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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 124
管理番号 1066165 
審判番号 取消2001-30898 
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-08-16 
確定日 2002-09-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2405030号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2405030号商標(以下「本件商標」という。)は、「PINO」の欧文字を書してなり、平成1年12月1日登録出願、第24類「おもちや、人形、娯楽用具、運動具、釣具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコ―ド、これらの部品および附属品」を指定商品として、同4年4月30日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標は、その指定商品中の「おもちや、人形」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1.本件商標は、その指定商品中「おもちや、人形」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実がない。
2.答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標は本件審判の請求の登録前3年以内に通常使用権者である「株式会社ツクダオリジナル」(以下「ツクダオリジナル」という。)が本件商標について指定商品「おもちゃ」について使用していると主張する。
乙第4号証(商標使用許諾契約書)によれば、商標権者であるオムニペスカ株式会社とツクダオリジナルとの間で使用許諾につき契約が行われたのは平成13年8月10日であり、つまり、通常使用権の設定により通常使用権が発生した(商標法第30条第1項)のは平成13年8月10日であり、この発生の日から本件取消審判の予告登録の日である平年13年9月12日までの間に商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかが登録商標に係る商品を請求に係る指定商品について使用していれば、登録商標は取り消されないのである(商標法第50条第2項)。
(2)そこで、乙各号証について検討するに、
ア.乙第1号証は、ツクダオリジナルが株式会社河田に対して発行した2001年(平成13年)7月10日付けの送り状及び請求書であり、これらの書類の発行時である2001年(平成13年)7月10日の使用は、本件取消審判についての予告登録前3年以内の使用であるが、この時点では、ツクダオリジナルは未だ通常使用権の設定を受けておらず、通常使用権者の使用という要件を満たしていない。
イ.乙第2号証は「Sサイズの赤のPINOぬいぐるみ」の実物写真、乙第3号証はタグの拡大写真である。これらの事実から商標「PINO」が商品「ぬいぐるみ」について使用された事実は判明する。しかしながら、乙第2号証、乙第3号証には、使用の日時を示すものは何ら示されておらず、乙第2号証、乙第3号証をもって予告登録前3年以内の使用であるとはいえない。
ウ.乙第5号証は、2001年(平成13年)6月29日にツクダオリジナルが発行した登録商標「PINO」を付したロボットおもちゃなどの新製品に係る説明書であり、これらの行為自体は商標法第2条第1項に規定されている「商標の使用」に該当することは認める。
しかしながら、前述の乙第4号証の場合と同様に、ツクダオリジナルが通常使用権の地位を得た、つまり、設定があったのは平成13年8月10日であり、それ以前の平成13年6月29日に発行された乙第5号証は、たとえ登録商標である旨の表示が付されていたとしても通常使用権者の使用とはいえない。
被請求人が実際には口頭などでの使用許諾がなかったにもかかわらず、後日許諾があったと主張する場合もあり、これらの場合についても通常使用権者としての使用の事実を認めることは取消審判請求人にとって不利益となるためであり、また、状況証拠に基づいて通常使用権があったであろうと推察することは真実を見誤ることになる。また、通常使用権は設定に定めた範囲において認められるものである(商標法第30条第2項)にもかかわらず、口頭などの契約では第三者にとっては許諾に関する具体的な商品など設定の内容を確認することもできず、口頭などの契約は当事者間ではともかくとして第三者が関与する商標法第50条第2項についての通常実施権者としての地位は認められるべきではない。
なお、乙第4号証に、通常使用権の発生前の使用については何ら触れられておらず、また、本契約書には本契約日前の通常使用権についての特約の規定などは何ら存在しない。
