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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない 037
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 037
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 037
管理番号 1011055 
審判番号 審判1998-35040 
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-01-23 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3330899号商標の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3330899号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙(1)に表示したとおり、「SANKYO SHODOKU」の欧文字を青色で書してなり、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して平成4年9月2日に登録出願、第37類「衛生害虫・建造物害虫・食品害虫・貯穀害虫・衣類害虫・不快害虫類の駆除及び予防施行,害獣・バードコントロールの予防施行,病源菌・一般殺菌の消毒及び防カビ施行,ガスくん蒸施行,床下換気扇取付工事,家屋の改築・増築・補修」を指定役務として、同9年7月11日に設定登録されたものである。
2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由として引用する登録第248571号商標(以下「引用商標A」という。)は、別紙(2)に表示したとおり、円輪郭内に「SANKYO」及び「三共」の文字を配した構成からなり、昭和8年4月22日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及医療補助品」を指定商品として、同8年11月16日に設定登録され、その後同28年3月26日、同49年5月27日、同58年12月21日及び平成5年10月28日の4回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされたものである。同じく、登録第647377号商標(以下「引用商標B」という。)は、別紙(3)に表示したとおり、「SANKYO」の欧文字を横書きしてなり、昭和35年3月16日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同39年7月13日に設定登録され、その後同59年9月17日及び平成6年9月29日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされたものである。同じく、登録第647378号商標(以下「引用商標C」という。)は、別紙(4)に表示したとおり、「三共」の漢字を横書きしてなり、昭和35年3月16日に登録出願、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品として、同39年7月13日に設定登録され、その後同59年9月17日及び平成6年9月29日の2回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、無効とすべきものする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第126号証を提出している。(1)請求人の提出に係る、平成9年4月5日株式会社ぎょうせい発行「日本会社録(第21版)」(甲第3号証)、請求人発行「会社案内」(甲第4号証及び甲第5号証)及び・「三共株式会社定款」(甲第6号証)の各記載に徴し、請求人会社は、明治32年三共商店創業、同40年三共合資会社に改組改称、大正2年3月1日株式に改組し、平成8年3月現在、資本金438億円、従業員数6,837名、年間売上高4,100億円を示し、株式も東京、大阪、名古屋の各証券取引所第1部上場、札幌、新潟、福岡の各証券取引所にも上場し、全国的に多数の支社、営業所、出張所及び工場を有するほか、海外の多数の有数企業と技術提携をしているところの、我国有数の製薬を主業務とする一流大企業である。
(2) 請求人は上記各引用商標の商標権者であるところ、各引用商標は、すべての商品の区分において防護標章の登録及びその存続期間の更新登録もなされていること明らかなところである。
なお、請求人の提出に係る、昭和34年1月15日商標研究会編集・発行「日本商標大事典」(甲第12号証)、同47年9月5日商標研究会発行「新版日本有名商標録」(甲13号証)、平成6年11月20日商標調査会発行「日本商標名鑑’94」(甲第14号証)及び1970年社団法人日本国際工業所有権保護協会(AIPPI)発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN」(甲第15号証)の各記載に徴するも、上記各引用商標が請求人の業務に係る商品「薬剤」等を表示するためのものとして、取引者及び需要者間において古くより広く認識されているものであること明らかである。
