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審決分類 審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 一部無効 商品(役務)の類否 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
管理番号 1378944 
審判番号 無効2020-890027 
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-03-13 
確定日 2021-10-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第6134137号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第6134137号の指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品,香料」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6134137号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成30年11月28日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料,薫料」及び第5類「サプリメント」を指定商品として、同31年2月18日に登録査定、同年3月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する登録第5237676号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成20年3月4日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛,つけまつ毛用接着剤」及び第16類「印刷物,紙製包装用容器,衛生手ふき,紙製タオル,紙製手ふき,紙製ハンカチ」を指定商品として、同21年6月12日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第31号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号の該当性
(1)本件商標について
本件商標は、欧文字「R」のモノグラム図形部分と欧文字部分「RenaJapan」との結合商標であるところ、この図形部分と欧文字部分との間にスペースが配され、欧文字部分が図形部分に比し目立つ態様で表示されており、しかも、図形部分は「R」のモノグラム図形として一般的にも良く用いられるものであり識別性が弱いことから、欧文字部分「RenaJapan」が単独で識別機能を発揮する。
(2)引用商標について
引用商標は、上下二段に併記されている欧文字部分「LenaJapon」と片仮名部分「レナジャポン」の構成よりなるところ、片仮名部分が欧文字部分から生じる称呼を特定していると解されること、欧文字部分が片仮名部分に比して特徴ある書体でかつ2倍以上の大きさであることから、欧文字部分が単独で識別機能を発揮する。
(3)本件商標と引用商標とが類似することについて
ア 称呼の類否について
本件商標の欧文字部分「RenaJapan」からは、「レナジャパン」の称呼が生じる。一方、引用商標の欧文字部分「LenaJapon」からは、「レナジャポン」の称呼が生じる。
両称呼は、共に6音構成中の第5音目の「パ」と「ポ」とが相違するにすぎない。
かかる差異音「パ」と「ポ」は、いずれも両唇を合わせて破裂させる強音の音「P」を要素とする同行の近似音であり、しかも、両差異音の前の音である「ジャ」が舌尖を前口蓋により前歯との間に空洞を作る有声摩擦子音(j)であることから、両差異音に比して強く発音される。
したがって、両称呼は、語調語感が極めて近似し称呼上酷似する。
イ 観念の類否について
本件商標の欧文字部分「RenaJapan」の「Rena」及び引用商標の欧文字部分「LenaJapon」の「Lena」は、いずれも女性の人名として使用されるものであり(甲3)、「Japan」及び「Japon」は、前者が英語で日本を、後者がフランス語で日本を意味する成語としてよく知られていることから、両者はいずれも、「レナという名前の日本人の女性」といった観念を容易に想起せしめる。
更に、「レナ」の称呼が生じうる構成要素を有する登録商標についても「Lena」若しくは「Rena」から構成されている(甲4)。
したがって、両者は、同一の観念が生じる。
ウ 外観の類否について
「RenaJapan」と「LenaJapon」はいずれも欧文字9文字からなり、その9文字構成中の大部分を占める7文字で完全に一致しており、わずかに語頭の「R」と「L」及び「Japan」と「Japon」の「a」と「o」の2文字が相違するにすぎない。加えて、「R」と「L」とは端に位置しており、語尾部分の「a」と「o」とはいずれも小文字であることや、「Japan」と「Japon」とは英語とフランス語ではあるが、いずれの語も特に本件商標の指定商品である「化粧品」との関係では「日本」を意味する語として広く親しまれている語であって、外観上両者は紛らわしいといえることを踏まえれば、本件商標と引用商標とを離隔的に観察する場合、両者は、外観上紛らわしいことは明らかである。
(4)小括
本件商標と引用商標は、称呼が酷似しかつ観念が同一であり、この称呼の酷似性及び観念の同一性は、外観上の微差を凌駕するものである。
したがって、本件商標と引用商標とは類似し、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性
(1)本件商標の欧文字部分「RenaJapan」が請求人ブランドと類似することについて