また、乙第5号証に示された複数の商品のうち、いくつかについては本件商標について通常使用権者の使用となる平成13年8月10日から同年9月12日の間の使用を表示しているものもあるが、これらは乙第5号証の発行時である平成13年6月29日における予定であって、本件取消審判についての使用事実の証明期間における現実の使用を証明するものではない。
エ.乙第6号証は、その発行日が不明であり、乙第5号証と同じく製品の紹介であって、証明期間における現実の使用を証明するものではない。
(3)以上のように、被請求人は、ツクダオリジナルに対して商品の発売前に通常使用権の許諾をしていたことを前提に、各乙号証を提出して登録商標を通常使用権者が使用していた旨を主張するが、乙第4号証に示されているように許諾による通常使用権の設定がなされたのは平成13年8月10日であるのに対して、各乙号証に記載されている使用の事実は、いずれもそれ以前のものであり、通常使用権者の使用とは認められないことは明白である。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1.本件商標は、通常使用権者であるツクダオリジナル(東京都台東区橋場1丁目36番10号)により、商品「ぬいぐるみ,ロボットおもちゃ」について、本件審判の請求の登録前3年以内に使用している。
(1)乙第1号証は、2001年7月10日に、通常使用権者が東京都新宿区の株式会社河田に対して、本件商標を使用した商品「ぬいぐるみ」を販売した事実を示す送り状及び請求書の写である。乙第1号証の送り状及び請求書の写における表示は、以下のとおりである。(なお、単価は非公開とするため黒塗りとした。)
送り状中の「ピノぬいぐるみSR×1」は「Sサイズの赤のPINOぬいぐるみを1カートン」を、「01年7月10 日」は「2001年(平成13年)7月10日」を表し、請求明細書中の「PINO ヌイグルミ S アカ」は「Sサイズの赤のPINOぬいぐるみ」を、「48」は「1カートンに収納されているぬいぐるみの個数」を、「800」は「販売価格」を、「48×1」は「48個入りのものを1カートン」を表すものである。
(2)乙第2号証は、「Sサイズの赤のPINOぬいぐるみ」の実物写真であり、商標「PINO」が付された布製及び紙製のタグが縫着及び紐着されている。
(3)乙第3号証は、該紙製の紐着されたタグの拡大した写である。
(4)これらのことから、本件商標は、通常使用権者によって2001年7月10日に商品「ぬいぐるみ」について使用され、かつ、販売された事実が明らかである。
(5)通常使用権者は、各種の自律型ロボットおもちゃ,ぬいぐるみの新商品の販売に際して、当該商品の商標を「PINO」とすることを決定し、商標権者との間にその使用許諾について合意に達し、商品発売前に通常使用権者としての地位を得た。そして、通常使用権者としての地位に基づき、各種の自律型ロボットおもちゃ,ぬいぐるみの新商品についての発表を2001年6月29日に行った。
商標権者は、上記商品の発売前にツクダオリジナルに通常使用権を許諾していたが、これを明らかとするために平成13年8月10日に商標使用許諾契約書を交わしたので、その写を乙第4号証として提出する。
(6)乙第5号証は、そのときに頒布した新製品概要の資料である。乙第5号証には、各種の自律型ロボットおもちゃ及びぬいぐるみについて、商標「PINO」が付されるとともに、頒布されている。
(7)乙第6号証は、現在販売されている各種の自律型ロボットおもちゃ,ぬいぐるみのカタログ一式である。
2.むすび
上記乙第1号証ないし乙第6号証に示すとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に通常使用権者によって、商品「各種の自律型ロボットおもちゃ及びぬいぐるみ」について使用されていることに相違ない。

第4 当審の判断
1.被請求人は、本件商標をその指定商品中の「自律型ロボットおもちゃ,ぬいぐるみ」について、通常使用権者であるツクダオリジナルが本件審判の請求の登録前3年以内に使用しているとして、乙第1号証ないし乙第6号証を提出しているので以下検討する。
(1)請求人は、本件において、使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一の範囲のものであること、使用に係る商品「自律型ロボットおもちゃ,ぬいぐるみ」が、取消に係る指定商品「おもちゃ、人形」に属する商品であることについては、争うところがない。
(2)ところで、通常使用権は、一般的には、商標権者又は専用使用権者との使用許諾契約に基づいて発生するものであるところ、右契約は、商標権者と使用者との意思表示の合意によって成立し、契約自由の原則により何らの方式も必要とせず、口頭による契約も認められるものと解される。
(3)これを本件についてみるに、乙第4号証(商標使用許諾契約書)によれば、商標権者であるオムニペスカ株式会社は、平成13年8月10日に、ツクダオリジナルとの間で、本件商標をその指定商品中の「おもちゃ、人形、娯楽用具」について使用許諾をすることについて、書面によって契約を締結したことが認められる。
