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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1380145 
異議申立番号 異議2020-685004 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-28 
確定日 2021-06-11 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1447810号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1447810号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件国際登録1447810号商標(以下「本件商標」という。)は、「GENTLE MONSTER」の文字よりなり、2018年12月17日にRepublic of Koreaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2018年(平成30年)12月31日に国際商標登録出願、第9類「Smartglasses.」を指定商品として、令和2年2月28日に登録査定、同年4月17日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)。
1 申立人が引用商標として明示した商標
(1)登録第5057229号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
指定商品:第32類「エネルギー補給用清涼飲料,スポーツ用清涼飲料,その他の清涼飲料,果実飲料,エネルギー補給用のアルコール分を含有しない飲料,スポーツ用のアルコール分を含有しない飲料,ビール風味の麦芽を主体とするアルコール分を含有しない飲料,その他のアルコール分を含有しない飲料」
登録出願日:平成18年6月9日
設定登録日:平成19年6月22日
(2)登録第5393681号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成23年2月25日
(3)登録第6148588号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
指定商品:第9類、第12類、第14類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
優先権主張:オーストラリア連邦 2018年5月8日
登録出願日:平成30年11月7日
設定登録日:令和元年5月31日
(4)登録第5788676号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
指定商品:第9類、第16類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日:平成26年12月25日
設定登録日:平成27年8月28日
なお、引用商標1ないし引用商標4は、いずれも現に有効に存続しているものである。
2 申立人主張の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの
(1)「MONSTER」の欧文字からなる商標(以下「引用商標5」という。)。
(2)「モンスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標6」という。)。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第469号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る「MONSTER」の周知著名性
(1)MONSTERブランドの創設及び「MONSTER」の使用
ア 申立人は、1930年代に創業した米国の飲料メーカーであり、創業以降、アルコールを含有しない飲料(炭酸飲料、天然ソーダ水、清涼飲料、フルーツジュース、エナジードリンク、スムージー、レモネード、アイスティー等の様々な飲料製品)の企画、開発、製造、マーケティング及び販売の事業に従事していたが、2015年6月以降はエナジードリンクの事業に注力している(甲2、甲58)。
申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドを創設し、現在に至るまで「MONSTER」をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「MONSTERエナジードリンク」という。)の出所識別標識とし使用しており、MONSTERエナジードリンクは、2002年に米国でMONSTERブランドの第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。
イ 2002年以降現在まで継続して、MONSTERエナジードリンクには、一貫して「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名が採用されている。また、これらの個別製品の包装容器(缶、瓶)は同じデザインで統一されており、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)が独立して見る者の目を惹きつける態様で大きく表示している。
ウ このように、規則的なネーミング法(すなわち「MONSTER」に他の語を結合する方法)で命名された個別製品名と、特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字を顕著に表示した統一的デザインの包装容器を特徴とするMONSTERエナジードリンクは、需要者の間でたちまち人気となり、申立人のMONSTERエナジードリンク事業は急速に業績を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2?甲33、甲51?甲58、甲391?甲393)。
エ 国内では、2012年5月のMONSTERブランド初上陸以降、現在までに、リニューアル製品及び季節限定製品を含め、以下のとおり発売し販売を継続している。
(ア)「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー 缶355ml)(甲7、甲14)
(イ)「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス 缶355ml)(甲7、甲14)
(ウ)「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)(甲10、甲15)
(エ)「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3 ワンウェイびん150ml)(甲59、甲61)
(オ)「MONSTER COFFEE」(モンスターコーヒー 缶250g)(甲60、甲62)
(カ)「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ 缶355ml)(甲101?甲103)
