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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1378044 
異議申立番号 異議2020-900341 
総通号数 262 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2021-10-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-21 
確定日 2021-09-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第6298899号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6298899号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6298899号商標(以下「本件商標」という。)は,「未来AHC」の文字を標準文字で表してなり,令和元年8月20日に登録出願,第3類「研磨剤,せっけん類,つや出し剤,つや出し紙,洗剤,シャンプー,化粧品,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,口臭用消臭剤,香料,歯磨き,植物性天然香料,人造軽石,動物用防臭剤」を指定商品として,同2年9月18日に登録査定,同年10月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議申立ての理由において,引用する登録商標(以下,まとめていうときは「引用商標」という。)は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1363372号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:AHC
国際登録出願日:2017年(平成29年)7月11日
優先権主張:Republic of Korea 2017年7月4日
設定登録日:平成30年6月29日
指定商品:第3類「Cosmetics; beauty creams; body lotion; skin lotions; cosmetic preparations for skin care; skin creams; eye lotions; eye cream; facial lotions; face and body beauty creams; toilet water; lotions for cosmetic purposes; make-up removing preparations; eyebrow cosmetics; make-up; cosmetic preparations for baths; hair care creams; perfume; lip skin protecting materials (cosmetics); sunscreen preparations.」
(2)登録第5408667号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲のとおり
登録出願日:平成22年12月21日
設定登録日:平成23年4月22日
指定商品:第3類「まゆ毛用化粧品,口紅,リップスティック(化粧品),マッサージ用ジェル,マッサージオイル,マスカラ,ネイルエナメル,メイクアップ用ファンデーション,メイクアップ用化粧品,浴用化粧品,化粧クリーム,ボディーローション,ボディーオイル,ボディークリーム,頬紅,日焼け止めローション,日焼け止めクリーム,日焼けローション,スキンローション,皮膚の手入れ用化粧クリーム,皮膚の手入れ用化粧品,スキンクリーム,スキンクレンザー,アイメイク用化粧落とし,精油(エーテルを用いて採取したものに限る。),日焼け止め用化粧品,顔用及び身体用ローション,顔用及び身体用化粧品,顔及び身体の手入れ用ローション,顔用及び身体用クリーム,スキンホワイトニングクリーム,化粧用ローション,マスク型パック用化粧品,化粧用おしろい,おしろい,化粧落とし用ローション,化粧落とし用乳液,化粧落とし剤,化粧品」

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証を提出した。
(1)申立人について
ア 申立人は,韓国ソウルに本拠を有するスキンケア・美容を中心とした化粧品を製造・販売する企業であり,1999年5月に韓国ソウルで設立され,現在,本社と研究センターを韓国ソウル市においている(甲4)。申立人は「AHC」を含む複数の化粧品・美容ブランドを保有する韓国の大手化粧品・美容業の企業である。
ビューティーサロンに専門的な商品を供給してきたエステティックカンパニーとしての起源を生かして,申立人は「AHC」ブランドのスキンケア化粧品の製造・販売を行い,2016年には3憶2100万ユーロの売り上げを達成するなど急成長を遂げている(甲5)。2017年にはユニリーバの傘下となり世界的な美容・化粧品ブランドの商品を提供する企業としてさらなる躍進を遂げている(甲6)。