ネット販売においてネット上で商品「化粧品」の商標を認識することが一般的となっている化粧品業界の実情を踏まえれば、「LENAJAPON」「LenaJapon」「レナジャポン」(以下、これらをまとめて「請求人ブランド」という。)と「RenaJapan」とは、称呼の酷似性及び観念の同一性が外観上の差異を凌駕するものであり、請求人ブランドと本件商標が類似することは明らかである。
本件商標と請求人ブランドとの外観上の差異は、称呼が酷似し、観念が同一であることを以って取引者・需要者をして出所の混同を生ぜしめない程に顕著なものではないと解されることから、請求人ブランドと本件商標とは近似する。
(2)本件商標が実際に使用されている商品と請求人ブランドが使用されている商品との関連性、需要者の共通性
本件商標は、請求人ブランドが使用されている商品(以下「請求人ブランド商品」という。)の一つである「スキンケア化粧品」について使用され、請求人ブランド商品には、本件商標の指定商品である「せっけん類」も含まれている(甲5)。
本件商標の使用商品(スキンケア化粧品)の販売方法も「ECサイト」での販売である点も、請求人ブランド商品と共通する(甲6)。
したがって、請求人ブランド商品の需要者と、本件商標の使用商品(スキンケア化粧品)の需要者は共通する。
(3)請求人ブランドが創造標章であること
請求人ブランドは、次の理由に基づいて採択された。すなわち、(a)開発のきっかけとなった請求人の代表取締役の娘の名前を戴くこと、(b)日本製であることをわかりやすくすること、(c)世界で認知しやすいブランド名にすることである。かかる経緯から明らかなとおり、請求人ブランドは、いずれも世の中に存在する言葉ではなく、請求人が創造した標章である。創造標章であるがゆえに、請求人ブランドは、世の中に一般的に存在する言葉とは異なり、取引者・需要者に与える印象は強く、その印象に基づく連想作用により、一般的に存在する言葉と比べて、混同のおそれが広く認められる。
(4)本件商標の出願時に請求人ブランドが商品「化粧品」について周知性を獲得し、現時点においてもその周知性を維持・拡大していること
ア 請求人の代表取締役が著名な経営者であること
請求人「レナ・ジャポン・インスティチュート株式会社」は、その代表取締役が、「乾燥でどんどん肌が荒れていく娘の肌を治したい」との思いをきっかけに、なにか人のためになる会社を作りたいとの思いから2007年2月に設立された自然派化粧品会社である。
請求人の代表取締役は、化粧品業界においては著名な女性経営者である(甲7)。
イ 請求人ブランドが請求人の代表取締役の著名性及びブランドコンセプト等によって周知性を獲得していること
請求人ブランド商品は、請求人の代表取締役の著名性もあいまって、本件商標の出願当時において、周知性を獲得していた。(a)請求人は、「ダブル保湿」「深呼吸洗顔」というコンセプトを分かりやすく打ち出すことにより、取引者・需要者から高い評判を得てきたが、(b)SNSや口コミサイト、EC(電子商取引)の隆盛もこれを後押しし、請求人ブランド立ち上げからほどなく、多くのメディアで取り上げられるようになり、周知性を獲得するに至った(甲8?甲28)。
ウ 化粧品業界の取引者間における著名性
請求人ブランドは、化粧品業界の取引者間においても、著名性を獲得している(甲29)。
エ 小括
請求人ブランドは、請求人の代表取締役の著名性、ブランドコンセプト、取引者・需要者の口コミにより、化粧品並びに美容関係の多くの取引者・需要者の間で周知性を獲得している。周知である請求人ブランドは、創造標章であることともあいまって取引者・需要者に強い印象を与え、その連想作用により、類似する本件商標との間で混同のおそれを生じさせる。
(5)商品「化粧品」における取引の実情
かつては商品購入といえば、商店街やスーパーあるいはデパートといったリアル店舗での購入が当たり前だったが、1990年代後半にEC(電子商取引)が出現して以来、一般需要者の商品購入行動は大きな変化を遂げてきているといわれている(甲30)。
青山ハッピー研究所が2018年6月13日から2018年6月18日に行ったインターネット調査に基づく調査結果によると、有効回答数の7割近くがネットショッピングを好きと回答しており、回答者中の女性の33.3パーセントが化粧品をネットショッピングのみで購入している(甲30)。
そして、この調査結果及び7割近くがネットショッピングを好きと答えていること、化粧品の購入の判断に当り、一般需要者の多くが「@コスメ」等の口コミサイトでチェックをしているという取引の実情の下、化粧品の一般需要者は、化粧品ブランドを、ネットを通じて特定している傾向が強いといえる。
かかる取引の実情の下、ネット上での化粧品ブランドの検索は、当該ブランドから生じる称呼を特定する片仮名で、例えば「レナジャポン」「レナジャパン」で行われ、その結果、称呼が近似している化粧品ブランドがヒットすることとなる。
ちなみに、Googleでキーワード「レナジャパン」で検索をすると、最初にヒットするウェブページは請求人ブランドのウェブページである(甲31)。
(6)小括
以上により、本件商標を商品「スキンケア化粧品,せっけん類」に使用する場合、その需要者及び取引者において、請求人又は請求人の経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所につき、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがあることは明らかであり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 結論
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、同号に該当しない場合であっても、同項第15号に該当するので、同法第46条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品,香料」についての登録を無効とするべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 請求人適格について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、円形内に「R」とおぼしき欧文字をモチーフにしたモノグラムと、その右横に「RenaJapan」の欧文字を配した構成よりなるところ、当該モノグラム部分と欧文字部分は、それぞれが、視覚上、分離して看取、把握され得るものであって、観念的な関連性も見いだせないことから、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえない。
