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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1015190 
審判番号 審判1997-16495 
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-09-26 
確定日 2000-03-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第3300202号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3300202号商標の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第3300202号商標(以下「本件商標」という。)は、「Island Snow」の欧文字と「アイランドスノー」の片仮名文字を上下二段に書してなり、平成7年3月8日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,靴下」を指定商品として、同9年5月2日に設定登録されたものである。
2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証乃至甲第5号証(枝番を含む)を提出した。
(1)請求人は、ハワイでスノーボード及び被服類の販売をする「Island Snow(アイランドスノー)」(引用商標)及び平成7年商標登録願第51083号(甲第2号証)の所有者であり、本件商標の正当な権利者である。
また、わが国において、請求人は「スノーボード」について登録商標(登録第4012080号、甲第3号証)を所有する。
平成7年商標登録願第51083号は、本件商標より後願となっているが、請求人は、ハワイにおいて本件商標の出願前から引用商標を使用しており、本件商標の出願時にはハワイのみならずわが国においても既に周知著名な商標となっていたものである。
(2)ハワイは日本人にとって身近な観光地であり、特に若者に人気の店はわが国の旅行雑誌、ファッション雑誌等に、国内の店と同じように紹介されている。請求人が引用商標に係る商品を販売する店舗も、日本で発行されている雑誌、日本人旅行者向けガイドブック等に広く紹介されているものである(甲第4号証)。
甲第4号証の3は、日本貿易振興会が対日輸出に関心を持つ企業の商品を紹介したものであり、請求人の代表者、James J.Kodama氏が連絡先として掲載されている。
甲第4号証の2の「ポパイ」及び甲第4号証の8及び9の「ぴあMAP」は若者に広く購読されている。特に「ぴあMAP」は、甲第4号証の8の表紙に記録1されているように、30万部が日本全国の書店及びハワイで販売されている。
1991年以降の引用商標の使用を示す甲第4号証から、引用商標がハワイの日本人旅行者のみならず、1993年以降はわが国においても販売されているので、国内の需要者にも周知著名な商標であることが明らかである。少なくとも本件商標が出願された1995年には、スノーボードと並んで、本件商標の指定商品である被服類についても、需要者に広く知られた商標となっていたものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1頂第10号の規定に違反して登録されたものである。
(3)引用商標は、本件商標の出願時には既にスノーボード等について周知著名な商標であったので、引用商標と実質的に同一の本件商標を指定商品に使用した場合には、請求人の商品と出所混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。
(4)さらに、本件商標の商標権者は既に請求人の商標としてハワイで著名であった外国商標である引用商標と実質的に同一の商標を出願したものであり、本件商標に係る商品の販売に請求人の商品の名声が利用されるおそれがある。すなわち、甲第4号証により明らかな引用商標の周知性に鑑みれば、引用商標の有する顧客吸引力に只乗りする意図、すなわち不正な利益を得る目的が疑われてもやむを得ないものである。
事実、本件商標の商標権者である株式会社プラニング・ジャパンは、本件商標の出願時には引用商標の存在及び請求人の事業を知っており、代理店となるための交渉を行っていたものである(甲第5号証の1)。請求人は本件商標が出願されたのを知って譲渡交渉を試みたが(甲第5号証の2及び3)、拒否されたため本件審判請求に至ったものである(甲第5号証の4)。
よって、本件商標は公序良俗を害するおそれがある商標として、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。平成8年の法改正により商標法第4条第1項第19号が新設された趣旨にも鑑み、本件商標登録は無効にされるべきものである。
(5)以上述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第7号の規定に違反して登録がなされたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
3.被請求人の答弁
被請求人は、「請求人の申立は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)周知著名性の否認
被請求人は、請求人の「引用商標が日本国及びハワイで周知著名である。」との主張を否認する。
(2)著名性の判断基準
▲1▼商標の著名性を裁判例は次のように説いている(乙第1、2号証)。