特に申立人の商標「AHC」を用いた「AHC」ブランドのスキンケア化粧品は非常に人気の高い主力の商品であり,韓国に始まって海外の消費者にも好まれ,その評判は広がり続けている(甲7)。
「AHC」ブランドのスキンケア化粧品は,アイクリーム,日焼け止め化粧品,美容液,化粧水,クレンジング用化粧品,美容用マスク,クリーム,乳液など多種類の商品が揃い,広く販売されている(甲8?甲10)。韓国国内の実店舗,免税店(甲11)の他,国内外のオンラインショッピングサイトを通じての販売もさかんに行い,販売数を拡大している(甲4)。現在では日本を含む多数の国で「AHC」ブランドのスキンケア化粧品を中心とした商品が販売されている。
イ 申立人及び「AHC」ブランドの商品の沿革は次のとおりである(甲4)。
1999年,韓国ソウルに申立人の企業が設立され,「AHC」ブランドのスキンケア化粧品の製造・販売が開始された。
2002年,エステティシャン用のショッピングモールであるカーバーモール「Carver Mall」(www.carvermall.com)の営業を開始した。
2007年,シンガポール,ロシア,アメリカ合衆国及びアラブ首長国連邦における輸出契約を締結した。
2008年,ポーランド及びギリシャにおける輸出契約を締結した。
2010年,香港,日本,インドネシア及び台湾における輸出契約を締結した。
2011年,カーバーコリアR&Dデザイン研究所及び技術研究所を設立した。また,創業者の個人事業からカーバーコリア社への統合を行った。
2013年,「AHC」ブランドの商品「Real Eye Cream For Face(リアルアイクリームフォーフェイス)」のホームショッピングチャンネル(テレビ等を通じて商品を紹介・宣伝し,消費者は在宅でも商品を購入できるもの)での提供を開始した。また,韓国の大手Eコマース企業であり,韓国最大のオンライン小売業者のCoupang(クーパン)の化粧品・美容分野Coupang Beauty(クーパンビューティー)において,「AHC」ブランドの商品がランキング1位を獲得した。
2015年,「AHC」ブランドの商品「Real Eye Cream For Face(リアルアイクリームフォーフェイス)」の累計販売数が1,000万本に達した。また,同様に「AHC」ブランドの商品「Pure Cotton Mask(ピュアコットンマスク)」の累計販売数が1,500万本に達した。
2016年,美容用マスクパックがTmall.hkでの売り上げで1位を獲得した(2016年11月の光棍節)。また,香港及び上海に申立人の支店を設立した。さらに,ベインキャピタルとゴールドマンサックスのコンソーシアムがカーバーコリアを買収した。なお,「Tmall」とは,アリババグループが運営する中国最大の小売オンラインショッピングモールであり,主に中国本土,香港,マカオ,台湾の消費者向けのプラットフォームである。
2017年,ユニリーバが申立人を買収した。2017年の韓国消費者満足度指数でトップにランクインした(5年連続)。また,「AHC」ブランドの商品「Real Eye Cream For Face」の累計販売数が5,700万本に達した(2017年12月時点)。
2018年,中国,台湾,ロシア及び東南アジア地域における「AHC」ブランドの商品販売事業が公式に始まった。中国Tmallの化粧品部門でランキング1位を獲得した。また,韓国においてはプレミアムアイケア(目元の美容・ケア用化粧品)及びサンスティック(スティックタイプの日焼け止め化粧品)部門で3年連続の1位を獲得した(Kantar World Panelによる。)。
2019年,オーストラリア,フィリピン及びインドネシアにおける「AHC」ブランドの商品販売事業を公式に開始した。中国Tmallの化粧品部門でランキング1位を獲得した(2019年11月の光棍節)。
また,プレミアムアイケア(目元の美容・ケア用化粧品)及びサンケア(日焼け止め関連の化粧品)部門で4年連続の1位を獲得した(KantarWorld Panelによる。)。
ウ 日本においては,現在はテレビのホームショッピングチャンネル(SHOP CHANNEL)を通じて「AHC」ブランドの化粧品の商品の販売が行われている(甲12)。「SHOP CHANNEL」でも紹介されているように,特に「AHC」の主力商品である「Eye Cream For Face(アイクリームフォーフェイス)」は世界的な大ヒット製品であり,16の国と地域(韓国,アメリカ合衆国,カナダ,ロシア,オーストラリア,シンガポール,中国,イギリス,タイ,マレーシア,インドネシア,フィリピン,ベトナム,台湾,香港及び日本)で販売され,過去9年間に世界で1億本以上が売れている(甲12)。
このように,申立人は,日本を含む世界の国・地域において化粧品を製造・販売する国際的な企業であり,その主力商品である「AHC」ブランドの化粧品は世界の国々で需要者に継続して人気を博し,販売数を伸ばしている。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性