(3) 平成2年4月請求人発行の「三共九十年史」(甲第16号証)の記載に徴し、請求人は、「木材害虫、特にシロアリ防除用としてアメリカのベルシコール社製クロルデンを導入、35年に防蟻土壌処理剤アリデンを販売し、その後は、ほとんどクロルデンが使われるようになった。36年には、防蟻防腐剤アリアンチ、三共アリコロシ、キクイムシ防除剤リクタスを発売し、品揃えを一応終えた。これを機に『三共の白蟻施行』をスタートさせたが、薬剤メーカー自体が初めて防除施行管理に乗り出したものとして注目された。41年には、接着剤混入タイプの合板用防虫剤リクタスHを他社に先がけて開発、発売し、合板防虫処理方式の主流を形成した。さらに、42年には、エアゾールタイプのリクタスゾルを、46年には、同タイプのアリ駆除剤アリアンチゾルを、それぞれ薬局ルートで販売した。」の記載にみられるとおり、製薬業を主たる業務としているところ、昭和35年頃より、薬剤メーカー自体が最初に害虫の防除施行管理業務を始めたことで、業界において注目を浴び、その後、永年の間、継続して、「アメニケアサービス」と称して、盛大かつ広範囲に亙って、各引用商標を使用すると同時に、請求人の提出に係る「アメニケアサービス広告掲載実績」(甲第17号証)に示すとおり、1991年から1994年にかけて、新聞、雑誌等への広告掲載が、「有害動物の駆除」という単一役務について、年間3,000万円以上もの巨額を費やしている如く、活発なる宣伝広告活動と相挨って、有害動物の防除に関する役務を表彰するための商標として、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されるに至った周知著名な商標であるといわなければならないところであることは、請求人の提出に係る甲各号証により、立証され得るものである。
(4) 本件商標は、その構成、上述のとおり、「SANKYO SHODOKU」の欧文字を左横書きして成るものであるところ、「SHODOKU」の文字は、「蒸気、薬物などにより、病原菌を殺し感染を防止すること」の意味を有する語で、一般世人にも極めて広く親しまれているばかりでなく、普通に使用されている「消毒」の語を容易に理解するものであり、本件商標の役務を端的に表示する部分であって、自他役務を識別するための識別力を有しない部分であるといわなければならず、本件商標における自他役務を識別するための機能を有する最も重要な部分、所謂、商標の要部は、「SANKYO」の文字部分にあるというを相当とするところであるから、これより、単に「サンキョウ」のみの称呼をも生ずるものであるといわなければならない。
(5) 各引用商標は、それぞれの構成上、いずれも「サンキョウ」(三共)の称呼及び観念を生ずること明らかであるばかりでなく、請求人の業務に係る商品を表示するためのものとして、極めて周知、著名なものであるから、本件商標をその指定役務について使用するときは、その役務が請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、誤認、混同を生じさせるおそれの充分にある商標であるといわなければならないところである。
(6) 請求人の名称は、「三共株式会社」であるところ、「株式会社」は法人の種類を表示する部分であって、自他名称を識別するための主たる重要な部分は、「三共」の文字部分にあり、これが、請求人の名称を表示するための実質的な部分であって、請求人は、「三共」(サンキョウ)とのみ略称されて、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識され、著名なものである。
一方、本件商標は、「SANKYO SYODOKU」と請求人の名称の略称として著名な「三共」と同一称呼を生ずる文字を含んでいるにも拘わらず、本件商標は、その登録について、請求人の承諾を得ている事実はないものである。
(7) 請求人の上記主張理由の正当性を立証すべく、著名商標(名称)を保護すべき旨の判決例として、「被告は、その営業上の施設又は活動に『三菱農林株式会社』、『株式会社三菱農林』又は『三菱農林』という商号又は標章を使用してはならない。」とされた平成4年(ワ)第22500号事件(平成5年9月24日判決言渡)ほか7件の判決例を挙げて、請求人は、これを自己の主張理由に、有利に援用する。
(8) 引用商標Aを原商標登録とする防護標章が、第35類、第36類、第37類、第38類、第39類、第40類、第41類及び第42類の各役務を指定役務として、それぞれ登録されている事実がある。
ということは、請求人は、製薬業務を主とする多角経営の法人会社であって、該引用商標を上記の各類に属する役務について、第三者が使用をするときは、その役務が、請求人の業務に係る役務であるかの如く、その役務の出所につき、誤認、混同を生じさせるおそれが充分にあるということを、特許庁が認めたことの証左に外ならないところである。