(キ)「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」(モンスターロッシ 缶355ml)(甲256、甲257、甲263)
(ク)平野歩夢氏とのコラボレーションによる「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー スペシャルデザイン缶355ml)(甲291)及び同「MONSTER ENERGY ULTRA」(モンスターウルトラ スペシャルデザイン缶355ml)(甲291)
(ケ)「MONSTER CUBA LIBRE」(モンスターキューバリブレ 缶355ml)(甲323、甲324)
(コ)「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー ボトル缶473ml)(甲354?甲356)
(サ)「MONSTER PIPELINE PUNCH」(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)(甲353、甲357、甲358)
(シ)「MONSTER ENERGY M3」(モンスターエナジーM3 缶160ml)(甲361)
(2)広告宣伝活動
MONSTERエナジードリンクに関する広告宣伝活動は、幅広く継続的なものであり、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、MONSTERエナジードリンクのサンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。
また、申立人は、MONSTERエナジードリンクの中心的需要者層である10?30代の若い世代(特に男性)に人気が高いF1自動車レース、ドリフト、モトクロスなどのモータースポーツ、スノーボード、スケートボードなどのエクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行い、また、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウントを開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。
(3)海外で製造された模倣品
需要者におけるMONSTERブランドのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年(2013年)7月から度々発生している(別紙8)。
(4)国内外における商標登録等
「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む)、爪の図柄と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字について、申立人は、引用商標をはじめとして、国内外において多数の商標登録を取得している(甲432?甲465)。
(5)第三者による市場調査報告書
複数の第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、2013年時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかである。2013年以降も、MONSTERエナジードリンクは着実に売上を伸ばし、男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく目立つ態様で表示された爪の図柄が人目をひきつけ、男性のみでなく女性の間でもMONSTERブランドの認知度を高めている(甲311?甲322、甲383?甲385)。
また、MONSTERエナジードリンクは、市場で「モンスター」と称され、「MONSTER」、「モンスター」と表示されて認識されている(甲10、甲16、甲17、甲34の1、甲34の2、甲42の3、甲51?甲53、甲56?甲58、甲63、甲64、甲69、甲71、甲79、甲90、甲92、甲96、甲98、甲101?甲103、甲112、甲113、甲117、甲118、甲120、甲124、甲128、甲132、甲135、甲145、甲162、甲165、甲168、甲229、甲232、甲233、甲235?甲240、甲242、甲244、甲245、甲247、甲248、甲250、甲251、甲256?甲260、甲262、甲270、甲272?甲276、甲282、甲283、甲286、甲291?甲293、甲312、甲320、甲321、甲323、甲324、甲326、甲335?甲347、甲349、甲351、甲352、甲364、甲371、甲372、甲374?甲376、甲380、甲391?甲393)。
(6)小括
以上の事柄に照らせば、申立人の使用に係る「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして国内外の取引者、需要者の間で広く認識されていた。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)上記1のとおり、「MONSTER」及びその表音「モンスター」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものものとして需要者の間で広く認識されていた。
(2)本件商標の構成文字「GENTLE MONSTER」は、英単語の「gentle」及び「monster」に通じるものであり、その表音の「ジェントル(gentle)」(甲468、甲469)及び「モンスター(monster)」(甲466、甲467)が外来語として一般に広く親しまれていることから、「GENTLE」と「MONSTER」の2語を結合したものであると容易に認識、理解されるものである。
「GENTLE MONSTER」は、「MONSTER」の文字、「モンスター」の音(称呼)、「モンスター」の観念を包含する点で、引用商標1ないし4、並びに「MONSTER」を使用したMONSTERエナジードリンクの個別製品名(別紙1)と一致し、これらの申立人の使用に係る商標と外観、称呼及び観念の印象が類似する。
加えて、「GENTLEMONSTER」は、MONSTERエナジードリンクに使用されているすべての個別製品名と同一のネーミング規則、すなわち、「MONSTER」に他の語を結合する方法によって構成されているものである。
したがって、本件商標は、申立人の使用に係る商標と類似性の程度が極めて高いことが明らかである。
(3)本件商標が使用される指定商品(以下「本件指定商品」という場合がある。)は、引用商標4の登録に係る指定商品と同一又は類似のもの、並びにこれらと密接に関連するものである。
さらに、本件指定商品は、申立人のMONSTERブランドの様々なライセンス商品(アパレル製品、バッグ、時計、ステッカー、運動用ヘルメット等)と需要者の範囲を共通にするものであり、また、MONSTERブランドのエナジードリンクの販売キャンペーンの賞品・景品として需要者に提供されている非売品MONSTERグッズ(ウェアラブルカメラ、ヘッドフォン、テレビ、スピーカー、ゲーム機、CDプレーヤー、サングラス等を含む。)とは製造部門、用途、機能、販売場所、需要者層を共通にする極めて関連性が強い類似のものである。
(4)本件商標の指定商品の需要者は、一般消費者を含むものであるから、その通常の需要者の注意力の程度はさほど高いものとはいえない。