ア 本件商標と引用商標が外観上類似であること
本件商標は,横書きされた漢字の「未来」の文字とローマ字の大文字「AHC」との組み合わせで構成されている。
一方の引用商標1は,ローマ字の大文字「AHC」からなり,引用商標2は葉をモチーフとしたような図形とローマ字の大文字「A.H.C」を組み合わせてなる。
本件商標と引用商標1を対比するに,本件商標は引用商標1「AHC」を構成中に含んでおり,異なるのは漢字で記載された「未来」の文字のみである。
引用商標2にあっては,図形部分を除いた文字の部分について,ピリオド(.)を除き,本件商標中の文字部分と同一である。
このように,本件商標と引用商標1とは文字部分が同一である。また,本件商標と引用商標2とは文字部分が極めて近似しているから,需要者・取引者が時と場所を異にして本件商標と各引用商標を見た際に,視覚を通じて認識する外観上の印象は極めて近似しており,相紛らわしいものである。
したがって,本件商標と引用商標は外観上相紛らわしい商標であり,本件商標は引用商標に類似している。
イ 本件商標と引用商標が称呼上同一・類似であること
本件商標は「未来AHC」の文字よりなるところ,この文字は漢字とローマ字からなることから,視覚上「未来」と「AHC」の文字が容易に分離して看取される。さらに,「未来AHC」は辞書類に載録された成語ではなく,親しまれた特定の観念的な結びつきが生ずるものとも,親しまれた熟語的意味合いが生ずるものともいい難いことから,「未来」と「AHC」を常に一体不可分のものとして把握しなければならない格別の理由も存在しない。
したがって,本件商標は分離して観察することが不自然であると思われるほどに不可分的に結合しているものとは認められない。
そうすると,本件商標からは,構成全体を称呼した場合の「ミライエーエイチシー」の称呼のほか,「末来」の文字より「ミライ」の称呼と,「AHC」の文字より「エーエイチシー」の称呼も生ずるものである。
これに対して,引用商標からは,その構成より「エーエイチシー」の称呼が生じることが明らかである。
本件商標と引用商標は,「エーエイチシー」の称呼を共通にするから,本件商標は引用商標と称呼上,同一又は類似である。
ウ 本件商標と引用商標が観念上同一・類似であること
上記のとおり,本件商標は分離して観察することが不自然と思われるほどに不可分的に結合しているものとは認められないことから,観念上も分離して看取,把握されるというべきである。
そうすると,本件商標からは単に「末来AHC」の他,「末来」の観念と「AHC」の観念を生ずる。本件商標から生じる「AHC」の観念は引用商標1及び引用商標2から生じる「AHC」の観念と同一である。
したがって,本件商標は観念上も引用商標と同一の商標である。
エ 小括
以上のとおりであるから,本件商標を本件商標の指定商品に使用すると,本件商標及び引用商標に接する需要者・取引者が本件商標と引用商標の商品の出所を混同し,相紛らわしく認識するおそれがきわめて高い。
したがって,本件商標は引用商標と類似する。
(3)審決例
本件商標と引用商標が相紛らわしい類似の商標であることは既述のとおりである。さらに,結合商標とその結合商標のうちの一部が同一の商標について,結合商標が分離して観察することが不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないと判断して,両商標を類似と判断した審決例が複数存在する(甲13?甲22)。
当該審決例に照らすと,本件商標の場合もそれが分離して観察することが不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないと判断されるべきであり,したがって,本件商標と引用商標にあっても当該審決例と同様に両商標は相紛らわしく出所の混同を生じる類似の商標と判断されるべきである。当該審決例における商標が類似と判断されているにもかかわらず本件商標が引用商標と非類似と判断されることは明らかに合理性を欠くと言わざるを得ない。
(4)取引の実情及び混同を生ずるおそれ
本件商標の出願日前から引用商標を付した商品が世界の複数の国,とりわけ韓国,中国といった日本と地理的にも近く,また文化・社会的にも情報が身近に入りやすい国において人気の化粧品として販売され需要者に広く知られていたという実情があることは提出する証拠(甲4?甲11)から明らかである。
このように,本件商標は,指定商品の分野において需要者・取引者にある程度認知されている引用商標と類似・近似していることから,本件商標を付して提供される商品は,あたかも申立人がその周知された商標を使って提供している商品かその関連商品であるかのように誤認されるおそれがきわめて高い。