(9) 請求人は、請求人自身が自己の業務の取引者又は依頼者(需要者)に対して行ったアンケート調査票(88通)を証拠方法(甲第39ないし第126号証)として提出する。
これらに徴するも、本件商標がその指定役務について使用された場合には、一般の取引者及び依頼者(需要者)は請求人又は請求人の関係会社がその役務を行っているかの如く、誤認混同を生ずるおそれは充分にあることが明らかである。
(10) してみれば、本件商標は、取引者及び需要者の間において極めて広く認識されている各引用商標と、称呼において彼此相紛らわしい類似の商標であるといわなければならないので、これをその指定役務について使用するときには、その役務と請求人の業務に係る役務との間において、役務の誤認、混同を生ずるおそれの充分にある商標であり、かつ、請求人の名称の著名な略称を含んでいる商標であるにも拘わらず、その登録について、請求人の承諾を得ていないものであるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号び同項第15号の各規定に違反して登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号の規定に基づいて、その登録は、無効とされるべきものである。
(11) 答弁に対する弁駁
▲1▼ 被請求人は、「本件商標は『SANKYO SHODOKU』という英文字を同一書体、同一大、同一間隔、同一色彩にて軽重の差なく、一体不可分に連綴してなるものであり、これより『SHODOKU』の文字を捨象して称呼、観念すべき格別の理由は全く存しない。」旨主張しているが、本件商標の称呼は、8音節からなるところ、一般的に、商標として8音節の称呼といえば、やや冗長に亘るものであることは明らかであり、しかも、本件商標の指定役務の中には、「衛生害虫・建造物害虫・食品害虫・貯穀害虫・衣類害虫・不快害虫類の駆除及び予防施行,害獣・バードコントロールの予防施行,病源菌・一般殺菌の消毒及び防カビ施行,ガスくん蒸施行」なる役務が含まれている以上、「SHODOKU」の文字が指定役務との関係で直ちに該役務を示すものとして当業界の取引考及び消費者をして、容易に理解され把握されることは自明の理である。
▲2▼ 被請求人は、「本件商標は盛大なる広告宣伝により今や独自の著名性を獲得してものである。」旨主張しているが、乙第14ないし第221号証をいかに精査しても、本件商標が使用されている形跡は、全く見当たらない。よって、これらの証拠方法では、「本件商標が独自の著名性を獲得している」ことも、また、「一般世人においては『SANKYO SHODOKU』の一体不可分のものとして、広く親しまれて定着している」ものとも、到底認め得られるものではない。
▲3▼ 「『三共』の文字を法人名として採択している者は数多く存在するのであり、『三共』の文字自体には同法条による保護を必要とするだけの稀少性はないと考えるのが相当である。」旨の被請求人の主張は、所詮、異業種法人の名称を指摘しているのみであり、当然に、同業者間における問題である本件とは事案を異にするものであって、この主張は採用するに値しないものである。
▲4▼ 被請求人の提出に係る乙第225ないし第232号証によっては、被請求人自身の使用する商標が著名性を獲得しているとは、俄には信じ難く、被請求人の主張は採用するに由なきものという外はない。
4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第232号証を提出している。
(1) 請求人は、本件商標及び本件商標と称呼を同じくする他の3件の商標権の審査段階にそれぞれ異議由立てをしたが、平成9年3月19日付の登録異議の申立てについての決定において、本件商標と引用商標とは何ら類似するところのない別異の商標であり、これをその指定役務に使用しても、役務の出所について混同を生ずるおそれはなく、また、申立人(請求人)の略称を含んでなるものともいい得ないと明瞭に判断されている。
また、本件商標と引用商標とを全く同じくし、第42類「樹木・森林の害虫駆除及び予防施行」を指定役務とする他の4商標権の審査段階にそれぞれ異議申立てをしたが、これまた平成7年7月5日付の登録異議の申立てについての決定において、申立人(請求人)の「三共」が申立人(請求人)の名称の略称として著名であるともいい難く、本件商標と引用商標とはその外観・称呼及び観念上のいずれの点においても互いに相紛れるおそれのない全く非類似の商標であると明瞭に判断されている。
更に、請求人は上記第42類の商標権に対する商標登録無効審判を請求したが、該審判の審決において、該登録は商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第8号に違反してなされたものということができないと判断されている。
このように、本件については数多くの審査・審判の場において、請求人の主張する各無効理由について厳格かつ充分なる審査・審理がなされてきたものである。