(5)小括
したがって、本件商標が本件指定商品に使用された場合、これに接した需要者は、申立人の使用に係る「MONSTER」又は申立人会社を直観し、当該商品が申立人あるいは申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生じるおそれがある。
また、本件商標の使用は、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所識別力希釈化するものであり、また、その名声、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標が使用された場合、申立人の商品及び役務の出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力が希釈化するおそれが高いものであり、また、本件商標の使用は、申立人がこれらの商標について獲得した信用力、顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ず、申立人に経済的及び精神的損害を与える。
したがって、本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)申立人の主張及び同人提出の証拠並びに職権調査によれば、次のとおりである。
ア 申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年(平成24年)5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー) 缶355ml」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス) 缶355ml」の販売を開始し、その販売量は同年9月には累計100万箱を超え、12月には累計157万箱となった(甲7?甲9)。
イ 申立人は、我が国において、2013年(平成25年)5月に「MONSTER ABSOLUTELY ZERO(モンスターアブソリュートリーゼロ 缶355ml)」(甲10)、2014年(平成26年)8月に「MONSTER ENERGY M3(モンスターエナジー M3 ワンウェイびん150ml)」(甲59)、同年10月に「MONSTER COFFEE(モンスターコーヒー 缶250g)」(甲60)、2015年(平成27年)7月に「MONSTER ENERGY ULTRA(モンスターウルトラ 缶355ml)」(甲101)、2017年(平成29年)6月に「MONSTER ENERGY THE DOCTOR(モンスターロッシ 缶355ml)」(甲256)、2018年(平成30年)4月に「MONSTER CUBA LIBRE(モンスターキューバリブレ 缶355ml)」(甲323)、同年8月に「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー ボトル缶473ml)」(甲354)、2019年(平成31年)4月に「MONSTER PIPELINE PUNCH(モンスターパイプラインパンチ 缶355ml)」(甲357)の販売を開始し、製品によってはリニューアルしたり、コラボ缶の製品を販売した(以下、これら商品と上記アの商品をまとめて「申立人商品」という。)。
ウ 申立人商品のうち、「MONSTER ENERGY」、「MONSTER KHAOS」(2016年(平成28年)5月から)、「MONSTER ENERGY ABSOLUTELY ZERO」、「MONSTER ENERGY M3」、「MONSTER ENERGY ULTRA」、「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」及び「MONSTER PIPELINE PUNCH」の容器には、その中央に別掲3のとおりの商標(色彩が異なるものを含む。以下「別掲3商標」という。)が表示されている(甲7、甲10、甲59、甲101、甲130、甲257?甲263、甲357ほか)。
また、「MONSTER COFFEE」の容器にはその中央に別掲3商標の上段のデザイン化された「MONSTER」の文字部分(以下「MONSTERロゴ」という。)と「COFFEE+ENERGY」の文字が2段に表示され、「MONSTER CUBA-LIBRE」の容器には、「MONSTERロゴ」が表示されている(甲60、甲324ほか)。
エ 申立人は、我が国で開催される各種のスポーツ競技会、イベントにおいて、看板、ユニフォーム、車体など多種多様なものに、別掲3商標を表示している(甲73?甲80、甲82ほか)。
オ 我が国において、別掲3商標が表示されたステッカー、衣類、帽子、ヘルメットなどが販売されている(甲47、甲48、甲98ほか)。
カ 平成25年7月以降、我が国の税関において、申立人の商標(国際登録第1048069号など)に係る商標権を侵害する疑いがある貨物(帽子、ショートパンツ、Tシャツなど)が多数発見されている(甲169?甲224)。
キ JMR生活総合研究所による消費者調査 No.196「エナジードリンク(2014年(平成26年)7月版)」によれば、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」で45%、2位が「モンスターエナジー」で31%であった(甲311)。また、同消費者調査 No.232「エナジードリンク(2016年(平成28年)8月版)」でも、ブランド認知率の1位は「レッドブル・エナジードリンク」であり、2位は「モンスターエナジー」であったと推認できる(甲312)。
ク 飲料総研の調査によれば、我が国における2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数は約950万ケース(1ケース30本換算)であり、首位のレッドブルが550万ケース、2位のモンスターエナジーは240万ケースであった(甲317、甲318、甲320)。
ケ ジャストシステムによるエナジードリンクに関する調査(2014年(平成26年)4月)によれば、認知度が高い商品の1位は82.8%の「RedBull」、2位は47.6%の「MONSTER ENERGY」であった(甲319)。
コ JMR生活総合研究所による消費者調査データ No.269「エナジードリンク(2018年(平成30年)5月版)」には、「モンスター、レッドブル、リアルゴールド 寡占化すすむエナジードリンク市場」のタイトルのもと、「今回の調査では、『リアルゴールド(日本・コカコーラ)』『レッドブル・エナジードリンク(レッドブル・ジャパン)・・・』『モンスターエナジー(アサヒ飲料)』の3ブランドがほとんどの項目で上位3位を独占した。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking269.html)
また、同消費者調査データ No.293「エナジードリンク(2019年(令和元年)5月版)」には、「リアルゴールド、レッドブル、モンスターエナジー。3強上位独占」のタイトルのもと、「エナジードリンクの市場は、2桁の伸びの後に、2016年(平成28年)は対前年比5%増、2017年(平成29年)は同じく8%増とやや落ち着いたものの、依然として成長を続けている。」の記載がある。
