となっていたことは前記のとおりであり、他方、被請求人は、本件商標の商標登録原簿によると、米国コネチカット州に所在していることから、その営業活動の本拠地が米国内とみられので、被請求人は、引用商標が請求人ESPN社の企画・運営により開催されるスポーツ競技大会を表す商標であることを、遅くても、本件商標の出願前に十分知り得る状況にあり、また引用商標の使用を商品に展開していたことも知り得る状況にあったものと推測されるもので、むしろ知り得なかったとは到底認めがたい。
4 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、第1の項で述べたとおり「XGAMES」の欧文字からなり、それに対し、引用商標は「X GAMES」(XとGの文字の間に半文字程の間隔がある。)の欧文字からなるものであるところ、両商標は、その綴り文字全体から特定の意味を直ちに理解させるものともいい難い造語であり、その構成は綴り文字を共通にしているもので、XとGの文字の間の間隔の有無の差異にすぎないことからして、極めて近似した構成よりなるものであって、いずれも「エックスゲーム」の称呼を生じる、極めて類似する商標と認められる。
5 不正の目的について
ところで、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」とは、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識され周知・著名となっている他人の商標について、当該商標が当該商品又は役務について登録されていないことを奇貨として、不正の利益を得る目的又は当該他人に損害を加える目的等の不正の目的と解され、それには、当該商品又は役務の分野に進出を阻むことや他人の商標に化体した信用や名声等に対してのただ乗り(フリーライド)、希釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)することにより当該他人に損害を与えることとなる場合も含むものと解するのが相当である。
これを本件についてみるに、上記で述べたとおり、引用商標は、請求人が企画・運営及び開催するスポーツ競技会を表す商標であって、本件商標出願前に、米国を中心として周知・著名なものとなっていたものであり、請求人は、引用商標を米国内において衣服、帽子、はき物、手袋等の商品について1996年(平成8年)3月30日に使用を開始(甲第12号証)し、その後、眼鏡、時計、シャツ、スポーツバッグ等の商品へも使用を展開している実情が窺えるものである。
そして、被請求人は、米国において周知・著名な引用商標の存在を知り、その引用商標が米国を中心として日本国を始めアジア、ヨーロッパ諸国に広く知られるようになってきていることから、日本国においても一般の需要者の間に広く知られる得る蓋然性が大きく、かつ引用商標の使用が各種商品へ展開されることを容易に予想することができたものといい得るところであり、被請求人は、そのような引用商標の存在を認識した後に、引用商標と極めて類似する本件商標をわが国で使用するために出願したものとみられるものである。
そうであれば、被請求人が引用商標と極めて類似する本件商標を指定商品について登録し使用をすることは、請求人がその指定商品について日本への進出を阻むこととなると共に、本件商標の指定商品がスポーツに関係する「運動用特殊衣服,運動用特殊靴,運動用具,スキーワックス」や「被服」等を含むものであることをも考慮すると、被請求人は、引用商標に化体した信用や名声等にただ乗り(フリーライド)し、又はその信用や名声等を希釈化(ダイリューション)させる等請求人に損害を与えるものと認められるので、同法第4条第1項第19号に規定する不正の目的があったものといわなければならない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、米国において需要者の間に広く認識され、周知・著名となっていた引用商標と極めて類似するものであって、不正の目的をもって使用がされるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものと認められるので、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-09-25 
結審通知日 2003-09-30 
審決日 2003-10-30 
出願番号 商願平10-60929 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (Z25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山口 烈 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 平山 啓子
宮川 久成
登録日 1999-08-20 
登録番号 商標登録第4307980号(T4307980) 
商標の称呼 エックスゲームズ 
代理人 高田 修治 
代理人 吉川 精一 

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