よって、本件も前記事案とはほぼ同一の事案であり、同様の判断がなされてしかるべきであるので、被請求人はここに乙第1号証ないし乙第12号証として上記登録異議の申立てについての決定謄本及び審決を提出する。
(2) 請求人は、「本件商標は、『SHODOKU』の文字は自他役務を識別するための識別力を有しない部分といわなければならず、本件商標における自他役務を識別するための機能を有する最も重要な部分、所謂、商標の要部は『SANKYO』の文字部分にあるというを相当とするところであるから、これより、単に『サンキョウ』のみの称呼をも生ずるものといわなければならない。」旨主張する。
しかしながら、本件商標をみるに、本件商標は「SANKYO SHODOKU」という欧文字を、同一書体、同一大、同一間隔、同一色彩にて軽重の差なく、一体不可分に連綴して成るものであり、これより「SHODOKU」の文字を捨象して称呼、観念すべき格別の理由は全く存しない。すなわち、「SHODOKU」の文字からは本件指定役務との関係において、直ちに役務を示すものとして理解され、分離観察されなければならない必然性が見出せないからである。
したがって、本件商標からは、一体不可分に「サンキョウショウドク」とよどみなく称呼され、観念されると目するのが自然である。
さらに、商標の類否を検討する前提として、ある商標から如何なる称呼を抽出すべきかは商取引の経験則によるべきは言うまでもないところであるが、現に本件商標は後述するように盛大なる広告宣伝により、今や独自の著名性を獲得しているものである。
すなわち、被請求人は、乙第13号証に示すとおり、大正14年に衛生動物、衛生害虫等の駆除、予防の専門業者として創業し、昭和41年に三共消毒社として発足すると共に「三共消毒」の名称の下に、現在まで盛大に広告宣伝活動をして継続使用してきたものである(乙第14ないし第221号証)。ちなみに被請求人の広告宣伝費を示せば、乙第222号証に示す通り、まさに膨大な額となっていることが明白である。
したがって、今や本件商標は業務内容の優秀性と相俟って、一般世人においては、「SANKYO SHODOKU」という一体不可分のものとして、広く親しまれて定着しているものであって、充分業務上の信用が確立されているものである。
それ故、本件商標に接した需要者、取引者は、むしろシロアリ等の防除、駆除として有名な被請求人である「株式会社三共消毒」の使用商標として認識し、理解するものであって、本件商標からは「サンキョウショウドク」の称呼以外の称呼は決して生じないと目するのが相当であり、たとえ請求人と同様の「SANKYO」の文字が含まれているからといって、前述した如く請求人の企業を直感することは全くあり得ないものである。
したがって、前記請求人の主張はその観察方法において、本件商標に永年培われた取引の実情を無視したものであって、余りに機械的、形式的、画一的であり、当を失するものといわざるを得ないのである。
(3) 仮りに万歩譲って、請求人の引用商標が、いわゆる製薬会社の目印として周知性があるとしても、本件商標の指定役務との関係において、本件商標の使用が、果して引用商標の人格権を毀損すると客観的に認められる程の違法性があるか否か極めて疑問である。
すなわち、たまたま請求人の提出する甲第3号証をみても、「三共」及び「三共」の文字を含む他人の会社名が存在しているものであり、被請求人の調査したところによれば、全国に「三共」の文字を含む会社名は相当多数存在していることが判明している。そこで、被請求人の主張を裏付けるべく、乙第223号証を提出するが、当該証拠からも明らかなとおり、「三共」の文字をその法人名として採択している者は数多く存在するのであり、「三共」の文字自体には同法条による保護を必要とするだけの稀少性はないと考えるのが相当である。
加えて、「三共」の文字は、被請求人自らも「南京虫・家ダニの駆除」の役務について昭和17年の時点において既に使用している名称であり、このことを立証すべく、被請求人は乙第15号証を提出する。これからも明らかなように、人格権の毀損がなされる程の稀少性が「三共」の文字に有しないと目するのが相当である。
(4) 請求人は、「1991年から1994年にかけて、新聞、雑誌等への広告掲載が『有害動物の駆除』という単一役務について、年間3,000万円以上もの巨額を費し、極めて広く認識されるに至った周知著名な商標である」旨主張するが、むしろ被請求人は、上記役務について請求人以上の膨大な広告宣伝費をかけているものである(乙第222号証)。ちなみに、請求人の主張する年度における被請求人の広告宣伝費をみると、被請求人のそれは請求人よりも2倍ないし3倍以上となっているものであり、如何に被請求人が本件商標を代表的出所標識として重要視しているものであることが理解し得ると信ずる。
(5) 被請求人は、自身の使用する商標も充分に著名性が確立され、業務上の信用を獲得していることを証明する証拠を乙第225ないし第232号証として提出する。
乙第225ないし第232号証は、本件商標が昭和41年以来継続して使用された結果、被請求人の使用する商標として広く知られた著名商標となっていること、並びに、本件商標がその指定役務について使用されても、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれはないことを立証するものである。
