• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W12
管理番号 1380123 
異議申立番号 異議2020-900160 
総通号数 264 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-06-18 
確定日 2021-10-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第6243125号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6243125号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6243125号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和元年12月16日に登録出願、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,エアバッグ,風よけひさし,自動車用空気ポンプ,自動車用クラッチペダル,自動車用警音器,自動車用座席,自動車用座席カバー,自動車用シガーライター,自動車用車体,自動車用車体カバー,自動車用車輪,自動車用スポーク,自動車用タイヤ,自動車用タイヤチューブ,自動車用扉,自動車用泥よけ,自動車用ハンドル,自動車用ハンドルカバー,自動車用リム,シャシー,とって,荷物台,バックミラー,バンパー,風防ガラス,方向指示器,ほろ,ボンネット,窓カーテン,予備車輪支持具,ルーフラック,ワイパー,自動車部品留め用クリップ,自動車用ステアリングホイール,自動車用のボンネットピン,自動車用ブラインド,昇降式テールゲート(陸上の乗物用の部品),チャイルドシート,風防ガラス用ワイパー,乗物用シートカバー,乗物用スポイラー,乗物用燃料タンクキャップ,乗り物用カバー(型に合わせたもの)」を指定商品として、同2年3月12日に登録査定され、同年4月6日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、別掲2のとおりの構成よりなり(甲2、甲3、以下「引用商標」という。)、中華民国(以下「台湾」という。)の法人「政銓企業有限公司」(以下「政銓」という。)の業務に係る商品「自動車用スポイラー」等の自動車カスタム用品を表示するものとして、台湾における当該商品の取引者、需要者の間に広く認識されているとするものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第第4条第1項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標の商標法4条1項19号に該当性について
(1)「外国における需要者の間に広く認識されている商標」について
ア 引用商標(別掲2)は、政銓が、台湾にて登録している商標である(甲2)。2016年(平成28年)12月16日に登録がされているが、政銓は2015年(平成27年)から引用商標とその基になった「FUTURE DESIGN」の英語表記を使用しており(以下、引用商標と「FUTURE DESIGN」の英語表記を併せて「引用商標等」という。)、2020年(令和2年)現在まで5年間使用をしている(甲4、甲16、甲17)。
イ 政銓が扱う商品は、主に趣味で自動車を改造している個人に向けた自動車カスタム用品であり、具体的には、ドライカーボンを素材とする、主に高級外国車のカスタムパーツを製造、販売している(甲5、甲18)。商品の性質上、広く一般の消費者を対象とするものではなく、自動車カスタムを趣味とする個人や政銓と同種の事業を行う法人が取引者、需要者になる。政銓は、2015年(平成27年)から引用商標等を使用して事業を行い、2018年度(平成30年度)の台湾での売上高は約2,500万円、2019年度は約4,000万円と近年大きく成長をし(甲6、甲19?甲21)、次第に知名度をあげており、自動車カスタム用品のメーカーとして成長が期待されている。
ウ 台湾では、2020年(令和2年)で第36回目の開催を迎えた大規模な自動車部品等のイベントである「台北AMPA」(2019年(平成31年)4月24日ないし同月27日まで開催。同年の実績出店社数1,340社、来場者数約29,000人。)にも出店し広く広告された(甲7、甲8の1・2、甲22)。
エ 引用商標等を付した政銓の商品は台湾だけでなく、香港、マレーシアでも販売されている(甲9、甲23)。日本でも、政銓は異議申立人と代理店契約を締結し、2019年(平成31年)4月30日から事業活動を行っている(甲24)。
オ 申立人は、2019年(令和元年)から日本での販売代理店として自社サイトを立ち上げ、インターネット上のショッピングサイト等で「METEO」の商号で引用商標を用いた政銓の商品を販売しており、2020年(令和2年)1月から同年10月までのショッピングサイト等(楽天、ヤフーショッピング、公式HP)での売上額は約3,530万円である(甲11の1?3、甲25?甲27)。
カ その他、政銓は、2019年(令和元年)11月19日に撮影された台湾の歌手のミュージックビデオへのブランド名の入った車両を提供(甲28、甲29)し、また、同年12月7日に台湾で開催された、自動車のカスタムパーツに関する大規模イベント「EUROWAY TRACKDAY FESTIVAL」に出展した(甲30?甲32)。
以上より、引用商標が、台湾の自動車カスタム用品の取引者、需要者の間で広く認識されている商標であることは明らかである。
(2)同一又は類似の商標について
本件商標と引用商標を比べると明らかなとおり(甲1、甲2)、両者は同一又は極めて酷似している。なお、甲第1号証に列挙されている指定商品についても、政銓が台湾にて登録している商品と同一又は類似している。このことから、本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)が、政銓の販売商品を念頭に指定商品を選択していることは明らかである。
(3)不正の目的について