「周知商標の意義及び該当性が問題とされた裁判例として、全国的に流通する日常使用の一般的商品について、同号(商標法4条1項10)が規定する『需要者の間に広く認識されている商標』といえるためには、それが未登録の商標でありながらその使用事実にかんがみ、後に出願される商標を排除し、需要者における誤認混同のおそれがないものとして保護を受けるものであること、また、今日における商品流通の実態及び広告・宣伝媒体の現況などを考慮すると、商標登録出願の時において全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは狭くとも一県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するものとした上で、日常使用される一般的商品であるコーヒー等につき使用される『DCC』の商標が、当該商品の主な販売地域である県下でも専業的な喫茶店等に対する取引占有率はたかだか30パーセント程度にすぎず、当該商標を当該業者の業務に係る商品を表示するものとして認識していた同種商品取扱業者の比率は更に下回るものといわなければならず、隣接県におけるそれらの比率は当該県にはるかに及ばないものであるから、同号に規定する需要者の間に当該業者の業務に係る商品を表示する商標として広く認識されていたものとは認められないとしたものがある。」
引用商標の著名性の有無もこの基準により判断されるべきである。
▲2▼広告媒体は新聞、雑誌、テレビ、ラジオの外にも広告塔、カタログの備置等無数の方法が考えられる。現代はテレビでも地上波、CATV、BS、CS放送がありそのチャンネル数は無数ともいえるほど多く、ラジオもまたAM、FM、SWに多くの放送局がある。視聴者の好みは細分化され、例えば若者、老人の視聴するラジオ、テレビは互いに全く違うものを視聴する例が多い。また雑誌は毎年無数といえるほど創刊され、廃刊され、頒布されず廃棄されている。請求人は広告媒体の多様性と大量化の時代に少数の雑誌に広告したことが即著名性を取得したかの如く主張するがその様な考えは誤りである。
(3)雑誌広告と著名性取得の関係
▲1▼請求人は、証拠(甲第4号証の1乃至14)を同等な証拠価値のあるものとしているが、証拠の中には雑誌、カタログ、案内書、チラシが混在する。これらのものは発行配布方法が違うのみならずそれを手にする者のその雑誌カタログ等に対する関心の度合いが違うのである。これら広告媒体の違いを考慮せず、広告掲載の事実だけで引用商標が著名性を有するとの主張は誤りである。
▲2▼請求人は、引用商標が掲載された雑誌・カタログ等(甲第4号証の1乃至14)を引用商標が周知著名であることの証拠として提出しているが、これらの雑誌・カタログに掲載されていることが、引用商標のハワイと日本国における周知著名性の決定的証拠であるとすれば、理論上引用商標と並んで掲載されている他の商標もまた周知著名な商標であることになる。しかし、商標の周知著名性獲得の証拠は、広告が雑誌・カタログに掲載された事実により証明されるものではない。
▲3▼請求人は、本件商標が請求人が指定商品をサーフボードとする商標としてハワイと日本国において著名であると主張しているが、サーフボードの製造者とそれらの者が使用する標章は無数にあるのであって、その中で本件商標が請求人のものとして周知性を有することはない。
▲4▼請求人の広告は、最新のもの(甲第4号証の9)でも平成7(1995)年に行われたものであり、平成9年9月審判請求時までも継続されている広告はない。
▲5▼雑誌「ポパイ」(甲第4号証の2)、「ぴあMAP」(甲第4号証の8)が若者に著名な雑誌であるとし、前者は30万部が日本国内及びハワイで発行されているというが、雑誌・カタログの実質発行配布部数の証拠がない。その上、雑誌の発行部数の水増は多くあることである。仮に30万部発行されているとしても請求人はその雑誌に平成3(1991)年に一回広告しただけであり、それによって引用商標が周知著名性を得たことにはならない。
▲6▼雑誌「ポパイ」(甲第4号証の2)の発行部数、発行地域が明らかでなく、また、1頁に小さな広告しか出していない広告の規模からいって、一度の広告効果が平成3年12月から平成9年12月までの6年もの間、衣料品業者、流通業者、消費者に残っているということはない。
▲7▼ジェトロの「米国州別商品情報」品目(甲第4号証の3)にリストアップされたことは、引用商標が著名であるとしてジェトロによってリストアップされたものでない。ジェトロの募集に請求人が応じたに過ぎず、周知著名性と関係がない。
▲8▼「ハワイの本」(甲第4号証の12)は、日本の一旅行社の旅行宣伝カタログであり、その中にスノーボードの店としての広告が掲載されているに過ぎず、引用商標が特別の意味を持つ体裁での広告ではない。
▲9▼「SURFING」(甲第4号証の13)は、発行者、発行年、発行部数、発行地域が全て不明である。また、この証拠の標章は本件商標と外観において著しく異なっている。
(4)類似混同のおそれ
被請求人によって本件商標が使用される商品は若者の衣類が中心である。今日、日本国において製造販売れる若者用衣類の大量性、流行の一過性からいって被請求人製造の商品の商標看者が、商品を請求人製造にかかる商品であると混同し、あるいは被請求人の業務が請求人となにか関連がある業務であると誤認混同するおそれはない。
5.当審の判断
(1)請求人提出の証拠によれば、次の事実が認められる。
▲1▼1991年12月4日発行の「POPEYE」誌に、「Island Snow」について、「ホノルルの若いコの流行モノが買える店」「ハワイのファッションを扱っているのでうれしい。カラフルなTシャツやスエットなど、」「アラモアナの2F」の紹介文、「Ala MoanaShopping Center」との住所、「808・943・0088」との電話番号が掲載されていること(甲第4号証の2)。
▲2▼月刊サーフィンライフ7月号別冊「フリッパー1993No.2」誌に、別紙の(1)に表示したとおりの商標とベスト、Tシャツ、ショートパンツ、ウィンドブレーカーの写真が掲載されていること(甲第4号証の5)。