すなわち、本件商標も永年にわたる企業努力により独自の著名性が確立されており、一般世人にあっても、あえて本件商標から「SANKYO」の文字を抽出し、請求人の名称を認識することは何らあり得ないものである。
かかる証明書の内容に照らせば、本件商標は商標法附則第5条第2項によって読み替える同法第4条第1項第10号括弧書の適用を受けるものであって同号には該当せず、また、同第15号に該当しないことも明らかである。
(6) 請求人は、甲第6ないし第41号証を提出し、引用商標が著名性を確立していることを立証せんとしている。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、商標構成の一部において共通する文字は存在するも、前述した如くそもそも全く別異の非類似の商標として、それぞれの商標使用者によって永年の間明確に区別され、使用されてきたものであって、両商標の間には何ら出所の混同を生じる余地はないものである。
したがって、各甲号証は本件の争いについては何ら意味のないものと信ずるが、念のため請求人の提出した各証拠について反論する。
▲1▼ 甲第7ないし第11号証及び甲第26ないし第33号証に示す各登録商標が、各指定商品について防護標章を取得していることは認め得るも、本件商標とは構成を異にすることから、そもそも判断の対象とはならないものである。
▲2▼ 甲第12ないし第15号証については、かかる証拠がどのような基準で、如何なる資料に基づいて作成されたか全く不明であり、証拠価値としては、脆弱といわざるを得ない。
▲3▼ 甲第17号証は、1991年から1994年にかけて新聞、雑誌等への広告掲載雑誌(紙)、回数、金額、取り扱い、支払い先を記した単なる一覧表的な概括表にすぎず、しかも請求人内部の特販課から特許部への書類であり、証拠としては客観性に欠けるものである。
▲4▼ 甲第18ないし第25号証の判決例は、何れも本件事案とは全く異にするものであって、証拠としては何ら意味をなさないものである。
▲5▼ 甲第34ないし第38号証は、各新聞、雑誌であるが、これら各証拠をみると、請求人自身を顕著に明示する方法が、いずれも「三共株式会社」の文字とその「社標」あるいはそれらと「医薬品の三共!」又は「クスリの三共」という文字である。これからもわかるように、請求人は殊更に製薬会社であるという点を強調していることが窺えるものである。
すなわち、請求人自らがその商標の使用において、他社と明確に一線を画して使用しているものと目されるのである。
▲6▼ 串第39ないし第126号証のアンケートは、全体で何通の用紙が如何なる基準の下で配布されたか、全体の回答率はどの程度か、「はい」と回答した者の比率はどの程度か等が定かでなく、その全体像が明らかでないので、証拠としては客観性に欠け何ら意味をなさず、証拠価値としては脆弱といわざるを得ない。
(7) 以上の次第で、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第10号及び同項第15号の各規定に違反しない。
5 当審の判断
(1) 本件商標が商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものか否かについて
本件商標と各引用商標の構成は、前記のとおりの構成からなるものであるから、その外観においては、明らかに区別し得る差異を有するものである。
次に称呼の点についてみるに、本件商標は、「SANKYO SHODOKU」の文字が同じ書体、同じ色彩で、まとまりよく一体に構成されているばかりでなく、これより生ずると認められる「サンキョウショウドク」の称呼もよどみなく一気に称呼し得るものである。また、「SHODOKU」の文字が、「病原菌を殺し感染を防止すること」の意味を有するとしても、かかる構成においては、その構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、「サンキョウショウドク」の一連の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
一方、各引用商標は、「三共」又は「SANKYO」の文字に相応して、それぞれ「サンキョウ」の称呼を生ずるものといえる。
そこで、「サンキョウショウドク」の称呼と「サンキョウ」の称呼を比較すると、両者の称呼は、その音構成において顕著な差異を有するから明確に区別し得るものである。
更に観念の点についてみるに、本願商標及び各引用商標は、特定の観念を有しない造語よりなるものとみるのが相当であるから、観念においては比較することができない。
してみれば、本件商標と各引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても区別できる差異を有するものであって、両商標は非類似のものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものということはできない。