上述のとおり、引用商標は台湾にて取引者、需要者に周知された商標である。さらに、引用商標は「FUTURE DESIGN」の頭文字であるアルファベットの「F」と「D」の文字を組み合わせて、「D」の文字に見えるようデザインされた独創的な図柄になっており、構成上顕著な特性を有する商標といえる。本件商標は、以上のような特性のある引用商標と同一又は極めて酷似していることから、後に述べる事情を検討するまでもなく、商標権者(甲1)に不正の目的があることが推認できる。
また、商標権者が不正の目的をもっていることは、下記の事情からも明らかである。
商標権者は台湾の政銓のコピー品をインターネット上で現に販売している(甲12、甲13)。その販売サイトでは、政銓が自らの広告や自社の商品紹介にて使用している写真を無断で転用しており、これは著作権侵害である(甲13)。さらに、政銓から正当な代理権を得て日本で販売している申立人に対しては、商標権を侵害しているとして通知をし、自らの正当性を示して申立人ひいては政銓が日本の市場に参入することを妨害している(甲14)。
以上より、商標権者は、引用商標が日本にて商標登録されていないことを奇貨として、政銓や申立人に無断で剽窃的に引用商標と同一又は極めて酷似する本件商標を登録出願したことは明らかである。
本件商標は、政銓や申立人の日本市場への参入を妨害し又は政銓や申立人との交渉を優位に進める等、不正な利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的を持って使用されていることは明らかである。

第4 当審おける取消理由の要旨及びそれに対する本件商標権者の意見
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和3年2月26日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
商標権者は、上記取消理由の通知に対して、指定した期間内に何ら意見を述べていない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)事実認定
申立人の提出した甲第1号証ないし甲第32号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)及び同人の主張並びに職権調査によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 政銓は、商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品(以下「使用商品」という場合がある。)を取り扱う台湾の企業であり、引用商標をウェブサイトのトップページに表示しているほか、2016年(平成28)10月から継続的に、政銓の取り扱う使用商品に関する広告用動画に引用商標を表示し、公表してきたと認められる(甲4、甲5、甲16?甲18)。
イ 引用商標は、2016年(平成28年)12月16日に、台湾において、政銓を権利者とし、「車・汽車・自動車、競技用の車,ワゴン車,車両,ミラーカバー,ドアミラー,マフラー,スポイラー,整流板,乗り物用スポイラー・エアロ,バンパー(フロント・サイド・リア),フェンダー,車両のカーテン,ルーフスポイラー,車のトランク,電動自動車,ボンネット,車の本体,専用のボンネット,車両用のルーフスポイラー・カーテン,スポーツカー,宣伝用の車」を指定商品として、商標登録されたものである(甲2、甲3)。
ウ 政銓の売上高は、2017年(平成29年)が約1,860万円、2018年(平成30年)が約2,500万円、2019年(令和元年)が約3,780万円であり、2017年(平成29年)ないし2019年(令和元年)においては、毎年、伸びていることがうかがえる(甲19?甲21)。
エ 政銓は、台湾において2019年(平成31年)4月24日ないし同月27日に開催され、約3万人が来場した大規模な自動車部品等のイベントである第35回「台北AMPA」(「中華民国対外貿易発展協会」主催、毎年開催)に出展し、引用商標をその出展ブース、展示した自動車、スタッフの被服に大きく表示したものと認められる(甲7、甲8、甲22)。
オ 政銓は、2019年(令和元年)12月18日にYouTubeのウェブサイトで公開された台湾の歌手のミュージックビデオに、引用商標が表示された高級自動車を提供し、当該ビデオは約130万回視聴されたことがうかがえる(甲28、甲29)。
カ 政銓は、自動車用品を取り扱う日本の企業である申立人と代理店契約を締結し、2019年(平成31年)4月30日から、日本においても使用商品を販売しているところ、申立人のウェブサイトの政銓の業務に係る使用商品を取り扱うページには、引用商標が目立つ位置に表示されている(甲10、甲11、甲24)。
キ 政銓は、香港及びマレーシアにも代理店を有しており、当該各代理店のフェイスブックのウェブサイトにおいて、引用商標を表示し、使用商品を広告していることがうかがえる(甲9、甲23)。
ク 申立人は、2020年(令和2年)5月7日に、商標権者であると主張する者から、楽天株式会社を通じて、申立人が本件商標の権利を侵害する商品の販売をしている旨の連絡を受けたことが確認できる(甲14)。
(2)引用商標の周知性について
上記(1)において認定した事実によれば、政銓は、商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品を取り扱う台湾の企業であり、引用商標は、2016年(平成28年)12月16日に、台湾において、政銓を権利者とし、使用商品を含む商品を指定商品として商標登録されているものである。
また、政銓は、本件商標の登録出願日前の2016年(平成28年)10月から、継続的に、政銓の取り扱う使用商品に関する広告動画に本件商標を表示して使用しており、台湾において2019年(平成31年)4月24日ないし同月27日に開催された大規模な自動車部品等のイベントに出展し、引用商標を出展ブース、展示した自動車、スタッフの被服に大きく表示したほか、2019年(令和元年)12月18日にYouTubeのウェブサイトで公開された台湾の歌手のミュージックビデオに、引用商標が表示された高級自動車を提供し、当該ビデオが約130万回視聴されるなど、引用商標を使用した使用商品の広告宣伝を行ってきた結果、政銓の売上高は、2017年(平成29年)ないし2019年(令和元年)において、毎年、伸びていることが確認できる。