申立人は韓国に拠点をおき世界的に化粧品・美容業の商品の販売・提供を行うグローバル企業である。実店舗での販売数が多いことはもちろんであるが,昨今は実店舗以外にもインターネット上のオンラインショッピングサイトやテレビショッピングなど多様な方法で引用商標を付した商品を販売しており,需要者・取引者が居る場所・地域に制約されることなく商品を目にしたり購入したりすることが可能なビジネススタイルとなっている。このような近年の取引の実情と申立人の世界的に広く展開する事業規模に照らすと,本件商標のように引用商標に近似した商標がその指定商品に使用される場合,需要者・取引者にとっては広く目にする申立人の引用商標との誤認混同を生じる可能性が極めて高いというべきである。
さらに,本件商標の登録が維持されると,申立人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきたブランドイメージは著しく毀損され,申立人が多大な損害を被ることとなる。
以上のとおりであるから,取引の実情を鑑みても本件商標の指定商品への使用は,申立人の引用商標に係る商品と出所の混同を生じるというべきであって,本件商標の登録は維持されるべきではない。
(5)まとめ
本件商標は引用商標と類似する。また,本件商標の指定商品中「せっけん類,洗剤,シャンプー,化粧品,香料,植物性天然香料」は引用商標の指定商品と抵触する。引用商標は本件商標の出願日よりも先に出願・登録されたことが明らかである。
本件商標がその指定商品に使用された場合,申立人の引用商標に係る商品と出所の誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。
よって,本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1号第11号該当性について
ア 商標の類否について
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁)。
また,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最二小判平成20年9月8日集民228号561頁)。
そこで,上記の観点から,本件商標と引用商標の類否について検討する。
イ 本件商標について
本件商標は,「未来AHC」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして,本件商標を構成する「未来」の文字が漢字で表されており,「AHC」の文字がローマ字で表されているとしても,構成文字は,同じ書体,同じ大きさ,等間隔でまとまりよく表され,全体から生じる「ミライエイエイチシー」の称呼も,よどみなく一連で称呼し得るものである。
また,「未来」の文字は,「将来」等の意味を有する語(「大辞泉第二版」株式会社小学館発行)であるが,本件商標の指定商品との関係において,商品の品質等を表するものといった事情は認められない。
さらに,「AHC」の文字が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,特定の事業者の業務に係る商品を表わすものとして,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているといった特段の事情も見いだせない。
そうすると,本件商標の構成中,「AHC」の文字部分が,指定商品の取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めることはできず,また「未来」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めることもできないから,本件商標構成中の「AHC」の文字部分のみを抽出し,当該部分だけを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することは許されないというべきである。
してみれば,本件商標は,その構成全体をもって不可分一体の商標とみるのが相当である。
そして,「AHC」又は「未来AHC」の文字は,辞書等に載録がなく,また特定の意味合いを有するものとして認識されているというような特段の事情も見当たらない。
以上よりすれば,本件商標からは,その構成全体の文字に相応して「ミライエイエイチシー」の称呼のみが生じるものであり,特定の観念は生じない。
ウ 引用商標について
(ア)引用商標1について
引用商標1は,「AHC」の文字を横書きしてなるところ,「AHC」の文字は,上記イのとおり辞書等に載録がなく,また特定の意味合いを有するものとして認識されているというような特段の事情も見当たらない。そうすると,引用商標1は,「AHC」の文字に相応して「エイエイチシー」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
(イ)引用商標2について
引用商標2は,複数の葉状よりなる図形と,その右下方に「A.H.C」の文字を配してなるところ,図形部分と文字部分とは,それらが接して配されていないなど,視覚上分離して看取されると共に,観念においても,図形部分と文字部分とを,常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせない。