そうすると、本件商標は、その構成要素が、それぞれ独立して自他商品の出所識別機能を有するというのが相当である。
そこで、本願商標の構成中の「RenaJapan」の欧文字部分をみるに、「Japan」の文字が「日本」を意味する親しまれた英単語であるとしても、「Rena」の文字と結合した「RenaJapan」の文字は、一般的な辞書等に掲載されている語ではなく、特定の意味合いを有しない一種の造語として認識されるものである。
してみると、本件商標からは、「RenaJapan」の欧文字部分に相応して「レナジャパン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、淡い赤色で、ややデザイン化された「LenaJapon」の欧文字及び「レナジャポン」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、下段の片仮名は上段の欧文字の読みを表したものと認識できるものである。
そして、引用商標は、その構成中の「Japon」及び「ジャポン」の文字が「日本」を意味する親しまれたフランス語及びその読みであるとしても、構成文字全体として特定の意味合いを想起させることのない一種の造語とその読みとして認識されるものである。
してみると、引用商標は、その構成文字全体に相応して、「レナジャポン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観について
本件商標の欧文字部分「RenaJapan」と引用商標の欧文字部分「LenaJapon」とは、書体及び色彩が相違するものの、いずれも欧文字9文字からなり、その9文字中の7文字を同じくし、1文字目において「R」と「L」及び8文字目において「a」と「o」の文字のみを異にするものであるから、両商標は、外観において近似した印象を与えるものと認められる。
イ 称呼について
本件商標から生じる「レナジャパン」の称呼と、引用商標から生じる「レナジャポン」は、いずれも5音で構成されるものであって、4音目において「パ」と「ポ」の音が相違するものの、称呼の識別上、重要な語頭において「レナジャ」及び5音目の「ン」の音を共通にするものである。
そして、相違する「パ」と「ポ」の音は、明瞭に聴取し難い中間に位置するばかりでなく、子音の「p」を共通にする同行音であり、その母音「a」と「o」も発音方法において近似する音であることから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が近似し、互いに紛らわしく聞き誤るおそれがあるものといえる。
ウ 観念について
本件商標と引用商標からは、共に特定の観念を生じないものであるから、観念においては比較することができない。
エ 判断
そうすると、本件商標と引用商標は、観念について比較することができないとしても、外観において近似し、称呼において相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品,香料」は、引用商標の指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」と同一又は類似の商品である。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、その指定商品と同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
商標法第4条第1項第15号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第10号から前号までに掲げるものを除く。)」と規定されている。
したがって、本件商標は、上記2のとおり、商標法第4条第1項第11号に該当するものである以上、同項第15号に該当するとはいえない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、請求に係る指定商品「せっけん類,化粧品,香料」について、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とするべきである。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標:色彩については原本参照)


審理終結日 2021-03-09 
結審通知日 2021-03-12 
審決日 2021-05-25 
出願番号 商願2018-146568(T2018-146568) 
審決分類 T 1 12・ 264- Z (W03)
T 1 12・ 271- Z (W03)
T 1 12・ 261- Z (W03)
T 1 12・ 263- Z (W03)
T 1 12・ 262- Z (W03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 順子 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 大森 友子
水落 洋
登録日 2019-03-29 
登録番号 商標登録第6134137号(T6134137) 
商標の称呼 アアル、レナジャパン、リナジャパン、レナ、リナ 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 浜田 廣士 
代理人 黒川 朋也 

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