(2) 本件商標が商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定に違反して登録されたものか否かについて
被請求人の提出に係る各乙号証によれば、被請求人は、大正14年に創業、昭和41年に消毒部門の独立をはかり「三共消毒社」として発足、同44年に有限会社三共消毒社を「株式会社三共消毒」に名称を変更したこと(乙第13及び第16号証)、昭和17年には既に「三共社」の文字を用いて「南京虫・家ダニの駆除」の役務に関する新聞広告を行っていたこと(乙第224号証)が認められる。そして被請求人は、会社案内、パンフレット等に「三共消毒」の商標を使用すると共に、昭和57年4月ないし平成1年5月にテレビに広告した(乙第21号証)のを始め、新聞等の各種媒体に広告宣伝し(乙第22ないし第221号証)、その広告宣伝費は相当の額になり、平成3ないし5年についてみると、被請求人は、請求人の2倍から3倍の費用をかけていたことが認められる(乙第222号証)。
以上の事実からすれば、上記「三共消毒」の商標と称呼を同一にする本件商標は、被請求人ないしは上記商標を容易に想起せしめるものといえる。
一方、請求人の提出に係る株式会社ぎょうせい発行「日本会社録(第21版)」(甲第3号証)によれば、「三共株式会社」又は「株式会社三共」の名称からなる株式公開企業が、全国に数社存在することが認められ、被請求人の提出に係る乙第223号証によれば、名称中に「三共」の文字を含む企業が、少なくとも数百社存在することが認められる。
また、請求人の提出に係る甲第34ないし第38号証によれば、請求人が新聞又は雑誌の広告において使用する商標は、いずれも「SANKYO」の文字のみでなく、「三共」と「SANKYO」の文字を円輪郭内に組み合わせたもの(引用商標A)、「三共株式会社」、「クスリの三共」の如く他の文字等と共に用いられているものであることが認められる。
これを覆すに足りる証拠の提出はない。
以上を総合すると、本件商標は、不可分一体のものとして看取されるものであって、これに接する取引者、需要者は、本件商標と各引用商標とは別異のものとして理解し認識するというのが相当である。
してみれば、本件商標をその指定役務について使用しても、該役務が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く役務の出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
更に、本件商標に接する取引者、需要者が、その構成中の「SANKYO」の文字部分から直ちに請求人を想起又は連想するものとはいい難いというのが相当であるから、本件商標は他人の名称の著名な略称を含む商標ということもできない。
なお、請求人の提出に係る甲第39ないし第126号証のアンケートは、「被請求人が本件商標を『有害動物の駆除及び予防施工』等の役務に使用していることにより、あたかも請求人又は請求人の関係会社が上記役務を行っているかの如く誤認混同を生じているか、あるいは将来誤認混同を生ずるおそれがあると考えるか。」というものであるところ、これについては88名の回答者があり、そのうち1名を除いた者が、「はい」と記入していることが認められる。しかしながら、このアンケートは、全体で何通の用紙が如何なる基準の下に配布されたか、全体の回答率はどの程度か、「はい」と回答した者の比率はどの程度か等が定かではなく、その全体像が必ずしも明らかでないので、このアンケートに基づく請求人の主張は、にわかに信じ難いものであって、これを採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定に違反して登録されたものということはできない。
(3)むすび
以上のとおりであって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号の規定に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲




審理終結日 1999-09-10 
結審通知日 1999-09-28 
審決日 1999-10-12 
出願番号 商願平4-168793 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (037 )
T 1 11・ 23- Y (037 )
T 1 11・ 25- Y (037 )
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 昭夫原 隆 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 大橋 良三
石田 清
登録日 1997-07-11 
登録番号 商標登録第3330899号(T3330899) 
商標の称呼 1=サンキ+ヨ-シ+ヨ-ドク 2=サンキ+ヨ- 
代理人 浅村 皓 
代理人 高梨 範夫 
代理人 飯島 紳行 
代理人 浅村 肇 
代理人 宇佐美 利二 

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