そうすると,図形部分と文字部分とはそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないものであるから,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。
そして,「A.H.C」の文字は,辞書等に載録がなく,また特定の意味合いを有するものとして認識されているというような特段の事情も見当たらず,さらに,自他商品の識別機標識として機能し得ないとみるべき事情も見当たらない。
以上よりすれば,引用商標2の「A.H.C」の文字部分は,独立して自他商品の識別機標識として機能し得るものといえるから,引用商標2からは,「A.H.C」の文字に相応して「エイエイチシー」の称呼が生じ,特定の観念は生じない。
エ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討するに,本件商標と引用商標の外観については,上記イ及びウのとおりであって,本件商標と引用商標1とは,構成する文字の種類及び文字数に明確な差異があり,また,本件商標と引用商標2とは,これらの差異に加え,図形やピリオドの有無においても差異があるから,本件商標と引用商標とは外観において明確に区別できるものである。
次に,称呼について検討するに,本件商標から生じる「ミライエイエイチシー」の称呼と,引用商標から生じる「エイエイチシー」の称呼とは,音構成において明らかな差異があるから,両者は十分に聴別可能である。
さらに,観念についてみるに,本件商標及び引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念について比較することはできない。
そうすると,本件商標と引用商標とは,観念において比較できず,外観及び称呼において明確に区別し得るものであるから,外観,称呼及び観念によって,取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
オ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似のものであるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)申立人の主張について
申立人は,申立人が日本を含む世界の国・地域において化粧品を製造・販売する国際的な企業であり,その主力商品である「AHC」ブランドの化粧品は世界の国々で人気を博し,販売数を伸ばしていることや,オンラインショッピング等の多様な方法で販売している取引の実情を勘案すれば,本件商標がその指定商品に使用される場合,需要者・取引者は申立人の引用商標との誤認混同を生じる可能性が極めて高い旨主張する。
しかしながら,我が国において,申立人が引用商標を付した商品を販売したことを示す資料は,ホームショッピングチャンネルでの宣伝広告(甲12)のみであり,その放送時期や回数等は明らかにされていないことから,本件商標の登録査定時又はそれ以前のものであるかも明らかではない。また,我が国において,引用商標を付した商品の販売実績(開始時期及び期間,地域,数量,シェア等)や広告宣伝の実績等も示されていないから,たとえ申立人が国際的な企業であり,オンラインショッピング等の商取引の実情があるとしても,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,我が国の取引者,需要者に間に広く認識されていると認めることはできない。
そして,本件商標と引用商標が上記(1)のとおり非類似の商標であることをも踏まえると,本件商標と引用商標が商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるということはできない。
したがって,申立人の主張を採用することはできない。
(3)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当せず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲

別掲(引用商標2)




異議決定日 2021-08-26 
出願番号 商願2019-111495(T2019-111495) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W03)
T 1 651・ 261- Y (W03)
T 1 651・ 263- Y (W03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 ひろみ 
特許庁審判長 岩崎 安子
特許庁審判官 小田 昌子
茂木 祐輔
登録日 2020-10-01 
登録番号 商標登録第6298899号(T6298899) 
権利者 未来化粧品株式会社
商標の称呼 ミライエイエイチシイ、ミライエイエッチシイ、ミライ、エイエイチシイ、エイエッチシイ 
代理人 達野 大輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 竹中 陽輔 

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