▲3▼「ショッピングハワイ NOVEMBER 1993」に、別紙の(2)に表示したとおりの商標、「Island Snow」「アイランド・スノー・ハワイ」の各文字、「有名ブランド、ビーチとカジュアル・ウェア専門店アイランド・スノー。」との紹介文、「取り扱いブランド・・ISLAND SNOW・・・」「ISLAND SNOW HAWAII」「アイランド・スノー・ハワイ」の各文字、「アラモアナ・ショッビングセンター」との住所、「(808)943-0088」との電話番号が掲載されていること(甲第4号証の6)。
▲4▼「ショッピングハワイ JANUARY 1994」及び「ショッピングハワイ FEBRUARY 1994」に、上述の▲3▼と同一の内容が掲載されており、かつ、後者の表紙に「ISLAND SNOW HAWAII」の文字及び「カジュアルそしてビーチ・ウェアの有名ブランド・・・等最大セレクションを誇るIsland Snow Hawaiiはアラモアナ・センター2階シアーズの近く」と掲載されていること(甲第4号証の6の2、同号証の6の3)。
▲5▼「ぴあMAPハワイ ハワイ1994・最新ガイド」に、「Island Snow Hawaii」「アイランド・スノー・ハワイ」について、「大人気のブランド、アイランド・スノーのオリジナル・ショップ。」「カジュアル・ウエアを中心に、アクセサリーまでオリジナルでトータルコーディネイトできる。」との紹介文、「Ala MoanaCenter 2F」との住所、「943・0088」との電話番号が掲載され、また、「取り扱いブランド・・ISLAND SNOW・・・」、「ISLAND SNOW HAWAII」「アイランド・スノー・ハワイ」の各文字、「アラモアナ・ショッピングセンター」との住所、「(808)943-0088」との電話番号が掲載されていること(甲第4号証の8)。
▲6▼「ぴあMAPハワイ ハワイ1995最新ガイド」に、「Island Snow Hawaii」「アイランド・スノー・ハワイ」について、「大人気のブランド、アイランド・スノーのオリジナル・ショップ。」「カジュアル・ウエアを中心に、アクセサリーまでオリジナルでトータルコーディネイトできる。」との紹介文、「Ala MoanaCenter 2F」との住所、「943・0088」との電話番号が掲載載されていること(甲第4号証の9)。
(2)以上の事実よりすれば、上記各甲号証の住所、電話番号が一致することから、「Island Snow(Hawaii)」というオリジナルブランドや他の有名ブランドのTシャツ、ショートパンツ等のカジュアル・ウェアやアクセサリーを取り扱う「Island Snow Hawaii」という名称の店(以下「Island店」という。)が、遅くとも1991年から、ハワイのアラモアナ・ショッピングセンターで営業し、その店名は「Island Snow」「アイランドスノー」と略称され、その営業内容は、我が国においても広告されていたものと認められる。
(3)そして、我が国のファッション業界が、ヨーロッパや米国の流行や製品に強い関心をもち、我が国の消費者にヨーロッパや米国のブランド及び商品を紹介、販売等を行っていること、本件商標の出願時においても海外旅行者の増加、多種多様な情報媒体の発展等に伴い、我が国の消費者が海外の商品知識を容易に取得できる状況にあったこと、加えて、Island店が、我が国からの海外旅行者が最も多い地域といえるハワイの、最大級のショッピングセンタであるアラモアナ・ショッピングセンターにおいて営業されていることを併せみれば、「Island Snow Hawaii」「アイランド・スノー・ハワイ」及び引用商標「Island Snow」「アイランドスノー」は、本件商標の出願日(平成7年(1995年)3月8日)以前より、Island店の業務若しくは同店と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であることを表すものとして、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されていたものと判断するのが相当であり、さらに、本件商標出願日以降、この認定を覆すに足る事実を発見できないから、取引者、需要者の認識は本件商標の登録査定時においても継続していたものというべきである。
(4)そうとすれば、本件商標は、上述のとおり「Island Snow」と「アイランドスノー」の文字よりなり、引用商標と同一の綴りよりなるものであるから、本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者はその商品が請求人若しくはIsland店と何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと言わなければならない。
(5)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、他の無効理由について判断するまでもなく、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記


審理終結日 1999-02-02 
結審通知日 1999-02-16 
審決日 1999-02-26 
出願番号 商願平7-22260 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (025 )
最終処分 成立  
前審関与審査官 田辺 秀三岩浅 三彦 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 大渕 敏雄
森吉 正美
登録日 1997-05-02 
登録番号 商標登録第3300202号(T3300202) 
商標の称呼 1=アイランドスノー 
代理人 石川 義雄 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 西村 雅子 
代理人 土門 宏 
代理人 小出 俊實 

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