そうすると、引用商標は、少なくとも台湾における、商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品を取り扱う取引者、需要者の間において、政銓の業務を表すものとして、本件商標の登録出願日(令和元年12月16日)には既に相当程度広く認識され、その周知性は、本件商標の登録査定日(同2年3月12日)においても継続していたものということができる。
(3)本件商標と引用商標との類似性について
ア 引用商標は、別掲2のとおり、アルファベットの「D」を傾斜したような形状の黒色の線と曲線の組合せの内部に、黒色の小さな平行四辺形を有する構成からなるものであるところ、これは、直ちに特定の事象を表したものとは認識されない図形として把握されるものであり、引用商標は、構成全体として、特徴的なものであるといえる。
そして、本件商標からは、特定の称呼及び観念は生じない。
イ 本件商標は、別掲1のとおり、大きく表示された、アルファベットの「D」を傾斜したような形状の黒色の線と曲線の組合せの内部に、黒色の小さな平行四辺形を有する構成からなるもの(以下「D状部分」という。)の下に、「FUTURE DESIGN」の文字を配してなるところ、上段のD状部分と下段の文字部分とは、その構成が明らかに異なる上に、両部分の高さや横幅も不ぞろいであることから、視覚的に分離して看取されるものといえる。そして、上段のD状部分は、直ちに特定の事象を表したものとは認識されない特徴的な図形として把握されるものであって、本件商標の構成全体において大きな面積を占めることから、上段のD状部分は、本件商標に接する需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
そうすると、本件商標は、その構成中のD状部分を要部として抽出し、この部分のみを引用商標と比較して、商標そのものの類否を判断することが許されると判断するのが相当である。
そして、本件商標の構成中の要部となるD状部分からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
ウ 本件商標の要部と引用商標を比較するに、両者はいずれも、称呼及び観念が生じないものであるから、称呼及び観念上、比較できないものの、その全体的構成はもとより、図形を描く線の太さ、色彩(黒色)の細部に至るまで、全く同一の態様からなるものであるから、両者は外観上、同一又は類似であるといえる。
そして、本件商標の指定商品は、第12類「自動車並びにその部品及び附属品」を含む上記第1に記載のとおりの商品であるから、政銓の業務に係る商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品とは、類似性が高いものといえる。
エ したがって、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標であり、かつ、その指定商品も、政銓の業務に係る商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品と、類似性の高いものである。
(4)不正の目的について
上記(3)のとおり、本件商標は、その要部において、全体的構成はもとより、図形を描く線の太さ、色彩(黒色)の細部に至るまで、特徴的な引用商標と全く同一の態様からなるものであるところ、本件商標と引用商標とが係る細部の特長に至るまで偶然に一致するとは考え難いこと、本件商標の指定商品は、政銓の業務に係る商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品とは、類似性の高いものであること、上記(1)カないしクにおいて認定した事実によれば、政銓は本件商標の登録出願日前に、自動車用品を取り扱う日本の企業である申立人と代理店契約を締結し、日本においても引用商標を使用しているほか、香港及びマレーシアの代理店においても、引用商標を使用しており、政銓が引用商標を商品「自動車用スポイラー」等、主に高級車向けの自動車カスタム用品に用いて海外進出を図っていたことは明らかであること、申立人が、2020年(令和2年)5月7日に、商標権者であると主張する者から、楽天株式会社を通じて、申立人が本件商標の権利を侵害する商品の販売をしている旨の連絡を受けたこと等を総合すれば、商標権者は、本件商標が他人の業務に係る商品を表示するものとして台湾における取引者、需要者の間に相当程度広く認識されている商標と同一又は類似の商標であることを承知のうえ、引用商標等が我が国において未だ登録されていないことを奇貨として外国権利者の国内参入を阻止し、又は国内代理店契約を強制する目的、又は引用商標等の顧客吸引力を希釈化若しくは便乗し不当な利益を得る等の目的のもとに出願し、権利を取得したものと推認せざるを得ないから、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標に該当すると判断するのが相当である。
(5)小括
以上によれば、本件商標は、政銓の業務に係る商品を表示するものとして、台湾における取引者、需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をする商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
2 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、その登録は同第1項に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲
別掲1 本件商標


別掲2 引用商標(甲第3号証から抜粋)


異議決定日 2021-07-01 
出願番号 商願2019-157192(T2019-157192) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W12)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原田 信彦 
特許庁審判長 榎本 政実
特許庁審判官 渡邉 あおい
豊田 純一
登録日 2020-04-06 
登録番号 商標登録第6243125号(T6243125) 
権利者 桜咲 相宇
商標の称呼 エフデイフユーチャーデザイン、フユーチャーデザイン、ヒューチャーデザイン、エフデイ 
代理人 片山 琢也 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