(職権調査:https://www.jmrlsi.co.jp/trend/mranking/02-drink/mranking293.html)
サ 申立人及びアサヒ飲料株式会社は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品のキャンペーンに係るニュースリリース、ポスターなどで申立人商品を「モンスター」と表示しているものが見受けられ、また、両社以外のウェブページにおける当該キャンペーンについてのポスターやその他の記事においても「MONSTER」及び「モンスター」の文字が表示されているところ、当該ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等には、申立人商品の画像又は別掲3商標若しくは「モンスターエナジー」の文字が同時に表示又は掲載されている(甲69、甲71、甲79、甲101?甲103、甲111、甲113、甲115、甲118、甲119、甲124ほか)。
(2)上記(1)のとおり、申立人は、我が国において、2012年(平成24年)5月からエナジードリンク「MONSTER ENERGY」及び「MONSTER KHAOS」の販売を開始し、その後現在まで、計9種の申立人商品を販売するとともに、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じ、申立人商品の広告宣伝を行っていたこと、2013年(平成25年)のエナジードリンクの出荷数約950万ケースのうち、申立人商品の出荷数は240万ケースで第2位であったこと、申立人商品の認知度が2014年(平成26年)において、その数値は31%と47.6%と差異はあるものの、いずれの調査でも第2位であったことが認められ、2016年(平成28年)の認知度はその数値は不明であるものの2位であったと推認できることに加え、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)の調査において、いずれも申立人商品はエナジードリンクで3強の一つとされ、また、エナジードリンクの市場は2017年(平成29年)において成長を続けているとされていることを併せみれば、申立人商品は、本件商標の登録出願の日(平成30年7月10日)前から、登録査定日(令和元年5月29日)はもとより現在においても継続して、我が国のエナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
そして、申立人商品は、そのほとんどの容器の中央に「MONSTER ENERGY」の文字が別掲3のとおりの態様で表示されていること、及びニュースリリース、各種記事などにおいて「MONSTER ENERGY」「モンスターエナジー」と表示され、「モンスターエナジー」と称されていることから、「MONSTER ENERGY」及び「モンスターエナジー」の文字は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人及びアサヒ飲料株式会社の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間に広く認識されているものといえる。
そうすると、別掲3のとおりの態様に申立人図形商標を加えた態様からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含む引用商標1、また、「MONSTER ENERGY」の文字からなり、指定商品中に「エナジードリンク」を含む引用商標2は、いずれも申立人商品(エナジードリンク)を表示するものとして、エナジードリンクの需要者の間においては、広く認識されているものというべきである。
しかしながら、申立人商品の広告宣伝は、各種のスポーツ競技会、イベント及びキャンペーンなどを通じて行われているものの、老若男女を問わず幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じたものとはいえないばかりか、我が国における申立人商品の清涼飲料に対する市場占有率等も確認することができないこと等を総合的に判断すると、申立人商品及び引用商標1及び引用商標2は、幅広い需要者層を有する一般的な清涼飲料の分野においてまでも、需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
また、申立人商品は、その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されているものがほとんどであり、MONSTERロゴのみが表示されている商品である「MONSTER CUBA-LIBRE」についての出荷数、シェア等の販売実績は確認できない。
さらに、「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字は、ニュースリリース、ポスター、ウェブサイト等において、申立人又は申立人商品の略称として表示又は掲載が見受けられるとしても、常に申立人商品又は「モンスターエナジー」若しくは別掲3商標の文字とともに表示又は掲載されていることからすれば、これに接する需要者は、そこに表示又は掲載された「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字を、申立人商品(「モンスターエナジー」)の一連の名称として使用されていることを前提に、申立人商品(「モンスターエナジー」)を指称する文字として理解するというべきである。
そうすると、申立人商品又は「モンスターエナジー」の文字若しくは別掲3商標と関連なく表示されている「MONSTER」の文字及び「モンスター」の文字までもが、需要者において申立人商品を表示するものと理解されるとはいい難い。
したがって、「MONSTER」の文字からなる引用商標5及び「モンスター」の文字からなる引用商標6は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、引用商標3及び引用商標4は、いずれもそれらが使用された指定商品についての販売実績及び取引実績が確認できないから、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 本件商標の指定商品と申立人商品との関連性について
本件商標の指定商品「smartglasses」(眼鏡型携帯情報端末)と申立人商品であって清涼飲料の一種である「エナジードリンク」とは、一般的には、その商品の性質、用途又は目的において直接的な関連性もなく、その商品の製造者や販売者、需要者層も、重複又は密接に関連しているものとはいえず、それらの密接な関連性を示す具体的な証拠は、申立人から提出されていない。
なお、申立人は、本件商標の指定商品は申立人及びその商標ライセンシーによるライセンス商品並びに申立人商品の販売促進グッズと同一又は類似のものであるから、申立人商品とは極めて密接な関連性を有する旨を主張するが、それは申立人固有の実情にすぎず、上記のような本件商標の指定商品と申立人商品との間における商品間の関連性の判断に影響を与えるものではない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標5について