また、乙第5号証によれば、ツクダオリジナルは、自己の取扱いに係る「ロボットおもちゃ、ソフトモデル、アクションモデル、ぬいぐるみ」等について「PINO」商標を使用した新製品の発売をするに当たり、該新製品の紹介、説明のために「新製品概要」を2001年6月29日に発行、頒布したことが認められる。そして、該「新製品概要」には、「PINO/ぬいぐるみ」の発売予定日が「2001年7月10日」であること、「ロボットフレンド/PINO」の発売予定日が「2001年8月末日」であることなどが記載されている。上記新製品の発売日については、乙第6号証によっても認めることができる。
ちなみに、乙第6号証の「WHO IS “PINO”??」によれば、「PINO情報」として、ツクダオリジナルの取扱いに係る「ロボットおもちゃ」の写真とともに、「宇多田ヒカル『CAN YOU KEEP A SECRET?』のプロモーションビデオに恋人役で出演。」、「日本科学未来館 マスコットキャラクターとして常時展示予定。」、「〜日本科学未来館〜/2001年7月お台場にオープン」などの記述が認められる。
さらに、乙第1号証によれば、ツクダオリジナルは、本件審判の請求の登録(平成13年9月12日)前3年以内の2001年(平成13年)7月10日に、株式会社河田に対し、数種の「PINO ヌイグルミ」を販売したことが認められる。
そして、乙第5号証及び乙第6号証からすると、上記乙第1号証により取引に資された「PINO ヌイグルミ」には、乙第2号証に示された「ぬいぐるみ」が含まれ、かつ、乙第3号証に示された「タグ」が付されていたものと窺える。
(4)前記(2)及び(3)によれば、商標権者とツクダオリジナルとの間で、本件商標に関する使用許諾契約が書面でなされたのは、平成13年8月10日であることが認められるが、ツクダオリジナルは、ぬいぐるみやロボットおもちゃ等の新製品を発売するに当たり、発売前から「新製品概要」(乙第5号証)、新製品に関する商品カタログ(乙第6号証)等を頒布し、宣伝、広告して公表していたこと、「PINO」商標を使用した「ぬいぐるみ」が実際に取り引きされたことを示す取引書類(乙第1号証)が存在することなどが認められ、これらの事情を勘案すれば、「PINO」商標を使用した「ぬいぐるみ」が発売される以前の2001年6月29日には既に、本件商標に関し、商標権者とツクダオリジナルとの間で、口頭による使用許諾契約があったと推認することができる。
この点に関し、請求人は、口頭などの契約では第三者にとっては許諾に関する具体的な商品など設定の内容を確認することもできず、口頭などの契約は当事者間ではともかくとして第三者が関与する商標法第50条第2項についての通常実施権者としての地位は認められるべきではない旨主張する。
しかしながら、商標法第31条第1項には、「商標権者は、その商標権について他人に通常使用権を許諾することができる。」と規定するにとどまり、使用許諾契約について書面によらなければならい旨の特別規定がないところから、前記(2)で述べたとおり、通常使用権に関する契約は、当事者間の意思表示の合意によって成立し、口頭による契約も認められるものと解されるというべきである。また、新製品の発売に伴い、改めて書面による契約書の作成がなされたことは、あながち不自然とはいえない。したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
そして、上記認定を覆すに足りる証拠は見出せない。
してみると、ツクダオリジナルは、本件商標が取引の実際において使用された2001年7月10日には、本件商標の通常使用権者であったということができる。
(5)そうすると、本件商標の通常使用権者は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、取消に係る指定商品中の「自律型ロボットおもちゃ,ぬいぐるみ」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、使用していたというべきである。
2.以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品中「おもちゃ、人形」についての登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-07-11 
結審通知日 2002-07-16 
審決日 2002-07-30 
出願番号 商願平1-137059 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (124)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 信治 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 野本 登美男
茂木 静代
登録日 1992-04-30 
登録番号 商標登録第2405030号(T2405030) 
商標の称呼 ピノ、パイノ 
代理人 田中 幹人 

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