申立人は、本件商標は引用商標5「MONSTER」との関係で出所の混同を生じるおそれがある旨主張していると認められるので、まず、その点について検討する。
ア 本件商標と引用商標5との類似性の程度
(ア)本件商標は、「GENTLE MONSTER」の文字を横書きしてなるところ、「GENTLE」と「MONSTER」の文字の間に半角程度のスペースはあるものの、同じ書体により全体をまとまりよく一体的に表したものといえるものであり、また、本件商標全体から生じる「ジェントルモンスター」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、その構成中「GENTLE」の文字が「優しい」を意味する外来語として一般に知られており、一方「MONSTER」の文字が「怪物」の意味を有する我が国で広く親しまれた英単語であることから、全体として「優しい怪物」ほどの意味合いを容易に理解させることに加え、かかる構成及び称呼を併せ考慮すれば、「GENTLE MONSTER」の構成文字全体が一体不可分のものとして認識、把握されるものと判断するのが相当である。
さらに、本件商標は、その構成中のいずれかの文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討することが許されるというべき事情は見いだせない。
また、上記1のとおり、「MONSTER」の文字は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、当該「MONSTER」の文字が上記意味を有する広く親しまれた英単語であることから、本件商標は、その構成中「MONSTER」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできない。
そうすると、本件商標は、その構成文字全体が一体不可分のものであって、「ジェントルモンスター」のみの称呼を生じ、「優しい怪物」の観念を生じるものといわなければならない。
(イ)引用商標5は、「MONSTER」の文字からなり、該文字に相応し「モンスター」の称呼を生じ、「怪物」の観念を生じるものである。
なお、「MONSTER」の文字は、上記1のとおり申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、当該「MONSTER」の文字が「怪物」の意味を有する我が国で広く親しまれた英単語であることから、引用商標5は、本件商標の指定商品との関係においては上記のとおり「怪物」の観念を生じるものと判断するのが相当である。
(ウ)そこで、本件商標と引用商標5との類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「GENTLE MONSTER」と引用商標5の構成文字「MONSTER」の比較において、両者は「GENTLE」の文字の有無という差異を有し、これらの差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は大きく、相紛れるおそれのないものとみるのが相当である。
次に、本件商標から生じる「ジェントルモンスター」と引用商標5から生じる「モンスター」の称呼を比較すると、両者は「ジェントル」の音の有無という差異を有し、この差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標は「優しい怪物」の観念を生じるものであるのに対し、引用商標5からは「怪物」の観念が生じるから、両者は、観念上、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標5とは、外観、称呼及び観念において相紛れるおそれがない非類似の商標であって、その類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものである。
イ 出所の混同のおそれについて
上記2のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品とは、関連性が高いものとはいえず、また、上記1のとおり、引用商標5は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記アのとおり、本件商標と引用商標5は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、類似性の程度も極めて低い別異の商標というべきものであること、引用商標5は、その構成文字「MONSTER」が我が国で広く親しまれた英単語であって独創性の程度が低いことから、本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標5を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、引用商標5との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(2)本件商標と引用商標1ないし引用商標4及び引用商標6について
本件商標は、引用商標1ないし引用商標4及び引用商標6との関係において、出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(3)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は引用商標5「MONSTER」の出所表示力を希釈化するおそれが高いなどとして、本件商標は、商標法の精神及び国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある旨主張している。
しかしながら、上記1のとおり、引用商標5は需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないことに加え、上記3(1)アのとおり、本件商標と引用商標5とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、また、本件商標は引用商標5を連想又は想起させることのないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標5の出所表示力を希釈化する、その名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、商標法の精神及び国際信義に反するものであるなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】



異議決定日 2021-05-31 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W09)
T 1 651・ 271- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 小松 里美
豊田 純一
登録日 2018-12-31 
権利者 IICOMBINED Co., Ltd.
商標の称呼 ジェントルモンスター、ジェントル、モンスター 
代理人 柳田 征史 

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